白金電極及びその製造方法
改良された電極、及び該電極を製造する方法であって、前記電極は、同一ジオメトリの光沢白金と比較して少なくとも5倍は表面積が増加しており、また同一表面積を有する白金黒と比較して物理的応力に対する耐性が改善されている白金のフラクタル表面コーティング[発明者らは、“白金グレイ”と称している]を有している。白金グレイの表面コーティングを電気めっきするプロセスは、光沢白金を発生させるのに必要な速度より速く且つ白金黒を発生させるのに必要な速度より遅い中庸の速度でめっきすることからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金電極、及び白金を堆積させるための電気めっきプロセスに関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
以下の本発明の説明から明白になる本発明の前記及び他の面は、改良された電極、及びその改良された電極の製造方法によって達成される。前記電極は、同一ジオメトリの光沢白金と比較した場合に表面積が少なくとも5倍増加し、また白金黒と比較した場合に物理的応力に対する耐性が増加している白金フラクタル表面コーティングを有している。発明者らは、この白金フラクタル表面コーティングを“白金グレイ”と称することとした。本発明は、このグレイ色を特色とするものではない。白金グレイとは、本発明を記述する手段である。好ましい実施の形態の電極は小さ過ぎて、かなり拡大しなければ色を呈することがない。白金グレイの表面コーティングを電気めっきするプロセスは、光沢白金を発生させるのに必要な速度よりは速く且つ白金黒を発生させるのに必要な速度よりは遅い中庸の速度でめっきすることからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
図1に示す本発明による電極の例示白金グレイコーティングのフラクタル表面は、その表面積が図2に示す同一ジオメトリの光沢白金表面の表面積の5倍に増加しており、またその強度は図3に示す白金黒表面よりも増加している。図1、2、及び3は、JOEL JSM5910走査電子顕微鏡(SEM)(日本、東京)によって2000×の倍率で撮影された画像である。この倍率レベルの下では、白金グレイは、0.5から15ミクロンの範囲にわたる粒子サイズのカリフラワー形状を有するフラクタル形態として観測される。このような構造の各枝は更に、同一形状の更に小さい粒子によってカバーされている。表面層上の最小粒子は、ナノメートルの範囲内にあることができる。この粗く且つ多孔質のフラクタル構造は、同一のジオメトリ形状を有する滑らかな白金表面を用いた電極と比較した場合、白金表面の電気化学的に活性化された表面積が増加している。
【0004】
白金グレイを発生させるためのめっきプロセスは、インプラント可能な電極に使用することができない不純物または他の添加物(例えば、鉛のような神経毒)を導入する必要がないので、表面を純粋な白金にすることができる。代替として、もしそのように望むのであれば、めっきプロセスにイリジウム、ロジウム、金、タンタル、チタン、またはニオブのような他の材料を導入することができるが、これらの材料は白金グレイの形成のために必要なものではない。
【0005】
白金グレイは、照明委員会(Commission on Illumination)l*a*bカラースケールを使用し、分光濃度計(デンシトメータ)を用いて材料の色を測定することによって、白金黒及び光沢白金から区別することもできる。l*は明度を定義し、a*は赤/緑値を表し、そしてb*は黄/青値を表す。明度値(l*値と呼ぶ)は0から100までの値を取ることができ、グレイスケールと同様に白が100であり、黒が0である。a*値は赤の+60から緑の−60までの値を取ることができ、b*値は黄の+60から青の−60までの値を取ることができる。測定した全ての試料は極めて小さいa*値及びb*値を有しており(それらは無色であるか、または、いわゆる中性グレイゾーン内にある)、これは明度値を白金コーティングのためのグレイスケールとして使用できることを示唆している。
【0006】
図4は、色反射分光濃度計(デンシトメータ)X-Rite 520を使用して測定された白金グレイ、白金黒、及び光沢白金の代表的な試料のl*、a*、b*値を示している。白金グレイのl*値は25から90までの範囲にわたっており、一方、白金黒及び光沢白金は共に25より小さいl*値を有している。
【0007】
図4に示すように、白金グレイ、白金黒、及び光沢白金の代表的な試料の色濃度も測定した。白金グレイの色濃度値は0.4Dから1.3Dまでの範囲であるのに対して、白金黒及び光沢白金の色濃度値は共に1.3Dよりも大きい。
【0008】
白金グレイは、材料の薄膜コーティングの接着力及び強度からも白金黒と区別することができる。直径500ミクロンの電極上の白金グレイ及び白金黒の薄膜コーティングの接着特性を、マイクロ・スクラッチテスター(CSEMインスツルメンツ、スイス)を使用して測定した。1ミリニュートンから100ミリニュートンまで負荷を漸増させながら半径10ミクロンの球形ダイヤモンドチップをコーティング表面を横切って引摺ることによって、400ミクロンの引掻き長さの制御されたマイクロ引掻き傷を発生させた。コーティングに傷害が生じさせるのが、臨界負荷である。この試験を行った結果、白金グレイの臨界負荷が60ミリニュートン以上であるのに対して、白金黒の臨界負荷は35ミリニュートンより小さいことが分かった。
【0009】
図5−8を参照して、本発明による白金グレイを発生させる方法を説明する。白金電極2即ち陽極、めっきされる導電性基体即ち陰極4を電源6に接続する。電源6の電流または電圧の何れかを制御し、監視する手段8が設けられている。陽極2、陰極4、電源を制御するための参照として使用される参照電極10、及び電気めっき溶液を電気めっきセル12内に配置する。セル12には、電気めっき溶液を混合し、攪拌する手段14が設けられている。電気めっきプロセスを遂行するための電力は、定電圧、定電流、パルス電圧、走査電圧、またはパルス電流の何れかで電極に供給される。電源6は白金の堆積速度を修正し、白金を白金グレイとして堆積させる。この速度は、光沢白金を形成させるのに必要な堆積速度よりは大きく且つ白金黒を形成させるのに必要な堆積速度よりは小さい。
