説明

皮膚、粘膜、頭皮または爪の処置、保護または洗浄において有用なペプチド誘導体

本発明は、一般式(I):R−AA−AA−AA−AA−R(I)のペプチド誘導体、それらの立体異性体、それらの混合物、およびそれらの化粧上もしくは薬学上許容される塩、それらを得るための方法、それらを含有する化粧組成物または医薬組成物、ならびに微生物増殖による、または微生物増殖のリスクがある皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の症状、障害および/または病態の処置、保護および/または洗浄にためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、内在性β−デフェンシンの産生を刺激することができるペプチド誘導体、ならびに皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の処置、保護および/または洗浄のため、好ましくは、微生物増殖による、または微生物増殖のリスクがある皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の症状、障害および/または病態の処置のための、これらのペプチド誘導体を含有する化粧品および/または医薬組成物に関する。
【0002】
発明の背景
哺乳類の皮膚は、化学的攻撃であれ、機械的攻撃であれ、または感染的攻撃であれ、外的攻撃に対する主要な防御バリアである。外的攻撃因子としてはまた、紫外線、煙草の煙、汚染および機構などの環境因子が含まれる。皮膚はその免疫保護系を形成する皮膚微生物叢を有し、このような微生物叢集団の不均衡は、自所性皮膚細菌または通常皮膚には存在しない細菌による皮膚の侵害をしばしば含む機能的免疫欠陥を伴い、そして、臨床的に確立された感染をもたらし得るプロセスが始まる。同様に、皮膚細菌叢も、ホメオスタシスの複数の重要な機能、細菌感染に対する防御(干渉による)、脂質分解および体臭の原因となる揮発性成分の産生を有する。
【0003】
例えば、ヒト皮膚の表面、その割れ目、薄片、角質層および毛包で腐生菌として棲息する微生物は、表面の角質および脂質層に対する付加的皮膚バリアとして重要な保護的役割を有し、内部媒体と外部媒体の間の透過性を決定する。この皮膚細菌叢は常在微生物および一過性微生物により形成され、細菌、真菌および寄生虫である。
【0004】
常在性微生物は、表面に接着して増殖および生存する能力を有し、主要な皮膚の構成要素であり、例として、ウシコリネバクテリア(Corynebacterium bovis)、C.ムチシウム(C. mutissium)、C.キセロシス(C. xerosis)、C.ホッフマニ(C. hoffmani)、プロピオニバクテリウム・アビダム(Propionibacterium avidum)、P.グロヌローサム(P. granulosum)、アシネトバクター(Acinetobacter)、酵母マラセチア・ファファ(Malassezia furfur)、ピチロスポルム・オバル(Pityrosporum ovale)およびP.オービキュラー(P. orbiculares)、ならびにカンジダ科のいくつかの群(C.グラブラタ(C. glabrata)など)が挙げられる。毛包に存在する腐生寄生虫ニキビダニ(Demodex folliculorum)は病原性であり得る。一過性皮膚細菌叢は主として連鎖球菌A群、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などのグラム陽性菌、ナイセリア属またはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)などの真菌叢により代表され、皮膚において単離される場合はいつも病原性であるとみなされる。
【0005】
通常の皮膚細菌叢は、湿度および温度などのいくつかの環境因子、ある特定の微生物の定着および増殖に都合のよい皮膚の特徴が人によって異なるので、年齢、生物および人種により異なり得る。皮膚定着は、身体の各局所解剖学的領域の特定の特徴によって異なり、ある特定の微生物群の優位性もそれらによって異なる。例えば、頭皮には、ピチロスポルム・オバル、ブドウ球菌、コリネバクテリウムおよびニキビダニ(Demodex folliculorum)などの細菌、真菌および寄生虫の混合叢が存在する。よって、腋下および肛囲領域、陰門または指間空間では異なる微生物を単離することができる。
【0006】
湿疹、刺激作用または攻撃的皮膚処置の場合のように、この微生物バリアが弱まる、または破壊されると、病原性微生物が皮膚に定着し、あるいはさらに皮膚を通り抜け、従って、皮膚の非特異的防御機構を逃れる場合がある。よって、皮膚微生物叢の存在は、皮膚に栄養競合現象による、また酵素活性および/または殺菌活性を有する物質の分泌による病原性微生物に対する防御バリアを提供する。
【0007】
例えばブドウ球菌、化膿連鎖球菌(Streptopyogenes)または座瘡菌(Propionibacterium acnes)などの病原性微生物または数種の酵母の増殖は皮膚細菌叢系の調節不全を伴い、とりわけ、湿疹、カンジダ症、皮膚炎、爪真菌症または皮膚病などの皮膚、粘膜、頭皮および/または爪におけるより重篤な障害または病態をもたらし得る。同様に、創傷治癒プロセスでは、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の防御機構が低下するので、常に感染のリスクがある。創傷は、例えば、とりわけ、切り傷、擦り傷、火傷、刺激作用、掻き傷または化学薬品への曝露などの物理的損傷の結果、例えば、とりわけ、外科的切開または皮膚移植などの外科的プロセスの結果、ならびに病気、さらには例えば、とりわけ、糖尿病性潰瘍または静脈鬱血性潰瘍などの慢性症状の結果であり得る。創傷において、病原性微生物の負荷量、それらの病原体の菌力および宿主の防御機構が、その創傷が感染を生じるかどうかを決め、従って、治癒のプロセスでは、抗菌化合物または宿主の防御を刺激する化合物により処置が治療上有用である[Edlich, R. F., Kenney J. G., Morgan R. F., Nichter L. S., Friedman H.I. and Rodeheaver G. T. (1986) "Antimicrobial treatment of minor soft tissue lacerations : a critical review" Emerg. Med. Clin, of North Am. 4:561-80]。
【0008】
同様に、病原性微生物の増殖、特に緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の増殖も眼の粘膜を侵し、角膜潰瘍を生じ得る眼の感染をもたらす。眼の感染のリスクは、特に手の、悪い衛生習慣だけでなく、コンタクトレンズの日常的使用によっても高まる[Buehler P.O., Schein O. D., Stamler J. F., Verdier D. D. and Katz J. (1992) "The increased risk of ulcerative keratitis among disposable soft contact lens users" Arch. Ophthalmol. 110:1555-1558; Wilhelmus K. R. (1987) "Review of clinical experience with microbial keratitis associated with contact lenses" CLAO J. 13:211-214]。
【0009】
例えば、AIDS患者または癌プロセスのために化学療法もしくは放射線療法を受けている人などのいく人かの人は、免疫系が抑制されているために、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪おいて感染を受ける特定のリスクがある[Epstein J. B. and Chow A. W. (1999) "Oral complications associated with immunosuppression and cancer therapies" Infect. Dis. Clin. North Am. 13:901-23]。同様に、ストレス状況下の人は、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪における感染を受けやすくする免疫系抑制状態であることが多い[Biondi M. and Zannino L. G. (1997) "Psychological stress, neuroimmunomodulation, and susceptibility to infectious diseases in animals and man: a review" Psychother Psychosom. 66:3-26]。
【0010】
臭汗症または悪臭は、皮膚、特に、腋、生殖器または足などの発汗の多い皮膚領域における微生物増殖の結果である[Leyden J.J., McGinley K.J., Holzle E., Labows J.N. and Kligman A.M. (1981) "The microbiology of the human axilla and its relationship to axillary odor" J. Invest. Dermatol. 77:413-6]。特徴的かつ深いな汗の臭いは、細菌および酵母菌による汗および濡れた皮膚の分解、おおび結果としての、例えばステロイドなどの悪臭のある物質の放出の結果であり、発汗が起こる領域の微生物集団を制御または低減する化合物で処置することができる[Eisner P. (2006) "Antimicrobials and the Skin Physiological and Pathological Flora" Curr. Probl. Dermatol. 33:35-41]。
【0011】
口腔における微生物増殖のもう1つの結果は、口臭すなわち口腔の悪臭である。口臭の起源の85%〜90%が、歯周状態、義歯および充填の適合不良または歯の衛生不良などの口腔起源である。舌の背面の微生物叢およびほとんどのグラム陰性嫌気性細菌は、歯間の食べ物の残渣、口腔粘膜細胞もしくは血液もしくは唾液の残渣を分解して、酪酸、プロピオン酸または吉草酸などの単純脂肪酸、およびメチルメルカプタンまたは硫化水素などの硫黄成分、またはプトレッシンおよびカダベリンなどのタンパク質誘導体といった揮発性物質を産生する。口臭を生じる微生物としては、とりわけ、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、バクテロイデス・フォーサイサス(Bacteroides forsythus)、フソバクテリウム・ペリオドンティカム(Fusobacterium periodonticum)またはストマトコッコス・ムシラギヌス(Stomatococcus mucilaginus)が挙げられる[De Boever E. H. and Loesche W.J. (1995) "Assessing the contribution of anaerobic microflora of the tongue to oral malodor" J. Am. Dent. Assoc. 126:1384-1393; De Boever E. H., De Uzeda M. and Loesche W.J. (1994) "Relationship between volatile sulfur compounds, BANA-hydrolyzing bacteria and gingival health in patients with and without complaints of oral malodor" J. Clin. Dent. 4:114-119; Kozlovsky A., Gordon D., Gelernter I., Loesche W.J. and Rosenberg M. (1994) "Correlation between the BANA test and oral malodor parameters" J. Dent. Res. 13:1036-1042]。口内起源の悪臭を制御するためには、処置は、これらの微生物の排除を目的としなければならず、それにより、口内領域の微生物集団を制御または減少させる化合物は口臭の処置に有用である。
【0012】
同様に、病原性微生物の増殖も哺乳類の天然の防御系の低下、特に、デフェンシン発現の低下のよって強化され得る(デフェンシンは皮膚および粘膜に存在する、感染に対する特異的タンパク質である)。
【0013】
デフェンシンは、植物、昆虫、およびヒトを含む種々の哺乳類に存在する天然の抗微生物ペプチド種である。デフェンシンは、アルギニンなどの多数の正電荷アミノ酸を共通に有するとともに、それらに、モチーフとして1セットの逆平行βシートを含む三次元構造を付与するジスルフィド結合を形成するシステイン残基が存在する、アミノ酸約30〜40個の小分子である[Martin E., Ganz T. and Lehrer R.I. (1995) "Defensins and other endogenous peptide antibiotics of vertebrates" J. Leukocyte Biol. 58:128-133; Ganz T. and Lehrer R.I. (1994) "Defensins" Curr. Opinion Immunol. 6:584-589]。
【0014】
哺乳類では、デフェンシンは、それらが持っているジスルフィド結合のパターンに従って2つのファミリーに分類される[Harder J., Bartels J., Christophers E. and Schroder J. M. (2001) "Isolation and characterization of human β-defensin-3, a novel inducible peptide antibiotic" J. Biol. Chem. 276:5707-5713]。ヒトの場合、α−デフェンシンまたはHNPは、システイン残基Cys−Cys、Cys−CysおよびCys−Cysの間に3つのジスルフィド結合を有し、好中球に(HNP1〜HNP4)、また、消化器官に(HNP5およびHNP6)存在する。ヒトβ−デフェンシンまたはhBDは、システイン残基Cys−Cys、Cys−CysおよびCys−Cysの間に3つのジスルフィド結合を有し、ケラチノサイトで構成的に発現され、腎臓、膵臓、唾液、肺、胎盤および皮膚に(hBD1)、皮膚、気管および肺に(hBD2)、皮膚、気管、扁桃および舌に(hBD3)、また、精巣および胃に(hBD4)存在する。hBD2およびhBD3は、誘導型であり、微生物との接触に応答して転写レベルで調節される唯一のヒトデフェンシンである。これらのhBDは、炎症および/または感染が起こる場所で、分化したケラチノサイトにより過剰発現される[Harder J., Bartels J., Christophers E. and Schroder J. M. (1997) "A peptide antibiotic from human skin" Nature 387:861]。hBD2に関して提案される作用機序は、標的細菌への結合とその後のその微生物の脂質膜への挿入であり、膜の透過性、従ってその内部ホメオスタシスが変化する。hBD2はグラム陰性菌を極めて効果的に死滅させるが、グラム陽性菌に対しては静菌活性を持つに過ぎない。hBD3のスペクトルはhBD2のスペクトルよりも広く、種々のグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対する殺菌剤として有効である[Harder J., Bartels J., Christophers E. and Schroder J. M. (2001) "Isolation and characterization of human β-defensin-3, a novel inducible peptide antibiotic" J. Biol. Chem. 276:5707-5713; Garcia J. R., Jaumann F., Schukz S., Krause A., Rodriguez-Jimenez J., Forssmann U., Adermann K., Kluver E., Vogelmeier C., Becker D., Hedrich R., Forssmann W. G. and BaIs R. (2001) "Identification of a novel, multifunctional β-defensin (human β-defensin 3) with specific antimicrobial activity. Its interaction with plasma membranes of Xenopus oocytes and the induction of macrophage chemoattraction" Cell Tissue Res. 306:257-264]。
【0015】
ヒトにおいてhBD発現と感染罹患率の間には直接的相関がある。hBD1とhBD2は口腔炎症組織サンプル、ならびに主として口腔ケラチノサイトで広く発現される[Harder J., Bartels J., Christophers E., and Schroder J.M. (2001) "Isolation and characterization of human β-defensin-3, a novel inducible peptide antibiotic" J. Biol. Chem. 276:5707-5713]。さらに、乾癬に罹患した患者の皮膚(そこでは上皮hBDが過剰発現される)は比較的低い感染統計値を有するが、hBD発現が抑制されるアトピー性皮膚炎患者では、傷口が容易に感染する[Nomura I., Goleva E., Howell M. D., Hamid Q. A., Ong P. Y., Hall CF., Darse M. A., Gao B., Boguniewicz M., Travers J. B. and Leung D. Y. (2003) "Cytokine milieu of atopic dermatitis, as compared to psoriasis, skin prevents induction of innate immune response genes" J. Immunol. 171:3262-3269; Ong P. Y., Ohtake, T., Brandt C., Strickland I., Boguniewicz M., Ganz T., Gallo R. L. and Leung D. Y. (2002) "Endogenous antimicrobial peptides and skin infections in atopic dermatitis" N. Engl. J. Med. 347:1151-1160]。
【0016】
医薬産業は、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の感染を処置するために殺菌活性および/または殺真菌活性を有する化合物の強力な薬理学的集合体の開発に努力を注いできた。このような処置は副作用が不在ではなく、さらに、連続的使用がそのような化合物に対する病原性微生物の耐性をもたらすという欠点を有する。従って、より自然の、安全かつ有効な方法で皮膚、粘膜、頭皮および/または爪における病原性微生物増殖を制御し得る化合物を開発する必要がある。
【0017】
