説明

皮脂除去ゲルシート

【課題】 肌への刺激性の低さと皮脂などの除去効果を両立することができる皮脂除去ゲルシートを提供するところにある。
【解決手段】 ゲル粘着組成物に基材が設けられた皮脂除去ゲルシートであって、
前記ゲル粘着組成物は、架橋された水溶性高分子、水、皮脂除去成分及び保湿剤を含み、両親媒性高分子を含まないゲル粘着組成物からなり、
前記皮脂除去成分が親油性粘着成分からなり、
前記親油性粘着成分が、粘着性を有する水不溶性高分子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮脂除去ゲルシートに関し、化粧を行うための補助部材として用いる皮脂除去ゲルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、
(A)架橋されたポリアクリル酸及び/又はその塩、
(B)セルロース誘導体、
(C)角質軟化成分、
を含有する含水系粘着剤、及び透湿度100〜5000(g/m・24時間)のシート状支持体を有することを特徴とする、角質除去シートが提供されている。
【0003】
特許文献2は、架橋したカルボキシル基含有ポリマー及び/又はその塩を含有する含水性のゲル状組成物の層を、支持体の少なくとも一方の面に設けたことを特徴とする、皮脂除去用シート状パック剤が提供されている。
【0004】
特許文献3は、支持体に粘着剤が塗布され、皮膚に押しつけた後、剥離させることにより皮膚に塗布したメーキャップ化粧料中の粉末、繊維等の固形物を該粘着剤に粘着させて除去可能に構成されていることを特徴とするメーキャップ除去シートが提供されている。
【0005】
特許文献4は、ポリアクリル酸および/またはポリアクリル酸塩、多価アルコール類、水、外部架橋剤を必須成分として含有し、さらに必要に応じて角質軟化剤、細胞賦活成分およびオイル成分から選ばれる少なくとも一種を配合してなるゲル状組成物からなる層を、支持体上および/または支持体内に形成してなることを特徴とする化粧用ゲルシートが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−123662号
【特許文献2】特開2002−20257号
【特許文献3】特開2002−272532号
【特許文献4】特開平11−228340号
【0007】
しかし、特許文献1は、架橋されたポリアクリル酸及び/又はその塩のハイドロゲル成分と薬剤成分(オイル成分含む)の組成であるため、粘着性を発現するのが架橋されたポリアクリル酸及び/又はその塩だけである。角質・皮脂は油性成分が大部分を占めることから、この角質・皮脂の油性成分と、架橋されたポリアクリル酸及び/又はその塩の水性成分との接着性が比較的弱くなるため、角質・皮脂の油性成分を物理的に除去する効果が不足する。また、角質軟化成分を別に必要とし、角質等を軟化させてから剥離するため使用時間が長い。
【0008】
特許文献2も、同じく含水性ゲル状組成物の層をハイドロゲルとして構成していることから、角質・皮脂の油性成分と、含水性ゲル状組成物の層の水性成分との接着性が比較的弱くなるため、角質・皮脂の油性成分を物理的に除去する効果が不足する。
【0009】
特許文献3は、塗布される粘着剤が再剥離性を有し、一時的に付着可能な粘着力を有するものであり、0.02〜2.5Nの粘着力のものが好ましいとされている。しかし特許文献3は、粘着力測定時の付着対象がガラスであり、人皮膚表面が親油性であることを考えると一概に上記設定の粘着力が良いとはいえない。特許文献3の実施例には油性成分であるテレフタル酸ポリエステル/イソフタル酸ポリエステルの油性粘着剤と、ポリアクリル酸の高粘度液によるハイドロゲルが例示されているが、ハイドロゲルか、オルガノゲル(親油性分でのゲル)かのどちらかであり、皮脂成分の除去効果(油性粘着剤の特性)と肌への刺激性の低さ(ハイドロゲルの特性)を両立したものではない。
【0010】
特許文献4は、皮膚表面上での保湿効果によって角化した皮膚の柔軟化作用は期待できるが、皮脂などの除去効果が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、肌への刺激性の低さと皮脂などの除去効果を両立することができる皮脂除去ゲルシートを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、
ゲル粘着組成物に基材が設けられた皮脂除去ゲルシートであって、
前記ゲル粘着組成物は、架橋された水溶性高分子、水、皮脂除去成分及び保湿剤を含み、両親媒性高分子を含まないゲル粘着組成物からなり、