【0010】
図5、6、及び7を参照する。電気めっきセル12は50ml乃至150mlの4ネックのガラスフラスコまたはビーカーであることが好ましく、共通電極即ち陽極2は大きい表面積の白金線または白金シートであることが好ましく、参照電極10はAg/AgCl電極(銀、塩化銀電極)であることが好ましく、そしてめっきされる導電性基体即ち陰極4は応用に依存して如何なる適当な材料であることも、また当業者によって容易に選択できるものであることができる。めっきされる導電性基体4の好ましい例は白金に限定するものではなく、イリジウム、ロジウム、金、タンタル、チタン、またはニオブを含む。
【0011】
攪拌機構は、図5に示すような磁気スターラー14、図6に示すような超音波タンク16(VWR Aquasonic 50Dのような)、または図7に示すようなアルゴンまたは窒素ガスを用いるガス分散18であることが好ましい。めっき溶液は、リン酸水素二ナトリウム内の3乃至30mM(ミリモル)のヘキサクロロ白金酸アンモニウムであることが好ましいが、何等かのクロロ白金酸、またはブロモ白金酸、または他の電気めっき溶液から誘導することができる。好ましいめっき温度は、約24−26°Cである。
【0012】
パルス電流及びパルス電圧制御を用いる電気めっきシステムを、それぞれ図9及び図10に示す。電気めっきプロセスを制御するために定電圧、定電流、パルス電圧、またはパルス電流を使用することはできるが、最も好ましいのはめっきプロセスを定電圧制御することであることを見出した。白金グレイを発生させるのに最も好ましい電圧範囲は、−0.45V乃至−0.85Vであることが分かった。上述した溶液を用いてこの範囲内の電圧を印加すると、白金グレイのめっきにとって好ましい速度範囲である毎分約1ミクロン乃至毎分0.05ミクロンの範囲のめっき速度が得られる。定電圧制御を使用すると、並列の電極アレイを同時にめっきし、各電極毎にかなり均一な表面層厚みを達成することもできる。
【0013】
白金グレイめっきのための最適電位範囲は、溶液及び条件に依存する。特定のめっきシステムのための最適電位範囲を決定するために、線形電圧掃引を使用することができる。代表的な線形電圧掃引を図14に示す。線形電圧掃引中、電極の電圧は、水素ガス放出が発生して電子転移20及び拡散22のめっき速度制御ステップが現れるまで陰極的に走査される。所与のめっきシステムの場合、拡散制御または拡散と電子転移との間の混合制御24の下で白金還元反応が制限された電流を有するが、水素放出26をもたらさないように電極電位を調整することが好ましい。
【0014】
更に、白金グレイの物理的強度の故に、30ミクロンより大きい厚みの表面層をめっきすることができることを見出した。稠密な白金層の内部応力(それがめっきされた層を剥落させ、下に位置する層が上の材料を支持することができなくなる)の故に、光沢白金をほぼ数ミクロンより大きい層にめっきすることは極めて困難である。めっき表面層のこの付加的な厚みによって、電極は遙かに長い実用寿命を有するようになる。
【0015】
以下の例は、本発明による白金グレイの表面コーティングを形成させるための導電性基体上への白金の電気めっきを示している。
【0016】
定電圧めっきを使用し、以下の手法で白金グレイの表面層を有する電極を準備した。図12に示すように、16の電極を有する電極白金シリコンアレイ(アレイ上の白金ディスクの直径は、510から530ミクロンまでの範囲にわたる)を、先ず硫酸内で電気化学的に清浄化し、リン酸塩で緩衝された塩類溶液内において開始時電極インピーダンスを測定した。図5を参照する。電極は、めっき電極2が共通電極4と並列になるように電気めっきセル内に配列した。参照電極10は、電極アレイ4の次に位置決めした。めっき溶液を電気めっきセル12に注ぎ、攪拌機構14を作動させた。
【0017】
EG&G PAR M273ポテンショスタット6を使用して、参照電極10に対して一定の電圧をめっき電極2に印加した。めっき電極2のレスポンス電流を、記録手段8によって記録した。(レスポンス電流は、M273ポテンショスタット6によって測定した。)好ましくは1−90分、そして最も好ましくは30分の指定された時間の後に電圧を遮断し、電極アレイ4を脱イオン水内で入念に洗浄した。
【0018】
白金グレイの表面コーティングを有する電極アレイの電気化学的インピーダンスを、塩類溶液内で測定した。対時間曲線で表されためっき電流下の面積を積分し、電荷/電荷密度及び平均めっき電流/電流密度を計算した。走査電子顕微鏡(SEM)/X線によるエネルギ分散分析(EDAXTM)を、選択された電極に対して遂行することができる。めっきされた表面のSEM顕微鏡写真を撮ることによって、そのフラクタル表面を見ることができる。エネルギ分散分析によれば、この試料が酸化白金または他の材料ではなく、純粋な白金であることが分かった。
【0019】
この例から、白金グレイのフラクタル表面の形成に最も決定力があるのは電圧範囲であることが理解されよう。このシステムの場合、白金グレイを発生させるために電極にまたがる最適電圧降下は、Ag/AgCl参照電極に対してほぼ−0.55乃至−0.65Vであることが分かった。めっき溶液のための最適白金濃度は、0.4M(モル)のリン酸水素二ナトリウム内のほぼ8乃至18mMのヘキサクロロ白金酸アンモニウムであることが分かった。
【0020】
図12は、本発明と共に使用するための網膜電極アレイ32の斜視図である。この電極アレイ32は、長円形電極アレイボディ34と、白金またはその合金の1つのような導電性材料で作られた(しかしながら、イリジウム、酸化イリジウム、または窒化チタンのような如何なる導電性生物学的適合性材料で作ることができる)複数の電極36と、電極36と同一材料製の単一の参照電極38とを備え、これらの電極は、各電極36に電気信号を伝える白金またはその合金の1つのような導電性材料で作られ(しかしながら、イリジウム、酸化イリジウム、または窒化チタンのような如何なる導電性生物学的適合性材料で作ることができる)、且つ、好ましくはシリコンである絶縁用シース42内に包み込まれている分離した導体40に個々に取付けられている。