殺菌および/または抗真菌化合物による従来の処置に対する確実な代替法は、生物の内在性防御系の誘導、特に、内在性β−デフェンシン発現の誘導である。当技術分野の現状では、hBD2およびhBD3発現が誘導型であり、細菌または酵母抽出物の手段により[Harder J., Bartels J., Christophers E. and Schroder J.M. (1997) "A peptide antibiotic from human skin" Nature 387:861]、イソロイシンにより[Fehlbaum P., Rao M., Zasloff M. and Anderson G. M. (2000) "An essential amino acid induces epithelial β-defensin expression" PNAS 97:12723-12728]、またはアルキルアミンにより[Bukowski J. F., Morita CT. and Brenner M. B. (1999) "Human gamma delta T cells recognize alkylamines derived from microbes, edible plants, and tea: implications for innate immunity" Immunity 11:57-65]刺激し得ることが記載されている。
【0018】
種々の特許および出願には、β−デフェンシン発現誘導剤としての植物抽出物の使用が記載されている。Coletica S. A. and YSL Beauteの出願FR2,843,125 A1には、hBD産生刺激剤としてのある種の植物抽出物、中でもボルド抽出物の使用、ならびにビタミンAおよびその前駆体α−MSHおよびそのペプチドフラグメントまたは類似体、カルシウムおよびその塩またはイソロイシンエステルの使用(ただし、炎症性分子の産生は刺激しない)、および化粧品および医薬品分野における抗真菌剤または抗菌剤としてのそれらの適用が記載されている。大塚製薬(Otsuka Pharmaceuticals Co.)の国際出願WO2005/077349 A1には、hBD合成を誘導する薬剤としての、種々の植物抽出物、タンパク質加水分解物、アミノ酸、酵素またはタンパク質の使用、および化粧品、食品または医薬品分野におけるそれらの使用が記載されている。Morinaga Co.の特許出願JP2005−270117は、hBD発現を刺激する薬剤としての種々の植物抽出物の使用が記載されている。
【0019】
Gemma Biotechnology Ltd.の特許出願US2004/0259795 A1などのその他の文献には、デフェンシン合成刺激剤としてのCD14乳汁タンパク質またはそのフラグメントなどのタンパク質の使用、および敗血症状を軽減するための医薬品または食事療法剤(dietary agents)としてのそれらの適用が記載されている。
【0020】
当技術分野の現状では、また、hBD合成を誘導し得るある種の小分子が記載されている。Genaera Corp.の国際出願WO01/68085 A1およびMagainin Pharmaceuticals Inc.の特許出願US2002/0076393 A1には、hBD発現の誘導を介する感染プロセスの治療または予防におけるアミノ酸イソロイシンまたはバリン、それらの立体異性体および前記アミノ酸の数種の類似体の使用が記載されている。同様に、これもまた大塚製薬(Otsuka Pharmaceuticals Co.)の出願EP1,671,629 A1には、hBD発現誘導物質としての、ある種の有機酸、特に、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、酒石酸、桂皮酸、グルタミン酸またはコハク酸の使用が記載されている。Cedars Sinai Medical Centerの国際特許出願WO2005/115403 A2には、内在性hBD産生刺激剤としてのビタミンD3またはその類似体の投与を含んでなる症状の処置方法、および医薬または皮膚医薬分野でのそれらの使用が記載されている。Pierre Fabre Dermo-Cosmetique S. A.の特許出願FR2,896,691 A1には、hBD発現誘導剤としてのアルキルグルコシドエステルの使用、および皮膚科または皮膚化粧分野でのそれらの使用が記載されている。
【0021】
同様に、当技術分野の現状では、いくつかの微生物または微生物抽出物が内在性のhBD発現を誘導する有効性を有することが知られている。Estee Lauder Companiesの特許出願US2005/0196480 A1には、hBD産生刺激剤としての乳酸菌抽出物の使用、ならびに皮膚微生物叢の低減、座瘡の処置および敏感皮膚の感受性の軽減のための化粧品分野におけるそれらの適用が記載されている。Case Western Reserve Universityの国際特許出願WO2004/055041 A2には、フゾバクテリウムに関連した12kDaのデフェンシン誘導ペプチドを含んでなるデフェンシン刺激組成物、およびヒト免疫不全ウイルスにより引き起こされる感染の処置のためのその使用が記載されている。L'OrealのFR2,879,452 A1には、非光合成、不稔(non-fructifying)繊維状細菌のhBD合成誘導能、および化粧品分野におけるその使用が記載されている。カリフォルニア大学理事会(The Regents of the University of California)の特許US6,984,622 B2には、眼の感染および眼の創傷の治療または予防のためのhBD発現刺激剤としてのリポ多糖類またはそのフラグメントの使用が記載されている。明治乳業(Meiji Dairies Corp.)の国際出願WO2007/020884 A1には、内在性β−デフェンシンレベルを高めることにより感染を予防するためのビフィズス菌および乳酸菌抽出物の使用が記載されている。アサヒビール(Asahi Breweries Ltd.)の特許出願JP2006−241023 Aには、デフェンシン合成誘導剤としてのマンノース豊富酵母の使用、ならびに医薬および食品分野でのその使用が記載されている。
【0022】
当技術分野の現状で知られている文献に、hBD発現を誘導し得る天然物に由来しないペプチドの記載はない。
【発明の概要】
【0023】
本発明は、上記の問題に対する解決法を提供する。本発明の出願者は、驚くべきことに、アミノ酸配列が天然物に由来しないある種のペプチド誘導体がhBD発現、特にヒトβデフェンシン−2および/またはβデフェンシン−3発現を誘導し得ることを見出した。
【0024】
よって、本発明のペプチド誘導体は、以下に定義するような一般式(I)のペプチド組成物の、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪への適用、または哺乳類への経口もしくは非経口投与を含んでなる、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の処置、保護および/または洗浄のための、簡単で効果的、かつ、リスクのない解決法を提供する。
【0025】
第1の態様において、本発明は、一般式(I)
−AA−AA−AA−AA−R
(I)
[式中、
AAは、−Glu−および−Arg−からなる群から選択され;
AAは、−Met−、−Ahx−および−Phg−からなる群から選択され;
AAは、−Ala−および−Phg−からなる群から選択され;
AAは、−Ile−または単結合からなる群から選択され;
は、H、置換または非置換非環式脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキルおよびR−C(O)−からなる群から選択され;かつ、
は、−NR、−ORおよび−SRからなる群から選択され;RおよびRは、H、置換または非置換非環式脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換アラルキルからなる群から独立に選択され;
は、H、置換または非置換非環式脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリルおよび置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択されることを特徴とする]
のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩に関する。
【0026】
本発明の別の態様は、これら一般式(I)のペプチド誘導体を得るための方法である。
【0027】
本発明の別の態様は、化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、それらの混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩と、少なくとも1種類の化粧上または薬学上許容される賦形剤またはアジュバントとを含んでなる、化粧組成物または医薬組成物を目的とする。
【0028】
別の態様において、本発明は、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の処置、保護および/または洗浄のための化粧組成物または医薬組成物の製造における、一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、それらの混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用を目的とする。
【発明の具体的説明】
【0029】
本発明のペプチド誘導体は、例に示されるように、重要なβ−デフェンシン誘導活性を有し、従って、微生物増殖による、または微生物増殖のリスクがある皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の症状、障害および/または病態の処置、保護および予防に有用である、天然物に由来しない合成ペプチド誘導体である。
【0030】
定義
本発明の理解を助けるため、本明細書に用いられているいくつかの用語および表現の意味を示す。
【0031】
本記載において、アミノ酸に対して用いられている略号は、Eur. J. Biochem. (1984) 138, 9-37およびJ. Biol. Chem. (1989) 264, 633-673に明示されている生化学命名に関するIUPAC−IUB委員会(IUPAC-IUB Commission on Biochemical nomenclature)の規則に従う。
【0032】
よって、例えば、GlyはNH−CH−C(O)−OHを表し、Gly−はNH−CH−C(O)−を表し、−Glyは−NH−CH−C(O)−OHを表し、−Gly−は−NH−CH−C(O)−を表す。従って、ペプチド結合を表すハイフンは、記号の右側にある場合には、アミノ酸の1−カルボキシル基からOHを除いたものであり(本明細書では通常の非イオン化型で表される);記号の左側にある場合には、アミノ酸の2−アミノ基からHを除いたものであり;両修飾は同じ記号に適用することができる(表1参照)。
【0033】
【表1】

【0034】
略号「Ac−」は、本明細書において、アセチル(CH−C(O)−)基を表すために用いられ、略号「Palm−」パルミトイル(CH−(CH14−C(O)−)基を表すために用いられる。
【0035】
「非環式脂肪族基」とは、本発明において、例えば、限定されるものではないが、直鎖または分枝アルキル、アルケニルおよびアルキニル基を包含するために用いられる。
【0036】
「アルキル基」とは、1〜24個の間、好ましくは1〜16個の間、いっそうより好ましくは1〜14個の間、さらにより好ましくは1〜12個の間、さらにより好ましくは、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有し、単結合の手段により分子の残りの部分に結合されている直鎖または分枝飽和基に関し、例えば、限定されるものではないが、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、tert−ブチル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ラウリル、ヘキサデシル、オクタデシル、アミル、2−エチルヘキシル、2−メチルブチルおよび5−メチルヘキシルなどが含まれる。
【0037】
「アルケニル基」とは、2〜24個の間、好ましくは2〜16個の間、いっそうより好ましくは2〜14個の間、さらにより好ましくは2〜12の間、さらにより好ましくは2、3、4、5または6個の炭素原子を、共役型または非共役型の1以上の炭素−炭素二重結合、好ましくは1、2または3個の炭素−炭素二重結合とともに有し、単結合の手段により分子の残り部分に結合されている基に関し、例えば、限定されるものではないが、ビニル、オレイルおよびリノレイル基などが含まれる。
【0038】
「アルキニル基」とは、2〜24個の間、好ましくは2〜16個の間、いっそうより好ましくは2〜14個の間、さらにより好ましくは2〜12個の間、さらにより好ましくは2、3、4、5または6個の炭素原子を、共役型または非共役型の、1以上の炭素−炭素三重結合、好ましくは1、2または3個の炭素−炭素三重結合とともに有し、単結合の手段により分子の残り部分に結合されている基に関し、例えば、限定されるものではないが、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニルおよびペンチニル基(例えば、1−ペンチニル)などが含まれる。
【0039】
「アリシクリル基」とは、本発明において、例えば、限定されるものではないが、シクロアルキルまたはシクロアルケニルまたはシクロアルキニル基を包含するために用いられる。
【0040】
「シクロアルキル」とは、3〜24個の間、好ましくは3〜16個の間、いっそうより好ましくは3〜14個の間、さらにより好ましくは3〜12個の間、さらにより好ましくは3、4、5または6個の炭素原子を有し、単結合の手段により分子の残り部分に結合されている飽和単環式または多環式脂肪族基に関し、例えば、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、オクタヒドロインデン、デカヒドロナフタレンおよびドデカヒドロフェナレンなどが含まれる。
【0041】
「シクロアルケニル」とは、5〜24個の間、好ましくは5〜16個の間、いっそうより好ましくは5〜14個の間、さらにより好ましくは5〜12個の間、さらにより好ましくは5または6個の炭素原子を、共役型または非共役型の、1以上の炭素−炭素二重結合、好ましくは、1、2または3個の炭素−炭素二重結合とともに有し、単結合の手段により分子の残り部分に結合されている非芳香族単環式または多環式脂肪族基に関し、例えば、限定されるものではないが、シクロペント−1−エン−1−イル基などが含まれる。
【0042】
「シクロアルキニル」とは、5〜24個の間、好ましくは5〜16個の間、いっそうより好ましくは5〜14個の間、さらにより好ましくは5〜12個の間、さらにより好ましくは5または6個の炭素原子を、共役型または非共役型の、1以上の炭素−炭素三重結合、好ましくは、1、2または3個の炭素−炭素三重結合とともに有し、単結合の手段により分子の残り部分に結合されている非芳香族単環式または多環式脂肪族基に関し、例えば、限定されるものではないが、シクロヘクス−1−イン−1−イル基などが含まれる。
【0043】
「アリール基」とは、6〜30個の間、好ましくは6〜18個の間、いっそうより好ましくは6〜10個の間、さらにより好ましくは6または10個の炭素原子を有し、炭素−炭素結合または縮合の手段により結合されている1、2、3または4個の芳香族核を含んでなる芳香族基(例えば、限定されるものではないが、とりわけフェニル、ナフチル、ジフェニル、インデニル、フェナントリルまたはアントラニルが含まれる);またはアラルキル基に関する。
【0044】
「アラルキル基」とは、7〜24個の間の炭素原子を有する芳香族基で置換されたアルキル基に関し、例えば、限定されるものではないが、−(CH1−6−フェニル、−(CH1−6−(1−ナフチル)、−(CH1−6−(2−ナフチル)および−(CH1−6−CH(フェニル)などが含まれる。
【0045】
「ヘテロシクリル基」とは、1以上の環原子、好ましくは1、2または3個の環原子が炭素とは異なる要素、例えば窒素、酸素または硫黄などであり、飽和または不飽和であり得る3〜10員の炭化水素環に関する。本発明の目的では、複素環は単環式、二環式または三環式の環系であり得、縮合環系を含んでもよく;そのヘテロシクリル基において窒素、炭素または硫黄原子は場合により酸化されていてもよく;窒素原子は場合により第四級化されていてもよく;そのヘテロシクリル基は部分飽和型であっても完全飽和型であっても、または芳香族であってもよい。ヘテロシクリルは、より好ましくは5または6員環に関する。
【0046】
「ヘテロアリールアルキル基」とは、置換または非置換芳香族ヘテロシクリル基で置換されたアルキル基(このアルキル基は1〜3個の炭素原子と、2〜24個の間の炭素原子および炭素とは異なる1〜3個の原子を有する芳香族ヘテロシクリル基とを有する)に関し、例えば、限定されるものではないが、−(CH1−6−イミダゾリル、−(CH1−6−トリアゾリル、−(CH1−6−チエニル、−(CH1−6−フリルおよび−(CH1−6−ピロリジニルなどが含まれる。
【0047】
本技術分野で理解されているように、従前に定義した基に対しては、特定の置換度が存在し得る。よって、本発明の基はいずれも置換可能である。本発明の基において本明細書で置換基が言及される場合には、明示された基が、1以上の利用可能な位置、好ましくは1、2または3つの位置、より好ましくは1または2つの位置、さらにより好ましくは1つの位置で1以上の置換基により置換することができることを示す。該置換基には、例えば、限定されるものではないが、C−Cアルキル;ヒドロキシル;C−Cアルコキシル;アミノ;C−Cアミノアルキル;C−Cカルボニルオキシル;C−Cオキシカルボニル;フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などのハロゲン;シアノ;ニトロ;アジド;C−Cアルキルスルホニル;チオール;C−Cアルキルチオ;フェノキシルなどのアリールオキシル;−NR(C=NR)NR(RおよびRは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C10シクロアルキル、C−C18アリール、C−C17アラルキル、3〜10員ヘテロシクリルまたはそのアミノ基の保護基からなる群から独立に選択される)が含まれる。
【0048】
本発明の化合物
本発明の化合物は一般式(I)
−AA−AA−AA−AA−R
(I)
(式中、R、AA、AA、AA、AAおよびRは従前に定義した意味を有する)
で定義される。
【0049】
AAの場合の「単結合」とは、この場合にアミノ酸が存在しないことを意味する。よって、本発明のペプチド誘導体は、AAが存在する場合のテトラペプチド誘導体またはAAが単結合である場合のトリペプチド誘導体のいずれかである。
【0050】
およびR基はペプチド配列のアミノ末端およびカルボキシ末端に結合されている。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、AA、AA、AAおよびAA基はL(左旋)配置を有するアミノ酸に由来する。好ましい実施形態によれば、RはHまたはR−C(O)−からなる群から選択され、Rは置換または非置換C−C24アルキル基、置換または非置換C−C24アルケニル、置換または非置換C−C24アルキニル、置換または非置換C−C24シクロアルキル、置換または非置換C−C24シクロアルケニル、置換または非置換C−C24シクロアルキニル、置換または非置換C−C30アリール、置換または非置換C−C24アラルキル、置換または非置換3〜10員環ヘテロシクリル、ならびに2〜24個の炭素原子と1〜3個の炭素とは異なる原子と1〜3個の炭素原子のアルキル鎖の置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される。より好ましくは、RはH、アセチル、tert−ブタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、オレオイルおよびリノレオイルから選択される。いっそうより好ましくは、RはH、アセチル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルである。いっそうより好ましい実施形態では、R基はアセチルまたはパルミトイルである。
【0052】
