説明

皮膚に対する鎮痛効果を提供するための組成物

【課題】痒み、痛み、刺痛、灼けつく感覚などの少なくとも1つの症状を示している皮膚の領域に適用する鎮痛効果を有する組成物の提供。
【解決手段】N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、および下記トリス[2−(イソプロピルアミン)エチルアミンなどからなる群より選択されるアミン含有化合物またはそれらの美容的に許容可能な塩と、感覚遮断薬とを含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、アミン含有化合物と感覚遮断薬とを含有する組成物に関し、この組成物は、痒み、痛み、刺痛、灼けつく感覚などの症状を示している皮膚の領域に適用されると、この皮膚に対して鎮痛効果を提供する。
【0002】
〔発明の背景〕
湿疹、乾癬、ざ瘡、酒さ、刺激性接触皮膚炎(contact irritant dermatitis)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、日光誘導性皮膚病(sunlight-induced dermatoses)、および乾性肌はすべて、皮膚の痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚を引き起こす状態である。幾年もの間、消費者は、これらの状態を処置するために鎮痛薬剤に頼って来た。鎮痛薬剤は、結果として意識を喪失することなくして、痛み、痒み、刺痛、灼けつく感覚のような感覚神経の感覚を減らす。鎮痛薬は、時折、鎮痛剤薬物(painkiller medications)と称される。処方箋調剤、および医師の処方不要の製剤の両方で入手可能な多数の異なるタイプの鎮痛性の薬物がある。鎮痛性のクスリの例としては、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、COX‐2抑制剤セレコキシブ(COX-2 inhibitor celecoxib)、ならびに、モルヒネ、オキシコドン、およびヒドロコドンを含めた麻薬を含む。
【0003】
局所用の鎮痛薬剤は、反対刺激薬とも呼ばれる。この名前は、これらの薬剤が、皮膚の血管を拡張させることによりこの皮膚が赤くなること(このことは、興奮する感情を和らげる)を引き起こすという事実に由来している。反対刺激薬という用語は、知覚神経終末(sensory nerve endings)の刺激作用が、同じ神経により貢献される下にある筋肉または関節における痛みを変化させるか、または相殺するという考えをさす。局所用の鎮痛薬剤の例としては、カプサイシン、蕃椒脂油、サリチル酸コリン、サリチル酸エチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、メタノール、サリチル酸、およびテレピン油を含む。鎮痛薬剤は刺激作用を軽減する面では効果的であるが、中には望ましくない(undesiarble)副作用を有するものがある。例えば、鎮痛薬の中には、消費者の心拍を遅くするものがある。その他の鎮痛薬には、皮膚透過性の問題が原因で、局所的に送達することが難しいものがある。従来の鎮痛性の材料を使用する必要なくして、皮膚に鎮痛効果を与える組成物であって、これにより、皮膚の痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚を軽減するか、または減らしながら、従来の鎮痛性の材料の使用を必要としない組成物、が引き続き必要とされている。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明は、式1および式IIからなる群より選択されるアミン含有化合物であって、
【化1】


ここで、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、C〜Cアルキル、およびC〜Cヒドロキシアルキルからなる群より選択される、アミン含有化合物、またはそれらの美容的に許容可能な塩と、
感覚遮断薬と、を含み、
アミン含有化合物および感覚遮断薬は、従来の鎮痛性の材料がなくても、痒み、痛み、刺痛、灼けつく感覚などの症状を示している皮膚の領域に適用されると、この皮膚に対して鎮痛効果を提供するのに有効な量で存在する、組成物を提供する。
【0005】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の組成物は、式1および式IIからなる群より選択されるアミン含有化合物であって、
【化2】