【0021】
アレイボディ34を通過している応力逃しスロット46によって限定された応力逃し内部タブ44は、手術用のタックを使用することによって電極アレイボディ34を眼の網膜または他の神経インタフェースに固定するための取付用開口48を含んでいる。補強用のリング50は、手術中に取付用開口48の配置を容易にするために、着色され、透明である。つかみハンドル52が電極アレイボディ34の表面上に配置されており、術者がピンセットを使用することによって、またはつかみハンドル52に形成されている孔の中に手術用具を挿入することによってそれを配置することを可能にしている。つかみハンドル52は、術者が電極ボディを直接つかむことによって生じ得る電極の破損を回避する。電極アレイ32の詳細に関しては、2001年2月13日付米国特許出願第09/783,236号“網膜の損傷を最小にするインプラント可能な網膜電極アレイ構成及び網膜応力を減少させる方法”に開示されているので参照されたい。
【0022】
図13は、上例に従って、Ag/AgCl参照電極に対して−0.6Vに保って30分間にわたってめっきした幾つかの異なる直径のポリイミドアレイ電極の電極容量が増加していることを、同一直径のめっきしていない電極と比較して示す図である。電極容量はその表面積に比例するから、このアレイの場合電極容量から計算された表面積の増加は、光沢白金のそれの60乃至100倍である。
【0023】
光沢白金がある粗さを有しており、その表面積が基本的な幾何学的形状のそれの3倍まで増加していることに注目すべきである。容量を使用して2つの試料間の表面積の変化を測定することは簡単であるが、ある試料と基本的な幾何学的形状とを比較することは困難である。
【0024】
限定するものではないが、めっき溶液、電極の表面積、pH、白金濃度、及び添加物の存在を含むめっき条件が変化すると、最適制御電圧及び/または他の制御パラメータもまた基本的電気めっき原理に従って変化する。それでも、白金粒子の堆積速度が白金黒を形成させるための速度より遅く且つ光沢白金を形成させるための速度よりも速い限り、白金グレイが形成される。
【0025】
以上に、本発明を特定の実施の形態について説明したが、当業者ならば他の実施の形態も容易に考案することができよう。従って、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】白金グレイ表面を2000倍の倍率で示す電子顕微鏡写真である。
【図2】光沢白金表面を2000倍の倍率で示す電子顕微鏡写真である。
【図3】白金黒表面を2000倍の倍率で示す電子顕微鏡写真である。
【図4】白金グレイ、白金黒、及び光沢白金の幾つかの代表的試料の色濃度(D)値、明度(l*)値を示す図である。
【図5】磁気攪拌機を用いる3電極電気めっきセルを示す図である。
【図6】超音波タンク内の3電極電気めっきセルを示す図である。
【図7】ガス分散管を用いる3電極電気めっきセルを示す図である。
【図8】定電圧制御または定電流制御を用いる電気めっきシステムを示す図である。
【図9】パルス電流制御を用いる電気めっきシステムを示す図である。
【図10】パルス電圧制御を用いる電気めっきシステムを示す図である。
【図11】走査電圧制御を用いる電気めっきシステムを示す図である。
【図12】16の電極を有する電極白金シリコンアレイを示す図である。
【図13】異なる直径のめっきされた、及びめっきされていない電極の電極容量を示す図である。
【図14】代表的な白金電極の代表的な線形電圧掃引を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、白金電極、及び白金を堆積させるための電気めっきプロセスに関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
以下の本発明の説明から明白になる本発明の前記及び他の面は、改良された電極、及びその改良された電極の製造方法によって達成される。前記電極は、同一ジオメトリの光沢白金と比較した場合に表面積が少なくとも5倍増加し、また白金黒と比較した場合に物理的応力に対する耐性が増加している白金フラクタル表面コーティングを有している。発明者らは、この白金フラクタル表面コーティングを“白金グレイ”と称することとした。本発明は、このグレイ色を特色とするものではない。白金グレイとは、本発明を記述する手段である。好ましい実施の形態の電極は小さ過ぎて、かなり拡大しなければ色を呈することがない。白金グレイの表面コーティングを電気めっきするプロセスは、光沢白金を発生させるのに必要な速度よりは速く且つ白金黒を発生させるのに必要な速度よりは遅い中庸の速度でめっきすることからなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
図1に示す本発明による電極の例示白金グレイコーティングのフラクタル表面は、その表面積が図2に示す同一ジオメトリの光沢白金表面の表面積の5倍に増加しており、またその強度は図3に示す白金黒表面よりも増加している。図1、2、及び3は、JOEL JSM5910走査電子顕微鏡(SEM)(日本、東京)によって2000×の倍率で撮影された画像である。この倍率レベルの下では、白金グレイは、0.5から15ミクロンの範囲にわたる粒子サイズのカリフラワー形状を有するフラクタル形態として観測される。このような構造の各枝は更に、同一形状の更に小さい粒子によってカバーされている。表面層上の最小粒子は、ナノメートルの範囲内にあることができる。この粗く且つ多孔質のフラクタル構造は、同一のジオメトリ形状を有する滑らかな白金表面を用いた電極と比較した場合、白金表面の電気化学的に活性化された表面積が増加している。
【0004】
白金グレイを発生させるためのめっきプロセスは、インプラント可能な電極に使用することができない不純物または他の添加物(例えば、鉛のような神経毒)を導入する必要がないので、表面を純粋な白金にすることができる。代替として、もしそのように望むのであれば、めっきプロセスにイリジウム、ロジウム、金、タンタル、チタン、またはニオブのような他の材料を導入することができるが、これらの材料は白金グレイの形成のために必要なものではない。
