説明

白金の化学蒸着のための金属錯体

本発明は、白金錯体、白金錯体を製造する方法、及び金属白金の化学蒸着のための白金錯体の使用に関する。基板上への白金の化学蒸着は、少なくとも2つの非隣接のC=C二重結合を含む環状構造を有するリガンドを含む有機金属白金化合物により為され、有機金属白金化合物が、白金がリガンドのそれぞれのC=C二重結合と結合することにより60°〜70°の(C=C)−Pt−(C=C)を形成する四角平面構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の白金錯体、新規の白金錯体を製造する方法、及び白金金属の化学蒸着のための新規の白金錯体の使用に関する。また本発明は、白金膜又は白金分散液を製造する方法、及びこのような白金膜又は白金分散液を含む、電子機器の部品及び触媒にも関する。
【背景技術】
【0002】
白金薄膜及び白金粒子の分散液は、マイクロエレクトロニクスに、例えばオーミック接触又はショットキーダイオード接触(contacts)、拡散障壁膜を作製するために、高温に曝される物質のコーティングとして、及び支持固体触媒の作製に広く使用されている。全ての金属蒸着法の中でも、有機金属化合物の化学蒸着法(「有機金属化学蒸着」に関してはMOCVD法又はより単純にはCVDとしても知られている)によって、コスト、処理温度、期間、被覆力及び蒸着物の全体品質に関して非常に良好な結果が得られている。
【0003】
MOCVD法により満足のいく金属蒸着物が形成されるかどうかは前駆体化合物の揮発性に左右される。具体的にはこの方法には、前駆体化合物の高い蒸気圧及びこの化合物の高い安定性が得られることが求められる。
【0004】
MOCVDの原理は、金属の揮発性前駆体、すなわち有機金属錯体を気化させ、それを基板上で熱分解し、金属層を形成するというものである。実際には気化は、安定範囲内を保ちながら同時に、蒸着物に十分な前駆体蒸気圧を得ることが可能な圧力及び温度条件下で行われる。基板に関しては、この安定範囲を超えて加熱し、これにより有機金属アセンブリの分解及び金属粒子の形成が可能となる。CVD蒸着法は他の既知の方法に対する様々な利点を有する:CVDにおける有機金属化合物の熱分解温度は他の蒸着技法のものよりも1000℃〜2000℃低い。得られた膜が高密度であり、かつ連続的であるため、良好な電気特性と相反する多孔性を回避することが可能になる。液体含浸法とは対照的に、この方法は迅速であり、含浸工程、洗浄工程、乾燥工程、焼成工程及び活性化工程が回避される。表面の被毒及び乾燥中の活性化物質の変性も回避される。このためこの方法は、良好な品質の制御蒸着を得るための迅速かつ経済的な方法である。
【0005】
様々な有機金属Pt化合物(白金及び有機リガンドを含有する錯体である)が現在広く使用されている。特にPt(acac)、Pt(PF、(cod)PtMe、MeCpPtMe又はEtCpPtMeが言及され得る。これらの化合物(本明細書では前駆体とも称される)は文献において広く説明されている。
【0006】
これらの既知の前駆体は以下の式を有する。
【0007】
【化1】

【0008】
このため本特許出願において、以下の略称は以下の基を示す:
(acac):ビス−アセチルアセトネート、
(cod):1,5−シクロオクタジエン、
(Cp):シクロペンタジエニル。
【0009】
しかしながら、これらの前駆体はそれぞれ、産業的背景ではMOCVDプロセスにおける使用に関して欠点があるという制限を有する。
【0010】
このため様々な研究により、Pt(acac)の使用中に分解問題が起こることが分かっている:リガンドは金属を脱配位することなく分解する可能性があり、このことが概して蒸着物が大量の不純物を含有する原因となる。
【0011】
Pt(PFはフッ素を含有する蒸着物をもたらすが、或る特定の用途においては使用が禁じられている(非特許文献1)。
【0012】
(cod)PtMeは有益な前駆体であるが、揮発性が中程度であるため、他の白金錯体に比べて高い温度で作業を行う必要がある。さらに、この前駆体を溶液中で使用すると、再現不可能な特性を有する蒸着物が観察され、このことは長期保存中におけるこの前駆体の溶液の安定性の欠如を示唆している。
【0013】
CpPtMeは空気及び湿気に感受性が高い。
【0014】
MeCpPtMeに関しては、空気及び湿気に感受性が高く、かつ高価である。
【0015】
その類似体であるEtCpPtMeはより良好な安定性を示すが、MeCpPtMeと同じように高価である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Martin T.P. et al., J. Chem. Vap. Deposition, 2005, 11, 170-174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、室温で安定であるが中程度の温度で容易に分解することができ、揮発性であり、かつ、1つ又は2つの工程しか含まないプロセスにより作製することができるため有利な原価を有する有機金属白金前駆体を提案することにより従来技術の有機金属白金前駆体化合物の欠点を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このために本発明は、少なくとも2つの非隣接のC=C二重結合を含む環状構造のリガンドを含み、白金がリガンドのそれぞれのC=C二重結合と結合し、60°〜70°の(C=C)−Pt−(C=C)角を形成する、扁平な四角構造を有する、有機金属白金化合物を提案する。
【0019】
好ましくは、(C=C)−Pt−(C=C)角は64°〜66°であり、有利には約65°に等しい。
【0020】
本発明の好ましい1つの実施の形態では、本発明の有機金属化合物のリガンドは、以下の式(I):
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、
nは1及び2から選択される整数を表し、
n=1の場合、R1i、R1jはそれぞれただ1つの基を表し、n=2の場合、R1i及びR1jはそれぞれ2つの同一の又は異なる基を表し、
1a、R1b、R1c、R1d、R1i及びR1j(同一であっても又は異なっていてもよい)は、H、ハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cトリアルキルシラン基、C〜Cアルケニル基、1つ又は複数のOH官能基を有するC〜Cアルキル基から選択される)を有する。
【0023】
「ハロゲン原子」という用語はF、Cl、I、Brから選択される原子を意味する。
【0024】
アルキル基及びアルケニル基は直鎖又は分岐鎖であってもよい。
【0025】
「C〜Cトリアルキルシラン基」という用語は3つの同一の又は異なるC〜Cアルキル置換基を有するSi原子から形成されるシラン基を意味する。好ましくは、3つのアルキル置換基は同一である。
【0026】
好ましくは式(I)の化合物では、以下の条件の1つ又は複数を満たす:
n=1、
1b、R1c、R1d及びR1jが全て同一であり、かつHを表し、
1aがH、Cl、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、トリメチルシラン、3−プロペニル、エタノールから選択され、
1iがH、メチル、エチルから選択される。
【0027】
最も好ましくは式(I)では、R1aはH、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、トリメチルシランから選択される。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態によれば、有機金属白金化合物は、以下の式(II):
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、
n、並びにR1a、R1b、R1c、R1d、R1i及びR1jは式(I)に関して上で規定した通りであり、好ましい変形形態が同じであり、R及びRはそれぞれ独立して、直鎖C〜Cアルキルから選択される)に相当する。
【0031】
n=1、R1a=R1b=R1c=R1d=R1i=H、R=R=CHの場合を除いて、これらの分子は新規であり、本発明の主題を構成する。
【0032】
好ましくは式(II)では、R及びRは同一であり、メチル、エチルから選択される。
【0033】
本発明の方法を実施するのに特に好ましい有機金属白金化合物は、以下の式(II−A)、式(II−B)、式(II−C)、式(II−D)、式(II−E)及び式(II−F)の化合物である:
【0034】
【化4】

