白金族元素の回収方法
【課題】銅相に存在する白金族元素のうち所定の元素を銅相内にて偏在させる方法を提供する。
【解決手段】少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、銅を更に加えて溶融銅相のロジウム分配比を増加させる。少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、イリジウムを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させる。少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させる。
【解決手段】少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、銅を更に加えて溶融銅相のロジウム分配比を増加させる。少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、イリジウムを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させる。少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族元素の回収方法に関し、特に白金族元素を含有する金属銅から白金族元素を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有用な銅資源である酸化銅(主としてCu2O)から金属銅を回収する乾式プロセスという方法が知られている。この乾式プロセスは具体的に言うと、以下の通りである。
【0003】
まず、酸化銅含有物質と、主として反応温度を低下させる役割のフラックスと、還元剤と、を溶融炉内で溶融してスラグを作る。そして、このスラグ中で起こる還元反応を利用して酸化銅から金属銅を生成させる。こうして生成した金属銅は、スラグの比重よりも重くなっており、スラグ中において沈むことになる。このように、生成させた金属銅とスラグとの比重差を利用して、スラグから金属銅を分離し回収する、という乾式プロセスが知られている。
【0004】
この乾式プロセスの特徴は、還元されて生成した金属銅相がスラグ中を滴下していく過程で、スラグ中における、金属銅に対して溶融度が高い各種元素も、この銅相に引き摺られて滴下する、という点にある。実際に、スラグの下相に溜まった銅相を分析すると、この銅相の中にはスラグ中に存在していたはずの種々の元素が溶融している。
【0005】
このことから、当該乾式プロセスは、種々の元素を高い回収率で銅相中に回収する方法として利用できる。この技術について一例を挙げると、使用済みのDPF(Diesel Particulate Filter)に使用されている自動車排ガス浄化触媒の担体を溶融銅に投入することにより、例えば白金族元素(PGM:Platinum Group Metals 以降、「PGM」とも言う。)をこの担体から回収する方法として利用されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0006】
なお、本明細書において、PGMとは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の6元素のいずれか又はその組み合わせを示す。また、PGM以外にも金(Au)やその他の金属を回収する場合ももちろん存在するが、本明細書においては説明の便宜上、PGMを例にして説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−68071号公報
【特許文献2】特開2004−275866号公報
【特許文献3】特開2004−277791号公報
【特許文献4】特開2004−277792号公報
【特許文献5】特開2009−24263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の方法は、確かに、PGMを一つのグループとして回収する方法として極めて有用である。その一方、乾式プロセスを用いる際に、PGMから所定の元素を回収する方法については、乾式プロセスだと未だに知見が得られていない。
【0009】
ここで挙げた方法が必要になる場面、即ち、「PGMから所定の元素を回収するのが必要になる場面」としては、PGMのうちPd、Pt及びRhを選択して、ひとまとめにして回収する場面が想定される。
【0010】
PGMのうちPd、Pt及びRhは、PGMの中でも使用頻度が高く高価な元素である。そのため、Pd、Pt及びRhを回収する際に、銅相においては、Pd、Pt及びRhのみが含まれているのが理想である。逆を言えば、上記以外のPGM(Ru、Os及びIr)の含有量が少ない方が好ましい。その方が、「銅相に含有されるPGMを回収する者」そして「そのPGMのPd、Pt及びRhを回収する者」というように分業をスムーズに行うことができ、PGMの回収の効率化に資する。また、PGMを回収する者にとっては、Pd、Pt及びRhを回収する者のニーズを十分に満たすことができる。
【0011】
なお、このニーズは、現在進行形で発生しているものである。そのため、「PGMから所定の元素を回収する」という課題自体も、本発明の分野においては知られていない。だからこそ現時点において、乾式プロセスを用いる際に、PGMから所定の元素を回収する方法については、未だに知見が得られていない。
【0012】
そこで本発明の目的は、銅相に存在するPGMのうち所定の元素を銅相内にて偏在させ、PGMから所定の元素を回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述の目的を達成できる方法について検討した。その際、本発明者は、銅相に対してPGMを溶融させる際のメカニズムについて再検討した。この再検討において、PGMのうち、Ru、Os及びIrについては、銅相に溶融しづらいことを再認識した。このように銅相に溶融しづらいことから、これらの元素を溶融させるというよりも、銅相における下相へと沈降させるというメカニズムを利用していることも再認識した。
【0014】
以上の再認識に基づき、本発明者は、溶融銅相に対し、
(1)PGMそのものを更に追加、又は
(2)銅(Cu)を更に追加、又は
(3)マンガン(Mn)を更に追加
することにより、最終的に、PGMのうち所定の元素、特に、(Pd、Pt及びRh)グループのうち少なくとも一部の元素と、(Ru、Os及びIr)のグループのうち少なくとも一部の元素とを別々に、銅相の上相又は下相に偏在させられるという知見を得た。本発明に係る各金属の比重は、高いものから順にIr(22.7g/cm3)、Os(22.6g/cm3)Pt(21.5g/cm3)、Rh(12.5g/cm3)、Ru(12.4g/cm3)、Pd(12.0g/cm3)、Cu(8.9g/cm3)、Mn(7.5g/cm3)である。
【0015】
この知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の形態は、
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、銅を更に加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法である。
本発明の第2の形態は、
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、イリジウムを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法である。
本発明の第3の形態は、
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法である。
本発明の第4の形態は、
ロジウムと、白金及びパラジウムのうち少なくとも一つを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法である。
本発明の第5の形態は、第1の形態に記載の形態であって、
前記溶融銅相中にイリジウムを更に加えて前記溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする。
本発明の第6の形態は、第1の形態に記載の形態であって、
前記溶融銅相中にマンガンを更に加えて前記溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする。
本発明の第7の形態は、第1、2、5何れか一に記載の形態であって、
回収する前記白金族元素がロジウムであることを特徴とする。
本発明の第8の形態は、第3、4、6何れか一に記載の形態であって、
回収する前記白金族元素は、ロジウムと、白金及びパラジウムのうち少なくとも一つとであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、銅相に存在するPGMのうち所定の元素を銅相内にて偏在させ、PGMから所定の元素を回収する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例にて用いた溶融炉を示す断面概略図である。
【図2】本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。なお、縦軸は、各相での深さを等分したときの深度を示す(例えば図2(a)の上相の縦軸の数値“3”は、上相全体において最表面から3/6の深度の地点を示す)。また、図2(a)は1時間の場合の結果、図2(b)は3時間の場合の結果、図2(c)は12時間の場合の結果、図2(d)は24時間の場合の結果を示す。
【図3】本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対し、沈殿相(固相)の元素のmass%と溶融時間との関係について示す図である。
【図4】本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対し、上相及び下相における元素のmass%と溶融時間との関係について示す図であり、上相の結果は図4(a)、下相の結果は図4(b)に示す。