【0005】
白金グレイは、照明委員会(Commission on Illumination)l*a*bカラースケールを使用し、分光濃度計(デンシトメータ)を用いて材料の色を測定することによって、白金黒及び光沢白金から区別することもできる。l*は明度を定義し、a*は赤/緑値を表し、そしてb*は黄/青値を表す。明度値(l*値と呼ぶ)は0から100までの値を取ることができ、グレイスケールと同様に白が100であり、黒が0である。a*値は赤の+60から緑の−60までの値を取ることができ、b*値は黄の+60から青の−60までの値を取ることができる。測定した全ての試料は極めて小さいa*値及びb*値を有しており(それらは無色であるか、または、いわゆる中性グレイゾーン内にある)、これは明度値を白金コーティングのためのグレイスケールとして使用できることを示唆している。
【0006】
図4は、色反射分光濃度計(デンシトメータ)X-Rite 520を使用して測定された白金グレイ、白金黒、及び光沢白金の代表的な試料のl*、a*、b*値を示している。白金グレイのl*値は25から90までの範囲にわたっており、一方、白金黒及び光沢白金は共に25より小さいl*値を有している。
【0007】
図4に示すように、白金グレイ、白金黒、及び光沢白金の代表的な試料の色濃度も測定した。白金グレイの色濃度値は0.4Dから1.3Dまでの範囲であるのに対して、白金黒及び光沢白金の色濃度値は共に1.3Dよりも大きい。
【0008】
白金グレイは、材料の薄膜コーティングの接着力及び強度からも白金黒と区別することができる。直径500ミクロンの電極上の白金グレイ及び白金黒の薄膜コーティングの接着特性を、マイクロ・スクラッチテスター(CSEMインスツルメンツ、スイス)を使用して測定した。1ミリニュートンから100ミリニュートンまで負荷を漸増させながら半径10ミクロンの球形ダイヤモンドチップをコーティング表面を横切って引摺ることによって、400ミクロンの引掻き長さの制御されたマイクロ引掻き傷を発生させた。コーティングに傷害が生じさせるのが、臨界負荷である。この試験を行った結果、白金グレイの臨界負荷が60ミリニュートン以上であるのに対して、白金黒の臨界負荷は35ミリニュートンより小さいことが分かった。
【0009】
図5−8を参照して、本発明による白金グレイを発生させる方法を説明する。白金電極2即ち陽極、めっきされる導電性基体即ち陰極4を電源6に接続する。電源6の電流または電圧の何れかを制御し、監視する手段8が設けられている。陽極2、陰極4、電源を制御するための参照として使用される参照電極10、及び電気めっき溶液を電気めっきセル12内に配置する。セル12には、電気めっき溶液を混合し、攪拌する手段14が設けられている。電気めっきプロセスを遂行するための電力は、定電圧、定電流、パルス電圧、走査電圧、またはパルス電流の何れかで電極に供給される。電源6は白金の堆積速度を修正し、白金を白金グレイとして堆積させる。この速度は、光沢白金を形成させるのに必要な堆積速度よりは大きく且つ白金黒を形成させるのに必要な堆積速度よりは小さい。
【0010】
図5、6、及び7を参照する。電気めっきセル12は50ml乃至150mlの4ネックのガラスフラスコまたはビーカーであることが好ましく、共通電極即ち陽極2は大きい表面積の白金線または白金シートであることが好ましく、参照電極10はAg/AgCl電極(銀、塩化銀電極)であることが好ましく、そしてめっきされる導電性基体即ち陰極4は応用に依存して如何なる適当な材料であることも、また当業者によって容易に選択できるものであることができる。めっきされる導電性基体4の好ましい例は白金に限定するものではなく、イリジウム、ロジウム、金、タンタル、チタン、またはニオブを含む。
【0011】
攪拌機構は、図5に示すような磁気スターラー14、図6に示すような超音波タンク16(VWR Aquasonic 50Dのような)、または図7に示すようなアルゴンまたは窒素ガスを用いるガス分散18であることが好ましい。めっき溶液は、リン酸水素二ナトリウム内の3乃至30mM(ミリモル)のヘキサクロロ白金酸アンモニウムであることが好ましいが、何等かのクロロ白金酸、またはブロモ白金酸、または他の電気めっき溶液から誘導することができる。好ましいめっき温度は、約24−26°Cである。
【0012】
パルス電流及びパルス電圧制御を用いる電気めっきシステムを、それぞれ図9及び図10に示す。電気めっきプロセスを制御するために定電圧、定電流、パルス電圧、またはパルス電流を使用することはできるが、最も好ましいのはめっきプロセスを定電圧制御することであることを見出した。白金グレイを発生させるのに最も好ましい電圧範囲は、−0.45V乃至−0.85Vであることが分かった。上述した溶液を用いてこの範囲内の電圧を印加すると、白金グレイのめっきにとって好ましい速度範囲である毎分約1ミクロン乃至毎分0.05ミクロンの範囲のめっき速度が得られる。定電圧制御を使用すると、並列の電極アレイを同時にめっきし、各電極毎にかなり均一な表面層厚みを達成することもできる。
【0013】
白金グレイめっきのための最適電位範囲は、溶液及び条件に依存する。特定のめっきシステムのための最適電位範囲を決定するために、線形電圧掃引を使用することができる。代表的な線形電圧掃引を図14に示す。線形電圧掃引中、電極の電圧は、水素ガス放出が発生して電子転移20及び拡散22のめっき速度制御ステップが現れるまで陰極的に走査される。所与のめっきシステムの場合、拡散制御または拡散と電子転移との間の混合制御24の下で白金還元反応が制限された電流を有するが、水素放出26をもたらさないように電極電位を調整することが好ましい。
【0014】
更に、白金グレイの物理的強度の故に、30ミクロンより大きい厚みの表面層をめっきすることができることを見出した。稠密な白金層の内部応力(それがめっきされた層を剥落させ、下に位置する層が上の材料を支持することができなくなる)の故に、光沢白金をほぼ数ミクロンより大きい層にめっきすることは極めて困難である。めっき表面層のこの付加的な厚みによって、電極は遙かに長い実用寿命を有するようになる。
【0015】