【0035】
本発明は、式(II)の化合物が驚くべきことに、(C=C)−Pt−(C=C)角が90°であるか又は90°に近い同じタイプの有機金属化合物よりも室温でより安定であるという発見に基づいている。
【0036】
本発明の有機金属白金化合物は、Pt2+等の電子構造5dの遷移金属イオンに関して既知のイアン・テーラー(Ian-Teller)効果により白金の周囲に扁平な四角構造を有する。
【0037】
さらに、本発明の有機金属化合物(II)は、従来技術のものよりも低い温度でより容易に蒸発又は昇華することができ、実験部で説明されるように、本発明による有機金属化合物の炭素元素を迅速に揮発させながら同時に、この中程度の温度で白金を放出する。
【0038】
好ましくは、(C=C)−Pt−(C=C)角が65°に近い、すなわち約65°に等しい。
【0039】
本発明による式(II−A)の化合物の構造は、従来技術の化合物(cod)PtMeの構造と同様に、扁平な四角構造である。以下のスキーム1は、白金がPt2+形態であるこれらの2つの白金前駆体の単結晶でのX線回折により得られたデータ;原子間距離及び結合間(interbond)角度を示す。
【0040】
【化5】

【0041】
これらのデータから、これらの2つの分子の扁平な四角構造を推定することが可能であった。しかしながら、従来技術の化合物の場合では、Me−Pt−Me角及び(C=C)−Pt−(C=C)角が90°に近いこと(90°の角度が理想的な扁平な四角配置に相当する)、並びに本発明の式(II−A)の化合物の場合では、ノルボルナジエンリガンドの剛性の制限及び2つの二重結合間の小さい距離により、65.8°とより小さい(C=C)−Pt−(C=C)角が与えられることが重要な違いである。
【0042】
この制限が分子においてより大きくなると、構造安定性が低くなり、従来技術の化合物のシクロオクタジエンリガンドとの結合よりも白金とノルボルナジエンリガンドとの間の結合エネルギーが小さくなる。
【0043】
しかしながら驚くべきことに、式(II−A)の化合物は、従来技術の化合物(cod)PtMeよりも良好な揮発性を有しながら同時に室温でより安定であることが実験により見出された。
【0044】
具体的には、H NMR(核磁気共鳴)研究により、式(II−A)の化合物の溶液は従来技術の(cod)PtMeよりも迅速には分解しないことが分かっている。これらのNMR研究を、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を使用して5×10−2Mの前駆体の重水素化クロロホルム溶液(乾燥又は脱気していない)を用いて行った。
【0045】
しかしながらこれらの研究により、置換基R1aが式(II−A)の化合物にあるようなHではなく、メチル基又はエチル基又はSiMe基である本発明の式(II)の有機金属化合物は酸素及び水に対する顕著な感受性を何ら示さないことも示された。
【0046】
このため有機金属白金錯体は、(C=C)−Pt−(C=C)角が60°及び70°である扁平な四角構造を有する場合、室温での安定性が増大すると共に、中程度の温度での揮発性が増大することが見出されている。
【0047】
このため本発明の有機金属白金化合物は、従来技術の化合物(cod)PtMeよりも保存に対する高い安定性を有する。
【0048】
具体的には、窒素下、室温で6日間保存した後でも、式(II−A)の化合物のうちの5%しか分解しなかった。しかしながら、式(II−A)の化合物をこの期間光から保護して保存した場合、分解を検出することはできなかった。
【0049】
同じ条件下において、従来技術の前駆体化合物(cod)PtMeのうちの50%が分解した。
【0050】
本発明の化合物の特性に対する、ノルボルナジエンリガンドへの置換基の導入の影響を、有機金属化合物の性質を観察することにより、及びプロトンNMR分光法により評価した。
【0051】
これによると、白金と結合したリガンド(R及びR)がメチルである場合、式(II−A)の化合物は式(II−B)の化合物(それ自体が式(II−C)の化合物よりも安定である)よりも安定である。
【0052】
7位の炭素(架橋C)上の水素をMe基又はEt基で置換した置換7−ノルボルナジエン、例えば化合物(II−E)及び化合物(II−F)に関して、これらの基の存在により、白金と結合した2つのCH基の立体相互作用(前駆体の安定性を限定する)とは全く関係なく、分子の立体体積が増大することが見出された。結果として、良好な安定性を保ちながら同時に、前駆体の揮発性が増大し、その融点が低減する(通例、液体前駆体が好ましい)。
【0053】
白金と結合した置換基、すなわちR及びRの特質も本発明による有機金属化合物の安定性に影響を与える。
【0054】
このため、R及びRの両方がエチルを表す場合、得られた化合物は、R及びRの両方がメチルを表す化合物よりも、同じ置換又は非置換ノルボルナジエンリガンドに関して安定性が低い。
【0055】
しかしながら、本発明による化合物は全て、従来技術の化合物(cod)PtMeよりも大幅に安定性が高い。
【0056】
さらに、本発明の有機金属白金錯体は中程度の温度で揮発性が高い。
【0057】
式(II)の化合物を作製する2つの異なるプロセスを開発した。これらのプロセスはそれぞれ本発明の主題を構成している。しかしながら、式(II)の化合物を、特にAppleton T.G. et al., Journal of OrganometallicChemistry, 303, 1986, 139-149で説明されるもののような従来技術の既知のプロセスを適用することによっても調製することができる。
【0058】
本発明による有機金属化合物(II)を作製する第1のプロセスを以下のスキーム2に示す。
【0059】
【化6】

【0060】
このプロセスは、プロトン性媒体中におけるハロゲン化物塩AXの存在下での上で規定のような式(I)のリガンドとKPtClとの反応の第1工程を含む。XはCl、Br及びIから選択される。Aは例えば、K、Na、Ag及びNHから選択することができ、好ましくはX=Iである。媒体は単純に水又はメタノール、エタノール、プロパノール若しくはブタノール等のアルコール、酢酸水溶液等の酸、又はこれらの溶媒の混合物であり得る。第2工程では、このようにして得られた化合物を式RMの有機金属化合物及び/又は式RM’の有機金属化合物(式中、R及びRは上で規定のようなものであり、M、M’は金属原子である)と反応させる。
【0061】
好ましくはこのプロセスでは、ハロゲン化物塩AXはKIである。
【0062】
また好ましくは、式RM及び/又は式RM’では、金属M及び/又は金属M’はLi、Na、Mg、Al及びSnから選択され、プロトン性媒体は水とsec−プロパノールとの混合物である。
【0063】
最も好ましくは、式RM又は式RM’では、金属M及び/又は金属M’はリチウム(Li)である。
【0064】
好ましくは、KPtCl及びノルボルナジエン誘導体を実質的に等モル量導入する。有利には、このプロセスの第1反応工程を、試薬KPtCl及びノルボルナジエンに対して過剰な塩AX、有利には試薬KPtCl及びノルボルナジエンに対して3モル当量〜5モル当量の塩AXの存在下で実施する。
【0065】
本発明の有機金属化合物(II)を作製する別のプロセスを以下のスキーム3で説明する:
【0066】
【化7】

