皮内注射方法
【課題】生物薬剤およびその他の治療用薬剤を低侵襲性かつ疼痛の少ない投与方法により非経口的に送達する方法の提供。
【解決手段】約0.1〜約10マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物であって固体含有量が約20〜約85重量%でありかつ有効量の治療用薬剤をスラリーまたはペーストとして含む調合物を、皮膚の例えば上皮層、真皮層、または皮下層に注射する段階を含む方法。パウダーの形態である治療用薬剤の平均粒径が10ナノメートル(0.01マイクロメートル)〜約100マイクロメートルとなりかつ約500マイクロメートルより大きい粒子が存在しないよう粒径を小さくすることを目的として治療用薬剤を処理する段階をさらに含む方法。
【解決手段】約0.1〜約10マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物であって固体含有量が約20〜約85重量%でありかつ有効量の治療用薬剤をスラリーまたはペーストとして含む調合物を、皮膚の例えば上皮層、真皮層、または皮下層に注射する段階を含む方法。パウダーの形態である治療用薬剤の平均粒径が10ナノメートル(0.01マイクロメートル)〜約100マイクロメートルとなりかつ約500マイクロメートルより大きい粒子が存在しないよう粒径を小さくすることを目的として治療用薬剤を処理する段階をさらに含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物薬剤およびその他の治療用薬剤を低侵襲性のかつ疼痛の少ない投与方法により哺乳動物に非経口的に送達することに関する。これらの薬剤は、皮膚の例えば上皮層、真皮層、または皮下層を介して患者に送達される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
非経口的な注射とは、動物の皮膚もしくは粘膜の1つもしくは複数の層の下への注射またはこのような層を通した注射によって薬剤またはワクチンを投与することを意味する。標準的な注射は、動物(例えばヒトの患者)の皮下または筋肉内の領域に対して行われる。こうした深い部位が利用されるのは、浅い真皮の部位と比較して組織が伸展しやすく、多くの治療用薬剤の送達で必要とされる0.1〜3.0 cc(ml)の注射体積を収容できるからである。
【0003】
一般的に、注射は以下のような種々のカテゴリに分類されている:(1)そのまま注射できる溶液;(2)患者への注射の直前に溶媒と混合できるよう用意された乾燥状態の可溶性物質;(3)投与前に適切な注射用媒質と混合できるよう用意された乾燥状態の不溶性物質;(4)そのまま注射できる懸濁液;および(5)そのまま注射できる乳濁液。このような注射用調合物は、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、脊髄内、槽内、および髄腔内などの経路から投与される。投与経路は治療用薬剤の性質によってただちに決まる。その一方で、所望される投与経路は治療用調合物それ自体に制約を加える。例えば皮下投与用の溶液では、注射部位周囲の神経および組織の刺激反応を防ぐため、張性に十分注意する必要がある。同様に、懸濁液では、不溶性粒子が毛細血管を詰まらせる可能性があることから、血流中への直接投与は行われない。
【0004】
注射剤には他の剤形および投与経路と比較して特定の利点があり、そのような利点としては例えば、生理学的反応が直ちに起こること(例えば静脈内注射の場合)、多くの薬剤で生じる腸管吸収の問題を回避できること、および所望の投与量を患者の血流内に正確に投与できることなどがある。一方で、注射剤の欠点の1つは、皮下または静脈内に針を挿入する際の外傷および特定の薬理活性物質により投与部位に生じる疼痛および不快感である。注射が行われるごとに患者にはある程度の不快感が生じる。
【0005】
現在、生物薬剤は一般的に無菌溶液として再調製され、ゲージ数の大きい針(例えば18〜30ゲージ)を用いて皮下または筋肉内の空間に投与される。疼痛はさまざまな理由によって生じるが、例えば針の刺入深度、針の「ゲージ」数、注射量の多さ、注射部位からの薬剤の拡散などによって生じる。注射剤の投与に伴う疼痛という問題の他にも、現在の注射の方法にはいくつかの欠点がある。例えば、タンパク質製剤および徐放剤の多くは投与直前に再調製する必要がある。薬剤の用量に関する柔軟性および正確性が損なわれる可能性がある。さらに、多くの調合物は、加水分解反応による分解から薬剤を保護するため、冷蔵する必要がある。さらに、現在の投与システムは、注射装置にかなりの量の薬剤が残るという面で無駄が多い。さらに、所望の必要量を確実に送達するには、一般的に注射用調合物を濃縮および安定化させる必要がある。標準的な注射は液体の形態で投与される。液体または凍結乾燥パウダーとして販売されている製品では、注射前に水性の担体で再調製する必要がある。多くの治療用タンパク質およびワクチンは、保管中の安定性を高めるため乾燥した固体の形態で製造される。これらの調合物は注射前に滅菌水、リン酸緩衝溶液、または等張生理食塩水に溶解される。
【0006】
皮下および筋肉内の領域と比較して、真皮領域は浅く、伸展に限りがある。角質層は比較的薄く、5〜15マイクロメートルしかない。大多数の治療用注射剤では0.5 mlより多い体積を注射する必要があるが、真皮領域にはこれだけの体積を収容できない。これまで皮内注射は、主として疾患への曝露状態を診断するための検査に用いられてきた。特定の治療用物質(例えばB型肝炎ワクチン)は、皮内に注射すると吸収または免疫反応系との反応の効率が高くなる。その他にも診断のための検査において皮内投与を必要とする物質がある。皮内組織は血管の供給が豊富であり、そこに注射された物質は吸収速度が速い。この吸収速度と、皮内に注射できる体積に限界があること(< 0.5 ml)から、皮内注射は一般的に治療目的の要件を満たさない注射方法となっていた。皮内注射の部位としては前腕腹側および肩甲部表面が最も多く用いられる。他に用いられ得る部位としては上腕および上胸部がある。
【0007】
皮内注射用のシリンジは周知である。典型的なシリンジは、針シャフト、管腔、ベベル、柄またはハブ開口部、液体の薬剤を入れるバレルまたはカートリッジ、先端部、および一端に作動フランジを含みかつ反対側の端にゴム栓を備えるプランジャを含む。バレルは外側の円筒形部分であり、典型的にはガラスまたはプラスチックで作られる。プランジャはバレル内で上下に動くピストン様の部分であり、典型的にはプラスチックで作られる。先端部は針のハブ内に嵌合する小さな突起部である。先端部にはプレーンタイプおよびロッキングタイプの2種類がある。プレーンタイプの先端部は、針のハブ内にきつく嵌合するよう先細りになり、摩擦力により針を所定の位置に保持する。ロッキングタイプの先端部は、トレッドを有しかつ針のハブを収容できるサイズの外側カラーを有する。針の基本的な構成要素はハブ、シャフト、およびベベルである。ハブは針の端の膨大部であり、シリンジの先端部の外側に嵌合する。シャフトは細長の部分であり、ベベルは針の角度のついた先端部である。皮内注射投与様のシリンジは典型的には1 ml(1 cc)ツベルクリン用で、1/4インチまたは1/2インチの針で25〜27ゲージであり、成人に対して最大0.1〜0.5 mlを投与する。多くの場合、皮内注射の最大量は0.1 mlである。シリンジには、針を既に取り付けた状態であらかじめパッケージされるものとされないものとがある。したがって、1 mlシリンジは無菌操作による針の取り付けを必要とする場合がある。シリンジと針との取り付けが済んだら、バイアルまたはアンプルから薬剤を吸引する。バイアルは単回投与量または複回投与量の入ったガラス容器であり、厚いゴム栓で密封される。無菌性を確保するため、この栓または隔壁には金属製またはプラスチック製のキャップが被せられる。バイアル中の薬剤の形態は溶液または無菌状態の乾燥パウダーである。薬剤の形態がパウダーである場合は、適切な体積の適切な希釈液で再調製する必要がある。バイアルから薬剤を吸引するための適切な手順としては、バイアル上の保護キャップを外し、アルコール綿で隔壁を拭く。プランジャを引き戻して必要量の空気を吸引し、針をゴム製隔壁の中心に刺入する。空気を注入し薬剤を吸引する。希釈液を誤った場合または希釈液の量を誤った場合にはエラーが生じる。薬剤がアンプルに入っている場合はアンプルを開ける必要がある。微細なガラス粒子がシリンジ内に吸引されるのを防ぐため、フィルタ(例えばフィルタストロー)が必要である。フィルタ針を使用しないと、患者に傷害が生じ、かつ/または針の詰まりにより薬剤の流れが妨げられる。投与前にフィルタを外し針をシリンジに取り付ける必要がある。フィルタを外し忘れるとガラス粒子が患者に注入されるというエラーが生じる。さらに、シリンジにフィルタを付け外しするという余分の操作は、院内感染のリスクを低減するため無菌操作を必要とする。
【0008】
皮膚の上皮層、真皮層、または皮下層への皮内注射により、集中的な量の治療用薬剤、ワクチン、およびその他の生物薬剤を投与するための方法および調合物が当技術分野で求められている。さらに、再調製または冷蔵を必要としない安定した形態(platform)でそのような調合物を提供することが望ましい。さらに、そのような薬剤の注射に伴う疼痛を実質的に回避できるような様式でそのような調合物を調整および投与することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的の1つは、動物の表皮層、真皮層、または皮下層に投与できる注射用調合物であって、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う調合物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、動物の表皮層、真皮層、または皮下層に投与できる治療用薬剤を有効量含む、濃縮した注射可能調合物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、動物の皮膚の表皮層、真皮層、または皮下層に治療用薬剤を注射するための装置であって、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う装置を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、治療用薬剤を注射するための装置、調合物、および方法であって、投与量の実質的に100%を注射針から排出させることを実現する装置、調合物、および方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、動物の表皮層、真皮層、または皮下層に注射用調合物を投与するための方法であって、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、安定でありかつ使用前に冷蔵または再調製を必要としない皮内投与用の注射用調合物を提供する方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、皮内注射を行うための送達装置および調合物であって皮内注射の従来の装置および方法の問題点および制限を克服する送達装置および調合物を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、投薬法および注射法に関するエラーを最小限にする送達装置、調合物、および方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、皮内注射を行うための送達装置および調合物であって自己投与を可能にする送達装置および調合物を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、皮内注射を行うための送達装置および調合物であって治療用薬剤の濃縮調合物の投与を可能にする送達装置および調合物を提供することである。
【0019】
以上およびその他の目的に基づき、本発明の一部は、動物の皮膚の表皮層、真皮層、または皮下層に治療用薬剤を注射するための、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う装置であって;皮内注射に適した針であってスラリーまたはペースト中に均一に含まれた単位投与量の治療用薬剤が入った下端を有する針、および針の上端に配置されたバイアス装置を備え;針およびバイアス装置はハウジング内に収容され;ハウジングはアクチベータを含み;アクチベータは、注射装置を動物の皮膚に当てた場合アクチベータが作動してバイアス装置を解放し、これにより針で動物の皮膚を穿刺しかつ単位投与量の実質的に全部を針の下端に位置する先端部から排出するようなアクチベータである装置に関する。好ましい態様において、針は、長さが少なくとも約5 cmであり、ゲージ数が約18〜約31ゲージであり、特定の好ましい態様においては約27〜約30ゲージである。
【0020】
好ましい態様において、注射装置は、針の中の単位投与量の上端に配置されたプランジャをさらに含み、装置作動時にバイアス装置がプランジャを調合物に押し付けて調合物の実質的に全部を針の下側先端部から排出させる。プランジャは、例えば、直径が針の内径よりわずかに小さいワイヤまたは針の上部内に配置された変形可能ゲルを含んでいてもよい。
【0021】
好ましい態様において、注射装置は、ハウジング内に入った引き戻し装置であって、注射後に空の針を引き戻すために作動する引き戻し装置をさらに含む。
【0022】
好ましい態様において、注射装置は、ハウジングの下端に取り付けられた皮膚ポジショナであって、注射対象の哺乳動物の皮膚に注射装置を当てた場合に以下の目的のため哺乳動物の皮膚を伸展させる能力を有する皮膚ポジショナをさらに含む:i)治療用薬剤を注射部位に提供すること;ii)浅部での注射を可能にすること;およびiii)注射装置の作動時に哺乳動物の皮膚に針を穿刺することにより生じる疼痛を軽減すること。針は、好ましくは、使用中に注射装置を作動させた場合にのみハウジングの下端から伸びるように注射装置のハウジング内に組み込まれる。
【0023】
好ましい態様において、針の下側先端部は、使用前の単位投与量を含んでいる場合は実質的に平らな配向(例えば、ベベル端、閉鎖端、またはシール端)を有し、かつ、皮膚の穿刺時にピークが形成されるように構成され、かつ先端部は、使用中に調合物が先端部を通って押し出される際に伸展する能力を有し、これにより先端部から調合物が流出することを可能にする。
【0024】
特定の好ましい態様においては、使用中に皮膚に複数の穿刺が行われ、これにより個別の注射体積を小さく保ったまま治療用薬剤が(合計で)より大量に同時投与されるよう、複数の針システムがハウジング内に含まれる。より大きな表面を露出することは、例えばワクチンの投与(ある領域内でより多数の抗原提示細胞と接触するため)などに有用である。
【0025】
特定の好ましい態様においては、より大きな体積の治療用調合物を保持するため、針の下側先端部に対して針の上部が滑らかに拡張される。針の拡張は、スラリーが狭窄を受けることなく針の中を通過しかつ針の端から出るような様式で実施される。
【0026】
本発明はさらに、安定でありかつ使用前に冷蔵または再調製を必要としない皮内投与用の注射用調合物であって、薬学的に許容される担体中に均一に含まれた有効量の治療用薬剤を含む約0.1〜約10マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物であって固体含有量が約20〜約85重量%であり特定の好ましい態様においては約50〜80%である超濃縮調合物を含む注射用調合物に関する。治療用薬剤の平均粒径は10ナノメートル(0.01 マイクロメートル)〜約100マイクロメートルでありかつ約1 mmより大きい粒子はなく、特定の態様においてより好ましくは平均粒径が約0.1〜約25マイクロメートルでありかつ約50マイクロメートルより大きい粒子はなく、特定の態様においては治療用薬剤の平均粒径が約1〜約10マイクロメートルである。
【0027】
特定の好ましい態様において、調合物は、調合物に揺変特性を与える担体(例えば1つまたは複数のポリマー)をさらに含む。治療用薬剤は、好ましくは、薬学的に許容される揺変性の担体中に均一に組み込まれ、かつ、調合物はペーストまたはスラリーの形態である。
【0028】
特定の好ましい態様において、治療用薬剤は、薬学的に許容される担体中に均一に含まれる。担体は好ましくは生体適合性を有しかつパウダーに対して非溶媒である。特定の好ましい態様において、担体は、粒子の流動を可能にするような様式で粒子間の空間を満たす。特定の態様において、担体は、安息香酸アルキル、安息香酸アリール、安息香酸アラルキル、トリアセチン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アルカン、環式アルカン、塩素化アルカン、フッ素化アルカン、パーフルオロ化アルカン、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0029】
特定の好ましい態様において、注射用調合物は放出を制御した(徐放の)形態である。このような態様において調合物は、例えば、動物の表皮層、真皮層、または皮下層への注射による投与の際に調合物からの治療用薬剤の放出を遅くするのに有効な量の薬学的に許容されるポリマーを含んでいてもよい。追加または代替として、動物の表皮層、真皮層、または皮下層への注射による投与の際に調合物からの治療用薬剤の放出を制御するため、治療用薬剤をリポソームに組み込むかまたは多糖および/もしくはその他のポリマーと結合もしくは混合させてもよい。特定の好ましい態様において、生体適合性ポリマー、およびポリマーとともに粘性のゲルを形成しかつ組成物による水の取り込みを制限する水和性の低い生体適合性溶媒に治療用薬剤を組み込んでもよい。そのような組成物は、参照としてその全部が本明細書に組み入れられる米国特許第6,130,200号(Brodbeck, et al.)に説明されており、例えば、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)コポリマーを、安息香酸の低級アルキルエステルまたは低級アラルキルエステルを含む溶媒であってポリマーとともに可塑化してゲルを形成するのに有効な量の溶媒とともに用いてもよい。
【0030】
本発明の一部はさらに、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行うため動物の表皮層、真皮層、または皮下層に注射用調合物を投与するための方法であって、約0.1〜約10マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物(例えばスラリーまたはペースト)であって固体含有量が約20〜約85重量%でありかつ有効量の治療用薬剤を含む調合物を動物の皮膚の表皮層、真皮層、または皮下層に注射する段階を含む方法に関する。
【0031】
好ましい態様において、治療用薬剤は、ゲージ数の小さい針(例えば27〜30ゲージ)による注射に適した平均粒径まで粒径を小さくするため、例えば噴霧乾燥または凍結乾燥により加工される。
【0032】
好ましい態様において、治療用薬剤は、薬学的に許容される非水溶性または半水溶性の担体中に組み込まれる。さらに好ましい態様において、調合物は、注射装置から注射される際に揺変特性を示す。
【0033】
本発明の一部はさらに、本発明の注射用調合物、注射装置、および調製方法を用いて動物(例えばヒトの患者)を治療する方法に関する。
【0034】
本発明の目的において、「治療用薬剤」という用語は、身体状態、体調不良、または疾患の予防、診断、緩和、処置、または治療に用いられる薬剤およびワクチンなどを含む。
【0035】
「皮内」という用語は、皮膚の表皮層、真皮層、または皮下層への投与を含む。
【0036】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明の化合物を動物またはヒトに送達するための、薬学的に許容される溶媒、沈殿防止剤、または媒体(vehicle)を意味する。担体は液体、半固体、または固体であってもよい。
【0037】
「薬学的に許容される」成分、賦形剤、または構成要素という用語は、適度な利益/リスク比に鑑みて不当な有害副作用(毒性、刺激、およびアレルギー反応など)を起こすことなくヒトおよび/または動物に使用するのに適したものであることを意味する。
【0038】
「治療用薬剤」という用語は、単独か他の薬学的賦形剤もしくは不活性成分との組合せかにかかわらず、ヒトまたは動物に投与した際に、望ましく、利益があり、かつ多くの場合薬理学的な効果をもたらす薬剤を意味する。
【0039】
「化学的安定性」という用語は、治療用薬剤に関して、酸化または加水分解などの化学経路により生じる分解産物の割合が許容範囲内であることを意味する。具体的には、意図された製品保管温度(例えば室温)で1年間保管した場合;30℃/相対湿度60%で1年間保管した場合;または、40℃/相対湿度75%で1ヵ月間、好ましくは3ヵ月間保管した場合に生じる分解産物がわずか約20%である場合に、その調合物は化学的に安定であるとみなす。
【0040】
「物理的安定性」という用語は、治療用薬剤に関して、生じる凝集体(例えば二量体、三量体、およびそれ以上の重合体)の割合が許容範囲内であることを意味する。具体的には、意図された製品保管温度(例えば室温)で1年間保管した場合;30℃/相対湿度60%で1年間保管した場合;または、40℃/相対湿度75%で1ヵ月間、好ましくは3ヵ月間保管した場合に生じる凝集体がわずか約15%である場合に、その調合物は物理的に安定であるとみなす。
【0041】
「安定な調合物」という用語は、室温で2ヵ月間保管した場合に化学的かつ物理的に安定な治療用薬剤が少なくとも約65%残っていることを意味する。特に好ましい調合物は、これらの条件下で化学的かつ物理的に安定な治療用薬剤が少なくとも約80%残る調合物である。さらに特に好ましい安定な調合物は、滅菌照射(例えばγ線、β線、または電子ビームの照射)後に分解を示さない調合物である。
【0042】
「生物学的利用能」という用語は、本発明の目的において、治療用薬剤が調合物から吸収される程度と定義される。
【0043】
「全身の」という用語は、対象への有益薬剤の送達または投与に関して、対象の血漿中において有益薬剤が生物学的に有意なレベルで検出可能であることを意味する。
【0044】
「ペースト」という用語は、粘性の半固体を形成するため薬学的に許容される粘稠度の高い担体に分散させた治療用薬剤の濃縮物を意味する。
【0045】
「スラリー」という用語は、希薄なペーストを意味する。
【0046】
「放出制御」という用語は、本発明の目的において、治療用薬剤の血中(例えば血漿中)濃度が治療域内に維持されかつ約1時間またはそれ以上、好ましくは12時間またはそれ以上にわたって毒性濃度未満に維持されるような速度で治療用薬剤を放出することと定義される。
【0047】
「皮内」という用語は、動物(例えばヒト)の皮膚の表皮層または真皮層の中を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の注射装置の断面図である。
【図2】図1の注射装置の外部側面図である。
【図3】本発明の注射装置のばね機構の配置を示した断面図である。
【図4】本発明の注射装置の外部ハウジングおよび安全スリーブを示した図である。
【図5】図5a〜5bは、本発明の注射装置について皮膚と装置との相互作用を示した側面図である。図5cは、図5bの装置の断面図である。
【図6】ガス圧自動注射器を用いた、本発明の注射装置の別の態様を示した図である。
【図7】扁平型ガス式自動注射器である、本発明の注射装置の別の態様を示した図である。
【図8A】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8B】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8C】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8D】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8E】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8F】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
詳細な説明
特定の好ましい態様において、本発明の方法、調合物、および装置は、動物の表皮層、真皮層、または皮下層に治療用薬剤を投与することに関する。
【0050】
針/シリンジによる注射に伴う疼痛の一般的な原因であって本発明により解決される原因は少なくとも3つある。これら疼痛の原因は以下の変数によってさまざまである:(i)典型的な液体の投与において患者に送達される液体の体積、(ii)針のサイズ(直径、太さ)、および(iii)注射の深度。これらの各変数に対処することにより低痛または無痛の投与が実現される。
【0051】
患者の皮内空間への治療用薬剤の無痛投与を実現し、これにより薬剤の全身循環を生じさせるかまたはワクチンの場合に抗原を免疫系に接触させるための本発明の代替要素は、少なくとも4つある。これらの要素は以下のとおりである:(i)小体積の注射;(ii)保護溶液(典型的には非水溶性の溶液)に囲まれた、濃縮された治療用薬剤(例えば薬)の粒子群または分散固体調合物;(iii)薄い壁を有する、ゲージ数の小さい針;および(iv)治療用薬剤の濃縮分散物(例えばスラリー)の、皮膚の表皮層または真皮層への浅い注射。さらに本発明は、注射の速度にも対処し、隠れ針を有する自動注射器を提供する。
【0052】
調合物
治療用の注射の大多数で用いられる標準的な注射の体積は、あまりにも大きいため表皮層、真皮層、または皮下層の疼痛を防ぐことができない。したがって、動物(例えばヒトの患者)に対して治療用薬剤を低痛または無痛で注射(または投与)するには、注射体積をはるかに小さくする必要がある。標準的な注射は、患者の皮下または筋肉内の領域に対して行われる。こうした深い部位が利用されるのは、浅い真皮の部位と比較して組織が伸展しやすく、多くの治療用注射剤で必要とされる0.1〜1.0 mlの注射体積を収容できるからである。大きな体積の粘性物質の注射は、小さな体積の希薄物質の注射と比較してより強い疼痛を引き起こす傾向がある。しかし、粘性の薬物は管腔の大きい針を必要とするため、これまで皮内への投与は行われていない。そのような針は皮内投与には使用できない。さらに、液体調合物を皮内に注射する場合には組織の傷害を防ぐため低速度で行う必要があるうえ、体積が0.5 mlを超える場合は皮内への投与ができない。
【0053】
本発明の注射用調合物は必要送達量(例えば薬物治療で必要とされる用量)の治療用薬剤を含み、かつ、好ましくはその体積は小さく、例えば、治療的用量の治療用薬剤を含む注射用調合物の体積は少なくとも約0.01 マイクロリットルであり(下限は充填装置の機能である)、より好ましくは約1〜約250マイクロリットルである。このことは、特定の好ましい態様において、その用量の治療用薬剤を、本発明に従って注射に適した担体中に安定した形態で濃縮することによって実現される。特定の態様において、体積の小さい注射用の用量は、その用量の治療用薬剤を安定した形態で好適な担体中に濃縮することによって実現される。
【0054】
好ましくは、本発明の体積の小さな調合物は、希釈、再調製、または冷蔵されることなく投与される。好ましい態様において、治療用薬剤の治療的用量は、注射可能なペースト(固体)またはスラリー中に治療用薬剤を濃縮することによって実現される。
【0055】
標準的な注射は液体の形態で投与される。製品は液体または凍結乾燥パウダーとして販売され、注射前に水性の担体で再調製する必要がある。多くの治療用タンパク質およびワクチンは、保管中の安定性を高めるため固体粒子の形態で製造される。これらの調合物は注射前に滅菌水、リン酸緩衝溶液、または等張生理食塩水に溶解される。これに対して、本発明の特定の好ましい態様において、治療用薬剤は、製薬業界で注射用調合物の調製に日常的に用いられているものと同じ粒子調製加工技術(例えば噴霧乾燥、凍結乾燥など)を用いて濃縮される。ただし、本発明の体積の小さい粒子調合物は、本発明の目的に基づき、再調製製品で必要な注射前の調合物の希釈を行うことなく、動物(例えばヒトの患者)に注射またはその他の方法で投与される。
【0056】
注射のしやすさを補助するため、治療用薬剤を含む濃縮固体は液体で囲み、これによりスラリーまたはペーストを形成する。本発明の調合物は、広い範囲の固体含有率を有していてよく、典型的には約1.0〜約99.0%の固体を含み、より好ましくは約20〜約80%の固体を含む。薬剤調合物の粒子の大きさ、調合物の固体含有率、および針の太さは、調合物の注射に必要な圧力に影響を及ぼす。濃縮固体調合物は、ペイロード(用量分の濃縮固体調合物)を送達するため装置を作動させた際に針から流出できるような様式で注射装置の中に配置されかつ同装置の中に存在する。
