説明

皮膚および経皮物質放出システムで有用な吸収性材料の減衰特性を高める方法

ユーザに対して投与すべき少なくとも1つの物質を含むパッチを調製する方法は、吸収性材料を準備するステップと、その吸収性材料に高周波音波を当てるステップと、その音波が当てられた吸収性材料に少なくとも1つの物質を導入するステップと、その吸収性材料をパッチ内に配置するステップと、その物質を保持する音波が当てられた材料を含むパッチをシールするステップと、を含む。吸収性材料は凍結乾燥させてもよい。吸収性材料はその物質と架橋させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には皮膚および経皮物質放出(delivery)システムに関し、特に、物質(薬物)放出パッチ(substance delivery patch)に含まれた(組み込まれた)吸収性材料から放出されるべき物質の解放(liberation:遊離、放出)を容易にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、経皮医薬化合物または薬剤の放出(delivery:投与、供給、デリバリ)システムは、患者の皮膚に貼付される医薬用パッチを使用している。そのパッチによって、そのパッチ内に含まれる医薬化合物が皮膚の層を通過して患者の血流中に吸収させることができる。経皮医薬の放出は、一般に薬剤の注射および静脈薬剤投与に伴う苦痛、さらにこれらの処置に伴う感染の危険性(リスク)を軽減することができる。また、経皮薬剤の放出は、投与された薬剤の胃腸内代謝(gastointestinal metabolism)を回避し、肝臓による薬剤の除去または排出を減少させ、投与された薬剤の除放性(sustained release)を実現することができる。さらに、経皮薬剤の放出によって、薬剤の投与および徐放性が比較的容易であるので、患者の薬剤養生法(drug regimen)との順応性が増強する。
【0003】
しかし、多くの薬剤は、その分子の大きさ(サイズ)またはその薬剤に関するその他の生物学的付着特性(bio-adhesion properties:生体粘着特性)に起因する皮膚を通して吸収しにくい形態で吸収されるので、既知の経皮薬剤の放出システムによる通常の投与にはあまり適していない。このような場合に、経皮薬剤の放出が行おうとしても、薬剤は皮膚の外表面上に溜まり、皮膚を通して血流中に浸透しないことがある。このような特性を示す薬剤の例には、インスリンがあり、インスリンは通常の経皮薬剤放出システムによる投与が困難であることがわかっている。
【0004】
従って、このようなタイプの医薬化合物、医薬品または薬剤は、しばしば、注射または経口投与形態のいずれかによって投与され、それぞれの形態には或る欠点がある。時々、投与量を増加させる必要がある。例えば、化学療法剤(chemotherapeutic agents)は、胃腸管(gastrointestinal tract)での分解(減成)に耐えて残る必要があるので、通常は投与量を増加して投与される。さらに、エイズ(AIDS)に対する多くの臨界治療(critical treatment)には、効果を得るには固形投与形態で一日に数回、経口摂取される薬剤のカクテルが必要である。医薬化合物を経皮放出(投与)することが望ましいことはあるが、これらの薬剤は、大量の投与を必要とし、また薬剤の分子を経皮放出に適した形で安定して留まらせることができないので、通常の経皮薬剤放出システムによって投与するのに適していない。発明者は、多くの薬剤が通常の経皮放出(投与)に適していないのは、少なくとも部分的に、皮膚層を横切る(通る)薬剤の生物学的(生体)吸収性が低いことによるものと、考えている。
【0005】
従って、通常の経皮薬剤放出(投与)法は、例えば、狭心症(angina:アンギナ)を軽減するためのニトログリセリン、喫煙停止(禁煙)管理用のニコチン、閉経後の女性のエストロゲン置換(代替)用のエストラジオール(estradiol)のような、低分子量医薬品に対してのみ適していることが分かった。例えば、インスリン(糖尿病の治療(処置)用のポリペプチド(polypeptide))、エリトロポイエチン(erythropoietin)(これは深刻な貧血症(anemia)を処置するために使用される)、およびガンマ−インターフェロン(gamma-interferon)(これは免疫系抗癌能力(immune system cancer fighting ability)を増強するために使用される)のような、大きな分子の医薬品は、すべて、通常の経皮薬剤放出(投与)法で使用したときには、通常は有効でない化合物である。
【0006】
経皮パッチには3つの基本的なデザイン(形式、構造)、即ち、リザーバ(貯蔵部)タイプ・パッチ(reservoir type patch)、マトリックス・タイプ・パッチ(matrix type patch)、およびドラッグ・イン・アドヒーシブ・タイプ・パッチ(Drug In Adhesive(DIA:粘着剤中の薬剤)type patch)がある。図1は、リザーバ・タイプの経皮パッチ100の構造を概略的に示している。リザーバ・パッチ100は、例えば薬剤の溶液または懸濁液(suspension)のような物質(薬剤)120を含む液体貯蔵領域(リザーバ・コンパートメント(室))110を有し、その物質120は、半透膜(semi permeable membrane)140および粘着剤層150によって解放または放出ライナー(release liner:放出裏地)130から分離されている。また、典型的には、裏張り層(backing layer:裏地)または支持層160が設けられている。市販のリザーバ・タイプのパッチの例には、Duralgesic(商標)(Fentanyl:フェンタニール)、Estraderm(商標)(estradiol:エストラジオール)、およびTransderm-Nitro(商標)(Nitroglycerin:ニトログリセリン)などがある(含まれる)。