前記皮脂除去成分が親油性粘着成分からなり、
前記親油性粘着成分が、粘着性を有する水不溶性高分子である
皮脂除去ゲルシートを採用した。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、皮脂除去成分である親油性粘着成分を含む前記ゲル粘着組成物であるため、ゲル粘着組成物は不均一となり、上層及び下層を構成する親油性粘着成分が、中間層を構成する親油性粘着成分よりも多くなることから、親油性粘着成分の過多がゲル粘着組成物の表層を構成する。すなわち、本発明は、親油性粘着成分が中間層に比してリッチな上層及び下層を構成し、親油性粘着成分が中間層でプアーであるゲル粘着組成物である。
従って、肌と接するゲル粘着組成物の表層が、粘着性を有する水不溶性高分子をより多く含んでいることから、肌に優しく、皮膚へのダメージが少なく、使用感が良く、また皮脂を除去する。それにより皮膚の凹凸に柔軟に追従出来ることから皮膚への追従性や低皮膚刺激を維持したまま皮脂の除去効果を上げることが出来た。
従って、従来の粘着剤などと比較して、厚みのあるゲルを使用することができ、皮膚への追従性をより向上でき、皮脂の除去をより効果的に行うことが出来た。また本発明の皮脂除去ゲルシートは、成膜性のピール型パック材に比較して、ゲル状であるので、すぐに使えて操作が容易であって手間が掛からず、見た目で効果が認識でき、使用者への負担が小さい。
【0014】
また本発明は前記皮脂除去ゲルシートであるため、ゲル粘着組成物の片面に表面基材を設置することができ、不必要な部分への接着を防げる。また本発明はゲル粘着組成物の片面に表面基材を設置した場合、表面材を黒くすることで、除去した皮脂を目視しやすくなり、効果の確認と満足感を与えることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明はゲル粘着組成物に基材が設けられた皮脂除去ゲルシートであって、
前記ゲル粘着組成物は、架橋された水溶性高分子、水、皮脂除去成分及び保湿剤を含み、両親媒性高分子を含まないゲル粘着組成物からなり、
前記皮脂除去成分が親油性粘着成分からなり、
前記親油性粘着成分が水不溶性高分子である皮脂除去ゲルシートである。
【0016】
(架橋された水溶性高分子)
本発明で使用される架橋された水溶性高分子(以下、ハイドロゲルと称する場合がある。)は、架橋部を含む水溶性高分子であれば特に限定されるものではない。水溶性高分子としては、非架橋性モノマーと架橋性モノマーとの共重合体により得ることができる。例えば、水溶性の(メタ)アクリル系モノマーと2以上のアルケニル基を有する架橋性モノマーとの共重合体を用いることができる。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル変成(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル変成(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマーを例示できる。また、N−ビニルアミド等の水溶性のモノマーを例示することができる。
2以上のアルケニル基を有する架橋性モノマーとしては、多官能アクリレート、多官能アクリルアミド等の架橋性モノマーを例示することができる。
本発明におけるゲル粘着組成物は、この架橋された水溶性高分子によって、水溶性高分子のマトリックスを構成することができる。すなわち、架橋された水溶性高分子、水、保湿剤及び水不溶性高分子を含み、両親媒性高分子が含まれないゲル粘着組成物であって、前記の水、保湿剤及び水不溶性高分子がこの水溶性高分子のマトリックス内に含まれるゲル粘着組成物を得ることができる。
【0017】
水溶性高分子を構成する非架橋性モノマーの具体例を更に詳述すると、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の非電解質系アクリルアミド誘導体、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)及び(又は)その塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩等の電解質系アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スルホプロピルメタクリレート(SPM)及び(又は)その塩、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド(QDM)等の電解質系アクリル誘導体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の非電解質系アクリル誘導体が挙げられる。