以下の例は、本発明による白金グレイの表面コーティングを形成させるための導電性基体上への白金の電気めっきを示している。
【0016】
定電圧めっきを使用し、以下の手法で白金グレイの表面層を有する電極を準備した。図12に示すように、16の電極を有する電極白金シリコンアレイ(アレイ上の白金ディスクの直径は、510から530ミクロンまでの範囲にわたる)を、先ず硫酸内で電気化学的に清浄化し、リン酸塩で緩衝された塩類溶液内において開始時電極インピーダンスを測定した。図5を参照する。電極は、めっき電極2が共通電極4と並列になるように電気めっきセル内に配列した。参照電極10は、電極アレイ4の次に位置決めした。めっき溶液を電気めっきセル12に注ぎ、攪拌機構14を作動させた。
【0017】
EG&G PAR M273ポテンショスタット6を使用して、参照電極10に対して一定の電圧をめっき電極2に印加した。めっき電極2のレスポンス電流を、記録手段8によって記録した。(レスポンス電流は、M273ポテンショスタット6によって測定した。)好ましくは1−90分、そして最も好ましくは30分の指定された時間の後に電圧を遮断し、電極アレイ4を脱イオン水内で入念に洗浄した。
【0018】
白金グレイの表面コーティングを有する電極アレイの電気化学的インピーダンスを、塩類溶液内で測定した。対時間曲線で表されためっき電流下の面積を積分し、電荷/電荷密度及び平均めっき電流/電流密度を計算した。走査電子顕微鏡(SEM)/X線によるエネルギ分散分析(EDAXTM)を、選択された電極に対して遂行することができる。めっきされた表面のSEM顕微鏡写真を撮ることによって、そのフラクタル表面を見ることができる。エネルギ分散分析によれば、この試料が酸化白金または他の材料ではなく、純粋な白金であることが分かった。
【0019】
この例から、白金グレイのフラクタル表面の形成に最も決定力があるのは電圧範囲であることが理解されよう。このシステムの場合、白金グレイを発生させるために電極にまたがる最適電圧降下は、Ag/AgCl参照電極に対してほぼ−0.55乃至−0.65Vであることが分かった。めっき溶液のための最適白金濃度は、0.4M(モル)のリン酸水素二ナトリウム内のほぼ8乃至18mMのヘキサクロロ白金酸アンモニウムであることが分かった。
【0020】
図12は、本発明と共に使用するための網膜電極アレイ32の斜視図である。この電極アレイ32は、長円形電極アレイボディ34と、白金またはその合金の1つのような導電性材料で作られた(しかしながら、イリジウム、酸化イリジウム、または窒化チタンのような如何なる導電性生物学的適合性材料で作ることができる)複数の電極36と、電極36と同一材料製の単一の参照電極38とを備え、これらの電極は、各電極36に電気信号を伝える白金またはその合金の1つのような導電性材料で作られ(しかしながら、イリジウム、酸化イリジウム、または窒化チタンのような如何なる導電性生物学的適合性材料で作ることができる)、且つ、好ましくはシリコンである絶縁用シース42内に包み込まれている分離した導体40に個々に取付けられている。
【0021】
アレイボディ34を通過している応力逃しスロット46によって限定された応力逃し内部タブ44は、手術用のタックを使用することによって電極アレイボディ34を眼の網膜または他の神経インタフェースに固定するための取付用開口48を含んでいる。補強用のリング50は、手術中に取付用開口48の配置を容易にするために、着色され、透明である。つかみハンドル52が電極アレイボディ34の表面上に配置されており、術者がピンセットを使用することによって、またはつかみハンドル52に形成されている孔の中に手術用具を挿入することによってそれを配置することを可能にしている。つかみハンドル52は、術者が電極ボディを直接つかむことによって生じ得る電極の破損を回避する。電極アレイ32の詳細に関しては、2001年2月13日付米国特許出願第09/783,236号“網膜の損傷を最小にするインプラント可能な網膜電極アレイ構成及び網膜応力を減少させる方法”に開示されているので参照されたい。
【0022】
図13は、上例に従って、Ag/AgCl参照電極に対して−0.6Vに保って30分間にわたってめっきした幾つかの異なる直径のポリイミドアレイ電極の電極容量が増加していることを、同一直径のめっきしていない電極と比較して示す図である。電極容量はその表面積に比例するから、このアレイの場合電極容量から計算された表面積の増加は、光沢白金のそれの60乃至100倍である。
【0023】
光沢白金がある粗さを有しており、その表面積が基本的な幾何学的形状のそれの3倍まで増加していることに注目すべきである。容量を使用して2つの試料間の表面積の変化を測定することは簡単であるが、ある試料と基本的な幾何学的形状とを比較することは困難である。
【0024】
限定するものではないが、めっき溶液、電極の表面積、pH、白金濃度、及び添加物の存在を含むめっき条件が変化すると、最適制御電圧及び/または他の制御パラメータもまた基本的電気めっき原理に従って変化する。それでも、白金粒子の堆積速度が白金黒を形成させるための速度より遅く且つ光沢白金を形成させるための速度よりも速い限り、白金グレイが形成される。
【0025】
以上に、本発明を特定の実施の形態について説明したが、当業者ならば他の実施の形態も容易に考案することができよう。従って、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】白金グレイ表面を2000倍の倍率で示す電子顕微鏡写真である。
【図2】光沢白金表面を2000倍の倍率で示す電子顕微鏡写真である。
【図3】白金黒表面を2000倍の倍率で示す電子顕微鏡写真である。
【図4】白金グレイ、白金黒、及び光沢白金の幾つかの代表的試料の色濃度(D)値、明度(l*)値を示す図である。
【図5】磁気攪拌機を用いる3電極電気めっきセルを示す図である。
【図6】超音波タンク内の3電極電気めっきセルを示す図である。
【図7】ガス分散管を用いる3電極電気めっきセルを示す図である。
【図8】定電圧制御または定電流制御を用いる電気めっきシステムを示す図である。
【図9】パルス電流制御を用いる電気めっきシステムを示す図である。