【0007】
図2は、マトリックス・タイプのパッチ200を示している。図1に示すリザーバ・パッチ100と同様に、パッチ200は、放出または解放ライナー(放出裏地:release liner)130、粘着剤層150および裏張り層160を含んでいる。明らかに、薬剤は半固形製剤(semisolid formulation)220内に設けられているが、薄膜層は存在しない。市販のマトリックス・タイプ・パッチの例には、Habitol(商標)(ニコチン)、Nitrodisc(商標)(ニトログリセリン、およびProStep(商標)(ニコチン)がある。
【0008】
DIAタイプのパッチは、一般に、薬剤が皮膚に接触する粘着剤層内に、またはこれと直接接触した形で組み込まれていることを特徴とするものである。このような構成では、粘着剤層は皮膚との粘着機能を満たし、且つ薬剤と賦形剤を含む製剤の基礎(foundation)として作用する。DIAパッチは、一般に本質的にモノリシック(一体形)または多積層体(multilaminate)である。図2のパッチ200の特徴は多積層体DIAマトリックス・パッチ構造にあると言うことができる。市販のDIAパッチとして、モノリシックのClimara(商標)(エストラジオール:Estradiol)、および多積層体のNicoderm(商標)(ニコチン)がある。
【0009】
DIAパッチのデザインは、パッチ全体の大きさを小さくし、皮膚上に良好な同心円的シールを配置することができる、という利点がある。また、DIAパッチは、リザーバおよびマトリックス・パッチ100と比較して、快適に装着することができる傾向がある。典型的なDIAパッチの厚みは165μm乃至200μmである。DIAパッチの欠点は、DIAパッチからの薬剤の放出(解放)が1次の速度論(first order kinetics:1次反応速度論、1次動力学)に従って、即ち粘着剤層中の薬剤の濃度に比例して、薬剤の放出(解放)プロファイル(形態)が長くなることである。薬剤がDIAパッチから放出(投与)されるとき、薬剤の濃度は、経過時間とともに全体にわたって放出率(rate:速度)が低下するように、低下する。
【0010】
パッチのタイプとは関係なく、薬剤を粘着剤(compositions:配合物、組成物)と混合すると、粘着剤の組成物との相互作用によって新しい薬剤のプロファイル(形態)が生じ、また薬剤が減成(degrade:品質低下、分解)する傾向がある、という問題が生じる。例えば、粘着剤の化学的性質は或る種の薬剤の安定性(stability)、効果(performance:性能)および/または機能(function)を変化させる可能性がある。さらに、受動的システムを経由して放出することができる薬剤の分子の大きさに制限がある。典型的な薬剤の候補は、たとえスキン・エンハンサ(皮膚増強剤)が使用されていても、DIAパッチについては500ダルトン(Dalton)より小さく、マトリックスおよびリザーバ・パッチについては1,000ダルトンより小さい。
【0011】
経皮放出を増強するために、例えば放出をアシストする(支援する、助ける、補助する)ために電位(Iontophoresis:イオントフォレシス(治療))および超音波(phonophoresis:フォノフォレシス)が提案されている。これらのシステムは、典型的には、角質層(stratum corneum)を通る(横切る)金属ベース(基剤)の薬剤の流れを増大させ、皮膚をミクロポレートし(micro-porate:微小孔を形成し)、または高分子が角質層を通って真皮またはその下層の組織に放出されるのを可能にするように、設計(デザイン)されている。このようなアシスト(助力)付きの経皮放出装置(TDD:transdermal delivery device)は、典型的には、薬剤を含むパッチとは別に、外部電子システムを使用する。そのパッチには、典型的には、イオン移動(移行)をアシストするための電極が組み込まれている。
【0012】
薬剤の経皮放出(投与)を容易にするための改良された方法および装置が望まれる。
【発明の開示】
【0013】
発明の概要
ユーザに投与(放出)されるべき少なくとも1つの物質(薬剤)を含むパッチを準備(用意、調整、作製)する方法であって、吸収性材料(absorbent material)を準備するステップと、少なくとも1つの物質(substance:薬剤)をその材料中に導入するステップと、その材料をそのパッチ内に配置するステップと、その物質保持材料を含有するパッチ(substance holding material containing patch)をシール(封止)するステップと、を含む。その吸収性材料に高周波の音波が当て(insonify)られてもよい。その吸収性材料は凍結乾燥させてもよい。その吸収性材料は化学的に処理されてもよい。その吸収性材料はその物質と架橋させてもよい。
【0014】
添付の図面を参照して以下の本発明の好ましい実施形態に関する詳細な説明によって本発明を容易に理解することができよう。なお、図面中で同じ参照番号は同等の部品を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に関する図面および説明は、本発明を明確に理解するのに関係する構成要素(エレメント)を示すために簡略化されており、典型的なパッチ、および皮膚および経皮投与(放出)アシスト方法およびシステムに見られるその他の多くの構成要素(エレメント)については説明を簡明にする目的で省略されている、と理解すべきである。しかし、これらの構成要素は当技術分野で周知であり、また本発明の理解をより良くするものでもないので、ここではこのような構成要素に関する説明はなされていない。ここでの開示内容は、この分野の専門家にとって周知の全ての変形例、改変例および変更例に適用される。
【0016】
