説明

皮膚の治療または検査用外科用デバイス

【課題】本発明は、皮膚創傷の外科的移植またはin vitroおよび動物の皮膚のモデルのためのデバイスを製造する方法を提供する。
【解決手段】生体適合性網目状マトリックスに培養真皮細胞および培養表皮細胞を接種する工程、および前記接種したマトリックスを、培養皮膚デバイスを形成するために十分な条件下で、インキュベートする工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アメリカ合衆国政府は本発明の払込済ライセンスを有しており、限定された状況下で特許権所有者に対して、それぞれ国立衛生研究所および食品医薬品局により授与された助成金番号GM50509およびFDR000672の条件で規定される合理的な条件で他者に認可することを要求する権利を有する。
【0002】
本発明は一般に、患者の皮膚創傷の治療的処置または皮膚の解剖学もしくは生理学試験のための外科用デバイスおよびそのデバイスを調製する方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
皮膚は体の最大の器官の1つであり、体の実質的に全ての外表面を覆っている。皮膚は2つの主要な層、すなわち、表皮細胞の1種として角化細胞を含む表面上皮すなわち表皮、およびその下にある真皮細胞の1種として線維芽細胞を含む結合組織層すなわち真皮からなる。皮膚の機能には、感染に対するバリアとして働き、環境刺激を感知または検出し、様々な物質を排出し、体温を調節し、水分バランスの維持を助けることによって、生物を傷害および乾燥から保護することが含まれる。量的および質的重要性から、実質的に無傷で健康な皮膚は、生物の健康だけではなく、その生存そのものにとっても重要である。
【0004】
皮膚の健康と完全性は、正常な皮膚の再生や修復プロセスが不適切である可能性のある、急性または慢性の先天的または後天的な病理状態によって損なわれる。これらの状態には、熱傷、創傷、潰瘍、感染、疾患および/または先天異常が含まれる。大きな表面積にわたる熱傷を有する患者は、直ちに広範囲にわたる皮膚補充(skin replacement)を必要とすることが多い。静脈鬱血、糖尿病潰瘍または褥瘡潰瘍を3つの例とする、生命を脅かす可能性は低いが慢性的な皮膚の状態は、特にこれらの状態の患者は基礎疾患を有しているため、処置を行うことなく放置すると、より重度の状態に進展する可能性がある。このような患者での罹病率および死亡率の減少は、皮膚の構造と機能を適時に効果的に回復させることにかかっている。
【0005】
ex vivoまたはin vitroで得られた皮膚代替物(skin substitute)を使用してこれらの状態などを治療することができる。皮膚代替物の望ましい特性は、すぐに使用できること、ドナーの皮膚に対する要件が最少であること、製造が比較的簡単であること、製造および使用の経費効果が高いことである。これらの要件の一部または全部を満足する皮膚代替物を製造するためのいくつかの方法が試みられており、その成功の程度は様々である。しかし、皮膚の構造と機能のすべてを再生した皮膚代替物はまだない。むしろ、いずれも無傷な皮膚のサブセットである。全層皮膚移植片のみが正常で無傷の皮膚の構造および機能の実質的にすべてを回復させるが、さらに、治癒の間に瘢痕化する。
【0006】
皮膚の修復に治療用に使用する材料が製造されている。これらの材料は真皮および/または表皮の構造および機能を補充または代替する様々な成分を含んでいる。これらの材料の例には、真皮成分を含んでおらず、患者自身の培養角化細胞を使用するEpiCel(商標);無細胞真皮成分を提供するためにコラーゲン-グリコサミノグリカン(GAG)マトリックスを使用し、薄い自己移植片を使用するIntegra(商標);AlloDerm(商標)および薄い自己移植片;ポリグリコール酸/ポリ乳酸(PGA/PLA)マトリックスおよび真皮のための同種ヒト線維芽細胞を使用するDermaGraft(商標);真皮のためにヒアルラン(hyaluran)および線維芽細胞を使用し、表皮のためにヒアルランおよび患者自身の角化細胞を使用するHyaff/LaserSkin(商標);およびポリエチレンオキシド/ポリブチルフタレート(PEO/PBT)を使用し、真皮のために患者自身の線維芽細胞を使用し、表皮のために患者の培養角化細胞を使用することができるPolyActive(商標)がある。
【0007】
創傷を一時的に覆うためまたは永続的な皮膚回復プロセスを刺激するための材料には、真皮のためにコラーゲンゲルおよび同種線維芽細胞を使用し、表皮のために培養同種角化細胞を使用するApliGraft(商標);真皮用にコラーゲンおよび同種線維芽細胞を使用し、表皮用に培養同種角化細胞を使用するComp Cult Skin(商標)またはOrcel(商標);および真皮用のTransCyte(商標)および表皮用の合成材料BioBrane(商標)がある。
【0008】
上記の材料は様々な程度で有用であるが、それぞれ欠点と限界を有している。これらの材料のいくつかは、機械的に脆弱なため、裂けることなく大きな断片の材料に必要な操作を実施し、この材料を移植することが難しい。どちらかといえば、これらの材料はより小さな断片として使用しなければならず、そのため医師にとっては大きな表面積を覆うことは技術的に困難であり、患者にとっては移植片が隣接する部分での瘢痕形成により美容的に望ましくない。これらの材料は微生物汚染も受けやすく、このことは状態の悪化により感染に対するリスクが既に高くなっている患者には許容されない。これらの材料は生着率および治癒までの時間が様々であり、そのいずれも特定の患者に対して特定の材料の他の材料に比較した利点を選択する際に考慮に入れる必要がある。例えば、回復の成功にはできるだけ迅速に正常な日常状態に回復することが含まれるため、その他の点では許容されるが、生着および治癒により長時間を要する材料は望ましさが低くなる。
【0009】
参照としてその全体が明らかに本明細書に含まれる米国特許第5976878号に開示されている本発明者自身の先の複合体皮膚補充物は皮膚創傷の治療的処置に使用され、成功を収めている。これは外科的に1回の手順で適用され、培養表皮細胞層、無細胞ポリマー真皮膜成分、および真皮膜成分の1つの表面上の実質的に無孔のラミネーション層(lamination layer)を含んでいた。真皮膜成分はコラーゲンまたはコラーゲンとムコ多糖化合物から形成され、揮発性抗凍結剤を含む同じコラーゲンまたはコラーゲンとムコ多糖を含む溶液を積層した。実質的に無孔のラミネーション層は、真皮成分と培養表皮細胞層との間に位置させて、真皮成分表面上への表皮細胞の局在化および細胞性表皮成分の細胞への栄養物質の移動を促進させることができる。この組成物は、生物活性分子を適用部位へ送達するために使用することもできる。
