説明

皮膚の処理のためのデバイス及び方法、並びに当該デバイスの使用

【課題】本発明は、処理されるべき皮膚の真皮層24に位置合わせされるような、レーザ源40及びフォーカス光学部50を有する皮膚処理デバイスを提供する。
【解決手段】レーザビーム42は、組織の再成長を刺激するために皮膚に作用するLIOB(レーザ誘起光学的破壊)が得られるように出力されてフォーカス16される。これは、しわ30を順次削減する。デバイスは、しわ決定手段52,54,56,58を有してもよい。フォーカス光学50は、少なくとも0.4の開口数を持ってもよい。また、本発明は、皮膚を処理するため、特に、皮膚の真皮層24においてLIOBを引き起こすフォーカスレーザビーム16を供することにより、しわ30を削減するための対応する方法を提供する。利点は、オーバーレイ表皮層へのダメージが、非常に局所的なLIOB現象の使用により回避され得ることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電磁放射線を用いた皮膚の処理に関する。より詳細には、本発明は、皮膚の処理、より詳細には、皮膚の非侵入しわ取り(non-invasive wrinkle reduction)のためのデバイス及び方法に関する。さらに、本発明は、皮膚の処理のためのデバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のしわを阻止又は削減することにより若々しさを保つという欲求は、人間社会における重要な課題である。多くの技術が上記課題を達成するためにデザインされている。技術の1つは、皮膚の結合組織及び新たな表皮の形成を生じさせるために、皮膚の真皮(dermis)の一部にダメージを与えることである。米国特許第5,964,749号明細書は、コラーゲンを加熱及び縮小(shrink)するために、パルス化された光を皮膚に当てることにより、しわを伸ばす方法及び装置を開示している。或る実施形態においては、600〜1200nmの範囲の波長を伴う光が、パルスの方式において、約100J/cmのフルエンス(fluence)で当てられる。好ましくは、表皮が冷却される。
【0003】
開示された方法及び対応する装置の欠点は、全てのエネルギが区別されることなく供されるので、表皮にダメージを与える高いリスクを持つことにある。表皮のダメージは、処理された人に対して合併症及び健康上のリスクの原因となり得るので、非常に望ましくないものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、表皮に対するダメージが削減又は実質的に阻止されるという点において、処理される人にとって非常に安全である、冒頭で述べた種類のデバイス及び方法、並びにデバイスの使用を供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、予め決定されたパルス時間の間レーザビームを生成するレーザ源と、レーザビームを焦点へとフォーカスする光学系とを有し、焦点の大きさ(dimension)及び生成したレーザビームのパワーは、焦点内において、レーザビームが皮膚組織に対する特性閾値を超えるパワー密度を持つようなものであり、予め決定されたパルス時間の間特性閾値を超えると、レーザ誘起光学的破壊(LIOB;laser induced optical breakdown)現象が皮膚組織において発生し、光学系は、処理されるべき皮膚にデバイスが当てられた場合に、処理されるべき皮膚の真皮層(dermis layer)に対応する処理深さに焦点を設定するように設けられる、デバイスの態様の本発明により達成される。
【0006】
本発明によるデバイスは、十分に強力なレーザパルスを供することにより、皮膚におけるレーザ誘起光学的破壊(LIOB)現象を供することができる。このLIOBは、レーザ光のパワー密度に関する特定の閾値を超えると発生する、皮膚組織によるレーザ光の強力な非線形吸収(non-linear absorption)に基づくものである。この強力な吸収は、非常に局所的なプラズマを引き起こし、プラズマの場所で、組織にダメージを与えることができるか、又は、組織を除去することができる。これは、生成したプラズマの急速な拡張のような、二次的な、主要な機械的効果により生じる。閾値を超えると、放射線をより強く吸収するプラズマが生成される一方で、閾値を下回ると、ゼロ又は非常に小さい線形及び非線形吸収であるので、この効果は非常に局所的である。換言すれば、LIOB等の効果は、焦点でのみ発生し、その一方で、焦点の上下では生じないか又は非常に弱い効果が発生する。これは、例えば、表皮(epidermis)が、望んでいない効果又はダメージに対して容易に保護され得ることを意味する。表皮へのダメージに対する他の安全な特徴は、LIOBが非常に効率的であるという事実である。エネルギの非常に制限された量が、所望の局所的な効果を得るために必要とされる。