【0057】
または、特定の態様においては、用量分の固体粒子治療用薬剤を担体中に組み込まなくてもよい。そのような別の態様において、注射装置の針を通過する調合物の流動性は、注射装置の針部分の内面(および/もしくは固体調合物が表面接触する装置のその他任意の部分)に塗布されたまたは薬剤粒子の外側にコーティングされた潤滑物質によりもたらされる。そのような材料は、例えばグリースまたはシリコーン油であってもよい。
【0058】
本発明の特定の好ましい態様において、本発明の注射用調合物は、以下の目的のためスラリーまたはペーストとして有利に調製される:(i)固体濃縮物の注射に必要な圧力を低下させるため、(ii)ペーストの均一な送達を促すため、ならびに(iii)凝集、酸化、および加水分解に関係する分解経路に対する保管安定性を高めるため。
【0059】
特定の好ましい態様において、治療用薬剤を含むスラリーまたはペーストは、長期間(例えば、許容できないレベルの治療用薬剤の分解を使用前にきたすことなく所望の貯蔵寿命を調合物に与えるのに十分な期間)にわたって治療用薬剤を安定な形態に保つ。スラリーまたはペーストの特性として望ましいのは、非水溶性であり、かつ粒子薬剤調合物に対して無反応性であることである。そのような態様においては、スラリーまたはペーストを注射装置自体の中で直接保管することが可能である。または、治療用薬剤の粒子調合物は乾燥(例えば凍結乾燥)させて注射装置とは別に保管してもよく、このことは当業者に理解されるものと思われる。その後、使用前に、治療用薬剤の粒子調合物に十分量の液体を添加してスラリーまたはペースト(超濃縮半固体)を調製してもよく、これを注射装置に導入してもよい。このような態様は濃縮の段階を必要としない。
【0060】
特定の好ましい態様においては、半固体調合物の中に組み込まれた治療用薬剤の安定性を確保するため、半固体調合物を安定化させる必要がある。注射用調合物の安定性は、スラリーまたはペーストに安定剤を含めることによって実現される。別の好ましい態様においては、安定剤を含めることに対する追加または代替として、治療用薬剤の安定性の中立性を増強または維持できる液体または液体混合物を注射用担体の一部または全部として含めてもよい。そのような安定剤としては、例えば界面活性剤、プルロニック、ゲル、および両性化合物がある。特定の態様において、スラリー調合物に含まれる治療用薬剤は、トリアセチン、n-メチル-2-ピロリドン、または安息香酸ベンジルなどの物質を添加することによって(これらは例えば噴霧乾燥などの直後に添加してもよい)、望ましくない分解に対して安定させてもよい。安定剤のその他の例としては、鉱油、パーフルオロデカリン、安息香酸エチル、オクタン、プルロニック、グリコール酸化合物、アミノ酸、ゲルを形成するポリマー(例えばPEG)、多価アルコール、油、およびワックスがある。特定の好ましい態様において、安定剤は、治療用薬剤を含む(元の)パウダーに噴霧乾燥もしくは凍結乾燥の前に添加される。または、担体に安定剤を直接添加してもよい。
【0061】
治療用薬剤がタンパク質または核酸含有粒子を含む特定の好ましい態様においては、安定しかつ流動性を有する非水溶性調合物を得るため、好ましくは治療用薬剤を、無水、非プロトン性、無極性でかつ反応性の低い媒体(例えば鉱油、パーフルオロデカリン、メトキシフルラン、パーフルオロトリブチルアミン、およびテトラデカンなど)に懸濁する。そのような調合物は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,264,990号に説明されている。他の好ましい態様においては、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,290,991号に説明されているものなどの多価アルコール安定剤に含めることによって調合物を安定化させてもよい。
【0062】
特定の好ましい態様において、安定剤は、調合物の約1〜約80重量%を占める。しかし、本発明の調合物に含まれる安定剤(例えば界面活性剤)の量を決定するのは、最終産物が提供する調合物が安定かつ薬学的に許容されるものでなければならないという制限事項である。薬学的に許容されるその他の好適な安定剤としては、アラビアゴム、塩化ベンザルコニウム、コレステロール、乳化ワックス、モノステアリン酸グリセリン、ラノリンアルコール、レシチン、ポロクサマー、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、およびトリエタノールアミンなどがある。
【0063】
例えば調合物が注射装置の針を通過することを助けるため、および/または固体の治療用薬剤の溶解を助けるためなどの目的で、半固体の治療用調合物に界面活性剤を組み込んでもよい。本発明で使用される界面活性剤は、一般的に、薬学的に許容される陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性(両親媒性/両染性)界面活性剤、および非イオン界面活性剤を含む。
【0064】
薬学的に許容される好適な陰イオン界面活性剤としては、例えば、一価のアルキルカルボン酸塩、アシルラクチル酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン酸塩、多価のアルキル炭酸塩、N-アシルグルタミン酸塩、脂肪酸-ポリペプチド凝縮物、硫酸エステル、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む)、エトキシ化アルキル硫酸塩、エステル結合スルホン酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、およびリン酸エトキシ化アルコールなどがある。
【0065】
薬学的に許容される好適な陽イオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキル第四アンモニウム塩、ジアルキル第四アンモニウム化合物、アミドアミン、およびアミンイミドなどがある。
【0066】
薬学的に許容される好適な両性(両親媒性/両染性)界面活性剤としては例えば、N-置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、スルホベタイン、およびN-アルキルβ-アミノプロピオン酸などがある。
【0067】
薬学的に許容される好適な湿潤剤(可溶化剤)は薬学的に許容される非イオン界面活性剤を含み、そのような界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレン化合物、エトキシ化アルコール、エトキシ化エステル、エトキシ化アミド、ポリオキシプロピレン化合物、プロポキシル化アルコール、エトキシ化/プロポキシル化ブロックポリマー、プロポキシル化エステル、アルカノールアミド、アミンオキシド、多価アルコールの脂肪酸エステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリル脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびグルコース(デキストロース)エステルなどがある。
【0068】
特定の態様において、好ましい界面活性剤は例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、オクタデシルアミン、リゾレシチン、ジメチル-臭化ジオクタデシルアンモニウム、N,N-ジオクタデシル-N'-N'ビス(2-ヒドロキシエチル-プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニック多価アルコール(例えば、所望の量のアルキレンポリオキシド(Pluronic PE 4300の商品名でBASFより販売されている))などを含む。具体的な界面活性剤は、適合性および治療用薬剤を溶解または湿潤する能力を考慮して、治療用薬剤との関連で選択されるべきである。
【0069】
同様に、針による固体の注射容易性を増強するような任意の液体も本発明の実現可能な局面とみなされるべきである。したがって、特定の態様において、注射用のスラリー調合物は1つまたは複数の注射容易性向上剤を含む。そのような薬剤としては例えばシリコーン油、ワックス、オイル、潤滑剤、グリース、およびワセリンがあるが、これらに限定されることはない。
【0070】
好適な薬学的担体はRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1995に説明されており、そのうち一部は天然高分子構造の液体もしくは懸濁液、または界面活性剤を基材とする系を含む。特に好適な担体としては、トリアセチン溶液に溶解したデキストラン(水含有量0〜7%);弱い溶媒(NMP、安息香酸アルキル、トリアセチン、またはこれらの混合物)に溶解したPLGAなどがあるが、これらに限定されることはない。「溶媒」という用語は、粘弾性物質を溶解する薬学的に許容される溶媒を意味する。
【0071】
特定の好ましい態様において、本発明に使用する液体担体は、揺変特性と、針から排出される際に固体をペースト中に懸濁させるための正の降伏値とを有する。降伏値とは静止時に液体に印加される力または圧力の測定値である。ニュートン流体は、動きを生じない限り重量以外の力を印加できるため、ずれ応力がゼロである。しかし、多くの粘弾性溶液が粘性を有するものの、正の降伏値は溶液の粘稠度の関数ではない。粘弾性溶液中に懸濁された粒子を支持および運搬するのは、溶液の粘稠度ではなく、液体中の三次元構造の存在である。粒子を十分に懸濁させるには、溶液はその断面にかかる重力より大きい降伏値をもつことが好ましく、例えばPLGAのトリアセチン溶液は重力による力の7倍に等しい降伏値を有する。好適な濃度を有する揺変性の溶液または粘稠な溶液により、薬剤を溶液中に均一に分散させることができる。この特性がないと、力が印加された場合に液体が針から流出して固体が後に残り、最終的に針が詰まって、投与が失敗する。加えて、本発明の目的には、構造溶液が流動条件下でもその特性を保つことが重要である。このことが満たされない場合は、懸濁された粒子が細い針の通過中に非懸濁状態となり、詰まりを生じる可能性がある。
【0072】
注射用の調合物は薬学的に許容されるその他の注射用成分を含んでいてもよく、そのような成分としては薬学的に許容される注射用の追加の賦形剤などがあるが、これに限定されることはない。スラリーまたはペーストに含まれるそのような追加の成分は、好ましくは、適当な圧力下で固体の移動を生じさせるのに必要な流動特性を有する(すなわち、調合物の注射容易性を損なわない)。一般的な法則として、シリンジにより生成され得る圧力の下限は拇指による圧力(例えば数ニュートン)である。
【0073】
このような追加の成分として例えば、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、またはメチオニンなどの抗酸化剤の単用または併用は好適な安定剤である。この他、クエン酸およびその塩、もしくはEDTAナトリウム;塩化ベンザルコニウム、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールなどの防腐剤も使用される。
【0074】
本発明の方法においては任意の好適な用量の治療用薬剤を投与してよい。特定の用途のため選択される化合物またはその塩もしくはプロドラッグ、担体、およびその量は、恒温動物またはヒトの種、治療対象とする癌または特定のウイルス感染の種類、および、試験で観察された有効発育阻止濃度によって大きく異なると考えられる。無論、投与される用量は既知の要因によって異なると考えられ、そのような要因としては例えば、特定の化合物、塩、もしくはそれらの組合せの薬力学特性;投与対象の年齢、健康状態、もしくは体重;症状の性質および範囲;薬剤および患者(患畜)の代謝特性;併用される治療法の種類;治療の頻度;または所望の効果などがある。
【0075】
本発明に有用なポリマーは好ましくは生分解性および/または生体適合性を有し、例えば以下のようなポリマーがあるがこれらに限定されることはない:ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、コハク酸塩、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ならびにこれらのコポリマー、ターポリマー、および混合物。
【0076】
現在好ましいポリマーはポリラクチド、ポリグリコリド、ならびに乳酸およびグリコール酸のコポリマーである。これらのポリマーは、本発明により実現される有利な結果に実質的な影響を及ぼさない量の他のコモノマーを含んでいてもよい。本明細書において、「乳酸」という用語はL-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、およびラクチドの各異性体を含み、「グリコール酸」という用語はグリコリドを含む。特に好ましいのはポリ(ラクチド-コ-グリコリド)グリコリドであり、これは一般的にPLGAと呼ばれる。同ポリマーは乳酸/グリコール酸のモノマー比が約100:0〜約15:85であってもよく、好ましくは約60:40〜約75:25であり、特に有用なコポリマーは乳酸/グリコール酸のモノマー比が約50:50である。
【0077】
本発明により送達してもよい薬剤としては、以下の部位に作用する薬剤がある:末梢神経、アドレナリン作動性受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、シナプス部、神経‐効果器接合部、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、オータコイド系、消化器系および排泄系、外皮系、呼吸器系、造血系、ヒスタミン系、ならびに中枢神経系。好適な薬剤は、例えば以下から選択してもよい:タンパク質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、抗炎症性コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗痙攣薬、眼科用薬剤、抗ヒスタミン薬、抗結核薬、コリン作動薬、抗コリン作動薬、交感神経作動薬、交換神経遮断薬、抗高血圧薬、血管拡張剤、トランキライザー、抗うつ薬、抗凝固剤、心臓病薬、、気管支拡張剤、去痰薬、尿生殖器平滑筋弛緩剤、ビタミン、止血剤、抗甲状腺薬、重金属アンタゴニスト、興奮剤、鎮静剤、制吐薬、自律神経薬、胃腸薬、電解質、神経筋遮断薬、皮膚科用薬剤、ならびにこれらの種の半合成類似体および合成類似体。
【0078】
本発明の組成物により送達してもよい薬剤の例としては以下のものがあるが、これらに限定されることはない:抗ヒスタミン薬(例えばマレイン酸アザタジン、マレイン酸ブロムフェニルアミン、マレイン酸カルビノキサミン、マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、コハク酸ドキシラミン、塩酸メトジラジン、プロメタジン、酒石酸トリメプラジン、クエン酸トリペレナミン、塩酸トリペレナミン、塩酸トリプロリジン、セチリジン、クレマスチン、フェキソフェナジン);フェノチアジン(例えばプロクロルペラジン);ニコチン受容体アンタゴニスト(例えば塩酸メカミラミン);抗生物質(例えばペニシリンVカリウム、クロキサシリンナトリウム、ジクロキサシリンナトリウム、ナフシリンナトリウム、オキサリシンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、リン酸クリンダマイシン、塩酸クリンダマイシン、塩酸パルミチン酸クリンダマイシン、塩酸リンコマイシン、ノボビオシンナトリウム、ニトロフラントインナトリウム、塩酸メトロニダゾール、エリスロマイシン、アセチルスルフィソキサゾール);抗ウイルス薬(例えばジドブジン);駆虫剤(例えばピペラジン);抗結核薬(例えばイソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシン);コリン作動薬(例えば塩化コリン、塩化アセチルコリン、塩化メタコリン、塩化カルバコール、塩化ベタネコール、ピロカルピン、ムスカリン);抗コリンエステラーゼ薬(例えば塩化アンベノニウム、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン、エドロホニウム);抗ムスカリン薬(例えばアトロピン、スコポラミン、臭化メチルアニソトロピン、臭化イプラトロピウム、臭化クリジニウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、ピレンゼピン、塩酸ジシクロミン、グリコピロレート、メチル硫酸ヘキソシクリウム、臭化メチルホマトロピン、硫酸ヒオスシアミン、臭化メタンテリン、臭化水素酸ヒオスシン、臭化オキシフェノニウム、臭化プロパンテリン、塩化トリジヘキセチル、ヨウ化イソプロパミド);交感神経作動薬(例えばイソプロテレノール、フェニルエチルアミン、ノルエピネフリン、ドブタミン、コルテロール、エチルノルエピネフリン、イソエタリン、メタプロテレノール、テルブタリン、メタラミノール、フェニレフリン、チラミン、プレナルテロール、メトキサミン、アルブテロール、メフェンテルミン、プロピルヘキセドリン、メタンスルホン酸ビトルテロール、エフェドリン、塩酸エフェドリン、硫酸エフェドリン、硫酸オルシプリナリン、フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸リトドリン、硫酸サルブタモール);交換神経遮断薬(例えば塩酸フェノキシベンザミン);乗物酔い治療薬(例えばジフェニドール、塩酸メクリジン、スコポラミン);鉄製剤(例えばグルコン酸第一鉄、硫酸第一鉄、デキストラン鉄);止血剤(例えばアミノカプロン酸);心臓病薬(例えば塩酸アセブトロール、塩酸ジルチアゼム、リン酸ジソピラミド、酢酸フレカイニド、塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、グルコン酸キニジン、マレイン酸チモロール、塩酸トカイニド、塩酸ベラパミル;四硝酸エリトリチル、ミルリノン、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン,、リドフラジン、チアパミル、ガロパミル、アムロジピン、ミオフラジン);抗高血圧薬(例えば塩酸クロニジン、塩酸ヒドララジン、酒石酸メトプロロール、リシノプリル、エナラプリル、エナラプリラット、カプトプリル、ラミプリル;ミノキシジル);血管拡張剤(例えば塩酸パパベリン、エポプロステロール);非ステロイド性抗炎症薬(例えばサリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸ナトリウム、ナプロキセンナトリウム、トルメチンナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、ジフルニサル、フルルビプロフェン、フェンブフェン、フルプロフェン、アルクロフェナック、メフェナム酸、フルフェナム酸);COX-2阻害薬(例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ);利尿剤(例えばマンニトール、アセタゾラミド、メタゾラミド、ベンドロフルメサイアザイド、メトラゾン、クロロチアジド、インダパミド、エタクリン酸、フロセミド、ブメタニド、スピロノラクトン、アミロライド);アヘン剤アゴニスト(例えば塩酸コデイン、リン酸コデイン、硫酸コデイン、酒石酸デキストロモルアミド、酒石酸水素ヒドロコドン、塩酸ヒドロモルホン、塩酸ペチジン、塩酸メタドン、硫酸モルヒネ、酢酸モルヒネ、乳酸モルヒネ、メコン酸モルヒネ、硝酸モルヒネ、第一リン酸モルヒネ、酒石酸モルヒネ、吉草酸モルヒネ、臭化水素酸モルヒネ、塩酸モルヒネ、フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ブトルファノール、ブプレノルフィン、アルフェンタニル、塩酸プロポキシフェン);アヘン剤アンタゴニスト(例えば塩酸ナロキソン、塩酸ナルトレキソン、ナロルフィン、レバロルファン);抗痙攣薬(例えばカルバマゼピン、フェニトインナトリウム、トロキシドン、エトスクシミド、バルプロ酸ナトリウム、トリメタジオン、フェナセミド、アセタゾラミド、プロガビド);ドーパミン作動性アゴニスト(例えばドーパミン、アポモルヒネ、ペルゴリド、ブロモクリプチン、リスリド);興奮剤(例えばアンフェタミン、塩酸ベンズフェタミン、硫酸デキストロアンフェタミン、リン酸デキストロアンフェタミン、塩酸ジエチルプロピオン、塩酸フェンフルラミン、塩酸メタンフェンタミン、塩酸メチルフェニデート、酒石酸フェンジメトラジン、塩酸フェンメトラジン、クエン酸カフェイン);鎮静剤(例えば塩酸ヒドロキシジン、メチプリロン);去痰薬(例えばヨウ化カリウム);制吐薬(例えば塩酸ベンズキナミド、塩酸メトクロプラミド、塩酸トリメトベンズアミド、オンダンセトロン、グラニセトロン);胃腸薬(例えば塩酸ラニチジン、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、エソメプラゾールマグネシウム、ラベプラゾール);スタチン(例えばアトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、セリバスタチン);重金属アンタゴニスト(例えばペニシラミン、塩酸ペニシラミン);抗甲状腺薬(例えばメチマゾール);尿生殖器平滑筋弛緩剤(例えば塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン);抗コリンエステラーゼ薬(例えばフィソスチグミン、ネオスチグミン、エドロホニウム、イソフルロフェート);神経筋遮断薬(例えばツボクラリン、アルクロニウム、ヨウ化メトクリン、ガラミントリエチオダイド、臭化パンクロニウム、臭化ベクロニウム、ベシル酸アトラクリウム、塩化スクシニルコリン、臭化ヘキサフルオレニウム、アルクロニウム塩化、臭化ファザジニウム、臭化デカメトニウム);神経節刺激薬(例えばニコチン、ロベリン、テトラメチルアンモニウム);神経節遮断薬(例えばヘキサメトニウム、トリメタファン);αアドレナリン受容体アンタゴニスト(例えばフェントラミン、トラゾリン、プラゾシン、テラゾシン、ドキサゾジン、トリマゾシン、ヨヒンビン、インドラミン);βアドレナリン受容体アンタゴニスト(例えばプロプラノロール、メトプロロール、ナドロール、アテノロール、チモロール、エスモロール、ピンドロール、アセブトロール、ラベタロール);麻酔剤(例えばブピバカイン、リドカイン、テトラカイン、メピバカイン、レボブピカイン、プリロカイン、アルチカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、コカイン、ハロタン、エンフルラネム、イソフルラン、プロポフォール、プロカイン、メトキシフルラン);ベンゾジアゼピン(例えばアルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロラゼペート、デモゼパム、ジアゼパム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム);バルビツレート(例えばアモバルビタール、アミルバルビトン、ナトリウム、セコバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メフォバルビタール、エントバルビタール、フェノバルビタール、タルブタール、チオペンタール、チアミラール);鎮静催眠剤(例えば抱水クロラール、エトクロルビノール、エチナメート、グルテチミド、メプロバメート、メチプリロン、パラアルデヒド);抗精神病薬(例えばリチウム、チオチキセン、クロルプロマジン、塩酸トリフルプロマジン、メソリダジンベシレート、塩酸チオリダジン、マレイン酸アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、塩酸トリフルオペラジン、クロルプロチキセン、塩酸チオチキセン、ハロペリドール、コハク酸ロクサピン、塩酸モリンドン、ピモジド);抗うつ薬(例えばイミプラミン、アミトリプチリン、トリミプラミン、ドキセピン、デシプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、アモクサピン、デシプラミン、マプロチリン、トラゾドン、フルオキセチン、イソカルボキサジド、硫酸フェネルジン、硫酸トラニルシプロミン、ベンラファキシン);抗コリン作動薬(例えばメタンスルホン酸ベンズトロピン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸プロシクリジン、ビペリデン、塩酸エトプロパジン);鎮咳薬(例えばデキストロメトルファン、ベンゾナテート、フォルコジン、レボプロポキシフェンナプシレート);副腎皮質ステロイド(例えばデキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、酢酸コルチゾン、フルニソリド、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン);アンドロゲン(例えばテストステロン、ナンドロロン、ダナゾール、フルオキシメステロン、スタノゾロール、テストラクトン);抗アンドロゲン薬(例えば酢酸シプロテロン、フルタミド、フィナステリド);βアドレナリン作動薬(例えばフォルメテロール、イソプロテレノール、アルブテロール、ビトルテロール、サルメテロール);性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体(例えばロイプロリド、ゴセレリン、ブセレリン);メディエータ放出阻害剤(例えばクロモリンナトリウム、ネドクロミルナトリウム);高ロイコトリエン薬(例えばザフィルルーカスト、ジレウトン、モンテルーカスト);プロゲスチン(例えばプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、二酢酸エチノジオール、ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、酢酸メゲストロール);プレグナジエン(例えば酢酸クロルマジノン);抗プロゲスチン薬(例えばミフェプリストン);エストロゲン(例えばエストラジオール、エチニルエストラジオール、メストラノール、キネストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン);抗エストロゲン薬(例えばクロミフェン、タモキシフェン);スルホニル尿素剤(例えばトルブタミド、クロルプロパミド、グリブリド、グリピジド、グリクラジド、トラザミド);糖尿病薬(例えばフェンフォルミン、シグリタゾン);抗血小板薬(例えばジピリダモール、チクロピジン);血栓溶解剤(例えばストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アルテプラーゼ);抗凝固剤(例えばワルファリン、アニシンジオン、ジクマロール、ジフェナジオン、四硝酸エリトリチル、ヘパリン、チンザパリン、エノキサパリン);ホルモン(例えば甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、カルシトニン、インスリン);コルチコトロピン(例えば副腎皮質刺激ホルモン);成長ホルモン放出ホルモン(例えばソマトスタチン);メチルキサンチン(例えばテオフィリン、カフェイン、アミノフィリン);鎮痙剤(例えばチザニジン);ビタミン(例えば葉酸、塩酸チアミン、アスコルビン酸、クラシトリオール;メナキノン、フィトナジオン);抗痛風剤(例えばコルヒチン、アロプリノール);ビスホスホネート(例えばリセドロネート、エチドロン酸、チルドロネート);抗腫瘍薬(例えばテモゾロミド、ターグレチン、ビンカミン、メトトレキサート、ビンクリスチン、シクロフォスファミド