【0010】
上記複合皮膚補充物の望ましい特徴には、他の材料と比較して、この材料で覆った部分の血管新生速度がより迅速であること、微生物汚染が減少すること、栄養物質の供給が増加すること、表皮バリア機能が改善されることなどがあった。複合皮膚補充物で覆われた部分では、生着および治癒に必要な時間が短く、この材料は他の材料について報告されているものより微生物汚染の可能性が低かった。他の望ましい特徴は、この材料が比較的脆弱ではなく、取り扱いが容易であることであり、例えば、熱傷患者が皮膚移植片を必要とする時間枠内で、比較的迅速に生成することができたことである。しかし、切除された全層創傷をより迅速に、同程度に低い微生物汚染で治癒する他の代替材料はないが、まだ限界が存在する。したがって、正常で無傷の皮膚の構造的および機能的特性により近づける必要性がまだ存在している。
【特許文献1】米国特許第5976878号
【非特許文献1】BoyceおよびHam、J. Tissue Culture Methods 1985、9、83
【非特許文献2】BoyceおよびHam、In Vitro Models for Cancer Research、Vol. 3、3章、p. 245、WebberおよびSekely編、CRC Press、Boca Raton Florida (1986)
【非特許文献3】BoyceおよびHam、J. Invest. Dermatol. 1983、81、335
【非特許文献4】BoyceおよびHam、Methods in Molecular Medicine、Vol. 18、28章、p. 365、Morgan & Yarmush編、Humana Press, Totowa NJ (1998)
【特許文献2】米国特許出願第10/091,849号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、皮膚創傷の外科的移植またはin vitroおよび動物の皮膚のモデルのためのデバイスを対象とする。デバイスは、培養真皮細胞および/または培養表皮細胞の1つまたは複数の層または集団に対する接着基質を提供する、無細胞で生体適合性の網目状のタンパク質またはポリペプチド含有マトリックスを有している。タンパク質は天然でも合成でもよく、完全なタンパク質より小さく、例えばポリペプチドであってもよい。様々な実施形態で、マトリックスに生育させるために使用する細胞はレシピエント由来(自己)、他のヒト由来(同種)、他の種由来(異種)、または複数の源由来(キメラ)とすることができる。表皮細胞には、角化細胞、メラノサイト、免疫担当細胞および/または幹細胞が含まれる。真皮細胞には、線維芽細胞、内皮細胞、免疫担当細胞、神経細胞、筋細胞および/または幹細胞が含まれる。表皮細胞および真皮細胞の一方または両方が遺伝子改変されていてもよい。
【0012】
本発明はまた、皮膚創傷の外科的移植またはin vitroおよび動物の皮膚のモデルのためのデバイスを調製する方法も対象とする。吸収剤基質上のマトリックスに、細胞懸濁液を提供して、細胞を接着用マトリックスに送達する。接種したマトリックスを、細胞デバイスが得られる十分な条件下で、インキュベートする。
【0013】
デバイスは、皮膚移植は必要としないが、皮膚代替物の細胞を生物工学処理してレシピエントに欠損している生理的因子を提供する、創傷のない表面、わずかな創傷を有する表面、または外科的に作られた表面にも使用することができる。このような因子はタンパク質、例えば、インスリン、凝固因子VIIIであってよく、それぞれ、そのタンパク質を欠損している糖尿病患者および血友病患者に提供することができる。
【0014】
皮膚代替物としての使用に加え、本発明のデバイスは、医薬品、化粧品、保湿剤、ローション、環境毒素、工業用薬品などの様々な局所適用する化合物に対する毒性試験または他の試験を実施する生体基質としても使用することができる。特定の個体由来の細胞を含むデバイスは、種々の化合物に対する個別の反応を示すことができる。このような方法は、皮膚に接触する化合物の毒性を試験するのに有用である可能性がある。このデバイスは、アレルギーのある個体または医薬品または一般用医薬品中の成分に対して皮膚反応を示す個体に対して試験を実施する医学診断ツールとしても有用である可能性がある。この実施形態では、デバイスはin vivoでの毒性試験を減少させるまたはなくすことになる。
【0015】
本発明のこれらの特徴およびその他の特徴は、以下の詳細な説明を参照して理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の皮膚創傷治療用の外科的に適用するデバイスは、真皮細胞および/または表皮細胞を支持するマトリックスである。より詳細には、無細胞で生体適合性の網目状マトリックスを、そこに培養細胞を適用し、細胞が接着して、増殖する支持体または足場として使用する。一実施形態では、網目状タンパク質マトリックスは培養表皮細胞の連続した層または集団および培養表皮細胞の重なった(overlying)層または集団を支持する。接種したマトリックスを、細胞増殖を促進する条件下でインキュベートした後、デバイスを患者に外科的に移植する。一実施形態では、マトリックスに表皮細胞を接種した後1日(約16時間から約24時間)以内に移植を実施することができる。他の実施形態では、マトリックスに表皮細胞を接種した後1カ月以内に移植を実施することができる。これらの時間内に、デバイスは治療用皮膚移植片材料に好ましい特性を生じる。皮膚採取器を使用して分層皮膚を採取する従来の方法で得られた組織とは対照的に、培養細胞を使用してこの材料を形成すると、従来の採取法と比べて、非常に多くの表皮細胞および真皮細胞が得られるという利点があり、その結果、広範な全層皮膚創傷を完全に閉鎖するためのドナー皮膚に対する要件が非常に少なくなる。
【0017】
