説明

皮膚のたるみ改善剤

【課題】皮膚のたるみを改善する。
【解決手段】ペラルゴニジンはコラーゲンゲル収縮促進作用及びインテグリン産生促進作用を有するため、皮膚のたるみ改善剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚のたるみ改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚(肌)は、外側から表皮、真皮及び皮下組織の順に形成されている。真皮は主としてコラーゲン(I型)で構成されており、真皮中の線維芽細胞はインテグリンなどの接着因子を介してコラーゲンと結合している。健康な張りのある肌では、線維芽細胞がコラーゲンを束ねてしっかりと引っ張るため、コラーゲンの繊維束が認められる。一方、加齢等により張りのなくなった肌では、線維芽細胞がコラーゲンを引っ張ることができず、コラーゲン繊維はバラバラの状態になっている。
【0003】
したがって、線維芽細胞がコラーゲンを引っ張る力を高めることができる物質やインテグリンの産生を高めることができる物質は、皮膚のたるみを改善し美しい肌を取り戻すことが期待でき、既にそのような物質が報告されている(例えば、特許文献1〜5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−72336号公報
【特許文献2】特開平11−263718号公報
【特許文献3】特開2001−278769号公報
【特許文献4】特開2003−176208号公報
【特許文献5】特開2001−39850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既知物質のコラーゲンゲル収縮促進作用やインテグリン産生促進作用は必ずしも十分ではなく、新たな皮膚のたるみ改善剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意努力を重ねた結果、ペラルゴニジンは優れたコラーゲンゲル収縮促進作用及びインテグリン産生促進作用を有することを見出した。また、ペラルゴニジンを豊富に含むナス抽出物も同様の作用を有することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(5)を提供する。
(1)ペラルゴニジンを有効成分とする皮膚のたるみ改善剤。
(2)ペラルゴニジンを有効成分とするコラーゲンゲル収縮促進剤。
(3)ペラルゴニジンを有効成分とするインテグリン産生促進剤。
(4)ナス抽出物を有効成分とするコラーゲンゲル収縮促進剤。
(5)ナス抽出物を有効成分とするインテグリン産生促進剤。
【発明の効果】
【0008】
ペラルゴニジンはコラーゲンゲル収縮促進作用及びインテグリン産生促進作用を有するため、皮膚のたるみ改善剤として有用である。また、ナス抽出物も同様の作用を有するため、皮膚のたるみ改善剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ペラルゴニジンは下記構造式で表されるアントシアニジンの一種であり、抗酸化作用があることが既に知られていた。本発明者は、ペラルゴニジンにコラーゲンゲル収縮促進作用及びインテグリン産生促進作用があり、この作用によってペラルゴニジンは皮膚のたるみを改善するのに有効であることを見出した。
【0010】
【化1】

【0011】
また、本発明者は、ナス抽出物は、ペラルゴニジンを豊富に含んでおり、コラーゲンゲル収縮促進作用及びインテグリン産生促進作用があり、ペラルゴニジンが皮膚のたるみを改善するのに有効であることを見出した。
【0012】
ペラルゴニジンは化学合成してもよく植物から抽出・精製してもよい。また、ペラルゴニジンはフナコシ株式会社等から購入することもできる。
【0013】
ナス抽出物は、一般的な植物の抽出方法により調製することが可能である。すなわち、植物体の全部又は一部を水、有機溶媒又はそれらの混合物を用いて抽出する。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール及びn−プロパノールなどのアルコール、ギ酸、酢酸及びトリフルオロ酢酸などの有機酸、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、石油エーテルなどが挙げられる。特に、水及び有機酸の混合溶媒が好ましく、ギ酸、酢酸又はトリフルオロ酢酸の0.1〜10%(v/v)水溶液などが挙げられる。抽出温度は4℃〜加熱還流でよい。溶媒抽出後、必要に応じて、ろ過又は遠心分離等の処理を行い、さらに濃縮、希釈又は乾燥等の処理を行っても良い。ペラルゴニジンが豊富に含まれているため、ナス抽出物は果実部分、特に果皮部分を抽出することが好ましい。
【0014】
本発明の皮膚のたるみ改善剤、コラーゲンゲル収縮促進剤及びインテグリン産生促進剤は皮膚外用組成物、特に化粧料組成物として使用され得る。化粧料組成物の形態として、洗顔料、化粧水、美容液、乳液、ファンデーション等が挙げられる。化粧料組成物として使用する場合、ペラルゴニジンとして0.00001重量%〜0.1重量%、好ましくは0.0003重量%〜0.03重量%配合し、ナス抽出物として0.00001重量%〜10重量%、好ましくは0.001重量%〜1重量%配合する。本発明の皮膚のたるみ改善剤、コラーゲンゲル収縮促進剤及びインテグリン産生促進剤が化粧料組成物として使用される場合、化粧料の調製に通常用いられる成分が用いられ得る。このような成分として、油分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、香料、着色料、精製水等が挙げられる。これらの成分を必要に応じて1または2以上含むことができる。
【0015】
化粧料組成物をたるんだ皮膚に適用することで、皮膚のたるみを改善し美しく張りのある皮膚とすることができ、また、美しく張りのある皮膚に適用することで、皮膚のたるみを予防し、美しく張りのある皮膚を維持することができる。化粧料組成物を適用する皮膚は体のどの部分であっても良いが、特に顔面の皮膚への適用が効果的である。
【実施例】
【0016】
製造例1:水茄子抽出物の調製
水茄子から果皮を剥ぎ取り、凍結乾燥によってミズナス乾燥果皮を得た。その5gの果皮を5%(v/v)ギ酸水溶液100mLに浸漬し、4℃で24時間静置することによって抽出を行った。ろ紙でろ過したものを凍結乾燥することによって、水茄子抽出物を得た。
【0017】
試験例1:コラーゲンゲル収縮促進活性の測定
正常ヒト皮膚繊維芽細胞株(NHDF)を1×10/wellの濃度で6−wellプレートに播種し、10%牛胎児血清を含むDMEM培地(GIBCO)で90%コンフルーエントまで培養した(5%CO、37℃)。I型コラーゲンゲル(新田ゼラチン)を28ml、5×DMEM(ニッスイ)を8ml、牛胎児血清0.04ml、更に2.2%NaHCOを含む0.05N水酸化ナトリウム水溶液を4ml加え、そこにトリプシン処理で剥がしたNHDFを1×10/mlの濃度になるように懸濁した。6−wellプレートに3mlずつ分注し、37℃インキュベータで30分間放置し、NHDFを含有したコラーゲンゲルを作成した。次に、そのコラーゲンゲルに、披験物質[ペラルゴニジン(フナコシ):10μM、水茄子抽出物:50μg/mL;0.1%の牛胎児血清を含むDMEM培地に溶解]を4mLずつ添加した。対照群には、被験物質を含有しない0.1%の牛胎児血清を含むDMEM培地を使用した。24時間培養した後、プレートに密着しているコラーゲンゲルをプレートから剥離して浮遊させ、コラーゲンゲル収縮を開始させた。24時間後、披験物質を含む新しい培地に交換した。更に48時間培養した後、コラーゲンゲルの面積を画像解析ソフトによって測定した。対照群のコラーゲンゲルの面積を100%としたときの被験物質添加群のコラーゲンゲルの面積%を表1に示す。表1から明らかなように、ペラルゴニジン及び水茄子抽出物にコラーゲンゲル収縮促進作用が認められた。
【0018】
【表1】