、エトポシド、メクロレタミン、シクロスポリン、ビンブラスチン、フルオロウラシル);化学保護剤(例えばアミフォスチン);疥癬治療薬(例えばアシトレチン);抗痴呆薬(例えばリバスチグミン、ドネペジル、テトラヒドロアミノアクリジン);子宮刺激剤(例えばエルゴノビン、メチルエルゴノビン);抗片頭痛薬(例えばジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン);糖タンパク質(例えばエリスロポイエチン);コロニー刺激因子(例えばフィルグラスチム);酵素(例えばアルグルセラーゼ、L-アスパラギナーゼ);ポリペプチド(例えばグルカゴン);サイトカイン(例えばαインターフェロン、βインターフェロン);ワクチン(例えばカルメット‐ゲラン杆菌);眼科用薬剤(例えばマレイン酸チモロール、ドルゾラミド、ベタキソロール、ジピベフリン、ピロカルピン、ラタノプロスト、ウノプロストン、ブリンゾラミド、トラボプロスト);皮膚科用薬剤(例えばイソトレチノイン、エトレチナート、トレチノイン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、フルオシノロンアセトニド);抗パーキンソン病薬(例えばレボドパ、カルビドパ、トルカポン);抗尿結石薬(例えばチオプロニン);分類されない薬剤(例えば塩酸アマンタジン、ロイコボリンカルシウム、メチレンブルー、塩化ブラリドキシム、ジアゾキシド、エチンチジン、テトラトロール、シルデナフィル、フェナクリコドール);セロトニンのアゴニストおよびアンタゴニスト;以下のような主な治療薬を全て含むその他の物質:風邪薬、抗嗜癖薬、抗アレルギー薬、制吐薬、抗肥満薬、骨粗鬆症治療薬、抗感染症薬、抗ウイルス薬、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、オリゴ糖、エンケファリンおよびその他のオピオイドペプチド、低分子量ヘパリン、皮膚科用薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、電解質、血栓溶解剤、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗片頭痛薬製剤、乗物酔い薬製剤、制吐薬、抗腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、止痒剤、抗精神病薬、解熱薬、抗コリン作動薬、ベンゾジアゼピンアンタゴニスト、血管拡張剤(全身用、冠動脈用、末梢血管用、および脳血管用を含む)、骨刺激剤、中枢神経系刺激剤、催眠剤、免疫抑制剤、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経作動薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドおよびその他の高分子、精神刺激薬、鎮静剤、性機能不全治療薬、トランキライザー、ツベルクリンなど主な診断薬、ならびにその他の過敏症治療薬。
【0079】
本発明の方法により皮内に送達される治療用薬剤は、疾患の予防、診断、緩和、処置、または治療に用いられるワクチンなどであってもよい。調製し本発明の送達システムに使用できるタンパク質およびタンパク質化合物の例としては、生物学的活性を有するタンパク質または疾患もしくはその他の病理的状態の治療に使用できるタンパク質がある。そのようなタンパク質としては以下のものがあるがこれらに限定されることはない:ホルモン、成長ホルモン、低分子量ヘパリン、第VIII因子、第IX因子およびその他の凝固因子、キモトリプシン、トリプシノゲン、αインターフェロン、βガラクトシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、成長因子、凝固因子、酵素、免疫反応刺激物質、サイトカイン、リンフォカイン、インターフェロン、免疫グロブリン、レトロウイルス、インターロイキン、ペプチド、ソマトスタチン、ソマトトロピン類似体、ソマトメジンC、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、LHRH、ロイプロリドなどのLHRH類似体、ナファレリンおよびゴセレリン、成長ホルモン放出因子、絨毛性ゴナドトロピンなどのゴナドトロピン、オキシトシン、オクトレオチド、ソマトトロピン+アミノ酸、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、表皮成長因子、プロラクチン、ソマトトロピン+タンパク質、コシントロピン、リプレシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンなどのポリペプチド、甲状腺刺激ホルモン、カルシトニンおよびその類似体、セクレチン、パンクレオチミン、エンケファリン、グルカゴン、ならびに、体内で分泌されかつ血流によって運搬される内分泌物質など。封入および送達できる他の薬剤としては他に以下のものがある:α1抗トリプシン、インスリンおよびその他のペプチドホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、およびその他の下垂体ホルモン、インターフェロンα、β、およびδ、エリスロポイエチン、GCSF、GM-CSF、M-CSFなどの成長因子、インスリン様成長因子1、組織プラスミノゲン活性化因子、CF4、dDAVP、腫瘍壊死因子受容体、膵酵素、ラクターゼ、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン2、癌抑制タンパク質、細胞傷害性タンパク質、ウイルス、ウイルスタンパク質、組換え抗体および抗体断片、表皮成長因子、エリスロポイエチンおよびその類似体、卵胞刺激ホルモン、G-CSF、グルカゴン、成長因子およびその類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモンアンタゴニスト、ヒルジンおよびヒルジン類似体(ヒルログなど)、IgEサプレッサー、インスリノトロピンおよびその類似体、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモンおよびその類似体、α-1抗トリプシン、抗血管新生剤、アンチセンス、モノクローナル抗体、副甲状腺ホルモンおよびその類似体、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、プロスタグランジンアンタゴニスト、プロスタグランジン、組換え可溶性受容体、組織プラスミノゲン活性化因子、TNF-、ならびにTNFアンタゴニストなど。これら物質の類似体、誘導体、アンタゴニスト、アゴニスト、および薬学的に許容される塩も使用してよい。
【0080】
本発明の調合物に有用なタンパク質化合物は、塩の形態で使用してもよく、好ましくは薬学的に許容される塩の形態で使用する。有用な塩は当業者に周知であり、無機酸、有機酸、無期塩基、または有機塩基の塩を含む。
【0081】
表1に、本発明の開示に従って患者に注射される薬剤、ならびに治療効果を得るための予測必要量および総注射体積(本発明の超濃縮治療用調合物の体積)を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表2に、本発明の注射装置および方法との併用が考えられる種々の治療用薬剤の相対単位投与量を示す。
【0084】
【表2】
【0085】
本発明の好ましい態様において、治療用薬剤は構造をもたない緻密な状態となるよう乾燥され、薬学的に許容される担体で包まれて、最小注射体積の流動固体に形成される。特定の好ましい態様において、乾燥した治療用薬剤は、粒径を小さくするため、当業者に周知であり薬学的に許容される任意の様式で処理される。本発明に有用な治療用調合物の調製には、粒径を操作および/または減少するための種々の方法を用いることができる。そのような粒径減少の方法には、粉砕処理(切削、チョッピング、破砕、研削、粉砕、超微粉砕、ナノサイズ化、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥、研和、ミクロ液体化)も含まれる。
【0086】
本発明の注射用調合物に含まれる濃縮固体粒子の直径は、好ましくは、ナノメートルサイズから針にちょうど入る大きさまでの範囲内である(すなわち、粒子は針の内径より小さい必要がある)。極端な場合、粒径の上限は使用される最大の注射針の直径と等しいが、典型的には粒子の直径は使用される針の内径の1/10より小さい。
【0087】
好ましい態様において、治療用薬剤は、平均粒径が10ナノメートル(0.01マイクロメートル)〜約250マイクロメートルとなりかつ約1 mmより大きい粒子が存在しないように粒径を小さくする処理が施される。より好ましい態様において、治療活性薬剤は、平均粒径が約0.1〜約25マイクロメートルとなりかつ約50マイクロメートルより大きい粒子が存在しないよう粒径が小さくされ、特定の態様においては、粒子が約1〜約10マイクロメートルであることが最も好ましい。固体粒子の粒径をこの範囲まで小さくすることにより、最大の粒子の直径は、本発明に有用な最大の注射針の直径を通過できるよう十分小さくなる。
【0088】
噴霧乾燥技術は当業者に周知である。噴霧乾燥は、1つまたは複数の固体(例えば治療用薬剤)を含む溶液をノズル回転盤またはその他の装置により噴霧化する段階、および、次にその小滴から溶媒を蒸発させる段階を含む。このようにして得られるパウダーの性質は、初期溶質濃度、生成される小滴のサイズ分布、および溶質の除去速度など、複数の変数の関数として決定される。得られる粒子は、溶媒除去の速度および条件に応じて、結晶および/または非晶質固体からなる一次粒子の凝集体を含んでいてもよい。
【0089】
タンパク質、オリゴペプチド、高分子多糖、および核酸などの生物高分子の超微粒子を作製するための噴霧乾燥処理は、米国特許第6,051,256号に説明されている。凍結乾燥技術は当技術分野において周知であり、例えば米国特許第4,608,764号および同第4,848,094号に説明されている。噴霧凍結乾燥処理は例えば米国特許第5,208,998号に説明されている。その他の噴霧乾燥技術は、例えば米国特許第6,253,463号、同第6,001,336号、および同第5,260,306号、ならびにWO 91/16882およびWO 96/09814に説明されている。
【0090】
凍結乾燥技術は当業者に周知である。基本的に、凍結乾燥は、製品を凍結状態(真空下における氷昇華)かつ真空下(穏やかな加熱による乾燥)において行う脱水技術である。これらの条件により製品が安定化し、かつ、酸化およびその他の分解過程が最小限になる。凍結乾燥の条件では処理を低温で行うことができ、したがって、温度に対して不安定な製品も状態が維持される。凍結乾燥の段階としては、前処理、凍結、一次乾燥、および二次乾燥がある。前処理は、凍結前に製品を処理する任意の方法を含む。これには、製品の濃縮、調合物の改変(すなわち、安定性および/または処理しやすさを向上させることを目的とした成分の追加)、高蒸気圧溶媒の低減、または表面積の増大が含まれ得る。前処理の方法には、凍結濃縮、液相濃縮、および、製品の外見を維持することまたは反応産物を凍結保護することを特に目的とした調合などがあり、これらは例えば米国特許第6,199,297号に説明されている。標準的な凍結乾燥条件は、例えば米国特許第No 5,031,336号および「Freeze Drying of Pharmaceuticals」(DeLuca, Patrick P., J. Vac. Sci. Technol., Vol. 14, No 1, Jan./Feb. 1977)、ならびに「The Lyophilization of Pharmaceuticals: A Literature Review」(Williams, N. A., and G. P. Polli, Journal of Parenteral Science and Technology, Vol. 38, No 2, March/April 1984)に説明されている。
【0091】
特定の好ましい態様において、凍結乾燥サイクルの一部は、塊の崩壊を誘導して残留湿分を含む稠密なケーキを形成するため、治療用薬剤調合物のガラス転移温度(Tg)より高い温度で実施される。これに対し、典型的な従来技術の方法では、崩壊を防いで粒子を完全に乾燥させる目的で、ガラス転移温度より低い温度で薬剤の一次凍結乾燥を行う。この好ましい方法で形成される稠密なケーキに含まれる残留湿分は、崩壊したケーキを薬学的に許容される半水和性(または低水和性)担体の溶液中に入れることによって除去する。この担体は、次に除去するか、または治療用調合物を注射するための流動性担体として使用する。
【0092】
治療用薬剤が生体活性薬剤(例えば1つまたは複数のタンパク質、ペプチド、ポリペプチドなど)を含む特定の好ましい態様においては、乾燥させる調合物に、安定化用多価アルコールを含む担体化合物が含まれる。そのような調合物および材料は、例えば、いずれも参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,290,991 号および同第6,331,310号に説明されている。
【0093】
例えば前述の様式により超濃縮された治療用薬剤は、次に注射用に流動化され、好ましくは投与を容易にするため特別な流動学的特性を有する担体中で流動化される。超濃縮固体は、好ましくは、安定性を向上させかつ投与量の完全な注射を補助するため、非水溶性または半水溶性の担体で包む。好ましい態様において、「注射用に流動化された(fluidized for injection)」という用語は、注射用投与量の固体含有量が約1〜約99重量%であり、より好ましくは約50〜約85重量%であることを意味する。
【0094】
注射体積が0.3〜1.2 ml(300〜1200マイクロリットル)である標準的な皮下注射に対して、本発明での使用が意図される注射体積は約0.1〜約10マイクロリットルである。これは、細い針を用いた浅部への小体積注射を可能にするための超濃縮技術を用いることにより実現される。好ましい態様において針は27〜30ゲージであり、内径が約0.33 mmである。注射は、好ましくは、皮膚内の約300〜約500マイクロメートルの深さで行われる。
【0095】
薬学的に許容される担体は、(i)濃縮された治療用薬剤を過剰な湿分から遮蔽することによりこれを保護するよう機能する。(ii)適度な注射力での送達を可能にしかつ針の詰まりを防ぐため、薬剤塊および注射チャンバを湿潤することによりその中で乾燥粒子が浮遊できるような媒質を提供することによって注射容易性を与える。ならびに(iii)好ましくは、投与中の調合物成分の分離を防ぐことにより、種々の投与量を扱える能力を提供する。好ましくは、得られる調合物は揺変特性を有する。
【0096】
好ましい態様において、薬学的に許容される担体は乾燥粒子調合物に対して非溶媒であり、かつ好ましくは非水溶性または半水溶性である。そのような担体は、濃縮形態の治療用薬剤(例えば凍結乾燥タンパク質)を環境条件下で保管した場合の貯蔵寿命を大幅に延長させる。このことは、部分的には、そのような担体が酸素および水を退けることにより実現される。薬学的に許容される好適な担体としては、例えば安息香酸アルキル、安息香酸アリル、安息香酸アラルキル、トリアセチン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などがある。治療用薬剤が疎水性である態様においては、薬学的に許容される担体は水性の性質を有していてもよい。
【0097】
治療用薬剤が1つまたは複数のタンパク質を含む1つの好ましい態様においては、タンパク質および薬学的に許容されるごく少量の賦形剤が凍結乾燥され、これにより、(単位投与量あたりの)体積が小さい非晶質(無構造)の固体塊が形成される。これらの調合物では、タンパク質の安定化に必要な炭水化物の量、緩衝能、および非特異的結合剤が最小限になる。これとは対照的に、典型的な凍結乾燥溶液は、タンパク質に加えて、炭水化物、緩衝剤、溶液安定剤、増量剤、溶解剤、および非特異的結合剤を含む。粒子調合物、処理の調節、および流動性に必要な増量剤は、本発明の増量剤では必要でない。同様に、溶液安定剤も必要でない。増量剤および溶液安定剤を不要にしかつタンパク質に好適な注射用媒質の調製に必要なその他の成分の量を低減することによって、タンパク質の注射に現在用いられている体積と比較して、想定される注射体積をはるかに小さくすることが可能である。治療用薬剤がタンパク質である特定の態様において、純粋なタンパク質は、安定であれば単独で使用してもよく、またはごく少量(例えば約0〜3重量%)の安定剤および緩衝剤と併用してもよい。乾燥時のタンパク質の濃縮度が高いほど(例えばタンパク質の固体が約25〜約60%)、炭水化物の必要量が少なくなる。
【0098】
特定の好ましい態様においては、液体に構造を付与するため、ポリマー素子を非水溶性または半水溶性の担体に組み込む。そのようなポリマー(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリ無水物、ポリオルトエステル、およびこれらの組合せ)を添加することにより、本発明の注射用調合物に2つの独特の流動学的特性がもたらされる。第一に、調合物が注射装置から注射される際に生じるずれ応力に関して、調合物の塊が針から流出し始めると、担体の粘稠度により、全注射投与量を針から押し出すために必要な注射力が減少する。第二に、ポリマーを注射することにより、薬剤の流動が促されることに加えて、固体の薬剤が担体中で静止することが防止される。これらの特性(ずり減粘性の液体および静止時ずれ応力)が組み合わさることにより、投与量の比例性が得られる。
【0099】
注射装置
表皮および真皮への投与では、皮下注射を防ぐためおよび皮膚に対する針の向きを高い確実性で固定するため、針の穿刺深度を制限する必要がある。表皮および真皮への注射時に感じられる疼痛は、痛覚受容器に対する外傷、薬剤による組織の拡張、および疼痛の予期に起因する筋肉の緊張の組合せによって生じる。表皮または真皮への標準的な注射では、約10〜15度の角度で皮膚に針を刺す。この角度で針を刺入する場合は、針が約5 mm〜約6 mmにわたって皮膚内に挿入され、このため表皮層および真皮層に分布している痛覚受容器が著しく影響を受ける。特定の好ましい態様において、本発明は、壁厚の薄い特別設計の針を利用して表皮層または真皮層に薬剤を送達する。
【0100】
標準的な注射は、患者の皮下または筋肉内の領域に対して行われる。こうした深い部位が利用されるのは、浅い真皮の部位と比較して組織が伸展しやすく、多くの治療用注射剤で必要とされる0.1〜1.0 mlの注射体積を収容できるからである。大きな体積の粘性物質の注射は、小さな体積の希薄物質の注射と比較してより強い疼痛を引き起こす傾向がある。しかし、粘性の薬物は管腔の大きい針を必要とするため、これまで表皮または真皮への投与は行われていない。そのような針は表皮または真皮への投与には使用できない。さらに、液体調合物は組織の傷害を防ぐため低速度で表皮または真皮に注射する必要があるうえ、体積が0.5 mlを超える場合は表皮または真皮への投与ができない。
【0101】
角質層(皮膚の最上層)は比較的薄く、5〜15マイクロメートルしかない。表皮層または真皮層は皮下の空間(典型的には脂肪に富む領域である)と異なり空間が十分になくかつ自由に伸展しないため、本発明では、壁厚の薄い特別設計の針を利用して表皮層または真皮層に薬剤を送達する。したがって、使用する注射体積は最小限である。
【0102】
現在のところ、表皮または真皮への注射に用いられる典型的な方法は実施が困難である。注射部位の皮膚を伸展する必要がある。シリンジとベベルを上向きにした針とを皮膚に対してほぼ平らに配置する。針を皮膚面に対して約10〜15度の角度にして皮膚内に約1/8インチ進め、注射物質を含む水泡または膨疹を形成する。一般的にこの方法は訓練を受けた看護師または医師の技術を必要とし、したがって自己投与が排除される。約3.0 mmを超えて皮膚を穿刺する針は、真皮層を通過して皮下層に至る可能性がある。したがって、針の長さは3/8インチを超えてはならない。逆に、針の穿刺深度が浅すぎて注射部位から物質が逆流し、一般的に「注射漏れ(wet injection)」と呼ばれる状態になることもある。表皮または真皮への注射では、注射部位の皮膚を伸展する必要がある。
【0103】
好ましい態様において、本発明で使用する注射装置は、前述の超濃縮単位投与量を表皮または真皮に注射するのに適する。好ましい態様において、本発明の装置には、例えばスラリーまたはペーストの形態である治療用薬剤の注射可能投与量があらかじめ充填される。本発明の注射装置は、注射されるべき小体積の単位投与量を正確に測定するのに特に適している。
【0104】
好ましい態様において、注射針は約27〜約30ゲージである。このような態様においては、治療用薬剤投与時の痛覚を防ぐため、針の太さを最小限とする。しかし他の態様においては、よりゲージ数の大きい針も本発明の調合物および方法とともに使用できるよう、低レベルの疼痛の回避が必須でないことも本発明の範囲内として意図される。
【0105】
高度に濃縮されたスラリーまたはペーストの調合物は、標準的なシリンジの中では良好な流動特性を示さないのが一般的であり、したがって、新規の針/シリンジの設計が必要である。
【0106】
好ましい態様において、治療用薬剤のスラリーまたはペーストを含む単位投与量の注射用調合物は注射装置の針に直接装填され、かつ、単位投与量を患者の表皮または真皮に注射する際に単位投与量の実質的に全量が針から排出される。これを実現するため、好ましくは注射装置にプランジャが組み込まれ、このプランジャは、装填された治療用調合物の全量が針の管腔内に装填され、かつ投与時に容積式の設計を用いて患者の体内へと押し出されるように機能する。
【0107】
プランジャは、例えば、針の管腔内にフィットするアプリケーションロッドであって、装填された治療用調合物の実質的に全量(例えばほぼ100%または100%)が針から押し出され注射部位(例えば表皮または真皮)に入るように、作動時に静止時位置から針の端まで移動する(例えば、移動の力は患者または注射の実施者によって印加される)アプリケーションロッドであってもよい。アプリケーションロッド自体は、金属またはプラスチックなど、当業者に周知の任意の好適な材料で作製してよい。プランジャは、例えば、針の内径にフィットするワイヤ片であってもよい。プランジャ(例えばワイヤ)の長さは、治療用調合物が充填されていない状態で掃引されるよう所望される針管腔の長さと等しくてもよい。したがって例えば、注射装置の作動時、プランジャは、針先端部から患者の表皮層または真皮層へと押し出されるべき半固体の治療用調合物の長さと等しい距離だけ針管腔の中を下向きに移動する。特定の好ましい態様においては、プランジャ先端部が針管腔の内壁に密着して掃引できかつ針管腔の直径がその長さ方向に沿って変化する態様においては変形して内壁の表面に一致でき、これにより使用時にプランジャが下方向に移動して半固体治療用調合物を針から押し出す際に調合物が確実に排出されるよう、プランジャ先端部は変形可能ゲル(例えばSantoprene(登録商標)などの熱可塑性エラストマー)である。
【0108】
本発明の別の態様において、プランジャは変形可能ゲルである。変形可能ゲルは注射装置の作動時に変形しかつ針の先端部へと向かって下向きに押され、これにより、単位投与量の治療用調合物のスラリーまたはペーストを移動させる。本発明に有用な変形可能ゲルを形成するための好適な材料は当業者に周知である。例としては、治療用薬剤の担体に関して本明細書で既に言及したポリマー材料で形成されたゲルがある。具体例としては、プランジャとして機能するのに十分な剛性を有する熱可塑性エラストマー(例えば好適な等級のSantoprene(登録商標)など)、ポリアクリルアミド、またはアガロースゲル;および、生体適合性が高くかつ例えばヒト用長期体内埋植物などに使用されている、必要な剛性を有する弾性シリコーンゲルなどがある。
【0109】
特定の好ましい態様において、注射装置の針部分は長さ約6〜約8 cmであり、これにより、投与量の半固体治療用調合物およびプランジャを収容するのに十分な内部体積を管腔に与える。
【0110】
別の好ましい態様においては、皮膚に針を刺す際に生じうる孔を開ける感覚をなくすため、特別な針設計を本発明の装置とともに使用する。そのような態様において、針の最先端部は、皮膚を穿刺するためのピークが形成されるよう、閉鎖端の向きに構成される。注射装置が作動すると、投与のため装填された治療用調合物の力によって針の先端部が膨大し、(角質層が穿刺されると)経路が形成され、調合物はこの経路を通って針の先端部から流出する。針の先端部は、治療用調合物の装置からの排出を可能にするよう作動中に外方向にずれることができる平らな配向(例えば、ベベル端、閉鎖端、またはシール端を有するような配向)を実現するため、当業者に周知の任意の様式で作製してよい。例えば特定の好ましい態様において、針の最先端部は、皮膚を穿刺するためのピークが形成されるよう、閉鎖端の向きにクリンプ加工される。角質層が穿刺されると、針の中を通過する治療用調合物の力により針のクリンプ部が開口し、これにより治療用調合物が針の先端部から流出することが可能となる。
【0111】
特定の好ましい態様においては、皮膚に複数の穿刺が行われ、これにより個別の注射体積を小さく保ったまま薬剤がより大量に同時投与されるよう、注射装置に複数の針システムが組み込まれていてもよい。そのような装置は、投与すべき量の治療用薬剤を本発明で使用される単一の針に容易に組み込めない場合、またはワクチン接種などのように抗原提示細胞とより広範に接触することが保証されている場合に利用してもよい。
【0112】
本発明のさらに別の態様においては、より大きな体積の治療用調合物を保持するため、(針の先端部に対して)針の上部が滑らかに拡張される。この様式により、針の皮膚穿刺部のゲージ数を小さく保ったまま単一の針を使用してより多量の治療用薬剤を投与することが可能となり、したがって、針の直径が小さいことによる疼痛軽減の恩典が保たれる。そのような態様においては、プランジャの先端部が変形でき、(尖った)端に向かって先細りになる針管腔の内側肩部を通過できるよう、変形可能ゲルまたはゴム(例えばSantoprene(登録商標))で形成された先端部をプランジャが含むことが好ましい。
【0113】
本発明のさらに別の態様において、針は、半固体治療用調合物を収容するための空間をより多く作るため、スパイラル形状であってもよい。
【0114】
別の好ましい態様において、本発明の装置は皮膚をきつく保持する安定装置(例えばディスクまたはボール)を含み、注射装置は皮膚に対して配置されかつ作動される。別の好ましい態様において、注射装置は、針を皮膚へと押し出すため注射装置の作動時に解放されるバイアス装置(例えばばね)、および注射後に空の針を引き戻すために作動する引き戻しばねを含む。使用において、ユーザーは好ましくは装置を皮膚に対して配置し、これにより安全装置(キーなど)が自動的に押し下げられ、これによりアクチベータ(例えば作動ボタン)を動作可能にする。ユーザーは、安定ディスクを皮膚上に平らに配置した状態で、作動ボタンを押して機構を作動させる。安定ディスクは、例えばSantoprene(登録商標)など、任意の好適な材料で作製してよい。針がばねにより皮膚内へと押し出され、プランジャが押されて針の中を通過し、これにより、治療用調合物が押されて針の中を通過する。治療用調合物が押されて針の中を通過すると、針先端部の閉鎖端配向部が膨張し、これにより治療用調合物が針先端部から流出することが可能となる。プランジャが針の中を移動し治療用調合物を針先端部から押し出すことによって投与量の投与が終わると、引き戻し装置(例えばばね)が作動して空の針を装置内へと引き戻す。
【0115】
特定の好ましい態様において、バイアス装置はばねまたはその他の圧力源(例えばガス供給源、ピストンなど)を含む。引き戻し装置はばねまたはバイアス装置と同種の圧力源を利用したものであってもよい。
【0116】
特定の好ましい態様において、注射装置は、針の中のプランジャの移動距離を変更するために調節できる投与量コントローラをさらに含み、これにより針先端部を押されて通過する治療用調合物の量を制御し、ひいては患者への投与量を変化させる。
【0117】
別の好ましい態様において、針は、針自体の管腔内により多量の投与量を含めるため、同じゲージ数の標準的な針と比較して長さが増大される。
【0118】
別の好ましい態様において、注射前、注射中、または注射後に患者が針を見ることが一切ないように針を隠すため、針は外部ケーシングの中に収容される。
【0119】
さらに別の態様において、注射装置は複数回の使用が可能である。そのような態様においては、例えば、単位投与量の治療用薬剤を充填した複数の針がハウジング内に存在する。装置の作動および単位投与量の送達後、使用済みの針はハウジング内に引き戻される。その後、次の(未使用の)針が、ハウジングから伸びる位置へと移動し、かつ送達装置の次の作動時にその針が有する単位投与量の治療用調合物を送達する。
【0120】
次に図面を参照する。図1は本発明の注射装置の断面図である。この注射装置の図には、駆動ばね12、薬剤チューブ(針)15、引き戻しばね13、およびプランジャ14が内部に配置されたシリンジ10が示されている。治療用薬剤を含む超濃縮流動化固体は薬剤チューブの管腔内に装填される。針刺入機構(図には示していない)を作動させると、駆動ばね12が下方向に移動し、これにより投与量分の薬剤18に対してプランジャ14が押し付けられる。投与量分の薬剤が薬剤針15のクリンプ先端部16を下向きに通過すると、針のクリンプが開口され、投与量分の薬剤が針から排出される。これが完了すると、作動中に下方向に偏っていた引き戻しばね13が上方向へと解放されて、針を引き戻す。
【0121】