ここで、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、C〜Cアルキル、およびC〜Cヒドロキシアルキルからなる群より選択される、アミン含有化合物、またはそれらの美容的に許容可能な塩を含む。ある一つの実施形態において、本発明の組成物は、R、R、R、およびRがそれぞれC〜CアルキルおよびC〜Cアルカノールからなる群より選択される、少なくとも1つの式Iの化合物を含有する。さらなる実施形態において、式IのR、R、R、およびRの少なくとも1つは、少なくとも1つのヒドロキシル基を有しているC〜Cアルカノール基である。式Iの化合物の例としては、限定されるものではないが、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(THPED)、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(THEED)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(これらの構造は下記に示されている)、これらの鏡像異性体、またはこれらのジアステレオ異性体を含む。
【化3】

【0006】
式IIの化合物の例としては、限定されるものではないが、トリス[2−(イソプロピルアミノ)エチルアミン(この構造は下記に示されている)、この鏡像異性体、またはこのジアステレオ異性体を含む。
【化4】

【0007】
エチレンジアミンの酸化プロピレンとの反応からのN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンの合成は、米国特許第2,697,118号に記載されている。
【0008】
本発明のアミン含有化合物は、美容的に許容可能な塩の形態で存在していてもよい。医薬において使用するために、本発明の化合物の塩は、無毒の「美容的に許容可能な塩」、すなわち、美容的に許容可能な酸性/陰イオン性の塩、もしくは塩基性/陽イオン性の塩をさす。美容的に許容可能な酸性/陰イオン性の塩として、限定されるものではないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、炭酸水素塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム塩(calcium edetate)、カンシラート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩化水素化物、エデト酸塩、エジシル酸塩(edisylate)、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプト酸塩(glyceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩(glycollylarsanilate)、ヘキシルリゾルシネート(hexylresorcinate)、ヒドラバミン塩(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート(hydroxynaphthoate)、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩(lactobionate)、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル塩(methylbromide)、硝酸メチル塩(methylnitrate)、硫酸メチル塩(methylnitrate)、ムコ酸塩(mucate)、ナプシル酸塩(napsylate)、硝酸塩、パモエート、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩(diphospate)、ポリガラクツロ酸塩(polygalacturonate)、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(teoclate)、トシル化物(tosylate)、およびトリエチルヨウ化物(triethiodide)を含む。美容的に許容可能な塩基性/陽イオン性の塩としては、限定されるものではないが、アルミニウム、ベンザチン、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リチウム、マグネシウム、メグルミン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、および亜鉛の塩を含む。しかしながら、その他の塩も、本発明に従う組成物の製剤において有用であり得る。有機酸または無機酸としてはまた、限定されるものではないが、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸(hydroxyethanesulfonic)、シュウ酸、2−ナフタレンスルホン酸(2-naphthalenesulfonic)、p−トルエンスルホン酸(p-toluenesulfonic)、シクロヘキサンスルファミン酸(cyclohexanesulfamic)、サッカリン酸(saccharinic)、またはトリフルオロ酢酸を含む。アミン含有化合物は、組成物中に、組成物の約0.75重量%〜約10重量%、例えば0.75重量%〜2重量%の量で存在する。
【0009】
本発明の組成物は、感覚遮断薬も含有する。感覚遮断薬により意味されるのは、痒み、痛み、刺痛、灼けつく感覚などの少なくとも1つの症状を示している皮膚の領域に、アミン含有化合物と組み合わせて適用されると、皮膚の症候性の領域(組成物が投与される領域)でカリウムイオンを提供し、これにより、鎮痛効果を提供する、本明細書で記述されているような薬剤である。カリウムイオンは、中にカリウムイオンを含有している組成物の局所的な投与により、または組成物が投与される皮膚の領域でのカリウムイオンの生成を提供する感覚遮断薬を含有している組成物の局所的な投与により、皮膚の領域に直接送達され得る。そのような薬剤は、カリウム塩、およびカリウムチャネル作動薬(potassium channel agonists)からなる群より選択されてもよい。カリウム塩は、症状を示している皮膚の部位にカリウムイオンを送達するために使用されてもよく、一方、カリウムチャネル作動薬は、症状を示している皮膚の部位でカリウムイオンが生成されるようにする。