前提として、本発明の好ましい実施形態は経皮薬剤投与(放出)に関するものとして説明されるが、本発明は薬剤およびその他の物質の能動的/受動的な皮膚および経皮投与(放出)を含む広い適用性を持っていることを理解すべきである。例えば、非医薬(医薬品を含まない)スキン・クリームの皮膚放出特性も本発明の原理を用いることによって改善されることがある。
【0017】
粘着性マトリックスの構成(デザイン)を採用することによってもたらされる薬剤の汚染(汚れ)に関する問題を解消するために、本願の親出願である米国特許第6,908,448号では吸収性パッドを使用することを提案している。ここでは、薬剤の汚染または変性(denature)は、粘着剤または高分子成分との相互作用により生じる可能性がある。吸収性のパッドは、薬剤を吸収するよう作用する。パッドの吸収力は、典型的には、液体の水の吸収率(ファクタ)の形で測定される。例えば、多くの吸収性材料はその液体重量の12倍まで保持することができる。従って、吸収性パッドは、典型的には、特定の薬剤の固形配合量よりも遥かに多量の液体懸濁液を含むことができる。
【特許文献1】米国特許第6908448号
【0018】
図3は超音波信号と共に使用するのに適した経皮パッチ300を示しており、このパッチは吸収性パッドを採用している。パッチ300は、区画(セクション)または開孔(aperture)が形成されたバックボーン即ち裏張り(backing)材料10で組み立てられている。図示の実施形態では、開孔は音響薄膜(sonic membrane)11に適合している。パッチ300は使用開始まで剥ぎ取り(剥離)フィルム12でシール(封止)されている。剥ぎ取りフィルム12は、ペンシルバニア州 シャロン・ヒル(Sharon Hill Pa.)にあるクリスタル−X コーポレーション(Crystal-X Corp.)から市販されている耐UV(紫外線)帯電防止用ポリエチレン・フィルム(厚さ50μm)を含む(しかし、これに限定されるものではない)任意の適当な材料で構成されていてもよい。図示の実施形態では、薄膜11の反対側に半透性部材13が配置されている。部材13は、ユーザの皮膚に機能的に近い薄膜またはフィルムの形態であってもよい。例えば、そのパッチ300は、薄膜13が皮膚に直接接触するように皮膚に接着される。パッチ300の内側には所望の薬剤または医薬品化合物15を保持する吸収性パッド14が設けられている。図示の実施形態では、バックボーン10と吸収性パッド14の間にガスケット16が設けられている。ガスケット16は、例えば合成ゴムのような任意の適当な材料で形成されていてもよい。ガスケット16は吸収性パッド14が配置されるリザーバ(貯留部)またはウェル(井戸)を形成する。パッチ300が皮膚上に圧接されると、ガスケット16は湿気および空気がパッチの下を通過して超音波信号強度と干渉するのを制限する傾向にあるバリヤ(障壁)を形成する。代替構成として、湿気を防止し、パッチから物質または薬剤が漏出(リーク、漏洩)するのを防止し、およびパッチの下から空気が入り込むのを防止するために、パッチ300の縁部(境界)を取囲むシール作用を与えるために、ガスケット16としてまたはガスケット16の代わりに、シール化合物、超音波ゲル、またはその他の適当な材料を使用してもよい。もちろん、これ以外にここに開示する発明の精神から逸脱することなく、パッチ300の構成要素または構造ついて多数の変更または改変を施してもよい。
【0019】
いずれにしても、例えば超音波信号源のような外部刺激が信号310を音響薄膜11を通してパッチ300内におよびパッド14内に伝送(伝播)する。吸収性パッド14内に含まれる薬剤またはその他の物質15は、入射する超音波信号に応答して解放(放出)される。次いで、その物質は半透性の膜(semi-permeable membrane)13を通して患者の皮膚3の上、皮膚内、または皮膚を通過して沈着(デポジット、被着、堆積)される。パッチ300を超音波310と共に使用する場合について説明したが、超音波に加えてまたは超音波に代えてその他の形態の外部刺激を使用することもできる。例えば、外部刺激として、イオントフォレシス(治療)、熱療法、電波(無線波、電磁波)、磁気的伝送レーザ、マイクロ波信号、および/または電流の皮膚への適用、を使用してもよい。例えば、超音波信号をイオントフォレシスと共に使用してもよく、または超音波をイオントフォレシスの適用の前処置として使用してもよい。
【0020】
パッチ300では、もし存在すれば薬剤15に直接接触することになるであろう粘着剤層は、除去されている。粘着剤層はパッチの周縁部(境界)に使用されてもよいが、経皮パッチ内に保持された組み込み吸収性パッド14のために(を利用するために)、DIA、マトリックスまたはリザーバの形のデザインは採用されない。
【0021】
さらに、リザーバ・タイプ、マトリックス・タイプおよびDIAタイプの経皮パッチでは、薬剤の放出(投与)が典型的にはパッチの表面積に依存するように、典型的には、薬剤の濃度(集中)は低い。しかし、吸収性パッドを含む構成(コンフィギュレーション(立体構造、起伏構造:configuration)を含む吸収性パッド)では、吸収性パッドの厚みはパッド材料の吸収率を上げる(梃入れする)ために変更することができ、それによって特定の横方向寸法(側面寸法)をもった吸収性パッド内により多くの薬剤を含ませることができる。例えば、1平方センチメートル(cm)のセルロース・パッドは、1mmの厚みでその12倍までの重量の湿気を保持することができる。同じ厚みのナイロン・パッドでは、その重量の3倍の湿気を保持するにすぎない。使用される材料を変え、厚みを変更することによって、吸収性パッドの保持能力を、通常のリザーバ・パッチ、マトリックス・パッチまたはDIAパッチの放出(解放)率(速度)および寿命(有効時間)を超える所望の放出(解放)率(速度)および寿命(有効時間)が得られるように、調製することができる。
【0022】
