説明

皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤として用いるためのL−セリン

本発明は、PAR2受容体の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤としてのL−セリンの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、PAR2受容体の過剰発現/過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤としてのL−セリンの使用、ならびに、特に、L−セリン、アベンヌ温泉水、グリセリンおよび化粧料上許容される担体を含んでなる皮膚化粧料組成物に関する。
【0002】
プロテアーゼ活性化受容体−2(PAR2)は、炎症応答を伴ういくつかの疾患の生理病理学と関係がある(Rattenholl A et al.; Drug News Perspect; 2008 Sep;21(7):369-81)。
【0003】
PAR2は、Gタンパク質と共役した7回膜貫通型受容体のスーパーファミリーに属するが、独自の活性化経路を有する。実際には、PAR2は、トリプシン、トリプターゼおよび第Xa因子および第VIIa因子などのセリンプロテアーゼによって活性化される。これらのプロテアーゼによるその受容体の細胞外部分の切断によって新しいアミノ末端ドメイン(SLIGKV)が露出し、このアミノ末端ドメインがその受容体と「結合する」リガンドとして作用し:それがその受容体の細胞外第2ループに結合し、自己活性化が起こる。
【0004】
PAR2は、皮膚の様々な細胞種:ケラチノサイト、汗腺の筋上皮細胞、毛包、真皮樹枝状細胞ならびに粘膜固有層や真皮の内皮細胞によって発現される(Steinhoff et al., Exp Dermatol.; 1999 Aug;8(4) :282-94)。
【0005】
PAR2はメラノサイトからケラチノサイトへのメラニンの移行を促進することによって色素沈着において重要な役割を果たすが、メラノサイトはこの受容体を発現しない(Seiberg et al., Exp Cell Res.; 2000 Jan 10;254(1):25-32)。表皮で生成されたセリンプロテアーゼは、皮膚における白血球動員を誘導する走化性効果を有する。セリンプロテアーゼはまた、ホメオスタシス、有糸分裂生起および上皮分化の調節に関与し、皮膚のバリア機能を調整する。さらに、セリンプロテアーゼは、炎症、宿主防御、発癌現象、繊維症および神経刺激に関係する皮膚疾患の生理病理の一因である。
【0006】
セリンプロテアーゼの生理学的および生理病理学的皮膚特性は、PAR群と一部分において関係している。実際には、PAR2は、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬および乾癬などの皮膚の炎症性疾患において表皮、真皮および血管において過剰発現される(Steinhoff et al., Exp Dermatol; 1999 Aug;8(4):282-94)。
【0007】
PAR2はまた、アトピー性皮膚炎に罹患している患者におけるそう痒症の発症においてもある役割を果たす(Steinhoff et al., J Neurosci. 2003 Jul 16;23(15):6176 80)。
【0008】
トリプシン型プロテアーゼによるPAR2の活性化によってケラチノサイト(HaCaT)からのIL−8の産生が誘導される(Hou et al., Immunology, 1998, 94:356-362)。敏感肌を有する対象では、PAR2が過剰活性化されることが示されている。求心性神経繊維におけるPAR2の過剰活性化の結果として皮膚の不快感がもたらされる。さらに、ケラチノサイトにおけるPAR2の過剰活性化の結果として、炎症や低下したバリア機能(ラメラ体の低下した分泌)の回復がもたらされる(Hachem JP et al., J Invest Dermatol.; 2006 Sep;126(9) :2074-86.)。
【0009】
よって、PAR2の発現および/または活性を低下させる活性物質を開発することがまさに必要である。
【0010】
驚くべきことに、本出願者は、L−セリン、L−アスパラギンおよび/またはL−バリンが、それぞれ、PAR2発現/活性化を阻害できることを実証した。
【0011】
よって、本発明は、PAR2の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤として用いるためのL−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンに関する。
【0012】
有利には、本発明は、PAR2の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤として用いるためのL−セリンに関する。
【0013】
有利には、PAR2の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答は、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、乾癬、そう痒症、脂漏性皮膚炎、酒さ、クーペロシス(couperose)および皮膚過敏症からなる群から選択される皮膚の炎症性病変に関与する。
【0014】
よって、有利には、本発明は、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、乾癬、そう痒症、脂漏性皮膚炎、酒さ、クーペロシスおよび皮膚過敏症からなる群から選択される皮膚の炎症性病変を予防および/または治療するための薬剤として用いるためのL−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンに関する。
【0015】
L−セリンは、C3 α−アミノ酸であり、アラニンのヒドロキシル化同族体である。
【0016】
L−セリンは、ヒドロキシル化脂肪族アミノ酸であり、その系統名は2−アミノ−3−ヒドロキシプロパン酸であり、下式を有する:
【化1】