デバイスを患者に移植した後、生分解性マトリックスは生体に吸収される。細胞は組織化されて、生着培養皮膚代替物と呼ばれる、機能性の皮膚組織を形成する。デバイスは、正常で無傷の皮膚に認められる特性および構造の多くを有し、正常で無傷の皮膚と同様に機能して、体液の損失および微生物感染から個人を保護する。例えば、デバイスは、当業者に正常な皮膚の機能に決定的なものであることが知られている表皮バリアとして機能する。デバイスは基底膜を確立し、正常で無傷の皮膚と同じ細胞の層または集団の解剖的構成を維持している。デバイスは、正常で無傷の皮膚と同じように、血管新生因子および炎症プロセスのメディエータを産生し、放出する。デバイスは、1週間未満で効果的に血管新生し、移植後2日以内に部分的に血管新生する。
【0018】
本発明の別の実施形態では、デバイスを一時的な皮膚代替物として使用する。この実施形態では、マトリックスに、非自己遺伝子型を有する細胞を生育させることができる。例えば、培養真皮細胞および/または培養表皮細胞は自己細胞、すなわちデバイスの意図したレシピエントである個体から得たものであってよく、永久生着したデバイスで使用できる自己細胞であってよい。他の実施形態では、真皮細胞および/または表皮細胞は同種細胞、すなわちレシピエント以外のヒトから得たものであってよい。さらに別の実施形態では、真皮細胞および/または表皮細胞は異種細胞、すなわち、ヒト以外の動物の細胞であってよく、ヒトの皮膚に対するブタの皮膚の特徴および特性の類似性を利用するブタ真皮細胞および/または表皮細胞であってよい。異種細胞は植物または微生物から得ることもできる。真皮細胞および/または表皮細胞に別な源を使用すると、遺伝的にキメラなデバイスが生じる。真皮細胞および/または表皮細胞の源に関係なく、1種または複数の細胞を遺伝子改変することができる。様々な要因が細胞の特定の遺伝型組成の選択に影響を与える可能性がある。例えば、同種細胞または異種細胞を使用することにより、デバイスの調製時間を短縮することができるか、患者からのドナー皮膚に対する要件をさらに減少させることができる。レシピエントの特定の条件に依存して、これらの要因は重要な決定要因となりうる。
【0019】
本発明のデバイスで処置する患者の皮膚細胞を使用する場合、パンチ生検、シェーブ生検および縫合糸による閉鎖を伴う全層皮膚切除を含む当業者に公知の手法を使用して、患者の皮膚の健康な部分の生検から得る。次いで、BoyceおよびHamがJ. Tissue Culture Methods 1985、9、83およびIn Vitro Models for Cancer Research、Vol. 3、3章、p. 245、WebberおよびSekely編、CRC Press、Boca Raton Florida (1986)に記載したように(いずれも参照して本明細書に明らかに含まれる)、真皮および表皮細胞成分を真皮細胞と表皮細胞に分離精製した。BoyceおよびHamがJ. Invest. Dermatol. 1983、81、335およびMethods in Molecular Medicine、Vol. 18、28章、p. 365、Morgan & Yarmush編、Humana Press, Totowa NJ (1998)(いずれも参照して本明細書に明らかに含まれる)に記載したように、真皮細胞および表皮細胞を個々に培養する。
【0020】
表皮の様々な細胞、例えば、角化細胞、メラノサイト、免疫担当細胞、幹細胞など、および真皮の様々な細胞、例えば、線維芽細胞、内皮細胞、免疫担当細胞、神経細胞、筋細胞、幹細胞などを、個別にまたは集合的に培養することができる。適切な細胞数が得られた後、または特異的な細胞生理が発現された後に、細胞集団を採取し、次いでマトリックスに生育させる。様々な実施形態で、マトリックスに接種するのに使用する表皮細胞と真皮細胞の比は約2:1または1:1であるが、他の細胞比も含まれる。
【0021】
デバイスを調製する用途に応じて、選択した型の真皮細胞および表皮細胞を含めるまたは除外することができる。一例として、デバイスは移植部位で色素沈着を回復させるためにメラノサイトを含むことができる。皮膚の色素沈着の回復とは、移植片の皮膚色の解剖学的または生理学的機能の上昇と定義されるが、色の程度は傷害のない皮膚とは異なる可能性がある。別の例として、培養皮膚組成物は血管の形成を刺激するために内皮細胞を含むことができる。
【0022】
デバイスの調製において、培養および培養細胞移植の基質として許容されるすべての生体適合性材料を使用することができる。天然または合成の全長タンパク質を使用することができ、あるいはポリぺプチドを使用することができる。一実施形態では、凍結乾燥したコラーゲンのスポンジを、単独または、炭水化物(グリコサミノグリカン(GAG)、特にコンドロイチン-6-硫酸などのムコ多糖類)と組み合わせて使用する。コラーゲンは、ウシ皮膚コラーゲン、ウシ腱コラーゲン、他の組織源(例えば、骨、筋肉)、他の異種源(例えば、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、遺伝子改変した源、ヒト源由来のコラーゲンまたは上記の任意の組合せとすることができる。天然または合成の、エラスチンまたはレチクリンなどの他のタンパク質あるいはアミノ酸のポリマーを使用することができる。
【0023】
マトリックスを調製する一実施形態では、コラーゲン-GAGの共沈澱を成型し、凍結させ、脱水して網目状マトリックスを形成する。このマトリックスを続いて滅菌し、再水和し、培養真皮細胞および培養表皮細胞を接種することにより積層する。接種は、周囲湿度(室内空気)で実施し、接種したマトリックスを飽和湿度または低い湿度の雰囲気中でインキュベートする。次いで、マトリックスを培地中に沈めて、あるいは気体雰囲気と接触させながら、インキュベートする。後者の実施形態では、接種した細胞はマトリックスの雰囲気表面上にある。ここで、これらのステップを個々により詳細に記述する。
【0024】
マトリックス形成タンパク質含有流体
コラーゲン(6.42mg/ml)を酢酸(0.01M〜1.0M)に、通常は16時間まで予め可溶化させることによりコラーゲン分散液を調製し、その後この分散液を4℃で保存する。炭水化物を加える場合には、次いでコンドロイチン-6-硫酸などのグリコサミノグリカン(GAG)との共沈物を調製することができる。コンドロイチン-6-硫酸(3.45mg/ml)を酢酸(0.01M〜3.0M)に加える。
【0025】