従って、吸収性パッドを組み込むことによって、薬剤投与(放出)のアプリケーション(適用例)において、特にアシスト(補助、支援)付きの投与(放出)適用法と組み合わせて使用されるときに、経皮パッチの使用を制限するような重要な問題に、対処することができる。
【0023】
しかし、吸収性パッド材料は、投与(放出)されるべき薬剤に対して親和力を持つ可能性があることが分かった。例えば、吸収性材料がナイロンであれば、インスリンはナイロン繊維に付着し、受動的経皮投与(放出)手段(装置)(TDD)であれ、アシスト付き(例えば能動的)経皮投与(放出)手段(装置)であれ、インスリンはパッチから容易に(すぐには)解放されない。説明の目的を限定するものではないが、経皮パッチの形態の受動的TDDは、パッチから皮膚の表面に薬剤を放出し、次いで化合物が真皮(dermus)内に吸収される。吸収性材料中のエアポケット、湿気および不純物は、すべて、薬剤の放出に悪影響を与える傾向がある。幾つかの種類の薬剤は、吸収性材料の繊維に付着する傾向があり、均一な放出分布の率(速度)でパッチから放出されることはない。吸収性材料中の不純物は薬剤と相互に作用する可能性があり、化合物を汚染する可能性がある。繊維材料中のエアポケット、湿気および表面張力は、この吸収性材料からの薬剤の放出率(速度)を遅くする(妨害する)傾向がある。吸収性パッド・タイプの構造を採用した受動形態の経皮パッチでも、その薬剤と吸収性パッドを形成するのに使用された材料との間の相互作用によってその投与(放出)の範囲(機会、自由度)が制限される可能性がある。従って、パッチを含む吸収性パッドのこのような潜在的な欠点に対処することが望ましい。
【0024】
本件発明の特徴(側面)によれば、吸収性パッド組み込みパッチの薬剤解放(放出)特性は、薬剤の導入前、例えばパッチ内に組み込まれる前に、吸収性材料を前処理することによって改善される。例えば、1つ以上の超音波信号が吸収性パッド材料に与えられてもよい。これによって、パッドの材料からエアポケットが追い出され、その材料の表面張力(tension)を変化させ、1種以上の薬剤に対する材料の親和性が減少する傾向がある。さらに他の例として、吸収性材料を凍結乾燥させてもよい。これによって、この材料から不純物が追い出され、その表面張力が変化し、1種以上の薬剤に対する材料の親和性が減少する傾向がある。別の例として、吸収性材料を洗浄(wash)してもよい。これによっても、材料から不純物が追い出され、表面張力が変化し、1種以上の薬剤に対する材料の親和性が減少する傾向がある。
【0025】
前処理は、パッチにおいて有用な多数の吸収性材料と共に使用するのに適している。それにも拘らず、この方法で処理され、パッチに組み込まれるのに特に良く適合した材料は、次に述べるような1つ以上の特徴を具えていてもよい。それらはエマルジョンまたは溶液の形態で存在する選択された薬剤に対して高い吸収性を有していてもよい。それらは、選択された薬剤またはその溶液形態の薬剤中で使用される賦形剤または保存剤に対して、貯蔵期間を超える期間にわたって不活性であってもよい。それらは、投与(放出)アシスト源、例えば超音波トランスデューサに曝されても劣化(品質の低下)に対する耐性があり、また貯蔵された薬剤内への汚染物質の放出(に曝されても劣化)に対する耐性があるものであってもよい。それらは、本質的に金属、有機物および無機物による汚染はない。それらは、人間の皮膚に対して非刺激性であり、人間の汗と相互に作用しても安定を維持するものであってもよい。それらは、1年以上の期間にわたって貯蔵された形で安定した状態を維持し、また薬剤に浸されても時間の経過による劣化(品質的低下)に対する耐性があるものであってもよい。それらは、天然材料および/または合成材料で形成されていてもよい。それらは、液体の形でその重量の約14倍またはそれ以上吸収する能力がある(例えば、超吸収性の:superabsorbent)ものであってもよい。
【0026】
このような超吸収性材料は、パッドに対して、その薬剤を希釈溶液または懸濁液の形で貯蔵する能力を与える。このことは、溶液中で濃縮されたときに多量体(multimeric)構造を形成するものと信じられている例えばインスリンのようなポリペプチド(polypeptide)に対して特に有効であることを証明している。吸収性パッドが乾燥するのを防止し、従って、インスリンを希釈溶液の形に保つことによって、インスリンは単量体の形に保たれ、その形のインスリンはパッチから皮膚を通して最も容易に輸送される。
【0027】
さらに、アシストの構成、例えば能動的投与(放出)システムで使用されるときは、吸収性材料は、薬剤と架橋する官能基(functional groups)を含んでいてもよい。このような架橋は、薬剤をパッチ中に保持するために安定化させるように作用するものであってもよい。超音波信号は、パッチを通して当てられると、架橋を破壊し、それによって薬剤を吸収性パッドから解放し(放出し)、薬剤を対象物に向けて自由に放出(解放)する。吸収性材料は適度の数の架橋点を含み、それによって吸収性材料は薬剤との架橋を形成するが、薬剤の本来の構造を破壊するような架橋を形成することはなく、例えば超音波信号のようなアシスト(支援用)信号に曝されると、薬剤はもはや吸収性パッドに結合されておらず、対象物に向けて自由に放出(解放)される。
【0028】
一実施形態では、吸収性材料と薬剤は水素結合によって架橋されている。このような場合、吸収性材料は、例えばインスリンのようなポリペプチド薬剤の官能基と水素結合を形成する官能基を含んでいる。水素結合は薬剤の構造を安定化するように作用する。超音波信号に曝すと、薬剤を吸収性材料に架橋する水素結合が破壊され、ポリペプチドの本来の二次構造またはその他の構造上の特徴を形成する水素結合を破壊することはない。
【0029】