【0067】
この一工程プロセスは、極性非プロトン性溶媒中において室温で、上で規定のような式(I)のリガンドを、KPtCl並びに式RMの有機金属化合物及び/又は式RM’の有機金属化合物(式中、R及びRは上記の式(II)の化合物で規定のようなものであり、M、M’は金属から選択される)と反応させることにある。
【0068】
好ましくはこの他のプロセスでは、極性非プロトン性溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類及びクロロホルム又はジクロロメタン等のハロゲン化溶媒から選択され得る。式RM及び/又は式RM’では、金属M又は金属M’は有利にはリチウム(Li)である。ハロゲン化物塩タイプの触媒AX(上と同じ定義を有する)、例えばKIを有利に使用することができるが、その存在は必須という訳ではない。
【0069】
これらの2つのプロセスは、本発明の新規の分子に適用することができる従来技術の既知のプロセスに比べて、非常に単純であり、良好な収率を有し、このため容易に工業化することができるという利点を有する。
【0070】
本発明の別の主題は、支持体上に白金膜又は白金粒子を蒸着する方法であって、支持体上への上で規定のような少なくとも1つの前駆体に由来する、特に式(II)の化合物に由来する白金の化学蒸着工程を少なくとも1つ含む、方法である。
【0071】
化学蒸着は少なくとも2つの工程を含む:安定性に影響を与えない条件下での前駆体の気化の第1工程、及び支持体上での前駆体の白金への分解の第2工程。
【0072】
室温で液体若しくは固体であるかにかかわらず純粋な前駆体化合物、又は溶媒に溶解した前駆体化合物の気化を行うことが可能である。
【0073】
本発明の方法を行うのに使用することができる溶媒の中で、好ましい溶媒は、通常の圧力条件下において室温で及び最大約200℃で液体であり、前駆体又は支持体のいずれとも反応せず、酸化に耐性がある有機化合物である。例としては、環状炭化水素溶媒、例えばシクロヘキサン若しくはテトラヒドロフラン、及びメシチレン、キシレン若しくはトルエン等の芳香族溶媒、又は代替的にはn−オクタンが言及され得る。
【0074】
前駆体が有機液体中の溶液形態で使用される場合、溶液の前駆体濃度は有利には10−3mol/l以上である。前駆体の非常に薄い溶液を使用する場合、白金粒子の不連続蒸着物の形成を促し、より高い濃度は連続膜の形成を促進する。前駆体溶液の希釈は形成される微結晶のサイズにも影響を与える。支持体上に白金層を蒸着する方法を実施している間、(II)等の前駆体を含有する組成物を気化装置に送り、この装置を介して、高温で蒸着チャンバー(白金層が蒸着される支持体を含有する)に導入する。例えば、ガスを(II)等の前駆体化合物の入ったリザーバ中に通気し(bubbled)、このガスにより前駆体化合物が気相に混入される。
【0075】
通常、気化装置に達する前には、組成物は室温でリザーバ内に保持される。(II)等の前駆体化合物の気化を当業者に既知の様々な装置を用いて行うことができる。例えば、「純粋な形態又は溶液形態で液体前駆体を注入及び蒸発させるためのInJectシステム(InJect System for injecting and evaporating liquid precursors in pure or solution form)」という名称でJipelec社から販売されているT. Y. Chen et al., Chem. Mat. 2001, 13, 3993に記載の装置が言及され得る。
【0076】
前駆体化合物が液体である場合、又は前駆体化合物が液体中にある場合、国際公開第2007/088292号に記載のようなCVDによる有機金属の液体注入プロセス(DLI−MOCVD)を、該前駆体化合物を蒸着チャンバーに導入するのに使用することができる。DLI−MOCVDの原理は標準的なCVDシステムから派生している。反応種は液体形態で提供され、注入器により高圧で注入される。このプロセスにより、生産パラメーター(注入する生成物の質量、注入頻度、前駆体の溶媒、及び蒸着時間)に応じて粒子の形態を制御することが可能であり、これにより産業規模での実施が容易になる。
【0077】
このため前駆体化合物は、上で言及された方法のいずれかにより蒸着チャンバーに導入される。蒸着が行われる支持体又は基板はこのチャンバー内に存在する。それから前駆体化合物を分解し、支持体上にその蒸着をもたらす。
【0078】
白金層が蒸着される基板は、高いTc(臨界温度)を有する超伝導(supraconductive)物質であるセラミック、特に高密度セラミック又は多孔質セラミック、耐熱性ポリマー、ガラス、MgO、ペロブスカイト、例えばLaAlO、Ni、Si、AsGa、InP、SiC及びSiGeであり得る。白金層を第1の層として又は複数のレベルの金属処理(metallization)を必要とする電子機器での第xの金属処理層として上記支持体上に蒸着することができる。xは2以上の整数である。支持体は上述される物質それ自体のうちの1つにより、又は代替的には1つ又は複数の中間層を有するこれらの物質のうちの1つにより構成され得る。中間層の例としては、金属膜(例えばNi膜)、有機層(例えばポリマー材料層)、例えばTiN、TiSiN、Ta、TaN、TaSiN、WN及びWSiNから選択される少なくとも1つの物質により構成される拡散層が言及され得る。分散液の蒸着の場合、機械的強度のための役割を果たし、少なくとも1つの導電性の微孔性層(拡散層としても知られる)を備える支持体が選択される。例えば、有利には支持体は、炭素含有微孔性表面層(蒸着が行われる拡散層の多孔質炭素)を備える繊維製品から選択され、例えばカーボン、グラファイトから作製され、又はナノチューブから形成される。カーボンはVulcan XC 72タイプ又はShawanaganタイプであり得る。
【0079】
基板の活性化を含む様々な条件により、チャンバーの壁上への蒸着に比べて基板上への蒸着が促進される。
【0080】
特にALD(原子層蒸着)プロセスにより、前駆体の分解を促進する反応性ガスを蒸着チャンバーに注入する。
【0081】
本発明によれば、チャンバーを、選択的には(preferentially)10−3mbar〜1000mbarの圧力下で
例えばN、Ar、Heから選択されるガスを用いて中性雰囲気下に、又は
窒素等の中性ガスと任意で混合した酸素(酸素は有機物質の燃焼を促進する利点を有する)の雰囲気下に(米国特許出願公開第2002/0000591号、米国特許第6750110号)、又は
分解を促進し、微結晶のサイズ及び形状に影響を与える水素雰囲気下に(米国特許第5130172号)、又は
オゾン雰囲気下に、
置くことができる。
【0082】
基板を活性化するための当業者に既知のCVDプロセスのいずれか、及び特に熱活性化、レーザー誘起化学蒸着(LCVD)(特許第8020870号公報)、UV誘起化学蒸着(米国特許第6204178号、米国特許出願公開第2006/0014367号)、プラズマ誘起化学蒸着(PECVD)、イオンビーム支援化学蒸着(IACVD)(米国特許第5104684号)、電子ビーム誘起化学蒸着(EBCVD)、又は流動床化学蒸着(FBCVD)を使用することができる。これらの方法は、それらの原理において、C. Thurier and P. Doppelt, Coord. Chem. Rev. 252, (2008) 155-169における実際の実施の形態と共に説明される。
【0083】
全ての場合において、コーティングされる基板の温度は前駆体の分解温度以上である。蒸着チャンバー内の温度は前駆体の気化温度以上であり、かつ前駆体の分解温度以下である。蒸着がプラズマの存在下で行われる場合、これは白金層を受けることを目的とする支持体がエバポレーターと同じ温度に維持されるのに十分である。プラズマの非存在下では、リアクターの壁上での白金の蒸着を避けるように、支持体はチャンバーよりも高い温度にあり、温度差が少なくとも20℃に等しく、好ましくは少なくとも50℃に等しいのが好ましい。
【0084】
前駆体の気化温度及び分解温度を実験部に示されるようにそれぞれの化合物に対して容易に決定することができる。
【0085】
核形成を促進する工程を少なくとも1つ、及び膜の成長を促進する工程を少なくとも1つ含む逐次蒸着を想定することができる(米国特許出願公開第2002/0000591号)。
【0086】
蒸着物の質をより良好に制御するために幾つかの活性化方法を組み合わせることができる。
【0087】
支持体上に蒸着する白金層の厚さは、前駆体組成物、例えば(II)の濃度、気化装置を通過中のこの組成物の流速、気化時間、並びにリアクター中及び支持体上の各温度に応じて変わる。通例、単離粒子及び薄層を得るのには、余り濃縮されていない組成物及び/又はより低い流速を用い、厚い層を得るのには、より濃縮された組成物及び/又はより高い流速を用いる。「薄層」という用語は一般的に、核形成層として知られる50nm以下の厚さを有する層を意味する。「厚い層」という用語は一般的に、50nm〜10μmの厚さを有する層を意味する。
【0088】
厚い層を得るために、飽和に近い前駆体濃度で、高い溶解係数を有する溶媒中における純粋な生成物又は組成物を使用することが可能である。気化を妨げる影響がある前駆体の再沈殿を避けるために、濃度は飽和値よりも低く維持しなければならない。
【0089】
薄層を得るために又は白金の分散のために、純粋な生成物、又は前駆体の溶解度がより低い溶媒を使用することができる。前駆体の溶媒ではなく前駆体に対して化学的に不活性である有機液体も本発明による前駆体組成物を希釈するのに使用することができる。
【0090】
蒸着速度が低くなりすぎた場合、表面上に吸着される前駆体の有機残渣を分解するために、本発明の方法が供給される試薬ガス(O、HO、NO、O等)の量を評価するセンサーの使用を含むことも想定することができる(米国特許出願公開第2003/0049932号)。
【0091】
CVDによる白金層の蒸着のための本発明の方法の使用により、蒸着を受ける基板との良好な接着を示す良質の蒸着物を得ることが可能になる。
【0092】
この方法により、特に、この同じ支持体の他の部分上での白金の蒸着を避けながら、支持体の或る特定の領域上に白金を選択的に蒸着させることが可能になる(米国特許出願公開第2002/0090450号)。
【0093】
結論として、本発明の有機金属化合物により、酸素及び湿気に対する良好な安定性、並びにまた室温での、好ましくは暗所での保存に対する良好な安定性を示す白金膜又は白金粒子の分散液の作製が可能になる。それらの分解温度は、形成される白金の顕著な触媒効果のために250℃で白金膜を蒸着させるのに十分低い。得られた膜は非常に高い純度を有する。
【0094】
このため本発明の化合物により得られた膜は優れた触媒特性を有する。
【0095】
本発明の主題は、上で記載のような少なくとも1つの前駆体、特に(II)からの白金の化学蒸着工程を少なくとも1つ含む、電子部品を製造する方法でもある。
【0096】
本発明の主題は、上で記載のような少なくとも1つの前駆体、特に(II)からの白金の化学蒸着工程を少なくとも1つ含む、支持白金ベースの固体触媒を製造する方法でもある。
【0097】
本発明の方法は、より具体的には燃料電池の製造に関する。この場合、単離粒子の形態での白金の蒸着が好ましい。
【0098】
本発明の方法は、センサー、最新型マイクロプロセッサー、強誘電メモリ、発光デバイス、接合部(junctions)、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)、FeRAM(強誘電ランダムアクセスメモリ)等の装置においてマイクロエレクトロニクスで使用することができる電極の製造にも関する。この場合、連続膜の形態での白金の蒸着が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来技術の前駆体と比較した、本発明による式(II−A)、式(II−B)及び式(II−C)の前駆体に関する熱重量分析(TGA)により得られた曲線を示す図である。
【図2】従来技術の前駆体と比較した、本発明による式(II−A)、式(II−B)及び式(II−C)の前駆体に関するアイリンググラフを示す図である。
【図3】本発明による式(II−A)の化合物を用いて得られた白金膜のX線誘起光電子分光法(XPS)により得られたスペクトルを示す図である。
【図4】本発明による式(II−B)の化合物を用いて得られた白金膜のX線誘起光電子分光法(XPS)により得られたスペクトルを示す図である。
【図5】本発明による式(II−A)の化合物を用いて得られた膜の走査電子顕微鏡法(SEM)により撮影した写真である。
【図6】本発明による式(II−B)の化合物を用いて得られた白金膜の走査電子顕微鏡法(SEM)により撮影した写真である。
【図7】白金前駆体II−E(Pt81)、白金前駆体II−A(Pt54)及び白金前駆体(MeCp)PtMeの比較のために熱重量分析(TGA)(Ar流速:10sccm、10℃/分)により得られた曲線を示す図である。実験部
【実施例】
【0100】
実施例1:式(II−B)の化合物:(Etnbd)PtMeの一工程合成
【0101】
【化8】