【0007】
処理深さが固定されてもよいことに留意する。デバイスは、皮膚接触面を持ち、使用時に、当該皮膚接触面で処理されるべき皮膚に装置が当てられるだろう。斯様な皮膚接触面は、レーザビーム出口窓、又は、例えば、デバイスのハウジングに開口を有している。窓は、皮膚の位置、よって真皮がデバイスに対してより正確に規定され得るという利点を持つ。それ故、焦点の位置が正確に決定され得る。レーザビーム及び焦点の位置が固定される場合において、焦点は、例えば、所望の処理深さでデバイスの外側に存在してもよい。
【0008】
国際公開第2005/011510号パンフレットは、LIOB現象に基づく、毛を短くするデバイスを開示していることに留意する。皮膚の処理については、示唆又は開示されていない。しかしながら、本願で開示されていないLIOBの一般的な背景についての更なる詳細がこの文書において見られる。
【0009】
本願において、"焦点の大きさ"という表現は、パワー密度が決定されることに基づく、焦点のいかなる大きさに関してもよい。特に、大きさは、断面領域、又は、例えば、レーザビームの直径若しくはくびれ(waist)に関してもよい。
【0010】
特に、処理深さは、皮膚の表面の下方に、0.2〜2mmであり、より詳細には0.5〜1.5mmである。これは、顔において、0.06〜0.2mmの角質層を伴う表皮の典型的な全体厚さと、2mmの真皮層の典型的な厚さとに基づくものである。それ故、真皮は、0.2〜約2mmの深さで見られる。0.5〜1.5mmの処理深さは、表皮等の周囲層に関するいかなるリスクもなしに、十分な展開で真皮の処理を可能にする範囲を示す。特別な場合において、表皮及び/又は真皮は、より薄く若しくはより厚くなってもよく、又は、体の他の部分、例えば手のような、僅かに異なる深さで存在してもよい。この場合において、当業者は、真皮の深さ及び/又は厚さを容易に決定し得るとともに、デバイスを適宜当て得るだろう。異なる処理深さは、真皮層の深さ及び厚さが明らかになった後に固定されてもよい。また、超音波デバイス、例えばStiefel Cutech"Dermal depth Detector"、又は他のOCTデバイス(断層映像法)のような、真皮及び/又は表皮の厚さの自動決定用のデバイスを使用する又は含むことも可能である。
【0011】
特別な実施形態において、デバイスは、処理されるべき皮膚の表面の形態的情報(topographical information)を決定するために設けられた皮膚表面画像センサを更に有している。特に、センサは、デバイスに関する処理されるべき皮膚の曲率及び/又は高さマップを決定するために設けられている。斯様なセンサの例はそれ自体知られているが、センサシステムが、皮膚上のパターンを投影するために設けられたプロジェクタと、皮膚上のパターンの画像を検出するとともに、検出画像から所望の形態的情報を決定するために設けられるセンサとを有することが特筆すべき点である。他の可能性の中では、それぞれのカメラ画像から形態的情報を得る(3D)ことが可能な制御ユニットで供され得るCCDカメラのような、2又はそれ以上のカメラのシステムも考えられる。
【0012】
特別な実施形態においては、皮膚表面画像センサは、皮膚の局所的に最も深いくぼみのラインの位置を決定するように設けられる。局所的に最も深いくぼみの斯様なラインは、しわに対応している。一の画像に一度に一より多くの斯様なラインがあってもよく、2又はそれ以上のラインが相互に連結されてもよい。皮膚表面画像センサは、例えば、投影されたパターンにおいて最も大きい曲率、最も深い影、又は、当業者に知られたいかなる他の技術に基づいて前記位置を決定するために設けられた制御ユニットを有している。斯様な実施形態は、処理に関する正確な位置を見つけるのに役立つ。これは、例えば、可聴式又は視覚的な信号等により示されてもよい。
【0013】