【0018】
架橋性モノマーの具体例としては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
本発明のゲル粘着組成物中における架橋された水溶性高分子の含有量は、非架橋性モノマーと架橋性モノマーを含む配合液を作成する際、当該非架橋性モノマーと当該架橋性モノマーが均一に溶解していれば、特に限定されるものではない。
前記架橋された水溶性高分子は、好ましくは、得られるゲル体のゲル強度を維持し、保型性、加工性を高めるために、ゲル粘着組成物全量に対して15重量%以上であり、18重量%以上であることが更に好ましい。
また、架橋された水溶性高分子をゲル粘着組成物のマトリックスとして形成するためには、非架橋性モノマーを用いるが、当該非架橋性モノマーは、主として水溶性であり、水への溶解度が十分高く、特に、常温で液体のモノマーの場合は任意の割合で水と溶解するモノマーが好ましい。反面、当該ゲル粘着組成物には、水とモノマー以外にも保湿剤や、必要に応じて、重合開始剤等の添加剤も溶解させる必要がある場合があり、この場合は、このゲル粘着組成物中における架橋された水溶性高分子の濃度は、ゲル粘着組成物全量に対して35重量%以下に設定することが好ましく、30重量%以下に設定することが更に好ましい。
【0020】
前記架橋性モノマーのゲル粘着組成物全量に対する含有量は、前記非架橋性モノマーあるいは当該架橋性モノマーの分子量や化学的、物理的特性に応じて適宜設定するべきであるが、得られるゲル体の保型性を高めるためには非架橋モノマー量に対し0.01重量%以上に設定することが好ましく、0.05重量%以上に設定することが更に好ましい。
【0021】
前記の様に、前記非架橋性モノマーはマトリックスの大部分を占めるため、水溶性が高い方が好ましい。
【0022】
前記架橋性モノマーは、マトリックスの一部を構成するため、必ずしも水溶性のものを使用しなくてもマトリックス全体の親水性が損なわれることはない。水溶性が低い架橋性モノマーを前記配合液に溶解させる方法としては、例えば架橋性モノマーが液体の場合は非架橋性モノマーに溶解させる方法があり、非架橋性モノマー以外に多価アルコールに溶解して添加する方法もある。
【0023】
(保湿剤)
本発明のゲル粘着組成物は、保湿性、可塑性を向上させるために保湿剤を含有することが好ましい。保湿剤としては、多価アルコールをゲル粘着組成物中に含有させることが好ましい。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールなどのジオールの他、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体等が使用可能である。なお、保湿剤としては、常温(好ましくは氷点下10℃以上で)で液状、詳細には、ゲル体を実際に使用する温度領域(例えば室内で使用する場合は20℃前後)で液状の多価アルコールを使用することが好ましい。
【0024】
本発明のゲル粘着組成物は、水を含むため、保湿剤無くしては短時間で水分が蒸発及び/又は乾燥し易く、可塑性が損なわれるとともに粘着性、特に初期タック力が著しく低下し易い。従って、保湿剤は、ゲル粘着組成物に添加することにより、水分が一定以上蒸発するのを防止すると同時に、当該保湿剤が常温で液状であれば、保湿剤自体が可塑剤としての機能をも有する。
【0025】
ゲル粘着組成物中の保湿剤の濃度は、保湿性、可塑性を維持し、優れた安定性を発現するために、水を除く該ゲル粘着組成物全量に対して25重量%以上であることが好ましく、更に、30重量%以上であることがより好ましい。また、この保湿剤の量は、得られるゲル体の腰強度、粘着力を確保する意味において、一定以上の樹脂固形分の含有量を確保するため、水を除く該ゲル粘着組成物全量に対して70重量%以下であることが好ましく、60重量%以下で有ることがより好ましい。
【0026】
(皮脂除去成分)
本発明において使用する皮脂除去成分は親油性粘着成分からなり、前記親油性粘着成分は粘着性を有する水不溶性高分子を使用することができる。