【図5】図5(a)は、本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対し、光学顕微鏡による観察を行った結果を示す図である。また、図5(b)は、本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対し、電子線マイクロアナライザを行った結果を示す図である。
【図6】本実施例にてIrを1mass%加えた試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、図6(a)は1時間の場合の結果、図6(b)は3時間の場合の結果を示す。
【図7】本実施例にてIrを5mass%加えた試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、図7(a)は1時間の場合の結果、図7(b)は3時間の場合の結果を示す。
【図8】本実施例にてIrを10mass%加えた試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、図8(a)は1時間の場合の結果、図8(b)は3時間の場合の結果を示す。
【図9】本実施例にてCuを50mass%加えた試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、図9(a)は1時間の場合の結果、図9(b)は3時間の場合の結果を示す。
【図10】本実施例にてCuを50mass%加えた試料に対する、沈殿相(固相)の元素のmass%と上相でのCuのmass%との関係を示す図である。
【図11】本実施例にてMnを20mass%加えた試料に対する、分配比と上相でのMnのmass%との関係を示す図である。
【図12】本実施例にてMnを20mass%加えた試料に対する、沈殿相(固相)の元素のmass%と上相でのMnのmass%との関係を示す図である。
【図13】本実施例にてMnを20mass%加えた試料に対する、横軸を上相でのMnのmass%としたときの上相及び下相の元素分析結果を示す図であり、上相の結果は図13(a)、下相の結果は図13(b)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態においては乾式プロセスを行うことを前提としつつ、本発明の課題を解決するため、以下の各々の手法、即ち、
(1)PGMそのものを更に追加、又は
(2)銅(Cu)を更に追加、又は
(3)マンガン(Mn)を更に追加
について、各々、実施の形態1〜3にて説明する。
また、変形例については、実施の形態4で説明する。
【0019】
[実施の形態1]
本実施形態においては、(1)PGMそのものを更に追加する手法、について説明する。説明は、次の順序で行う。
A)溶融炉の準備
B)金属銅の溶融
C)イリジウム(Ir)の投入
D)溶融処理・冷却処理
E)その他の工程
F)実施の形態による効果
【0020】
A)溶融炉の準備
本実施形態においては、図1の断面概略図に示すような溶融炉を用いる場合について説明する。本実施形態における溶融炉1は、二珪化モリブデン(MoSi2)の発熱体からなる電気炉2と、電気炉2に覆われた反応チューブ3と、反応チューブ3に覆われた酸化マグネシウム(MgO)からなるるつぼ4と、を有している。また、反応チューブ3は外側チューブ31と内側チューブ32の2重構造となっており、内側チューブ32の内部には溶融銅相6を存在させるためのるつぼ4が設けられている。
【0021】
なお、反応チューブ3の先端は開口となっており、外側チューブ31には、溶融炉1を冷却するためのガスを吸気・排気するためのガス導入部5がはめ込まれている。このガス導入部5には、反応チューブ3内にガスを吸気させる吸気部51と、このガスを排気する排気部52とが設けられている。吸気部51及び排気部52は管状となっており、反応チューブ3の外のガス貯留部(図示せず)又は外気と、内側チューブ32内とを連通させる構造となっている。そして、溶融銅相6を素早く冷却させるために、内側チューブ32内における吸気部51の先端の方が、同じく内側チューブ32内における排気部52の先端よりも、るつぼ4に近接している。
【0022】
B)金属銅の溶融
本実施形態において用いる金属銅としては、特許文献5(特開2009−24263号公報)に記載のPGM回収方法の途中で発生した金属銅を用いる。なお、特許文献5に記載されたPGMの回収方法は「ROSEプロセス」と呼ばれる方法である。このROSEプロセスは掻い摘んで言うと、以下の通りである。
【0023】
即ち、PGMを含有する被処理部材と、酸化銅を含有する銅源材料とを、フラックス成分および還元剤と共に密閉型電気炉に装填する。そして、装填されたこれらの物質を還元溶錬する。
【0024】
そして、酸化物主体の溶融スラグ相の下方に金属銅主体の溶融メタルを沈降させる。溶融炉1内の酸化処理後の溶融酸化物と溶融銅相との混合溶融体(液相)を炉内で静置する。その結果、酸化処理後の溶融酸化物は溶融銅相より比重が小さいので、溶融酸化物は上相、溶融銅相は下相となって容易に相互に分離される。こうして、下方に沈降した溶融メタル中にPGMを濃縮させる。
【0025】
その後、PGMが濃縮した溶融銅相を、溶融スラグから分別して別の炉に溶融状態のまま移し替える。そして、別の炉において、当該溶融銅相を酸化溶錬することにより酸化物主体のスラグ相とPGMがさらに濃縮した溶融銅相に相分離させる。以降、これを繰り返すことにより、溶融銅相にPGMを濃縮して含有させることによりPGMを回収する方法である。
【0026】
なお、本実施形態においては、上記酸化処理を2回繰り返し、2回目の酸化処理の後に得られた金属銅を用いる。この金属銅を、上記の溶融炉1を用いて溶融し、溶融された銅相を形成する。
【0027】
また、本実施形態における回収方法を行うための装置は、特許文献5に記載のPGM回収装置を用いても構わない。
【0028】
C)イリジウム(Ir)の投入
本実施形態においては、溶融された銅相に対してIrを加える。こうすることにより、溶融処理後に最終的に得られる金属銅の上相において、Irを加える前に比べてRhの分配比を向上させることができる。
【0029】
なお、本明細書における「上相」とは、金属銅に対する溶融処理・冷却処理(後述)により形成される金属銅における複数の相の中の気相に接する側の層のことを指す。本実施形態においてはもちろん、「複数の相」が2相以上であっても良い。Rhの比重がIrに比べて軽いことを利用して、(Ru、Os及びIr)の少なくとも一部の元素が相対的に下相側に偏在し、(Pd、Pt及びRh)の少なくとも一部の元素が相対的に上相側に偏在させることができれば、本実施形態における技術的思想を適用しうる。
【0030】
また、本明細書における「分配比」とは、例えばRhを例にとると、銅相内に複数の相が形成された場合、ある相におけるRhのmass%(質量%、含有率とも言う。また、場合によっては濃度とも言う。)と、それ以外の相におけるRhのmass%の比によって表わされる値である。複数の相が上相及び下相である場合、具体的な式で表すと、以下の通りとなる。
LXu/b=(上相における元素Xのmass%)/(下相における元素Xのmass%)
上記のようにRhを例にとると、LRhu/bと表記できる。
【0031】
分配比向上のメカニズムについてであるが、現在、発明者により鋭意研究中である。推測ではあるが、そのメカニズムは以下のように考えられる。即ち、Irは、PGMの中でも比重が高く、通常、溶融銅相の中でも下相に多く存在することになる。つまり、Ir投入時に溶融銅相の上相にIrが多く存在したとしても、溶融処理の際に、下相に移動することになる。その際、Irと元素の特性(原子量や比重等々)が比較的類似しているRuやOsも、Irに引き摺られる形で下相に移動することになる。その結果、銅相のうち上相ではRu、Os及びIrの含有率が減少し、Rhの含有率(濃度)が増加することになる。以上の結果により、少なくともRhの分配比が向上する。
【0032】
なお、加えるIrの量であるが、溶融銅相に対して1mass%を超え且つ10mass%以下加えるのが好ましい。更に、溶融銅相に対して5mass%以上且つ10mass%以下加えるのが特に好ましい。実施例にて後述するが、Rhの分配比を増加させることに加えて、銅相において、Irを加える前に比べて、Pt、Pd及びRhの分配比を増加させることができる。
【0033】
D)溶融処理・冷却処理
上記の溶融炉1を用いて、溶融処理を行う。このときの処理温度としては、PGMを銅相中に溶融できる温度であれば良く、一例を挙げるとすれば1300℃以上であれば処理可能である。
【0034】
また、上記の溶融処理を終了する際の冷却の方法については、C)溶融炉の準備でも述べたが、例えばアルゴン(Ar)ガスのような不活性ガスを溶融炉1内に導入し、るつぼ4内における溶融銅相を冷却しても良い。
【0035】
上記の溶融処理・冷却処理を行うことにより、銅相内の元素の比重に応じて、複数の相が形成されることになる。本実施形態においては、複数の相のうち上相においてRh含有率を増加させ、溶融銅相内のPGMの中でも頻繁に使用されるRhの分配比を、混合前に比べて増加させることができる。その結果、回収する白金族元素としては、Rhを好適に回収することができる。
【0036】
E)その他の工程
本実施形態によって得られる、PGMを含有する溶融銅相からは、種々の溶融法または電解法などの公知の方法によってAuまたはPGMをさらに分別回収することができる。
【0037】
F)実施の形態による効果
本実施形態においては、以下の効果を奏する。なお、効果についての具体的な根拠については、本実施例(後述)にて説明する。
【0038】
最近になって、PGMのうちPd、Pt及びRhの含有量が多い銅相を得るというニーズが発生している。本実施形態ならば、本来、含有されるのが好ましくないはずのIrを溶融銅相に加えることにより、銅相において、Rhの分配比を向上させることができるという特別な効果を奏する。つまり、溶融銅相に存在するPGMのうちRhを銅相にて偏在させることができる。
【0039】
その結果、PGMから所定の元素(Rh)を回収することができる。それに加え、「銅相に含有されるPGMを回収する者」そして「そのPGMのPd、Pt及びRhを回収する者」というように分業を行うことができ、PGMの回収の効率化に資する。また、PGMを回収する者にとっては、Pd、Pt及びRhを回収する者のニーズを十分に満たすことができる。