特別な実施形態において、デバイスは、形態的情報を表示するディスプレイを更に有している。これは、皮膚の画像のマップ若しくは他の視覚的な表示形式、又はしわのみの表示形式であってもよい。レーザビームの瞬間的な位置、又は放出されたならば投影された位置を示すことも可能である。そして、オペレータは、表示された情報に応じて、適切な処理のために手動で位置を合わせてもよい。
【0014】
特別な実施形態において、光学系は、焦点が処理深さに到達可能であること等の形態的情報に基づいて調節可能である。この特徴の利点により、例えば、しわの真皮が周囲の皮膚よりも多少深く存在することを考慮することが可能となる。斯様な差分は、皮膚がレーザビーム出口窓又は同等のものにより完全に滑らかになることができない場合に出くわすだろう。
【0015】
特に、光学系は、調節可能なレンズ又は調節可能なミラーを有している。双方の要素又はこれらの組み合わせは、フォーカス動作を供することができる。双方は、皮膚表面に対する深さと皮膚表面を横断する位置との双方について、焦点の位置を調節するために調節可能であってもよい。調節可能なレンズは、距離のセッティングを伴うレンズを有してもよく、又はズームレンズであってもよい。調節可能なミラーは、1又はそれ以上、好ましくは2つの方向において回転可能なミラーを有してもよい。ミラーは、例えばレンズと組み合わせられたときにフラットであってもよく、又は、特にミラーがフォーカス動作を供する場合に凹面であってもよい。
【0016】
有利に、調節可能なレンズは、オートフォーカスレンズを有している。斯様なレンズは、皮膚表面に関して自動的に調節される。これは、ほぼ全ての状況において正確な処理深さを保証する。
【0017】
特別な実施形態においては、光学系は、焦点の位置を合わせるためのレーザビームマニピュレータを更に有している。斯様なレーザビームマニピュレータは、例えば、可動ミラー及びミラーを動かすためのミラーアクチュエータ並びにこれらに関する制御ユニットを有している。また、レーザビームマニピュレータは、調節可能なレンズ又はミラーを有してもよい。レーザビームマニピュレータは、皮膚上や皮膚中において焦点の位置を合わせるために用いられてもよい。オペレータは、例えば、皮膚上の表示された形態的情報に基づいて、レーザビームマニピュレータを制御してもよい。
【0018】
特別な実施形態において、レーザビームマニピュレータは、当然ながら真皮の範囲内で、局所的に最も深いくぼみのライン、特にライン上に関する焦点の位置を合わせるために設けられている。この目的のために、制御ユニットは、前記ラインの位置情報に基づいて、例えば、皮膚表面に関する形態的情報に基づいて、レーザビームマニピュレータを適切に制御してもよい。この実施形態は、特に家庭用の使用に対して非常に容易及び安全である。イメージセンサは、例えば、センサ又は制御ユニットにより求められる形態的情報を決定する。そして、制御ユニットは、適切な方向に放出されるべき1又はそれ以上のレーザビームパルスを方向付けるためにレーザビームマニピュレータを制御する。デバイスが処理を終了するとすぐに、信号が与えられてもよい。
【0019】
全体としての本発明は、非常に小さい焦点において、真皮にフォーカスされるべき電磁放射線を皮膚が透過する状況を用いている。この効果を最大にするために、レーザビームの波長は、800〜1100nmである。この範囲において、出力が高くなり、散乱及び線形吸収が低くなる。それ故、LIOBは、容易に、正確に(即ち、非常に局所的に)、及び効率的に達成され得る。しかしながら、他の波長を使用することを除外するものではない。
【0020】
特に、予め決定されたパルス時間は、100ps〜12nsである。この範囲において、LIOBにより生成されたプラズマは、非常に局所的である、即ち、組織の周りへの意図的でないダメージのリスクを最小限にする小さな空間拡張(small spatial extension)を持つ。さらに、LIOBを得るために必要とされるピークパワーは、この範囲におけるパルス時間から実質的に独立している。しかしながら、他のパルス時間、例えば、約100fs〜100psの範囲においても、用いられてもよい。
【0021】