予め調製したコラーゲン分散液を少なくとも5分間再分散させ、再循環冷却ジャケット付きのステンレス鋼保冷ビーカーに移す。共沈物を形成するのに適当な攪拌と剪断を生じる任意の手段により、GAG溶液をタンパク質溶液に加える。これは、GAG溶液をドリップ容器に移し、22ゲージの針をつけたドリップセットを使用してGAGをコラーゲンに加えて、5000回転/分(rpm)の速度で混合し、4℃に維持しながら、10秒間に1滴の速度でGAG溶液をコラーゲン分散液750mlに滴下することによって実施することができる。GAG全体積をコラーゲンに滴下した後、コラーゲン-GAG共沈物を容器に移し、遠心分離して、閉じ込められた気泡を除去する。上部に集まるフロスを吸引で除去し、次いでコラーゲン-GAG共沈物を収集する。
【0026】
架橋マトリックスの調製
炭水化物を含むまたは含まないタンパク質含有流体を調製してマトリックスを形成する。予備的ステップとして、凍結乾燥機を予め約-35℃から約-50℃に冷却する。一実施形態では、約-45℃に少なくとも4時間予め冷却してある95%エタノールを含む高密度ポリエチレン(HDPE)容器中で、凍結浴を準備する。しかし、制御された速度で熱を除去してマトリックスを凍結させるのに十分な温度の低下が約4時間までの時間枠内で起こる任意の型の装置または構成を使用することができる。例えば、約2時間以内に約4℃から約-40℃までの温度の低下、または約4時間以内に約4℃から約-75℃までの温度低下をもたらすように時間および温度を制御することができる。
【0027】
タンパク質溶液を、参照として本明細書にその全体が明らかに含まれる、本発明と同日に出願した「Apparatus for Preparing a Biocompatible Matrix」という表題の同時継続出願である米国特許出願第10/091,849号により完全に記載されている装置に導入する。その結果、培養真皮細胞および培養表皮細胞を支持してデバイスの形成を促進させる組成、構造および特性を有するマトリックスが得られる。
【0028】
簡単に述べると、マトリックス形成溶液を熱伝導性材料の2枚のプレートの間に収容し、ガスケットが密封チャンバの残りの側部を形成する。約0.1mmから約10mmの範囲のガスケットの厚さにより、得られるマトリックスの厚さが制御される。タンパク質溶液をチャンバに導入する。溶液の全体積を加えたときに、例えば、クランピングにより、チャンバを可逆的に密封する。次いで、チャンバを前記制御された速度で熱を除去するのに十分な温度および/または条件に曝して、マトリックスを固化させる。
【0029】
マトリックスが固化した後、プレートを分離して、冷凍したマトリックスを露出させる。マトリックスを含むプレートを凍結乾燥機の冷却した(-45℃)棚に移す。次いで、真空をかけ、圧力が60mT未満になったときに、熱(30℃)も加える。終夜凍結乾燥して、最終真空15mT未満とする。凍結乾燥したマトリックスは自然に剥離し、次いで、支持シートに移す。
【0030】
マトリックスは、化学的架橋剤の不在下で架橋させる。これによって望ましいことに、洗浄を繰り返した後でも完全に除去することができない残留した化学的架橋剤に伴う可能性のある毒性が排除される。本発明の一実施形態では、熱架橋を使用する。これは、約-100kPa、約105℃の真空オーブン(Lab-Line 3628)中で約24時間熱脱水することにより達成する。架橋が生じたら、次いで、マトリックスは、約3カ月までの間、ホイルシートまたは他の支持材料上で、室温でデシケータ内で保存する。
【0031】
架橋したマトリックスの厚さは3mm以下である。様々な実施形態で、所望の移植部位などの他の要因に依存して、架橋マトリックスは、約0.1mmから約1.0mm、約0.1mmから約2.0mm、または約0.1mmから約3.0mmの範囲の厚さを有する。約0.1mmから約1.0mmの範囲の厚さを有するマトリックスは、上記のように細胞を接種すると、約50μmから約500μmの範囲の厚さを有するデバイスとなる。このようなデバイスを使用して皮膚創傷を治療すると、この厚さは望ましくは迅速な血管新生、栄養物質の送達、デバイスへの細胞の生育、廃棄物の除去が促進され、望ましいことに、移植後のマトリックスの分解が促進されて、組成物の細胞性成分のみが残る。
【0032】
次いで、架橋結合したマトリックスを所望の大きさおよび/または形状に切断する。一実施形態では、直定規とはさみを使用して四角(例えば、9cm×9cm、11cm×11cm、または約19cm×19cm)にする。マトリックスを滅菌ポーチ(例えば、Self-Seal(商標))に包装し、約3カ月までデシケータ中、室温で保存する。
【0033】
マトリックスは、接種前に、例えば、少なくとも約2.5mRadの線量でガンマ照射(例えば、SteriGenics、WestervilleOH)することにより滅菌する。滅菌した後、マトリックス滅菌ポーチを約1年間まで、デシケータ中、室温で保存する。
【0034】
マトリックスの細胞接種
すべての溶液は0.22μmフィルターで滅菌濾過し、すべての手順は当業者に公知の無菌手技を用いて実施する。
【0035】
マトリックスを、約250μl/cm2の体積のマトリックス/インキュベーションを保持する任意の形状の容器に移す。マトリックスをHepes緩衝食塩水(HBS)溶液で30分間ずつ3回すすぎ、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)溶液または当業者に公知の他の適当な溶液で30分間ずつ2回すすぐ。
【0036】
最後のすすぎの後、容器から培地を吸引し、接種フレームをマトリックスの表面上に置く。接種フレームは生理的条件下(すなわち、37℃、飽和湿度、中性pH、等張溶液)で化学的反応性のない材料(例えば、ステンレス鋼、Teflon(商標))製の正方形または長方形のフレームである。フレームは、その外辺部より中に接種される細胞の動きに対する封止を生成するのに十分重い(例えば、数オンス)ものである。マトリックスに接している側にベベルを加えて封止を増加させて、質量/面積比を上昇させることができるが、マトリックスに接している平面または丸い表面はマトリックスの切断を避けるのに十分な量である。下記の補充DMEM約10〜12mlをフレームに入れる。マトリックスに細胞を接種する前に、マトリックスと補充DMEMを含むフレームを37℃/5% CO2で少なくとも15分間平衡化させる。
【0037】