別の好ましい実施形態によれば、Rは−NR、−ORまたは−SRであり、RおよびRはH、置換または非置換C−C24アルキル、置換または非置換C−C24アルケニル、置換または非置換C−C24アルキニル、置換または非置換C−C24シクロアルキル、置換または非置換C−C24シクロアルケニル、置換または非置換C−C24シクロアルキニル、置換または非置換C−C30アリール、置換または非置換C−C24アラルキル、置換または非置換3〜10員環ヘテロシクリル、ならびに1〜3個の炭素原子のアルキル鎖と、2〜24個の炭素原子および炭素とは異なる1〜3個の原子を有する置換または非置換芳香族ヘテロシクリル基とを含んでなるヘテロアリールアルキルからなる群から独立に選択される。場合により、RおよびRは飽和または不飽和炭素−炭素結合の手段により結合されて、窒素原子を有する環を形成していてもよい。より好ましくは、Rは−NRまたは−ORであり、RおよびRはH、置換または非置換C−C24アルキル、置換または非置換C−C24アルケニル、置換または非置換C−C24アルキニル、置換または非置換C−C10シクロアルキル、置換または非置換C−C15アリールおよび置換または非置換3〜10員ヘテロシクリル、3〜10員環と1〜3個の炭素原子のアルキル鎖とを有する置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から独立に選択される。
【0053】
いっそうより好ましくは、Rは−NRおよび−ORからなる群から選択され、RおよびRは同じであっても異なっていてもよい。より好ましくは、RおよびRはH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。より好ましくは、RはHであり、RはH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される。
【0054】
いっそうより好ましい実施形態によれば、Rは−OHおよび−NHからなる群から選択される。
【0055】
いっそうより好ましくは、Rはアセチルであり、Rは−OHである。
【0056】
本発明の実施形態によれば、AAは−Glu−であり、AAは−Met−であり、AAは−Ala−であり、AAは−Ile−である。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、AAは−Arg−であり、AAは−Ahx−であり、AAは−Ala−であり、AAは単結合である。
【0058】
本発明の別の実施形態によれば、AAは−Arg−であり、AAは−Phg−であり、AAは−Phg−であり、AAは単結合である。
【0059】
本発明の別の実施形態によれば、RはH、アセチル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Glu−であり、AAは−L−Met−であり、AAは−L−Ala−であり、AAは−L−Ile−であり、Rは−NRまたは−ORであり、RおよびRはH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシル基から独立に選択され、好ましくはRは−OHまたは−NHである。いっそうより好ましくは、Rはアセチルであり、Rは−OHである。
【0060】
本発明の別の実施形態によれば、RはH、アセチル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Arg−であり、AAは−Ahx−であり、AAは−L−Ala−であり、AAは単結合であり、Rは−NRまたは−ORであり、RおよびRはH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシル基から独立に選択され、好ましくは、Rは−OHまたは−NHである。いっそうより好ましくは、Rはアセチルであり、Rは−OHである。
【0061】
本発明の別の実施形態によれば、RはH、アセチル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルからなる群から選択され、AAは−L−Arg−であり、AAは−L−Phg−または−D−Phg−であり、AAは−L−Phg−または−D−Phg−であり、AAは単結合であり、Rは−NRまたは−ORであり、RおよびRはH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシル基から独立に選択され、好ましくは、Rは−OHまたは−NHである。いっそうより好ましくは、Rはアセチルであり、Rは−OHである。
【0062】
式(I)の化合物は好ましくは、
Ac−Arg−Phg−Phg−OH、
Ac−Glu−Phg−Ala−OH、
Ac−Arg−Phg−Ala−Ile−OH、
Ac−Arg−Ahx−Phg−Ile−OH、
H−Glu−Met−Ala−Ile−OH、
Ac−Arg−Met−Phg−Ile−OH、
Ac−Arg−Phg−Ala−OH、
Ac−Glu−Phg−Ala−Ile−OH、
Ac−Glu−Met−Phg−Ile−OH、
Ac−Arg−Ahx−Ala−OH、
Ac−Arg−Phg−Phg−NH−(CH15−CH
Palm−Glu−Met−Ala−Ile−NH
Ac−Arg−Ahx−Ala−Ile−OH、
Ac−Arg−Phg−Phg−Ile−OH、
Ac−Glu−Phg−Phg−Ile−OH、
Ac−Arg−Met−Ala−Ile−OH、および
Ac−Glu−Met−Ala−Ile−OH
からなる群から選択される。
【0063】
本発明のペプチド誘導体は立体異性体または立体異性体の混合物と存在する場合があり、例えば、それらを形成するアミノ酸は、互いに独立に選択されるL型配置、D型配置またはラセミ体を含み得る。よって、それに対して異性体または異性体混合物が存在する不斉炭素の数によって、異性体混合物、ならびにラセミ混合物またはジアステレオマー混合物、または純粋なジアステレオ異性体または鏡像異性体を得ることができる。本発明のペプチド誘導体の好ましい構造は純粋な異性体、すなわち、鏡像異性体またはジアステレオ異性体である。
【0064】
例えば、AAが−Glu−であり得ることが示されている場合には、AAは−L−Glu−、−D−Glu−または両者のラセミもしくは非ラセミ混合物から選択されると理解される。同様に、AAが−Met−であり得ることが示されている場合には、それは−L−Met−、−D−Met−または両者のラセミもしくは非ラセミ混合物であり得ると理解される。本明細書に記載されている方法は、当業者に、好適な配置を有するアミノ酸を選択する手段により、本発明のペプチド誘導体の各立体異性体を得ることを可能とする。
【0065】
よって、式(I)の化合物はいっそうより好ましくは、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Phg−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−D−Phg−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Phg−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−D−Phg−OH、
Ac−L−Glu−L−Phg−L−Ala−OH、
Ac−L−Glu−D−Phg−L−Ala−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−Ahx−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−Ahx−D−Phg−L−Ile−OH、
H−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Met−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Met−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Ala−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Ala−OH、
Ac−L−Glu−L−Phg−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−D−Phg−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Met−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Met−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−Ahx−L−Ala−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Phg−NH−(CH15−CH
Ac−L−Arg−L−Phg−D−Phg−NH−(CH15−CH
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Phg−NH−(CH15−CH
Ac−L−Arg−D−Phg−D−Phg−NH−(CH15−CH
Palm−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−NH
Ac−L−Arg−Ahx−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Phg−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Phg−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−D−Phg−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−D−Phg−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Met−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−OH、および
それらの混合物またはそれらの化粧上もしくは薬学上許容される塩
からなる群から選択される。
【0066】
本発明により提供されるペプチド誘導体の化粧上もしくは薬学上許容される塩も本発明の範囲内にある。「化粧上もしくは薬学上許容される塩」とは、一般に、動物、より詳しくはヒトにおける使用が認可された塩を意味し、塩基付加塩、例えば、限定されるものではないが、とりわけリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはアルミニウムなどの無機塩基付加塩、または例えば、限定されるものではないが、とりわけエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アルギニン、リシン、ヒスチジンまたはピペラジンなどの有機塩基付加塩のいずれか、あるいは酸付加塩、例えば、限定されるものではないが、とりわけ酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、コハク酸塩、オレイン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩またはグルコン酸塩などの有機酸付加塩または例えば、限定されるものではないが、とりわけ塩化物、硫酸塩、ホウ酸塩または炭酸塩などの無機酸付加塩のいずれかを形成するために用いられる塩が含まれる。化粧上または薬学上許容される限り、塩の性質は重要ではない。本発明のペプチド誘導体の化粧上もしくは薬学上許容される塩は、当技術分野の現状[Berge S.M., Bighley L. D. and Monkhouse B.C. (1977) "Pharmaceutical Salts" J. Pharm. Sci. 66:1-19]において周知の常法により得ることができる。
【0067】
製造方法
本発明のペプチド誘導体、それらの立体異性体またはそれらの化粧上もしくは薬学上許容される塩の合成は、例えば、固相ペプチド合成法[Stewart J. M. and Young J. D. (1984) "Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition" Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois; Bodanzsky M. and Bodanzsky A. (1984) "The practice of Peptide Synthesis" Springer Verlag, New Cork; Lloyd-Williams P., Albericio F. and Giralt E. (1997) "Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins" CRC, Boca Raton, FL, USA]、液相合成、固相合成および液相合成法の組合せ、または酵素的合成法[Kullmann W. (1980) "Proteases as catalysts for enzymic syntheses of opioid peptides" J.Biol.Chem. 255:8234-8238]などの、当技術分野の現状において公知の常法に従って行うことができる。ペプチド誘導体はまた、目的の配列を産生するために遺伝子工学により、または少なくとも目的の配列を含むペプチドフラグメントを遊離する動物または植物起源、好ましくは植物起源のタンパク質の制御加水分解により改変された、または改変されていない細菌株の発酵によって得ることもできる。
【0068】
例えば、式(I)の本発明のペプチド誘導体を得る方法は、
a.保護されたN末端と遊離のC末端を有するアミノ酸を、遊離のN末端と保護された、または固相支持体に結合されたC末端を有するアミノ酸と結合させる工程;
b.N末端の保護基を除去する工程;
c.この結合とN末端の保護基の除去の一連の手順a.〜b.を、目的の配列−AA−AA−AA−AA−配列を得るまで繰り返す工程;
d.C末端の保護基を除去するか、または固相支持体から切断する工程
を含んでなる。
【0069】
C末端は好ましくは固相支持体に結合され、このプロセスは固相上で行われるので、保護されたN末端と遊離のC末端を有するアミノ酸を、遊離のN末端とポリマー支持体に結合されたC末端を有するアミノ酸と結合させること;N末端の保護基を除去すること;およびこの一連の手順をこのようにしてトリペプチドまたはテトラペプチドを得るのに必要な回数だけ繰り返した後に、合成されたペプチドを元のポリマー支持体から切断することを含んでなる。
【0070】
アミノ酸の側鎖の官能基は、存在するとしても、合成中、一時的または永久的保護基で適切に保護されたまま維持され、ポリマー支持体からペプチドを切断するプロセスと同時に、または直交して(orthogonally)脱保護することができる。あるいは、固相合成は、ジペプチドまたはトリペプチドをポリマー支持体またはポリマー支持体に予め結合させたジペプチドもしくはアミノ酸と結合させるコンバージェント戦略の手段により行うこともできる。コンバージェント合成戦略は当業者に広く知られており、Lloyd-Williams P., Albericio F. and Giralt E. "Convergent solid-phase peptide synthesis" (1993) Tetrahedron 49:11065-11133に記載されている。
【0071】
式(I):
−AA−AA−AA−AA−R
(I)
の本発明のペプチド誘導体を得るためのプロセスの一例は、
遊離のC末端カルボキシル基を有する式(II):
PG−AA−OH
(II)
(式中、PGはN末端基の保護基であり、AAは従前に記載したようなアミノ酸部分(−AA−、−AA−または−AA−)である)
のフラグメントまたはその反応性誘導体を、N末端に少なくとも1つの遊離水素原子を含むアミノ基を有する相補的フラグメント(III):
H−AA−Sop
(III)
(式中、Sopは保護基または固相支持体であり、AAは従前に記載したようなアミノ酸部分−AA−または−AA−である)
と反応させ、その結果としてアミド型結合を形成し、アミノ酸分のペプチド鎖を拡張して式(IV):
PG−AA−AA−Sop
(IV)
のフラグメントを形成する工程;
このようにして得られたフラグメントを洗浄する工程;
このようにして形成されたフラグメントの保護基PGを切断して、遊離のN末端を有するフラグメント(V):
H−AA−AA−Sop
(V)
を得る工程;
この結合、洗浄および保護基の除去の一連の手順を式(VI):
PG−AA−AA−AA−AA−Sop
(VI)
(式中、PGは保護基であり、SopおよびAA−AA−AA−AAは従前に記載した意味を有する)
の前駆体を得るまで必要な回数だけ繰り返す工程
を含んでなる。
【0072】
このプロセスは、当技術分野で公知の標準的なプロセスおよび条件を用い、同一の順序でN末端およびC末端に関して脱保護し、かつ/またはフラグメント(VI)を支持体から切断し、その後、これらの末端の官能基が修飾できるという付加的工程を含み得る。このアミノ末端およびカルボキシ末端の任意の修飾は、ポリマー支持体に固定された式(I)のペプチドを用いて、またはペプチドがひと度ポリマー支持体から切断されたところで行うことができる。例えば、まず、N末端を脱保護すれば、式(VII):
H−AA−AA−AA−AA−Sop
(VII)
のフラグメントが得られる。
【0073】
場合により、他のタイプのR基を、好適な塩基および溶媒の存在下での求核置換反応の手段による、(VII)と化合物R−X(式中、Rは従前に記載した意味を有し、Xは、例えば、限定されるものではないが、とりわけトシル基、メシル基およびハロゲン基などの脱離基である)の反応の手段により導入することもでき、N−C結合の形成に関与しない該フラグメントの官能基は、存在するとしても、一時的または永久的保護基で適切に保護される。
【0074】
得られたフラグメントは、適当で有れば、脱保護するか、または固相支持体から切断して、Rが−OH、−NHまたは−SHである式(I)のペプチドである式(VIII)の化合物を得ることができる。場合により、および/または加えて、他のR基を、とりわけ、好適な溶媒および例えばN,N−ジイソプロピルエチルアミンもしくはトリエチルアミンなどの塩基、または例えば1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)もしくは1−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール(HOAt)などの添加剤および例えばカルボジイミド、ウラン塩、ホスホニウム塩もしくはアミジニウム塩などの脱水剤の存在下で、Rが−OR、−NRまたは−SRである化合物HRとRが−OHである式(VIII)に相当する相補的フラグメント(IX):
−AA−AA−AA−AA−OH
(IX)
を反応させる手段により、あるいは例えば塩化チオニルを用いたハロゲン化アシルを予め形成させる手段により導入して、一般式(I)の本発明によるペプチド誘導体を得ることもでき(N−C結合の形成の際に関与しない該フラグメントの官能基は、存在するとしても、一時的または永久的保護基で適切に保護される)、あるいは、他のR基は、ポリマー支持体からペプチド誘導体を切断するプロセスと同時に組み込む手段により導入することもできる。
【0075】
当業者ならば、当技術分野で公知のプロセスに従い[Smith, M. B. and March, J. (1999) "March's Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure", 5th Edition, John Wiley & Sons, 2001]、C末端およびN末端の脱保護/切断と次のそれらの誘導体化の工程を同一の順序で行うことができることが容易に理解できるであろう。
【0076】
「保護基」とは、有機官能基をブロックし、制御された条件下で除去することができる基に関する。保護基、それらの相対的反応性およびそれらが不活性を維持する条件は当業者に公知である。
【0077】
