説明

皮付き発泡体の成形装置

【目的】 発泡ビ−ズによる皮付き発泡体の成形装置を簡素化する。
【構成】 上方にパリソン押出機4を設けたブロ−成形用金型5に、2本のパイプ8,9と発泡ビ−ズ充填用フィ−ダ7を設け、これらのパイプ8,9をブロ−用エア源18や加熱水蒸気源20やバキュ−ム源21に接続する。この金型5にパリソン2を入れて、パイプ8,9をブロ−用エア源18に連通して、ブロ−成形する。次いで、パイプ8,9をバキュ−ム源21に連通して減圧しながらフィ−ダ7から発泡ビ−ズを供給した後、一方のパイプ8を加熱水蒸気源20に連通して発泡ビ−ズを加熱・融着し、他方のパイプ9をバキュ−ム源21に連通してドレンを取出す。したがって、これらのパイプ8,9がブロ−、加熱、冷却の工程を兼用するので、装置が簡素化する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、皮付き発泡体の成形装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】周知のごとく、発泡プラスチック(単に発泡体ともいう)は断熱材、吸音材、浮き等の広い範囲の用途に使用されているが、この発泡プラスチックの一つの成形法に「型物発泡成形法」が知られている。この型物発泡成形法は、予備発泡樹脂粒子を金型に入れ、これに加熱水蒸気を吹込ん加熱・融着させる方法である(例えば、特公平3−56905号公報参照)。
【0003】一方、熱可塑性樹脂発泡体の表面を密にした皮付き発泡体が知られている(例えば、特公昭42−10752号公報参照)。これは、例えば中空状非発泡体の中に予備発泡樹脂粒子をいれて発泡させたもので、この皮付き発泡体の出現により、発泡プラスチックは更に用途を拡大している。
【0004】かかる皮付き発泡体の成形法の1例を述べると、表皮を構成する筒状非発泡性パリソンをブロ−金型内でブロ−成形した後、冷却固化し、これをブロ−金型から取出し、この中空体に予備発泡樹脂粒子(以下、単に発泡ビ−ズということがある)を入れ、更に、これに加熱水蒸気噴射パイプを挿入して、この噴射パイプより加熱水蒸気を吹込んで発泡ビ−ズを加熱してさらに発泡させ、各ビ−ズが互に融着する前に噴射パイプを抜取ることにより、皮付き発泡体を製造する方法が知られている(例えば、特公昭62−19239号公報、特公昭58−10217号公報、実公昭62−9073号公報等参照)。
【0005】しかしながら、かかる皮付き発泡体の成形法では、1)中空体と、その中空体の中の発泡体を別工程で成形するので、金型等の設備も別々に必要となり、成形サイクルが長くなる。殊に、中空体の冷却固化時間と、発泡ビ−ズの加熱・融着及び冷却固化時間とを別々に必要とするので、生産性が悪くなる、2)冷却されている中空体に発泡ビ−ズを入れて発泡するので、中空体と発泡体との融着が完全に行なわれない、という問題があった。
【0006】そこで本発明者等は、通常のブロ−成形を行う金型と、型物発泡成形を行う金型とを一つにして、パリソンを通常のブロ−成形して中空体とし、金型を閉じたままにして成形された中空体の中へ発泡ビ−ズを入れて加熱・融着することによって、その成形サイクルを可及的に短縮する方法(特願平3−252111号)を見出した。
【0007】本発明は、かかる知見に基づいてなされたもので、特に、ブロ−成形と発泡成形を一つの金型で行うため、付属装置が複雑となり、大型の成形品を製造する際に特にそれが問題となり、かえって成形サイクルが長くなりやすいことから、この点に改良を加えたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするところは、1)上方にパリソン押出機を備えた開閉可能なブロ−成形用金型に、該金型内に出入可能なパイプ及び予備発泡樹脂粒子の充填フィ−ダを備えた成形装置であって、前記パイプが、各バルブを介して、ブロ−用エア源及び加熱水蒸気源に接続されていることを特徴とする皮付き発泡体の成形装置にあり、さらに装置を簡素化するため、2)パイプが、バルブを介して、バキュ−ム装置に接続されていることを特徴とする請求項1記載の皮付き発泡体の成形装置にある。
【0009】
【実施例】本発明の実施例について図を参照しながら以下に例示する。
【0010】図1〜図3において、5はブロ−成形用金型(一対の割型からなるブロ−成形用金型の他方を取り除いた状態で示した一方の割型)であり、各図はブロ−成形用金型5のパ−ティングラインに沿った断面図で示されている。また、4はブロ−成形用金型5の上方に設置されたパリソン押出機である。パリソン押出機4は、所望の樹脂を加熱、溶融させてパリソン2としてブロ−成形用金型5に供給できるようになっている。