粘着性を有する水不溶性高分子としては、酢酸ビニル、マレイン酸エステル、(メタ)アクリルエステル等の疎水性モノマーの単独または複数を重合させたものが挙げられる。具体的には、酢酸ビニル、マレイン酸ジオクチル、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の疎水性モノマーの単独若しくは共重合体である。前記以外にエチレン、プロピレン、ブチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の疎水性モノマーの何れか一つ、又は、複数が更に共重合されていても良い。また、シリコーン粘着剤や天然ゴム系や合成ゴム系の粘着剤を使用する事も可能である。これらの中で、アクリルエステル共重合体は改良が重ねられており、高粘着であるとともに低皮膚刺激である事から好適に使用される。
【0027】
粘着性を有する水不溶性の高分子をハイドロゲル中に中間層に比して上下両層においてリッチとなるように不均一に分散させるためには、前記高分子を乳化分散させたエマルジョンを使用することが好ましい。通常、前記エマルジョンの固形分は30〜60重量%であり、残りの大部分は水である。
【0028】
酢酸ビニル系のエマルジョン(固形分50重量%、商品名「フレックスボンド150
」、フレックスボンド株式会社製)、エチレン−酢酸ビニル系のエマルジョン(固形分50重量%、商品名「ポリゾールEVA AD-18」、昭和高分子株式会社製)等が好適に用いられる。
【0029】
ゲル粘着組成物中における、粘着性を有する水不溶性高分子の含有量は、最終製品に期待する効果に応じて調節すれば良いが、人間の触感による違いが判別可能な程度の効果を得るためには、水を除く前記ゲル粘着組成物全量に対して10重量%以上添加されることが好ましい。特に、これらの高分子は単独でも粘着剤としての機能を有し、かつ両親媒性高分子を含まず、ゲル粘着組成物は親油性粘着成分が中間層に比して上層及び下層をよりリッチに構成しているため、添加量は水を除く前記ゲル粘着組成物全量に対して30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0030】
(両親媒性高分子)
本発明のゲル粘着組成物は、両親媒性の高分子を含有しない。本発明のゲル粘着組成物は、両親媒性の高分子を含有しないで、粘着性を有する水不溶性高分子を含む場合には、当該配合液の状態では安定ではあるが、ゲル化によって前記水不溶性高分子の分散安定性が阻害され不均一となり、ゲル粘着組成物は、前記の通り、親油性粘着成分が中間層に比して上層及び下層をリッチに構成される。
【0031】
本発明において、両親媒性とは、少なくとも有機溶媒と水の混合溶媒に溶解し、好ましくは、水と、極性有機溶媒の双方に溶解可能であることを意味する。有機溶媒と水の混合溶媒の例としては、エタノール/水=60/40の混合溶媒が挙げられる。従って、前記両親媒性高分子は、室温下において、エタノール/水=60/40の混合溶媒に対しても溶解する高分子が該当する。
【0032】
両親媒性高分子としては、親水性モノマーと疎水性モノマーの共重合体が挙げられる。当該親水性モノマーとしては、例えばビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ビニルピロリドン/アクリル酸アルキル共重合体、低ケン化ポリビニルアルコール等が挙げられる。前記両親媒性高分子としては、共重合しなくとも両親媒性の性質を有する高分子重合体もある。
【0033】
(水)
ゲル粘着組成物に含まれる水の濃度は、モノマー等を均一に溶解するためには前記配合液中に13重量%以上、つまり該ゲル粘着組成物全量に対して13重量%以上であることが好ましく、18重量%以上であることが更に好ましい。また、蒸発、乾燥によるゲル物性の変動を抑え、ゲル物性を安定化するためには該ゲル粘着組成物全量に対して40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下に設定するのが更に好ましい。例えば、グリセリンの場合、相対湿度がおおむね50%〜70%の範囲で、自重の約20〜約40重量%の水分を保持する性質(保湿性)を有している。更に、発明者らが各種保湿剤を含有するハイドロゲルを作成し、相対湿度60%での保湿性を求めた結果、例えばグリセリンの保湿性は約30重量%であり、乳酸ナトリウムでは約80重量%であった。
【0034】
以上からわかるように、保湿剤の保湿性は相対湿度に依存し、保湿剤を使用したハイドロゲルの保湿性も同じく相対湿度に依存する。保湿力の異なる保湿剤を組み合せて使用することにより、一定湿度におけるゲルの保湿性を制御する事は可能であるが、相対湿度依存性は保湿剤固有の性質であるため実質制御不可能である。以上より、理想的には保湿性が低い保湿剤(更に理想的には常温で液体であること)を高濃度で使用し、ゲルの設計上の含水率を低く設定することで、ゲルの保湿性の相対湿度依存性を見かけ上低くする事は可能であるが、ゲル粘着組成物では、粘着性を有する水不溶性の高分子を安定的に分散させるため、上記の濃度以上の水分量を保持することが好ましい。