【0102】
830mgのKPtCl、ナトリウム及びベンゾフェノンに対して蒸留したTHF 20mL、及びエチルノルボルナジエン600μL(510mg)をアルゴン下で乾燥シュレンク管に入れる。室温で、1.6MのMeLi 7mLを添加する。室温で24時間、激しい攪拌を維持する。
【0103】
0℃で、ジエチルエーテル30ml、その後500mgのNHClの蒸留水溶液20mlを添加する。混合物を抽出し、有機相を水20mLで2回洗浄する。エーテル相をMgSOで乾燥し、スパチュラ1杯分の(spatula-full)活性炭を添加する。得られた混合物を濾過し、溶媒を蒸発させる。
得られた質量:574mg(褐色から無色の液体)。
収率:83%。
物理化学的特性評価:
【0104】
【化9】

【0105】
H NMR(400.132MHz,CDCl):
δ(ppm):5.12(tt,1H,20Hz,4Hz);4.95(tt,1H,19Hz,4Hz);4.69(td,1H,20Hz,3Hz);3.94(s,1H);3.81(s,1H);2.22(m,2H);1.59(q,2H,6Hz);1.13(t,3H,6Hz);0.73(t,3H,44Hz);0.65(t,3H,44Hz)
13C NMR(100.622MHz,CDCl):
δ(ppm):111.8;88.4;84.8;73.1;52.3;50.0;25.1;12.6;3.45。
実施例2:式(II−B)の化合物のエチルノルボルナジエンリガンドの合成
【0106】
【化10】