特別な実施形態において、皮膚の表面で測定された、レーザビームパルスの到達可能なエネルギレベルは、0.1〜10mJである。斯様なエネルギレベルは、処理において役立つ結果になる、即ち、新たな組織の成長を刺激するための十分なダメージを生成する。より特に、エネルギレベルは、約0.5〜5mJであり、概して約1mJである。しかしながら、2mm以下の大きな処理深さに関する約20mJ以下のレベルのような、他のエネルギレベルが除外されないことに留意する。前述したエネルギレベルの表示において、エネルギは、皮膚の表面で測定される、即ち、皮膚に正確に放出されたエネルギに関する。
【0022】
特別な実施形態において、LIOB現象により生成されたプラズマにおいて測定された、レーザビームパルスの到達可能なエネルギレベルは、0.1〜5mJである。特に、エネルギレベルは、約0.5〜5mJであり、概して約1mJである。これらのエネルギレベルは、LIOB現象のプラズマに実際に関与するために測定され又は放出される。
【0023】
前述の全てにおいて、単一のパルスの代わりに、パルスがLIOB現象を発生させる限りにおいて、複数のパルスを供することも可能であることが理解されるべきである。
【0024】
特別な実施形態において、光学系は、少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.4、より好ましくは少なくとも0.6の開口数(numerical aperture)を持っている。開口数に関する斯様な値は、過度の皮膚層、特に表皮についての安全に関する。特に、表皮は、メラニン等の多くの発色団を含んでいるので、表皮における残余線形吸収(residual linear absorption)を無視できない。それ故、斯様な層においてフルエンス又はエネルギ密度を十分に低く維持することは有利である。これは、強力にフォーカスされたレーザビーム、即ち、収束の大きな角度を伴い、それ故、光学系の大きな開口数を伴うレーザビームを供することにより達成されてもよい。レーザビームは、許容範囲の領域内の表皮においてフルエンスを維持するために、十分に大きな領域を覆う。特に、表皮におけるフルエンスは、多くても3J/cm2であろう。開口数は、処理深さ及びパルスにおける実際のエネルギに依存することに留意する。モデル計算は、NAが高ければ高いほど、より高いエネルギレベル及びより低い処理深さが必要とされ、逆もまた同様である一方で、少なくとも0.4の開口数が0.5mmの処理深さ及びプラズマにおける(フォーカス領域における)1mJのエネルギに十分であることを示している。
【0025】
また、本発明は、皮膚を処理する方法、特に、予め決められたパルス時間の間レーザパワーを持つレーザビームを供するステップと、レーザビームが、焦点内において、皮膚組織に対する特性閾値を超えるパワー密度を持ち、予め決められたパルス時間の間特性閾値を超えると、レーザ誘起光学的破壊(LIOB)現象が皮膚組織において発生するような、大きさを持つ焦点にレーザビームをフォーカスするステップとを有し、焦点は、皮膚の真皮層において位置を合わせられる、皮膚組織の非侵入処理に関する。斯様な美容のための処理は、例えば、皮膚におけるしわを削減することを望む人々にとって望ましいものである。メカニズムは、本発明によるデバイスの議論で説明されており、それ故、ここでは繰り返さない。そしてまた、特別な技術的特徴は、デバイスに特に関する場合を除いて、本発明による方法において用いられ得る。全ての斯様な特徴は、以下で繰り返されないが、これらの組み合わせが明確に開示されるとみなされる。方法は、安全な態様でしわを扱うことを提供し、安全に及び便利な態様で非専門的なユーザにより用いられてもよいことがさらに強調される。
【0026】
特に、焦点は、皮膚の表面の下方に0.2〜2mm、特に、他の皮膚組織の望まないダメージを阻止するための安全マージンを持って真皮に合わせるために0.5〜1.5mmの深さで位置を合わせられる。
【0027】
好ましくは、LIOB現象により生成されたプラズマにおいて測定された、レーザビームパルスの到達したエネルギレベルは、0.1〜5mJである。このエネルギレベルは、焦点のロケーションで測定され又は少なくとも推定される。
【0028】
特に、レーザビームパルスのフルエンスは、皮膚の表面と真皮層との間の皮膚において多くても3J/cm2である。斯様なフルエンスは、皮膚層にとって安全であると考えられる。レーザビームパルスに関する好ましいエネルギレベルとともに、これは、特に、1mJ及び0.5mmの処理深さに対して少なくとも11°(半角)の好ましいレーザビーム尖角(apical angle)をもたらす。所望の処理深さ及びパルスエネルギの依存度については、当業者は、好ましくは図2のグラフを活用して、好ましい尖角又は関連した開口数を容易に決定することができる。