【0035】
(界面活性剤)
本発明のゲル粘着組成物を製造する際、前記配合液に界面活性剤を添加することにより、水不溶性高分子の過多の凝集傾向を低減させることが可能となる。特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル基を有する界面活性剤が好ましい。
【0036】
例えば、アクアロンKH−05、KH−10(第一工業製薬株式会社製)、エレミノールRS−30(三洋化成株式会社製)、エレミノールJS−2(三洋化成株式会社製)、ラテムルS−180A、S−180(花王株式会社製)、エマールD−3−D、ラテムルE−118B、E−150、レベノールWX(花王株式会社製)、ハイテノール08E、18E、LAシリーズ(第一工業製薬株式会社製)、ニューコール293、RA544(日本乳化剤株式会社製)等がある。
【0037】
これら界面活性剤の添加による効果を得るためには、前記配合液に対して0.1重量%以上の添加が好ましく、また、粘着性や他の性能への影響を考慮した場合、前記配合液に対して2.0重量%以下の添加が好ましい。界面活性剤の添加方法は特に限定されない。
【0038】
(本発明の製造方法)
本発明は、水溶性高分子のマトリックスを形成するためのモノマー、架橋性モノマー、保湿剤、水及び水不溶性高分子を含む配合液を混合し、混合された配合液を加熱又は光照射することにより重合させてなるゲル粘着組成物の製造方法でもある。
【0039】
本発明のゲル粘着組成物を製造する方法は、上記にも記載したように、次の工程を含むゲル粘着組成物の製造方法である。
(a) 非架橋性モノマー、架橋性モノマー、保湿剤、水及び水不溶性高分子を含む配合液を混合する工程
(b) その混合された配合液を加熱又は光照射することにより重合させる工程
より詳細には、以下の工程を取ることが好ましい。
【0040】
(1)配合液の作成
(i)あらかじめ水を均一に攪拌した溶液に、水に不溶性の高分子のエマルジョンを添加し、均一分散させる。次に、保湿剤を投入し、均一に分散するまで攪拌する。これを〔液1〕とする。尚、〔液1〕を作成する際の配合量を基に適宜設定すれば良い。
【0041】
(ii)〔液1〕にモノマーを投入し攪拌する。モノマーの種類によっては、溶解時に吸熱又は発熱する場合があるので、吸熱する場合は加温し、発熱する場合は冷却することが好ましい。加温又は冷却する場合、〔液1〕の温度が10℃〜50℃の範囲になるように設定することが好ましく、20℃〜40℃であることがより好ましい。温度が低すぎるとモノマー自体の溶解に、特に固体のモノマーの場合に時間がかかるとともに、モノマー以外の添加成分の溶解にも時間を要する。添加する成分によっては、温度が低すぎると溶解しない場合もある。また、極端に温度が低下すると、エマルジョンやその他の高分子成分が凝集する場合もある。また、温度が高すぎると、同じくエマルジョンの分散不良が生じたり、反応性が高い成分が含まれる場合は、反応開始又は暴走したり、更に、配合液中の揮発成分が蒸発し、設計通りの配合液が得られない場合もある。
【0042】
(iii) 次に、上記以外の必要成分と、重合開始剤を添加し、全ての成分が完全に溶解するまで攪拌、混合することにより、配合液が得られる。
なお、界面活性剤を前記配合液に加える場合は、前記配合液に前記配合液全量に対して0.1〜2.0重量%となるように加えることが好ましい。前記水不溶性高分子は、水を分散媒とするエマルジョンであることが好ましい。
なお、かかる配合液が、水不溶性高分子を含む配合液の場合、分散安定したゲル粘着組成物用配合液として使用することができる。
なお、本発明では、前記水不溶性高分子が、水を除く当該組成物全量に対して3〜20重量%含まれているゲル粘着組成物用配合液がより好ましい。
【0043】
(2)配合液の保管
配合液の保管については、添加するエマルジョンやその他の成分が安定であれば特に制限されないが、0℃〜50℃の範囲で保管するのが好ましく、5℃〜40℃の範囲で保管することが更に好ましい。
【0044】
(3)ゲル生成