【0107】
ナトリウム及びベンゾフェノンに対して蒸留したTHF 100mLをアルゴン下で250mL容の乾燥三つ口フラスコに入れ、その後7.2gのtBuOK及び8mLのノルボルナジエンを添加する。ノルボルナジエンの添加により、tBuOKが溶解される。混合物を−80℃まで冷却し、1.6Mのn−BuLi 20mLを30分かけて滴下する。得られた混合物を−40℃まで温め、この温度で30分間維持する。混合物を−80℃に戻し、0℃でNHCl水溶液を滴下する。得られた混合物を室温までゆっくり温め、一晩攪拌する。
【0108】
水100mLを添加し、混合物をジエチルエーテル100mLで2回抽出する。有機相を水100mLで2回洗浄する。得られた相をMgSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させる。生成物をわずかに減圧下で蒸留する。
得られた質量:2.4g(無色の液体)
収率:62%
物理化学的特性評価:
【0109】
【化11】

【0110】
H NMR(400.132MHz,CDCl):
δ(ppm):6.76(s,2H);6.10(s,1H);3.49(s,1H);3.27(s,1H);2.20(m,2H);1.96(dd,2H,14Hz,6Hz);1.00(t,3H,7.5Hz)。
13C NMR(100.622MHz,CDCl):
δ(ppm):160.7;144.0;142.4;132.2;73.4;68.0;53.5;50.0;24.7;11.8。
実施例3:式(II−A)の化合物:(nbd)PtMeの二工程合成
工程1:(nbd)PtIの合成
【0111】
【化12】

【0112】
20gのKPtClを丸底フラスコ内で秤量し、水220mLを添加し、溶解が完了するまで混合物を攪拌する。33gのKIを添加し、混合物を室温で15分間攪拌する。それから225mgのSnCl・2HO、イソプロパノール120mL及びノルボルナジエン15mLを添加する。得られた混合物を室温で40時間攪拌する。真空下でロータリーエバポレーターによりイソプロパノールを蒸発させることにより媒体を濃縮する。残渣を焼結炉で濾過し、水、及びその後冷メタノールで洗浄する。生成物を数時間真空下で乾燥させる。
質量:26.6g、収率:99%。
工程2:(nbd)PtMeの合成
【0113】
【化13】

【0114】
10gの(nbd)PtIを250mL容の三つ口フラスコに入れ、その後蒸留EtO 140mLを添加する。−80℃(ドライアイスアセトン浴)で、1.6MのMeLi 25mLを滴下する。槽を−20℃まで(約3時間かけて)ゆっくりと温めた後、アセトン浴を1時間取り外す。
【0115】
氷冷NHCl水溶液(水200mL中、20g)を大きいビーカー内で調製し、そこに反応媒体を注ぐ。沈降により相を分離させ、有機相を水150mLで2回洗浄する。得られた相をMgSOで乾燥させ、スパチュラ一杯分の骨炭を添加し、得られた混合物を攪拌及び濾過し、溶媒を蒸発させる。非常に淡い黄色の固体が得られる。
【0116】
生成物を、エーテル/ペンタン混合物(1:1)で溶離する、アルミナのカラムでのクロマトグラフィによって精製することもできる。昇華工程によっても優れた純度がもたらされる。
質量:5.757g、収率:98%。
物理化学的特性評価:
【0117】
【化14】

【0118】
H NMR(400.132MHz,CDCl):
δ(ppm):5.00(t,4H,20Hz);3.96(s,2H);1.55(s,2H);1.50(s,2H);0.67(t,6H,44Hz)
13C NMR(100.622MHz,CDCl):
δ(ppm):87.3(t,23Hz);71.8(t,22Hz);48.1(t,20Hz);4.0(t,406Hz)。
実施例4:式(II−E)及び式(II−F)の化合物:(7−Me−nbd)PtMe及び(7−Et−nbd)PtMeの合成
置換7−ノルボルナジエンの合成のための出発物質
リガンド(7−Me−nbd)及びリガンド(7−Et−nbd)をこれまでに記載の方法に従って合成することができる(P. R. Story, S. R. Fahrenholtz, Journal of Organic Chemistry, 1963, 28, 1716-1717)。
【0119】
出発物質として使用される1,2−ビス(p−トリルスルホニル)エテン及び1,2−ビス(p−トリルメルカプト)エテンをこれまでに記載の方法に従って合成した(W. E. Truce, R. J. McManimie, J. Am. Chem. Soc., 1954, 76, 5745-5747)。
新規の置換7−ノルボルナジエンの調製
置換7−ノルボルナジエンを2つの工程で合成した:(i)置換シクロペンタジエンと1,2−ビス(p−トリルスルホニル)エテンとのディールス・アルダー反応、及び(ii)塩基性媒体中でのNa−Hgアマルガムによるアニオン種トリルSO−の還元的脱離。
【0120】
【化15】

【0121】
メチルシクロペンタジエン(MeCp)から調製されたスルホン化中間生成物
0.5gのジ−p−トルエンスルホニルエチレン(1.5mmol)及びトルエン20mLを100mL容の三つ口フラスコに入れる。二量体(MeCp)から蒸留により新たに分離された、3.0g(37mmol)のメチルシクロペンタジエンのトルエン溶液10mLを、加熱還流されるこの溶液に滴下する。この反応混合物を還流下で10分間、及び室温で3時間攪拌する。析出した無色の固体生成物(0.45g)を濾過により回収する。
収率=72.5%(ジ−p−トルエンスルホニルエチレンベースで)。
融点=248℃〜250℃。
(TLC:CHCl/MeCOOEt溶媒=9/1:Rf=0.68)
H NMR(400.132MHz,CDCl):δ(ppm)7.82(m,PhのCH)、7.31(m,PhのCH)、6.35(CH=)、3.17(CpのCH)、2.43(PhのCH)、2.15(CpのCH)、2.91(CH−SOTs)、1.23(CpのCH)。
エチルシクロペンタジエン(EtCp)から調製されたスルホン化中間生成物
反応条件は、室温での攪拌時間が3時間ではなく4時間であることを除いて、上記のMeCpが出発物質である場合に使用される条件と同様である。
【0122】
得られた生成物は白色固体である:収率=46.5%。
融点:216℃〜220℃。
H NMR(400.132MHz,CDCl):δ(ppm)7.88(PhのCH)、7.31(PhのCH)、6.02(CH=)、2.94(CpのCH)、2.49(PhのCH)、2.0〜1.8(CpのCH)、1.12(t,J=7.5Hz,EtのCH)、0.77(t,7.5Hz,EtのCH)。
p−トリルスルホニルの除去のための反応
【0123】
【化16】