図2は図1の注射装置の外部側面図である。図2において、ケーシング20は投与量スケール21、解放(作動)ボタン22、および解放パッド23を含む。針自体は注射装置18のケーシング内に隠される。この様式により、患者は針を見ることが一切なくなり、注射が差し迫っていることを見ることによる精神身体的な疼痛作用が軽減される。使用においては、安定ディスク23の解放パッドが患者の皮膚に対して平らに配置される。その後、ユーザーが解放ボタン22を押してばね機構を作動させ、これにより、針15が皮膚内へと押し出され、プランジャ14が針の管腔内を押されて通過し、単位投与量の治療用薬剤が患者の皮膚の表皮層または真皮層内へと注射される。完了後、引き戻しばね13が作動して空の針を引き戻す。図2に示されている投与量スケール21により、ユーザーは例えば医師の指示に従って投与量を調節できる。例えば、投与量スケールは番号1、2、3、および4にそれぞれ合わせることができるコントロールを有していてもよく、これにより、駆動ばね12がプランジャ14を下方向へと押す距離が変更される。プランジャ14の移動距離は針から排出される治療用調合物の量に対応するため、これにより、排出される治療用調合物の量が変更される。
【0122】
図3は本発明の注射装置のばね機構の配置を示した断面図である。図3Aは注射装置の静止状態、図3Bは作動状態、図3Cは作動後を示している。同装置はハウジング用のケーシング30、駆動ばね31、プランジャ32、投与量分の治療用薬剤33、および引き戻しばね34を含む。静止位置にある場合(図3A)、投与量分の治療用薬剤33は針35の管腔内に位置する。針は標準的な表皮用または真皮用の針と比較して長く、太さは27ゲージかまたはそれより細い。投与量分の治療用薬剤は針の長さの5 cmの中に収容される。投与量分の治療用薬剤の上方にはプランジャ32が存在する。作動時には(図3B)、上部の駆動ばね31が下方向に伸び、これによって、針が皮膚へ進入、貫通し(図には示していない)かつプランジャ32が投与量分の治療用薬剤を押して針のクリンプ端を通過させ、これによりクリンプ端が膨張し治療用薬剤が表皮または真皮のフレア部へと排出される。注射後の段階(図3C)では、引き戻しばね34が針35を注射前の位置まで戻し、投与量分の治療用薬剤33は体内に残る。
【0123】
図4A〜4Cは本発明の注射装置の外部ハウジングおよび安全スリーブを示した図である。まず図4Aにおいて、注射装置40は安全スリーブ41に覆われる。安全スリーブは使用前に取り外される。好ましくは、安全スリーブ41は偶発的な作動の発生を最小限にし、安全スリーブを除去することにより装置は「作動状態」になることができる。次に、図4Bに示すように、投与量設定43が選択され、これにより作動時に駆動ばねが注射装置から突出する距離が決定され、ひいては送達される調合物の量が決定される。図4Cに示す態様において、投与量設定43は、中央の図に示すように、所望の深度に対応する数字と正しく揃うまで(この場合は深度3)装置の上部40aを装置の下部40bに対して反対方向に回転させることによって調節する。装置の底部(図には示していない)を患者の皮膚の所望の位置に配置し、作動ボタン42を押すと、駆動ばね(図には示していない)が下向きに作動する。作動後、引き戻し装置(図には示していない)が針を注射装置40の中へと引き戻す。任意で選択してよい態様においては、インジケータ44の色が変化して装置が使用済みであることを示す。例えばインジケータ44は緑色(作動前)から赤色(作動後)へと色が変化してもよく、これにより投与量分の薬剤が送達されたことを示してもよい。図4の装置において、装置は、1回投与量分の治療用薬剤のみを含む。作動後、使用済みの注射装置はロックされ、再使用できなくなる。例えば図4の装置の1つの態様において、作動ボタンは、針管腔内の薬剤を移動させ排出するのに十分でありかつ皮内注射中に真皮層からの逆圧(例えば76 psi)に打ち勝つのに十分な力をプランジャに印加する。作動ボタンを押すと約3 lbs(約1.4 kg)の圧力に等しい力が得られる。この力によりばねが解放されてプランジャが針管腔内へと押され、これにより調合物が皮内へと注射される。注射装置が所定の位置に保持される時間は合計2〜5秒またはそれ以下である。カラーインジケータが緑色から赤色に変化して、投与量分の薬剤が送達されたことを示す。使用済みの注射装置はロックされ、再使用できなくなる。特定の好ましい態様において、注射装置は自動注射装置であり、シリンジは安全シリンジである。
【0124】
図5Aは本発明の注射装置について皮膚と装置との相互作用を示した側面図である。図5Aにおいて同装置は「静止」位置にある。装置は上部ケーシング50aおよび下部50bを有し、これらは、深度設定52で示された注射投与量を調節するため反対方向に回転させることができる。装置は作動ボタン51および安定ディスク53を有する。図5に示す態様において、安定ディスクは軟性ゴム(例えばSantoprene(登録商標))で作られ、注射装置のケーシングの延長部を形成する。図5Bに示すように、注射装置を患者の皮膚に配置すると、注射部位の皮膚をきつく保持することによりつくられる外向きの方向に安定装置の先端部53aが変形する。図5Cは図5bの装置の断面図である。図5Cに示すように、作動前には駆動ばね54は引き戻された位置にある。プランジャ55は、針56の中に位置し、かつ、装置作動時に投与量分の治療用薬剤57を移動させるように配置される。引き戻しばね58は装置の反対側の先端部に位置する。薬剤は針のうち5 cmの部分に収容される。特定の好ましい態様においては、安定ディスクに安全連結装置が組み込まれる。
【0125】
図6A〜6Bは本発明の注射装置の別の態様を示した図である。この態様において、治療用調合物の送達は、図1〜4に示したばね作動機構ではなく圧力源(この場合は圧縮ガス)を用いて実現される。図6Aは本発明の注射装置の断面図である。同図には、ハウジング60、作動ボタン61、バルブ62、圧縮ガスシリンダ63、トロイダル針シリンジ64、および針先端部65が示されている。作動ボタン61を押すと圧縮ガスがガスシリンダ63から弁62を通ってトロイダル針シリンジ64へと送られ、これによりトロイダル針64の先端部65が解放されて下方に伸びハウジング60を通って患者の皮膚の所望の深さまで入り、その結果、半固体治療用調合物(図には示していない)が針64の先端部65を通って患者の皮膚の真皮層へと移動する。図6Bは図6Aの装置の側面図である。図6Bに示されているように、装置は、皮膚に対して配置され、これにより注射前に皮膚を伸展する球面66を有する。作動ボタンが圧縮ガスを解放し、この圧縮ガスにより、薬剤を装填したトロイダル針が特定の距離だけ皮内に押し出される。
【0126】
図7A-7Cに本発明の注射装置の別の態様である扁平型ガス式自動注射器を示す。図7Aはこの注射装置の側断面図である。同装置は、外部ケーシング70、弁72、圧縮ガスシリンダ73、トロイダル針74、および針先端部75を有する。図7Bはハウジング70の内部を示した同装置の上断面図であり、圧縮ガスシリンダ73、弁72、およびトロイダルシリンジ74の配置を示している。図7Cは図7の態様の上外面図であり、ケーシング70、インジケータ77、および作動ボタン79を示している。
【0127】
図8A-8Fに本発明の態様による別の注射装置の側面図を示す。図8Aは、本体2;プランジャ3;本体2の近位端に取り付けられた針ハブ4;および針5を有する注射装置(シリンジ)1の外部側面図である。針5は、針ハブ4に固定式に取り付けられる針先端部6;針ケーシング7;針シャフト8;およびベベル9を有する。針先端部6は針ハブ4の内側に取り付けられる。針ケーシング7は針先端部6に取り付けられ、かつピストン10の機構(図には示していない)を囲む。針シャフト8は、針先端部6より遠位側の端に、開口部をもつベベル9を含む。注射装置1の作動時には、ベベル9が開口することにより、針管腔11の中に収容された薬剤の流出が可能となる。
【0128】
図8Bは図8Aの投与シリンジの側断面図である。具体的には、図8Bには、ピストン10、ならびにピストン10に対するプランジャ3および針管腔8の関係が示されている。ピストン10は針管腔8の中に収容され、その長さはプランジャ3の近位端から針先端部6および針ケーシング7を通って針管腔8の針管腔(薬剤コンパートメント)11の部分までにわたる。
【0129】
図8Cは図8Bの針5の拡大断面図である。図8Bはさらに、ピストン10と針シャフト8の針管腔(薬剤コンパートメント)11との関係を示している。図8Cはさらに、ベベル9、針ケーシング7、および針先端部6の拡大図も示している。
【0130】
図8Dは、図8A-8Cの注射装置(シリンジ)1と本発明の投与量分の調合物を吸い上げるための充填装置(シリンジ)12との関係を示した側面図である。具体的には、図8Dは、本体13、プランジャ14、ストッパ14a、薬剤コンパートメント15、および針ハブ16を有する充填用シリンジ12を示している。同図において、注射装置1のベベル9および針シャフト8の一部は、充填用シリンジ12の針ハブ16に挿入されている。
【0131】
図8Eは図8Dの拡大断面図であり、充填装置12の針ハブ16と注射装置1の針5との関係を示している。同図は充填装置12のストッパ14a、薬剤コンパートメント15、および針ハブ16を示している。同図において、注射装置1の針5のベベル9および管腔11の一部は充填用シリンジ12の針ハブ16の端にある開口部に挿入されており、これにより、本発明の投与量分の調合物を注射装置1に装填することが可能となる。
【0132】
図8Fは針5の拡大断面図である。図8Fは、針シャフト8、ピストン10、および針シャフト8とピストン10との間に配置された変形可能ゲル17の側面図である。
【0133】
図面に示した上記の具体的な態様は本発明の可能な態様を例示したものであり、添付の特許請求の範囲により請求される本発明をいかなる様式その他においても制限する意図はない。当業者には、本発明の概念を利用した注射装置についてこの他多数の構成が可能であること、およびそのような構成は添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされることが理解されるものと思われる。
【0134】
本発明の注射装置は、好ましくは、1マイクロリットル(μl)単位の溶液のスラリーまたはペーストを皮膚内に送達する。1マイクロリットルは1立方センチメートル(cc)の1000分の1である。薬剤スラリーおよび安定化溶液の密度が1.0 g/ccである場合、本発明により1.0 mgの調合物が送達される。注射体積を増加させるかまたは調合物スラリー中の薬剤濃度を高くすることにより、より多くの投与量を投与することも可能である。
【0135】
治療用薬剤投与時の痛覚を防ぐために必要な針の太さは、個々の患者、調合物、および注射体積によって異なる。一般的に、(米国基準で)約18ゲージまたはそれ以上、より好ましくは20ゲージまたはそれ以上の針であれば十分であると考えられている。疼痛を排除する最も実際的な用途では27〜30ゲージの針が必要となる。
【0136】
より大きな体積を注射する場合には(例えばモノクローナル抗体および徐放の用途など)、薬剤ペーストを滑らかかつ障害なく流出させるため針およびシリンジを単一の要素に統合した、より洗練されたアプリケータ設計を用いる。これらのアプリケータは、特定の流動学的特性を有する調合物に適している。薬剤調合物のスラリーを患者に完全に送達するため、細く長い設計の薬剤チャンバが好ましい。好ましくは、調合物の実質的に全体積(例えばほぼ100%または100%)が針から押し出され患者に注射される。調合物の100%をこの細い針から送達するため、先端部が変形可能ゲルまたはゴムであるピストンを使用する。
【0137】
本発明の注射装置に使用される針のベベル端の長さは約0.1 mm〜約1 mmであり、好ましくは約0.2〜約0.5 mmである。針の全長は好ましくは約1 mm〜約1 cmであり、最も好ましくは約2 mm〜約5 mmである。
【0138】
皮膚内へと送達される溶液、スラリー、またはペーストの量は約1マイクロリットルであり、これは1立方センチメートルの1/1000に等しい。薬剤スラリーの密度が1.0 g/ccである場合、この注射により1.0 mgの調合物が送達される。注射体積を増加させるかまたは調合物スラリー中の薬剤濃度を高くすることによって、本発明によりさらに多くの投与量を皮内投与することも可能である。
【0139】
本発明の好ましい態様において、安定ディスクは一般的に針を包み、針が真皮を超えて皮下領域へと刺入されることを防ぐ。好ましくは、針の前部端と皮膚に接触した安定ディスクとの距離は、浅い無疼痛の注射を可能にするため、厳密に制御される。作動ボタンを押すと、動物の典型的な真皮層を越えて穿刺することがないよう、針が再度厳密に制御される。皮膚への針の穿刺深度は、皮下層への進入を防ぐため、好ましくは約100μm〜約500μm、最も好ましくは約500μm±0.5μmに制限される。
【実施例】
【0140】
調合物の実施例
実施例1
組換えヒト成長ホルモン(hGH)を5 mMトリス緩衝液(pH = 7.6)に溶解した5 mg/ml溶液を凍結乾燥することにより、hGHのドライパウダー調合物を調製した。hGH/トリス溶液100 mgにN-メチル-ピロリドン(NMP)またはNMP/安息香酸ベンジル混合液(BB)を230 mg添加して29%(w/w)hGH調合物を調製し、これにより固体分約30%(w/w)のペースト調合物を得た。この調合物の溶解度を調べたところ、NMP/BB混合液のほうが可溶性hGHの回収率が高かった(50%対12%)。次にこの調合物を、図8(d)に示した装置など特別に設計された充填装置を用いて、25ゲージ針の管腔に充填した。注射装置に含める固体調合物の量として、組換えヒト成長ホルモンを含む約10 mgの調合物を含めた。次に、この充填したシステムを用いて固体調合物をラットの皮内に投与した。皮膚に顕著な刺激を生じることなく、浅部に全量を送達した。
【0141】
実施例2
別の調合物として、本明細書で説明した送達装置でドライ送達を行うためヒトグルカゴンを調合することも可能である。ヒトグルカゴンの調合は2つの段階で行われる。第一に、凍結乾燥パウダーを生成する。次に、生体適合性の担体を生成する。現在のグルカゴンの注射用調合物は、pH 3.0未満でラクトース49 mg中にグルカゴン1 mgが存在する調合物である。本発明で想定される調合物は、凍結乾燥処理中および保管中にグルカゴンを安定させるための安定剤を可能な限り少なくすることにより、ごくわずかな体積で有効量のグルカゴンを提供する。このことは、可能な限り高い濃度でグルカゴンを凍結乾燥することにより実現される。そのような調合物の1例として、質量1 mg、全体積3μlのグルカゴンが考えられる。
【0142】
すべての調合物はpH約3.0またはそれ以下の水性調合物として調製される。pHの調節にはクエン酸を使用するが、代替物も当業者には周知であると思われる。安定剤としては、還元糖であるラクトースに対して好ましいことからスクロースを添加する。グルカゴン/安定剤の比は、例えばグルカゴン:スクロースを1:0.5または1:1とする。グルカゴン:スクロース:ツィーンを1:1:0.01の比で用いてもよい。液体担体は適切な配合の生体適合性非溶媒であり、例えば安息香酸ベンジル、N-メチル-ピロリドン、またはグリセリンから選択される。
【0143】
以上は本発明の例示的な説明であり、図面に示した具体的な態様および使用された用語は、本発明を限定するものではなく説明する性質のものであると意図されていることが理解されるべきである。さらに、前期各段落に説明した成分/治療用薬剤の全ての組合せは添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされることも理解されるべきである。さらに、本発明の注射装置の全ての具体的態様は添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされることも理解されるべきである。以上の開示に照らして、本発明に対して多数の変更および改変が可能である。したがって、明白な変更は添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされることが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物薬剤およびその他の治療用薬剤を低侵襲性のかつ疼痛の少ない投与方法により哺乳動物に非経口的に送達することに関する。これらの薬剤は、皮膚の例えば上皮層、真皮層、または皮下層を介して患者に送達される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
非経口的な注射とは、動物の皮膚もしくは粘膜の1つもしくは複数の層の下への注射またはこのような層を通した注射によって薬剤またはワクチンを投与することを意味する。標準的な注射は、動物(例えばヒトの患者)の皮下または筋肉内の領域に対して行われる。こうした深い部位が利用されるのは、浅い真皮の部位と比較して組織が伸展しやすく、多くの治療用薬剤の送達で必要とされる0.1〜3.0 cc(ml)の注射体積を収容できるからである。
【0003】
一般的に、注射は以下のような種々のカテゴリに分類されている:(1)そのまま注射できる溶液;(2)患者への注射の直前に溶媒と混合できるよう用意された乾燥状態の可溶性物質;(3)投与前に適切な注射用媒質と混合できるよう用意された乾燥状態の不溶性物質;(4)そのまま注射できる懸濁液;および(5)そのまま注射できる乳濁液。このような注射用調合物は、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、脊髄内、槽内、および髄腔内などの経路から投与される。投与経路は治療用薬剤の性質によってただちに決まる。その一方で、所望される投与経路は治療用調合物それ自体に制約を加える。例えば皮下投与用の溶液では、注射部位周囲の神経および組織の刺激反応を防ぐため、張性に十分注意する必要がある。同様に、懸濁液では、不溶性粒子が毛細血管を詰まらせる可能性があることから、血流中への直接投与は行われない。
【0004】
注射剤には他の剤形および投与経路と比較して特定の利点があり、そのような利点としては例えば、生理学的反応が直ちに起こること(例えば静脈内注射の場合)、多くの薬剤で生じる腸管吸収の問題を回避できること、および所望の投与量を患者の血流内に正確に投与できることなどがある。一方で、注射剤の欠点の1つは、皮下または静脈内に針を挿入する際の外傷および特定の薬理活性物質により投与部位に生じる疼痛および不快感である。注射が行われるごとに患者にはある程度の不快感が生じる。
【0005】
現在、生物薬剤は一般的に無菌溶液として再調製され、ゲージ数の大きい針(例えば18〜30ゲージ)を用いて皮下または筋肉内の空間に投与される。疼痛はさまざまな理由によって生じるが、例えば針の刺入深度、針の「ゲージ」数、注射量の多さ、注射部位からの薬剤の拡散などによって生じる。注射剤の投与に伴う疼痛という問題の他にも、現在の注射の方法にはいくつかの欠点がある。例えば、タンパク質製剤および徐放剤の多くは投与直前に再調製する必要がある。薬剤の用量に関する柔軟性および正確性が損なわれる可能性がある。さらに、多くの調合物は、加水分解反応による分解から薬剤を保護するため、冷蔵する必要がある。さらに、現在の投与システムは、注射装置にかなりの量の薬剤が残るという面で無駄が多い。さらに、所望の必要量を確実に送達するには、一般的に注射用調合物を濃縮および安定化させる必要がある。標準的な注射は液体の形態で投与される。液体または凍結乾燥パウダーとして販売されている製品では、注射前に水性の担体で再調製する必要がある。多くの治療用タンパク質およびワクチンは、保管中の安定性を高めるため乾燥した固体の形態で製造される。これらの調合物は注射前に滅菌水、リン酸緩衝溶液、または等張生理食塩水に溶解される。
【0006】
皮下および筋肉内の領域と比較して、真皮領域は浅く、伸展に限りがある。角質層は比較的薄く、5〜15マイクロメートルしかない。大多数の治療用注射剤では0.5 mlより多い体積を注射する必要があるが、真皮領域にはこれだけの体積を収容できない。これまで皮内注射は、主として疾患への曝露状態を診断するための検査に用いられてきた。特定の治療用物質(例えばB型肝炎ワクチン)は、皮内に注射すると吸収または免疫反応系との反応の効率が高くなる。その他にも診断のための検査において皮内投与を必要とする物質がある。皮内組織は血管の供給が豊富であり、そこに注射された物質は吸収速度が速い。この吸収速度と、皮内に注射できる体積に限界があること(< 0.5 ml)から、皮内注射は一般的に治療目的の要件を満たさない注射方法となっていた。皮内注射の部位としては前腕腹側および肩甲部表面が最も多く用いられる。他に用いられ得る部位としては上腕および上胸部がある。
【0007】
皮内注射用のシリンジは周知である。典型的なシリンジは、針シャフト、管腔、ベベル、柄またはハブ開口部、液体の薬剤を入れるバレルまたはカートリッジ、先端部、および一端に作動フランジを含みかつ反対側の端にゴム栓を備えるプランジャを含む。バレルは外側の円筒形部分であり、典型的にはガラスまたはプラスチックで作られる。プランジャはバレル内で上下に動くピストン様の部分であり、典型的にはプラスチックで作られる。先端部は針のハブ内に嵌合する小さな突起部である。先端部にはプレーンタイプおよびロッキングタイプの2種類がある。プレーンタイプの先端部は、針のハブ内にきつく嵌合するよう先細りになり、摩擦力により針を所定の位置に保持する。ロッキングタイプの先端部は、トレッドを有しかつ針のハブを収容できるサイズの外側カラーを有する。針の基本的な構成要素はハブ、シャフト、およびベベルである。ハブは針の端の膨大部であり、シリンジの先端部の外側に嵌合する。シャフトは細長の部分であり、ベベルは針の角度のついた先端部である。皮内注射投与様のシリンジは典型的には1 ml(1 cc)ツベルクリン用で、1/4インチまたは1/2インチの針で25〜27ゲージであり、成人に対して最大0.1〜0.5 mlを投与する。多くの場合、皮内注射の最大量は0.1 mlである。シリンジには、針を既に取り付けた状態であらかじめパッケージされるものとされないものとがある。したがって、1 mlシリンジは無菌操作による針の取り付けを必要とする場合がある。シリンジと針との取り付けが済んだら、バイアルまたはアンプルから薬剤を吸引する。バイアルは単回投与量または複回投与量の入ったガラス容器であり、厚いゴム栓で密封される。無菌性を確保するため、この栓または隔壁には金属製またはプラスチック製のキャップが被せられる。バイアル中の薬剤の形態は溶液または無菌状態の乾燥パウダーである。薬剤の形態がパウダーである場合は、適切な体積の適切な希釈液で再調製する必要がある。バイアルから薬剤を吸引するための適切な手順としては、バイアル上の保護キャップを外し、アルコール綿で隔壁を拭く。プランジャを引き戻して必要量の空気を吸引し、針をゴム製隔壁の中心に刺入する。空気を注入し薬剤を吸引する。希釈液を誤った場合または希釈液の量を誤った場合にはエラーが生じる。薬剤がアンプルに入っている場合はアンプルを開ける必要がある。微細なガラス粒子がシリンジ内に吸引されるのを防ぐため、フィルタ(例えばフィルタストロー)が必要である。フィルタ針を使用しないと、患者に傷害が生じ、かつ/または針の詰まりにより薬剤の流れが妨げられる。投与前にフィルタを外し針をシリンジに取り付ける必要がある。フィルタを外し忘れるとガラス粒子が患者に注入されるというエラーが生じる。さらに、シリンジにフィルタを付け外しするという余分の操作は、院内感染のリスクを低減するため無菌操作を必要とする。
【0008】
皮膚の上皮層、真皮層、または皮下層への皮内注射により、集中的な量の治療用薬剤、ワクチン、およびその他の生物薬剤を投与するための方法および調合物が当技術分野で求められている。さらに、再調製または冷蔵を必要としない安定した形態(platform)でそのような調合物を提供することが望ましい。さらに、そのような薬剤の注射に伴う疼痛を実質的に回避できるような様式でそのような調合物を調整および投与することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的の1つは、動物の表皮層、真皮層、または皮下層に投与できる注射用調合物であって、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う調合物を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、動物の表皮層、真皮層、または皮下層に投与できる治療用薬剤を有効量含む、濃縮した注射可能調合物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、動物の皮膚の表皮層、真皮層、または皮下層に治療用薬剤を注射するための装置であって、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う装置を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、治療用薬剤を注射するための装置、調合物、および方法であって、投与量の実質的に100%を注射針から排出させることを実現する装置、調合物、および方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、動物の表皮層、真皮層、または皮下層に注射用調合物を投与するための方法であって、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、安定でありかつ使用前に冷蔵または再調製を必要としない皮内投与用の注射用調合物を提供する方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、皮内注射を行うための送達装置および調合物であって皮内注射の従来の装置および方法の問題点および制限を克服する送達装置および調合物を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、投薬法および注射法に関するエラーを最小限にする送達装置、調合物、および方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、皮内注射を行うための送達装置および調合物であって自己投与を可能にする送達装置および調合物を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、皮内注射を行うための送達装置および調合物であって治療用薬剤の濃縮調合物の投与を可能にする送達装置および調合物を提供することである。
【0019】
以上およびその他の目的に基づき、本発明の一部は、動物の皮膚の表皮層、真皮層、または皮下層に治療用薬剤を注射するための、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う装置であって;皮内注射に適した針であってスラリーまたはペースト中に均一に含まれた単位投与量の治療用薬剤が入った下端を有する針、および針の上端に配置されたバイアス装置を備え;針およびバイアス装置はハウジング内に収容され;ハウジングはアクチベータを含み;アクチベータは、注射装置を動物の皮膚に当てた場合アクチベータが作動してバイアス装置を解放し、これにより針で動物の皮膚を穿刺しかつ単位投与量の実質的に全部を針の下端に位置する先端部から排出するようなアクチベータである装置に関する。好ましい態様において、針は、長さが少なくとも約5 cmであり、ゲージ数が約18〜約31ゲージであり、特定の好ましい態様においては約27〜約30ゲージである。
【0020】
好ましい態様において、注射装置は、針の中の単位投与量の上端に配置されたプランジャをさらに含み、装置作動時にバイアス装置がプランジャを調合物に押し付けて調合物の実質的に全部を針の下側先端部から排出させる。プランジャは、例えば、直径が針の内径よりわずかに小さいワイヤまたは針の上部内に配置された変形可能ゲルを含んでいてもよい。
【0021】
好ましい態様において、注射装置は、ハウジング内に入った引き戻し装置であって、注射後に空の針を引き戻すために作動する引き戻し装置をさらに含む。
【0022】
好ましい態様において、注射装置は、ハウジングの下端に取り付けられた皮膚ポジショナであって、注射対象の哺乳動物の皮膚に注射装置を当てた場合に以下の目的のため哺乳動物の皮膚を伸展させる能力を有する皮膚ポジショナをさらに含む:i)治療用薬剤を注射部位に提供すること;ii)浅部での注射を可能にすること;およびiii)注射装置の作動時に哺乳動物の皮膚に針を穿刺することにより生じる疼痛を軽減すること。針は、好ましくは、使用中に注射装置を作動させた場合にのみハウジングの下端から伸びるように注射装置のハウジング内に組み込まれる。
【0023】
好ましい態様において、針の下側先端部は、使用前の単位投与量を含んでいる場合は実質的に平らな配向(例えば、ベベル端、閉鎖端、またはシール端)を有し、かつ、皮膚の穿刺時にピークが形成されるように構成され、かつ先端部は、使用中に調合物が先端部を通って押し出される際に伸展する能力を有し、これにより先端部から調合物が流出することを可能にする。
【0024】