樹脂フィルム等(ベースフィルム)の上に上記配合液を滴下し、その上面に離型処理した樹脂フィルム等(トップフィルム)を被せて液を押し広げ、一定の厚みに制御した状態で熱又は光(紫外線)照射により当該配合液を重合架橋させて一定の厚み、好ましくは厚みが0.3〜5mmのゲル粘着組成物からなるゲル体を得る。ベースフィルムは、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、紙又は樹脂フィルムをラミネートした紙等を使用することが出来る。
【0045】
ベースフィルムを離型紙として使用する場合は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、紙又は樹脂フィルムをラミネートした紙等の表面に離型処理を施したものが好適に用いられる。特に、二軸延伸したPETフィルムや、OPP等が好ましい。離型処理の方法としては、シリコーンコーティングが挙げられる、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
【0046】
ベースフィルムを離型紙でなく、粘着剤のバッキング材として使用する場合は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等の樹脂フィルムを離型処理せずに使用する。特に、ポリウレタンは柔軟性があり、水蒸気透過性を有するものも存在する事から特に好ましい。ポリウレタンは、通常単独では柔らかすぎ、製造工程での取扱が困難なため、キャリアとしてポリオレフィンや紙などがラミネートされている。これらキャリアフィルムをつけたままゲル生成工程に使用する必要がある。
【0047】
トップフィルムとしては、基本的にベースフィルムと同じ材質のものを使用することが可能であるが、光照射によりゲル生成する場合は、光を遮蔽しない材質を選択する必要がある。また、前記のバッキングに使用するフィルムは、トップフィルムとして使用しない方が良い。特に、紫外線などの照射により劣化の可能性がある場合は、直に紫外線が照射される側に配置することになるためより好ましくない。
【0048】
ゲルを連続的に重合架橋させ、生成したゲル粘着組成物のゲル体をロール状に巻き取る場合は、ベースフィルムかトップフィルムかの何れかに柔軟性が要求される。柔軟性が無いフィルムを両面に使用する場合、巻皺が発生する危険性が高い。柔軟性を有するフィルムは、ロールの巻の内面、外面何れに使用しても良いが、外側に配置することがより好ましい。
【0049】
本発明のゲル粘着組成物は、シート状に成形される際、表面基材として不織布又は織布を配設するか、及び又は、中間基材として不織布又は織布を埋設することも可能である。これら基材は、ゲルの補強、裁断時の保形性を改善するために用いられる。特にゲル粘着組成物と暗色の表面基材とが積層されている場合、又はゲル粘着組成物に暗色の中間基材が埋設されている場合、基材が暗色であるため、皮脂を除去した後に当該皮脂がゲル粘着組成物に付着していることを看取しやすい。
例えば、不織布および織布の材質は、セルロース、絹、麻等の天然繊維やポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、または、それらの混紡が使用可能である。また、必要に応じて更にバインダーが用いられる。また更に、着色される場合がある。
【0050】
本発明におけるゲル粘着組成物は、必要に応じて防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、香料、着色剤等や、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤その他の薬効成分を適宜添加してもよい。
【実施例】
【0051】
[実施例1]
親油性粘着剤を含むハイドロゲルを以下のように作成した。
イオン交換水11.0重量部とN,N’-メチレンヒ゛スアクリルアミト゛(MBAA)0.03重量部と第一工業製薬製アクアロンKH-10を0.2重量部、重合開始剤として、1- [4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア2959:チバスペシャリティーケミカルス)0.2重量部を混合し、撹拌して均一に溶解した後、水不溶性高分子として酢酸ビニル系のエマルジョン(固形分50重量%、商品名「フレックスボンド150」、フレックスボンド株式会社製)を24重量部、モノマーとしてアクリルアミドを20重量部添加し、均一になるまで攪拌した。次に保湿剤としてグリセリンを38.57重量部添加し、均一になるまで攪拌し、白濁した配合液を得た。
【0052】