【0040】
[実施の形態2]
本実施形態においては、(2)銅(Cu)を更に追加する手法、について説明する。なお、上記説明内容A)〜F)のうち、実施の形態1と異なるのは、C)Irの投入の部分である。つまり、本実施形態においては、順序C)が「C)更なるCuの投入」、となる。この内容及び以下に記載の内容以外については実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
本実施形態においては、溶融された銅相に対して、更にCuを加える。こうすることにより、溶融処理後に最終的に得られる銅相において、実施の形態1と同じく、更なるCuの混合前に比べてRhの分配比を向上させることができる。
【0042】
分配比向上のメカニズムについてであるが、現在、発明者により鋭意研究中である。推測ではあるが、そのメカニズムは以下のように考えられる。即ち、Cuは、PGM全体と比べた時に比重が低く、溶融銅相の中でも相対的に見ると上相に多く存在することになる。そして、Cuは、PGMの中でも、今回、必要としているPt、Pd及びRhと比べて、元素の特性が比較的類似している。それにより、Pt、Pd及びRhは、Cuと共に上相に偏在したままとなる。そして、銅相のうち上相だとRu、Os及びIrの含有率が減少し、Rhの含有率が相対的に増加することになる。また、更に加えたCuによりPt、Pd及びRhが下相から上相へと抽出され、銅相のうち上相でのPt、Pd及びRhの含有量が増加することになる。以上の結果により、少なくともRhの分配比が向上する。その結果、回収するPGMとしては、Rhを好適に回収することができる。
【0043】
なお、加えるCuの量であるが、PGMのうち、どの元素を上相又は下相にどの程度偏在させるかによって、随時選択することができる。一例として挙げるならば、溶融銅相に対して50mass%加えても良い。少なくともこの場合ならば、Auの分配比をCu混合前に比べて増加させることができる。
【0044】
[実施の形態3]
本実施形態においては、(3)マンガン(Mn)を更に追加する手法、について説明する。なお、上記説明内容A)〜F)のうち、実施の形態1と異なるのは、C)Irの投入の部分である。つまり、本実施形態においては、順序C)Irの投入が「C)Mnの投入」、となる。この内容及び以下に記載の内容以外については実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
本実施形態においては、溶融された銅相に対して、Mnを加える。こうすることにより、溶融処理後に最終的に得られる銅相において、実施の形態1と同じく、Rhの分配比をMn混合前に比べて向上させることができる。更に、それに加え、Pt、Pd、Auの分配比をMn混合前に比べて向上させることができる。
【0046】
また、Mnを加えることにより、銅相において発生する沈殿物からなる沈殿相において、Pt、Pd及びRhの分配比をMn混合前に比べて減少させることができる。つまり、PGMの中でも比重が高く且つ銅相に溶融しづらいRu、Os及びIrが溜まっている沈殿相に、回収が特に必要なPt、Pd及びRhが含有されないようにすることができる。その結果、実施の形態1に記載の効果を更に増幅させることができる。
【0047】
なお、ここで言う「沈殿相」とは、上述のようにRu、Os及びIrが銅相に溶融しづらいことから沈殿により発生する相である。
【0048】
分配比向上のメカニズムについてであるが、現在、発明者により鋭意研究中である。推測ではあるが、そのメカニズムは以下のように考えられる。即ち、Mnは、PGM全体と比べた時に比重が低く、溶融銅相の中でも相対的に見ると上相に多く存在することになる。そして、PGMの中でも今回必要としているPt、Pd及びRhと比べてMnは、元素の特性が比較的類似している。それにより、Pt、Pd及びRhは、Mnと共に上相に偏在したままとなる。そして、銅相のうち上相だとRu、Os及びIrの含有率が減少し、Pt、Pd及びRhの含有率が相対的に増加することになる。また、更に加えたMnによりPt、Pd及びRhが下相から上相へと抽出され、銅相のうち上相でのPt、Pd及びRhの含有量が増加することになる。以上の結果により、Pt、Pd及びRhの分配比が向上する。その結果、回収するPGMとしては、Rhに加え、Pt又はPd、更に言えばPt及びPdのうち少なくとも一つを好適に回収することができる。
【0049】
なお、加えるMnの量であるが、PGMのうち、どの元素を上相又は下相にどの程度偏在させるかによって、随時選択することができる。一例として挙げるならば、溶融銅相に対して20mass%加えても良い。少なくともこの場合ならば、Auの分配比をMn混合前に比べて増加させることができる。
【0050】
[実施の形態4]
本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
以下、上記の内容以外の変形例について列挙する。
【0051】
本実施形態においては溶融炉1を単なる炉として記載したが、転炉または回転炉を用いても良い。必要に応じて傾動または回転させることによって実施の形態1〜3に記載の物質と溶融銅相の接触・混合を促進させることができる。
【0052】
上記において用いられる溶融銅の元になる金属銅は、純度において制限はなく、PGMは勿論、Auが含有されていても良く、上記のPGMの回収方法をAuにも応用することができる。更には、鉄(Fe)、クロム(Cr)等の不純物元素が含有されていても不都合なく使用することができる。
【0053】
また、実施の形態1においてはIrを加えることにより、銅相内においてRhの分配比を向上させたが、Irの代わりにPdを加えることも考えられる。Pdを加えた場合、Pt、Pd及びRhのいずれか又はその組み合わせの元素の分配比が、銅相内において向上する可能性もある。
【0054】
また、実施の形態3において回収するPGMを、Pt又はPd、更に言えばPt及びPdのうち少なくとも一つとしても良い。
【0055】
なお、実施の形態2(銅(Cu)を更に追加する手法)をベースにして、実施の形態1及び3を更に適用しても良い。
具体的に言うと、溶融銅相にCuを追加した上で、Irを更に加えて溶融銅相のRhの分配比を増加させても良い。その結果、回収する白金族元素としては、Rhを好適に回収することができる。
また、同様に、溶融銅相にCuを追加した上で、マンガンを更に加えて溶融銅相のRh、PtあるいはPdの分配比を増加させても良い。その結果、回収する白金族元素としては、Rhに加え、Pt又はPd、更に言えばPt及びPdのうち少なくとも一つを好適に回収することができる。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
本実施例においては、実施の形態1に記載のように、(1)PGMそのもの(Ir)を更に追加する場合について述べる。
【0057】
A)溶融炉の準備
本実施例では、図1に示す溶融炉を用いて、以下に示す金属銅とIrとを混合して溶融した。
【0058】
B)金属銅の溶融
本実施例では、特許文献5(特開2009−24263号公報)に記載のROSEプロセスにおいて、酸化処理を2回繰り返し、2回目の酸化処理の後に得られた金属銅を用いた。この金属銅を用いて以降の実施例による試験を行う前に、この金属銅の特徴について分析した。
【0059】
まず、図1の溶融炉1のるつぼ4内にて上記金属銅11.0gの試料を複数用意し、各々の試料に対し、1300℃で1時間、3時間、12時間、そして24時間加熱した。このとき、雰囲気は大気雰囲気とした。溶融処理後、ガス導入部5の吸気部51からArガスを導入し、試験前の上記金属銅の分析用試料を作製した。1時間の場合の結果を図2(a)、3時間の場合の結果を図2(b)、12時間の場合の結果を図2(c)、24時間の場合の結果を図2(d)に示す。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。なお、縦軸は、各相での深さを等分したときの深度を示す。例えば図2(a)の上相の縦軸の数値“3”は、上相全体において最表面から3/6の深度の地点を示す。
なお、本実施例及び以降の実施例において、元素分析にはEPMA装置(日本電子製JXA−8500F)を用いた。
【0060】
また、上記のように作製した金属銅の分析用試料に対し、沈殿相(固相)の元素のmass%と溶融時間との関係について、図3及び表1に示す。
【表1】
【0061】
また、上記のように作製した金属銅の分析用試料は、上相及び下相に分かれていたことから両相に分け、両相における元素のmass%と溶融時間との関係について、上相は図4(a)、下相は図4(b)に示す。
【0062】
なお、本実施例における試験を行う前の金属銅について、光学顕微鏡による観察を行った。その結果を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、試験前においては、溶融すると沈殿相になる固相が銅相中に均質に分散しており、固相の偏析の様子は伺えなかった。
【0063】
光学顕微鏡による観察と同様に、本実施例における試験を行う前の金属銅について、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)を行った。その結果を図5(b)に示す。なお、このEPMAの色ごとに元素分析を行った。その結果を表2に示す。
【表2】
【0064】
C)Irの投入
本実施例においては、上記のように溶融した金属銅に対して、Irを混合した。その際の混合量は、複数の溶融銅相のうち各々に対して、1mass%、5mass%、10mass%とした。
【0065】
D)溶融処理・冷却処理
その後、1300℃で1時間又は3時間にて溶融処理を行った。その際、各溶融時間に分けて試料を作製した。
【0066】
その後、電気炉2を停止し、ガス導入部5の吸気部51からArガスを溶融銅相6の表面上から吹きつけ、試料を急冷し、溶融処理・冷却処理を終了した。
【0067】