細胞は、再水和したマトリックスに培地中または培地上で接種することができる。「培地中(submerged)接種」と呼ぶ一実施形態では、細胞を培地内に沈んでいるマトリックスに接種する。細胞を含まない培地を接種フレームの外側の培養容器に加えて、フレームの外側から中側へ培地が漏れることがないことを確認することにより、確実な封止であることを確認する。選択的な培養物からの細胞をトリプシン処理することにより細胞懸濁液を調製した後、真皮細胞を約0.05〜1.0×106細胞/cm2の範囲の密度で接種する。続いて、真皮細胞が接着したら、表皮細胞を懸濁液として接種し、真皮細胞の層または集団に接着させる。別法では、真皮細胞と表皮細胞の組合せを同時に接種する。真皮細胞と表皮細胞の比は、約2:1から約1:1の範囲とすることができるが、他の比も使用することができる。他の実施形態では、真皮細胞のみまたは表皮細胞のみを接種することができる。
【0038】
最後の細胞をマトリックスに接種した後、接種フレームは約12〜48時間その位置に残しておく。次いで、接種フレームを除去し、細胞をもたないマトリックスの縁を切り取り、マトリックスの接種表面を空気に曝して、表皮細胞の組織化および表皮バリアの形成を刺激する。接種フレームを除去する前に、許容されるサプリメントを含むダルベッコ改変イーグル培地を使用する。フレームを除去し、マトリックスを空気に曝露した後、培地にプロゲステロンおよび表皮成長因子を補う。
【0039】
「培地上接種(lifted inoculation)」と呼ばれる別の実施形態では、細胞を培地から出ているマトリックス上に接種する。この実施形態では、マトリックスを再水和し、吸収剤基質上に載せ、上面を大気に接触させる。表皮細胞の懸濁液をマトリックス上に接種し、培地のドレイナージにより細胞をマトリックスの表面に送達し、その後、細胞が接着する。同時に、または最高1週間後までに、表皮細胞の懸濁液をマトリックス上に接種する。
【0040】
より具体的には、滅菌した非接着性の多孔質膜(例えば、医療等級のメッシュ(N-Terface(登録商標)、Winfield Laboratories社、テキサス州ダラス);Telfon(商標);ポリエーテルスルホン、ポリビニリデンフルオライド、セルロースエステル混合物などのMilliporeまたはWhatmanフィルター、本明細書以下では、多孔質膜とする)をHBSを含む滅菌組織培養皿に入れ、滅菌したマトリックスを多孔質膜の上部に載せ、再水和する。滅菌吸収剤材料(例えば、厚さ9mmで中等度の密度(CF100)のMerocel(商標);コットン、ガーゼなど、本明細書以下では、吸収剤材料とする)を、第2の滅菌皿に入れ、過剰のDMEMを加える。この皿をインキュベータに戻して、平衡化させる。
【0041】
真皮細胞の接種に先立って、マトリックスを多孔質膜の中央に置き、培地を吸引する。マトリックス/多孔質膜を吸収剤材料の上に載せる。マトリックスの面積を0.5cm単位で測定し、皿を再度インキュベートする。真皮細胞を採取し、計数する。補充DMEMで密度を3×106細胞/mlに調整し、約5×105真皮細胞/cm2をマトリックス上に接種する。補充DMEMを加え、皿をインキュベータに戻す。
【0042】
翌日、そのユニットを、本明細書以下ではUCMC160とする、プロゲステロンおよび表皮成長因子を含む補充DMEMを25ml含む滅菌した150mmの皿に移す。培地を吸引し、新しいUCMC160培地をさらに25ml加える。表皮細胞の接種まで、このプロセスを毎日繰り返す。
【0043】
表皮細胞接種に先立って、UCMC160培地で飽和した滅菌皿に滅菌した吸収剤材料を入れ、インキュベートする。接種の数時間前、予め接種した細胞/マトリックス/多孔質膜ユニットを吸収剤材料の上におく。マトリックスの面積を0.5cm単位で測定し、皿を再度インキュベートする。表皮細胞を採取し、計数する。密度は1.2×107細胞/UCMC160培地mlに調整し、ピペットの先端を使用して接種物の表面張力を破壊し、接種したマトリックス上に表皮細胞の連続層を形成するように、マトリックスに1×106細胞/cm2を接種する。30〜60分間インキュベートした後、UCMC160培地を吸収剤材料の外側に加える。接種したマトリックスをインキュベートする(0日目)。
【0044】
1日目、吸収材料の周囲の培地を吸引し、再インキュベートする前に新しい培地を加える。2日目、滅菌した、ワイアメッシュとコットンからなるリフティングフレームを新しい滅菌皿に入れ、適当な体積のUCMC160培地を加えて、培地をワイアメッシュおよびコットンと接触させる。接種したマトリックスをリフティングフレームおよび飽和コットン上に移動させ、再度インキュベートする。3日目にこのプロセスを繰り返す。4日目以上、このプロセスは補充UCMC161培地を使用して繰り返す。
【0045】
接種したマトリックスにはUCMC161培地を使用する。還元型フェノールレッドを含むDMEMのベースに、下記の補助物質(すべて、Sigma、マサチューセッツ州セントルイスから入手可能)を加えて、示した範囲の最終濃度を得る。塩化ストロンチウム(0.01mM〜100mM);リノール酸/BSA(0.02μg/ml〜200μg/ml);インスリン(0.05μg/ml〜500μg/ml);トリヨードサイロニン(0.2pM〜2000pM);ヒドロコルチゾン(0.005μg/ml〜50μg/ml);ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)、アンホテリシン(0.25μg/ml)の組合せ;アスコルビン酸-2-リン酸(0.001mM〜10mM)。
【0046】
UCMC160培地を調製するために、プロゲステロン(0.1nM〜1000nM)および表皮成長因子(0.01ng/ml〜100ng/ml)をUCMC161培地に加えて、角化細胞の一時的な増殖を促進する。
【0047】
具体的な理論や機構に結びつけるのではないが、下記の事象が起こりやすい。接種の際に、線維芽細胞は、コラーゲン特異性受容体を介した結合により、コラーゲンマトリックスとの生理的結合を形成しやすい。マトリックスは網目状であり、したがって、複数の連続表面を含んでいるため、上面から底面に直線的なチャンネルまたは開口で開口している場合と反対に、表皮細胞を加えることができる前に、接種している線維芽細胞または他の真皮細胞がマトリックスのこれらのチャンネルまたは開口を満たす必要はない。むしろ、接種の際、真皮細胞は網目構造に接着し、したがって、穴のあいたマトリックスを使用して可能になるより短時間の間に、表皮細胞を続いて接種するための、連続的な表面ラミネーション層を提供することができる。