【0010】
本発明の組成物は、従来の鎮痛性の材料を必要とすることなく、皮膚に鎮痛効果を提供するのに有効な量の感覚遮断薬を含有する。皮膚に対するそのような鎮痛効果の決定において、LiebelらのArch Dermatol Res. 298:191-199, 2006で示されている既知の方法が利用された。特には、ひっかき行動のパーセント抑制率(percent inhibition)および耳浮腫のパーセント抑制率が、本明細書中の実施例に記述されているように検査された。本発明の組成物は、少なくとも約25パーセントの耳浮腫の抑制率、または少なくとも約30パーセントを提供するのに効果的である。ある実施形態においては、かかる組成物は、約40パーセントを超える耳浮腫の抑制率を提供する。加えて、本発明のある実施形態は、利用されるテスト方法に従って、約50パーセントを超えるか、または約60パーセントを超えるひっかき行動の抑制率を提供する。
【0011】
カリウム塩の場合、本発明の組成物中のカリウム塩の量は、組成物中に、カリウムイオンを組成物の約0.15重量%〜約10重量%、例えば約0.20重量%〜約2重量%の範囲で提供するのに有効な量である。好適なカリウム塩としては、限定されるものではないが、乳酸カリウム、臭化カリウム、炭酸カリウム、塩素酸カリウム、塩化カリウム、クロム酸カリウム、シアン化カリウム、二クロム酸カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、ピロリン酸カリウム、フルオロケイ酸カリウム、および酒石酸カリウムナトリウムを含む。
【0012】
好適なカリウムチャネル作動薬としては、限定的にではなく、ミノキシジル、ピナシジル(pinacidil)、ジアゾキシド、クロマカリン(cromakalin)、ニコランジル、およびアプリカリム(aprikalim)といった化学的に多様な薬剤の群を含む。(Lawson., 2000;Takanoら, 2004、および、Biochemical Targets of Plant Bioactive Compounds, Polya., 2003の表4.3に列挙されているものを参照のこと。)本発明の組成物は、約0.25重量%〜約10重量%のカリウムチャネル作動薬、または組成物の約0.25重量%〜約2重量%を含んでもよい。下記により限定されることを意図するものではいなが、カリウムチャネル作動薬は、細胞からのカリウムの流出を誘導する。このことは、カルシウムが細胞の中に戻って入っていくのを制限する過分極化された状態を生み出し、細胞の興奮性を弱める。カリウムチャネル作動薬はまた、ニューロンの興奮性を低下させて神経伝達を妨害することにより、ニューロンに影響を及ぼす。痒み、痛み、刺痛、および灼けつく感覚は、無髄神経C線維(unmyelinated C-fibers)のような知覚神経(sensory neurons)により伝達される。このように、神経伝達上のカリウムチャネル作動薬の効果が、これらの感覚神経の感覚を抑制する。
【0013】
本発明の組成物は、当業者によく知られている標準的な技術により調製される。組成物が2つ以上の相を含んでいる場合には、一般に、類似の相の材料の間仕切が任意の順で加えられた状態で、異なる相が、別々に調製されるであろう。2つの相は、その後、勢いのある攪拌により結合され、多相系、例えば、乳濁液または分散液を形成するであろう。高い揮発性があるか、または高温で加水分解しやすい調合物中のあらゆる成分は、通常、穏やかに攪拌することを伴う、異なる相のその後の混合で加えられるであろう。
【0014】
本発明の組成物は、鎮痛効果を提供することにより、皮膚の痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚の症状を軽減するか、または減らすために有用である。鎮痛効果により意味されるのは、組成物が、痒み、痛み、刺痛、または灼けつく感覚の少なくとも1つの症状を被っている皮膚の領域に適用されると、既知の鎮痛性の組成物により提供されるそのような症状の軽減または減少と類似であるが、そのような既知の鎮痛性の組成物の負の副作用なしで、そのような症状の軽減または減少を提供することである。本発明の組成物で利用される感覚遮断薬に依存して、アミン含有化合物と感覚遮断薬との重量比は、約1:1〜約1:3の範囲にわたってよく、例えば約1:2でもよい。
【0015】
組成物は、これらの症状を示している皮膚に局所的に適用される。本明細書中で使用される「局所的に適用すること」は、例えば、手、または、ワイプ、パフ、ローラ、もしくはスプレーのような塗布器を用いることにより、皮膚の外側に直接塗るか、または広げることを意味する。本明細書中で使用される「美容的に許容可能な」は、不適当な毒性、不適合性、不安定性、刺激作用、アレルギー応答などなしで、ほ乳類の組織(例えば、皮膚または毛髪)に接触して使用するのに好適な、この用語が説明している、製品、化合物、または組成物を意味している。この用語は、もっぱら化粧品として使用するための、この用語が説明している化合物/製品/組成物に限定することを意図されてはおらず、例えば、成分/製品は、医薬品として使用されてもよい。本明細書中で使用される「局所用の担体」は、ほ乳類への局所的な投与のために好適な、1つ以上の相溶性の固体または液体の賦形剤の希釈剤を意味する。局所用の担体の例としては、限定されるものではないが、水、ワックス、油、皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、およびこれらの混合物を含む。
【0016】