L−アスパラギン(またはアスパラギン−アミノ−コハク酸)は、アスパラギン酸由来の非荷電性かつ親水性の極性α−アミノ酸であり、下式を有する:
【化2】

L−バリンは、非極性疎水性α−アミノ酸であり、下式を有する:
【化3】

【0017】
「PAR2の過剰発現」とは、該受容体が正常な生理学的条件下よりも高く発現されることを意味する。
【0018】
「PAR2の過剰活性化」とは、該受容体が正常な生理学的条件下にある場合よりも高い活性を示すことを意味する。
【0019】
従って、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンはPAR2を阻害することに用いられる。
【0020】
「PAR2を阻害する」こととは、PAR2発現を阻害および/または低下させること、ならびにPAR2活性を阻害および/または低下させることを意味する。
【0021】
本発明の文脈において、「予防すること」および「予防」という用語は、疾患、障害または1以上の徴候および/もしくは症状の出現を防止することを意味する。
【0022】
有利には、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンは、アベンヌ温泉水と組み合わせて用いられる。
【0023】
好ましくは、L−セリンは、アベンヌ温泉水と組み合わせて用いられる。
【0024】
アベンヌ温泉水の組成は次のとおりである:
【表1】

【0025】
有利には、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンは、グリセリンと組み合わせて用いられる。
【0026】
好ましくは、L−セリンが、グリセリンと組み合わせて用いられる。
【0027】
さらに有利には、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンは、アベンヌ温泉水およびグリセリンと組み合わせて用いられる。
【0028】
好ましくは、L−セリンが、アベンヌ温泉水およびグリセリンと組み合わせて用いられる。
【0029】
グリセリンまたはグリセロールとは、下式のプロパン−1,2,3−トリオールを指す:
【化4】