【0048】
接種後、1日未満(約16時間から約24時間以内)から約6週間までのいずれかの間、細胞増殖、維持、分裂を促進する条件下でデバイスをインキュベートする。細胞は実質的に連続した単層または多層表面を形成する。次いで、デバイスを患者に移植することができ、あるいは移植までこのような条件下に維持することができる。この期間中に、マトリックスは望ましいことに分解し、細胞は増殖し、新しいヒトコラーゲンおよび生体高分子が沈着し、そのすべてが血管新生およびデバイスの生着を促進する。
【0049】
デバイスの生着
デバイスの外科的移植に先立って、微生物汚染を最少にし、血管供給を最高にすることによって創傷の準備を行う。これらの条件は通常、早期(すなわち熱傷後1週間未満)に接線方向に生存している基底まで焼痂を切開し、切開した創傷を死体同種皮膚移植片または皮膚代替物(すなわち、Integra Artificial Skin(商標))で一時的に保護することで達成される。
【0050】
移植時には、同種移植片または皮膚代替物の一時的な成分を取り除くと、微生物汚染の少ない非常に生存能の高い移植片ベッドが生成される。止血を得て、1つまたは複数の培養皮膚デバイスを移植し、外科用ステープルでとめる。デバイスは非接着性の包帯(例えば、N-Terface(登録商標))、細かいメッシュのコットンガーゼ、およびバルキーコットンガーゼで覆い、デバイスを例えば、非細胞傷害性の抗微生物剤を含む溶液でデバイスを洗浄するために有孔カテーテルを装着する。包帯交換および検査は術後2日目および5日目に行い、その後、湿性包帯は一般に中止し、適当な抗微生物剤の軟膏(例えば、等部ずつのNeomycin:Bactoban:Nystatin)を塗布する。治癒が完了するまで、未治癒部分に軟膏を塗布する。生着したときに、治癒プロセスを促進し、可能性のある合併症を最小限にする種々の薬剤をデバイスに局所的に適用する。例えば、改変細胞培養培地などの栄養溶液は、血管新生の間に創傷に栄養物質を供給することができ、かつ/または非細胞傷害性の抗微生物溶液は微生物汚染を減少させるまたは抑制することができる。
【0051】
本発明のデバイスはまた、in vitroの試験にも使用できる。例えば、デバイスを、化粧品および/または局所用の治療剤または予防剤などの皮膚への適用を意図している化合物の評価に使用することができ、あるいは、工業用薬品および/または環境毒素などの不注意で皮膚に接触する可能性のある化合物の評価に使用することができる。本発明のデバイスを使用してこれらの薬剤のいずれかについて得られた情報は、種々の用途に有用であろう。一例として、単剤または薬剤の組合せの皮膚での吸収、分布、生体内変換および消失パラメータを決定することができる。別の例としては、単剤または薬剤の組合せの、1種または複数の種の皮膚の細胞に対する毒性を決定することができる。さらに別の例としては、処方、吸収性および用量決定の研究のために、単剤または薬剤の組合せの皮膚での取込を定性的および定量的に評価することができる。さらに他の例としては、単剤または薬剤の組合せによる障害に際して、バリア機能を評価することを可能にする。用途の他の例は当業者には明らかであろう。このような方法は様々な利点を有している。すなわち、in vivoの研究を実施する必要性を低下または消失させ、より制御されたスクリーニング用の比較を実施することができ、したがって、より再現性のあるデータが得られ、そうでなければ毒性のある化学物質および/または放射性標識した物質などの投与を可能にする。さらに、特定の個人、例えば、アレルギー反応を起こしやすい個人からの細胞を使用することにより、上記および同様の評価を個別化することができる。
【0052】
in vitroの試験にデバイスを使用する方法には、一般に、デバイスを調製することまたは調製したデバイスを使用すること、およびデバイスに物質を適用することを含む。物質は直接または間接的にデバイスの任意の表面に適用することができ、かつ/またはデバイスをインキュベートする培地に加えることができ、かつ/またはデバイスの周辺の環境内に加えることなどができる。物質をデバイスに接種することもできる。
【0053】
培養皮膚デバイスおよびデバイスを調製する方法も開示されている。本発明のデバイスおよび方法は、皮膚創傷の治療を提供し、正常で無傷の皮膚の構造的および機能的特徴を有している。一実施形態では、デバイスはデバイスを適用する患者からの細胞を含んでおり、したがってドナーの適合性の懸念が減少または消失する。本発明の別の変形形態または実施形態は当業者には上記説明から明らかであろう。一例として、非ヒト動物からの細胞を使用して獣医用途のデバイスを作製することができる。別の例としては、生体適合性の網目状マトリックスは無細胞であってよく、あるいは真皮細胞成分のみまたは表皮細胞成分のみを含むことができる。さらに別の例としては、表皮細胞はメラノサイトだけであってよく、あるいは真皮細胞は内皮細胞のみであってよい。したがって、上記の実施形態は本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、
マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、
細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞、及び、
皮膚接触化合物を評価するためのデバイスを使用するための指示
を含むin vitro皮膚評価デバイス。
【請求項2】
少なくとも1種の細胞が遺伝子改変されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスを使用する、化合物の存在下でのバリア機能の評価方法。
【請求項4】
請求項1に記載のデバイスを使用する、化合物の存在下での血管形成の評価方法。
【請求項5】
請求項1に記載のデバイスを使用する、化合物の存在下での毒性の評価方法。
【請求項6】
請求項1に記載のデバイスを使用する、化合物の有効性の評価方法。
【請求項7】
請求項1に記載のデバイスを使用する、化合物の薬物動態の評価方法。
【請求項8】
請求項1に記載のデバイスを使用する、化合物の処方の評価方法。
【請求項9】
請求項1に記載のデバイスを使用する、化合物の透過性の評価方法。
【請求項10】
請求項1に記載のデバイスを使用する、化合物の線量の評価方法。
【請求項11】