本発明の組成物は、皮膚に対する局所的な適用のために好適な調合物として提供されてもよい。組成物は、美容的に許容可能な局所用の担体を含んでもよい。美容的に許容可能な局所用の担体は、組成物の約50重量%〜約99.99重量%、例えば、組成物の約80重量%〜約95重量%を構成してもよい。組成物は、限定されるものではないが、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、シェービングクリーム、軟膏、クレンジング液体洗剤および固体バー、シャンプー、ペースト、パウダー、ムース、シェービングクリーム、ならびにワイプのような固体および液体の組成物を含む、広範にわたる種々の製品タイプへと作製されてもよい。これらの製品タイプは、限定されるものではないが、溶液、乳濁液(例えば、マイクロエマルジョンおよびナノエマルジョン)、ゲル、固体、およびリポソームを含む、いくつかのタイプの美容的に許容可能な局所用の担体を含んでもよい。以下は、そのような担体の非限定的な例である。その他の担体も、当業者により配合されることができる。
【0017】
本発明の組成物は、溶液として配合されることができる。溶液は典型的には、水性溶媒、例えば、約50%〜約99.99%、または約90%〜約99%の美容的に許容可能な水性溶媒を含む。対象の発明の局所用の組成物は、皮膚軟化剤を含む溶液として配合されてもよい。そのような組成物は、好ましくは、約2%〜約50%の皮膚軟化剤を含有する。本明細書中で使用される「皮膚軟化剤」は、皮膚の保護のためだけでなく、乾きの防止または軽減のために使用される材料をさす。広範にわたる種々の好適な皮膚軟化剤が既知であり、本明細書中で使用されてもよい。WenningerおよびMcEwen編集のInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, pp. 1656-61, 1626, 1654-55(The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Assoc., Washington, D.C., 7th Edition, 1997)(以下、’INCI Handbook’と称する)を参照のこと。
【0018】
そのような溶液からローションが作製されてもよい。ローションは典型的には、約1%〜約20%、例えば約5%〜約10%の皮膚軟化剤(または複数の皮膚軟化剤)、および約50%〜約90%、例えば約60%〜約80%の水を含む。
【0019】
溶液から配合されてもよい他のタイプの製品は、クリームである。クリームは典型的には、約5%〜約50%、例えば約10%〜約20%の皮膚軟化剤、および約45%〜約85%、例えば約50%〜約75%の水を含む。
【0020】
溶液から配合されてもよいさらなる他のタイプの製品は、軟膏である。軟膏は、動物油もしくは植物油の単純ベース、または半固形の炭化水素を含んでもよい。軟膏は、約2%〜約10%の皮膚軟化剤に加えて、約0.1%〜約2%の増粘剤を含んでもよい。本明細書中で有用な増粘剤または粘度上昇剤のより完全な開示は、INCI Handbook pp. 1693-1697で見つけることができる。
【0021】
本発明の組成物は、乳濁液として配合されてもよい。担体が乳濁液である場合には、担体の約1%〜約10%、例えば約2%〜約5%が、乳化剤を含む。乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性であってもよい。好適な乳化剤が、例えば、INCI Handbook, pp.1673-1686に開示されている。
【0022】
ローションおよびクリームは、乳濁液として配合されることができる。そのようなローションは、典型的には、0.5%〜約5%の乳化剤を含む。そのようなクリームは、典型的には、約1%〜約20%、例えば約5%〜約10%の皮膚軟化剤、約20%〜約80%、例えば30%〜約70%の水、および約1%〜約10%、例えば約2%〜約5%の乳化剤を含むであろう。
【0023】
ローションおよびクリームのような、水中油型および油中水型の単一乳濁液スキンケア製剤は、化粧品の分野ではよく知られており、対象の発明でも有用である。水中油中水型(water-in-oil-in-water type)といった多相乳濁液の組成物もまた、対象の発明において有用である。一般に、そのような単一または多相の乳濁液は、必須な成分として、水、皮膚軟化剤、および乳化剤を含有する。
【0024】
本発明の組成物は、ゲル、例えば、好適なゲル化剤を使用する水性ゲルとして配合させることもできる。水性ゲルのために好適なゲル化剤としては、限定されるものではないが、天然ゴム、アクリル酸およびアクリル酸塩のポリマーならびにコポリマー、ならびにセルロース誘導体、例えばヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースを含む。鉱油のような油のために好適なゲル化剤としては、限定されるものではないが、水素化されたブチレン/エチレン/スチレンのコポリマー、および水素化されたエチレン/プロピレン/スチレンのコポリマーを含む。そのようなゲルは、典型的には、約0.1重量%〜5重量%の間のそのようなゲル化剤を含む。
【0025】
本発明の組成物は、固体調合物、例えば、ワックス系スティック(wax-based stick)、石鹸バー組成物、パウダー、またはパウダーを含有するワイプとなるように配合されてもよい。
【0026】
本発明の組成物は、上述した構成成分に加えて、皮膚、毛髪、および爪上でそれらの技術で設立されたレベルで使用するための組成物で従来使用される、広範にわたる種々の追加の油溶性材料および/または水溶性材料を含有してもよい。
【0027】
組成物は、1日に1回以上、例えば1日に2回適用されてもよい。使用される量は、最終消費者の年齢および身体的状態、処置の期間、利用される特定の化合物、製品、または組成物、利用される特別な美容的に許容可能な担体などの因子によって変わるであろう。いくつかの例が、以下に説明される。本発明は、その詳細に限定されると解釈されるべきではない。
【0028】
例1−化合物48/80に対するひっかき行動
7〜9週齢のアルビノ雄CD−1マウスを使用した。試験は、既知の方法に基づいていた(LiebelらのArch Dermatol Res. 298:191-199, 2006を参照のこと)。テスト薬剤を、100%エタノール中、表1に示した濃度で調製し、50μLを、ひっかき行動の誘発30分前に、剪毛した背側の皮膚に局所的に適用した(処置グループにつき8マウス)。その後、化合物48/80(50μg/50μL:w/v)を背側領域へと真皮の間に注入し、その後30分間ひっかきを数えた。この結果を表1に示す。
【表1】