【0124】
3mmolのこれまでに合成された生成物(ディールス・アルダー反応により得られた生成物)のうちの1つ、及び6.0gのNaHPOのMeOH溶液80mLを250mL容の丸底フラスコに入れる。この混合物をアルゴン下に置き、攪拌する。次に、10gのNa−Hgアマルガム(5% Na)の添加後、懸濁液をAr下、室温で18時間攪拌する。アマルガムをデカンテーションにより除去する。それから白色の析出物を含有する無色の溶液を得て、それに脱イオン水100mLを添加する。それから懸濁液を濾過する。次いで飽和NaCl溶液40mLを濾液に添加し、新たに形成された析出物を濾過により除去する。その後、濾液をペンタン50mLで3回抽出する。得られた有機相を飽和NaCl水溶液(30mL)で3回洗浄した後、MgSOで乾燥させ、濾過する。それからペンタンをロータリーエバポレーターで除去し、期待された無色の液体生成物を回収する。
特性評価:
7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジエン(Me−nbd)
収率=37.5%
GC−MS:保持時間=1.14分、m/z=105、91、79、65、51
H NMR(400.132MHz,CDCl):δ(ppm)5.54(t,J=4Hz,4×CH=)、3.10(s,2×−CH)、2.15(m,1×−CH)、1.21(s,1×−CH
7−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジエン(Et−nbd)
収率=35%
H NMR(400.132MHz,CDCl):δ(ppm)5.13(4×CH=)、2.94(2×CH)、2.0(1×CH架橋)、1.13(1×エチルのCH)及び0.78(1×エチルのCH)。
白金前駆体(II−E)及び白金前駆体(II−F)の合成
化合物(II−E)及び化合物(II−F)を上記の実施例3に記載のプロトコルに従って合成した。
(7−Me−nbd)PtI
収率=60.2%。
128℃〜130℃の融点を有する固体の黄色生成物
H NMR(400.132MHz,CDCl):δ(ppm)5.66(t,J=4Hz,4×CH=)、3.10(s,2×−CH)、2.15(m,1×−CH)、1.21(s,1×−CH
(7−Et−nbd)PtI
収率=70.5%。
140℃〜142℃の融点を有する固体の黄色生成物。
H NMR(400.132MHz,CDCl):δ(ppm)5.35(4×CH=)、2.97(2×CH)、2.08(1×架橋のCH)、1.15(1×エチルのCH)及び0.70(1×エチルのCH)。
(7−Me−nbd−)PtMe(II−E)
収率=60%
およそ−15℃の融点を有する黄色液体。
H NMR(400.132MHz,CDCl):δ(ppm)5.08(t,J=4Hz,4×CH=)、3.10(s,2×−CH−)、2.05(m,1×−CH−)、1.21(s,1×nbd−Meの−CH)、及び0.717(s,2×−CH)ppm
(7−Et−nbd)PtMe(II−F)
およそ−15℃の融点を有する黄色液体。
実施例5:式(II−C)の化合物:(TMSnbd)PtMeの物理化学的特性評価
化合物(II−C)を実施例1のプロトコルに従って調製した。
【0125】
【化17】

【0126】
H NMR(400.132MHz,CDCl):
δ(ppm):5.11(td,1H,21Hz,4Hz);4.90(tt,1H,22Hz,4Hz);4.68(tt,1H,20Hz,4Hz);3.72(s,1H);3.58(s,1H);1.50(dd,2H,53Hz,9Hz);0.59(t,3H,46Hz);0.53(t,3H,46Hz);0.01(s,9H)
13C NMR(100.622MHz,CDCl):
δ(ppm):154.6(s);144.57(s);143.7(s);101.3(t,20Hz);99.4(t,24Hz);91.3(t,25Hz);87.4(25Hz);74.8(t,25Hz);53.8(t,25Hz);51.6(t,25Hz);7.3(td,409Hz,163Hz);0(s)。
実施例6:揮発性及び安定性に関する情報を推定するための本発明の化合物のTGAによる研究
原理:
本発明の有機金属化合物に関してTGA研究を行い、文献の生成物のものと比較した。
【0127】
全ての実験を10℃/分の温度上昇勾配でアルゴン下で行った。
【0128】
観察される質量の損失は、前駆体の揮発及び前駆体の(部分的な又は全体的な)分解、その後の有機残渣の迅速な蒸発に連帯的に起因する。
【0129】
前駆体の全体的な、すなわち全ての有機リガンド及び置換基の除去による分解中、これらのリガンド及び置換基はそれらの良好な揮発性のために即時に揮発することが推定され得る。このため観察される質量の損失は分解速度に直接的に関連する。部分的な分解中、リガンド残渣に由来する不揮発性炭素が白金バルクに残留し得る。質量損失の一部は、分解を伴わない前駆体の蒸発に関連し得る。
結果
得られた曲線を図1に示す。
【0130】
図1で見ることができるように、本発明の有機金属化合物の中で、従来技術の化合物MeCpPtMeは最もはっきりとした挙動を示す:温度が上昇すると、160℃で初期質量の2%に達するまで質量が実質的に指数関数的に減少する。このことはこの前駆体の非常に良好な揮発性だけでなく、前駆体の分解がこの温度まではごくわずかであることを実証している。
【0131】
それに比べて、従来技術の有機金属白金化合物(cod)PtMeの質量は初期質量の76%までしか減少しない。この値は概して前駆体に含有される白金の初期質量(58%)を超えたままである。そのため従来技術の前駆体(cod)PtMeはあまり揮発性ではなく、残りの固体は少なくとも24%の炭素を含有する。
【0132】
それに比べて、本発明の有機金属化合物は中程度の温度で炭素ベースの残渣を生成することなく分解する。
【0133】
具体的には図1は、本発明の式(II−A)の化合物の質量は白金の理論的質量(61%)よりも低い52%まで低減することを示す。このことは、この前駆体の良好な揮発性(その少なくとも18%が蒸発した)を実証し、低い炭素含有量を示す。
【0134】
本発明の式(II−B)の化合物に関しては、結果は式(II−A)の化合物で得られたものとほとんど同様であり、白金の理論的質量での56%に対して最終質量が51%であり、すなわち前駆体の少なくとも9%が蒸発した。
【0135】
式(II−C)の化合物に関しては、実験の終了時の質量は57%である。これは白金の初期質量(50%)を超えたままであり、このことにより、炭素及びケイ素の残渣への取り込みが実証される。
実施例7:化合物(II−A)及び化合物(II−B)の安定性の研究
驚くべきことに熱重量分析により、本発明による式(II−A)の有機金属化合物が室温だけでなく、従来技術の化合物よりも低い分解温度(分解速度が最も高い温度に相当する)でも最も安定であることが示された。
【0136】
しかしながら、本発明の有機金属化合物は全て、2つの異なるプロセスを示した複雑な分解速度プロファイルを有し、このプロセスはアイリング・ポランニー曲線をプロットすると明確に現れる。これらの曲線を図2に示す。図2で見ることができるように、特に(nbd)PtMe及び(Etnbd)PtMeで約140℃で質量の突然の損失が観察される。
【0137】
ゼロ次速度の場合、下記式が適用されるので、1/Tの関数としてLn(k/T)をプロットすることにより直線が得られるはずである:
【0138】
【数1】

【0139】
前駆体の蒸発プロセスによる質量の損失の場合、質量の損失に関する速度は同様の傾向に従うはずであり、純粋な物質の圧力に関する式は温度の指数関数と同様に関連する。純粋な物質に関して一般的に用いられる蒸気圧の式は例えば以下の通りである:
【0140】
【数2】