前記化合物が、処方薬、市販薬、化粧品、保湿剤、環境毒素、工業用薬品、及びこれらの組合せから成る群より選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
個体由来の細胞を含み、化合物に対する個別の反応を示す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記個体が、少なくとも1種の化合物に対して増大した感受性を示す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記個体が、前記化合物に対してアレルギーであるか、もしくはアレルギー反応を起こしやすく、アレルギーを改善するための化合物を更に含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
化合物の皮膚への効果を決定するためのin vitro試験方法であって、
評価しようとする化合物を人工皮膚デバイスに直接的または間接的に適用する工程、及び前記化合物の効果を測定するための少なくとも1種の皮膚パラメータを決定する工程
を含み、前記デバイスは、生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着した培養真皮細胞を含み、前記マトリックスは、マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製され、前記真皮細胞は、細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供し、これが表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立している、方法。
【請求項16】
前記デバイスが、化合物で接種される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が、デバイスがインキュベートされる培地中にある、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が、デバイスの周辺の環境内にある、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、
マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、
細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞
を含み、前記表皮細胞が、角化細胞、メラノサイト、免疫担当細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群から選択され、更に前記真皮細胞が、線維芽細胞、内皮細胞、免疫担当細胞、神経細胞、筋細胞、幹細胞およびそれらの組合せからなる群から選択される、培養皮膚デバイス。
【請求項20】
生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、
マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、
細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞
を含み、代謝疾患、タンパク質欠損、タンパク質欠乏症、及びそれらの組合せをもつ患者の治療のために移植された、培養皮膚デバイス。
【請求項21】
生理的因子を必要とする患者にこれを提供する方法であって、
皮膚移植を必要としない皮膚表面を外科的に準備する工程、
皮膚代替物を前記表面に提供する工程
を含み、前記皮膚代替物は、生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞を含み、前記細胞は、患者に生理的因子を提供するために生体工学処理されている、方法。
【請求項22】
前記因子がタンパク質である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質がインスリンであり、前記患者が糖尿病患者である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質が凝固因子VIIIであり、前記患者が血友病患者である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、
マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、
細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞
を含む合成皮膚デバイスであって、移植部位で色素沈着を回復させるために十分な濃度のメラノサイトまたは移植部位で血管の形成を刺激するために十分な濃度の内皮細胞の少なくとも1種を含むデバイス。
【請求項26】
前記メラノサイトの濃度が、レシピエントの色素沈着に個人的に適合させたものである、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、
マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、
細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞
を含む培養皮膚デバイスであって、少なくとも1種の細胞が異種である、且つ/または遺伝子組み換えされている、デバイス。
【請求項28】
生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、
マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、
細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞
を含むデバイスであって、前記表皮及び/または真皮細胞の少なくとも1種が、キメラなデバイスをもたらす異種の表皮及び/または真皮細胞であるデバイス。
【請求項29】
移植時間及び/または真皮もしくは表皮細胞の源としてのドナー皮膚の必要性を低減する方法であって、
生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、
マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、