【0029】
乳酸カリウムおよびテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの組み合わせは、このモデルにおいて非常に効果的であった。対照的に、等しいレベルのカリウムイオンまたはテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン単独は、非常に弱い抑制を示すか、抑制しなかった。これらの結果は、乳酸カリウムによって送達される適正な量のカリウムイオンと、適正な量のテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの組み合わせが、相乗的にひっかき行動を減らすことにおいて鎮痛効果を生み出し、したがって、痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚を防止および/または処置することが予期され得たことを実証している。
【0030】
例2
神経性炎症とも呼ばれる、感覚神経の炎症は、皮膚における知覚神経の活性化がきっかけとなるタイプの炎症である。バニロイドレセプター(vanilloid receptors)に作用するある天然物質は、知覚神経(C−線維)に炎症性の神経ペプチドを放出させる。マウスの皮膚において、カプサイシンまたはレシニフェラトキシン(RTX)のようなバニロイドレセプター活性化因子の適用により、浮腫応答が急速に生じる。感覚神経の刺激に対する応答を抑制する化合物が、局所用で鎮痛性の痒みまたは刺痛の抑制剤または炎症を起こした皮膚のための鎮痛性薬剤(soothing agents)として有用であり得る。
【0031】
7〜9週齢のアルビノ雄CD−1マウスを使用した。マウスの耳における神経性炎症の誘発は、既知の方法に基づいていた(LiebelらのArch Dermatol Res. 298:191-199, 2006を参照のこと)。アセトン中で調製したレシニフェラトキシン(0.05%)を20μL用量で左耳に適用した(処置グループにつき7マウス)。右耳は処置しなかった。テスト薬剤を、70%エタノール/30%プロピレングリコール中で調製し、レシニフェラトキシン誘発後すぐに左耳に(20μL)適用した。パーセント抑制率を、処置をレシニフェラトキシン単独と比較することにより算出した。化合物の抗神経性炎症効果は、耳の重量の増加の抑制として明らかになる。この結果を表2に示す。
【表2】