次に吸収性パッドの構成に用いられる特定の材料を示す。これらはすべて例であって、これらに限定されるものではない。これらの材料として、セルロース繊維パッド、綿、天然スポンジ(海綿)、織布繊維、ポリウレタン発泡体、ポリイソシヌレート(polyisocynurate)発泡体、不織布、溶融シリカ、でんぷん(スターチ)、トウモロコシ粉(corn meal)、木材パルプ繊維、コラーゲン・パッド、ポリメチルメタクリレート(poly methyl methacrylate)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン(poly vinyl pyrrolidine)、ポリアクリル酸、ポリ(2−ヒドロキシメチルメタクリレート)(poly(2-hydroxy ethyl methacrylate))、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリラクチド(pla)(polylactides(pla))、ポリグリコリド(pga)(polyglycolides(pga))、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(poly(lactide-co-glycolides))、ポリカーボネート、キトサン(chitosan)、ポリ(n−イソプロピルアクリルアミド)(poly(n-isopropylacryamide))、ポリメタクリル酸(poly methacrylic acid)とポリエチレングリコール(poly ethylene glycol)の共重合体製剤、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)とポリ(n−イソプロピルアクリルアミド)(poly(n-isopropylacrylamide))の共重合体製剤、ヒドロゲル、例えばポリアクリルアミド、ポリ(プロピレンオキシド)、ゲル材料のプルロニック(pluronic)ポリオール群、例えばプルロニック−キトサンヒドロゲル(pluronic-chitosan hydrogel)、およびシリカゲルがある。薬剤化合物を吸収し且つ刺激を受けたとき(付勢時)にこの薬剤を放出するその他の天然または合成材料も同様にこの使用に適している。
【0030】
図4は、適した吸収特性を有する種々の材料の網状組織(ネットワーク)を示している。図4はその吸収性を助ける幾つかの織目パターンを有していてもよいことを示している。それ自体内の各織目パターンは貯蔵された薬剤の放出を増強しまたは遅くする傾向がある。パッド材料を前処理することにより、材料によってまたは織目パターンによって薬剤の保持力が弱められる。
【0031】
そのような吸収性材料は、多種にわたる物質(薬剤)を患者に投与(放出)するのに役立つ。その物質は、例えば、皮膚に(dermally)、経皮的に(transdermally、transcutaneously)、内腔に(intralumenally)、および固体組織部位(solid tissue site)中に投与(放出)される。その物質またはその薬理学的に活性(アクティブ、能動的)部分を下層の組織または周囲の組織への吸収は、吸収性パッドを含むパッチに超音波または音響エネルギを与えることによってフォノフォレシス的に(phonophoretically:音響的に)アシストされる。その物質は、液体、ゲル、多孔性リザーバ、または挿入物(inserts)等を含む(しかしこれらに限定されるものではない)任意の適当な形態をとってもよく、また物質またはその薬理学的に活性(アクティブな)部分は、例えば、既存の状態を処置しまたは緩和し、または患者の別の状態を予防的に防止または阻止するものであってもよい。その物質の効果は、例えば抗腫瘍(anti-tumor)処置に対して与えられるような局所的なものであっても、または系統的なものであってもよい。適した薬剤には、皮膚およびその他の身体の表面を通してまたは固体組織中に自然に放出(投与)される(しかしこれに限定されない)広範囲にわたる種類の化合物が含まれる。
【0032】
一般的に、適した薬剤の非限定的な例に含まれまたは組み込まれるものには、例えば抗生物質(antibiotics)および抗ウイルス(antiviral)剤のような抗感染性薬(anti-infectives);鎮痛薬(analgesics)および鎮痛薬の組合せ;食欲減退薬(anorexics);抗虫下し剤(anti-helminthics);抗関節炎剤(anti-arthritics);抗喘息(anti-asthmatics)剤;抗けいれん剤(anticonvulsants);抗うつ剤(antidepressants);抗糖尿病(anti-diabetics)薬;抗下痢剤(anti-diarrheals);抗ヒスタミン剤(antihistamines);抗炎症(anti-inflammatory)薬;抗片頭痛(anti-migraine)調合剤;抗嘔吐剤(anti-nauseants);抗腫瘍剤(anti-neoplastics);抗パーキンソン病症候群(anti-parkinsonism)薬剤;抗掻痒剤(anti-pruritics);抗精神病剤(anti-psychotics);解熱剤(antipyretics);抗けいれん剤(鎮痙剤)(antispasmodics);抗コリン作用性薬(anti-cholinergics);交感神経興奮剤(sympathomimatics、sympathomimetics);キサンチン(xanthine)誘導体;カリウムおよびカルシウム・チャンネル遮断薬(channel blockers)、ベータ遮断薬(beta-blockers)、および抗不整脈剤(anti-arrhythmics)を含む(ただしこれらに限定させるものではない)心臓血管(cardiovascular)調合薬;血圧降下剤(anti-hypertensives);利尿薬(diuretics:排尿促進剤);全体的な冠状動脈(coronary)、末梢(peripheral)および大脳(cerebral)を含む血管拡張剤(ヴァソディレータ:vasodilator);中枢神経系刺激薬(central nervous system stimulants);充血除去剤(decongestants)を含む咳および感冒調合剤;エストラジオール(estradiol)およびコルチコステロイド(corticosteroid:副腎皮質ステロイド)を含む(ただしこれらに限定されない)ステロイドを含む(ただしこれに限定されない)ホルモン;睡眠薬(hypnotics);免疫抑制剤(immunosuppressives);筋弛緩剤(muscle relaxants);副交感神経遮断薬(parasympatholytics);精神刺激薬(psychostimulants);鎮痛剤(sedatives:鎮静剤);およびトランキライザ(精神安定剤)、がある。イオン化および非イオン化薬剤が、高分子量または低分子量の薬剤として投与または放出されてもよい。