【図10】パルス電圧制御を用いる電気めっきシステムを示す図である。
【図11】走査電圧制御を用いる電気めっきシステムを示す図である。
【図12】16の電極を有する電極白金シリコンアレイを示す図である。
【図13】異なる直径のめっきされた、及びめっきされていない電極の電極容量を示す図である。
【図14】代表的な白金電極の代表的な線形電圧掃引を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極であって、
電極ボディと、
フラクタル形態を有する白金の表面コーティングと、
を含むことを特徴とする電極。
【請求項2】
前記表面コーティングは、前記電極の基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の少なくとも5倍の表面積を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記表面コーティングは、生物学的適合性であることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記表面コーティングは、鉛を含まないことを特徴とする請求項3に記載の電極。
【請求項5】
前記表面コーティングは、本質的に純粋な白金からなることを特徴とする請求項3に記載の電極。
【請求項6】
前記表面コーティングは、前記基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の500倍より小さい表面積を有していることを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項7】
前記表面コーティングは、前記基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の200倍より小さい表面積を有していることを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項8】
前記表面コーティングは、少なくとも10ミクロンの厚みを有していることを特徴とする請求項7に記載の電極。
【請求項9】
前記表面コーティングは、臨界負荷によって測定して35ミリニュートンより大きい接着強度を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記表面コーティングは、色がグレイに見えることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記表面コーティングは、CIELABカラースケールで30より大きい明度(l*)を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記表面コーティングは、0.25Dよりは大きいが1.3Dよりは小さい色濃度(D)を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項13】
表面が粗い表面コーティングを有するように白金表面コーティングを電気めっきする方法であって、
導電性基体の表面上に光沢白金を形成させるのに必要な速度よりも速い速度で且つ白金黒を形成させるのに必要な速度よりも遅い速度で白金の粒子を形成させることによって、導電性基体の表面を電気めっきするステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記粗い表面コーティングの少なくとも一部分は、フラクタルジオメトリを有していることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電気めっきするステップは、毎分0.05ミクロンよりは速いが毎分1ミクロンよりは遅い速度で遂行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記電気めっきするステップは、毎分1ミクロンより速いかまたは等しいが毎分10ミクロンよりは遅い速度で遂行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記電気めっきプロセスは、電極電圧によって制御されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記電圧は、定電圧であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記制御された電圧は、少なくとも部分的に拡散が制限されためっき反応をもたらすことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記電気めっきプロセスの電圧は、Ag/AgCl参照電極に対して0.2ボルトより小さく且つ−1ボルトより大きいことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記電気めっき溶液は、約0.4Mのリン酸水素二ナトリウム内の、少なくとも3mMではあるが30mMよりは少ないヘキサクロロ白金酸アンモニウムであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項22】
白金の粗い表面コーティングを有する電極であって、
前記表面コーティングは、導電性基体の表面上に光沢白金を形成させるのに必要な速度よりも速い速度で且つ白金黒を形成させるのに必要な速度よりも遅い速度で白金の粒子を形成させることによって、導電性基体の表面に電気めっきされている
ことを特徴とする電極。
【請求項23】
前記粗い表面コーティングの少なくとも一部分は、フラクタルジオメトリを有していることを特徴とする請求項22に記載の電極。
【請求項24】
前記電気めっきプロセスは、電極電圧によって制御されることを特徴とする請求項22に記載の電極。
【請求項25】
前記電圧は、定電圧であることを特徴とする請求項24に記載の電極。
【請求項26】
前記制御された電圧は、少なくとも部分的に拡散が制限されためっき反応をもたらすことを特徴とする請求項24に記載の電極。
【請求項27】
前記電気めっきプロセスの電圧は、0.2ボルトより小さく且つ−1ボルトより大きいことを特徴とする請求項24に記載の電極。