【0032】
乳酸カリウム、またはテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、またはトリス[2−(イソプロピルアミノ)エチル]アミンそれぞれを1つずつ使用しても、レシニフェラトキシンに対する神経性の炎症性応答を有意に抑制することができなかった。しかしながら、乳酸カリウムとテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンまたはトリス[2−(イソプロピルアミノ)エチル]アミンとの組み合わせは、レシニフェラトキシンに対する神経性の炎症性応答を有意に抑制した。乳酸カリウムとテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンまたはトリス[2−(イソプロピルアミノ)エチル]アミンとの組み合わせは、このモデルにおいて非常に効果的であった。対照的に、既知の麻酔性化合物であるリドカイン(Morgan MおよびRussell WJ. Br J Anaesth. 1975 47:586-591, 1975)もまた活性であったが、本発明の組み合わせは、0.5%リドカイン単独よりも有意により効果的であった。共にこれらの結果は、特定の例では乳酸カリウムにより送達されるカリウムイオンと、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンまたはトリス[2−(イソプロピルアミノ)エチル]アミンとの組み合わせが、神経性炎症を減らすことにおいて鎮痛効果を生み出し、したがって、痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚を防止および/または処置すると予期され得たことを実証している。
【0033】
例3
塩化物の異なるイオンを、例2で説明した、マウスにおけるレシニフェラトキシン神経性炎症モデルで評価した。この結果を表3に示す。
【表3】