特定の好ましい態様においては、使用中に皮膚に複数の穿刺が行われ、これにより個別の注射体積を小さく保ったまま治療用薬剤が(合計で)より大量に同時投与されるよう、複数の針システムがハウジング内に含まれる。より大きな表面を露出することは、例えばワクチンの投与(ある領域内でより多数の抗原提示細胞と接触するため)などに有用である。
【0025】
特定の好ましい態様においては、より大きな体積の治療用調合物を保持するため、針の下側先端部に対して針の上部が滑らかに拡張される。針の拡張は、スラリーが狭窄を受けることなく針の中を通過しかつ針の端から出るような様式で実施される。
【0026】
本発明はさらに、安定でありかつ使用前に冷蔵または再調製を必要としない皮内投与用の注射用調合物であって、薬学的に許容される担体中に均一に含まれた有効量の治療用薬剤を含む約0.1〜約10マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物であって固体含有量が約20〜約85重量%であり特定の好ましい態様においては約50〜80%である超濃縮調合物を含む注射用調合物に関する。治療用薬剤の平均粒径は10ナノメートル(0.01 マイクロメートル)〜約100マイクロメートルでありかつ約1 mmより大きい粒子はなく、特定の態様においてより好ましくは平均粒径が約0.1〜約25マイクロメートルでありかつ約50マイクロメートルより大きい粒子はなく、特定の態様においては治療用薬剤の平均粒径が約1〜約10マイクロメートルである。
【0027】
特定の好ましい態様において、調合物は、調合物に揺変特性を与える担体(例えば1つまたは複数のポリマー)をさらに含む。治療用薬剤は、好ましくは、薬学的に許容される揺変性の担体中に均一に組み込まれ、かつ、調合物はペーストまたはスラリーの形態である。
【0028】
特定の好ましい態様において、治療用薬剤は、薬学的に許容される担体中に均一に含まれる。担体は好ましくは生体適合性を有しかつパウダーに対して非溶媒である。特定の好ましい態様において、担体は、粒子の流動を可能にするような様式で粒子間の空間を満たす。特定の態様において、担体は、安息香酸アルキル、安息香酸アリール、安息香酸アラルキル、トリアセチン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アルカン、環式アルカン、塩素化アルカン、フッ素化アルカン、パーフルオロ化アルカン、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0029】
特定の好ましい態様において、注射用調合物は放出を制御した(徐放の)形態である。このような態様において調合物は、例えば、動物の表皮層、真皮層、または皮下層への注射による投与の際に調合物からの治療用薬剤の放出を遅くするのに有効な量の薬学的に許容されるポリマーを含んでいてもよい。追加または代替として、動物の表皮層、真皮層、または皮下層への注射による投与の際に調合物からの治療用薬剤の放出を制御するため、治療用薬剤をリポソームに組み込むかまたは多糖および/もしくはその他のポリマーと結合もしくは混合させてもよい。特定の好ましい態様において、生体適合性ポリマー、およびポリマーとともに粘性のゲルを形成しかつ組成物による水の取り込みを制限する水和性の低い生体適合性溶媒に治療用薬剤を組み込んでもよい。そのような組成物は、参照としてその全部が本明細書に組み入れられる米国特許第6,130,200号(Brodbeck, et al.)に説明されており、例えば、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)コポリマーを、安息香酸の低級アルキルエステルまたは低級アラルキルエステルを含む溶媒であってポリマーとともに可塑化してゲルを形成するのに有効な量の溶媒とともに用いてもよい。
【0030】
本発明の一部はさらに、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行うため動物の表皮層、真皮層、または皮下層に注射用調合物を投与するための方法であって、約0.1〜約10マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物(例えばスラリーまたはペースト)であって固体含有量が約20〜約85重量%でありかつ有効量の治療用薬剤を含む調合物を動物の皮膚の表皮層、真皮層、または皮下層に注射する段階を含む方法に関する。
【0031】
好ましい態様において、治療用薬剤は、ゲージ数の小さい針(例えば27〜30ゲージ)による注射に適した平均粒径まで粒径を小さくするため、例えば噴霧乾燥または凍結乾燥により加工される。
【0032】
好ましい態様において、治療用薬剤は、薬学的に許容される非水溶性または半水溶性の担体中に組み込まれる。さらに好ましい態様において、調合物は、注射装置から注射される際に揺変特性を示す。
【0033】
本発明の一部はさらに、本発明の注射用調合物、注射装置、および調製方法を用いて動物(例えばヒトの患者)を治療する方法に関する。
【0034】
本発明の目的において、「治療用薬剤」という用語は、身体状態、体調不良、または疾患の予防、診断、緩和、処置、または治療に用いられる薬剤およびワクチンなどを含む。
【0035】
「皮内」という用語は、皮膚の表皮層、真皮層、または皮下層への投与を含む。
【0036】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明の化合物を動物またはヒトに送達するための、薬学的に許容される溶媒、沈殿防止剤、または媒体(vehicle)を意味する。担体は液体、半固体、または固体であってもよい。
【0037】
「薬学的に許容される」成分、賦形剤、または構成要素という用語は、適度な利益/リスク比に鑑みて不当な有害副作用(毒性、刺激、およびアレルギー反応など)を起こすことなくヒトおよび/または動物に使用するのに適したものであることを意味する。
【0038】
「治療用薬剤」という用語は、単独か他の薬学的賦形剤もしくは不活性成分との組合せかにかかわらず、ヒトまたは動物に投与した際に、望ましく、利益があり、かつ多くの場合薬理学的な効果をもたらす薬剤を意味する。
【0039】
「化学的安定性」という用語は、治療用薬剤に関して、酸化または加水分解などの化学経路により生じる分解産物の割合が許容範囲内であることを意味する。具体的には、意図された製品保管温度(例えば室温)で1年間保管した場合;30℃/相対湿度60%で1年間保管した場合;または、40℃/相対湿度75%で1ヵ月間、好ましくは3ヵ月間保管した場合に生じる分解産物がわずか約20%である場合に、その調合物は化学的に安定であるとみなす。
【0040】
「物理的安定性」という用語は、治療用薬剤に関して、生じる凝集体(例えば二量体、三量体、およびそれ以上の重合体)の割合が許容範囲内であることを意味する。具体的には、意図された製品保管温度(例えば室温)で1年間保管した場合;30℃/相対湿度60%で1年間保管した場合;または、40℃/相対湿度75%で1ヵ月間、好ましくは3ヵ月間保管した場合に生じる凝集体がわずか約15%である場合に、その調合物は物理的に安定であるとみなす。
【0041】
「安定な調合物」という用語は、室温で2ヵ月間保管した場合に化学的かつ物理的に安定な治療用薬剤が少なくとも約65%残っていることを意味する。特に好ましい調合物は、これらの条件下で化学的かつ物理的に安定な治療用薬剤が少なくとも約80%残る調合物である。さらに特に好ましい安定な調合物は、滅菌照射(例えばγ線、β線、または電子ビームの照射)後に分解を示さない調合物である。
【0042】
「生物学的利用能」という用語は、本発明の目的において、治療用薬剤が調合物から吸収される程度と定義される。
【0043】
「全身の」という用語は、対象への有益薬剤の送達または投与に関して、対象の血漿中において有益薬剤が生物学的に有意なレベルで検出可能であることを意味する。
【0044】
「ペースト」という用語は、粘性の半固体を形成するため薬学的に許容される粘稠度の高い担体に分散させた治療用薬剤の濃縮物を意味する。
【0045】
「スラリー」という用語は、希薄なペーストを意味する。
【0046】
「放出制御」という用語は、本発明の目的において、治療用薬剤の血中(例えば血漿中)濃度が治療域内に維持されかつ約1時間またはそれ以上、好ましくは12時間またはそれ以上にわたって毒性濃度未満に維持されるような速度で治療用薬剤を放出することと定義される。
【0047】
「皮内」という用語は、動物(例えばヒト)の皮膚の表皮層または真皮層の中を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の注射装置の断面図である。
【図2】図1の注射装置の外部側面図である。
【図3】本発明の注射装置のばね機構の配置を示した断面図である。
【図4】本発明の注射装置の外部ハウジングおよび安全スリーブを示した図である。
【図5】図5a〜5bは、本発明の注射装置について皮膚と装置との相互作用を示した側面図である。図5cは、図5bの装置の断面図である。
【図6】ガス圧自動注射器を用いた、本発明の注射装置の別の態様を示した図である。
【図7】扁平型ガス式自動注射器である、本発明の注射装置の別の態様を示した図である。
【図8A】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8B】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8C】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8D】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8E】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【図8F】本発明の注射装置および薬剤調合物充填システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
詳細な説明
特定の好ましい態様において、本発明の方法、調合物、および装置は、動物の表皮層、真皮層、または皮下層に治療用薬剤を投与することに関する。
【0050】
針/シリンジによる注射に伴う疼痛の一般的な原因であって本発明により解決される原因は少なくとも3つある。これら疼痛の原因は以下の変数によってさまざまである:(i)典型的な液体の投与において患者に送達される液体の体積、(ii)針のサイズ(直径、太さ)、および(iii)注射の深度。これらの各変数に対処することにより低痛または無痛の投与が実現される。
【0051】
患者の皮内空間への治療用薬剤の無痛投与を実現し、これにより薬剤の全身循環を生じさせるかまたはワクチンの場合に抗原を免疫系に接触させるための本発明の代替要素は、少なくとも4つある。これらの要素は以下のとおりである:(i)小体積の注射;(ii)保護溶液(典型的には非水溶性の溶液)に囲まれた、濃縮された治療用薬剤(例えば薬)の粒子群または分散固体調合物;(iii)薄い壁を有する、ゲージ数の小さい針;および(iv)治療用薬剤の濃縮分散物(例えばスラリー)の、皮膚の表皮層または真皮層への浅い注射。さらに本発明は、注射の速度にも対処し、隠れ針を有する自動注射器を提供する。
【0052】
調合物
治療用の注射の大多数で用いられる標準的な注射の体積は、あまりにも大きいため表皮層、真皮層、または皮下層の疼痛を防ぐことができない。したがって、動物(例えばヒトの患者)に対して治療用薬剤を低痛または無痛で注射(または投与)するには、注射体積をはるかに小さくする必要がある。標準的な注射は、患者の皮下または筋肉内の領域に対して行われる。こうした深い部位が利用されるのは、浅い真皮の部位と比較して組織が伸展しやすく、多くの治療用注射剤で必要とされる0.1〜1.0 mlの注射体積を収容できるからである。大きな体積の粘性物質の注射は、小さな体積の希薄物質の注射と比較してより強い疼痛を引き起こす傾向がある。しかし、粘性の薬物は管腔の大きい針を必要とするため、これまで皮内への投与は行われていない。そのような針は皮内投与には使用できない。さらに、液体調合物を皮内に注射する場合には組織の傷害を防ぐため低速度で行う必要があるうえ、体積が0.5 mlを超える場合は皮内への投与ができない。
【0053】
本発明の注射用調合物は必要送達量(例えば薬物治療で必要とされる用量)の治療用薬剤を含み、かつ、好ましくはその体積は小さく、例えば、治療的用量の治療用薬剤を含む注射用調合物の体積は少なくとも約0.01 マイクロリットルであり(下限は充填装置の機能である)、より好ましくは約1〜約250マイクロリットルである。このことは、特定の好ましい態様において、その用量の治療用薬剤を、本発明に従って注射に適した担体中に安定した形態で濃縮することによって実現される。特定の態様において、体積の小さい注射用の用量は、その用量の治療用薬剤を安定した形態で好適な担体中に濃縮することによって実現される。
【0054】
好ましくは、本発明の体積の小さな調合物は、希釈、再調製、または冷蔵されることなく投与される。好ましい態様において、治療用薬剤の治療的用量は、注射可能なペースト(固体)またはスラリー中に治療用薬剤を濃縮することによって実現される。
【0055】
標準的な注射は液体の形態で投与される。製品は液体または凍結乾燥パウダーとして販売され、注射前に水性の担体で再調製する必要がある。多くの治療用タンパク質およびワクチンは、保管中の安定性を高めるため固体粒子の形態で製造される。これらの調合物は注射前に滅菌水、リン酸緩衝溶液、または等張生理食塩水に溶解される。これに対して、本発明の特定の好ましい態様において、治療用薬剤は、製薬業界で注射用調合物の調製に日常的に用いられているものと同じ粒子調製加工技術(例えば噴霧乾燥、凍結乾燥など)を用いて濃縮される。ただし、本発明の体積の小さい粒子調合物は、本発明の目的に基づき、再調製製品で必要な注射前の調合物の希釈を行うことなく、動物(例えばヒトの患者)に注射またはその他の方法で投与される。
【0056】
注射のしやすさを補助するため、治療用薬剤を含む濃縮固体は液体で囲み、これによりスラリーまたはペーストを形成する。本発明の調合物は、広い範囲の固体含有率を有していてよく、典型的には約1.0〜約99.0%の固体を含み、より好ましくは約20〜約80%の固体を含む。薬剤調合物の粒子の大きさ、調合物の固体含有率、および針の太さは、調合物の注射に必要な圧力に影響を及ぼす。濃縮固体調合物は、ペイロード(用量分の濃縮固体調合物)を送達するため装置を作動させた際に針から流出できるような様式で注射装置の中に配置されかつ同装置の中に存在する。
【0057】
または、特定の態様においては、用量分の固体粒子治療用薬剤を担体中に組み込まなくてもよい。そのような別の態様において、注射装置の針を通過する調合物の流動性は、注射装置の針部分の内面(および/もしくは固体調合物が表面接触する装置のその他任意の部分)に塗布されたまたは薬剤粒子の外側にコーティングされた潤滑物質によりもたらされる。そのような材料は、例えばグリースまたはシリコーン油であってもよい。
【0058】
本発明の特定の好ましい態様において、本発明の注射用調合物は、以下の目的のためスラリーまたはペーストとして有利に調製される:(i)固体濃縮物の注射に必要な圧力を低下させるため、(ii)ペーストの均一な送達を促すため、ならびに(iii)凝集、酸化、および加水分解に関係する分解経路に対する保管安定性を高めるため。
【0059】
特定の好ましい態様において、治療用薬剤を含むスラリーまたはペーストは、長期間(例えば、許容できないレベルの治療用薬剤の分解を使用前にきたすことなく所望の貯蔵寿命を調合物に与えるのに十分な期間)にわたって治療用薬剤を安定な形態に保つ。スラリーまたはペーストの特性として望ましいのは、非水溶性であり、かつ粒子薬剤調合物に対して無反応性であることである。そのような態様においては、スラリーまたはペーストを注射装置自体の中で直接保管することが可能である。または、治療用薬剤の粒子調合物は乾燥(例えば凍結乾燥)させて注射装置とは別に保管してもよく、このことは当業者に理解されるものと思われる。その後、使用前に、治療用薬剤の粒子調合物に十分量の液体を添加してスラリーまたはペースト(超濃縮半固体)を調製してもよく、これを注射装置に導入してもよい。このような態様は濃縮の段階を必要としない。
【0060】
特定の好ましい態様においては、半固体調合物の中に組み込まれた治療用薬剤の安定性を確保するため、半固体調合物を安定化させる必要がある。注射用調合物の安定性は、スラリーまたはペーストに安定剤を含めることによって実現される。別の好ましい態様においては、安定剤を含めることに対する追加または代替として、治療用薬剤の安定性の中立性を増強または維持できる液体または液体混合物を注射用担体の一部または全部として含めてもよい。そのような安定剤としては、例えば界面活性剤、プルロニック、ゲル、および両性化合物がある。特定の態様において、スラリー調合物に含まれる治療用薬剤は、トリアセチン、n-メチル-2-ピロリドン、または安息香酸ベンジルなどの物質を添加することによって(これらは例えば噴霧乾燥などの直後に添加してもよい)、望ましくない分解に対して安定させてもよい。安定剤のその他の例としては、鉱油、パーフルオロデカリン、安息香酸エチル、オクタン、プルロニック、グリコール酸化合物、アミノ酸、ゲルを形成するポリマー(例えばPEG)、多価アルコール、油、およびワックスがある。特定の好ましい態様において、安定剤は、治療用薬剤を含む(元の)パウダーに噴霧乾燥もしくは凍結乾燥の前に添加される。または、担体に安定剤を直接添加してもよい。
【0061】
治療用薬剤がタンパク質または核酸含有粒子を含む特定の好ましい態様においては、安定しかつ流動性を有する非水溶性調合物を得るため、好ましくは治療用薬剤を、無水、非プロトン性、無極性でかつ反応性の低い媒体(例えば鉱油、パーフルオロデカリン、メトキシフルラン、パーフルオロトリブチルアミン、およびテトラデカンなど)に懸濁する。そのような調合物は、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,264,990号に説明されている。他の好ましい態様においては、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,290,991号に説明されているものなどの多価アルコール安定剤に含めることによって調合物を安定化させてもよい。
【0062】
特定の好ましい態様において、安定剤は、調合物の約1〜約80重量%を占める。しかし、本発明の調合物に含まれる安定剤(例えば界面活性剤)の量を決定するのは、最終産物が提供する調合物が安定かつ薬学的に許容されるものでなければならないという制限事項である。薬学的に許容されるその他の好適な安定剤としては、アラビアゴム、塩化ベンザルコニウム、コレステロール、乳化ワックス、モノステアリン酸グリセリン、ラノリンアルコール、レシチン、ポロクサマー、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、およびトリエタノールアミンなどがある。
【0063】
例えば調合物が注射装置の針を通過することを助けるため、および/または固体の治療用薬剤の溶解を助けるためなどの目的で、半固体の治療用調合物に界面活性剤を組み込んでもよい。本発明で使用される界面活性剤は、一般的に、薬学的に許容される陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性(両親媒性/両染性)界面活性剤、および非イオン界面活性剤を含む。
【0064】
薬学的に許容される好適な陰イオン界面活性剤としては、例えば、一価のアルキルカルボン酸塩、アシルラクチル酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N-アシルサルコシン酸塩、多価のアルキル炭酸塩、N-アシルグルタミン酸塩、脂肪酸-ポリペプチド凝縮物、硫酸エステル、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む)、エトキシ化アルキル硫酸塩、エステル結合スルホン酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、およびリン酸エトキシ化アルコールなどがある。
【0065】
薬学的に許容される好適な陽イオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキル第四アンモニウム塩、ジアルキル第四アンモニウム化合物、アミドアミン、およびアミンイミドなどがある。
【0066】
薬学的に許容される好適な両性(両親媒性/両染性)界面活性剤としては例えば、N-置換アルキルアミド、N-アルキルベタイン、スルホベタイン、およびN-アルキルβ-アミノプロピオン酸などがある。
【0067】
薬学的に許容される好適な湿潤剤(可溶化剤)は薬学的に許容される非イオン界面活性剤を含み、そのような界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレン化合物、エトキシ化アルコール、エトキシ化エステル、エトキシ化アミド、ポリオキシプロピレン化合物、プロポキシル化アルコール、エトキシ化/プロポキシル化ブロックポリマー、プロポキシル化エステル、アルカノールアミド、アミンオキシド、多価アルコールの脂肪酸エステル、エチレングリコールエステル、ジエチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリル脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびグルコース(デキストロース)エステルなどがある。
【0068】
特定の態様において、好ましい界面活性剤は例えば、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミノ酸エステル、オクタデシルアミン、リゾレシチン、ジメチル-臭化ジオクタデシルアンモニウム、N,N-ジオクタデシル-N'-N'ビス(2-ヒドロキシエチル-プロパンジアミン)、メトキシヘキサデシルグリセロール、およびプルロニック多価アルコール(例えば、所望の量のアルキレンポリオキシド(Pluronic PE 4300の商品名でBASFより販売されている))などを含む。具体的な界面活性剤は、適合性および治療用薬剤を溶解または湿潤する能力を考慮して、治療用薬剤との関連で選択されるべきである。
【0069】
同様に、針による固体の注射容易性を増強するような任意の液体も本発明の実現可能な局面とみなされるべきである。したがって、特定の態様において、注射用のスラリー調合物は1つまたは複数の注射容易性向上剤を含む。そのような薬剤としては例えばシリコーン油、ワックス、オイル、潤滑剤、グリース、およびワセリンがあるが、これらに限定されることはない。
【0070】
好適な薬学的担体はRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1995に説明されており、そのうち一部は天然高分子構造の液体もしくは懸濁液、または界面活性剤を基材とする系を含む。特に好適な担体としては、トリアセチン溶液に溶解したデキストラン(水含有量0〜7%);弱い溶媒(NMP、安息香酸アルキル、トリアセチン、またはこれらの混合物)に溶解したPLGAなどがあるが、これらに限定されることはない。「溶媒」という用語は、粘弾性物質を溶解する薬学的に許容される溶媒を意味する。
【0071】
特定の好ましい態様において、本発明に使用する液体担体は、揺変特性と、針から排出される際に固体をペースト中に懸濁させるための正の降伏値とを有する。降伏値とは静止時に液体に印加される力または圧力の測定値である。ニュートン流体は、動きを生じない限り重量以外の力を印加できるため、ずれ応力がゼロである。しかし、多くの粘弾性溶液が粘性を有するものの、正の降伏値は溶液の粘稠度の関数ではない。粘弾性溶液中に懸濁された粒子を支持および運搬するのは、溶液の粘稠度ではなく、液体中の三次元構造の存在である。粒子を十分に懸濁させるには、溶液はその断面にかかる重力より大きい降伏値をもつことが好ましく、例えばPLGAのトリアセチン溶液は重力による力の7倍に等しい降伏値を有する。好適な濃度を有する揺変性の溶液または粘稠な溶液により、薬剤を溶液中に均一に分散させることができる。この特性がないと、力が印加された場合に液体が針から流出して固体が後に残り、最終的に針が詰まって、投与が失敗する。加えて、本発明の目的には、構造溶液が流動条件下でもその特性を保つことが重要である。このことが満たされない場合は、懸濁された粒子が細い針の通過中に非懸濁状態となり、詰まりを生じる可能性がある。
【0072】
注射用の調合物は薬学的に許容されるその他の注射用成分を含んでいてもよく、そのような成分としては薬学的に許容される注射用の追加の賦形剤などがあるが、これに限定されることはない。スラリーまたはペーストに含まれるそのような追加の成分は、好ましくは、適当な圧力下で固体の移動を生じさせるのに必要な流動特性を有する(すなわち、調合物の注射容易性を損なわない)。一般的な法則として、シリンジにより生成され得る圧力の下限は拇指による圧力(例えば数ニュートン)である。
【0073】
このような追加の成分として例えば、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、またはメチオニンなどの抗酸化剤の単用または併用は好適な安定剤である。この他、クエン酸およびその塩、もしくはEDTAナトリウム;塩化ベンザルコニウム、メチルパラベンもしくはプロピルパラベン、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールなどの防腐剤も使用される。
【0074】
本発明の方法においては任意の好適な用量の治療用薬剤を投与してよい。特定の用途のため選択される化合物またはその塩もしくはプロドラッグ、担体、およびその量は、恒温動物またはヒトの種、治療対象とする癌または特定のウイルス感染の種類、および、試験で観察された有効発育阻止濃度によって大きく異なると考えられる。無論、投与される用量は既知の要因によって異なると考えられ、そのような要因としては例えば、特定の化合物、塩、もしくはそれらの組合せの薬力学特性;投与対象の年齢、健康状態、もしくは体重;症状の性質および範囲;薬剤および患者(患畜)の代謝特性;併用される治療法の種類;治療の頻度;または所望の効果などがある。
【0075】
本発明に有用なポリマーは好ましくは生分解性および/または生体適合性を有し、例えば以下のようなポリマーがあるがこれらに限定されることはない:ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、コハク酸塩、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、キチン、キトサン、ならびにこれらのコポリマー、ターポリマー、および混合物。
【0076】
現在好ましいポリマーはポリラクチド、ポリグリコリド、ならびに乳酸およびグリコール酸のコポリマーである。これらのポリマーは、本発明により実現される有利な結果に実質的な影響を及ぼさない量の他のコモノマーを含んでいてもよい。本明細書において、「乳酸」という用語はL-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、およびラクチドの各異性体を含み、「グリコール酸」という用語はグリコリドを含む。特に好ましいのはポリ(ラクチド-コ-グリコリド)グリコリドであり、これは一般的にPLGAと呼ばれる。同ポリマーは乳酸/グリコール酸のモノマー比が約100:0〜約15:85であってもよく、好ましくは約60:40〜約75:25であり、特に有用なコポリマーは乳酸/グリコール酸のモノマー比が約50:50である。
【0077】
本発明により送達してもよい薬剤としては、以下の部位に作用する薬剤がある:末梢神経、アドレナリン作動性受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、シナプス部、神経‐効果器接合部、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、オータコイド系、消化器系および排泄系、外皮系、呼吸器系、造血系、ヒスタミン系、ならびに中枢神経系。好適な薬剤は、例えば以下から選択してもよい:タンパク質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛剤、局所麻酔剤、抗生物質、抗炎症性コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗痙攣薬、眼科用薬剤、抗ヒスタミン薬、抗結核薬、コリン作動薬、抗コリン作動薬、交感神経作動薬、交換神経遮断薬、抗高血圧薬、血管拡張剤、トランキライザー、抗うつ薬、抗凝固剤、心臓病薬、、気管支拡張剤、去痰薬、尿生殖器平滑筋弛緩剤、ビタミン、止血剤、抗甲状腺薬、重金属アンタゴニスト、興奮剤、鎮静剤、制吐薬、自律神経薬、胃腸薬、電解質、神経筋遮断薬、皮膚科用薬剤、ならびにこれらの種の半合成類似体および合成類似体。