【請求項28】
前記電気めっきプロセスの電圧は、0.25ボルトより小さく且つ−1ボルトより大きいことを特徴とする請求項24に記載の電極。
【請求項29】
前記電気めっき溶液は、約0.4Mのリン酸水素二ナトリウム内の、少なくとも3mMではあるが30mMよりは少ないヘキサクロロ白金酸アンモニウムであることを特徴とする請求項22に記載の電極。
【請求項30】
インプラント可能な電極であって、
導電性基体と、
電極の基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の5倍の表面積乃至500倍の表面積を有し、フラクタル形態を有する粗い表面コーティングと、
を含むことを特徴とするインプラント可能な電極。
【請求項31】
前記粗い表面コーティングは、前記電極の基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の200倍より小さい表面積であることを特徴とする請求項30に記載のインプラント可能な電極。
【請求項32】
前記粗い表面コーティングは、白金からなることを特徴とする請求項30に記載のインプラント可能な電極。
【請求項33】
前記粗い表面コーティングは、導電性基体の表面上に光沢白金を形成させるのに必要な速度よりも速い速度で且つ白金黒を形成させるのに必要な速度よりも遅い速度で白金の粒子を形成させることによって、導電性基体の表面に電気めっきされている
ことを特徴とするインプラント可能な電極。
【請求項34】
前記粗い表面コーティングは、臨界負荷によって測定して35ミリニュートンより大きい接着強度を有していることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項35】
前記粗い表面コーティングは、色がグレイに見えることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項36】
前記粗い表面コーティングは、CIELABカラースケールで30より大きい明度(l*)を有していることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項37】
前記粗い表面コーティングは、0.25Dよりは大きいが1.3Dよりは小さい色濃度(D)を有していることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項38】
前記粗い表面コーティングは、少なくとも10ミクロンの厚みを有していることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項1】
電極であって、
電極ボディと、
フラクタル形態を有する白金の表面コーティングと、
を含むことを特徴とする電極。
【請求項2】
前記表面コーティングは、前記電極の基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の少なくとも5倍の表面積を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記表面コーティングは、生物学的適合性であることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記表面コーティングは、鉛を含まないことを特徴とする請求項3に記載の電極。
【請求項5】
前記表面コーティングは、本質的に純粋な白金からなることを特徴とする請求項3に記載の電極。
【請求項6】
前記表面コーティングは、前記基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の500倍より小さい表面積を有していることを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項7】
前記表面コーティングは、前記基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の200倍より小さい表面積を有していることを特徴とする請求項2に記載の電極。
【請求項8】
前記表面コーティングは、少なくとも10ミクロンの厚みを有していることを特徴とする請求項7に記載の電極。
【請求項9】
前記表面コーティングは、臨界負荷によって測定して35ミリニュートンより大きい接着強度を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記表面コーティングは、色がグレイに見えることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記表面コーティングは、CIELABカラースケールで30より大きい明度(l*)を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記表面コーティングは、0.25Dよりは大きいが1.3Dよりは小さい色濃度(D)を有していることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項13】
表面が粗い表面コーティングを有するように白金表面コーティングを電気めっきする方法であって、
導電性基体の表面上に光沢白金を形成させるのに必要な速度よりも速い速度で且つ白金黒を形成させるのに必要な速度よりも遅い速度で白金の粒子を形成させることによって、導電性基体の表面を電気めっきするステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記粗い表面コーティングの少なくとも一部分は、フラクタルジオメトリを有していることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記電気めっきするステップは、毎分0.05ミクロンよりは速いが毎分1ミクロンよりは遅い速度で遂行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記電気めっきするステップは、毎分1ミクロンより速いかまたは等しいが毎分10ミクロンよりは遅い速度で遂行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