【0011】また、ブロ−成形用金型5の下方には、パイプ8,9と充填フィ−ダ7が、ブロ−成形用金型5のパ−ティングライン上に設けたガイド溝8a,9a,及び7aをそれぞれ摺動してそれらの先端がブロ−成形用金型5内に出入し得るように設置されている。これらのパイプ8,9及び充填フィ−ダ7の他端は、昇降可能な取付台6に充填フィ−ダ7を中央にして固定されている。この取付台6は、その脚部10に昇降装置11等を設けて昇降可能とし、パイプ8,9及び充填フィ−ダ7をブロ−成形用金型5内へ出入可能な構造にしている。この昇降装置11にはラックピニオン機構及びサ−ボモ−タ機構やエアまたは油圧シリンダ昇降機構等が用いられる。
【0012】そして、取付台6を前進させた時は、パイプ8,9がブロ−成形用金型5内全体に均一にエア等を吹き込めるようにある程度深く進入し、充填フィ−ダ7がブロ−成形用金型5内壁面に接するか、近接するか、或いはやや突出した状態になるように、パイプ8,9の長さと充填フィ−ダ7の長さとに差を設けている。
【0013】なお、図ではパイプを二本設けた例を示したが、一本でもよく、また大型製品を成形する場合にはさらに多数本としてもよい。
【0014】パイプ8,9には、発泡ビ−ズ3の径より小さい径を持つ先端を開放したパイプや、それらの側壁に同程度の大きさの細孔またはスリット8”,9”を複数穿設したパイプやその先端を閉塞8’,9’したパイプ等が用いられ、さらに、それらのパイプを伸縮自在に構成して、その細孔またはスリット8”,9”の上下位置を制御するようにしてもよい。
【0015】本発明において、これらのパイプ8,9は、ブロ−成形用エアの吹込み、発泡ビ−ズ3の充填前及び/又は充填中の減圧若しくは排気、及び、発泡ビ−ズ3の加熱水蒸気供給の働きを兼ねるものであり、減圧弁23とブロ−用エアパイプ19を通してエア源18、加熱水蒸気源20、バキュ−ム装置21、及びドレンパイプ25が、それぞれバルブ22,22,22,………を介して連通している。
【0016】充填フィ−ダ7には、発泡ビ−ズ3を導入する導入口12と、エア源18に連通し、この発泡ビ−ズ3をブロ−成形用金型5内にエア圧送によって充填するエア・インジェクタ−口13と、これらの導入口12とエア・インジェクタ−口13を開閉するピストン式バルブ14とが設けられている。そして、この導入口12にはビ−ズ収納ボックス15が可撓性パイプ16を介して連通されている。このビ−ズ収納ボックス15には、発泡ビ−ズ3の充填を効果的に行うための加圧装置17が設けられている。
【0019】24はブロ−成形用金型5の上方コ−ナ−部に設けた、発泡ビ−ズ3の径より小さい孔をもつ針状ピンであり、成形された中空体2aに突き刺さるようになっており、中空体2aに穴を開けることにより中空体2a内の空気を逃がしたり、図示しないがバキュ−ム装置に接続して積極的に中空体2a内をバキュ−ムする時に用いる。この針状ピン24は、前記のブロ−成形用金型5の上方コ−ナ−部の他、適宜の場所に設けることができ、特に充填フィ−ダ7の充填方向に対向する位置に設けると効果的である。
【0020】前記のごとき本発明の装置を使用して皮付き発泡体の成形を行う方法を、図2及び図3を参照しながら以下に説明する。
【0021】ブロ−成形用金型5の上方に配置した押出機4から加熱・溶融したパリソン2を、開放された金型5間に押出し供給する。この金型5へのパリソン2の供給後、または供給前に取付台6を上昇させて、パリソン2内に充填フィ−ダ7及びパイプ8,9を挿入する。パリソン2の供給が終わった時点で金型5を閉じ、パリソン2を密閉する。次いで、ブロ−用エアパイプ19,19の各バルブ22を開き、エア源18から減圧弁23を介して所定圧力のエアを、パイプ8,9から所定時間パリソン2内へ吹き込んで、パリソン2をブロ−して中空体2aを成形する。
【0022】その後、ブロ−用エアパイプ19,19の各バルブ22を閉じ、中空成形体2aの冷却途中で、ピストン式バルブ14を開き、エア源18よりエアをエア・インジェクタ−口13に供給し、発泡ビ−ズ3をエア圧送して導入口12を通して、中空成形体2a内に充填する(図2参照)。この発泡ビ−ズ3の充填の際に、ビ−ズ収納ボックス15に取付けた加圧装置17を用いて、発泡ビ−ズ3に大きな変形を与えない程度に加圧して充填してもよい。