【0078】
本発明の組成物により送達してもよい薬剤の例としては以下のものがあるが、これらに限定されることはない:抗ヒスタミン薬(例えばマレイン酸アザタジン、マレイン酸ブロムフェニルアミン、マレイン酸カルビノキサミン、マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、コハク酸ドキシラミン、塩酸メトジラジン、プロメタジン、酒石酸トリメプラジン、クエン酸トリペレナミン、塩酸トリペレナミン、塩酸トリプロリジン、セチリジン、クレマスチン、フェキソフェナジン);フェノチアジン(例えばプロクロルペラジン);ニコチン受容体アンタゴニスト(例えば塩酸メカミラミン);抗生物質(例えばペニシリンVカリウム、クロキサシリンナトリウム、ジクロキサシリンナトリウム、ナフシリンナトリウム、オキサリシンナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、リン酸クリンダマイシン、塩酸クリンダマイシン、塩酸パルミチン酸クリンダマイシン、塩酸リンコマイシン、ノボビオシンナトリウム、ニトロフラントインナトリウム、塩酸メトロニダゾール、エリスロマイシン、アセチルスルフィソキサゾール);抗ウイルス薬(例えばジドブジン);駆虫剤(例えばピペラジン);抗結核薬(例えばイソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシン);コリン作動薬(例えば塩化コリン、塩化アセチルコリン、塩化メタコリン、塩化カルバコール、塩化ベタネコール、ピロカルピン、ムスカリン);抗コリンエステラーゼ薬(例えば塩化アンベノニウム、臭化ネオスチグミン、臭化ピリドスチグミン、エドロホニウム);抗ムスカリン薬(例えばアトロピン、スコポラミン、臭化メチルアニソトロピン、臭化イプラトロピウム、臭化クリジニウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、ピレンゼピン、塩酸ジシクロミン、グリコピロレート、メチル硫酸ヘキソシクリウム、臭化メチルホマトロピン、硫酸ヒオスシアミン、臭化メタンテリン、臭化水素酸ヒオスシン、臭化オキシフェノニウム、臭化プロパンテリン、塩化トリジヘキセチル、ヨウ化イソプロパミド);交感神経作動薬(例えばイソプロテレノール、フェニルエチルアミン、ノルエピネフリン、ドブタミン、コルテロール、エチルノルエピネフリン、イソエタリン、メタプロテレノール、テルブタリン、メタラミノール、フェニレフリン、チラミン、プレナルテロール、メトキサミン、アルブテロール、メフェンテルミン、プロピルヘキセドリン、メタンスルホン酸ビトルテロール、エフェドリン、塩酸エフェドリン、硫酸エフェドリン、硫酸オルシプリナリン、フェニルプロパノールアミン、塩酸プソイドエフェドリン、塩酸リトドリン、硫酸サルブタモール);交換神経遮断薬(例えば塩酸フェノキシベンザミン);乗物酔い治療薬(例えばジフェニドール、塩酸メクリジン、スコポラミン);鉄製剤(例えばグルコン酸第一鉄、硫酸第一鉄、デキストラン鉄);止血剤(例えばアミノカプロン酸);心臓病薬(例えば塩酸アセブトロール、塩酸ジルチアゼム、リン酸ジソピラミド、酢酸フレカイニド、塩酸プロカインアミド、塩酸プロプラノロール、グルコン酸キニジン、マレイン酸チモロール、塩酸トカイニド、塩酸ベラパミル;四硝酸エリトリチル、ミルリノン、ニモジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、フェロジピン,、リドフラジン、チアパミル、ガロパミル、アムロジピン、ミオフラジン);抗高血圧薬(例えば塩酸クロニジン、塩酸ヒドララジン、酒石酸メトプロロール、リシノプリル、エナラプリル、エナラプリラット、カプトプリル、ラミプリル;ミノキシジル);血管拡張剤(例えば塩酸パパベリン、エポプロステロール);非ステロイド性抗炎症薬(例えばサリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸ナトリウム、ナプロキセンナトリウム、トルメチンナトリウム、ケトプロフェン、イブプロフェン、ジフルニサル、フルルビプロフェン、フェンブフェン、フルプロフェン、アルクロフェナック、メフェナム酸、フルフェナム酸);COX-2阻害薬(例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ);利尿剤(例えばマンニトール、アセタゾラミド、メタゾラミド、ベンドロフルメサイアザイド、メトラゾン、クロロチアジド、インダパミド、エタクリン酸、フロセミド、ブメタニド、スピロノラクトン、アミロライド);アヘン剤アゴニスト(例えば塩酸コデイン、リン酸コデイン、硫酸コデイン、酒石酸デキストロモルアミド、酒石酸水素ヒドロコドン、塩酸ヒドロモルホン、塩酸ペチジン、塩酸メタドン、硫酸モルヒネ、酢酸モルヒネ、乳酸モルヒネ、メコン酸モルヒネ、硝酸モルヒネ、第一リン酸モルヒネ、酒石酸モルヒネ、吉草酸モルヒネ、臭化水素酸モルヒネ、塩酸モルヒネ、フェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、ブトルファノール、ブプレノルフィン、アルフェンタニル、塩酸プロポキシフェン);アヘン剤アンタゴニスト(例えば塩酸ナロキソン、塩酸ナルトレキソン、ナロルフィン、レバロルファン);抗痙攣薬(例えばカルバマゼピン、フェニトインナトリウム、トロキシドン、エトスクシミド、バルプロ酸ナトリウム、トリメタジオン、フェナセミド、アセタゾラミド、プロガビド);ドーパミン作動性アゴニスト(例えばドーパミン、アポモルヒネ、ペルゴリド、ブロモクリプチン、リスリド);興奮剤(例えばアンフェタミン、塩酸ベンズフェタミン、硫酸デキストロアンフェタミン、リン酸デキストロアンフェタミン、塩酸ジエチルプロピオン、塩酸フェンフルラミン、塩酸メタンフェンタミン、塩酸メチルフェニデート、酒石酸フェンジメトラジン、塩酸フェンメトラジン、クエン酸カフェイン);鎮静剤(例えば塩酸ヒドロキシジン、メチプリロン);去痰薬(例えばヨウ化カリウム);制吐薬(例えば塩酸ベンズキナミド、塩酸メトクロプラミド、塩酸トリメトベンズアミド、オンダンセトロン、グラニセトロン);胃腸薬(例えば塩酸ラニチジン、シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、エソメプラゾールマグネシウム、ラベプラゾール);スタチン(例えばアトルバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、セリバスタチン);重金属アンタゴニスト(例えばペニシラミン、塩酸ペニシラミン);抗甲状腺薬(例えばメチマゾール);尿生殖器平滑筋弛緩剤(例えば塩酸フラボキサート、塩酸オキシブチニン);抗コリンエステラーゼ薬(例えばフィソスチグミン、ネオスチグミン、エドロホニウム、イソフルロフェート);神経筋遮断薬(例えばツボクラリン、アルクロニウム、ヨウ化メトクリン、ガラミントリエチオダイド、臭化パンクロニウム、臭化ベクロニウム、ベシル酸アトラクリウム、塩化スクシニルコリン、臭化ヘキサフルオレニウム、アルクロニウム塩化、臭化ファザジニウム、臭化デカメトニウム);神経節刺激薬(例えばニコチン、ロベリン、テトラメチルアンモニウム);神経節遮断薬(例えばヘキサメトニウム、トリメタファン);αアドレナリン受容体アンタゴニスト(例えばフェントラミン、トラゾリン、プラゾシン、テラゾシン、ドキサゾジン、トリマゾシン、ヨヒンビン、インドラミン);βアドレナリン受容体アンタゴニスト(例えばプロプラノロール、メトプロロール、ナドロール、アテノロール、チモロール、エスモロール、ピンドロール、アセブトロール、ラベタロール);麻酔剤(例えばブピバカイン、リドカイン、テトラカイン、メピバカイン、レボブピカイン、プリロカイン、アルチカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、コカイン、ハロタン、エンフルラネム、イソフルラン、プロポフォール、プロカイン、メトキシフルラン);ベンゾジアゼピン(例えばアルプラゾラム、ブロチゾラム、クロルジアゼポキシド、クロバザム、クロラゼペート、デモゼパム、ジアゼパム、フルマゼニル、フルラゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、ノルダゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラム);バルビツレート(例えばアモバルビタール、アミルバルビトン、ナトリウム、セコバルビタール、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、メフォバルビタール、エントバルビタール、フェノバルビタール、タルブタール、チオペンタール、チアミラール);鎮静催眠剤(例えば抱水クロラール、エトクロルビノール、エチナメート、グルテチミド、メプロバメート、メチプリロン、パラアルデヒド);抗精神病薬(例えばリチウム、チオチキセン、クロルプロマジン、塩酸トリフルプロマジン、メソリダジンベシレート、塩酸チオリダジン、マレイン酸アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、塩酸トリフルオペラジン、クロルプロチキセン、塩酸チオチキセン、ハロペリドール、コハク酸ロクサピン、塩酸モリンドン、ピモジド);抗うつ薬(例えばイミプラミン、アミトリプチリン、トリミプラミン、ドキセピン、デシプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、アモクサピン、デシプラミン、マプロチリン、トラゾドン、フルオキセチン、イソカルボキサジド、硫酸フェネルジン、硫酸トラニルシプロミン、ベンラファキシン);抗コリン作動薬(例えばメタンスルホン酸ベンズトロピン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸プロシクリジン、ビペリデン、塩酸エトプロパジン);鎮咳薬(例えばデキストロメトルファン、ベンゾナテート、フォルコジン、レボプロポキシフェンナプシレート);副腎皮質ステロイド(例えばデキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、酢酸コルチゾン、フルニソリド、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン);アンドロゲン(例えばテストステロン、ナンドロロン、ダナゾール、フルオキシメステロン、スタノゾロール、テストラクトン);抗アンドロゲン薬(例えば酢酸シプロテロン、フルタミド、フィナステリド);βアドレナリン作動薬(例えばフォルメテロール、イソプロテレノール、アルブテロール、ビトルテロール、サルメテロール);性腺刺激ホルモン放出ホルモン類似体(例えばロイプロリド、ゴセレリン、ブセレリン);メディエータ放出阻害剤(例えばクロモリンナトリウム、ネドクロミルナトリウム);高ロイコトリエン薬(例えばザフィルルーカスト、ジレウトン、モンテルーカスト);プロゲスチン(例えばプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、二酢酸エチノジオール、ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル、酢酸メゲストロール);プレグナジエン(例えば酢酸クロルマジノン);抗プロゲスチン薬(例えばミフェプリストン);エストロゲン(例えばエストラジオール、エチニルエストラジオール、メストラノール、キネストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン);抗エストロゲン薬(例えばクロミフェン、タモキシフェン);スルホニル尿素剤(例えばトルブタミド、クロルプロパミド、グリブリド、グリピジド、グリクラジド、トラザミド);糖尿病薬(例えばフェンフォルミン、シグリタゾン);抗血小板薬(例えばジピリダモール、チクロピジン);血栓溶解剤(例えばストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アルテプラーゼ);抗凝固剤(例えばワルファリン、アニシンジオン、ジクマロール、ジフェナジオン、四硝酸エリトリチル、ヘパリン、チンザパリン、エノキサパリン);ホルモン(例えば甲状腺刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、カルシトニン、インスリン);コルチコトロピン(例えば副腎皮質刺激ホルモン);成長ホルモン放出ホルモン(例えばソマトスタチン);メチルキサンチン(例えばテオフィリン、カフェイン、アミノフィリン);鎮痙剤(例えばチザニジン);ビタミン(例えば葉酸、塩酸チアミン、アスコルビン酸、クラシトリオール;メナキノン、フィトナジオン);抗痛風剤(例えばコルヒチン、アロプリノール);ビスホスホネート(例えばリセドロネート、エチドロン酸、チルドロネート);抗腫瘍薬(例えばテモゾロミド、ターグレチン、ビンカミン、メトトレキサート、ビンクリスチン、シクロフォスファミド
、エトポシド、メクロレタミン、シクロスポリン、ビンブラスチン、フルオロウラシル);化学保護剤(例えばアミフォスチン);疥癬治療薬(例えばアシトレチン);抗痴呆薬(例えばリバスチグミン、ドネペジル、テトラヒドロアミノアクリジン);子宮刺激剤(例えばエルゴノビン、メチルエルゴノビン);抗片頭痛薬(例えばジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン);糖タンパク質(例えばエリスロポイエチン);コロニー刺激因子(例えばフィルグラスチム);酵素(例えばアルグルセラーゼ、L-アスパラギナーゼ);ポリペプチド(例えばグルカゴン);サイトカイン(例えばαインターフェロン、βインターフェロン);ワクチン(例えばカルメット‐ゲラン杆菌);眼科用薬剤(例えばマレイン酸チモロール、ドルゾラミド、ベタキソロール、ジピベフリン、ピロカルピン、ラタノプロスト、ウノプロストン、ブリンゾラミド、トラボプロスト);皮膚科用薬剤(例えばイソトレチノイン、エトレチナート、トレチノイン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、フルオシノロンアセトニド);抗パーキンソン病薬(例えばレボドパ、カルビドパ、トルカポン);抗尿結石薬(例えばチオプロニン);分類されない薬剤(例えば塩酸アマンタジン、ロイコボリンカルシウム、メチレンブルー、塩化ブラリドキシム、ジアゾキシド、エチンチジン、テトラトロール、シルデナフィル、フェナクリコドール);セロトニンのアゴニストおよびアンタゴニスト;以下のような主な治療薬を全て含むその他の物質:風邪薬、抗嗜癖薬、抗アレルギー薬、制吐薬、抗肥満薬、骨粗鬆症治療薬、抗感染症薬、抗ウイルス薬、鎮痛薬、麻酔薬、食欲抑制薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、オリゴ糖、エンケファリンおよびその他のオピオイドペプチド、低分子量ヘパリン、皮膚科用薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、電解質、血栓溶解剤、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗片頭痛薬製剤、乗物酔い薬製剤、制吐薬、抗腫瘍薬、抗パーキンソン病薬、止痒剤、抗精神病薬、解熱薬、抗コリン作動薬、ベンゾジアゼピンアンタゴニスト、血管拡張剤(全身用、冠動脈用、末梢血管用、および脳血管用を含む)、骨刺激剤、中枢神経系刺激剤、催眠剤、免疫抑制剤、筋弛緩剤、副交感神経遮断薬、副交感神経作動薬、プロスタグランジン、タンパク質、ペプチド、ポリペプチドおよびその他の高分子、精神刺激薬、鎮静剤、性機能不全治療薬、トランキライザー、ツベルクリンなど主な診断薬、ならびにその他の過敏症治療薬。
【0079】
本発明の方法により皮内に送達される治療用薬剤は、疾患の予防、診断、緩和、処置、または治療に用いられるワクチンなどであってもよい。調製し本発明の送達システムに使用できるタンパク質およびタンパク質化合物の例としては、生物学的活性を有するタンパク質または疾患もしくはその他の病理的状態の治療に使用できるタンパク質がある。そのようなタンパク質としては以下のものがあるがこれらに限定されることはない:ホルモン、成長ホルモン、低分子量ヘパリン、第VIII因子、第IX因子およびその他の凝固因子、キモトリプシン、トリプシノゲン、αインターフェロン、βガラクトシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、成長因子、凝固因子、酵素、免疫反応刺激物質、サイトカイン、リンフォカイン、インターフェロン、免疫グロブリン、レトロウイルス、インターロイキン、ペプチド、ソマトスタチン、ソマトトロピン類似体、ソマトメジンC、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、LHRH、ロイプロリドなどのLHRH類似体、ナファレリンおよびゴセレリン、成長ホルモン放出因子、絨毛性ゴナドトロピンなどのゴナドトロピン、オキシトシン、オクトレオチド、ソマトトロピン+アミノ酸、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、表皮成長因子、プロラクチン、ソマトトロピン+タンパク質、コシントロピン、リプレシン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンなどのポリペプチド、甲状腺刺激ホルモン、カルシトニンおよびその類似体、セクレチン、パンクレオチミン、エンケファリン、グルカゴン、ならびに、体内で分泌されかつ血流によって運搬される内分泌物質など。封入および送達できる他の薬剤としては他に以下のものがある:α1抗トリプシン、インスリンおよびその他のペプチドホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、およびその他の下垂体ホルモン、インターフェロンα、β、およびδ、エリスロポイエチン、GCSF、GM-CSF、M-CSFなどの成長因子、インスリン様成長因子1、組織プラスミノゲン活性化因子、CF4、dDAVP、腫瘍壊死因子受容体、膵酵素、ラクターゼ、インターロイキン1受容体アンタゴニスト、インターロイキン2、癌抑制タンパク質、細胞傷害性タンパク質、ウイルス、ウイルスタンパク質、組換え抗体および抗体断片、表皮成長因子、エリスロポイエチンおよびその類似体、卵胞刺激ホルモン、G-CSF、グルカゴン、成長因子およびその類似体(成長ホルモン放出ホルモンを含む)、成長ホルモンアンタゴニスト、ヒルジンおよびヒルジン類似体(ヒルログなど)、IgEサプレッサー、インスリノトロピンおよびその類似体、インスリン様成長因子、インターフェロン、インターロイキン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモンおよびその類似体、α-1抗トリプシン、抗血管新生剤、アンチセンス、モノクローナル抗体、副甲状腺ホルモンおよびその類似体、副甲状腺ホルモンアンタゴニスト、プロスタグランジンアンタゴニスト、プロスタグランジン、組換え可溶性受容体、組織プラスミノゲン活性化因子、TNF-、ならびにTNFアンタゴニストなど。これら物質の類似体、誘導体、アンタゴニスト、アゴニスト、および薬学的に許容される塩も使用してよい。
【0080】
本発明の調合物に有用なタンパク質化合物は、塩の形態で使用してもよく、好ましくは薬学的に許容される塩の形態で使用する。有用な塩は当業者に周知であり、無機酸、有機酸、無期塩基、または有機塩基の塩を含む。
【0081】
表1に、本発明の開示に従って患者に注射される薬剤、ならびに治療効果を得るための予測必要量および総注射体積(本発明の超濃縮治療用調合物の体積)を示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表2に、本発明の注射装置および方法との併用が考えられる種々の治療用薬剤の相対単位投与量を示す。
【0084】
【表2】
【0085】
本発明の好ましい態様において、治療用薬剤は構造をもたない緻密な状態となるよう乾燥され、薬学的に許容される担体で包まれて、最小注射体積の流動固体に形成される。特定の好ましい態様において、乾燥した治療用薬剤は、粒径を小さくするため、当業者に周知であり薬学的に許容される任意の様式で処理される。本発明に有用な治療用調合物の調製には、粒径を操作および/または減少するための種々の方法を用いることができる。そのような粒径減少の方法には、粉砕処理(切削、チョッピング、破砕、研削、粉砕、超微粉砕、ナノサイズ化、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥、研和、ミクロ液体化)も含まれる。
【0086】
本発明の注射用調合物に含まれる濃縮固体粒子の直径は、好ましくは、ナノメートルサイズから針にちょうど入る大きさまでの範囲内である(すなわち、粒子は針の内径より小さい必要がある)。極端な場合、粒径の上限は使用される最大の注射針の直径と等しいが、典型的には粒子の直径は使用される針の内径の1/10より小さい。
【0087】
好ましい態様において、治療用薬剤は、平均粒径が10ナノメートル(0.01マイクロメートル)〜約250マイクロメートルとなりかつ約1 mmより大きい粒子が存在しないように粒径を小さくする処理が施される。より好ましい態様において、治療活性薬剤は、平均粒径が約0.1〜約25マイクロメートルとなりかつ約50マイクロメートルより大きい粒子が存在しないよう粒径が小さくされ、特定の態様においては、粒子が約1〜約10マイクロメートルであることが最も好ましい。固体粒子の粒径をこの範囲まで小さくすることにより、最大の粒子の直径は、本発明に有用な最大の注射針の直径を通過できるよう十分小さくなる。
【0088】
噴霧乾燥技術は当業者に周知である。噴霧乾燥は、1つまたは複数の固体(例えば治療用薬剤)を含む溶液をノズル回転盤またはその他の装置により噴霧化する段階、および、次にその小滴から溶媒を蒸発させる段階を含む。このようにして得られるパウダーの性質は、初期溶質濃度、生成される小滴のサイズ分布、および溶質の除去速度など、複数の変数の関数として決定される。得られる粒子は、溶媒除去の速度および条件に応じて、結晶および/または非晶質固体からなる一次粒子の凝集体を含んでいてもよい。
【0089】
タンパク質、オリゴペプチド、高分子多糖、および核酸などの生物高分子の超微粒子を作製するための噴霧乾燥処理は、米国特許第6,051,256号に説明されている。凍結乾燥技術は当技術分野において周知であり、例えば米国特許第4,608,764号および同第4,848,094号に説明されている。噴霧凍結乾燥処理は例えば米国特許第5,208,998号に説明されている。その他の噴霧乾燥技術は、例えば米国特許第6,253,463号、同第6,001,336号、および同第5,260,306号、ならびにWO 91/16882およびWO 96/09814に説明されている。
【0090】
凍結乾燥技術は当業者に周知である。基本的に、凍結乾燥は、製品を凍結状態(真空下における氷昇華)かつ真空下(穏やかな加熱による乾燥)において行う脱水技術である。これらの条件により製品が安定化し、かつ、酸化およびその他の分解過程が最小限になる。凍結乾燥の条件では処理を低温で行うことができ、したがって、温度に対して不安定な製品も状態が維持される。凍結乾燥の段階としては、前処理、凍結、一次乾燥、および二次乾燥がある。前処理は、凍結前に製品を処理する任意の方法を含む。これには、製品の濃縮、調合物の改変(すなわち、安定性および/または処理しやすさを向上させることを目的とした成分の追加)、高蒸気圧溶媒の低減、または表面積の増大が含まれ得る。前処理の方法には、凍結濃縮、液相濃縮、および、製品の外見を維持することまたは反応産物を凍結保護することを特に目的とした調合などがあり、これらは例えば米国特許第6,199,297号に説明されている。標準的な凍結乾燥条件は、例えば米国特許第No 5,031,336号および「Freeze Drying of Pharmaceuticals」(DeLuca, Patrick P., J. Vac. Sci. Technol., Vol. 14, No 1, Jan./Feb. 1977)、ならびに「The Lyophilization of Pharmaceuticals: A Literature Review」(Williams, N. A., and G. P. Polli, Journal of Parenteral Science and Technology, Vol. 38, No 2, March/April 1984)に説明されている。
【0091】
特定の好ましい態様において、凍結乾燥サイクルの一部は、塊の崩壊を誘導して残留湿分を含む稠密なケーキを形成するため、治療用薬剤調合物のガラス転移温度(Tg)より高い温度で実施される。これに対し、典型的な従来技術の方法では、崩壊を防いで粒子を完全に乾燥させる目的で、ガラス転移温度より低い温度で薬剤の一次凍結乾燥を行う。この好ましい方法で形成される稠密なケーキに含まれる残留湿分は、崩壊したケーキを薬学的に許容される半水和性(または低水和性)担体の溶液中に入れることによって除去する。この担体は、次に除去するか、または治療用調合物を注射するための流動性担体として使用する。
【0092】
治療用薬剤が生体活性薬剤(例えば1つまたは複数のタンパク質、ペプチド、ポリペプチドなど)を含む特定の好ましい態様においては、乾燥させる調合物に、安定化用多価アルコールを含む担体化合物が含まれる。そのような調合物および材料は、例えば、いずれも参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,290,991 号および同第6,331,310号に説明されている。
【0093】
例えば前述の様式により超濃縮された治療用薬剤は、次に注射用に流動化され、好ましくは投与を容易にするため特別な流動学的特性を有する担体中で流動化される。超濃縮固体は、好ましくは、安定性を向上させかつ投与量の完全な注射を補助するため、非水溶性または半水溶性の担体で包む。好ましい態様において、「注射用に流動化された(fluidized for injection)」という用語は、注射用投与量の固体含有量が約1〜約99重量%であり、より好ましくは約50〜約85重量%であることを意味する。
【0094】
注射体積が0.3〜1.2 ml(300〜1200マイクロリットル)である標準的な皮下注射に対して、本発明での使用が意図される注射体積は約0.1〜約10マイクロリットルである。これは、細い針を用いた浅部への小体積注射を可能にするための超濃縮技術を用いることにより実現される。好ましい態様において針は27〜30ゲージであり、内径が約0.33 mmである。注射は、好ましくは、皮膚内の約300〜約500マイクロメートルの深さで行われる。
【0095】
薬学的に許容される担体は、(i)濃縮された治療用薬剤を過剰な湿分から遮蔽することによりこれを保護するよう機能する。(ii)適度な注射力での送達を可能にしかつ針の詰まりを防ぐため、薬剤塊および注射チャンバを湿潤することによりその中で乾燥粒子が浮遊できるような媒質を提供することによって注射容易性を与える。ならびに(iii)好ましくは、投与中の調合物成分の分離を防ぐことにより、種々の投与量を扱える能力を提供する。好ましくは、得られる調合物は揺変特性を有する。
【0096】
好ましい態様において、薬学的に許容される担体は乾燥粒子調合物に対して非溶媒であり、かつ好ましくは非水溶性または半水溶性である。そのような担体は、濃縮形態の治療用薬剤(例えば凍結乾燥タンパク質)を環境条件下で保管した場合の貯蔵寿命を大幅に延長させる。このことは、部分的には、そのような担体が酸素および水を退けることにより実現される。薬学的に許容される好適な担体としては、例えば安息香酸アルキル、安息香酸アリル、安息香酸アラルキル、トリアセチン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などがある。治療用薬剤が疎水性である態様においては、薬学的に許容される担体は水性の性質を有していてもよい。
【0097】