以上のように、本実施例における試料を作製した。この試料もまた、試験前の銅相と同様に、上相及び下相に分かれており、両相における元素分析を行った。1mass%の場合については図6に示す。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。図6(a)は溶融時間を1時間とした場合、図6(b)は溶融時間を3時間とした場合についての結果を示す。また、5mass%の場合について同様に図7(a)(b)に示し、10mass%の場合について同様に図8(a)(b)に示す。また、各元素の分配比(LXu/b=(上相における元素Xのmass%)/(下相における元素Xのmass%))とIrの混合量との関係について表3(溶融時間1時間)及び表4(溶融時間3時間)に示す。
【表3】
【表4】
【0068】
図6〜8、及び表3〜4より、Irを加えた場合、Rhの分配比が向上していることがわかる。また、Irを5mass%以上且つ10mass%未満加えることにより、銅相において、Pt、Pd及びCuの分配比もまたIrを加える前に比べて向上していることがわかる。また、これらの試験結果のうち、5mass%の場合が最も好ましい結果となった。
【0069】
(実施例2)
実施例2においては、実施の形態2に記載のように、(2)Cuを更に追加する場合について述べる。なお、実施例1と重複する部分については記載を省略する。
【0070】
本実施例においては、上記のように溶融した銅相に対して、Cuを更に追加で混合した。その際の混合量は、溶融銅相に対して50mass%とし、試料を作製した。この試料もまた、試験前の銅相と同様に、上相及び下相に分かれており、両相における元素分析を行った。その結果について図9に示し、図9(a)は溶融時間を1時間とした場合、図9(b)は溶融時間を3時間とした場合についての結果を示す。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、各元素の分配比(LXu/b)とCuの混合量との関係について表5(溶融時間1時間)及び表6(溶融時間3時間)に示す。
【表5】
【表6】
【0071】
更に、本実施例においては、この試料における沈殿相(固相)の元素分析も行った。この結果について、縦軸をmass%、横軸を上相でのCuのmass%としたときの関係を示す図10、及び表7に示す。
【表7】
【0072】
図9〜10及び表5〜7より、Cuを更に加えた場合、RhそしてAuの分配比が向上していることがわかる。一方、試験前の金属銅の組成と比べて、Ru及びIrが沈殿相(下相)に偏在していることがわかる。特に図10に示すように、Cuを追加で投入する前に比べて、投入後だと、Irが偏在していることがわかる。つまり、本来回収したいPtやPdは上相に偏在させつつ、それ以外の元素を下相に偏在させ、PtやPdの分配比を増加することができた。
【0073】
(実施例3)
実施例3においては、実施の形態3に記載のように、(3)Mnを更に追加する場合について述べる。なお、実施例1と重複する部分については記載を省略する。
【0074】
本実施例においては、上記のように溶融した金属銅に対して、Mnを更に混合した。その際の混合量は、溶融銅相に対して20mass%とし、溶融時間を3時間として試料を作製した。この試料もまた、試験前の銅相と同様に、上相及び下相に分かれており、両相における元素分析を行った。その結果について、縦軸をmass%、横軸を上相でのMnのmass%の関係を示す図11、及び表8に示す。なお、図11及び表8は端的に言うと、Mn投入前と投入後の元素組成の違いについて示している。以降の図表についても同様である。
【表8】
【0075】
また、上記のように作製した試料に対し、沈殿相(固相)の元素のmass%と上相でのMnのmass%との関係について、図12及び表9に示す。なお、図13は、Mn投入前と投入後の元素組成の違いについて示している。
【表9】
【0076】
また、上記のように作製した金属銅の分析用試料は、上相及び下相に分かれていたことから両相に分け、両相における元素のmass%と上相でのMnのmass%との関係について、上相は図13(a)、下相は図13(b)に示す。なお、横軸は(a)(b)とも「上相でのMnのmass%」である。なお、本実施例における「下相」では、沈殿相(固相)も含んだ状態となっており、この状態で元素分析を行っている。
【0077】
図11〜13及び表8〜9より、Mnを加えた場合、Mn投入前(上相でのMnのmass%が0の場合)に比べて、Pt、Pd及びRh、そしてAuの分配比が向上していることがわかる。一方、試験前の金属銅の組成と比べて、Ru及びIrが沈殿相(下相)に偏在していることがわかる。それに加え、沈殿相(固相)において、Pt、Pd及びRh更にはAuの含有率を、Mnを加える前に比べて減少させていることがわかる。つまり、本来回収したいPt、Pd及びRh更にAuは上相に偏在させつつ、それ以外の元素を下相に偏在させ、Pt、Pd及びRh更にAuの分配比を増加することができた。
【0078】
以下、本実施形態において好ましい形態を付記する。
[付記1]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してイリジウムを溶融銅相に対して5mass%以上且つ10mass%未満加えることにより、銅相において、イリジウムを加える前に比べて、白金、パラジウム及び銅の分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
[付記2]
白金族元素を含有する溶融銅相に対して銅を更に加えることにより、銅相において、銅を更に加える前に比べて、更に、金の分配比を増加させることを特徴とする白金族元素又は金の回収方法。
[付記3]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してマンガンを加えることにより、銅相において、更に、マンガンを加える前に比べて金の分配比を増加させることを特徴とする白金族元素又は金の回収方法。
[付記4]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してマンガンを加えることにより、銅相において発生する沈殿物からなる沈殿相において、マンガンを加える前に比べて、白金、パラジウム及びロジウムの含有率を減少させ、白金、パラジウム及びロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
[付記5]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してマンガンを加えることにより、銅相において発生する沈殿物からなる沈殿相において、マンガンを加える前に比べて、更に、金の含有率を減少させ、白金、パラジウム及びロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素又は金の回収方法。
[付記6]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してイリジウムを加えることにより、銅相において、イリジウムを加える前に比べてロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
ただし、白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の6元素のいずれか又はその組み合わせを示す。また、上相とは、銅相内の元素の比重に応じて形成される複数の相の中の最表面側の相のことを指す。
[付記7]
白金族元素を含有する溶融銅相に対して銅を更に加えることにより、銅相において、銅を更に加える前に比べてロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
ただし、白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の6元素のいずれか又はその組み合わせを示す。また、上相とは、銅相内の元素の比重に応じて形成される複数の相の中の最表面側の相のことを指す。
[付記8]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してマンガンを加えることにより、銅相において、マンガンを加える前に比べて、白金、パラジウム及びロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
ただし、白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の6元素のいずれか又はその組み合わせを示す。また、上相とは、銅相内の元素の比重に応じて形成される複数の相の中の最表面側の相のことを指す。
【符号の説明】
【0079】
1 溶融炉
2 電気炉
3 反応チューブ
31 外側チューブ
32 内側チューブ
4 るつぼ
5 ガス導入部
51 吸気部
52 排気部
6 溶融銅相
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金族元素の回収方法に関し、特に白金族元素を含有する金属銅から白金族元素を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有用な銅資源である酸化銅(主としてCu2O)から金属銅を回収する乾式プロセスという方法が知られている。この乾式プロセスは具体的に言うと、以下の通りである。
【0003】
まず、酸化銅含有物質と、主として反応温度を低下させる役割のフラックスと、還元剤と、を溶融炉内で溶融してスラグを作る。そして、このスラグ中で起こる還元反応を利用して酸化銅から金属銅を生成させる。こうして生成した金属銅は、スラグの比重よりも重くなっており、スラグ中において沈むことになる。このように、生成させた金属銅とスラグとの比重差を利用して、スラグから金属銅を分離し回収する、という乾式プロセスが知られている。
【0004】
この乾式プロセスの特徴は、還元されて生成した金属銅相がスラグ中を滴下していく過程で、スラグ中における、金属銅に対して溶融度が高い各種元素も、この銅相に引き摺られて滴下する、という点にある。実際に、スラグの下相に溜まった銅相を分析すると、この銅相の中にはスラグ中に存在していたはずの種々の元素が溶融している。
【0005】