細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞
を含むデバイスを提供する工程を含み、
前記真皮及び/または表皮細胞は、同種もしくは異種の細胞で補填されており、ドナーの真皮及び表皮細胞の低減が、移植に利用可能であり、且つ/または同種もしくは異種細胞によって必要とするドナー皮膚が低減されたデバイスをもたらす、方法。
【請求項30】
獣医用応用における、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が異種であって、ブタ細胞、植物細胞、及び、微生物細胞からなる群より選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
皮膚移植を必要とする患者に要する皮膚移植片の数を最少化する方法であって、
移植部位を模した寸法の装置を用いてデバイスを準備する工程を含み、前記デバイスは、生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞を接種することによって準備され、
前記マトリックスは、マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製され、
前記真皮細胞は、細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供し、これが表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立しており、
前記装置は、移植部位の寸法を模した寸法を有してレシピエントの移植部位を覆うデバイスをもたらす、方法。
【請求項33】
前記装置がマトリックス形成流体の入ったチャンバを含む、請求項32に記載の方法であって、前記チャンバが、
少なくとも1つの最上面剛性金属表面及びと最底面剛性金属表面(前記最上面及び最底面は生体適合性マトリックスの調製において、マトリックス形成流体からの熱の対照的な除去に有効である)、
前記最上面と最底面との間に位置して、前記チャンバの周辺を規定する、均一な厚さを有する少なくとも1つの不連続性ガスケット(前記ガスケットは、前記周辺内に前記マトリックス形成流体を収容することができる)、並びに
前記最上面と前記最低面とを固定する複数の固定具
によって定義される、方法。
【請求項34】
生着が促進された、生体適合性マトリックスの接種方法であって、
生体適合性網目状コラーゲンマトリックスに線維芽細胞を接種する工程(前記マトリックスは、マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製され、前記線維芽細胞は、コラーゲン特異性受容体に結合して、マトリックス上に連続的な表面ラミネーション層を形成するコラーゲン特異性受容体を介した結合により、コラーゲンマトリックスとの生理的結合を形成する)、及び、
培養表皮細胞を、有孔マトリックスを使用した場合に可能であるよりも短時間でラミネーション層上に接種する工程(前記表皮細胞は、ラミネーション層に直接接着して表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する)
を含む方法。
【請求項35】
生体適合性網目状無細胞マトリックスに直接接着された培養真皮細胞、
マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製される前記マトリックス、
細胞ラミネーション層の上に直接接種されて直接接着した培養表皮細胞を提供して、表皮細胞と真皮細胞との間に基底膜を確立する前記真皮細胞
を含み、前記マトリックスがコラーゲンを含む、培養皮膚デバイス。
【請求項36】
生体適合性網目状無細胞マトリックスを接種する工程(前記マトリックスは、マトリックス形成コラーゲン含有流体を成型、凍結、及び乾燥させて調製され、前記マトリックスは、培養真皮及び表皮細胞で接種され、前記真皮細胞はマトリックスに直接接着される)、及び、
接種したマトリックスに、培養皮膚デバイスが形成されるために十分な条件下で真皮細胞を接種して細胞ラミネーション層を提供し、ここで真皮細胞上に直接接種されて直接接着した表皮細胞との間に基底膜が確立され、ここでの条件に、インスリン、少なくとも1種の必須脂肪酸、ビタミンC、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む培地中でインキュベートすることを含み、更に、インスリンが、約0.05μg/ml乃至約500μg/mlの範囲の濃度である工程
を含む、培養皮膚デバイスの製造方法。
【請求項37】
皮膚から、少なくとも1種の真皮細胞型または少なくとも1種の表皮細胞型を単離する工程、
単離された前記真皮及び表皮細胞を別々に培養する工程、
培養真皮細胞を生体適合性網目状マトリックスに提供して、塩化ストロンチウム(0.01mM乃至100mM);リノール酸/BSA(0.02μg/ml乃至200μg/ml);インスリン(0.05μg/ml乃至500μg/ml);トリヨードサイロニン(0.2pM乃至2000pM);ヒドロコルチゾン(0.005μg/ml乃至50μg/ml);ペニシリン(100U/ml)とストレプトマイシン(100μg/ml)とアンホテリシン(0.25μg/ml)との組合せ;アスコルビン酸-2-リン酸(0.001mM乃至10mM)、プロゲステロン((0.1nM乃至1000nM)、及び表皮成長因子(0.01ng/ml乃至100ng/ml)を含むダルベッコ改変イーグル培地中で24時間に亘ってインキュベートする工程、その後、
真皮細胞のラミネーション層上に培養表皮細胞を提供して培養皮膚デバイスを提供する工程
を含む方法によって調製される培養皮膚デバイス。

【公開番号】特開2011−172592(P2011−172592A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113424(P2011−113424)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【分割の表示】特願2008−101712(P2008−101712)の分割
【原出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(504336087)ユニバーシティ・オブ・シンシナティ (2)
【出願人】(504336283)
【Fターム(参考)】