治療用薬剤が1つまたは複数のタンパク質を含む1つの好ましい態様においては、タンパク質および薬学的に許容されるごく少量の賦形剤が凍結乾燥され、これにより、(単位投与量あたりの)体積が小さい非晶質(無構造)の固体塊が形成される。これらの調合物では、タンパク質の安定化に必要な炭水化物の量、緩衝能、および非特異的結合剤が最小限になる。これとは対照的に、典型的な凍結乾燥溶液は、タンパク質に加えて、炭水化物、緩衝剤、溶液安定剤、増量剤、溶解剤、および非特異的結合剤を含む。粒子調合物、処理の調節、および流動性に必要な増量剤は、本発明の増量剤では必要でない。同様に、溶液安定剤も必要でない。増量剤および溶液安定剤を不要にしかつタンパク質に好適な注射用媒質の調製に必要なその他の成分の量を低減することによって、タンパク質の注射に現在用いられている体積と比較して、想定される注射体積をはるかに小さくすることが可能である。治療用薬剤がタンパク質である特定の態様において、純粋なタンパク質は、安定であれば単独で使用してもよく、またはごく少量(例えば約0〜3重量%)の安定剤および緩衝剤と併用してもよい。乾燥時のタンパク質の濃縮度が高いほど(例えばタンパク質の固体が約25〜約60%)、炭水化物の必要量が少なくなる。
【0098】
特定の好ましい態様においては、液体に構造を付与するため、ポリマー素子を非水溶性または半水溶性の担体に組み込む。そのようなポリマー(例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリ無水物、ポリオルトエステル、およびこれらの組合せ)を添加することにより、本発明の注射用調合物に2つの独特の流動学的特性がもたらされる。第一に、調合物が注射装置から注射される際に生じるずれ応力に関して、調合物の塊が針から流出し始めると、担体の粘稠度により、全注射投与量を針から押し出すために必要な注射力が減少する。第二に、ポリマーを注射することにより、薬剤の流動が促されることに加えて、固体の薬剤が担体中で静止することが防止される。これらの特性(ずり減粘性の液体および静止時ずれ応力)が組み合わさることにより、投与量の比例性が得られる。
【0099】
注射装置
表皮および真皮への投与では、皮下注射を防ぐためおよび皮膚に対する針の向きを高い確実性で固定するため、針の穿刺深度を制限する必要がある。表皮および真皮への注射時に感じられる疼痛は、痛覚受容器に対する外傷、薬剤による組織の拡張、および疼痛の予期に起因する筋肉の緊張の組合せによって生じる。表皮または真皮への標準的な注射では、約10〜15度の角度で皮膚に針を刺す。この角度で針を刺入する場合は、針が約5 mm〜約6 mmにわたって皮膚内に挿入され、このため表皮層および真皮層に分布している痛覚受容器が著しく影響を受ける。特定の好ましい態様において、本発明は、壁厚の薄い特別設計の針を利用して表皮層または真皮層に薬剤を送達する。
【0100】
標準的な注射は、患者の皮下または筋肉内の領域に対して行われる。こうした深い部位が利用されるのは、浅い真皮の部位と比較して組織が伸展しやすく、多くの治療用注射剤で必要とされる0.1〜1.0 mlの注射体積を収容できるからである。大きな体積の粘性物質の注射は、小さな体積の希薄物質の注射と比較してより強い疼痛を引き起こす傾向がある。しかし、粘性の薬物は管腔の大きい針を必要とするため、これまで表皮または真皮への投与は行われていない。そのような針は表皮または真皮への投与には使用できない。さらに、液体調合物は組織の傷害を防ぐため低速度で表皮または真皮に注射する必要があるうえ、体積が0.5 mlを超える場合は表皮または真皮への投与ができない。
【0101】
角質層(皮膚の最上層)は比較的薄く、5〜15マイクロメートルしかない。表皮層または真皮層は皮下の空間(典型的には脂肪に富む領域である)と異なり空間が十分になくかつ自由に伸展しないため、本発明では、壁厚の薄い特別設計の針を利用して表皮層または真皮層に薬剤を送達する。したがって、使用する注射体積は最小限である。
【0102】
現在のところ、表皮または真皮への注射に用いられる典型的な方法は実施が困難である。注射部位の皮膚を伸展する必要がある。シリンジとベベルを上向きにした針とを皮膚に対してほぼ平らに配置する。針を皮膚面に対して約10〜15度の角度にして皮膚内に約1/8インチ進め、注射物質を含む水泡または膨疹を形成する。一般的にこの方法は訓練を受けた看護師または医師の技術を必要とし、したがって自己投与が排除される。約3.0 mmを超えて皮膚を穿刺する針は、真皮層を通過して皮下層に至る可能性がある。したがって、針の長さは3/8インチを超えてはならない。逆に、針の穿刺深度が浅すぎて注射部位から物質が逆流し、一般的に「注射漏れ(wet injection)」と呼ばれる状態になることもある。表皮または真皮への注射では、注射部位の皮膚を伸展する必要がある。
【0103】
好ましい態様において、本発明で使用する注射装置は、前述の超濃縮単位投与量を表皮または真皮に注射するのに適する。好ましい態様において、本発明の装置には、例えばスラリーまたはペーストの形態である治療用薬剤の注射可能投与量があらかじめ充填される。本発明の注射装置は、注射されるべき小体積の単位投与量を正確に測定するのに特に適している。
【0104】
好ましい態様において、注射針は約27〜約30ゲージである。このような態様においては、治療用薬剤投与時の痛覚を防ぐため、針の太さを最小限とする。しかし他の態様においては、よりゲージ数の大きい針も本発明の調合物および方法とともに使用できるよう、低レベルの疼痛の回避が必須でないことも本発明の範囲内として意図される。
【0105】
高度に濃縮されたスラリーまたはペーストの調合物は、標準的なシリンジの中では良好な流動特性を示さないのが一般的であり、したがって、新規の針/シリンジの設計が必要である。
【0106】
好ましい態様において、治療用薬剤のスラリーまたはペーストを含む単位投与量の注射用調合物は注射装置の針に直接装填され、かつ、単位投与量を患者の表皮または真皮に注射する際に単位投与量の実質的に全量が針から排出される。これを実現するため、好ましくは注射装置にプランジャが組み込まれ、このプランジャは、装填された治療用調合物の全量が針の管腔内に装填され、かつ投与時に容積式の設計を用いて患者の体内へと押し出されるように機能する。
【0107】
プランジャは、例えば、針の管腔内にフィットするアプリケーションロッドであって、装填された治療用調合物の実質的に全量(例えばほぼ100%または100%)が針から押し出され注射部位(例えば表皮または真皮)に入るように、作動時に静止時位置から針の端まで移動する(例えば、移動の力は患者または注射の実施者によって印加される)アプリケーションロッドであってもよい。アプリケーションロッド自体は、金属またはプラスチックなど、当業者に周知の任意の好適な材料で作製してよい。プランジャは、例えば、針の内径にフィットするワイヤ片であってもよい。プランジャ(例えばワイヤ)の長さは、治療用調合物が充填されていない状態で掃引されるよう所望される針管腔の長さと等しくてもよい。したがって例えば、注射装置の作動時、プランジャは、針先端部から患者の表皮層または真皮層へと押し出されるべき半固体の治療用調合物の長さと等しい距離だけ針管腔の中を下向きに移動する。特定の好ましい態様においては、プランジャ先端部が針管腔の内壁に密着して掃引できかつ針管腔の直径がその長さ方向に沿って変化する態様においては変形して内壁の表面に一致でき、これにより使用時にプランジャが下方向に移動して半固体治療用調合物を針から押し出す際に調合物が確実に排出されるよう、プランジャ先端部は変形可能ゲル(例えばSantoprene(登録商標)などの熱可塑性エラストマー)である。
【0108】
本発明の別の態様において、プランジャは変形可能ゲルである。変形可能ゲルは注射装置の作動時に変形しかつ針の先端部へと向かって下向きに押され、これにより、単位投与量の治療用調合物のスラリーまたはペーストを移動させる。本発明に有用な変形可能ゲルを形成するための好適な材料は当業者に周知である。例としては、治療用薬剤の担体に関して本明細書で既に言及したポリマー材料で形成されたゲルがある。具体例としては、プランジャとして機能するのに十分な剛性を有する熱可塑性エラストマー(例えば好適な等級のSantoprene(登録商標)など)、ポリアクリルアミド、またはアガロースゲル;および、生体適合性が高くかつ例えばヒト用長期体内埋植物などに使用されている、必要な剛性を有する弾性シリコーンゲルなどがある。
【0109】
特定の好ましい態様において、注射装置の針部分は長さ約6〜約8 cmであり、これにより、投与量の半固体治療用調合物およびプランジャを収容するのに十分な内部体積を管腔に与える。
【0110】
別の好ましい態様においては、皮膚に針を刺す際に生じうる孔を開ける感覚をなくすため、特別な針設計を本発明の装置とともに使用する。そのような態様において、針の最先端部は、皮膚を穿刺するためのピークが形成されるよう、閉鎖端の向きに構成される。注射装置が作動すると、投与のため装填された治療用調合物の力によって針の先端部が膨大し、(角質層が穿刺されると)経路が形成され、調合物はこの経路を通って針の先端部から流出する。針の先端部は、治療用調合物の装置からの排出を可能にするよう作動中に外方向にずれることができる平らな配向(例えば、ベベル端、閉鎖端、またはシール端を有するような配向)を実現するため、当業者に周知の任意の様式で作製してよい。例えば特定の好ましい態様において、針の最先端部は、皮膚を穿刺するためのピークが形成されるよう、閉鎖端の向きにクリンプ加工される。角質層が穿刺されると、針の中を通過する治療用調合物の力により針のクリンプ部が開口し、これにより治療用調合物が針の先端部から流出することが可能となる。
【0111】
特定の好ましい態様においては、皮膚に複数の穿刺が行われ、これにより個別の注射体積を小さく保ったまま薬剤がより大量に同時投与されるよう、注射装置に複数の針システムが組み込まれていてもよい。そのような装置は、投与すべき量の治療用薬剤を本発明で使用される単一の針に容易に組み込めない場合、またはワクチン接種などのように抗原提示細胞とより広範に接触することが保証されている場合に利用してもよい。
【0112】
本発明のさらに別の態様においては、より大きな体積の治療用調合物を保持するため、(針の先端部に対して)針の上部が滑らかに拡張される。この様式により、針の皮膚穿刺部のゲージ数を小さく保ったまま単一の針を使用してより多量の治療用薬剤を投与することが可能となり、したがって、針の直径が小さいことによる疼痛軽減の恩典が保たれる。そのような態様においては、プランジャの先端部が変形でき、(尖った)端に向かって先細りになる針管腔の内側肩部を通過できるよう、変形可能ゲルまたはゴム(例えばSantoprene(登録商標))で形成された先端部をプランジャが含むことが好ましい。
【0113】
本発明のさらに別の態様において、針は、半固体治療用調合物を収容するための空間をより多く作るため、スパイラル形状であってもよい。
【0114】
別の好ましい態様において、本発明の装置は皮膚をきつく保持する安定装置(例えばディスクまたはボール)を含み、注射装置は皮膚に対して配置されかつ作動される。別の好ましい態様において、注射装置は、針を皮膚へと押し出すため注射装置の作動時に解放されるバイアス装置(例えばばね)、および注射後に空の針を引き戻すために作動する引き戻しばねを含む。使用において、ユーザーは好ましくは装置を皮膚に対して配置し、これにより安全装置(キーなど)が自動的に押し下げられ、これによりアクチベータ(例えば作動ボタン)を動作可能にする。ユーザーは、安定ディスクを皮膚上に平らに配置した状態で、作動ボタンを押して機構を作動させる。安定ディスクは、例えばSantoprene(登録商標)など、任意の好適な材料で作製してよい。針がばねにより皮膚内へと押し出され、プランジャが押されて針の中を通過し、これにより、治療用調合物が押されて針の中を通過する。治療用調合物が押されて針の中を通過すると、針先端部の閉鎖端配向部が膨張し、これにより治療用調合物が針先端部から流出することが可能となる。プランジャが針の中を移動し治療用調合物を針先端部から押し出すことによって投与量の投与が終わると、引き戻し装置(例えばばね)が作動して空の針を装置内へと引き戻す。
【0115】
特定の好ましい態様において、バイアス装置はばねまたはその他の圧力源(例えばガス供給源、ピストンなど)を含む。引き戻し装置はばねまたはバイアス装置と同種の圧力源を利用したものであってもよい。
【0116】
特定の好ましい態様において、注射装置は、針の中のプランジャの移動距離を変更するために調節できる投与量コントローラをさらに含み、これにより針先端部を押されて通過する治療用調合物の量を制御し、ひいては患者への投与量を変化させる。
【0117】
別の好ましい態様において、針は、針自体の管腔内により多量の投与量を含めるため、同じゲージ数の標準的な針と比較して長さが増大される。
【0118】
別の好ましい態様において、注射前、注射中、または注射後に患者が針を見ることが一切ないように針を隠すため、針は外部ケーシングの中に収容される。
【0119】
さらに別の態様において、注射装置は複数回の使用が可能である。そのような態様においては、例えば、単位投与量の治療用薬剤を充填した複数の針がハウジング内に存在する。装置の作動および単位投与量の送達後、使用済みの針はハウジング内に引き戻される。その後、次の(未使用の)針が、ハウジングから伸びる位置へと移動し、かつ送達装置の次の作動時にその針が有する単位投与量の治療用調合物を送達する。
【0120】
次に図面を参照する。図1は本発明の注射装置の断面図である。この注射装置の図には、駆動ばね12、薬剤チューブ(針)15、引き戻しばね13、およびプランジャ14が内部に配置されたシリンジ10が示されている。治療用薬剤を含む超濃縮流動化固体は薬剤チューブの管腔内に装填される。針刺入機構(図には示していない)を作動させると、駆動ばね12が下方向に移動し、これにより投与量分の薬剤18に対してプランジャ14が押し付けられる。投与量分の薬剤が薬剤針15のクリンプ先端部16を下向きに通過すると、針のクリンプが開口され、投与量分の薬剤が針から排出される。これが完了すると、作動中に下方向に偏っていた引き戻しばね13が上方向へと解放されて、針を引き戻す。
【0121】
図2は図1の注射装置の外部側面図である。図2において、ケーシング20は投与量スケール21、解放(作動)ボタン22、および解放パッド23を含む。針自体は注射装置18のケーシング内に隠される。この様式により、患者は針を見ることが一切なくなり、注射が差し迫っていることを見ることによる精神身体的な疼痛作用が軽減される。使用においては、安定ディスク23の解放パッドが患者の皮膚に対して平らに配置される。その後、ユーザーが解放ボタン22を押してばね機構を作動させ、これにより、針15が皮膚内へと押し出され、プランジャ14が針の管腔内を押されて通過し、単位投与量の治療用薬剤が患者の皮膚の表皮層または真皮層内へと注射される。完了後、引き戻しばね13が作動して空の針を引き戻す。図2に示されている投与量スケール21により、ユーザーは例えば医師の指示に従って投与量を調節できる。例えば、投与量スケールは番号1、2、3、および4にそれぞれ合わせることができるコントロールを有していてもよく、これにより、駆動ばね12がプランジャ14を下方向へと押す距離が変更される。プランジャ14の移動距離は針から排出される治療用調合物の量に対応するため、これにより、排出される治療用調合物の量が変更される。
【0122】
図3は本発明の注射装置のばね機構の配置を示した断面図である。図3Aは注射装置の静止状態、図3Bは作動状態、図3Cは作動後を示している。同装置はハウジング用のケーシング30、駆動ばね31、プランジャ32、投与量分の治療用薬剤33、および引き戻しばね34を含む。静止位置にある場合(図3A)、投与量分の治療用薬剤33は針35の管腔内に位置する。針は標準的な表皮用または真皮用の針と比較して長く、太さは27ゲージかまたはそれより細い。投与量分の治療用薬剤は針の長さの5 cmの中に収容される。投与量分の治療用薬剤の上方にはプランジャ32が存在する。作動時には(図3B)、上部の駆動ばね31が下方向に伸び、これによって、針が皮膚へ進入、貫通し(図には示していない)かつプランジャ32が投与量分の治療用薬剤を押して針のクリンプ端を通過させ、これによりクリンプ端が膨張し治療用薬剤が表皮または真皮のフレア部へと排出される。注射後の段階(図3C)では、引き戻しばね34が針35を注射前の位置まで戻し、投与量分の治療用薬剤33は体内に残る。
【0123】
図4A〜4Cは本発明の注射装置の外部ハウジングおよび安全スリーブを示した図である。まず図4Aにおいて、注射装置40は安全スリーブ41に覆われる。安全スリーブは使用前に取り外される。好ましくは、安全スリーブ41は偶発的な作動の発生を最小限にし、安全スリーブを除去することにより装置は「作動状態」になることができる。次に、図4Bに示すように、投与量設定43が選択され、これにより作動時に駆動ばねが注射装置から突出する距離が決定され、ひいては送達される調合物の量が決定される。図4Cに示す態様において、投与量設定43は、中央の図に示すように、所望の深度に対応する数字と正しく揃うまで(この場合は深度3)装置の上部40aを装置の下部40bに対して反対方向に回転させることによって調節する。装置の底部(図には示していない)を患者の皮膚の所望の位置に配置し、作動ボタン42を押すと、駆動ばね(図には示していない)が下向きに作動する。作動後、引き戻し装置(図には示していない)が針を注射装置40の中へと引き戻す。任意で選択してよい態様においては、インジケータ44の色が変化して装置が使用済みであることを示す。例えばインジケータ44は緑色(作動前)から赤色(作動後)へと色が変化してもよく、これにより投与量分の薬剤が送達されたことを示してもよい。図4の装置において、装置は、1回投与量分の治療用薬剤のみを含む。作動後、使用済みの注射装置はロックされ、再使用できなくなる。例えば図4の装置の1つの態様において、作動ボタンは、針管腔内の薬剤を移動させ排出するのに十分でありかつ皮内注射中に真皮層からの逆圧(例えば76 psi)に打ち勝つのに十分な力をプランジャに印加する。作動ボタンを押すと約3 lbs(約1.4 kg)の圧力に等しい力が得られる。この力によりばねが解放されてプランジャが針管腔内へと押され、これにより調合物が皮内へと注射される。注射装置が所定の位置に保持される時間は合計2〜5秒またはそれ以下である。カラーインジケータが緑色から赤色に変化して、投与量分の薬剤が送達されたことを示す。使用済みの注射装置はロックされ、再使用できなくなる。特定の好ましい態様において、注射装置は自動注射装置であり、シリンジは安全シリンジである。
【0124】
図5Aは本発明の注射装置について皮膚と装置との相互作用を示した側面図である。図5Aにおいて同装置は「静止」位置にある。装置は上部ケーシング50aおよび下部50bを有し、これらは、深度設定52で示された注射投与量を調節するため反対方向に回転させることができる。装置は作動ボタン51および安定ディスク53を有する。図5に示す態様において、安定ディスクは軟性ゴム(例えばSantoprene(登録商標))で作られ、注射装置のケーシングの延長部を形成する。図5Bに示すように、注射装置を患者の皮膚に配置すると、注射部位の皮膚をきつく保持することによりつくられる外向きの方向に安定装置の先端部53aが変形する。図5Cは図5bの装置の断面図である。図5Cに示すように、作動前には駆動ばね54は引き戻された位置にある。プランジャ55は、針56の中に位置し、かつ、装置作動時に投与量分の治療用薬剤57を移動させるように配置される。引き戻しばね58は装置の反対側の先端部に位置する。薬剤は針のうち5 cmの部分に収容される。特定の好ましい態様においては、安定ディスクに安全連結装置が組み込まれる。
【0125】
図6A〜6Bは本発明の注射装置の別の態様を示した図である。この態様において、治療用調合物の送達は、図1〜4に示したばね作動機構ではなく圧力源(この場合は圧縮ガス)を用いて実現される。図6Aは本発明の注射装置の断面図である。同図には、ハウジング60、作動ボタン61、バルブ62、圧縮ガスシリンダ63、トロイダル針シリンジ64、および針先端部65が示されている。作動ボタン61を押すと圧縮ガスがガスシリンダ63から弁62を通ってトロイダル針シリンジ64へと送られ、これによりトロイダル針64の先端部65が解放されて下方に伸びハウジング60を通って患者の皮膚の所望の深さまで入り、その結果、半固体治療用調合物(図には示していない)が針64の先端部65を通って患者の皮膚の真皮層へと移動する。図6Bは図6Aの装置の側面図である。図6Bに示されているように、装置は、皮膚に対して配置され、これにより注射前に皮膚を伸展する球面66を有する。作動ボタンが圧縮ガスを解放し、この圧縮ガスにより、薬剤を装填したトロイダル針が特定の距離だけ皮内に押し出される。
【0126】
図7A-7Cに本発明の注射装置の別の態様である扁平型ガス式自動注射器を示す。図7Aはこの注射装置の側断面図である。同装置は、外部ケーシング70、弁72、圧縮ガスシリンダ73、トロイダル針74、および針先端部75を有する。図7Bはハウジング70の内部を示した同装置の上断面図であり、圧縮ガスシリンダ73、弁72、およびトロイダルシリンジ74の配置を示している。図7Cは図7の態様の上外面図であり、ケーシング70、インジケータ77、および作動ボタン79を示している。
【0127】
図8A-8Fに本発明の態様による別の注射装置の側面図を示す。図8Aは、本体2;プランジャ3;本体2の近位端に取り付けられた針ハブ4;および針5を有する注射装置(シリンジ)1の外部側面図である。針5は、針ハブ4に固定式に取り付けられる針先端部6;針ケーシング7;針シャフト8;およびベベル9を有する。針先端部6は針ハブ4の内側に取り付けられる。針ケーシング7は針先端部6に取り付けられ、かつピストン10の機構(図には示していない)を囲む。針シャフト8は、針先端部6より遠位側の端に、開口部をもつベベル9を含む。注射装置1の作動時には、ベベル9が開口することにより、針管腔11の中に収容された薬剤の流出が可能となる。
【0128】
図8Bは図8Aの投与シリンジの側断面図である。具体的には、図8Bには、ピストン10、ならびにピストン10に対するプランジャ3および針管腔8の関係が示されている。ピストン10は針管腔8の中に収容され、その長さはプランジャ3の近位端から針先端部6および針ケーシング7を通って針管腔8の針管腔(薬剤コンパートメント)11の部分までにわたる。
【0129】
図8Cは図8Bの針5の拡大断面図である。図8Bはさらに、ピストン10と針シャフト8の針管腔(薬剤コンパートメント)11との関係を示している。図8Cはさらに、ベベル9、針ケーシング7、および針先端部6の拡大図も示している。
【0130】
図8Dは、図8A-8Cの注射装置(シリンジ)1と本発明の投与量分の調合物を吸い上げるための充填装置(シリンジ)12との関係を示した側面図である。具体的には、図8Dは、本体13、プランジャ14、ストッパ14a、薬剤コンパートメント15、および針ハブ16を有する充填用シリンジ12を示している。同図において、注射装置1のベベル9および針シャフト8の一部は、充填用シリンジ12の針ハブ16に挿入されている。
【0131】
図8Eは図8Dの拡大断面図であり、充填装置12の針ハブ16と注射装置1の針5との関係を示している。同図は充填装置12のストッパ14a、薬剤コンパートメント15、および針ハブ16を示している。同図において、注射装置1の針5のベベル9および管腔11の一部は充填用シリンジ12の針ハブ16の端にある開口部に挿入されており、これにより、本発明の投与量分の調合物を注射装置1に装填することが可能となる。
【0132】
図8Fは針5の拡大断面図である。図8Fは、針シャフト8、ピストン10、および針シャフト8とピストン10との間に配置された変形可能ゲル17の側面図である。
【0133】
図面に示した上記の具体的な態様は本発明の可能な態様を例示したものであり、添付の特許請求の範囲により請求される本発明をいかなる様式その他においても制限する意図はない。当業者には、本発明の概念を利用した注射装置についてこの他多数の構成が可能であること、およびそのような構成は添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされることが理解されるものと思われる。
【0134】
本発明の注射装置は、好ましくは、1マイクロリットル(μl)単位の溶液のスラリーまたはペーストを皮膚内に送達する。1マイクロリットルは1立方センチメートル(cc)の1000分の1である。薬剤スラリーおよび安定化溶液の密度が1.0 g/ccである場合、本発明により1.0 mgの調合物が送達される。注射体積を増加させるかまたは調合物スラリー中の薬剤濃度を高くすることにより、より多くの投与量を投与することも可能である。
【0135】
治療用薬剤投与時の痛覚を防ぐために必要な針の太さは、個々の患者、調合物、および注射体積によって異なる。一般的に、(米国基準で)約18ゲージまたはそれ以上、より好ましくは20ゲージまたはそれ以上の針であれば十分であると考えられている。疼痛を排除する最も実際的な用途では27〜30ゲージの針が必要となる。
【0136】
より大きな体積を注射する場合には(例えばモノクローナル抗体および徐放の用途など)、薬剤ペーストを滑らかかつ障害なく流出させるため針およびシリンジを単一の要素に統合した、より洗練されたアプリケータ設計を用いる。これらのアプリケータは、特定の流動学的特性を有する調合物に適している。薬剤調合物のスラリーを患者に完全に送達するため、細く長い設計の薬剤チャンバが好ましい。好ましくは、調合物の実質的に全体積(例えばほぼ100%または100%)が針から押し出され患者に注射される。調合物の100%をこの細い針から送達するため、先端部が変形可能ゲルまたはゴムであるピストンを使用する。
【0137】
本発明の注射装置に使用される針のベベル端の長さは約0.1 mm〜約1 mmであり、好ましくは約0.2〜約0.5 mmである。針の全長は好ましくは約1 mm〜約1 cmであり、最も好ましくは約2 mm〜約5 mmである。
【0138】
皮膚内へと送達される溶液、スラリー、またはペーストの量は約1マイクロリットルであり、これは1立方センチメートルの1/1000に等しい。薬剤スラリーの密度が1.0 g/ccである場合、この注射により1.0 mgの調合物が送達される。注射体積を増加させるかまたは調合物スラリー中の薬剤濃度を高くすることによって、本発明によりさらに多くの投与量を皮内投与することも可能である。
【0139】
本発明の好ましい態様において、安定ディスクは一般的に針を包み、針が真皮を超えて皮下領域へと刺入されることを防ぐ。好ましくは、針の前部端と皮膚に接触した安定ディスクとの距離は、浅い無疼痛の注射を可能にするため、厳密に制御される。作動ボタンを押すと、動物の典型的な真皮層を越えて穿刺することがないよう、針が再度厳密に制御される。皮膚への針の穿刺深度は、皮下層への進入を防ぐため、好ましくは約100μm〜約500μm、最も好ましくは約500μm±0.5μmに制限される。
【実施例】
【0140】
調合物の実施例
実施例1
組換えヒト成長ホルモン(hGH)を5 mMトリス緩衝液(pH = 7.6)に溶解した5 mg/ml溶液を凍結乾燥することにより、hGHのドライパウダー調合物を調製した。hGH/トリス溶液100 mgにN-メチル-ピロリドン(NMP)またはNMP/安息香酸ベンジル混合液(BB)を230 mg添加して29%(w/w)hGH調合物を調製し、これにより固体分約30%(w/w)のペースト調合物を得た。この調合物の溶解度を調べたところ、NMP/BB混合液のほうが可溶性hGHの回収率が高かった(50%対12%)。次にこの調合物を、図8(d)に示した装置など特別に設計された充填装置を用いて、25ゲージ針の管腔に充填した。注射装置に含める固体調合物の量として、組換えヒト成長ホルモンを含む約10 mgの調合物を含めた。次に、この充填したシステムを用いて固体調合物をラットの皮内に投与した。皮膚に顕著な刺激を生じることなく、浅部に全量を送達した。
【0141】
実施例2
別の調合物として、本明細書で説明した送達装置でドライ送達を行うためヒトグルカゴンを調合することも可能である。ヒトグルカゴンの調合は2つの段階で行われる。第一に、凍結乾燥パウダーを生成する。次に、生体適合性の担体を生成する。現在のグルカゴンの注射用調合物は、pH 3.0未満でラクトース49 mg中にグルカゴン1 mgが存在する調合物である。本発明で想定される調合物は、凍結乾燥処理中および保管中にグルカゴンを安定させるための安定剤を可能な限り少なくすることにより、ごくわずかな体積で有効量のグルカゴンを提供する。このことは、可能な限り高い濃度でグルカゴンを凍結乾燥することにより実現される。そのような調合物の1例として、質量1 mg、全体積3μlのグルカゴンが考えられる。
【0142】
すべての調合物はpH約3.0またはそれ以下の水性調合物として調製される。pHの調節にはクエン酸を使用するが、代替物も当業者には周知であると思われる。安定剤としては、還元糖であるラクトースに対して好ましいことからスクロースを添加する。グルカゴン/安定剤の比は、例えばグルカゴン:スクロースを1:0.5または1:1とする。グルカゴン:スクロース:ツィーンを1:1:0.01の比で用いてもよい。液体担体は適切な配合の生体適合性非溶媒であり、例えば安息香酸ベンジル、N-メチル-ピロリドン、またはグリセリンから選択される。