次に、得られた配合液をシリコーンコーティングされたPETフィルム上に滴下し、その上から同じくシリコーンコーティングされたPETフィルムを被せて、液が均一に押し広げられ、厚さが1mmになる様に固定した。これにメタルハライドランプを使用してエネルギー量3000mJ/cmの紫外線照射することにより厚さ1mmであるゲル粘着組成物を得た。次に片側のフィルムを除去し、黒色不織布(株式会社シンワ製ハイボン8850)と積層し、実施例1の皮脂除去シートを得た。
【0053】
[実施例2]
イオン交換水11.0重量部とN,N’-メチレンヒ゛スアクリルアミト゛(MBAA)0.03重量部と第一工業製薬製アクアロンKH-10を0.2重量部、重合開始剤として、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア2959:チバスペシャリティーケミカルス)0.2重量部を混合し、撹拌して均一に溶解した後、水不溶性高分子としてエチレン−酢酸ビニル系のエマルジョン(固形分50重量%、商品名「ポリゾールEVA AD-18」、昭和高分子株式会社製)を24重量部、モノマーとしてアクリルアミドを20重量部添加し、均一になるまで攪拌した。次に保湿剤としてグリセリンを38.57重量部添加し、均一になるまで攪拌し、白濁した配合液を得た。
【0054】
次に、得られた配合液をシリコーンコーティングされたPETフィルム上に滴下し、その上から同じくシリコーンコーティングされたPET
フィルムを被せて、液が均一に押し広げられ、厚さが1mmになる様に固定した。これにメタルハライドランプを使用してエネルギー量3000mJ/cmの紫外線照射することにより厚さ1mmであるゲル粘着組成物を得た。次に片側のフィルムを除去し、黒色不織布(株式会社シンワ製ハイボン8850)と積層し、実施例2の皮脂除去シートを得た。
【0055】
[実施例3]
イオン交換水11.0重量部とN,N’-メチレンヒ゛スアクリルアミト゛(MBAA)0.03重量部と第一工業製薬製アクアロンKH-10を0.2重量部、重合開始剤として、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア2959:チバスペシャリティーケミカルス)0.2重量部を混合し、撹拌して均一に溶解した後、水不溶性高分子としてアクリル酸エステル重合体系のエマルジョン(固形分50重量%、商品名「ポリゾール SE-8000 」、昭和高分子株式会社製)を24重量部、モノマーとしてアクリルアミドを20重量部添加し、均一になるまで攪拌した。次に保湿剤としてグリセリンを38.57重量部添加し、均一になるまで攪拌し、白濁した配合液を得た。
【0056】
次に、得られた配合液をシリコーンコーティングされたPETフィルム上に滴下し、その上から同じくシリコーンコーティングされたPETフィルムを被せて、液が均一に押し広げられ、厚さが1mmになる様に固定した。これにメタルハライドランプを使用してエネルギー量3000mJ/cmの紫外線照射することにより厚さ1mmであるゲル粘着組成物を得た。次に片側のフィルムを除去し、黒色不織布(株式会社シンワ製ハイボン8850)と積層し、実施例3の皮脂除去シートを得た。
【0057】
[比較例1](ハイドロゲル)
イオン交換水25.97 重量部とN,N’-メチレンヒ゛スアクリルアミト゛(MBAA)0.03重量部と第一工業製薬製アクアロンKH-10を0.2重量部、重合開始剤として、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア2959:チバスペシャリティーケミカルス)を0.2
重量部を混合し、撹拌して均一に溶解した後、モノマーとしてアクリルアミドを20重量部添加し、均一になるまで攪拌した。次に保湿剤としてグリセリンを53.6重量部添加し、均一になるまで攪拌し、無色透明の配合液を得た。
【0058】
次に、得られた配合液をシリコーンコーティングされたPETフィルム上に滴下し、その上から同じくシリコーンコーティングされたPETフィルムを被せて、液が均一に押し広げられ、厚さが1mmになる様に固定した。これにメタルハライドランプを使用してエネルギー量3000mJ/cmの紫外線照射することにより厚さ1mmであるゲル粘着組成物を得た。次に片側のフィルムを除去し、黒色不織布(株式会社シンワ製ハイボン8850)と積層し、比較例1の皮脂除去シートを得た。
【0059】
[比較例2](市販の粘着剤)
市販の粘着剤として、積水化学工業社製セロハンテープを比較例2として用いた。粘着剤の厚みとしては50μm(表面のフィルム込)であった。
【0060】