【0023】なお、この発泡ビ−ズ3の充填を行う際に、発泡ビ−ズ3の中空成形体2a内への充填の前及び途中に、ドレンパイプ25,25の各バルブ22を開き、及び/又は針状ピン24,24で中空成形体2a内に穴を開けて、中空成形体2a内を大気に開放したり、バキュ−ム装置21,21の各バルブ22を開き、及び/又はバキュ−ム装置を接続した針状ピン24,24を中空成形体2a内に差し込んで、中空成形体2a内をバキュ−ムしてもよい。
【0024】次いで、各バルブを閉じ、加熱水蒸気源20,20の各バルブ22を開き、パイプ8,9を用いて、充填された発泡ビ−ズ3中に加熱水蒸気を吹き込む。その結果、予備発泡されている発泡ビ−ズ3は、さらに発泡して互に融着する。この時、二本のパイプ8,9のうち片方から加熱水蒸気を流し、もう一方のパイプは大気に開放するかまたはバキュ−ムすることにより、充填された発泡ビ−ズ3中での加熱水蒸気の流れを円滑にしてもよい。さらには、成形する皮付き発泡体の形状によっては、パイプ8,9をバキュ−ム装置21と加熱水蒸気源20に、一定時間毎に交替して連通してもよい。
【0025】その後、成形された皮付き発泡体を冷却する。その冷却方法としては、従来の金型からの冷却を用いるが、それに加えて、パイプ8,9からバキュ−ム装置21,21を通してバキュ−ムして凝縮水を吸出してもよい。
【0026】最後に、取付台6を降下させ、充填フィ−ダ7、パイプ8,9を抜き取り、ブロ−成形用金型5を開いて、製品である皮付き発泡体1を取り出す(図3参照)。
【0027】本願発明による皮付き発泡体1は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂等からなる中空成形体2a及び直径1mm〜3mm程度のポリスチレン系・ポリエチレン系等の予備発泡樹脂粒子3を加熱・融着させた発泡成形体とよりなることとなる。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、ブロ−成形金型と型物発泡成形金型とを一つの金型にしたため、中空体を金型から取出さずに、発泡ビ−ズを発泡させるので、成形サイクルが短縮化でき、しかも、パイプをブロ−用エア源と加熱水蒸気源に、必要により、バキュ−ム装置にバルブにより切替可能に連通させて、ブロ−・充填・加熱・冷却の工程が兼用できるようにしたので、発泡ビ−ズを中空成形体へ効率的に充填するための減圧ないし排気が、冷却途中の中空体に対しても支障なく行うことができると共に、設備全体が簡素化できて操作が簡略化され、また設備費を節減でき、ひいては、製品コストを下げることができるばかりでなく、量産化にも好都合となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における金型のパ−ティングラインに沿った断面図である。
【図2】本発明の実施例を用いた皮付き発泡体の製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例を用いた皮付き発泡体の製造工程を示す断面図である。
【符号の説明】
1…皮付き発泡体、2…パリソン、2a…中空成形体、3…発泡ビ−ズ、4…パリソン押出機、5…ブロ−成形用金型、6…取付台、7…充填フィ−ダ、8,9…パイプ、11…昇降装置、18…エア源、20…加熱水蒸気源、21…バキュ−ム装置、22…バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 上方にパリソン押出機を備えた開閉可能なブロ−成形用金型に、該金型内に出入可能なパイプ及び予備発泡樹脂粒子の充填フィ−ダを備えた成形装置であって、前記パイプが、各バルブを介して、ブロ−用エア源及び加熱水蒸気源に接続されていることを特徴とする皮付き発泡体の成形装置。
【請求項2】 パイプが、バルブを介して、バキュ−ム装置に接続されていることを特徴とする請求項1記載の皮付き発泡体の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平6−166113
【公開日】平成6年(1994)6月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−209762
【出願日】平成4年(1992)7月13日
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【出願人】(591039148)三菱油化バーディッシェ株式会社 (7)
【出願人】(591215063)三光総業株式会社 (4)