記電気めっきプロセスは、電極電圧によって制御されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記電圧は、定電圧であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記制御された電圧は、少なくとも部分的に拡散が制限されためっき反応をもたらすことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記電気めっきプロセスの電圧は、Ag/AgCl参照電極に対して0.2ボルトより小さく且つ−1ボルトより大きいことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記電気めっき溶液は、約0.4Mのリン酸水素二ナトリウム内の、少なくとも3mMではあるが30mMよりは少ないヘキサクロロ白金酸アンモニウムであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項22】
白金の粗い表面コーティングを有する電極であって、
前記表面コーティングは、導電性基体の表面上に光沢白金を形成させるのに必要な速度よりも速い速度で且つ白金黒を形成させるのに必要な速度よりも遅い速度で白金の粒子を形成させることによって、導電性基体の表面に電気めっきされている
ことを特徴とする電極。
【請求項23】
前記粗い表面コーティングの少なくとも一部分は、フラクタルジオメトリを有していることを特徴とする請求項22に記載の電極。
【請求項24】
前記電気めっきプロセスは、電極電圧によって制御されることを特徴とする請求項22に記載の電極。
【請求項25】
前記電圧は、定電圧であることを特徴とする請求項24に記載の電極。
【請求項26】
前記制御された電圧は、少なくとも部分的に拡散が制限されためっき反応をもたらすことを特徴とする請求項24に記載の電極。
【請求項27】
前記電気めっきプロセスの電圧は、0.2ボルトより小さく且つ−1ボルトより大きいことを特徴とする請求項24に記載の電極。
【請求項28】
前記電気めっきプロセスの電圧は、0.25ボルトより小さく且つ−1ボルトより大きいことを特徴とする請求項24に記載の電極。
【請求項29】
前記電気めっき溶液は、約0.4Mのリン酸水素二ナトリウム内の、少なくとも3mMではあるが30mMよりは少ないヘキサクロロ白金酸アンモニウムであることを特徴とする請求項22に記載の電極。
【請求項30】
インプラント可能な電極であって、
導電性基体と、
電極の基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の5倍の表面積乃至500倍の表面積を有し、フラクタル形態を有する粗い表面コーティングと、
を含むことを特徴とするインプラント可能な電極。
【請求項31】
前記粗い表面コーティングは、前記電極の基本的な幾何学的形状から得られる対応表面積の200倍より小さい表面積であることを特徴とする請求項30に記載のインプラント可能な電極。
【請求項32】
前記粗い表面コーティングは、白金からなることを特徴とする請求項30に記載のインプラント可能な電極。
【請求項33】
前記粗い表面コーティングは、導電性基体の表面上に光沢白金を形成させるのに必要な速度よりも速い速度で且つ白金黒を形成させるのに必要な速度よりも遅い速度で白金の粒子を形成させることによって、導電性基体の表面に電気めっきされている
ことを特徴とするインプラント可能な電極。
【請求項34】
前記粗い表面コーティングは、臨界負荷によって測定して35ミリニュートンより大きい接着強度を有していることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項35】
前記粗い表面コーティングは、色がグレイに見えることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項36】
前記粗い表面コーティングは、CIELABカラースケールで30より大きい明度(l*)を有していることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項37】
前記粗い表面コーティングは、0.25Dよりは大きいが1.3Dよりは小さい色濃度(D)を有していることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【請求項38】
前記粗い表面コーティングは、少なくとも10ミクロンの厚みを有していることを特徴とする請求項33に記載のインプラント可能な電極。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2006−515900(P2006−515900A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−584365(P2003−584365)
【出願日】平成15年4月10日(2003.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/012450
【国際公開番号】WO2003/087433
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(505457064)セカンド サイト メディカル プロダクツ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年4月10日(2003.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/012450
【国際公開番号】WO2003/087433
【国際公開日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【出願人】(505457064)セカンド サイト メディカル プロダクツ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
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