【0019】
試験例2:インテグリン産生促進活性の測定
NHDFを1×10/wellの濃度で6−wellプレートに播種し、10%牛胎児血清を含むDMEM培地で90%コンフルーエントまで培養した(5%CO、37℃)。その後、披験物質[ペラルゴニジン:10μM、水茄子抽出物:10μg/mL;0.1%の牛胎児血清を含むDMEM培地に溶解]を細胞に添加し24時間培養した。対照群には、被験物質を含有しない0.1%の牛胎児血清を含むDMEM培地を使用した。24時間後、Trizole(登録商標;インビトロジェン)により細胞を溶解し、RNAを抽出した後、TakaraPrimeScript(登録商標) RT reagent Kit(タカラバイオ)によりcDNAを合成した。得られたcDNAサンプルは各遺伝子のプライマーとTakara SYBR(登録商標) Premix EX TaqTM(タカラバイオ)を使用し、リアルタイム定量性PCR装置Chromo4(バイオラッド)によって遺伝子発現量を定量した。PCRは94℃ 30秒の最初のステップ後、94℃ 12秒、58℃ 12秒、72℃ 12秒の条件で40サイクル行った。各遺伝子のプライマーは以下の通りとした。
ヒト インテグリンα2フォワードプライマー:5’GATTTGCGTGTGGACATCAG3’
ヒト インテグリンα2リバースプライマー:5’TGAGCAGCTGGTATTTGTCG3’
ヒト シクロフィリンAフォワードプライマー:5’ATCCTAGAGGTGGCGGATTT3’
ヒト シクロフィリンAリバースプライマー:5’CACTCAGGTCTGAGCCACAA3’
対照群の遺伝子発現量を100%としたときの被験物質添加群の遺伝子発現量%を表2に示す。表2から明らかなように、ペラルゴニジン及び水茄子抽出物にインテグリン産生促進作用が認められた。
【0020】
【表2】

【0021】
実施例1:洗顔クリームの製造
成分A、成分B及び成分Cの合計が100重量%となるように、各成分A〜Cを以下の割合で処方した。まず、成分Aの混合物を加熱溶解して80℃に保持した。次いで、別途80℃で加熱溶解した成分Bの混合物を成分Aの混合物に添加して充分撹拌した。その後、撹拌しながら冷却を行い、50℃にて成分Cの混合物を加え、洗顔クリームを得た。
【0022】
【表3】

【0023】
【表4】

【0024】
【表5】

【0025】
実施例2:化粧水の製造
合計が100重量%となるように以下の成分を処方した。全ての成分を室温にて混合及び撹拌して均一な溶液とし、pHを5.5に調整して、化粧水を得た。
【0026】
【表6】

【0027】
実施例3:乳液の製造
成分D、成分E及び成分Fの合計が100重量%となるように、各成分D〜Fを以下の割合で処方した。まず、成分Dの混合物を加熱溶解して80℃に保持した。次いで、別途80℃で加熱溶解した成分Eの混合物を成分Dの混合物に添加して充分撹拌した。その後、撹拌しながら冷却を行い、50℃にて成分Fの混合物を加え、乳液を得た。
【0028】
【表7】

【0029】
【表8】

【0030】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペラルゴニジンを有効成分とする皮膚のたるみ改善剤。
【請求項2】
ペラルゴニジンを有効成分とするコラーゲンゲル収縮促進剤。
【請求項3】
ペラルゴニジンを有効成分とするインテグリン産生促進剤。
【請求項4】
ナス抽出物を有効成分とするコラーゲンゲル収縮促進剤。
【請求項5】
ナス抽出物を有効成分とするインテグリン産生促進剤。

【公開番号】特開2011−20951(P2011−20951A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166804(P2009−166804)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】