このことから、当該乾式プロセスは、種々の元素を高い回収率で銅相中に回収する方法として利用できる。この技術について一例を挙げると、使用済みのDPF(Diesel Particulate Filter)に使用されている自動車排ガス浄化触媒の担体を溶融銅に投入することにより、例えば白金族元素(PGM:Platinum Group Metals 以降、「PGM」とも言う。)をこの担体から回収する方法として利用されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【0006】
なお、本明細書において、PGMとは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の6元素のいずれか又はその組み合わせを示す。また、PGM以外にも金(Au)やその他の金属を回収する場合ももちろん存在するが、本明細書においては説明の便宜上、PGMを例にして説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−68071号公報
【特許文献2】特開2004−275866号公報
【特許文献3】特開2004−277791号公報
【特許文献4】特開2004−277792号公報
【特許文献5】特開2009−24263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の方法は、確かに、PGMを一つのグループとして回収する方法として極めて有用である。その一方、乾式プロセスを用いる際に、PGMから所定の元素を回収する方法については、乾式プロセスだと未だに知見が得られていない。
【0009】
ここで挙げた方法が必要になる場面、即ち、「PGMから所定の元素を回収するのが必要になる場面」としては、PGMのうちPd、Pt及びRhを選択して、ひとまとめにして回収する場面が想定される。
【0010】
PGMのうちPd、Pt及びRhは、PGMの中でも使用頻度が高く高価な元素である。そのため、Pd、Pt及びRhを回収する際に、銅相においては、Pd、Pt及びRhのみが含まれているのが理想である。逆を言えば、上記以外のPGM(Ru、Os及びIr)の含有量が少ない方が好ましい。その方が、「銅相に含有されるPGMを回収する者」そして「そのPGMのPd、Pt及びRhを回収する者」というように分業をスムーズに行うことができ、PGMの回収の効率化に資する。また、PGMを回収する者にとっては、Pd、Pt及びRhを回収する者のニーズを十分に満たすことができる。
【0011】
なお、このニーズは、現在進行形で発生しているものである。そのため、「PGMから所定の元素を回収する」という課題自体も、本発明の分野においては知られていない。だからこそ現時点において、乾式プロセスを用いる際に、PGMから所定の元素を回収する方法については、未だに知見が得られていない。
【0012】
そこで本発明の目的は、銅相に存在するPGMのうち所定の元素を銅相内にて偏在させ、PGMから所定の元素を回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述の目的を達成できる方法について検討した。その際、本発明者は、銅相に対してPGMを溶融させる際のメカニズムについて再検討した。この再検討において、PGMのうち、Ru、Os及びIrについては、銅相に溶融しづらいことを再認識した。このように銅相に溶融しづらいことから、これらの元素を溶融させるというよりも、銅相における下相へと沈降させるというメカニズムを利用していることも再認識した。
【0014】
以上の再認識に基づき、本発明者は、溶融銅相に対し、
(1)PGMそのものを更に追加、又は
(2)銅(Cu)を更に追加、又は
(3)マンガン(Mn)を更に追加
することにより、最終的に、PGMのうち所定の元素、特に、(Pd、Pt及びRh)グループのうち少なくとも一部の元素と、(Ru、Os及びIr)のグループのうち少なくとも一部の元素とを別々に、銅相の上相又は下相に偏在させられるという知見を得た。本発明に係る各金属の比重は、高いものから順にIr(22.7g/cm3)、Os(22.6g/cm3)Pt(21.5g/cm3)、Rh(12.5g/cm3)、Ru(12.4g/cm3)、Pd(12.0g/cm3)、Cu(8.9g/cm3)、Mn(7.5g/cm3)である。
【0015】
この知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の形態は、
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、銅を更に加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法である。
本発明の第2の形態は、
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、イリジウムを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法である。
本発明の第3の形態は、
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法である。
本発明の第4の形態は、
ロジウムと、白金及びパラジウムのうち少なくとも一つを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法である。
本発明の第5の形態は、第1の形態に記載の形態であって、
前記溶融銅相中にイリジウムを更に加えて前記溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする。
本発明の第6の形態は、第1の形態に記載の形態であって、
前記溶融銅相中にマンガンを更に加えて前記溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする。
本発明の第7の形態は、第1、2、5何れか一に記載の形態であって、
回収する前記白金族元素がロジウムであることを特徴とする。
本発明の第8の形態は、第3、4、6何れか一に記載の形態であって、
回収する前記白金族元素は、ロジウムと、白金及びパラジウムのうち少なくとも一つとであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、銅相に存在するPGMのうち所定の元素を銅相内にて偏在させ、PGMから所定の元素を回収する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例にて用いた溶融炉を示す断面概略図である。
【図2】本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。なお、縦軸は、各相での深さを等分したときの深度を示す(例えば図2(a)の上相の縦軸の数値“3”は、上相全体において最表面から3/6の深度の地点を示す)。また、図2(a)は1時間の場合の結果、図2(b)は3時間の場合の結果、図2(c)は12時間の場合の結果、図2(d)は24時間の場合の結果を示す。
【図3】本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対し、沈殿相(固相)の元素のmass%と溶融時間との関係について示す図である。
【図4】本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対し、上相及び下相における元素のmass%と溶融時間との関係について示す図であり、上相の結果は図4(a)、下相の結果は図4(b)に示す。
【図5】図5(a)は、本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対し、光学顕微鏡による観察を行った結果を示す図である。また、図5(b)は、本実施例にて用いた金属銅からなる分析用試料に対し、電子線マイクロアナライザを行った結果を示す図である。
【図6】本実施例にてIrを1mass%加えた試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、図6(a)は1時間の場合の結果、図6(b)は3時間の場合の結果を示す。
【図7】本実施例にてIrを5mass%加えた試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、図7(a)は1時間の場合の結果、図7(b)は3時間の場合の結果を示す。
【図8】本実施例にてIrを10mass%加えた試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、図8(a)は1時間の場合の結果、図8(b)は3時間の場合の結果を示す。
【図9】本実施例にてCuを50mass%加えた試料に対する、上相及び下相の元素分析結果を示す図である。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、図9(a)は1時間の場合の結果、図9(b)は3時間の場合の結果を示す。
【図10】本実施例にてCuを50mass%加えた試料に対する、沈殿相(固相)の元素のmass%と上相でのCuのmass%との関係を示す図である。
【図11】本実施例にてMnを20mass%加えた試料に対する、分配比と上相でのMnのmass%との関係を示す図である。
【図12】本実施例にてMnを20mass%加えた試料に対する、沈殿相(固相)の元素のmass%と上相でのMnのmass%との関係を示す図である。
【図13】本実施例にてMnを20mass%加えた試料に対する、横軸を上相でのMnのmass%としたときの上相及び下相の元素分析結果を示す図であり、上相の結果は図13(a)、下相の結果は図13(b)に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態においては乾式プロセスを行うことを前提としつつ、本発明の課題を解決するため、以下の各々の手法、即ち、
(1)PGMそのものを更に追加、又は
(2)銅(Cu)を更に追加、又は
(3)マンガン(Mn)を更に追加
について、各々、実施の形態1〜3にて説明する。
また、変形例については、実施の形態4で説明する。
【0019】
[実施の形態1]