アミノ基の代表的保護基の例は、酢酸アミド、安息香酸アミド、ピバリン酸アミドなどのアミド;とりわけベンジルオキシカルボニル(Cbz)、p−ニトロベンジルオキシカルボニル(pNZ)、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル(Troc)、2−(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル(Teoc)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)などのカルバメートであり、好ましくは、BocまたはFmocである。
【0078】
カルボキシル基の代表的な基の例は、とりわけtert−ブチル(tBu)エステル、アリル(All)エステル、トリフェニルメチルエステル(トリチル(Trt)エステル)、シクロヘキシル(cHex)エステル、ベンジル(Bzl)エステル、o−ニトロベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、トリメチルシリルエチルエステルなどのエステルであり、本発明の好ましい保護基はアリル、tert−ブチル、シクロヘキシル、ベンジルおよびトリチルエステルである。
【0079】
三官能性アミノ酸は、存在するとしても、合成プロセス中、アミノ末端およびカルボキシ末端の保護基と直交する一時的または永久的保護基で保護される。アルギニンのグアニジン基は、とりわけ2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル(Pmc)、2,2,4,6,7−ペンタメチル−ジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル(Pbf)、パラ−トルエンスルホニル(トシル、Tos)または4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)基で保護することができ、グルタミン酸のカルボキシル基は、とりわけtert−ブチル(tBu)基、トリチル(Trt)基、シクロヘキシル(cHex)基、ベンジル(Bzl)基またはアリル(All)基で保護することができる。
【0080】
好ましい実施形態では、用いる保護基戦略は、アミノ基がBocの手段により保護カルボキシル基がBzl、cHexまたはAllの手段により保護され、アルギニン側鎖がMtrまたはTosで保護され、グルタミン酸側鎖がBzl、cHexまたはAllで保護される戦略である。
【0081】
別の好ましい実施形態では、用いる保護基戦略は、アミノ基がFmocの手段により保護され、カルボキシル基がtBu、AllまたはTrtの手段により保護され、アルギニン側鎖がPmcまたはPbfで保護され、グルタミン酸側鎖がtBu、AllまたはTrtで保護される戦略である。
【0082】
これら、また、さらなる保護基、それらの導入およびそれらの除去の例は、文献[Greene T. W. and Wuts P. G. M., (1999) "Protective groups in organic synthesis" John Wiley & Sons, New York; Atherton B. and Sheppard R. C. (1989) "Solid Phase Peptide Synthesis: A practical approach" IRL Oxford University Press]に記載されている。「保護基」という用語にはまた、固相合成で用いられるポリマー支持体も含む。
【0083】
合成が完全に、または部分的に固相上で行われる場合、本発明の方法で用いられる固相支持体として以下のものを挙げることができる:ポリスチレンおよびポリエチレングリコールグラフトポリスチレンなど、例えば、限定されるものではないが、p−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂[Matsueda G. R. and Stewart J. M. (1981) "A p-methylbenzhydrylamine resin for improved solid- phase synthesis of peptide amides" Peptides 2:45-50]、2−クロロトリチル樹脂[Barlos K., Gatos D., Kallitsis J., Papaphotiu G., Sotiriu P., Wenqing Y. and Schafer W. (1989) "Darstellung geschutzter Peptid-fragmente unter Einsatz substituierter Triphenylmethyl-harze" Tetrahedron Lett. 30:3943-3946; Barlos K., Gatos D., Kapolos S., Papaphotiu G., Schafer W. and Wenqing Y. (1989) "Veresterung von partiell geschutzten Peptid-fragmenten mit Harzen. Einsatz von 2-Chlorotritylchlorid zur Synthese von Leu15 -gastrin I" Tetrahedron Lett. 30:3947-3951]、TentaGel(登録商標)(Rapp Polymere GmbH)、ChemMatrix(登録商標)樹脂(Matrix Innovation, Inc)などからなる支持体[これらは、脱保護およびポリマー支持体からのペプチドの同時除去を可能とする5−(4−アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシ)吉草酸(PAL)[Albericio F., Kneib-Cordonier N., Biancalana S., Gera L., Masada R.I., Hudso
n D. and Barany G. (1990) "Preparation and application of 5- (4- (9- fluorenylmethyloxycarbonyl) aminomethyl-3,5-dimethoxy-phenoxy)-valeric acid (PAL) handle for the solid-phase synthesis of C-terminal peptide amides under mild conditions" J. Org. Chem. 55:3730-3743]、2−[4−アミノメチル−(2,4−ジメトキシフェニル)]フェノキシ酢酸(AM)[Rink H. (1987) "Solid-phase synthesis of protected peptide fragments using to trialkoxy-diphenyl-methylester resin" Tetrahedron Lett. 28:3787-3790]、Wang[Wang S. S. (1973) "p-Alkoxybenzyl Alcohol Resin and p-Alkoxybenzyloxycarbonylhydrazide Resin for Solid Phase Synthesis of Protected Peptide Fragments" J.Am.Chem. Soc. 95:1328-1333]などの反応しやすいリンカーを含んでも含まなくてもよい]。
【0084】
化粧組成物または医薬組成物
本発明のペプチド誘導体は、ペプチド誘導体と哺乳類の身体、好ましくはヒトの身体におけるその作用部位との接触を生じさせる任意の手段によりhBD合成を刺激するために、それらを含有する組成物の形態で投与することができる。
【0085】
この意味において、本発明の別の態様は、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド組成物、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を少なくとも1種類の化粧上もしくは薬学上許容されるアジュバントとともに含んでなる化粧組成物または医薬組成物である。該組成物は当業者に公知の常法の手段により製造することができる["Harry' s Cosmeticology", Eighth edition (2000J Rieger M. M. , ed. , New York Chemical Pub., NY, US; "Remington: The Science and Practice of Pharmacy", Twentieth edition (2003) Genaro A. R. , ed., Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, US]。
【0086】
本発明のペプチド誘導体は、それらの配列の性質またはそれらが持っているアミノ末端および/またはカルボキシ末端における可能性のある修飾によって、種々の水溶解度を持つ。よって、本発明のペプチド誘導体は、水溶液の手段により組成物に組み込むことができ、水溶性でないものは、例えば、限定されるものではないが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、ブチレングリコールまたはポリエチレングリコールまたはそれらの組合せなどの化粧上もしくは薬学上許容される通常の溶媒で可溶化させることができる。症状、障害および/または病態を処置するために投与しなければならない本発明のペプチド誘導体の化粧上または薬学上有効な量、ならびにそれらの用量は、患者の年齢、症状、障害または病態の重篤度、投与経路および頻度、ならびに用いるペプチド誘導体の特定の性質を含む、いくつかの因子によって異なる。
【0087】
「化粧上または薬学上有効な量」とは、無毒であるが、目的の効果を提供するのに十分なペプチド誘導体または誘導体の量として理解される。本発明のペプチド誘導体は、目的の効果を達成するのに化粧上または薬学上有効な濃度で本発明の化粧組成物または医薬組成物に使用され、好ましくは、組成物の総重量に対して0.00000001%(重量)〜20%(重量);好ましくは0.000001%(重量)〜20%(重量)、より好ましくは0.0001%(重量)〜10%(重量)、より詳しくは0.0001%(重量)〜5%(重量)である。
【0088】
本発明のペプチド誘導体はまた、化粧品または医薬徐放系および/または送達系に組み込むこともできる。
【0089】
「送達系」とは、本発明のペプチド誘導体が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤または担体に関する。このような化粧品または医薬担体は、例えば、限定されるものではないが、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、ヒマシ油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、硫酸エーテル、硫酸塩、ベタイン、グルコシド、マルトシド、脂肪アルコール、ノノキシノール、ポリキサマー、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、デキストロースおよびグリセロールなど、石油、動物、植物または合成起源のものを含む水、オイルまたは界面活性剤などの液体であり得る。E. W. Martinによる"Remington's Pharmaceutical Sciences"には、好適な担体としての希釈剤、アジュバントまたは賦形剤が記載されている。
【0090】
「徐放性」とは、慣例の意味において、一定の時間に該化合物が徐々に放出される化合物の送達系に関して用いられ、必須ではないが、一定の時間中、化合物の放出レベルが一定であることが好ましい。
【0091】
徐放出または送達系の例としては、リポソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子および固体脂質ナノ粒子、スポンジ、小胞、ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェアおよびナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、ならびにマイクロエマルションおよびナノエマルションがあり、有効成分のより高い浸透を達成するため、かつ/またはその薬物動態特性および薬力学的特性を改良するために添加することができる。
【0092】
徐放性処方物は、当技術分野の現状で公知の方法の手段により製造することができ、それらを含有する組成物は、例えば、粘着パッチおよび非粘着パッチを含む局所投与により、または例えば、限定されるものではないが、経口、鼻腔、直腸経路、移植もしくは皮下注射などの全身投与により、または身体の特定の部分への移植もしくは直接注射により投与することができ、それらは好ましくは比較的一定量の本発明のペプチド誘導体を放出しなければならない。徐放性処方物に含まれるペプチド誘導体の量は、例えば、投与部位、本発明のペプチド誘導体の放出の速度および持続時間、ならびに治療または予防される症状、障害および/または病態の性質によって異なる。
【0093】
本発明のペプチド誘導体はまた、例えば、限定されるものではないが、とりわけタルク、ベントナイト、シリカ、デンプンまたはマルトデキストリンなどの固体有機ポリマーまたは固体無機質支持体に吸着させることもできる。
【0094】
本発明のペプチド誘導体はまた、身体の皮膚、粘膜、頭皮および/または爪に直接接触する布、不織布および医療装置に、その布、不織布および医療装置に固定するための系の生分解によるか、またはそれらと身体の摩擦によるか、身体の水分によるか、皮膚のpHによるか、もしくは体温により本発明のペプチド誘導体を放出するように組み込むこともできる。同様に、布および不織布は、身体に直接接触する衣類を製造するために使用することもできる。好ましくは、本発明のペプチド誘導体を含有する布、不織布および医療装置は、微生物増殖による、または微生物増殖のリスクがある皮膚の症状、障害および/または病態の処置、保護および/または洗浄のため、または開放創の処置に用いられる。
【0095】
上記の送達系および/または徐放系を含む、ペプチド誘導体を固定化するための布、不織布、衣類、医療装置および手段の例は文献に記載され、当技術分野の現状において公知である[Schaab CK. (1986) "Impregnating Fabrics With Microcapsules", HAPPI May 1986; Nelson G. (2002) "Application of microencapsulation in textiles" Int. J. Pharm. 242:55-62; "Biofunctional Textiles and the Skin" (2006) Curr. Probl. Dermatol, v.33, Hipler U. C. and Eisner P., eds . S. Karger AG, Basel, Switzerland; Malcom R. K., McCullagh S. D., Woolfson A. D., Gorman S. P., Jones D. S. and Cuddy J. (2004) "Controlled release of a model antibacterial drug from a novel self-lubricating silicone biomaterial" J. Cont. Release 97:313-320]。好ましい布、不織布、衣類および医療装置は、帯布、ガーゼ、Tシャツ、ソックス、パンティーストッキング、下着、ガードル、手袋、おむつ、生理用ナプキン、包帯、ベッドスプレッド、ワイプ、ヒドロゲル、粘着パッチ、非粘着パッチおよび/またはフェースマスクである。
【0096】
本発明のペプチド誘導体、それらの立体異性体、それらの混合物、またはそれらの化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧品または医薬製剤は、場合により、所望の投与形の処方に必要な化粧上もしくは薬学上許容される賦形剤を含んでよい局所適用または経皮的用の種々のタイプの処方物に使用することができる[Fauli i Trillo C. (1993) "Tratado de Farmacia Galenica", Luzan 5, S. A. Editions, Madrid]。
【0097】
局所適用または経皮適用処方物は、例えば、限定されるものではないが、クリーム、多相エマルション(例えば、限定されるものではないが、水中油および/またはシリコーン型エマルション、油および/またはシリコーン中水型エマルション、水/油/水または水/シリコーン/水型エマルションおよび油/水/油またはシリコーン/水/シリコーン型エマルションなど)、無水組成物、水性分散液、オイル、ミルク、バルサム、フォーム、ローション、ゲル、ヒドロアルコール溶液、塗布剤、漿液、石鹸、シャンプー、軟膏(unguents)、ムース、軟膏(ointments)、パウダー、バー、ペンシルおよびスプレーまたはエアゾールなど(洗い流さない処方物および洗い流す処方物を含む)の任意の固体、液体または半固体投与形で提供することができる。これらの局所適用または経皮適用処方物は、当業者に公知の技術の手段により、例えば、限定されるものではないが、ワイプ、ヒドロゲル、粘着パッチ、非粘着パッチまたはフェースマスクなどの種々のタイプの固体付属品に組み込むことができ、あるいはとりわけメイクアップファンデーション、メイクアップリムーバルローション、メイクアップリムーバルミルク、コンシーラー、アイシャドウ、リップスティック、リッププロテクター、リップグロスおよびパウダーなどの種々のメイクアップ系製品に組み込むことができる。本発明のペプチド誘導体を含有する化粧組成物または医薬組成物はまた、とりわけネールポリッシュ、ネイルポリッシュリムーバルローションおよび角質リムーバルローションなどの爪および角質の処置、保護および/または洗浄のための製品に組み込むことができる。
【0098】
本発明の化粧組成物または医薬組成物は、例えば、限定されるものではないが、とりわけジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)、アルコール、アセトン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど、本発明のペプチド誘導体の経皮吸収を増強する薬剤を含み得る。本発明の化粧組成物または医薬組成物は同様に、本発明のペプチド誘導体のより高い浸透を達成するために、イオン導入法、超音波導入法、エレクトロポレーション、閉鎖処置、マイクロインジェクション、または例えば酸素圧による注射などの圧力の手段による無針注射の手段、またはそれらの組合せにより、処置される局部領域に適用することができる。適用領域は、予防または治療される症状、障害および/または病態の性質により決定される。
【0099】
本発明のペプチド誘導体、それらの立体異性体、またはそれらの化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物は同様に、それらの経口投与のための種々のタイプの処方物で、好ましくは、例えば、限定されるものではないが、ゼラチンカプセル剤を含むカプセル剤、糖衣錠を含む錠剤、散剤、粒状剤形、チューインガム、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、ゼリーまたはゼラチンなどの経口化粧品の形態で、ならびに当業者に公知の他のいずれかの剤形で使用することができる。特に、本発明のペプチド誘導体は、機能性食品または栄養強化食品の形態で、例えば、限定されるものではないが、栄養バーまたはコンパクトもしくは非コンパクトパウダーの形態で組み込むことができる。該パウダーは水、ソーダ、乳製品、大豆誘導体中で可溶化させることができるか、あるいは栄養バーに組み込むことができる。本発明のペプチド誘導体は、例えば、限定されるものではないが、食品産業で一般的な脂肪成分、水性成分、保湿剤、保存剤、テクスチャー剤、香味剤、アロマ、抗酸化剤および着色剤などの経口組成物または食品サプリメントに有用である賦形剤およびアジュバントとともに処方することができる。
【0100】