【0033】
タンパク質性(proteinaceous)およびポリペプチド(polypeptide)薬剤は、ここに開示した本発明に関連して使用するのに適した1つのクラスの薬剤である。そのような薬剤は、しばしば胃腸管(gastrointestinal tract)内で破壊されまたは肝臓で代謝されるので、一般的に経口投与することができない。さらに、大抵のポリペプチド(polypeptide)薬剤は高分子量であることに起因して、通常の経皮投与(放出)システムは概して有効でない。吸収性パッドを含むパッチ内に含まれ得る薬剤(pharmaceutical)または栄養剤(nutritional)化合物の例は、アセトアミノフェン(acetaminophen)、アスピリン、コルチコステロン(corticosterone)、エリトロマイシン(erythromycin)、イブプロフェン(ibuprofen)、インスリン、ニトログリセリン、ニコチン、ステロイドを、含み(しかし、これらの薬剤に限定されない)、さらに、プロゲステロン(progesterone)、エストロゲン(estrogen)、例えばエストラジオール(estradiol)およびビタミンを含むが、これらに限定されない。適した形態のインスリンは、インディアナ州インディアナポリスにあるエリ リリー アンド カンパニー(Eli Lilly and Company)から市販されているHumulin(登録商標)およびHumulog(商標)を含むが、これらに限定されるものではない。栄養補助食品(nutraceutical)、薬品(medicinal)または薬剤の目的で使用される薬剤および/または栄養剤(nutritinal)化合物およびこれらの組み合わせを含む(しかし、これらに限定されない)任意のその他の物質(薬剤)を使用してもよい。皮膚の浸透性が比較的低く、または長い遅延時間を生じさせる薬剤と共同して、本発明の方法を使用することが望ましいかもしれない。
【0034】
本発明の一実施形態では、吸収性材料は凍結による前処理を受け、次いで真空乾燥が行われる。吸収性材料をそのように凍結乾燥させることによって、もし凍結乾燥処理が行われなければ吸収性材料にトラップ(捕獲)される空気または湿気のような汚染物質の量を減少させ得る。そうしなければ、そのような汚染物質は、吸収性材料の官能基と反応して、このような官能基が薬剤と架橋するのを阻止(防止)することがある。凍結乾燥により汚染物質は取除かれ、それによって吸収性材料の架橋サイト(架橋領域)が投与されるべき物質と自由に架橋を形成するように、その吸収性材料の架橋サイトが解放される。さらに、凍結乾燥によって、さもなくば、薬剤と反応し、または薬剤を汚染する可能性のある汚染物質を取除いてもよい。
【0035】
別の実施形態では、吸収性材料はアルコールまたは別の溶液で洗浄することによって前(予備)処理され、次いで凍結乾燥される。この前処理は、吸収性材料から湿気および空気を追い出し、材料の音響的共振特性を改善し、また汚染物質を取除く傾向があってもよい。また、この処理は、吸収性材料、特に繊維ストランドの表面張力を、その材料内の特定の物質が例えば超音波による励起によってより容易に解放されるような点にまで改善するのに貢献する。別の説明として、吸収性パッドの材料は、0.9%のNaCl水溶液に浸されて前処理されてもよい。その後、そのパッドはオプションとして(任意選択的に)凍結乾燥される。食塩水溶液を使用した前処理は、吸収性材料中に残留するNaClの残留物を生じさせる。食塩の残留物は湿潤剤として作用し、水分を吸収し、吸収性材料中に幾分かの湿気を保存する。これによって、吸収性パッドが乾燥するのが防止されて、パッド中に貯蔵された薬剤が溶液の形で残留することが可能になり、薬剤の溶液をだんだんと濃縮させる原因となる湿気の消失を防止することができる。薬剤溶液が濃縮されると、溶液から活性薬剤が集合または沈殿することがあり、それによって薬剤の輸送が妨げることがある。
【0036】
別の実施形態では、吸収性材料は超音波を使用して前処理される。前処理用超音波は、薬剤をパッドから解放するのに使用することを意図した周波数および強度の範囲にあってもよい。例えば、セルロース・パッド中に貯蔵された75単位のインスリンは、約20〜150kHz、125mw/cmの強度の超音波を使用して、解放されればよい。その他の周波数、強度および/またはこれらの組合せも使用可能である。これとは関係なく、セルロース・パッドは、前処理用の信号とほぼ同じ超音波周波数および強度のレベル付近で処理される。この前処理によって、吸収性材料から湿気および空気を追い出す傾向があってもよく、パッドおよび材料の音響共振特性の均質性を改善してもよい。
【0037】
次に示す材料は、減衰増強の実験のために選択されたものである。
【0038】
材料1
材料:セルロース・パッド、エチレンビニルアセテートをベース(基材)とする合成ラテックスを含む木材パルプ。テネシー州38108、メンフィス、1001ティルマン(Tillman)ストリートPOボックス80407のバックアイ アブゾーベント プロダクツ(Buckeye Absorbent Products)社によって供給されたサプライヤー モデルNo.Vicell#6009、寸法:幅4.5cm×長さ4.5cm×厚さ0.92mm。この材料は、高い水分の吸収性(高い吸水性)に基づいて選択され、インスリンを汚染する可能性のより低い天然成分で形成された。