【0029】
特別な実施形態において、方法は、処理されるべき皮膚とデバイスとの間に、約1.3〜1.6、特に、約1.4の屈折率を持つ物質を供するステップを更に有する。斯様な屈折率整合サブスタンスは、肉眼的にはしわでの湾曲であるが微視的には皮膚自身の表面構造による、皮膚によるオプティカルベンディング効果(optical bending effect)を阻止するために役立つ。これは、インタフェースでの反射光により損失をさらに削減する。
【0030】
また、本発明は、皮膚の処理についての本発明によるデバイスの使用、特に、皮膚における非侵入しわ取りに関する。この態様は、LIOBが処理対象の皮膚において持つ、即ち、非常に局所的に、上方の層に影響を及ぼさない所望深さで、エネルギの小さな量を供し得るという利点を用いる。この使用は、特に電磁放射線を適用する他の処理と比較して、本質的に安全である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】皮膚を処理するときに使用中のデバイスの最も重要な部分を図式的に示している。
【図2】処理深さの機能としての最小のNAのモデルグラフを示している。
【図3】本発明によるデバイスの一実施形態を図式的に示している。
【図4】しわになった皮膚上の例となるイメージパターンを図式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、皮膚を処理するときに使用中のデバイスの最も重要な部分を図式的に示している。参照符号10により、デバイスの一部が示されており、その一方で、20は、処理されるべき皮膚を示している。デバイス10は、レーザビーム16が焦点18にフォーカスされるように放出される際に通過するレーザビーム出口窓14を伴うハウジング12を有している。
【0033】
皮膚20は、表皮22と真皮24とを有している。皮膚20は、屈折整合物質で満たされる、しわ30を持っている。
【0034】
使用中において、デバイス10又は少なくともここで示された部分は、皮膚20に当てられる。レーザビーム16は、透明な材料で作られてもよく又はハウジング12における簡単な開口であってもよいレーザビーム出口窓14を介して放出される。しかしながら、透明な材料の窓は、デバイス10に関する皮膚20の位置をより規定するという利点を持っている。
【0035】
レーザビーム16は、尖角α及びくびれ又は焦点18を伴う双曲面に概略で類似している。また、焦点は、爆発記号の態様で示されたLIOB現象の位置である。焦点へのレーザビームの収束は、LIOB現象を局所集中させるのに役立ち、表皮22でのパワー密度が真皮24における焦点18よりも大幅に低いので、表皮22へのダメージを阻止するのに役立つ。
【0036】
焦点18は、しわ30の下方であって真皮24中に位置を合わせされている。皮膚及びしわ30の湾曲によるレンズ効果を防止するために、屈折整合材料は、表皮22と窓14との間をしわで満たすために、皮膚に当てられる。屈折整合材料は、近似的に、窓14の屈折の指標と表皮22の指標との間、好ましくは、近似的に表皮22の屈折率と同等の屈折率を持つべきである。理想の場合において、窓14及び屈折整合材料は、表皮と同じ屈折率、約1.4を持つ。
【0037】
図2は、皮膚表面の下方への処理深さの関数として、上位の表皮層への健康被害を引き起こすことなく、フォーカス領域におけるプラズマについて1mJのエネルギを付与することにより、レーザ誘起光学的破壊現象を生成するために必要とされる最小限の開口数(NA)のモデル計算のグラフを示している。例えば、1mJを伴う皮膚から下方に0.5mmでのLIOBを達成するために必要とされる光学系のNAは、約0.4である。そして、真皮層へのダメージを阻止するための安全マージンを持つためには、NAを少なくとも0.4にすべきである。大きな処理深さについて必要とされるNAは、ダメージが与えられるべきではない表皮層との距離がより大きくなることから、小さな処理深さのものよりも当然に小さくなることに留意する。しかしながら、処理深さでの十分なLIOBプラズマの形成を達成するために必要とされる全体の強度及びエネルギは、オーバーレイ層(overlaying layer)における残余吸収及び散乱に起因して、より大きくなる。
【0038】