【0141】
そのため観察される質量の損失における前駆体の蒸発の要素は、曲線の全体的な外観に対してほとんど影響がないこととなる。
【0142】
分解せずに蒸発する従来技術の化合物MeCpPtMeで得られたアイリング・ポランニー曲線は実質的に直線傾向に従い、このことにより上述の近似値が正当であることが確認される。
【0143】
このプロットが実際に従来技術の前駆体(cod)PtMeの場合では直線を示す一方で、本発明の前駆体で得られたグラフは2つの異なる部分を示す:低温では直線、その後遷移温度超での速度の突然の上昇に対応して跳ね上がる。これらの2つのプロセスの存在により、新たな種の出現に関連する機構の変化が実証される。1つの説明としては、形成される白金固体がその後本発明の前駆体の分解の触媒として働くことであろう。曲線の「凸凹」形も不均一プロセスを示唆する。
【0144】
重要なことは、この「触媒性」分解は従来技術の他の前駆体では観察されないことであり、このことは本発明の前駆体で形成される白金の特定の以下の性質を示唆する:純度、結晶のサイズ、及び/又は例えばcodリガンドでは観察されるが、本発明のリガンド(I)では観察されない阻害効果。
実施例8:本発明による式(II−A)及び式(II−B)の化合物を用いた白金の化学蒸着
白金の蒸着を、「純粋な形態又は溶液形態で液体前駆体を注入及び蒸発させるためのInJectシステム」という名称でJipelec社から販売されている液相から開始する気化システムを備えた実験化学蒸着機を使用して行った。試料をオーブン内に入れたガラスベルジャーの中ほどでSiO/Si支持体(100nmのSiOで覆われた1×1cmサイズの単結晶シリコン)上において加熱した。真空ラインを酸素トラップ及びポンプに接続した。ベルジャーに2つのガス注入口及び加圧型液体注入器が接続された予熱した蒸発チャンバーを取り付けた。トルエンを溶媒として選択し、0.1Mの前駆体の溶液を作製して、この溶液を0.67mL/分の速度で気化させた。圧力を1mbarに維持した。2つのガス注入口はそれぞれ、40sccmのN及び15sccmのOを送達した。温度は蒸発チャンバーで80℃及びオーブンで100℃に設定した。蒸着速度は温度に応じて変わり、好適な厚さの蒸着物を得るためには300℃の基板温度が好ましかった。
実施例9:蒸着速度の研究
実施例6で観察される現象は、同一の条件下で(cod)PtMeで観察された蒸着速度よりも顕著に優れた、本発明の前駆体(nbd)PtMe及び(Etnbd)PtMeで得られた蒸着速度により確認される。
【0145】
(cod)PtMeと(nbd)PtMeとの間の反応性の違いが、前駆体の分解中に放出されたリガンドと形成される白金固体との強い相互作用による顕著な阻害効果に由来するものであったかを確認するために、以下の溶液で得られた蒸着速度を比較した:
前駆体(cod)PtMe(従来技術)、
前駆体(nbd)PtMe(本発明の式(II−A)の化合物)、
前駆体(nbd)PtMe+5当量の遊離codリガンド、
前駆体(nbd)PtMe+5当量の遊離nbdリガンド。
【0146】
同一の蒸着条件下で、すなわちトルエン中の0.1Mの溶液20mLを用いて、80℃で気化器により、100℃でオーブンにより、及び300℃で試料を30分かけて気化した。N 40sccmとO 15sccmとの混合物であるベクターガスも使用した。全圧は約5mbarであった。得られた速度は以下の通りである:
前駆体(cod)PtMe: 0.3nm/分
前駆体(nbd)PtMe: 2.0nm/分
前駆体(nbd)PtMe+5当量の遊離codリガンド: 0.83nm/分
前駆体(nbd)PtMe+5当量の遊離nbdリガンド: 0.83nm/分
これらの結果は、遊離リガンドの添加が膜の成長に対して阻害効果を有することを示す。これらの結果は、遊離リガンドのこの影響が遊離codリガンド及び遊離nbdリガンドの場合において同一であることも実証する。そのため反応性の差異は遊離リガンドと白金固体との相互作用に起因し得ない。
【0147】
このためおそらく反応性の差異は、形成される白金微結晶の特性、例えば高い純度に関連する。
実施例10:走査電子顕微鏡法及びX線誘起光電子分光法の分析による特性評価
得られた白金膜が非常に純粋であることが図3及び図4から、及び得られた白金膜が非常に均一であることが図5及び図6から分かる。
【0148】
得られた膜の良好な純度が得られた膜のXPS測定により実証され、これにより非常に低い炭素含有量が実証される。
【0149】
式(II−A)の化合物で得られたスペクトルを図3に示し、式(II−B)の化合物で得られたスペクトルを図4に示す。
【0150】
斜入射X線による表面分析により、膜が直径6nm〜7nmの小さい微結晶から構成されることも実証された。
【0151】
これらの結果により、本発明の化合物又は前駆体は酸素及び湿気に対して良好な安定性を有することが示される。それらの熱安定性自体が金属の周りの立体的なかさ高さに応じて変わる。この分解温度は、形成される白金の顕著な触媒効果のために250℃で膜を蒸着させるのに十分低い。
【0152】
重要なことに、得られた膜は非常に良好な純度を有し、炭素は形成される膜にはほとんど取り込まれない。具体的には、図3に示された式(II−A)の化合物を用いて得られた白金膜、及び図4に示された式(II−B)の化合物を用いて得られた白金膜のX線誘起光電子分光法により得られたデータにより、膜は酸素を含有するが実質的に炭素を含有しないことが示される。
【0153】
白金膜は非常に純粋であり、おそらくはPtOの形態の結合酸素を少量しか含有しない。具体的には、Oピークで観察されるエネルギーは表面とバルクとで異なる。炭素は表面にのみ存在し、これはおそらくは空気に曝されるためである。
【0154】
図5及び図6に見られるように、得られた膜は非常に均一でもある。
【0155】
前駆体として式(II−A)の化合物を用いて得られた白金膜の走査電子顕微鏡法により撮影した写真である図5は、ここでは厚さ60ナノメートルの得られた膜が平滑かつ連続的であることを示す。
【0156】
前駆体として式(II−B)の化合物を用いて得られた膜の走査電子顕微鏡法の写真である図6は、この場合では厚さ80ナノメートルの得られた膜も平滑かつ連続的であるが、式(II−A)の化合物で得られた膜よりも平滑性及び連続性が低いことを示す。
実施例11:II−AとII−Dとの比較
空気中の安定性
室温で黄色液体である前駆体II−Eは、室温の空気中で1週間分解せずに保存することができるのでII−Aよりも空気中で安定である。
熱安定性
図7により説明される熱重量分析(10sccmのアルゴン流速、10℃/分)において、前駆体II−Eの分解は、II−Aの約145℃及び(MeCp)PtMeの約155℃とは異なり、黒色粉末の形態で白金を形成しながら約120℃以上で観察される。前駆体の分解温度の低下は、熱感受性支持体上への蒸着に関する或る特定の用途にとって重要であることが判明し得る。
揮発性
【0157】
【表1】