【0034】
塩化カリウムおよびテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの組み合わせは、このモデルにおいて非常に効果的であった。対照的に、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンと組み合わせた塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムは、神経性炎症の抑制が非常に弱かった。
【0035】
例4
異なるカリウム塩を、例2で説明した、マウスにおけるレシニフェラトキシン神経性炎症モデルにおいて研究した。この結果を表4に示す。
【表4】

【0036】
テストしたいずれのカリウム塩とのテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンの組み合わせも、誘発された神経性炎症に対して抑制を提供した。カリウム塩単独では、神経性炎症に対して非常に弱い活性を有したか、全く活性を有していなかった。共にこれらの結果は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンと組み合わせた種々のカリウム塩が、神経性炎症を減らすことにおいて鎮痛効果を生み出し、したがって、痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚を防止および/または処置すると予期され得たことを実証している。
【0037】
例5
乳酸カリウムおよびテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンを含有する局所用の調合物を、以下の表5の成分リストをテストするために作成した。
【表5】

【0038】
例6
例5で調製した調合物を、例2で説明した、マウスにおけるレシニフェラトキシン神経性炎症モデルにおいてテストした。この結果を表6に示す。
【表6】

【0039】
これらの結果は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンと組み合わせた乳酸カリウムが、神経性炎症を減らすことにおいて鎮痛効果を生み出し、したがって、痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚を防止および/または処置すると予期され得たことを実証している。
【0040】
例7
乳酸カリウムおよびテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンを含有する調合物の耐性および効力を評価するための目隠し制御された臨床利用治験(blinded controlled clinical usage trial)を、Hanifin and Rajka診断基準により決定されたところの軽度から中程度のアトピー性皮膚炎を有する30人の健康な成人ヒト被験者に使用した。被験者はまた、彼等のアトピー性皮膚炎に付随する痒みを被っていた。痒み感覚の臨床判定および被験者の自己判定をベースライン、適用後1時間、および1回の適用後24時間に行った。この結果を表7に示す。
【表7】

【0041】
乳酸カリウムおよびテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンを含有する調合物の1回の適用で、アトピー性皮膚炎が原因で痒みを伴う皮膚を有する被験者における痒み感覚における長期の減少をもたらすことができた。これらの結果は、乳酸カリウムおよびテトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンは、痒みを減らすことにおいて鎮痛効果を生み出し、従って、痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚を防止および/または処置すると予期され得たことを実証している。
【0042】
例8:化合物48/80によるひっかき行動に対するカリウムチャネル作動薬
7〜9週齢のアルビノ雄CD−1マウスを使用した。試験は、既知の方法に基づいていた(LiebelらのArch Dermatol Res. 298:191-199, 2006を参照のこと)。テスト薬剤を、100%エタノール中で調製し、ひっかき行動の誘発の30分前に、剪毛した背側皮膚に、局所的に50μLを適用した(処置グループにつき8マウス)。その後、化合物48/80(50μg/50μL w/v)を背側領域に対して真皮の間に注入し、その後30分間ひっかきを数えた。
【表8】

【0043】
これらの結果は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンと組み合わせたカリウムチャネル作動薬が、ひっかき行動を減らすことにおいて相乗的な鎮痛効果を生み出し、したがって、痒み、痛み、刺痛、および/または灼けつく感覚を防止および/または処置すると予期され得たことを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物において、
式1および式IIからなる群より選択されるアミン含有化合物であって、
【化1】


ここで、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、C〜Cアルキル、およびC〜Cヒドロキシアルキルからなる群より選択される、アミン含有化合物、またはそれらの美容的に許容可能な塩と、
感覚遮断薬と、
を含み、
前記アミン含有化合物および前記感覚遮断薬は、皮膚に適用されると、この皮膚に対して鎮痛効果を提供するのに有効な量で存在する、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、
前記感覚遮断薬は、カリウム塩、およびカリウムチャネル作動薬からなる群より選択される、組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の組成物において、
約0.75重量%〜約10重量%の前記アミン含有化合物と、
約0.25重量%〜約10重量%の前記感覚遮断薬と、
を含む、組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の組成物において、
前記感覚遮断薬は、前記カリウム塩であり、
アミン含有化合物の量は、前記組成物の約0.75重量%〜約10重量%の範囲にあり、
前記カリウム塩の量は、前記組成物の約0.15重量%〜約10重量%の範囲で前記組成物中にカリウムイオンを提供するのに有効な量である、組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の組成物において、
前記感覚遮断薬は、前記カリウム塩であり、
アミン含有化合物の量は、前記組成物の約0.75重量%〜約2重量%の範囲にあり、
カリウム塩の量は、前記組成物の約0.75重量%〜約2重量%の範囲で前記組成物中にカリウムイオンを提供するのに有効な量である、組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の組成物において、
前記アミン含有化合物は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、およびトリス[2−(イソプロピルアミン)エチルアミンからなる群より選択され、
前記カリウム塩は、乳酸カリウム、臭化カリウム、炭酸カリウム、塩素酸カリウム、塩化カリウム、クロム酸カリウム、シアン化カリウム、二クロム酸カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、ピロリン酸カリウム、フルオロケイ酸カリウム、および酒石酸カリウムナトリウムからなる群より選択される、組成物。
【請求項7】
請求項2に記載の組成物において、
前記感覚遮断薬は、前記カリウムチャネル作動薬であり、
アミン含有化合物の量は、前記組成物の約0.75重量%〜約10重量%の範囲にあり、
前記カリウムチャネル作動薬の量は、前記組成物の約0.25重量%〜約10重量%の範囲にある、組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の組成物において、
前記アミン含有化合物は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、およびトリス[2−(イソプロピルアミン)エチルアミンからなる群より選択され、
前記カリウムチャネル作動薬は、ミノキシジル、ピナシジル、ジアゾキシド、クロマカリン、ニコランジル、およびアプリカリムからなる群より選択される、組成物。
【請求項9】
組成物において、
式1および式IIからなる群より選択されるアミン含有化合物であって、
【化2】