本発明のペプチド誘導体、それらの立体異性体、それらの混合物、またはそれらの化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物は、他のいずれかのタイプの好適な経路、例えば、経口または非経口経路に加えて、局所経路または経皮経路により投与することができ、このために、それらは、目的の投与形の処方に必要な薬学上許容される賦形剤を含む。)
【0101】
本発明に関して「非経口」とは、鼻腔経路、直腸経路、皮下注射、皮内注射、例えば静脈内などの血管内注射、筋肉内、硝子体内、脊髄、頭蓋内、関節内、くも膜下腔内および腹腔内注射、ならびに他のいずれかの類似の注射または注入技術を含む。有効成分の種々の医薬投与形およびそれらを得るのに必要な賦形剤に関する総説は、例えば、"Tratado de Farmacia Galenica", C. Faul? i Trillo, 1993, Luzan 5, S. A. Editions, Madridに見出すことができる。
【0102】
本発明に記載されている化粧組成物または医薬組成物に含まれる化粧上もしくは薬学上許容されるアジュバントとしては、組成物の残りの成分と、特に、本発明の組成物に含まれる一般式(I)のペプチド誘導体と物理的および化学的に適合する限り、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の処置、保護および/または洗浄のための組成物に一般に用いられる付加的成分、例えば、限定されるものではないが、とりわけメラニン合成刺激または阻害剤、美白または脱色剤、色素沈着促進剤(propigmentation agents)、日焼け剤、アンチエージング剤、NO−シンターゼ阻害剤、抗酸化剤、フリーラジカル−スカベンジャーおよび/または抗大気汚染剤、糖化防止剤、乳化剤、保湿剤、有機溶媒、液体噴射剤、皮膚コンディショナー(例えば、保湿剤)、水分を保持する物質、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、モイスチャライザー、ビタミン、顔料または着色剤、色素、ゲル化ポリマー、増粘剤、界面活性剤、軟化剤、しわ改善剤、目の下のたるみを軽減または処置することができる薬剤、剥離剤、抗菌剤、殺真菌剤、制真菌剤、殺菌剤、静菌剤、真皮または上皮高分子の合成を刺激し、かつ/またはそれらの分解を阻害もしくは予防することができる薬剤、例えば、コラーゲン合成刺激剤、エラスチン合成刺激剤、デコリン合成刺激剤、ラミニン合成刺激剤、その他のデフェンシン合成刺激剤、シャペロン合成刺激剤、ヒアルロン酸合成刺激剤、脂質および角質層の成分(セラミド、脂肪酸など)の合成を刺激する薬剤、コラーゲン分解阻害剤、エラスチン分解阻害剤、繊維芽細胞増殖刺激剤、ケラチノサイト増殖刺激剤、ケラチノサイト分化刺激剤、脈管形成刺激剤、皮膚弛緩剤、グリコサミノグリカン合成刺激剤、DNA再対合剤、DNA保護剤、かゆみ止め、敏感皮膚の処置剤、固化剤、妊娠線防止剤、収斂剤、皮脂生産調節剤、脂肪分解刺激剤、セルライト防止剤、治癒刺激剤、治癒補助剤、サイトカイン増殖因子、鎮静剤、抗炎症剤、毛細血管循環および/または微小循環に作用する薬剤、細胞代謝に作用する薬剤、真皮−上皮接合の改善を意図した薬剤、保存剤、香料、キレート剤、植物抽出物、エッセンシャルオイル、海産抽出物、生物発酵プロセスから得られる薬剤、無機塩、細胞抽出物およびサンスクリーン(紫外線Aおよび/またはBに対して活性な有機または無機の光保護剤)が含まれる。同様に、前記付加的成分の性質は、本発明のペプチド誘導体の利益を許容できないほど変更してはならない。前記付加的成分は合成または天然(例えば植物抽出物など)であってよく、あるいは生物発酵プロセスから得ることもできる。さらなる例がCTFA Cosmetic Ingredient Handbook, Eleventh Edition (2006)に記載されている。
【0103】
本発明のさらなる態様は、化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩とさらに化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の、デフェンシン合成誘導活性を有する抽出物、例えば、限定されるものではないが、とりわけアロエベラ、ローストアマランス(Roast amaranth)、ジオウ(Rehmannias radix)、アルニカ、クチナシ、ニンジン、オレンジ、モモ、パイナップル、ミント、リンドウ、ハイビスカス花、クルミノキの葉、カボチャ、ボタン、キノア、ボルドー、サルサパリラ、ヒマワリ、ニワトコの実、海藻の抽出物または加水分解物、トウモロコシ加水分解物、ダイズ加水分解物またはコメ加水分解物、および/またはさらに化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の、デフェンシン発現刺激有効性を有する合成化合物、抽出物、または生物発酵プロセスから得られる産物、例えば、限定されるものではないが、とりわけイソロイシンおよびその異性体および誘導体、バリンおよびその異性体および誘導体、カルシウムおよびその塩、α−MSHおよびα−MSHのアミノ酸配列に含まれるフラグメント、ビタミンAおよびその誘導体および前駆体、ビタミンD3およびその誘導体、ジャスモン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸、アジピン酸、酒石酸、桂皮酸、グルタミン酸、コハク酸、イヌリン、アルキルグルコシド、ポリ−D−グルタミン酸、グリシン、L−メチオニン、L−アラニン、L−シトルリン、ラクトタンパク質、カゼイン、ラクトペルオキシダーゼ、リゾチーム、ポリフェノール、乳酸菌抽出物、フゾバクテリウム抽出物または非光合成、不稔(non-fructifying)繊維状細菌を含有する化粧組成物または医薬組成物に関する。
【0104】
本発明の化粧組成物または医薬組成物はまた、化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の殺菌剤および/または静菌剤および/または殺真菌剤および/または制真菌剤、例えば、限定されるものではないが、カプリリルグリコール、イミダゾリジニル尿素、4−ヒドロキシ安息香酸メチル[INCI:メチルパラベン]、4−ヒドロキシ安息香酸エチル[INCI:エチルパラベン]、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル[INCI:プロピルパラベン]、4−ヒドロキシ安息香酸ブチル[INCI:ブチルパラベン]、4−ヒドロキシ安息香酸イソブチル[INCI:イソブチルパラベン]、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチルイミダゾリジン−2,4−ジオン[INCI:DMDMヒダントイン]、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル[INCI:ベンジルパラベン]、ベンジルアルコール、デヒドロ酢酸、安息香酸、ソルビン酸、サリチル酸、ギ酸、プロピオン酸、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、3−p−クロロフェノキシ−1,2−プロパンジオール[INCI:クロルフェネシン]ジクロロベンジルアルコール、ブチルカルバミン酸ヨードプロピニル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、エタノール、イソプロパノール、メタノール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、ペンチレングリコール、ラウリン酸グリセリン、カプリル酸グリセリン、カプリン酸グリセリン、過酸化ベンゾイル、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、フェノキシエタノール、テルピネン−4−オール、α−テルピネオール、レゾルシノール、スチエマイシン(stiemycin9、エリスロマイシン、ネオマイシン、クリンダマイシンおよびそれらのエステル、テトラサイクリン、メトロニダゾール、アゼライン酸、トルナフテート、ナイスタチン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ジンクピリチオン、酸化亜鉛、イソチアゾリノン、硫化セレン、ベンジルヘミフォーマル、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、6,6−ジブロモ−4,4−ジクロロ−2,2’−メチレンジフェノール[INCI:ブロモクロロフェン]、5−ブロモ−5−ニトロ−1,3−ジオキサン、トシルクロラミドナトリウム[INCI:クロラミンT]、クロロアセトアミド、p−クロロ−m−クレゾール、2−ベンジル−4−クロロフェノール[INCI:クロロフェン]、ジメチルオキサゾリジン、ドデシルジメチル−2−フェノキシエチルアンモニウムブロミド[INCI:臭化ドミフェン]、7−エチルビシクロオキサゾリジン、グルタルアルデヒド、N−(4−クロロフェニル)−N−[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]−尿素[INCI:クロフルカルバン]、ヘキセチジン、2−ヒドロキシ−4−イソプロピル−2,4,6−シクロヘプタトリエン−1−オン[INCI:ヒノキチオール]、イソプロピルメチルフェノール、水銀塩、アルミニウム塩、ナイシン、フェノキシイソプロパノール、o−フェニルフェノール、3−ヘプチル−2−[(3−ヘプチル−4−メチル−3H−チアゾール−2−イリデン)メチル]−4−メチルチアゾリウムヨージド[INCI:クォーターニウム−73]、塩化銀、ヨウ素酸ナトリウム、チモール、ウンデシレン酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ラクトペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラクトフェリンおよび/または化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の、固有の殺菌活性、静菌活性、殺真菌活性および/または制真菌活性を有する天然抽出物もしくはエッセンシャルオイル、例えば、限定されるものではないが、とりわけニンニク(Allium sativum)、キンセンカ(Calendula officinalis)、ジャーマンカモミール(Chamomilla recutita)、エキナセア(Echinacea Purpura)、ヒソップ(Hyssopus Officinalis)、メラレウカ(Melaleuca alternifolia)の抽出物またはティーツリーオイルを、β−デフェンシンの殺菌効果および/または静菌効果とこれらの薬剤の効果を組み合わせるためにさらに含み得る。
【0105】
同様に、本発明の化粧組成物または医薬組成物は、微生物増殖とともに生じる炎症プロセスに伴う腫脹および刺激作用を軽減する目的で、化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の鎮痛化合物および/または抗炎症化合物をさらに含み得る。前記化合物には、ヒドロコルチゾン、クロベタゾール、デキサメタゾン、プレドニゾン、パラセタモール、アセチルサリチル酸、アモキシプリン、ベノリレート、サリチル酸コリン、ジフルニサル、ファイスラミン(faislamine)、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、サルサレート、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、ブロムフェナク、エトドラック、インドメタシン、スリンダック、トルメチン、イブプロフェン、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、スプロフェン、メフェナム酸、メクロフェナム酸塩、メクロフェナム酸、ナブメトン、フェニルブタゾン、アザプロパゾン、メタミゾール、オキシフェンブタゾン、スルフィンピラゾン、ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ニメスリド、リコフェロン、ω−3脂肪酸およびそれらの生物代謝産物、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジアモルヒネ、ペチジン、トラマドール、ブルペノルフィン、ベンゾカイン、リドカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、プロカイン、三環式抗鬱薬、アミトリプチリン、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、ビサボロール、パンテノール、ビオチン、ラウリミノ二プロパン酸二ナトリウムリン酸トコフェリル、シクロピロキソラミン、ノルジヒドログアイアレチン酸、Q10補酵素もしくはアルキルグリセリンエーテルなどの合成化合物、または固有の鎮痛活性および/または抗炎症活性を有する天然抽出物またはエッセンシャルオイル、例えば、限定されるものではないが、とりわけマデカッソシド、エキナシン、アマランス種子油、ビャクダン油、胎盤抽出物、モモの木の葉の抽出物、アロエベラ、アーニカ・モンタナ(Arnica montana)、オオヨモギ(Artemisia vulgaris)、パンダカンアオイ(Asarum maximum)、キンセンカ(Calendula officinalis)、トウガラシ属(Capsicum)、センチペダカニンガミ(Centipeda cunninghamii)、ジャーマンカモミール(Chamomilla recutita)、ハマユウ(Crinum asiaticum)、ハマメリス(Hamamelis virginiana)、デビルスクロウ(Harpagophytum procumbens)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、マドンナリリー(Lilium candidum)、ウスベニアオイ(Malva sylvestris)、ティーツリー(Melaleuca alternifolia)、マジョラム(Origanum majorana)、セイヨウシロヤナギ(Salix alba)、マリアアザミ(Silybum marianum)、ナツシロギク(Tanacetum parthenium)またはキャッツクロー(Uncaria guianensis)が含まれる。
【0106】
さらに、本発明は、化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の、一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩と、さらに治癒活性および/または再上皮化活性を有するか、または治癒プロセスおよび/または再上皮化プロセスにおいて補助剤として有用な化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の抽出物、例えば、限定されるものではないが、とりわけ、ペガガ(Centella asiatica)、ロサ・モスカータ(Rosa moschata)、エキナセア・アングスティフォリア(Echinacea angustifolia)、コンフリー(Symphytum officinal)、スギナ(Equisetum arvense)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、ミモザ(Mimosa tenuiflora)、アロエベラの抽出物、Provitalにより市販されているポリプラント(登録商標)エピセライジング(Polyplant Epithelizingg)[INCI:キンセンカ(Calendula Officinalis)、セイヨウオトギリソウ(Hypericum perforatum)、ジャーマンカモミール(Chamomilla Recutita)、ローズマリー(Rosmarinus Officinalis)]、Laboratories Serobiologiquesにより市販されているCytokineol(登録商標)LS 9028[INCI:加水分解カゼイン、加水分解酵母タンパク質、リシンHCl]またはColetica/Engelhardにより市販されているDeliner(登録商標)[INCI:トウモロコシ(Zea May)種実抽出物]、または抽出物の組合せ、および/またはさらに、治癒活性および/または再上皮化活性を有するか、または治癒プロセスおよび/または再上皮化プロセスにおいて補助剤として有用な、化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の合成化合物、抽出物または生物発酵プロセスから得られる産物、例えば、限定されるものではないが、とりわけカドヘリン、インテグリン、セレクチン、ヒアルロン酸受容体、免疫グロブリン、繊維芽細胞増殖因子、結合組織増殖因子、血小板由来増殖因子、血管内皮増殖因子、上皮細胞増殖
因子、インスリン様増殖因子、ケラチノサイト増殖因子、コロニー刺激因子、トランスフォーミング増殖因子β、腫瘍壊死因子−α、インターフェロン、インターロイキン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体、Antarcticine(登録商標)[INCI:シュードアルテロモナス・ファーメント(Pseudoalteromonas Ferment)抽出物]またはLipotecにより市販されているDecorinyl(登録商標)[INCI:トリペプチド−10シトルリン]を含んでなる化粧組成物または医薬組成物に関する。
【0107】
適用
本発明の別の態様は、内在性デフェンシン合成の刺激および/または該処置に伴う洗浄から利益を受ける、哺乳類、好ましくはヒトの症状、障害および/または病態を処置および/または保護するための化粧的または薬学的方法に関し、その方法は、有効量の少なくとも1種類の、一般式(I)のペプチド組成物、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を、好ましくはそれらを含有する化粧組成物または医薬組成物の形態で投与することを含んでなる。本発明はさらに、生物の防御、好ましくは皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の防御を刺激するための化粧的または医薬的方法を提供する。同様に、本発明は、外科的介入後、インテンスパルス光(IPL)療法による処置後、単色パルス光(レーザー)療法による処置後、化学角質溶解剤による処置後、または例えば日光もしくは極端な低温もしくは極端な熱への過剰曝露などの攻撃的な外的因子への過剰曝露の後に、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の防御を刺激するための化粧的または薬学的方法を提供する。
【0108】
同様に、本発明は、微生物増殖による、または微生物増殖のリスクがある皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の症状、障害および/または病態の処置および/または保護、および/または前記処置に伴う洗浄のための化粧的または薬学的方法を提供し、その方法は、少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物の皮膚、粘膜、頭皮および/または爪への適用、または経口もしくは非経口投与を含んでなる。
【0109】