本実施形態においては、(1)PGMそのものを更に追加する手法、について説明する。説明は、次の順序で行う。
A)溶融炉の準備
B)金属銅の溶融
C)イリジウム(Ir)の投入
D)溶融処理・冷却処理
E)その他の工程
F)実施の形態による効果
【0020】
A)溶融炉の準備
本実施形態においては、図1の断面概略図に示すような溶融炉を用いる場合について説明する。本実施形態における溶融炉1は、二珪化モリブデン(MoSi2)の発熱体からなる電気炉2と、電気炉2に覆われた反応チューブ3と、反応チューブ3に覆われた酸化マグネシウム(MgO)からなるるつぼ4と、を有している。また、反応チューブ3は外側チューブ31と内側チューブ32の2重構造となっており、内側チューブ32の内部には溶融銅相6を存在させるためのるつぼ4が設けられている。
【0021】
なお、反応チューブ3の先端は開口となっており、外側チューブ31には、溶融炉1を冷却するためのガスを吸気・排気するためのガス導入部5がはめ込まれている。このガス導入部5には、反応チューブ3内にガスを吸気させる吸気部51と、このガスを排気する排気部52とが設けられている。吸気部51及び排気部52は管状となっており、反応チューブ3の外のガス貯留部(図示せず)又は外気と、内側チューブ32内とを連通させる構造となっている。そして、溶融銅相6を素早く冷却させるために、内側チューブ32内における吸気部51の先端の方が、同じく内側チューブ32内における排気部52の先端よりも、るつぼ4に近接している。
【0022】
B)金属銅の溶融
本実施形態において用いる金属銅としては、特許文献5(特開2009−24263号公報)に記載のPGM回収方法の途中で発生した金属銅を用いる。なお、特許文献5に記載されたPGMの回収方法は「ROSEプロセス」と呼ばれる方法である。このROSEプロセスは掻い摘んで言うと、以下の通りである。
【0023】
即ち、PGMを含有する被処理部材と、酸化銅を含有する銅源材料とを、フラックス成分および還元剤と共に密閉型電気炉に装填する。そして、装填されたこれらの物質を還元溶錬する。
【0024】
そして、酸化物主体の溶融スラグ相の下方に金属銅主体の溶融メタルを沈降させる。溶融炉1内の酸化処理後の溶融酸化物と溶融銅相との混合溶融体(液相)を炉内で静置する。その結果、酸化処理後の溶融酸化物は溶融銅相より比重が小さいので、溶融酸化物は上相、溶融銅相は下相となって容易に相互に分離される。こうして、下方に沈降した溶融メタル中にPGMを濃縮させる。
【0025】
その後、PGMが濃縮した溶融銅相を、溶融スラグから分別して別の炉に溶融状態のまま移し替える。そして、別の炉において、当該溶融銅相を酸化溶錬することにより酸化物主体のスラグ相とPGMがさらに濃縮した溶融銅相に相分離させる。以降、これを繰り返すことにより、溶融銅相にPGMを濃縮して含有させることによりPGMを回収する方法である。
【0026】
なお、本実施形態においては、上記酸化処理を2回繰り返し、2回目の酸化処理の後に得られた金属銅を用いる。この金属銅を、上記の溶融炉1を用いて溶融し、溶融された銅相を形成する。
【0027】
また、本実施形態における回収方法を行うための装置は、特許文献5に記載のPGM回収装置を用いても構わない。
【0028】
C)イリジウム(Ir)の投入
本実施形態においては、溶融された銅相に対してIrを加える。こうすることにより、溶融処理後に最終的に得られる金属銅の上相において、Irを加える前に比べてRhの分配比を向上させることができる。
【0029】
なお、本明細書における「上相」とは、金属銅に対する溶融処理・冷却処理(後述)により形成される金属銅における複数の相の中の気相に接する側の層のことを指す。本実施形態においてはもちろん、「複数の相」が2相以上であっても良い。Rhの比重がIrに比べて軽いことを利用して、(Ru、Os及びIr)の少なくとも一部の元素が相対的に下相側に偏在し、(Pd、Pt及びRh)の少なくとも一部の元素が相対的に上相側に偏在させることができれば、本実施形態における技術的思想を適用しうる。
【0030】
また、本明細書における「分配比」とは、例えばRhを例にとると、銅相内に複数の相が形成された場合、ある相におけるRhのmass%(質量%、含有率とも言う。また、場合によっては濃度とも言う。)と、それ以外の相におけるRhのmass%の比によって表わされる値である。複数の相が上相及び下相である場合、具体的な式で表すと、以下の通りとなる。
LXu/b=(上相における元素Xのmass%)/(下相における元素Xのmass%)
上記のようにRhを例にとると、LRhu/bと表記できる。
【0031】
分配比向上のメカニズムについてであるが、現在、発明者により鋭意研究中である。推測ではあるが、そのメカニズムは以下のように考えられる。即ち、Irは、PGMの中でも比重が高く、通常、溶融銅相の中でも下相に多く存在することになる。つまり、Ir投入時に溶融銅相の上相にIrが多く存在したとしても、溶融処理の際に、下相に移動することになる。その際、Irと元素の特性(原子量や比重等々)が比較的類似しているRuやOsも、Irに引き摺られる形で下相に移動することになる。その結果、銅相のうち上相ではRu、Os及びIrの含有率が減少し、Rhの含有率(濃度)が増加することになる。以上の結果により、少なくともRhの分配比が向上する。
【0032】
なお、加えるIrの量であるが、溶融銅相に対して1mass%を超え且つ10mass%以下加えるのが好ましい。更に、溶融銅相に対して5mass%以上且つ10mass%以下加えるのが特に好ましい。実施例にて後述するが、Rhの分配比を増加させることに加えて、銅相において、Irを加える前に比べて、Pt、Pd及びRhの分配比を増加させることができる。
【0033】
D)溶融処理・冷却処理
上記の溶融炉1を用いて、溶融処理を行う。このときの処理温度としては、PGMを銅相中に溶融できる温度であれば良く、一例を挙げるとすれば1300℃以上であれば処理可能である。
【0034】
また、上記の溶融処理を終了する際の冷却の方法については、C)溶融炉の準備でも述べたが、例えばアルゴン(Ar)ガスのような不活性ガスを溶融炉1内に導入し、るつぼ4内における溶融銅相を冷却しても良い。
【0035】
上記の溶融処理・冷却処理を行うことにより、銅相内の元素の比重に応じて、複数の相が形成されることになる。本実施形態においては、複数の相のうち上相においてRh含有率を増加させ、溶融銅相内のPGMの中でも頻繁に使用されるRhの分配比を、混合前に比べて増加させることができる。その結果、回収する白金族元素としては、Rhを好適に回収することができる。
【0036】
E)その他の工程
本実施形態によって得られる、PGMを含有する溶融銅相からは、種々の溶融法または電解法などの公知の方法によってAuまたはPGMをさらに分別回収することができる。
【0037】
F)実施の形態による効果
本実施形態においては、以下の効果を奏する。なお、効果についての具体的な根拠については、本実施例(後述)にて説明する。
【0038】
最近になって、PGMのうちPd、Pt及びRhの含有量が多い銅相を得るというニーズが発生している。本実施形態ならば、本来、含有されるのが好ましくないはずのIrを溶融銅相に加えることにより、銅相において、Rhの分配比を向上させることができるという特別な効果を奏する。つまり、溶融銅相に存在するPGMのうちRhを銅相にて偏在させることができる。
【0039】
その結果、PGMから所定の元素(Rh)を回収することができる。それに加え、「銅相に含有されるPGMを回収する者」そして「そのPGMのPd、Pt及びRhを回収する者」というように分業を行うことができ、PGMの回収の効率化に資する。また、PGMを回収する者にとっては、Pd、Pt及びRhを回収する者のニーズを十分に満たすことができる。
【0040】
[実施の形態2]
本実施形態においては、(2)銅(Cu)を更に追加する手法、について説明する。なお、上記説明内容A)〜F)のうち、実施の形態1と異なるのは、C)Irの投入の部分である。つまり、本実施形態においては、順序C)が「C)更なるCuの投入」、となる。この内容及び以下に記載の内容以外については実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
本実施形態においては、溶融された銅相に対して、更にCuを加える。こうすることにより、溶融処理後に最終的に得られる銅相において、実施の形態1と同じく、更なるCuの混合前に比べてRhの分配比を向上させることができる。
【0042】
分配比向上のメカニズムについてであるが、現在、発明者により鋭意研究中である。推測ではあるが、そのメカニズムは以下のように考えられる。即ち、Cuは、PGM全体と比べた時に比重が低く、溶融銅相の中でも相対的に見ると上相に多く存在することになる。そして、Cuは、PGMの中でも、今回、必要としているPt、Pd及びRhと比べて、元素の特性が比較的類似している。それにより、Pt、Pd及びRhは、Cuと共に上相に偏在したままとなる。そして、銅相のうち上相だとRu、Os及びIrの含有率が減少し、Rhの含有率が相対的に増加することになる。また、更に加えたCuによりPt、Pd及びRhが下相から上相へと抽出され、銅相のうち上相でのPt、Pd及びRhの含有量が増加することになる。以上の結果により、少なくともRhの分配比が向上する。その結果、回収するPGMとしては、Rhを好適に回収することができる。
【0043】
なお、加えるCuの量であるが、PGMのうち、どの元素を上相又は下相にどの程度偏在させるかによって、随時選択することができる。一例として挙げるならば、溶融銅相に対して50mass%加えても良い。少なくともこの場合ならば、Auの分配比をCu混合前に比べて増加させることができる。
【0044】
[実施の形態3]
本実施形態においては、(3)マンガン(Mn)を更に追加する手法、について説明する。なお、上記説明内容A)〜F)のうち、実施の形態1と異なるのは、C)Irの投入の部分である。つまり、本実施形態においては、順序C)Irの投入が「C)Mnの投入」、となる。この内容及び以下に記載の内容以外については実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