【0143】
以上は本発明の例示的な説明であり、図面に示した具体的な態様および使用された用語は、本発明を限定するものではなく説明する性質のものであると意図されていることが理解されるべきである。さらに、前期各段落に説明した成分/治療用薬剤の全ての組合せは添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされることも理解されるべきである。さらに、本発明の注射装置の全ての具体的態様は添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされることも理解されるべきである。以上の開示に照らして、本発明に対して多数の変更および改変が可能である。したがって、明白な変更は添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされることが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行うため動物の表皮層、真皮層、または皮下層に注射用調合物を投与するための方法であって、約0.1〜約10マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物であって固体含有量が約20〜約85重量%でありかつ有効量の治療用薬剤を含む調合物を動物の皮膚の表皮層または真皮層に注射する段階を含む方法。
【請求項2】
パウダーの形態である治療用薬剤が液体で囲まれ、これによりスラリーまたはペーストが形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
平均粒径が10ナノメートル(0.01マイクロメートル)〜約100マイクロメートルとなりかつ約500マイクロメートルより大きい粒子が存在しないよう粒径を小さくすることを目的として治療用薬剤を処理する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
平均粒径が約0.1マイクロメートル〜約25マイクロメートルとなりかつ約50マイクロメートルより大きい粒子が存在しないように治療用薬剤の平均粒径を小さくする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
治療用薬剤の平均粒径が約1マイクロメートル〜約10マイクロメートルである、請求項3記載の方法。
【請求項6】
治療用薬剤が、薬学的に許容される非水溶性または半水溶性の担体中に組み込まれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
注射装置から注射される際に調合物が揺変特性を示すよう、担体中にポリマーを組み込む段階をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
皮内注射に適した針と、装置の作動時に針を動物の皮膚に穿刺し、かつ調合物を針から押し出すバイアス装置とを備える注射装置の針に半固体調合物を組み込む段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
プランジャを装置に組み込む段階をさらに含み、バイアス装置がこの装置の作動時にプランジャを調合物に押し付けて調合物の実質的に全部を針から排出させるバイアス装置である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
注射後に空の針を引き戻すために作動する引き戻し装置を注射装置に組み込む段階をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
注射装置を注射対象動物の皮膚に配置した場合、注射装置の作動時に針が動物の皮膚を穿刺することにより生じる疼痛を低減する目的で皮膚ポジショナが皮膚を伸展させ、かつ皮膚ポジショナが浅部への注射を可能にするように、皮膚ポジショナを注射装置上に組み込む段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
使用中に注射装置を作動させた場合にのみ針がハウジングから伸びるように、注射装置のハウジング内に針を組み込む段階をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
皮膚ポジショナを軟性ゴムで作製する段階、および皮膚ポジショナを注射装置のハウジングの端に取り付ける段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
プランジャを変形可能ゲルとして作製する段階、および、作動時に調合物がゲルによって押されて針の先端部を通過するように該ゲルを針の上部に装填する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
使用前に調合物を収容している場合針が実質的に平らな配向を有するよう、かつ、調合物が押し出され通過する際に先端部が膨張し、これにより治療用調合物が針先端部から流出できるよう、膨張可能な先端部を針に設ける段階をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項16】
治療用薬剤を噴霧乾燥する段階、および次に薬剤を薬学的に許容される担体に組み込みこれによりスラリーまたはペーストを形成する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
治療用薬剤を凍結乾燥する段階、および次に薬剤を薬学的に許容される担体に組み込み、スラリーまたはペーストを形成する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
塊の崩壊を誘導して稠密なケーキを形成するため、治療用薬剤調合物のガラス転移温度(Tg)より高い温度で凍結乾燥サイクルの少なくとも一部を実施する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
薬学的に許容される担体中に均一に含まれた有効量の治療用薬剤を含む約0.1〜約1000マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物であって固体含有量が約20〜約85重量%である調合物を含む、皮内投与用の注射用調合物。
【請求項20】
治療用薬剤の平均粒径が10ナノメートル(0.01マイクロメートル)〜約100マイクロメートルでありかつ約500マイクロメートルより大きい粒子が存在しない、請求項19記載の調合物。
【請求項21】
平均粒径が約0.1マイクロメートル〜約25マイクロメートルとなりかつ約50マイクロメートルより大きい粒子が存在しないように治療用薬剤の平均粒径を小さくする、請求項19記載の調合物。
【請求項22】
治療用薬剤の平均粒径が約1〜約10マイクロメートルである、請求項19記載の調合物。
【請求項23】
調合物に揺変特性を与えるポリマーをさらに含む、請求項19記載の調合物。
【請求項24】
治療用薬剤が、薬学的に許容される揺変性の担体中に均一に組み込まれ、かつ、調合物がペーストまたはスラリーの形態である、請求項19記載の調合物。
【請求項25】
調合物の固体含有量が約50〜約80重量%である、請求項19記載の調合物。
【請求項26】
調合物を37℃の高温で保管した場合、許容されないレベルの凝集、酸化、および加水分解に関係する分解経路に対して調合物が少なくとも約2ヵ月間安定である、請求項19記載の調合物。
【請求項27】
治療用薬剤が、身体状態、体調不良、または疾患の予防、診断、緩和、処置、または治療に用いられる、請求項19記載の調合物。
【請求項28】
有効量の安定剤をさらに含む、請求項19記載の調合物。
【請求項29】
安定剤が、界面活性剤、プルロニック、多価アルコール、ゲル、両性化合物、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項28記載の調合物。
【請求項30】
担体が、トリアセチン、n-メチル-2-ピロリドン、および安息香酸ベンジルからなる群より選択される、請求項24記載の調合物。
【請求項31】
治療用薬剤が、薬学的に許容される担体への組み込みの前に凍結乾燥または噴霧乾燥される、請求項19記載の調合物。
【請求項32】
薬学的に許容される担体が非水溶性または半水溶性である、請求項31記載の調合物。
【請求項33】
薬学的に許容される担体が、安息香酸アルキル、安息香酸アリル、安息香酸アラルキル、トリアセチン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項19記載の調合物。
【請求項34】
動物の表皮または真皮内への注射による投与の際に調合物からの治療用薬剤の放出を遅くするのに有効な量の薬学的に許容されるポリマーをさらに含む、請求項19記載の調合物。
【請求項35】
動物の表皮または真皮内への注射による投与の際に調合物からの治療用薬剤の放出を制御するため、治療用薬剤がリポソームに組み込まれるかまたは多糖および/もしくはその他のポリマーと結合もしくは混合される、請求項19記載の調合物。
【請求項36】
動物の皮膚の表皮層または真皮層に治療用薬剤を注射することを目的とし、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う装置であって、
皮内注射に適した針であって、スラリーまたはペースト中に均一に含まれた単位投与量の治療用薬剤を収容する下端を有する針;および針の上端に配置されたバイアス装置;
を含み、
針およびバイアス装置がハウジング内に収容され、ハウジングがアクチベータを含み、注射装置を動物の皮膚に配置した場合にアクチベータが作動してバイアス装置を解放し、これにより針が動物の皮膚を穿刺しかつ単位投与量の実質的に全てを該針の下端に位置する先端部から押し出すような装置。
【請求項37】
針の中の単位投与量の上端に配置されたプランジャをさらに含む、請求項36記載の装置であって、装置作動時にバイアス装置がプランジャを調合物に押し付け、かつ調合物の実質的に全てを針の下側先端部から排出させるような装置。
【請求項38】
針の長さが少なくとも約5 cmであり、かつゲージ数が約27〜約30ゲージである、請求項36記載の装置。
【請求項39】
ハウジング内に入った引き戻し装置であって、注射後に空の針を引き戻すために作動する引き戻し装置をさらに含む、請求項36記載の装置。
【請求項40】
ハウジングの下端に取り付けられた皮膚ポジショナであって、注射装置の作動時に針が注射対象動物の皮膚を穿刺することにより生じる疼痛を低減するため、注射装置を動物の皮膚に配置した場合に動物の皮膚を伸展させることができる皮膚ポジショナをさらに含む、請求項36記載の装置。
【請求項41】
針が、使用中に注射装置を作動させた場合にのみハウジングの下端から伸びるするように注射装置のハウジング内に配置される、請求項36記載の装置。
【請求項42】
皮膚ポジショナが軟性ゴムで作られる、請求項40記載の装置。
【請求項43】
プランジャが変形可能ゲルであり、作動時に調合物がゲルにより押されて針の下側先端部を通過するように該ゲルが針の上部に配置される、請求項37記載の装置。
【請求項44】
針の下側先端部が、皮膚の穿刺時にピークが形成されるよう、単位投与量を含んでいる場合の使用の前は実質的に平らな配向を有する先端部であり、かつ、使用中に調合物が先端部を通って押し出される際に伸展する能力を有し、これにより針の先端部から調合物が流出することを可能にするような先端部である、請求項36記載の装置。
【請求項45】
プランジャが金属ワイヤである、請求項37記載の装置。
【請求項46】
使用中に投与量の実質的に100%を注射針から排出し得る、請求項37記載の装置。
【請求項47】
皮膚を穿刺するためのピークが形成されるよう、針の最先端部が平らな配向にクリンプ加工される、請求項36記載の装置。
【請求項48】
使用中に皮膚に複数の穿刺が行われ、これにより個別の注射体積を小さく保ったまま治療用薬剤がより大量に同時投与されるよう、複数の針システムがハウジング内に含まれる、請求項36記載の装置。
【請求項49】
最大約1.5 mlの治療用薬剤を保持するため、針の下側先端部に対して針の上部が滑らかに拡張される、請求項36記載の装置。
【請求項50】
バイアス装置が、注射装置の作動時に解放されるばねであり、かつ、引き戻し装置が、注射後に空の針を引き戻すために作動するばねである、請求項39記載の装置。
【請求項51】
ハウジング上に配置された投与量コントローラであって、針の中のプランジャの移動距離を変更するために調節できる投与量コントローラをさらに含み、これにより、使用中に針先端部を押されて通過する治療用調合物の量を制御し、ひいては患者への投与量を変化させることができる、請求項36記載の装置。
【請求項52】
バイアス装置が圧力源である、請求項36記載の装置。
【請求項53】
圧力源がガス供給源を含む、請求項52記載の装置。
【請求項54】
圧力源がピストンを含む、請求項52記載の装置。
【請求項55】
引き戻し装置が、ガス供給源とピストンとから選択される圧力源を含む、請求項39記載の装置。
【請求項56】
単位投与量が、液体担体を使用せずに調合されたドライパウダーを含み、かつ、針の内面が、粒子の流れを可能にするため潤滑剤でコーティングされる、請求項36記載の装置。
【請求項57】
無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行うため動物の表皮層、真皮層、または皮下層に注射用調合物を投与するための方法であって、以下の段階を含む方法:皮内注射に適した針を収容するハウジングと、アクチュエータと、バイアス装置とを備える注射装置の針に、有効量の治療用薬剤と薬学的に許容される担体とを含む約0.1〜約10マイクロリットルの超濃縮乾燥粒子調合物を組み込む段階;使用中に調合物の粒子が針から流出できるよう、針への調合物の組み込み前に好適な潤滑剤で針の内面をコーティングする段階;ハウジングを動物の皮膚に配置し、かつ、バイアス装置が解放され、かつ針が動物の皮膚を穿刺しかつ調合物が針から押し出されるよう、アクチュエータを作動させる段階。
【請求項58】
調合物が動物の皮膚の表皮層または真皮層に注射される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
調合物が、針の管腔内を下方へと流れることができるよう潤滑剤でコーティングされる、請求項57記載の方法。
【請求項1】
無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行うため動物の表皮層、真皮層、または皮下層に注射用調合物を投与するための方法であって、約0.1〜約10マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物であって固体含有量が約20〜約85重量%でありかつ有効量の治療用薬剤を含む調合物を動物の皮膚の表皮層または真皮層に注射する段階を含む方法。
【請求項2】
パウダーの形態である治療用薬剤が液体で囲まれ、これによりスラリーまたはペーストが形成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
平均粒径が10ナノメートル(0.01マイクロメートル)〜約100マイクロメートルとなりかつ約500マイクロメートルより大きい粒子が存在しないよう粒径を小さくすることを目的として治療用薬剤を処理する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
平均粒径が約0.1マイクロメートル〜約25マイクロメートルとなりかつ約50マイクロメートルより大きい粒子が存在しないように治療用薬剤の平均粒径を小さくする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
治療用薬剤の平均粒径が約1マイクロメートル〜約10マイクロメートルである、請求項3記載の方法。
【請求項6】
治療用薬剤が、薬学的に許容される非水溶性または半水溶性の担体中に組み込まれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
注射装置から注射される際に調合物が揺変特性を示すよう、担体中にポリマーを組み込む段階をさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
皮内注射に適した針と、装置の作動時に針を動物の皮膚に穿刺し、かつ調合物を針から押し出すバイアス装置とを備える注射装置の針に半固体調合物を組み込む段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
プランジャを装置に組み込む段階をさらに含み、バイアス装置がこの装置の作動時にプランジャを調合物に押し付けて調合物の実質的に全部を針から排出させるバイアス装置である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
注射後に空の針を引き戻すために作動する引き戻し装置を注射装置に組み込む段階をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
注射装置を注射対象動物の皮膚に配置した場合、注射装置の作動時に針が動物の皮膚を穿刺することにより生じる疼痛を低減する目的で皮膚ポジショナが皮膚を伸展させ、かつ皮膚ポジショナが浅部への注射を可能にするように、皮膚ポジショナを注射装置上に組み込む段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
使用中に注射装置を作動させた場合にのみ針がハウジングから伸びるように、注射装置のハウジング内に針を組み込む段階をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
皮膚ポジショナを軟性ゴムで作製する段階、および皮膚ポジショナを注射装置のハウジングの端に取り付ける段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
プランジャを変形可能ゲルとして作製する段階、および、作動時に調合物がゲルによって押されて針の先端部を通過するように該ゲルを針の上部に装填する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
使用前に調合物を収容している場合針が実質的に平らな配向を有するよう、かつ、調合物が押し出され通過する際に先端部が膨張し、これにより治療用調合物が針先端部から流出できるよう、膨張可能な先端部を針に設ける段階をさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項16】
治療用薬剤を噴霧乾燥する段階、および次に薬剤を薬学的に許容される担体に組み込みこれによりスラリーまたはペーストを形成する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
治療用薬剤を凍結乾燥する段階、および次に薬剤を薬学的に許容される担体に組み込み、スラリーまたはペーストを形成する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
塊の崩壊を誘導して稠密なケーキを形成するため、治療用薬剤調合物のガラス転移温度(Tg)より高い温度で凍結乾燥サイクルの少なくとも一部を実施する段階をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
薬学的に許容される担体中に均一に含まれた有効量の治療用薬剤を含む約0.1〜約1000マイクロリットルの半固体または固体の超濃縮調合物であって固体含有量が約20〜約85重量%である調合物を含む、皮内投与用の注射用調合物。
【請求項20】
治療用薬剤の平均粒径が10ナノメートル(0.01マイクロメートル)〜約100マイクロメートルでありかつ約500マイクロメートルより大きい粒子が存在しない、請求項19記載の調合物。
【請求項21】
平均粒径が約0.1マイクロメートル〜約25マイクロメートルとなりかつ約50マイクロメートルより大きい粒子が存在しないように治療用薬剤の平均粒径を小さくする、請求項19記載の調合物。
【請求項22】
治療用薬剤の平均粒径が約1〜約10マイクロメートルである、請求項19記載の調合物。
【請求項23】
調合物に揺変特性を与えるポリマーをさらに含む、請求項19記載の調合物。
【請求項24】
治療用薬剤が、薬学的に許容される揺変性の担体中に均一に組み込まれ、かつ、調合物がペーストまたはスラリーの形態である、請求項19記載の調合物。
【請求項25】
調合物の固体含有量が約50〜約80重量%である、請求項19記載の調合物。
【請求項26】
調合物を37℃の高温で保管した場合、許容されないレベルの凝集、酸化、および加水分解に関係する分解経路に対して調合物が少なくとも約2ヵ月間安定である、請求項19記載の調合物。
【請求項27】
治療用薬剤が、身体状態、体調不良、または疾患の予防、診断、緩和、処置、または治療に用いられる、請求項19記載の調合物。
【請求項28】
有効量の安定剤をさらに含む、請求項19記載の調合物。
【請求項29】
安定剤が、界面活性剤、プルロニック、多価アルコール、ゲル、両性化合物、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項28記載の調合物。
【請求項30】
担体が、トリアセチン、n-メチル-2-ピロリドン、および安息香酸ベンジルからなる群より選択される、請求項24記載の調合物。
【請求項31】
治療用薬剤が、薬学的に許容される担体への組み込みの前に凍結乾燥または噴霧乾燥される、請求項19記載の調合物。
【請求項32】
薬学的に許容される担体が非水溶性または半水溶性である、請求項31記載の調合物。
【請求項33】
薬学的に許容される担体が、安息香酸アルキル、安息香酸アリル、安息香酸アラルキル、トリアセチン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項19記載の調合物。
【請求項34】
動物の表皮または真皮内への注射による投与の際に調合物からの治療用薬剤の放出を遅くするのに有効な量の薬学的に許容されるポリマーをさらに含む、請求項19記載の調合物。
【請求項35】
動物の表皮または真皮内への注射による投与の際に調合物からの治療用薬剤の放出を制御するため、治療用薬剤がリポソームに組み込まれるかまたは多糖および/もしくはその他のポリマーと結合もしくは混合される、請求項19記載の調合物。
【請求項36】
動物の皮膚の表皮層または真皮層に治療用薬剤を注射することを目的とし、無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行う装置であって、
皮内注射に適した針であって、スラリーまたはペースト中に均一に含まれた単位投与量の治療用薬剤を収容する下端を有する針;および針の上端に配置されたバイアス装置;
を含み、
針およびバイアス装置がハウジング内に収容され、ハウジングがアクチベータを含み、注射装置を動物の皮膚に配置した場合にアクチベータが作動してバイアス装置を解放し、これにより針が動物の皮膚を穿刺しかつ単位投与量の実質的に全てを該針の下端に位置する先端部から押し出すような装置。
【請求項37】
針の中の単位投与量の上端に配置されたプランジャをさらに含む、請求項36記載の装置であって、装置作動時にバイアス装置がプランジャを調合物に押し付け、かつ調合物の実質的に全てを針の下側先端部から排出させるような装置。
【請求項38】
針の長さが少なくとも約5 cmであり、かつゲージ数が約27〜約30ゲージである、請求項36記載の装置。
【請求項39】
ハウジング内に入った引き戻し装置であって、注射後に空の針を引き戻すために作動する引き戻し装置をさらに含む、請求項36記載の装置。
【請求項40】
ハウジングの下端に取り付けられた皮膚ポジショナであって、注射装置の作動時に針が注射対象動物の皮膚を穿刺することにより生じる疼痛を低減するため、注射装置を動物の皮膚に配置した場合に動物の皮膚を伸展させることができる皮膚ポジショナをさらに含む、請求項36記載の装置。
【請求項41】
針が、使用中に注射装置を作動させた場合にのみハウジングの下端から伸びるするように注射装置のハウジング内に配置される、請求項36記載の装置。
【請求項42】
皮膚ポジショナが軟性ゴムで作られる、請求項40記載の装置。
【請求項43】
プランジャが変形可能ゲルであり、作動時に調合物がゲルにより押されて針の下側先端部を通過するように該ゲルが針の上部に配置される、請求項37記載の装置。
【請求項44】
針の下側先端部が、皮膚の穿刺時にピークが形成されるよう、単位投与量を含んでいる場合の使用の前は実質的に平らな配向を有する先端部であり、かつ、使用中に調合物が先端部を通って押し出される際に伸展する能力を有し、これにより針の先端部から調合物が流出することを可能にするような先端部である、請求項36記載の装置。
【請求項45】
プランジャが金属ワイヤである、請求項37記載の装置。
【請求項46】
使用中に投与量の実質的に100%を注射針から排出し得る、請求項37記載の装置。
【請求項47】
皮膚を穿刺するためのピークが形成されるよう、針の最先端部が平らな配向にクリンプ加工される、請求項36記載の装置。
【請求項48】
使用中に皮膚に複数の穿刺が行われ、これにより個別の注射体積を小さく保ったまま治療用薬剤がより大量に同時投与されるよう、複数の針システムがハウジング内に含まれる、請求項36記載の装置。
【請求項49】
最大約1.5 mlの治療用薬剤を保持するため、針の下側先端部に対して針の上部が滑らかに拡張される、請求項36記載の装置。
【請求項50】
バイアス装置が、注射装置の作動時に解放されるばねであり、かつ、引き戻し装置が、注射後に空の針を引き戻すために作動するばねである、請求項39記載の装置。
【請求項51】
ハウジング上に配置された投与量コントローラであって、針の中のプランジャの移動距離を変更するために調節できる投与量コントローラをさらに含み、これにより、使用中に針先端部を押されて通過する治療用調合物の量を制御し、ひいては患者への投与量を変化させることができる、請求項36記載の装置。
【請求項52】
バイアス装置が圧力源である、請求項36記載の装置。
【請求項53】
圧力源がガス供給源を含む、請求項52記載の装置。
【請求項54】
圧力源がピストンを含む、請求項52記載の装置。
【請求項55】
引き戻し装置が、ガス供給源とピストンとから選択される圧力源を含む、請求項39記載の装置。
【請求項56】
単位投与量が、液体担体を使用せずに調合されたドライパウダーを含み、かつ、針の内面が、粒子の流れを可能にするため潤滑剤でコーティングされる、請求項36記載の装置。
【請求項57】
無痛または実質的に無痛な治療用薬剤の投与を行うため動物の表皮層、真皮層、または皮下層に注射用調合物を投与するための方法であって、以下の段階を含む方法:皮内注射に適した針を収容するハウジングと、アクチュエータと、バイアス装置とを備える注射装置の針に、有効量の治療用薬剤と薬学的に許容される担体とを含む約0.1〜約10マイクロリットルの超濃縮乾燥粒子調合物を組み込む段階;使用中に調合物の粒子が針から流出できるよう、針への調合物の組み込み前に好適な潤滑剤で針の内面をコーティングする段階;ハウジングを動物の皮膚に配置し、かつ、バイアス装置が解放され、かつ針が動物の皮膚を穿刺しかつ調合物が針から押し出されるよう、アクチュエータを作動させる段階。
【請求項58】
調合物が動物の皮膚の表皮層または真皮層に注射される、請求項57記載の方法。
【請求項59】
調合物が、針の管腔内を下方へと流れることができるよう潤滑剤でコーティングされる、請求項57記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【公開番号】特開2012−126727(P2012−126727A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21596(P2012−21596)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2004−563920(P2004−563920)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(511176159)ゼリス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2004−563920(P2004−563920)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(511176159)ゼリス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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