好ましくは、微生物増殖により引き起こされる、または微生物増殖のリスクがある、処置および/または保護される皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の症状、障害および/または病態としては、座瘡、丹毒、ヘルペス、ふけ、白斑、細菌性皮膚病、真菌性皮膚病、湿疹、敏感皮膚、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、おむつかぶれ、陰部カンジダ症、粘膜カンジダ症(例えば、限定されるものではないが、膣カンジダ症、指間カンジダ症または糖尿病に伴うカンジダ症)、細菌性膣症、膿痂疹、毛包炎、腫脹、酒さ、爪囲炎、癜風、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、紅色陰癬、皮膚糸状菌症、例えば、限定されるものではないが、Hebra頑癬、頭皮白癬、体部白癬、足部白癬または水虫、歯肉炎、虫歯、歯周炎、皮膚トリコスポロン症または白色砂毛症、爪真菌症(ungueal mycosis or onychomycosis)、潰瘍、創傷または火傷治癒過程で起こる感染症合併症、眼科感染、抗生物質処置による、または抗真菌剤処置による、または職業的曝露による、またはハイリスクスポーツの実践による、またはホルモン調節不全(例えば妊娠)による皮膚障害、または免疫不全患者、例えば、限定されるものではないが、とりわけAIDS患者または癌処置を受けている患者、またはストレス状況下の人に起こる感染性合併症、口臭、臭汗症、毛髪および/または頭皮のべたつき、またはとりわけ放線菌属(Actinomyces)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium pefringens)、ニキビダニ(Demodex folliculorum)、鼠径表皮菌(Epidermophyton floccosum)、大腸菌(Escherichia coli)、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、クレブシェラ種(Klebsiella spp.)、マラセジア・ファーファ(Malazessia furfur)、マイコバクテリア種(Mycobacterium spp.)、ペプトストレプトコッカス種(Peptostreptococcus spp.)、ピチロスポルム・オバル(Pityrosporum ovale)、座瘡菌(Propionibacterium acnes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)、ストレプトピオゲネス(Streptopyogenes)、頭部白癬(Tinea capitis)、体部白癬(Tinea corporis)、趾間菌(Trichophyton interdigitale)、毛瘡菌(Trichophyton mentagrophytes)、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・ヤウンデイ(Trichophyton yaoundei)またはトリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)の増殖により引き起こされるその他の皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の症状、障害および/または病態が含まれる。皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の微生物、ならびに症状、障害および/または病態のさらなる例は、"The Skin Microflora and Microbial Skin Disease", Noble W. C, ed., University of London, Cambridge University Press, UKに記載されている。
【0110】
本発明はさらに、少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物の爪および/または角質への適用を含んでなる、爪および/または角質の感染症を予防または治療するための化粧的または薬学的方法を提供する。
【0111】
本発明は、少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物の経口または非経口投与または発汗により影響を受ける領域、好ましくは腋下、生殖器または足への適用を含んでなる、臭汗症を予防または治療するための化粧的または薬学的方法を提供する。
【0112】
同様に、本発明は、少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物の、粘膜への適用または経口もしくは非経口投与を含んでなる、粘膜感染を予防または治療するための化粧的または薬学的方法を提供する。
【0113】
本発明はさらに、少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物の口腔への適用、または経口もしくは非経口投与を含んでなる、口腔粘膜の処置または口腔衛生のための化粧的または薬学的方法を提供する。好ましくは、口腔衛生のための組成物は、口臭、歯肉炎および/または歯周炎の治療または予防のための組成物である。
【0114】
本発明は、少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物の生殖器への適用または経口もしくは非経口投与を含んでなる、膣粘膜の処置または個人衛生のための化粧的または薬学的方法を提供する。
【0115】
本発明は、少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物の眼への適用または経口もしくは非経口投与を含んでなる、眼の粘膜の処置または眼の衛生のための化粧的または薬学的方法を提供する。
【0116】
本発明はさらに、少なくとも1種類の本発明のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する化粧組成物または医薬組成物の頭皮および毛髪への適用または経口もしくは非経口投与を含んでなる、毛髪および/もしくは頭皮の処置のため、または毛髪の衛生のため、好ましくは、毛髪および頭皮のべたつきの処置もしくは衛生のため、ふけにより影響を受ける毛髪および頭皮の処置もしくは衛生のため、または脂漏性症状の処置もしくは衛生のための化粧的または薬学的方法を提供する。
【0117】
本発明のペプチド誘導体、それらの立体異性体、それらの混合物またはそれらの化粧上もしくは薬学上許容される塩を含有する組成物は、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪に適用することができ、あるいはそれらは症状、障害および/または病態を処置するための投与計画に従って経口または非経口経路により投与することができ、あるいはそれらは皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の微生物叢のホメオスタシスを維持するために毎日投与することができる。微生物叢のホメオスタシスは、健康な皮膚、健康な粘膜、健康な頭皮または健康な爪に存在する微生物叢レベルの自己調節として理解され、そのレベルは身体の領域によって10〜10CFU/cmの間で異なり[Selwyn S. (1980) "Microbiology and ecology of human skin" Practitioner 224:1059-1062]、基本的にブドウ球菌、小球菌および類ジフテリア菌からなる[Noble W. C. and Somerville D. A. "Microbiology of Human Skin" 1974, W. B. Saunders Company Ltd., ed, London, UK]。
【0118】
適用または投与頻度は、各対象の必要によって広く異なり、1か月に1回〜1日に10回の適用または投与範囲が提案され、好ましくは1週間に1回〜1日に4回、より好ましくは1週間に3回〜1日に3回、さらにより好ましくは1日に1回または2回である。
【0119】
本発明のさらなる態様は、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の処置、保護および/または洗浄のための化粧組成物または医薬組成物の製造における、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用に関する。
【0120】
本発明はさらに、生物の防御、好ましくは皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の防御の刺激のための化粧組成物または医薬組成物の製造における、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用に関する。好ましくは、この生物の防御の刺激は、内在性のβ−デフェンシン発現の誘導、より好ましくは、ヒトβ−デフェンシン−2および/またはβ−デフェンシン−3発現の誘導により媒介される。
【0121】
本発明はさらに、外科的介入後、インテンスパルス光(IPL)療法による処置後、単色パルス光(レーザー)療法による処置後、化学角質溶解剤による処置後、または例えば日光もしくは極端な低温もしくは極端な熱への過剰曝露などの攻撃的な外的因子への過剰曝露の後に、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の防御を刺激するための化粧組成物または医薬組成物の製造における、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用に関する。
【0122】
同様に、本発明の別の態様は、微生物増殖による、または微生物増殖のリスクがある皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の症状、障害および/または病態の処置、保護および/または洗浄のための化粧組成物または医薬組成物の製造における、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用に関する。好ましくは、これらの化粧組成物または医薬組成物は、座瘡、丹毒、ヘルペス、ふけ、白斑、細菌性皮膚病、真菌性皮膚病、湿疹、敏感皮膚、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、おむつかぶれ、陰部カンジダ症、粘膜カンジダ症(例えば、限定されるものではないが、膣カンジダ症、指間カンジダ症または糖尿病に伴うカンジダ症)、細菌性膣症、膿痂疹、毛包炎、腫脹、酒さ、爪囲炎、癜風、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群、紅色陰癬、皮膚糸状菌症、例えば、限定されるものではないが、Hebra頑癬、頭皮白癬、体部白癬、足部白癬または水虫、歯肉炎、虫歯、歯周炎、皮膚トリコスポロン症または白色砂毛症、爪真菌症(ungueal mycosis or onychomycosis)、潰瘍、創傷または火傷治癒過程で起こる感染症合併症、眼科感染、抗生物質処置による、または抗真菌剤処置による、または職業的曝露による、またはハイリスクスポーツの実践による、またはホルモン調節不全(例えば妊娠)による皮膚障害、または免疫不全患者、例えば、限定されるものではないが、とりわけAIDS患者または癌処置を受けている患者、またはストレス状況下の人に起こる感染性合併症、口臭、臭汗症、毛髪および/または頭皮のべたつき、またはとりわけ放線菌属(Actinomyces)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium pefringens)、ニキビダニ(Demodex folliculorum)、鼠径表皮菌(Epidermophyton floccosum)、大腸菌(Escherichia coli)、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、クレブシェラ種(Klebsiella spp.)、マラセジア・ファーファ(Malazessia furfur)、マイコバクテリア種(Mycobacterium spp.)、ペプトストレプトコッカス種(Peptostreptococcus spp.)、ピチロスポルム・オバル(Pityrosporum ovale)、座瘡菌(Propionibacterium acnes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サンギス(Streptococcus sanguis)、ストレプトピオゲネス(Streptopyogenes)、頭部白癬(Tinea capitis)、体部白癬(Tinea corporis)、趾間菌(Trichophyton interdigitale)、毛瘡菌(Trichophyton mentagrophytes)、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・ヤウンデイ(Trichophyton yaoundei)またはトリコスポロン・クタネウム(Trichosporon cutaneum)により侵された皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の領域を処置、保護および/または剪除するために製造される。
【0123】
さらなる実施形態において、本発明は、爪および/または角質の感染を予防または治療するための化粧組成物または医薬組成物の製造における、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用に関する。
【0124】
別の実施形態によれば、一般式(I)のペプチド誘導体、それらの立体異性体、それらの混合物またはそれらの化粧上もしくは薬学上許容される塩は、粘膜の感染、好ましくは、例えば、限定されるものではないが、肉炎もしくは歯周炎などの口腔粘膜の感染、または例えば、限定されるものではないが、膣カンジダ症もしくは細菌性膣症などの膣粘膜の感染を予防または治療するための化粧組成物または医薬組成物の製造に用いられる。
【0125】
別のさらなる実施形態において、本発明は、口腔衛生のための化粧組成物または医薬組成物の製造における、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用に関する。好ましくは、この化粧組成物または医薬組成物は、口臭、歯肉炎および歯周炎の治療または予防に用いられる。口腔衛生のための化粧組成物または医薬組成物の例には、とりわけ歯磨き粉、口腔をすすぐためのうがい薬またはチューインガムが含まれる。
【0126】
本発明のさらなる態様は、身体の衛生、個人衛生または毛髪衛生のための化粧組成物または医薬組成物の製造における、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用に関する。好ましくは、毛髪衛生のための化粧組成物または医薬組成物は、毛髪または頭皮のべたつきの衛生のための組成物、ふけの治療または予防のための組成物および脂漏性症状の衛生のための組成物からなる群から選択される。毛髪衛生のための化粧組成物または医薬組成物の例としては、とりわけシャンプー、ヘアローション、ヘアトニックまたは頭皮用コンディショナーが含まれる。好ましくは、身体の衛生のための化粧組成物または医薬組成物は、脂性肌の衛生のための組成物からなる群から選択される。身体の衛生のための化粧組成物または医薬組成物の例としては、石鹸、シャワーゲル、洗顔ゲル、抗菌性アフターシェーブゲル、ボディーまたはフェイシャルミルク、脂性肌用アストリンゼントローションまたはクリームが含まれる。身体の衛生のための化粧組成物または医薬組成物の例としては、個人衛生用石鹸またはゲルが含まれる。
【0127】
本発明のさらなる実施形態は、臭汗症の治療、軽減および/または予防のための化粧組成物または医薬組成物の製造における、少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用に関する。臭汗症の処置、予防および/または軽減のための化粧組成物または医薬組成物の例としては、デオドラントおよび制汗剤が含まれる。
【0128】
本明細書に示される以下の特定の実施例は、本発明の特徴を説明するために役立つ。これらの実施例は例示のために含まれるものであり、本明細書で請求される本発明を制限するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0129】
一般的方法論
試薬および溶媒は総て合成用等級のものであり、付加的な処理を行わずに用いる。
【0130】
略号
アミノ酸に対して用いる略号は、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclature specified in Eur. J. Biochem. (1984) 138, 9-37およびJ. Biol. Chem. (1989) 264, 633-673の規則に従う。
【0131】
Ac、アセチル;DNA、デオキシリボ核酸;Ahx、ε−アミノヘキサン酸または6−アミノカプロン酸;All、アリル;Alloc、アリルオキシカルボニル;Ala、アラニン;AM、2−[4−アミノメチル−(2,4−ジメトキシフェニル)]−フェノキシ酢酸;Arg、アルギニン;RNA、リボ核酸;mRNA、メッセンジャーリボ核酸;Boc、tert−ブチルオキシカルボニル;Bzl、ベンジル;Cbz、ベンジルオキシカルボニル;CFU、コロニー形成単位;cHex、シクロヘキシル;ClTrt、2−クロロトリチル樹脂;DCM、ジクロロメタン;DIEA、N,N−ジイソプロピルエチルアミン;DIPCDI、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド;DMEM、ダルベッコの改変イーグル培地;DMF、N,N−ジメチルホルムアミド;DPPC、ジパルミトイルホスファチジルコリン;EDTA、エチレンジアミン四酢酸;equiv、当量;ESI−MS、エレクトロスプレーイオン化質量分析;FBS、ウシ胎児血清;Fmoc、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル;G418、ゲネチシン;Glu、グルタミン酸;hBD、ヒトβ−デフェンシン;HNP、ヒトα−デフェンシン;HOAt、1−ヒドロキシアザベンゾトリアゾール;HOBt、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール;HPLC、高速液体クロマトグラフィー;Ile、イソロイシン;INCI、化粧品原料の国際命名法(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients);IPL、インテンスパルス光;LPS、緑膿菌(Pseudomona aeruginosa)リポ多糖;MBHA、p−メチルベンズヒドリルアミン樹脂;MeCN、アセトニトリル;MeOH、メタノール;Met、メチオニン;mLV、多層小胞;MSH、メラノサイト刺激ホルモン;Mtr、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル;NMP、N−メチルピロリドン;PAL、5−(4−アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシ)吉草酸;Palm、パルミトイル;Pbf、2,2,4,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル;Phg、フェニルグリシン;Pmc、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル;(R)、樹脂;RPMI−1640、Roswell Park Memorial Institute medium;RT−PCR、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応;AIDS、後天性免疫不全症候群;spp.、種;tBu、tert−ブチル;Teoc、2−(トリメチルシリル)エチルオキシカルボニル;TFA、トリフルオロ酢酸;THF、テトラヒドロフラン;TIS、トリイソプロピルシラン;Tos、パラ−トルエンスルホニルまたはトシル;Troc、2,2,2−トリクロロエチルオキシカルボニル;Trt、トリフェニルメチルまたはトリチル;ULAs、発光吸収単位(units of luminescence absorption);ULV、単層小胞;UV、紫外線
【0132】
化学合成