本実施形態においては、溶融された銅相に対して、Mnを加える。こうすることにより、溶融処理後に最終的に得られる銅相において、実施の形態1と同じく、Rhの分配比をMn混合前に比べて向上させることができる。更に、それに加え、Pt、Pd、Auの分配比をMn混合前に比べて向上させることができる。
【0046】
また、Mnを加えることにより、銅相において発生する沈殿物からなる沈殿相において、Pt、Pd及びRhの分配比をMn混合前に比べて減少させることができる。つまり、PGMの中でも比重が高く且つ銅相に溶融しづらいRu、Os及びIrが溜まっている沈殿相に、回収が特に必要なPt、Pd及びRhが含有されないようにすることができる。その結果、実施の形態1に記載の効果を更に増幅させることができる。
【0047】
なお、ここで言う「沈殿相」とは、上述のようにRu、Os及びIrが銅相に溶融しづらいことから沈殿により発生する相である。
【0048】
分配比向上のメカニズムについてであるが、現在、発明者により鋭意研究中である。推測ではあるが、そのメカニズムは以下のように考えられる。即ち、Mnは、PGM全体と比べた時に比重が低く、溶融銅相の中でも相対的に見ると上相に多く存在することになる。そして、PGMの中でも今回必要としているPt、Pd及びRhと比べてMnは、元素の特性が比較的類似している。それにより、Pt、Pd及びRhは、Mnと共に上相に偏在したままとなる。そして、銅相のうち上相だとRu、Os及びIrの含有率が減少し、Pt、Pd及びRhの含有率が相対的に増加することになる。また、更に加えたMnによりPt、Pd及びRhが下相から上相へと抽出され、銅相のうち上相でのPt、Pd及びRhの含有量が増加することになる。以上の結果により、Pt、Pd及びRhの分配比が向上する。その結果、回収するPGMとしては、Rhに加え、Pt又はPd、更に言えばPt及びPdのうち少なくとも一つを好適に回収することができる。
【0049】
なお、加えるMnの量であるが、PGMのうち、どの元素を上相又は下相にどの程度偏在させるかによって、随時選択することができる。一例として挙げるならば、溶融銅相に対して20mass%加えても良い。少なくともこの場合ならば、Auの分配比をMn混合前に比べて増加させることができる。
【0050】
[実施の形態4]
本発明の技術的範囲は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
以下、上記の内容以外の変形例について列挙する。
【0051】
本実施形態においては溶融炉1を単なる炉として記載したが、転炉または回転炉を用いても良い。必要に応じて傾動または回転させることによって実施の形態1〜3に記載の物質と溶融銅相の接触・混合を促進させることができる。
【0052】
上記において用いられる溶融銅の元になる金属銅は、純度において制限はなく、PGMは勿論、Auが含有されていても良く、上記のPGMの回収方法をAuにも応用することができる。更には、鉄(Fe)、クロム(Cr)等の不純物元素が含有されていても不都合なく使用することができる。
【0053】
また、実施の形態1においてはIrを加えることにより、銅相内においてRhの分配比を向上させたが、Irの代わりにPdを加えることも考えられる。Pdを加えた場合、Pt、Pd及びRhのいずれか又はその組み合わせの元素の分配比が、銅相内において向上する可能性もある。
【0054】
また、実施の形態3において回収するPGMを、Pt又はPd、更に言えばPt及びPdのうち少なくとも一つとしても良い。
【0055】
なお、実施の形態2(銅(Cu)を更に追加する手法)をベースにして、実施の形態1及び3を更に適用しても良い。
具体的に言うと、溶融銅相にCuを追加した上で、Irを更に加えて溶融銅相のRhの分配比を増加させても良い。その結果、回収する白金族元素としては、Rhを好適に回収することができる。
また、同様に、溶融銅相にCuを追加した上で、マンガンを更に加えて溶融銅相のRh、PtあるいはPdの分配比を増加させても良い。その結果、回収する白金族元素としては、Rhに加え、Pt又はPd、更に言えばPt及びPdのうち少なくとも一つを好適に回収することができる。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
本実施例においては、実施の形態1に記載のように、(1)PGMそのもの(Ir)を更に追加する場合について述べる。
【0057】
A)溶融炉の準備
本実施例では、図1に示す溶融炉を用いて、以下に示す金属銅とIrとを混合して溶融した。
【0058】
B)金属銅の溶融
本実施例では、特許文献5(特開2009−24263号公報)に記載のROSEプロセスにおいて、酸化処理を2回繰り返し、2回目の酸化処理の後に得られた金属銅を用いた。この金属銅を用いて以降の実施例による試験を行う前に、この金属銅の特徴について分析した。
【0059】
まず、図1の溶融炉1のるつぼ4内にて上記金属銅11.0gの試料を複数用意し、各々の試料に対し、1300℃で1時間、3時間、12時間、そして24時間加熱した。このとき、雰囲気は大気雰囲気とした。溶融処理後、ガス導入部5の吸気部51からArガスを導入し、試験前の上記金属銅の分析用試料を作製した。1時間の場合の結果を図2(a)、3時間の場合の結果を図2(b)、12時間の場合の結果を図2(c)、24時間の場合の結果を図2(d)に示す。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。なお、縦軸は、各相での深さを等分したときの深度を示す。例えば図2(a)の上相の縦軸の数値“3”は、上相全体において最表面から3/6の深度の地点を示す。
なお、本実施例及び以降の実施例において、元素分析にはEPMA装置(日本電子製JXA−8500F)を用いた。
【0060】
また、上記のように作製した金属銅の分析用試料に対し、沈殿相(固相)の元素のmass%と溶融時間との関係について、図3及び表1に示す。
【表1】
【0061】
また、上記のように作製した金属銅の分析用試料は、上相及び下相に分かれていたことから両相に分け、両相における元素のmass%と溶融時間との関係について、上相は図4(a)、下相は図4(b)に示す。
【0062】
なお、本実施例における試験を行う前の金属銅について、光学顕微鏡による観察を行った。その結果を図5(a)に示す。図5(a)に示すように、試験前においては、溶融すると沈殿相になる固相が銅相中に均質に分散しており、固相の偏析の様子は伺えなかった。
【0063】
光学顕微鏡による観察と同様に、本実施例における試験を行う前の金属銅について、電子線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)を行った。その結果を図5(b)に示す。なお、このEPMAの色ごとに元素分析を行った。その結果を表2に示す。
【表2】
【0064】
C)Irの投入
本実施例においては、上記のように溶融した金属銅に対して、Irを混合した。その際の混合量は、複数の溶融銅相のうち各々に対して、1mass%、5mass%、10mass%とした。
【0065】
D)溶融処理・冷却処理
その後、1300℃で1時間又は3時間にて溶融処理を行った。その際、各溶融時間に分けて試料を作製した。
【0066】
その後、電気炉2を停止し、ガス導入部5の吸気部51からArガスを溶融銅相6の表面上から吹きつけ、試料を急冷し、溶融処理・冷却処理を終了した。
【0067】
以上のように、本実施例における試料を作製した。この試料もまた、試験前の銅相と同様に、上相及び下相に分かれており、両相における元素分析を行った。1mass%の場合については図6に示す。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。図6(a)は溶融時間を1時間とした場合、図6(b)は溶融時間を3時間とした場合についての結果を示す。また、5mass%の場合について同様に図7(a)(b)に示し、10mass%の場合について同様に図8(a)(b)に示す。また、各元素の分配比(LXu/b=(上相における元素Xのmass%)/(下相における元素Xのmass%))とIrの混合量との関係について表3(溶融時間1時間)及び表4(溶融時間3時間)に示す。
【表3】
【表4】
【0068】
図6〜8、及び表3〜4より、Irを加えた場合、Rhの分配比が向上していることがわかる。また、Irを5mass%以上且つ10mass%未満加えることにより、銅相において、Pt、Pd及びCuの分配比もまたIrを加える前に比べて向上していることがわかる。また、これらの試験結果のうち、5mass%の場合が最も好ましい結果となった。
【0069】
(実施例2)
実施例2においては、実施の形態2に記載のように、(2)Cuを更に追加する場合について述べる。なお、実施例1と重複する部分については記載を省略する。
【0070】
本実施例においては、上記のように溶融した銅相に対して、Cuを更に追加で混合した。その際の混合量は、溶融銅相に対して50mass%とし、試料を作製した。この試料もまた、試験前の銅相と同様に、上相及び下相に分かれており、両相における元素分析を行った。その結果について図9に示し、図9(a)は溶融時間を1時間とした場合、図9(b)は溶融時間を3時間とした場合についての結果を示す。縦軸は銅相最表面からの深さを示し、横軸は元素のmass%を示す。また、各元素の分配比(LXu/b)とCuの混合量との関係について表5(溶融時間1時間)及び表6(溶融時間3時間)に示す。
【表5】
【表6】
【0071】
更に、本実施例においては、この試料における沈殿相(固相)の元素分析も行った。この結果について、縦軸をmass%、横軸を上相でのCuのmass%としたときの関係を示す図10、及び表7に示す。
【表7】
【0072】
図9〜10及び表5〜7より、Cuを更に加えた場合、RhそしてAuの分配比が向上していることがわかる。一方、試験前の金属銅の組成と比べて、Ru及びIrが沈殿相(下相)に偏在していることがわかる。特に図10に示すように、Cuを追加で投入する前に比べて、投入後だと、Irが偏在していることがわかる。つまり、本来回収したいPtやPdは上相に偏在させつつ、それ以外の元素を下相に偏在させ、PtやPdの分配比を増加することができた。
【0073】