上記実施例、比較例を20mm×50mmの大きさにカットし、ボランティア10人の顔面に場所を変えながら貼付・剥がしを10回繰返し、除去シートの表面を観察した。
【0061】
(皮脂除去効果)
除去された皮脂が多いかどうか(除去された皮脂の量が多ければ3点、除去された皮脂の量がやや多ければ2点、除去された皮脂の量が少なければ1点、除去された皮脂の量が全く少ない場合は0点)を基準に0〜3点で評価してもらい、平均点を評点とした。評点2点以上であれば皮脂の除去効果があると判断した。
【0062】
(皮脂除去効果の視覚的実感)
効果が視覚的に実感できたかどうか(効果が視覚的にとても実感できれば3点、視覚的にやや実感できれば2点、視覚的にあまり実感できなければ1点、視覚的に全く実感できなければ0点)を基準に0〜3点で評価してもらい、平均点を評点とした。評点2点以上であれば視覚的に効果が実感できると判断した。
【0063】
(皮脂除去テープの使用時の痛み)
使用時の痛みを評価(痛みが全くなければ3点、痛みがほとんどなければ2点、痛みが感じられれば1点、痛くて使用できなければ0点)を基準に0〜3点で評価してもらい、平均点を評点とした。評点2点以上であれば使用時の痛みが少ないと判断した。
【0064】
<使用時の保湿効果>
使用時の保湿感を評価(保湿感があれば3点、保湿感をやや感じられれば2点、保湿感があまり感じなければ1点、保湿感が全く無ければ0点)を基準に0〜3点で評価してもらい、平均点を評点とした。評点2点以上であれば保湿感があると判断した。
【0065】
【表1】

【0066】
評価のとおり、実施例1〜3は皮脂の除去効果が高く、視覚的にも実感できた。また、使用時の痛みも少なく、保湿感があることがわかった。
それに対し、比較例1は保湿感があり、使用時の痛みは全く無かったが、皮脂の除去効果はほとんど無く、皮脂除去テープとしては使えないことがわかった。比較例2は皮脂の除去効果はある程度あるが、実感に乏しく、使用時に痛みを感じやすいことがわかった。また、保湿感については全く効果が無かった。
【0067】
実施例は水不溶性成分を含んだ厚みのある柔軟性を有したハイドロゲルであるため、皮膚表面の凹凸に追従し、皮脂と同じ水不溶性成分によって表面の不要な皮脂を確実に除去できる。また、保湿剤を含むため、使用時に保湿効果を与えることもできる。
これに対し、比較例1のハイドロゲルは水不溶性成分が無いため皮脂との接着性が悪い。また、比較例2は実施例に比較して厚みがかなり薄く(技術的にも粘着テープは厚く作ることが困難)、皮膚の凹凸に追従できないため皮脂の除去効果も限定的になる上、皮膚との接着性が高すぎるために使用時に痛みを感じやすいと考えられる。また、保湿剤を含まないため、保湿効果は全く期待できない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の皮脂除去ゲルシートは、化粧を行うためのパック(フェイスパック)材などの補助部材として用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル粘着組成物に基材が設けられた皮脂除去ゲルシートであって、
前記ゲル粘着組成物は、架橋された水溶性高分子、水、皮脂除去成分及び保湿剤を含み、両親媒性高分子を含まないゲル粘着組成物からなり、
前記皮脂除去成分が親油性粘着成分からなり、
前記親油性粘着成分が水不溶性高分子である
皮脂除去ゲルシート。
【請求項2】
ゲル粘着組成物全量に対して、前記架橋された水溶性高分子が15〜35重量%、前記水不溶性高分子が10〜30重量%を含む請求項1記載の皮脂除去ゲルシート。
【請求項3】
前記水不溶性高分子が酢酸ビニル系樹脂エマルジョンである請求項1又は2記載の皮脂除去ゲルシート。
【請求項4】
前記水不溶性高分子がアクリル酸エステル重合体系エマルジョンである請求項1、2又は3記載の皮脂除去ゲルシート。
【請求項5】
ゲル粘着組成物は、親油性粘着成分が中間層に比してリッチな上層及び下層を構成し、親油性粘着成分が中間層でプアーである請求項1乃至4のいずれかに記載の皮脂除去ゲルシート。
【請求項6】
前記表面基材が暗色不織布である請求項1乃至5のいずれかに記載の皮脂除去ゲルシート。

【公開番号】特開2012−206954(P2012−206954A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72240(P2011−72240)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】