上記の計算及びグラフは、1mJの典型的なエネルギについて適用される。より高いエネルギの場合においては、グラフは、NAの高い値へシフトし、その一方で、より低いエネルギについて、最小限のNAは、より小さくなるだろう。
【0039】
図3は、本発明によるデバイスの一実施形態を図式的に示している。この図においては、いかなる他の図と同様に、同様の部分は、同一の参照符号で示されている。
【0040】
デバイスは、非フォーカスレーザビーム42を放出するとともに、ミラー46を持つレーザビームマニピュレータ48をも制御する制御ユニット44に接続されるレーザ源40をそなえたハウジング12を有している。光学系50は、非フォーカスレーザビーム42を、焦点18でのフォーカスレーザビーム16へとフォーカスする。
【0041】
縞プロジェクタ(fringe projector)及び縞投影光学部(fringe projection optics)は、52及び54でそれぞれ示されており、その一方で、しわ画像センサ及びしわ画像光学部は、56及び58でそれぞれ示されている。
【0042】
参照符号60は、表示手段を示し、その一方で、62は、屈折整合物質を示している。
【0043】
破線箱内の部分は、例えば、光ファイバの態様でレーザ源40に接続されるように供されてもよいことに留意する。これは、別個の及び静止したユニットにおいて、より大きくてより重いレーザ源等をそなえた小さくて軽いアプリケータユニット(applicator unit)を提供する。
【0044】
制御ユニット44は、非フォーカスビーム42のレーザ放射線を放出するためにレーザ源40を制御する。これは、予め決められたパルス時間の間、例えば、0.1〜100ナノ秒(他のパルス時間も除外されない)でのパルス化された態様において行われてもよい。ビームは、光学系50の態様でフォーカスされてもよく、ここでは、単一のレンズの態様だけが非常に図式的に示されている。このレンズ50は、複雑なレンズであってもよく、好ましくは、ズームレンズであってもよい。ズームレンズは、可変の焦点距離を持ってもよく、又は、位置調節可能なレンズであってもよい。全ての場合において、皮膚に関する焦点18の位置が調節されてもよい。
【0045】
さらに、制御ユニット44により次々に制御されるレーザビームマニピュレータ48により操作され得るミラー46は、皮膚、特にしわ30に関する焦点18の位置を合わせるために設けられる。
【0046】
斯様なしわ30の位置は、以下のように決定されてもよい。縞プロジェクタ52は、縞投影光学部54を介して皮膚上の1又はそれ以上の縞のパターンを投影する。しわを伴う皮膚上の存在としてのパターンは、しわ画像光学部58を介してしわ画像センサ56により撮像される。そして、感知された画像は、既知の手法(ソフトウェア)の態様で制御ユニット44により評価される。この態様において、皮膚上の形態的情報、特に、皮膚上の位置の関数としての高さが取得される。この情報に基づいて、制御ユニット44は、焦点18をしわ30の下方の位置に方向付けるために、レーザビームマニピュレータ48を制御する。
【0047】
他の態様において情報を取得することも可能であることに留意する。例えば、部分52及び56は、対応する光学54及び58をそなえたカメラであってもよい。双方のカメラは、既知のイメージングソフトウェアの態様により3D表面マップに変換される、皮膚表面のピクチャを取得する。
【0048】
皮膚へのデバイスの適用において、皮膚の表面マップが作られるので、上述したデバイスは、容易に自動化される。表面マップにおいて検出された任意のしわに基づいて、制御ユニット44は、レーザビームパルスをしわの下の真皮に向ける。全て又は選択した数のしわを処理した後に、処理が完了したことを示す信号が与えられてもよい。オペレータは、処理を実行するため、しわの決定するため等に要求されない。斯様なデバイスは、消費者の使用に良く適している。
【0049】
また、処理されるべき皮膚の情報又は画像は、ディスプレイ60に表示されてもよい。これは、皮膚を正確に処理する前における視覚的なチェックの可能性を提供する。また、焦点の固定した位置を伴う、即ち、レーザビームマニピュレータ及び/又はズームレンズを要さないデバイスを使用する可能性も提供する。例えば、デバイスに関する固定した位置におけるのと同様に、焦点が1.5mmの固定した深さで設けられる場合には、クロス又は同種のものによりディスプレイに示され得るが、オペレータは、手動でしわの上にデバイスの位置を合わせてもよい。そして、彼は、新たな処理スポットが選択された後に、要求した量のレーザエネルギを適用する。