ここで、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、C〜Cアルキル、およびC〜Cヒドロキシアルキルからなる群より選択される、アミン含有化合物、またはそれらの美容的に許容可能な塩と、
カリウム塩と、
を含み、
前記アミン含有化合物および前記カリウム塩は、皮膚に適用されると、この皮膚に対して鎮痛効果を提供するのに有効な量で存在する、組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物において、
前記アミン含有化合物は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、およびトリス[2−(イソプロピルアミン)エチルアミンからなる群より選択され、
前記カリウム塩は、乳酸カリウム、臭化カリウム、炭酸カリウム、塩素酸カリウム、塩化カリウム、クロム酸カリウム、シアン化カリウム、二クロム酸カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、ピロリン酸カリウム、フルオロケイ酸カリウム、および酒石酸カリウムナトリウムからなる群より選択される、組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物において、
アミン含有化合物とカリウム塩との重量比は、約1:1〜約1:3の範囲にある、組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の組成物において、
前記組成物は、少なくとも約25パーセントの耳浮腫の抑制率を提供する、組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の組成物において、
アミン含有化合物の量は、前記組成物の約0.75重量%〜約10重量%の範囲にあり、
前記カリウム塩の量は、前記組成物の約0.15重量%〜約10重量%の範囲で前記組成物中にカリウムイオンを提供するのに有効な量である、組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物において、
前記組成物が、少なくとも約50パーセントのひっかき行動の抑制率を提供する、組成物。
【請求項15】
組成物において、
式1および式IIからなる群より選択されるアミン含有化合物であって、
【化3】

ここで、R、R、R、R、およびRは独立して、水素、C〜Cアルキル、およびC〜Cヒドロキシアルキルからなる群より選択される、アミン含有化合物、またはそれらの美容的に許容可能な塩と、
カリウムチャネル作動薬と、
を含み、
前記アミン含有化合物および前記カリウムチャネル作動薬は、皮膚に適用されると、この皮膚に対して鎮痛効果を提供するのに有効な量で存在する、組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物において、
前記アミン含有化合物は、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、およびトリス[2−(イソプロピルアミン)エチルアミンからなる群より選択され、
前記カリウムチャネル作動薬は、ミノキシジル、ピナシジル、ジアゾキシド、クロマカリン、ニコランジル、およびアプリカリムからなる群より選択される、組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の組成物において、
前記組成物が、少なくとも約50パーセントのひっかき行動の抑制率を提供する、組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の組成物において、
約0.75重量%〜約10重量%の前記アミン含有化合物と、
約0.25重量%〜約10重量%の前記カリウムチャネル作動薬と、
を含む、組成物。
【請求項19】
請求項16に記載の組成物において、
前記組成物が、少なくとも約50パーセントのひっかき行動の抑制率を提供する、組成物。

【公開番号】特開2009−227672(P2009−227672A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−51579(P2009−51579)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(598039367)ジョンソン・アンド・ジョンソン・コンシューマー・カンパニーズ・インコーポレイテッド (79)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Consumer Companies,Inc.
【住所又は居所原語表記】Grandview Road,Skillman,New Jersey 08558,United States of America
【Fターム(参考)】