(実施例3)
実施例3においては、実施の形態3に記載のように、(3)Mnを更に追加する場合について述べる。なお、実施例1と重複する部分については記載を省略する。
【0074】
本実施例においては、上記のように溶融した金属銅に対して、Mnを更に混合した。その際の混合量は、溶融銅相に対して20mass%とし、溶融時間を3時間として試料を作製した。この試料もまた、試験前の銅相と同様に、上相及び下相に分かれており、両相における元素分析を行った。その結果について、縦軸をmass%、横軸を上相でのMnのmass%の関係を示す図11、及び表8に示す。なお、図11及び表8は端的に言うと、Mn投入前と投入後の元素組成の違いについて示している。以降の図表についても同様である。
【表8】
【0075】
また、上記のように作製した試料に対し、沈殿相(固相)の元素のmass%と上相でのMnのmass%との関係について、図12及び表9に示す。なお、図13は、Mn投入前と投入後の元素組成の違いについて示している。
【表9】
【0076】
また、上記のように作製した金属銅の分析用試料は、上相及び下相に分かれていたことから両相に分け、両相における元素のmass%と上相でのMnのmass%との関係について、上相は図13(a)、下相は図13(b)に示す。なお、横軸は(a)(b)とも「上相でのMnのmass%」である。なお、本実施例における「下相」では、沈殿相(固相)も含んだ状態となっており、この状態で元素分析を行っている。
【0077】
図11〜13及び表8〜9より、Mnを加えた場合、Mn投入前(上相でのMnのmass%が0の場合)に比べて、Pt、Pd及びRh、そしてAuの分配比が向上していることがわかる。一方、試験前の金属銅の組成と比べて、Ru及びIrが沈殿相(下相)に偏在していることがわかる。それに加え、沈殿相(固相)において、Pt、Pd及びRh更にはAuの含有率を、Mnを加える前に比べて減少させていることがわかる。つまり、本来回収したいPt、Pd及びRh更にAuは上相に偏在させつつ、それ以外の元素を下相に偏在させ、Pt、Pd及びRh更にAuの分配比を増加することができた。
【0078】
以下、本実施形態において好ましい形態を付記する。
[付記1]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してイリジウムを溶融銅相に対して5mass%以上且つ10mass%未満加えることにより、銅相において、イリジウムを加える前に比べて、白金、パラジウム及び銅の分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
[付記2]
白金族元素を含有する溶融銅相に対して銅を更に加えることにより、銅相において、銅を更に加える前に比べて、更に、金の分配比を増加させることを特徴とする白金族元素又は金の回収方法。
[付記3]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してマンガンを加えることにより、銅相において、更に、マンガンを加える前に比べて金の分配比を増加させることを特徴とする白金族元素又は金の回収方法。
[付記4]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してマンガンを加えることにより、銅相において発生する沈殿物からなる沈殿相において、マンガンを加える前に比べて、白金、パラジウム及びロジウムの含有率を減少させ、白金、パラジウム及びロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
[付記5]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してマンガンを加えることにより、銅相において発生する沈殿物からなる沈殿相において、マンガンを加える前に比べて、更に、金の含有率を減少させ、白金、パラジウム及びロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素又は金の回収方法。
[付記6]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してイリジウムを加えることにより、銅相において、イリジウムを加える前に比べてロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
ただし、白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の6元素のいずれか又はその組み合わせを示す。また、上相とは、銅相内の元素の比重に応じて形成される複数の相の中の最表面側の相のことを指す。
[付記7]
白金族元素を含有する溶融銅相に対して銅を更に加えることにより、銅相において、銅を更に加える前に比べてロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
ただし、白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の6元素のいずれか又はその組み合わせを示す。また、上相とは、銅相内の元素の比重に応じて形成される複数の相の中の最表面側の相のことを指す。
[付記8]
白金族元素を含有する溶融銅相に対してマンガンを加えることにより、銅相において、マンガンを加える前に比べて、白金、パラジウム及びロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
ただし、白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の6元素のいずれか又はその組み合わせを示す。また、上相とは、銅相内の元素の比重に応じて形成される複数の相の中の最表面側の相のことを指す。
【符号の説明】
【0079】
1 溶融炉
2 電気炉
3 反応チューブ
31 外側チューブ
32 内側チューブ
4 るつぼ
5 ガス導入部
51 吸気部
52 排気部
6 溶融銅相
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、銅を更に加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項2】
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、イリジウムを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項3】
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項4】
ロジウムと、白金及びパラジウムのうち少なくとも一つを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項5】
前記溶融銅相中にイリジウムを更に加えて前記溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項6】
前記溶融銅相中にマンガンを更に加えて前記溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項7】
回収する前記白金族元素がロジウムであることを特徴とする請求項1、2、5何れか一に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項8】
回収する前記白金族元素は、ロジウムと、白金及びパラジウムのうち少なくとも一つとであることを特徴とする請求項3、4、6何れか一に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項1】
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、銅を更に加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項2】
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、イリジウムを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項3】
少なくともロジウムを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項4】
ロジウムと、白金及びパラジウムのうち少なくとも一つを含む白金族元素を含有する溶融銅相中に、マンガンを加えて溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする白金族元素の回収方法。
【請求項5】
前記溶融銅相中にイリジウムを更に加えて前記溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項6】
前記溶融銅相中にマンガンを更に加えて前記溶融銅相のロジウムの分配比を増加させることを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項7】
回収する前記白金族元素がロジウムであることを特徴とする請求項1、2、5何れか一に記載の白金族元素の回収方法。
【請求項8】
回収する前記白金族元素は、ロジウムと、白金及びパラジウムのうち少なくとも一つとであることを特徴とする請求項3、4、6何れか一に記載の白金族元素の回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−188705(P2012−188705A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53664(P2011−53664)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【出願人】(306039131)DOWAメタルマイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【出願人】(306039131)DOWAメタルマイン株式会社 (92)
【Fターム(参考)】
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