合成プロセスは総て、多孔質ポリエチレンディスクを備えたポリプロピレンシリンジ、多孔質プレートを備えたパイレックス(登録商標)リアクター、またはACT396Ω児童合成装置(Advanced Chemtech, Inc)で行う。可溶性の溶媒および試薬は吸引により除去する。Fmoc基の除去はピペリジン−DMF(2:8、v/v)(1×1分、1×5分;5mL/g樹脂)で行う[Lloyd-Williams P., Albericio F. and Giralt, E. (1997) "Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins" CRC, Boca Raton, FL, USA]。脱保護、カップリングおよび再び脱保護の工程間の洗浄は、DMF(3×1分)で各10mL溶媒/g樹脂を用いて行った。カップリング反応は3mL溶媒/g樹脂で行った。カプリングの制御はニンヒドリン試験の手段により行う[Kaiser E., Colescott R. L., Bossinger CD. and Cook P.I. (1970) "Color test for detection of free terminal amino groups in the solid-phase synthesis of peptides" Anal. Biochem. 34:595-598]。合成変換および洗浄は総て室温で行った。
【0133】
実施例1−ペプチジル−樹脂を合成するための一般法
Fmoc−AA−AA−AA−AA−O−2−ClTrt−(R)およびFmoc−AA−AA−AA−AA−AM−MBHA−(R)の合成
250mgの市販の樹脂H−L−Ile−O−2−ClTrt−(R)、H−L−Ala−O−2−ClTrt−(R)、H−L−Phg−O−2−ClTrt−(R)、H−D−Phg−O−2−ClTrt−(R)およびFmoc−AM−MBHA−(R)を秤量し、ACT396Ωマルチプルシンセサイザーの96位リアクターの、それぞれ12、6、6、6および24穴に分配した。これらのペプチドの合成を市販のソフトウエアAdvanced Chemtech v.1.36.03でプログラミングした。アミノ酸Fmoc−Ahx−OH、Fmoc−L−Ala−OH、Fmoc−D−Ala−OH、Fmoc−L−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−D−Arg(Pbf)−OH、Fmoc−L−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−D−Glu(OtBu)−OH、Fmoc−L−Ile−OH、Fmoc−D−Ile−OH、Fmoc−L−Met−OH、Fmoc−D−Met−OH、Fmoc−L−Phg−OHおよびFmoc−D−Phg−OHの各保存溶液をDMFにて0.5M HOBtを含有する0.5Mの濃度で作製するとともに、DMFにて1mMのDIPCDI溶液および20%のピペリジン溶液を作製した。各場合において、各アミノ酸の組み込みのサイクルを以下の一連の手順でプログラミングした:洗浄(DMF、3×2分)、脱保護(DMF中20%のピペリジン、1×5分+1×20分)、洗浄(DMF、3×2分)、所望のアミノ酸のカップリング(5当量のFmoc−アミノ酸、5当量のDIPCDI、60分)および洗浄(DMF、3×2分)。
【0134】
合成が終了したところで、ペプチジル−樹脂をDCMで洗浄し(5×3分)、窒素流により乾燥させた。
【0135】
実施例2−N末端Fmoc保護基を切断するための一般法
H−AA−AA−AA−AA−O−2−ClTrt−(R)およびH−AA−AA−AA−AA−AM−MBHA−(R)の合成
実施例1で得られた50mgのペプチジル−樹脂をアリコートに分け、N末端Fmoc基を一般法に記載のように脱保護した(DMF中20%のピペリジン、1×5分+1×20分)。これらのペプチジル−樹脂をDMF(5×1分)、DCM(4×1分)、ジエチルエーテル(4×1分)で洗浄し、真空乾燥させた。
【0136】
実施例3−パルミトイルR基を導入するための方法
Palm−AA−AA−AA−AA−O−2−ClTrt−(R)およびPalm−AA−AA−AA−AA−AM−MBHA−(R)の合成
10当量のHOBtと10当量のDIPCDIの存在下で1mLのDMFに溶解させた10当量のパルミチン酸を、実施例1で得られた50mgのペプチジル−樹脂(N末端Fmoc基は一般法に記載のように予め脱保護されている)に組み込んだ。それらを15時間反応させた後、それらのペプチジル−樹脂をTHF(5×1分)、DCM(5×1分)、DMF(5×1分)、MeOH(5×1分)、DMF(5×1分)、THF(5×1分)、DMF(5×1分)、DCM(4×1分)、エーテル(3×1分)で洗浄し、真空乾燥させた。
【0137】
実施例4−アセチルR基を導入するための方法
Ac−AA−AA−AA−AA−O−2−ClTrt−(R)およびAc−AA−AA−AA−AA−AM−MBHA−(R)の合成
実施例1で得られた50mgのペプチジル−樹脂(N末端Fmoc基は一般法に記載のように予め脱保護されている)を、0.5mLのDMFを溶媒として用い、25当量のDIEAの存在下、25当量の無水酢酸で処理した。それらを30分間反応させた後、それらのペプチジル−樹脂をDMF(5×1分)、DCM(4×1分)、ジエチルエーテル(4×1分)で洗浄し、真空乾燥させた。
【0138】
実施例5−ポリマー支持体から切断するための方法
H−AA−AA−AA−AA−OH、Ac−AA−AA−AA−AA−OH、Palm−AA−AA−AA−AA−OH、H−AA−AA−AA−AA−NH、Ac−AA−AA−AA−AA−NHおよびPalm−AA−AA−AA−AA−NHの取得
実施例2、3および4で得られた5mgの乾燥ペプチジル−樹脂を、室温で攪拌しながら2時間、0.5mLのTFA−TIS−HO(90:5:5)で処理した。濾液を10mLの冷ジエチルエーテルに回収し、多孔質ポリエチレンディスクを備えたポリプロピレンシリンジで濾過し、10mLのジエチルエーテルで5回洗浄した。最終的な沈殿を真空乾燥させた。
【0139】
O(+0.1%TFA)中、MeCN(+0.07%TFA)の勾配で得られたペプチドのHPLC分析は、総ての場合において80%を超える純度を示した。得られたペプチドの属性はES−MSで確認した。
【0140】
実施例6−ポリマー支持体から切断し、置換アミンRで官能基化するための方法
Ac−AA−AA−AA−AA−NH−(CH15−CHの取得
完全に保護された側鎖を有するペプチド誘導体Ac−AA−AA−AA−AA−OHは、KOHの存在下で予め真空乾燥させた実施例4のペプチジル−樹脂Ac−AA−AA−AA−AA−O−2−ClTrt−(R)を、DCM中3%TFA溶液で5分間処理することにより得た。濾液を冷ジエチルエーテルに回収し、この処理を3回繰り返した。これらのエーテル溶液を真空下で蒸発乾固させ、室温で、沈殿をHO中50%のMeCNに再懸濁させ、凍結乾燥させた。得られた粗生成物10mgをフラスコに秤量し、3当量のヘキサデシルアミンおよび25mLの無水DMFを加えた。2当量のDIPCDIを加え、磁気攪拌しながら47℃で反応させた。反応はHPLCの手段により、最初の生成物の消失によって制御し、24〜48時間後に完了した。溶媒を蒸発乾固させ、DCMとともに2回共蒸発させた。得られた残渣[完全に保護された側鎖を有するAc−AA−AA−AA−AA−NH−(CH−CH]を25mLのTFA−DCM−アニソール(49:49:2)混合物に再懸濁させ、室温で30分間反応させた。250mLの冷ジエチルエーテルを加え、溶媒を減圧下で蒸発させ、エーテルとの共蒸発をさらに2回行った。残渣をHO中50%のMeCN混合物に溶解させ、凍結乾燥させた。
【0141】
O(+0.1%TFA)中、MeCN(+0.07%TFA)の勾配で得られたペプチド誘導体のHPLC分析は、総ての場合において80%を超える純度を示した。得られたペプチドの属性はES−MSで確認した。
【0142】
実施例7
Ac−L−Arg−Ahx−L−Ala−OHを含有するフェイスクリームの組成
【表2】

【0143】
製法
・A相の成分を混合し、70℃で加熱する。
・B相の成分を混合し、70℃で加熱する。
・ホモジナイザー(Silveson)で5分間攪拌中のB相にC相を加える。
・B相とC相の混合物にホモジナイザーを用いてA相を徐々に加え、ホモジナイゼーションを15分間維持する。
・穏やかに攪拌しながら30〜35℃まで冷却を開始する。50℃でD相を加える。攪拌を維持する。予め可溶化させたE相とF相を35〜38℃で加える。
【0144】
実施例8
Ac−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−He−OHを含有するリポソームの製造および組成
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を秤量し、クロロホルムに溶解させた。減圧下で溶媒を薄いリン脂質層が得られるまで蒸発させ、この層を55℃にて、所望の濃度のペプチド誘導体水溶液(Phenonip(登録商標)を含有)で処理することにより水和させ、MLVリポソームを得た。ULVリポソームは、MLVリポソームを、55℃の超音波槽に、5分置きに2分間8サイクル浸漬することにより得た。このリポソームULVを高圧下で押出系に通すことにより、その大きさを小さくした。
【0145】
【表3】

【0146】
実施例9
Ac−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−OHを含有するリポソームゲルの形態の組成物の製造
実施例8のリポソームを穏やかに攪拌しながら、水に保存剤(EDTA、イミダゾリジニル尿素およびPhenonip(登録商標))とともに分散させた。Hispagel(登録商標)200[INCI:アクア、グリセリンおよびグリセリルポリアクリレート]を加え、均一な混合物が得られるまで穏やかに攪拌した。
【0147】
【表4】

【0148】
実施例10
Palm−L−Arg−Ahx−L−Ala−OHを含有する爪の処置のための組成物
【表5】

【0149】
製法
・A相の成分を混合し、70℃で加熱する。
・B相の成分を混合し、70℃で加熱する。
・ホモジナイザー(Silveson)で5分間攪拌中のB相にA相を加える。
・穏やかに攪拌しながら30〜35℃まで冷却を開始する。あらかじめ可溶化させたC相を35〜28℃で加える。
【0150】
実施例11
Palm−L−Arg−Ahx−L−Ala−NHを含有するボディーローションの組成
【表6】

【0151】
製法
・A相の成分を混合し、70℃で加熱する。
・B相の成分を混合し、70℃で加熱する。
・ホモジナイザー(Silveson)で5分間攪拌中のB相にC相を加える。
・B相とC相の混合物にホモジナイザーを用いてA相を徐々に加え、ホモジナイゼーションを15分間維持する。
・穏やかに攪拌しながら30〜35℃まで冷却を開始する。50℃でD相を加える。攪拌を維持する。予め可溶化させたE相とF相を35〜38℃で加える。
【0152】
実施例12
Ac−L−Arg−Phg−Phg−NH−(CH15−CHを含有するヘアローションの組成
【表7】

【0153】
製法
・A相の成分を混合する。
・B相の成分を混合する。
・完全にホモジナイズするまで攪拌しながらA相にB相をゆっくり加える。
【0154】
実施例13
Ac−L−Arg−Phg−Phg−OHを含有するうがい剤の組成
【表8】

【0155】
製法
・完全にホモジナイズするまで成分を混合する。
【0156】
実施例14
実施例5および6で得られた一般式(I)の化合物による、安定な細胞系統におけるhBD2プロモーターの活性化のアッセイ
A549ヒト上皮細胞系統を、FBSおよびペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPMI−1640培地を用いて培養した。これを通常、1週間に2回、その培養物を分割することにより、トリプシン−EDTAを用い1:10希釈して培養した。10細胞のA549系統を、ポリリジンで処理した60mmディスクに播種した。24時間後、hBD2遺伝子プロモーターとそれに続くルシフェラーゼタンパク質遺伝子(pGL3−hBD2promotor−Luc)により形成された遺伝子構築物10μとゲネチシン抗生物質耐性遺伝子を含むpcDNA3BプラスミドDNAとで、1:5 pcDNA3B.1/pGL3−hBD2プロモーター−Luc比にて同時トランスフェクトした。トランスフェクションには25μLのリポフェクタミン(商標)2000を用いた。24時間後、G418−ゲネチシン(登録商標)抗生物質を添加した完全培地で選択を開始し、選択培地を2日置きに更新した。種々のクローンを単離し、ルシフェラーゼ活性に基づいて同定および選択を行った。選択された安定な系統、親系統用の完全培地にG418を添加したものを用いて培養した。それらは通常、1週間に2回、その培養物を分割することにより、トリプシン−EDTAを用い1:10希釈して培養した。
【0157】
hBD2プロモーターを活性化させる能力は、hBD2合成を誘導する転写因子は、pGL3−hBD2プロモーター−Luc構築物に含まれているhBD2遺伝子プロモーターを活性化させる手段によりルシフェラーゼ酵素産生を生じ、発光増強が観察されることから、ルシフェラーゼ活性アッセイの手段により測定した。選択された安定な細胞系統を1プレート当たり20,000細胞で播種した。24時間後、これらのプレートを洗浄し、L−イソロイシンを除き、種々のペプチド誘導体を0.5mMの濃度で含む改変RPMI−1640培地で24時間インキュベートした。LPS(100μg/mL)およびL−イソロイシン(25μg/mL)を、ペプチド誘導体と同じ処理で陽性対照として用いた。インキュベーション期間が終了したところで、販売社のプロトコールに従い、Steady−Gloルシフェラーゼアッセイ系(Promega Corp.)を細胞に加えた。ルシフェラーゼとその基質の間の反応により生じた発光シグナル(ULAs/s)を、LUMIstar Galaxyプレートルミノメーター(BMG Labtechnologies)で定量した。陰性対照を用いて標準化したルシフェラーゼ活性の値(ULAs/s)に基づき、hBD2プロモーターの活性化を測定した。表1は一般式(I)の化合物の活性を詳細に示し、20%以上の発光増強を示した。
【0158】
【表9】

【0159】
実施例15
Ac−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−OH、Ac−L−Arg−Phg−Phg−OHおよびAc−L−Arg−Ahx−L−Ala−OHとともにインキュベートした後にヒトケラチノサイトにおいて分泌されたhBD2 mRNAの定量
分泌されたmRNAの量の定量は、リアルタイム定量的RT−PCRアッセイの手段により行った。3×10細胞のヒトケラチノサイト系統を用い、25cmフラスコに播種した。これらの細胞を洗浄し、3mL量のDMEM培地中、1mmまたは0.25mmの濃度の種々のペプチド誘導体とともに16〜24時間インキュベートした。LPS(100μg/mL)およびL−Ile(200μg/mL)を陽性対照として用いた。細胞の上清を−80℃で保存し、分泌されたhBD2タンパク質レベルを分析し、それらの細胞から、製造社のプロトコールに従ってRNeasyキット(Quiagen)を用いて全RNAを抽出した。
【0160】
逆転写反応はMastercyclerサーマルサイクラーにて、各サンプルの全RNA1μgから、製造社のプロトコールに従ってGeneAmp RNA PCRキット(Applied Biosystems)を用いて行い、その後、ABI PRIS M 7700シーケンスデテクター(Applied Biosystems)にてSYBR Green I蛍光団を用いたアッセイの手段により、リアルタイムPCRを行った。
【0161】
mRNAの量は、内在性18SリボソームRNAの値に対してそれを標準化ノーマライズすることにより定量した。次に、これらの値を非処理細胞に対して標準化し、それらを相対的hBD2 mRNAレベルとして表した。
【0162】
【表10】

【0163】
実施例16
Ac−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−OH、Ac−L−Arg−Phg−Phg−OHおよびAc−L−Arg−Ahx−L−Ala−OHとともにインキュベートした後にヒトケラチノサイトにおいて分泌されたhBD2の定量
ヒトケラチノサイトにより分泌されたhBD2の量は、実施例15から得られた細胞上清から、ヒトBD−2 ELISA Development市販キット(Peprotech)を用いるELISAアッセイの手段により定量した。
【0164】
得られた吸光度データに基づき、組換えhBD2で較正した後にhBD2タンパク質レベルを算出した。得られたhBD2の値を対照アッセイ(非処理細胞)の値に対して標準化した。
【0165】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩:
−AA−AA−AA−AA−R
(I)
[式中、
AAは、−Glu−および−Arg−からなる群から選択され;
AAは、−Met−、−Ahx−および−Phg−からなる群から選択され;
AAは、−Ala−および−Phg−からなる群から選択され;
AAは、−Ile−または単結合からなる群から選択され;
は、H、置換または非置換非環式脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキルおよびR−C(O)−からなる群から選択され;かつ、
は、−NR、−ORおよび−SRからなる群から選択され;RおよびRは、H、置換または非置換非環式脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換ヘテロシクリル、置換または非置換ヘテロアリールアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換アラルキルからなる群から独立に選択され;
は、H、置換または非置換非環式脂肪族基、置換または非置換アリシクリル、置換または非置換アリール、置換または非置換アラルキル、置換または非置換ヘテロシクリルおよび置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群から選択される]。
【請求項2】
がHまたはR−C(O)−基であり、Rが置換または非置換C−C24アルキル、置換または非置換C−C24アルケニル、置換または非置換C−C24アルキニル、置換または非置換C−C24シクロアルキル、置換または非置換C−C24シクロアルケニル、置換または非置換C−C24シクロアルキニル、置換または非置換C−C30アリール、置換または非置換C−C24アラルキル、置換または非置換3〜10員環ヘテロシクリル、ならびに1〜3個の炭素原子のアルキル鎖と、2〜24個の炭素原子および炭素とは異なる1〜3個の原子を有する置換または非置換芳香族ヘテロシクリル基とを含んでなるヘテロアリールアルキルからなる群から選択される、請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項3】
がH、アセチル、tert−ブタノイル、ヘキサノイル、2−メチルヘキサノイル、シクロヘキサンカルボキシル、オクタノイル、デカノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、オレオイルおよびリノレオイルからなる群から選択される、請求項2に記載のペプチド誘導体。
【請求項4】
が−NR、−ORまたは−SRであり、RおよびRがH、置換または非置換C−C24アルキル、置換または非置換C−C24アルケニル、置換または非置換C−C24アルキニル、置換または非置換C−C24シクロアルキル、置換または非置換C−C24シクロアルケニル、置換または非置換C−C24シクロアルキニル、置換または非置換C−C30アリール、置換または非置換C−C24アラルキル、置換または非置換3〜10員環ヘテロシクリル、ならびに1〜3個の炭素原子のアルキル鎖と、2〜24個の炭素原子および炭素とは異なる1〜3個の原子を有する置換または非置換芳香族ヘテロシクリル基とを含んでなるヘテロアリールアルキルからなる群から独立に選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項5】
が−NRおよび−ORからなる群から選択され、RおよびRが同一または異なっている、請求項4に記載のペプチド誘導体。