【0039】
材料2
材料:不織布ポリエステル繊維混合物、ミネソタ州55133、セントポール、POボックス33275、ビルディング275-03E-10、3Mセンタにある3M社によって供給されたM−261420025、Microdon-Web、寸法:幅4.5cm×長さ4.5cm×厚さ5mm。この材料は、約2mls/平方インチの水分を吸収することに基づいて選択された。
【0040】
材料3
材料:ポリプロピレン不織布、ミネソタ州55133、セントポール、POボックス33275、ビルディング275-03E-10、3Mセンタにある3M社によって供給されたサプライヤー モデルNo.3Mコトラン(Cotran)9729、寸法:幅4.5cm×長さ4.5cm×厚さ0.33mm。この材料は、中程度の水分の吸収性を有し、有効(活性)薬学的成分(API)にも同様に付着することに基づいて選択された。
【0041】
実験による前処理
3つの材料すべてを4.445cm×4.445cm(1.75インチ×1.75インチ)の正方形に切断した。試験用正方形材料を、図5に示すように吸収性正方形材料上に直接配置された単一のエレメント(素子)トランスデューサと共にフランツ拡散セル(Franz Diffusion Cell)500に取り付けた。図5のフランツ拡散セル500は、超音波トランスデューサ510、試験用パッド520、収集用フラスコ530、およびシール540を具えている。フラスコ内530には水中聴音器(hydrophone)550が設けられている。また、フラスコ530はサンプリング用ポート(出口)560を具えている。
【0042】
超音波トランスデューサ510は、20kHzで1平方センチメートル当り125mWの強度の超音波信号を発生する。吸収性の長方形材料は60分間連続して処理され、次いで取り出されてポリバッグ内に配置され、次にこのポリバッグは電気的シール装置によって加熱シールされた。このバッグは、超音波減衰試験が行われるまで乾燥チャンバ(容器、室)中で保存された。
【0043】
各吸収性パッドの材料520をトランスデューサ510に直接取り付けた。各吸収性パッドはフラスコ530内の水中聴音器550から10cm離して配置されており、フラスコ530には周囲温度の蒸留水が含まれていた。トランスデューサ510は、125mW/cmの標準強度に維持された変化する超音波周波数レベルに設定された単一エレメントのトランスデューサであった。
【0044】
最初、フラスコ上に吸収性パッドを取り付けないで第1回目の測定を行って、水中聴音器の強度出力をオシロスコープ上で読取り、材料による干渉がない状態で超音波強度を調整(制御)した。次に、吸収性材料パッドをそのフラスコとその超音波トランスデューサの間に配置して2回目の減衰の読み取りを行った。2つのタイプの減衰測定が行われた。第1のタイプの減衰測定は、サンプルと水中聴音器の間の距離を10cmに保って20kHzで減衰測定を行った。第2のタイプの減衰測定は、サンプルと水中聴音器の間の距離を10cmに保って40kHzで減衰測定を行った。測定結果は、表1に、材料サンプルが存在しない状態で対照標準(コントロール)測定値と比較したパーセント値(百分率)として示されている。
【0045】
【表1】

【0046】
これらの測定結果から材料1(凍結乾燥なし)および材料2(凍結乾燥)は、20kHzの前処理で最少の減衰を示すことが分かるであろう。材料3は、凍結乾燥時に崩壊し(crumble)、パッド形式で完全な状態に維持することはできなかった。一般に、減衰が小さくなればなる程、材料を通過する超音波のトランスダクション(transduction:移行、変換)の有効性(効果)はより大きくなる。従って、表1から明らかなように、比較基準として20kHz周波数の信号を使用すると、凍結乾燥によって、材料2については減衰が小さくなり、材料1については減衰が大きくなる、という結果が得られた。従って、材料2は材料1よりも吸収性パッドとして使用するのに、より良好な適用可能性を有する。
【0047】
或る種の材料の固有(真性)のミクロ(微細)構造に起因して、凍結乾燥によって、その材料中のエアポケットを取除くことができ、材料(例えば材料2)を通過する超音波トランスダクションに対する抵抗をより小さくするかまたは全く無くすことができる。代替法として、或る種の材料の場合、凍結乾燥がミクロ構造に対して有意な(実質的な)影響を与えなくてもよく、または実際には最終的に超音波トランスダクションに対する抵抗を増大させるエアポケットを増大させ、従って減衰を増大させることになる。この性質も或る環境では望ましい。
【0048】
表2および3はその他の実験データを示している。
【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
表2および表3は、試験材料1、試験材料2および試験材料3について凍結乾燥(FD)を行った場合と凍結乾燥を行わない場合について、異なる周波数を使用した超音波トランスダクションに対する%(パーセント)減衰率について実行された実験の生のデータを示している。20kHzに設定された周波数について特に強調された行は、凍結乾燥(FD)を行った場合と凍結乾燥を行わない場合の3つの材料の%(パーセント)減衰率を示す。
【0052】
従って、吸収性材料を超音波で前処理することによって吸収性材料の超音波減衰率が変化することが示された。このことは吸収性材料から湿気および空気を追い出し、さらにここで説明した他のメカニズムの結果として得られたものであると推測されるが、このことは本願発明を限定する要因ではない。さらに、その前処理は、吸収性材料をパッチ内に配置する前または後に行われてもよい。また、吸収性材料をパッチ内に配置する前または後に、このパッチを、投与(放出)すべき物質で充填してもよい。その後、そのパッチはユーザに投与(放出)するためにシールされる。