【0158】
上記の表1は、3つの異なる前駆体:(MeCp)PtMe、II−A及びII−Eに関して5質量%、10質量%及び50質量%の前駆体が蒸発する温度を与える。(MeCp)PtMeに関するT5%及びT10%の値はII−A及びII−Eに関する値よりも顕著に低い。これは(MeCp)PtMeの揮発性がノルボルナジエンファミリーの2つの前駆体よりずっと低いことを示す。ノルボルナジエンファミリーの2つの前駆体に関して、II−EはII−Aよりも揮発性が高いと考えられ、これはT5%はこれら2つの前駆体で同程度であるが、II−Eに関するT10%がII−Aに関するT10%よりも低いためである。
【0159】
このためII−Eは白金のMOCVD蒸着のための前駆体として非常に有望である。室温で液体であるこの前駆体は空気中で非常に安定であり、かつ揮発性である。さらに、II−A及び市販の前駆体(MeCp)PtMeより熱「感受性」である。結果として、この前駆体を用いてより低い温度で白金蒸着物を得ることを望むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの有機金属白金化合物を使用する支持体上への白金の化学蒸着工程を少なくとも1つ含む、支持体上に白金膜又は白金粒子を蒸着する方法であって、
前記有機金属白金化合物が、少なくとも2つの非隣接のC=C二重結合を含む環状構造のリガンドを含み、
前記有機金属白金化合物が、前記白金が前記リガンドのそれぞれのC=C二重結合と結合し、60°〜70°の(C=C)−Pt−(C=C)角を形成する、扁平な四角構造を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記(C=C)−Pt−(C=C)角が64°〜66°であり、有利には約65°に等しい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リガンドが以下の式(I):
【化1】

(式中、
nは1及び2から選択される整数を表し、
n=1の場合、R1i、R1jはそれぞれただ1つの基を表し、n=2の場合、R1i及びR1jはそれぞれ2つの同一の又は異なる基を表し、
1a、R1b、R1c、R1d、R1i及びR1j(同一であっても又は異なっていてもよい)は、H、ハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cトリアルキルシラン基、C〜Cアルケニル基、1つ又は複数のOH官能基を有するC〜Cアルキル基から選択される)に相当する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記有機金属白金化合物が以下の式(II):
【化2】

(式中、
nは1及び2から選択される整数を表し、
n=1の場合、R1i及びR1jはそれぞれただ1つの基を表し、n=2の場合、R1i及びR1jはそれぞれ2つの同一の又は異なる基を表し、
1a、R1b、R1c、R1d、R1i及びR1j(同一であっても又は異なっていてもよい)は、H、ハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cトリアルキルシラン基、C〜Cアルケニル基、及び1つ又は複数のOH官能基を有するC〜Cアルキル基から選択され、
及びRはそれぞれ独立して、直鎖C〜Cアルキルから選択される)に相当する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下の条件の1つ又は複数を満たす、請求項3又は4に記載の方法:
n=1、
1b、R1c、R1d及びR1jが全て同一であり、かつHを表し、
1aがH、Cl、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、トリメチルシラン、3−プロペニル、エタノールから選択され、
1iがH、メチル、エチルから選択される。
【請求項6】
及びRが同一であり、かつメチル、エチルから選択される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記有機金属白金化合物が、以下のリスト:
【化3】

から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記支持体が、高いTcを有する超伝導物質、セラミック、耐熱性ポリマー、ガラス、MgO、ペロブスカイト、例えばLaAlO、Ni、Si、AsGa、InP、SiC、SiGe、炭素含有微孔性表面層を備える繊維製品から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記支持体が、金属膜、有機層、例えばTiN、TiSiN、Ta、TaN、TaSiN、WN、WSiNから選択される少なくとも1つの物質により構成される拡散層、カーボン、グラファイト及びナノチューブから選択される1つ又は複数の中間層を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持体を、
中性雰囲気下で、又は
任意で中性ガスと混合した酸素雰囲気下で、又は
水素雰囲気下で、又は
オゾン雰囲気下で、
チャンバーに入れる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記支持体を、熱活性化、レーザー活性化、UV活性化、プラズマ活性化、イオンビーム活性化、電子ビーム活性化から選択される少なくとも1つの活性化に供する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の白金の化学蒸着工程を少なくとも1つ含む、電子部品を製造する方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の白金の化学蒸着工程を少なくとも1つ含む、支持白金ベースの固体触媒を製造する方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の白金の化学蒸着工程を少なくとも1つ含む、燃料電池を製造する方法。
【請求項15】
以下の式(II):
【化4】

(式中、
nは1及び2から選択される整数を表し、
n=1の場合、R1i及びR1jはそれぞれただ1つの基を表し、n=2の場合、R1iは2つの同一の又は異なる基を表し、
1a、R1b、R1c、R1d、R1i及びR1j(同一であっても又は異なっていてもよい)は、H、ハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cトリアルキルシラン基、C〜Cアルケニル基、及び1つ又は複数のOH官能基を有するC〜Cアルキル基から選択され、
及びRはそれぞれ互いに独立して、直鎖C〜Cアルキルから選択されるが、n=1、R1a=R1b=R1c=R1d=R1i=H、R=R=CHの場合を除く)に相当する有機金属白金化合物。
【請求項16】
以下:
【化5】

から選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
以下の式(II):
【化6】

(式中、
nは1及び2から選択される整数を表し、
n=1の場合、R1i及びR1jはそれぞれただ1つの基を表し、n=2の場合、R1i及びR1jはそれぞれ2つの同一の又は異なる基を表し、
1a、R1b、R1c、R1d、R1i及びR1j(同一であっても又は異なっていてもよい)は、H、ハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cトリアルキルシラン基、C〜Cアルケニル基、及び1つ又は複数のOH官能基を有するC〜Cアルキル基から選択され、
及びRはそれぞれ独立して、直鎖C〜Cアルキルから選択される)に相当する有機金属白金化合物を製造する方法であって、
スキーム2:
【化7】

に従って、プロトン性媒体中におけるハロゲン化物塩AXの存在下での式(I)のリガンドとKPtClとの反応の第1工程と、このようにして得られた化合物を式RMの有機金属化合物及び/又は式RM’の有機金属化合物(式中M及びM’は金属原子である)と反応させる第2工程とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
以下の式(II):
【化8】

(式中、
nは1及び2から選択される整数を表し、
n=1の場合、R1i及びR1jはそれぞれただ1つの基を表し、n=2の場合、R1i及びR1jはそれぞれ2つの同一の又は異なる基を表し、
1a、R1b、R1c、R1d、R1i及びR1j(同一であっても又は異なっていてもよい)は、H、ハロゲン原子、C〜Cアルキル基、C〜Cトリアルキルシラン基、C〜Cアルケニル基、及び1つ又は複数のOH官能基を有するC〜Cアルキル基から選択され、
及びRはそれぞれ独立して、直鎖C〜Cアルキルから選択される)に相当する有機金属白金化合物を製造する方法であって、
スキーム3:
【化9】

に従って、式(I)のリガンドを、極性非プロトン性溶媒中において室温で、KPtCl並びに式RMの有機金属化合物及び/又は式RM’の有機金属化合物(式中M及びM’は金属から選択される)と反応させる工程を少なくとも1つ含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−515193(P2012−515193A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545777(P2011−545777)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000013
【国際公開番号】WO2010/081959
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】