【請求項6】
およびRがH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシルからなる群から選択される、請求項5に記載のペプチド誘導体。
【請求項7】
AAが−Glu−であり、AAが−Met−であり、AAが−Ala−であり、AAが−Ile−である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項8】
AAが−Arg−であり、AAが−Ahx−であり、AAが−Ala−であり、AAが単結合である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項9】
AAが−Arg−であり、AAが−Phg−であり、AAが−Phg−であり、AAが単結合である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項10】
がH、アセチル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルであり、AAが−L−Glu−であり、AAが−L−Met−であり、AAが−L−Ala−であり、AAが−L−Ile−であり、Rが−NRまたは−ORであり、RおよびRがH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシル基から独立に選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項11】
がH、アセチル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルであり、AAが−L−Arg−であり、AAが−Ahx−であり、AAが−L−Ala−であり、AAが単結合であり、Rが−NRまたは−ORであり、RおよびRがH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシル基から独立に選択される、請求項1〜6または8のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項12】
がH、アセチル、ラウロイル、ミリストイルまたはパルミトイルであり、AAが−L−Arg−であり、AAが−L−Phg−または−D−Phg−であり、AAが−L−Phg−または−D−Phg−であり、AAが単結合であり、Rが−NRまたは−ORであり、RおよびRがH、メチル、エチル、ヘキシル、ドデシルおよびヘキサデシル基から独立に選択される、請求項1〜6または9のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項13】
がH、アセチルおよびパルミトイルからなる群から選択され、Rが−OHおよび−NHからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項14】
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Phg−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−D−Phg−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Phg−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−D−Phg−OH、
Ac−L−Glu−L−Phg−L−Ala−OH、
Ac−L−Glu−D−Phg−L−Ala−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−Ahx−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−Ahx−D−Phg−L−Ile−OH、
H−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Met−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Met−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Ala−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Ala−OH、
Ac−L−Glu−L−Phg−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−D−Phg−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Met−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Met−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−Ahx−L−Ala−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Phg−NH−(CH15−CH
Ac−L−Arg−L−Phg−D−Phg−NH−(CH15−CH
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Phg−NH−(CH15−CH
Ac−L−Arg−D−Phg−D−Phg−NH−(CH15−CH
Palm−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−NH
Ac−L−Arg−Ahx−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Phg−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−D−Phg−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Phg−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Phg−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−D−Phg−L−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−D−Phg−D−Phg−L−Ile−OH、
Ac−L−Arg−L−Met−L−Ala−L−Ile−OH、
Ac−L−Glu−L−Met−L−Ala−L−Ile−OH、および
その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩
からなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチド誘導体。
【請求項15】
固相または溶相で行われる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩を得るための方法。
【請求項16】
遊離アミノ基がBocまたはFmocの手段により保護され、遊離カルボキシル基がtBu、Bzl、cHex、AllまたはTrtの手段により保護され、アルギニン側鎖がPmc、Pbf、MtrまたはTosで保護され、グルタミン酸側鎖がtBu、All、Trt、cHexまたはBzlで保護される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、それらの混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩と、少なくとも1種類の化粧上または薬学上許容される賦形剤またはアジュバントとを含んでなる、化粧組成物または医薬組成物。
【請求項18】
一般式(I)のペプチド誘導体が、組成物の総重量に対して0.000001〜20重量%の濃度である、請求項17に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項19】
前記濃度が、組成物の総重量に対して0.0001〜5重量%である、請求項18に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項20】
一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩が、送達系、またはリポソーム、ミリカプセル、マイクロカプセル、ナノカプセル、スポンジ、小胞、ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェア、ナノスフェア、リポスフェア、マイクロエマルション、ナノエマルション、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子および固体脂質ナノ粒子からなる群から選択される化粧上もしくは薬学上許容される徐放系に組み込まれている、請求項17〜19のいずれか一項に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項21】
一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩が、タルク、ベントナイト、シリカ、デンプンおよびマルトデキストリンからなる群から選択される化粧上もしくは薬学上許容される個体支持体または固体有機ポリマーに吸着されている、請求項17〜20のいずれか一項に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項22】
クリーム、多相エマルション、無水組成物、水性分散液、オイル、ミルク、バルサム、フォーム、ローション、ゲル、ヒドロアルコール溶液、塗布剤、漿液、石鹸、シャンプー、軟膏、ムース、軟膏、パウダー、バー、ペンシル、スプレー、エアゾール、カプセル、ゼラチンカプセル、錠剤、糖衣錠、粒状剤形、チューインガム、溶液、懸濁液、エマルション、シロップ、ゼリーおよびゼラチンからなる群から選択される、請求項17〜21のいずれか一項に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項23】
コンシーラー、メイクアップファンデーション、メイクアップリムーバルローション、メイクアップリムーバルミルク、アイシャドウ、リップスティック、リップグロス、リッププロテクター、パウダー、ネールポリッシュ、ネイルポリッシュリムーバルローション、角質リムーバルローション、デオドラントおよび制汗剤からなる群から選択される製品である、請求項17〜21のいずれか一項に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項24】
一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物、またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩が、布、不織布または医療装置に組み込まれている、請求項17〜21のいずれか一項に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項25】
布、不織布または医療装置が、帯布、ガーゼ、Tシャツ、パンティーストッキング、ソックス、下着、ガードル、手袋、おむつ、生理用ナプキン、包帯、ベッドスプレッド、ワイプ、ヒドロゲル、粘着パッチ、非粘着パッチおよびフェースマスクからなる群から選択される、請求項24に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項26】
メラニン合成刺激または阻害剤、美白または脱色剤、色素沈着促進剤(propigmentation agents)、日焼け剤、アンチエージング剤、NO−シンターゼ阻害剤、抗酸化剤、フリーラジカル−スカベンジャーおよび/または抗大気汚染剤、糖化防止剤、乳化剤、保湿剤、有機溶媒、液体噴射剤、皮膚コンディショナー(例えば、保湿剤)、水分を保持する物質、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、モイスチャライザー、ビタミン、顔料または着色剤、色素、ゲル化ポリマー、増粘剤、界面活性剤、軟化剤、しわ改善剤、目の下のたるみを軽減または処置することができる薬剤、剥離剤、抗菌剤、殺真菌剤、制真菌剤、殺菌剤、静菌剤、真皮または上皮高分子の合成を刺激し、かつ/またはそれらの分解を阻害もしくは予防することができる薬剤、コラーゲン合成刺激剤、エラスチン合成刺激剤、デコリン合成刺激剤、ラミニン合成刺激剤、その他のデフェンシン合成刺激剤、シャペロン合成刺激剤、ヒアルロン酸合成刺激剤、脂質および角質層の成分の合成を刺激する薬剤、脈管形成刺激剤、コラーゲン分解阻害剤、エラスチン分解阻害剤、繊維芽細胞増殖刺激剤、ケラチノサイト増殖刺激剤、ケラチノサイト分化刺激剤、皮膚弛緩剤、グリコサミノグリカン合成刺激剤、DNA再対合剤、DNA保護剤、かゆみ止め、敏感皮膚の処置剤、固化剤、妊娠線防止剤、収斂剤、皮脂生産調節剤、脂肪分解刺激剤、セルライト防止剤、治癒刺激剤、治癒補助剤、サイトカイン増殖因子、鎮静剤、抗炎症剤、毛細血管循環および/または微小循環に作用する薬剤、細胞代謝に作用する薬剤、真皮−上皮接合の改善を意図した薬剤、保存剤、香料、キレート剤、植物抽出物、エッセンシャルオイル、海産抽出物、生物発酵プロセスから得られる薬剤、無機塩、細胞抽出物およびサンスクリーン(紫外線Aおよび/またはBに対して活性な有機または無機の光保護剤)、またはその混合物からなる群から選択される、化粧上または薬学上有効な量の少なくとも1種類の有効薬剤をさらに含んでなる、請求項17〜25のいずれか一項に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項27】
有効薬剤が、合成起源のものであるか、または植物抽出物であるか、または生物発酵プロセスにより得られるものである、請求項26に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項28】
有効薬剤が、殺菌剤、殺真菌剤、制真菌剤および/または静菌剤、または固有の殺菌活性、静菌活性、制真菌活性および/または殺真菌活性を有する天然抽出物もしくはエッセンシャルオイルである、請求項26または27に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項29】
有効薬剤が、抗炎症剤および/または鎮痛剤、または固有の鎮痛活性および/または抗炎症活性を有する天然抽出物またはエッセンシャルオイルである、請求項26または27に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項30】
有効薬剤が、治癒活性および/または再上皮化活性を有する薬剤、または固有の治癒活性および/または再上皮化活性を有する天然抽出物もしくはエッセンシャルオイルである、請求項26または27に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項31】
有効薬剤が、デフェンシン合成刺激剤、または固有のデフェンシン合成刺激活性を有する天然抽出物もしくはエッセンシャルオイルである、請求項26または27に記載の化粧組成物または医薬組成物。
【請求項32】
皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の処置、保護および/または洗浄のための化粧組成物または医薬組成物の製造における、請求項1〜14のいずれか一項に記載の一般式(I)のペプチド誘導体、その立体異性体、その混合物またはその化粧上もしくは薬学上許容される塩の使用。
【請求項33】
処置、保護および/または洗浄が、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の防御の刺激からなる、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
刺激が、内在性のヒトβ−デフェンシン−2および/またはβ−デフェンシン−3タンパク質の誘導により媒介される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
処置、保護および/または洗浄が、前記化粧組成物または医薬組成物の局所的または経皮的適用の手段により行われる、請求項32〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
局所的または経皮的適用が、イオン導入法、超音波導入法、エレクトロポレーション、閉鎖処置、マイクロインジェクション、圧力の手段による無針注射、またはそれらの組合せの手段により行われる、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
処置および/または保護が、皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の微生物叢のホメオスタシスを維持することを意図する、請求項32に記載の使用。
【請求項38】
微生物増殖による、または微生物増殖のリスクがある皮膚、粘膜、頭皮および/または爪の症状、障害および/または病態の処置、保護および/または洗浄のための、請求項32〜37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記症状、障害および/または病態が、座瘡、湿疹、アトピー性皮膚炎、敏感皮膚、丘疹性酒さ、臭汗症、脂漏性皮膚炎、毛髪および/または頭皮のべたつき、ふけ、眼科感染、カンジダ症、細菌性膣症、歯肉炎、歯周炎および口臭からなる群から選択される、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
外科的介入後、インテンスパルス光(IPL)療法による処置後、単色パルス光(レーザー)療法による処置後、化学角質溶解剤による処置後または攻撃的な外的因子に曝露した後に、皮膚の防御を刺激するための、請求項33〜38のいずれか一項に記載の使用。
【請求項41】
攻撃的な外的因子が、日光、極端な低温および極端な熱からなる群から選択される、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
口腔粘膜の処置または口腔衛生のための、請求項32〜41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
毛髪および/もしくは頭皮の処置のため、または毛髪の衛生のための、請求項32〜41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項44】
身体の皮膚もしくは粘膜の処置または身体の衛生のための、請求項32〜41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項45】
前記組成物が、膣粘膜の処置または個人衛生のための組成物である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記組成物がデオドラントおよび/または制汗剤組成物である、請求項44に記載の使用。
【請求項47】
眼の粘膜の処置または眼の衛生のための、請求項44に記載の使用。

【公表番号】特表2011−511774(P2011−511774A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544705(P2010−544705)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051041
【国際公開番号】WO2009/095456
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(510208321)ダイバードラッグズ、ソシエダッド、リミターダ (1)
【氏名又は名称原語表記】DIVERDRUGS S.L.
【出願人】(510207232)ピュイグ、ビューティー、アンド、ファッション、グループ、ソシエダッド、リミターダ (1)
【氏名又は名称原語表記】PUIG BEAUTY & FASHION GROUP, S.L.
【出願人】(500021527)リポテック、ソシエダッド、アノニマ (1)
【Fターム(参考)】