【0053】
本発明の精神および範囲を逸脱することなく本発明の装置および方法(プロセス)において改変、変形および変更を行ってもよいことは、この分野の専門家には明らかである。本発明は、請求の範囲および均等手段の範囲内で本発明の改変、変形および変更をカバーすることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、リザーバ・タイプのパッチを示している。
【図2】図2は、DIAマトリックス・タイプのパッチを示している。
【図3】図3は、吸収性パッドを組み込んだパッチを示している。
【図4】図4は、吸収特性に適した種々の材料の網状組織を示している。
【図5】図5は、本発明の或る幾つかの原理を試験するために使用されるフランツ拡散(Franz Diffusion)セルを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対して投与すべき少なくとも1つの物質を含むパッチを調製する方法であって、
吸収性材料を準備するステップと、
前記吸収性材料に高周波音波を当てるステップと、
前記高周波音波が当てられた吸収性材料に少なくとも1つの物質を導入するステップと、
前記吸収性材料をパッチ内に配置するステップと、
前記物質を保持する高周波音波が当てられた材料を含むパッチを、シールするステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記物質は、ユーザの機能的に近い部分内に貼付され且つ超音波で活性化されたパッチによってユーザに投与され、ここで、前記音波を当てることおよび超音波活性化では少なくとも1つの実質的に共通の周波数が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
音波を当てることおよび超音波活性化では少なくとも1つの実質的に共通の強度が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ユーザに対して放出すべき少なくとも1つの物質を含むパッチを調製する方法であって、
吸収性材料を準備するステップと、
前記吸収性材料に音波を当てるステップと、
前記音波が当てられた材料に少なくとも1つの物質を導入するステップと、
前記音波が当てられた材料をパッチ内に配置するステップと、
前記物質を保持する音波が当てられた材料を含むパッチを、シールするステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
ユーザに対して放出すべき少なくとも1つの物質を含むパッチを調製する方法であって、
吸収性材料を準備するステップと、
前記吸収性材料を凍結乾燥させるステップと、
前記凍結乾燥された材料に少なくとも1つの物質を導入するステップと、
前記凍結乾燥された材料をパッチ内に配置するステップと、
前記物質を保持する凍結乾燥材料を含むパッチを、シールするステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記凍結乾燥の前に前記吸収性材料をさらに化学的に処理するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記凍結乾燥の前に前記吸収性材料にさらに食塩を導入するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記化学的処理は前記吸収性材料を食塩溶液中に浸すことを含むものである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記食塩溶液は0.9%のNaCl溶液である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
物質を放出するパッチであって、
コンテナと、
該コンテナ中に物質を保持する吸収性材料と、
を含み、
前記物質と吸収性材料は架橋されているものである、
パッチ。
【請求項11】
前記吸収性材料は、前記架橋を容易にするために予め処理される、請求項10に記載のパッチ。
【請求項12】
前記吸収性材料に高周波音波が当てられる、請求項10に記載のパッチ。
【請求項13】
前記吸収性材料は凍結乾燥される、請求項10に記載のパッチ。
【請求項14】
前記吸収性パッドは洗浄される、請求項10に記載のパッチ。
【請求項15】
前記吸収性材料は、前記物質とは異なる食塩からなるものである、請求項10に記載のパッチ。
【請求項16】
前記パッチは、さらに、前記コンテナをユーザに固定するために前記コンテナ上に粘着剤を含み、
前記粘着剤と物質は互いに分離されているものである、請求項10に記載のパッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−531587(P2008−531587A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557174(P2007−557174)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006508
【国際公開番号】WO2006/091762
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507285407)ダーミソニックス インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】DERMISONICS,INC.
【住所又は居所原語表記】Four Tower Bridge,200 Bar−Harbor Drive,West Conshohocken,Pennsylvania 19428 United States of America
【Fターム(参考)】