【0050】
図4は、しわを伴う皮膚上の平行線のパターンを投影した結果である、皮膚上の暗線70と輝線とを交互に示す例となるラインパターンを図式的に示している。しわは、破線72により示された、谷間として明確に視認できる。レーザにより照射されるべきスポットの形についての典型的な処理手順が、一連のクロスにより示されている。明らかに、破線上又はその近くのいかなるスポットも、しわの処理のために選択されてもよい。
【0051】
ここで開示した発明は、上述した実施形態に限定されるとはみなされない。むしろ、当業者は、本発明の範囲内で斯様な実施形態を調節及び修正し得ることから、本発明の範囲は、特許請求の範囲により決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の処理、特に、皮膚組織の非侵入処理のためのデバイスであって、
予め決定されたパルス時間の間レーザビームを生成するレーザ源と、
使用中に当該デバイスが処理されるべき皮膚に当てられる皮膚接触面と、
前記レーザビームを焦点へとフォーカスする光学系であって、前記光学系は、前記皮膚接触面から0.2mm〜2mm下方の処理深さに前記焦点の位置を合わせるように構成されたレーザビームマニピュレータを有する、光学系とを有し、
前記焦点の大きさ及び生成した前記レーザビームのパワーは、前記焦点において、前記レーザビームが皮膚組織に対する特性閾値を超えるパワー密度を持つようなものであり、前記予め決定されたパルス時間の間前記特性閾値を超えると、レーザ誘起光学的破壊(LIOB)現象が前記皮膚組織において発生し、
前記皮膚接触面で測定された、前記レーザビームのパルスの到達可能なエネルギレベルは、0.5〜5mJであり、前記光学系は、少なくとも0.4の開口数を持つ、デバイス。
【請求項2】
処理されるべき皮膚の表面に関する形態的情報を決定し得る皮膚表面画像センサを更に有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記皮膚表面画像センサは、皮膚の局所的に最も深いくぼみのラインの位置を決定するように構成される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光学系は、前記形態的情報に基づいて調節可能である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記レーザビームマニピュレータは、前記ライン、特に、前記ライン上又はその下に前記焦点の位置を合わせるように構成される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記レーザビームの波長は、800〜1100nmである、請求項1に記載デバイス。
【請求項7】
前記予め決定されたパルス時間は、100ps〜10nsである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記予め決定されたパルス時間は、100fs〜10psである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記処理深さは、前記皮膚接触面の下方に0.5mm〜1.5mmである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記レーザビームのパルスのフルエンスは、前記皮膚の表面と真皮層との間の皮膚の領域において多くても3J/cmである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記開口数は、少なくとも0.6である、請求項1〜10のうちいずれか一項に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−106967(P2013−106967A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2013−20811(P2013−20811)
【出願日】平成25年2月5日(2013.2.5)
【分割の表示】特願2009−517528(P2009−517528)の分割
【原出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】