【0030】
好ましくは、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンを、30μMより高い濃度で、好ましくは50μMより高い、より好ましくは80μMより高い、特に好ましい形では100μMより高い濃度で用いられる。
【0031】
別の態様によれば、本発明は、PAR2の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤として用いるための、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンを含んでなる、医薬組成物に関する。
【0032】
好ましくは、本発明は、PAR2の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤として用いるための、L−セリンを含んでなる、医薬組成物に関する。
【0033】
好ましくは、前記組成物は皮膚科用組成物である。
【0034】
特に好ましくは、前記組成物は局所適用用である。
【0035】
「局所適用」とは、皮膚への直接的な適用を指す。
【0036】
有利には、その医薬組成物は、好ましくは、炎症効果を示す任意の他の活性物質を除いて、特に好ましくは、任意の他の活性物質を除いて、アベンヌ温泉水および/またはグリセリンをさらに含んでなる。
【0037】
本発明の別の実施形態では、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンは、抗炎症効果を示す組成物の唯一の活性物質であり、特に好ましくは、唯一の活性物質である。
【0038】
好ましくは、L−セリンは、抗炎症効果を示す組成物の唯一の活性物質であり、特に好ましくは、唯一の活性物質である。
【0039】
本発明による特定の実施形態では、本発明による組成物は、特に、皮膚罹患の予防および/または治療を目的とする活性物質をさらに含んでもよい。
【0040】
好ましくは、本発明による組成物は、敏感肌を予防および/または治療するための薬剤として用いられる。
【0041】
一般的に、敏感肌は、特定の皮膚反応性によって定義される。
【0042】
この皮膚反応性は、多様な起源を有し得る誘発要素とのその対象の接触に応答した不快徴候の現れによって一般に表れる。敏感肌の表面への化粧品の塗布、ある特定の食物の摂食、温度の急変、大気汚染および/または紫外線もしくは赤外線放射への曝露が問題であるかもしれない。また、年齢および肌質などの関連因子も存在する。例えば、敏感肌は、普通肌の人と比べて、乾燥肌または脂性肌の人の間で頻度が高い。本発明の文脈において、敏感肌とは、過敏性の皮膚および不耐性の皮膚を含む。
【0043】
不耐性の皮膚は、化粧品もしくは皮膚科用製品または石鹸の適用などの様々な要因に対する発熱感、緊張感もしくは刺痛感および/または発赤によって反応する皮膚である。一般的に、これらの徴候は、紅斑と関係があり、乾燥した斑点の有無にかかわらず、過剰脂漏性肌(hyperseborrheic)またはニキビ肌、あるいは酒さ状肌とも関係がある。
【0044】
過敏性の皮膚は、環境、感情、食物、風、摩擦、シェービング、高カルシウム濃度の硬水、温度変化、湿気などのような様々な要因に対する、そう痒症によって、換言するとそう痒によってまたは刺痛によって反応する皮膚である。
【0045】
有利には、PAR2受容体の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答は、皮膚の炎症性病変に関与し、ここで、該病変は、好ましくは、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、乾癬、そう痒症、脂漏性皮膚炎、酒さ、クーペロシスおよび皮膚過敏症からなる群から選択される。
【0046】
よって、有利には、本発明は、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、乾癬、そう痒症、脂漏性皮膚炎、酒さ、クーペロシスおよび皮膚過敏症を含んでなる群から選択される病変を予防および/または治療するための薬剤として用いるための、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンを含んでなる、医薬組成物に関する。
【0047】
アトピー性皮膚炎は、角質層の脂質、特にセラミドの代謝欠損と関係があるといわれている。この病変は、体の大部分に広がるほぼ慢性的な乾燥症として表れ、斑点の炎症性発疹およびそう痒性発疹と関係がある。
【0048】
乾癬はまた、慢性的に進行する皮膚の炎症性疾患であり、人口の2%が罹患する。乾癬は、炎症応答と関係がある上皮細胞の異常増殖を特徴とする。
【0049】
扁平苔癬は、外観はふぞろいであり、ストレスに関係している可能性が高い自己免疫疾患である。扁平苔癬は、アレルギーと同じように突然始まり:皮膚は、そう痒を生じる湿疹性の扁平な丘疹で覆われる。扁平苔癬は、全身に広がることもあるし皮膚の小領域に限局していることもある。筋肉痛またはリウマチ痛は、扁平苔癬の発疹を伴うことがある。その疾患は12〜15ヶ月間続く可能性がある。
【0050】
脂漏性皮膚炎は、顔および頭皮の皮膚病であり、不明瞭な外形を有する赤い斑点を特徴とし、薄い非固着性の鱗屑を伴う。
【0051】
酒さは、初期には良性の、不治の皮膚疾患であり、鼻および頬に、時には顎および額にも慢性発赤として出現する。これらの症状は、特に眼の周りに、刺痛感を伴う。
【0052】
クーペロシスは、顔(鼻、頬、額、顎...)の凸部分の永久的発赤状態であり、時には小血管が肉眼で見える。
【0053】
好ましくは、本発明による組成物は、その組成物の総重量に対して0.01重量%〜10重量%の間のL−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリン、好ましくは、その組成物の総重量に対して0.5重量%〜3重量%の間のL−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンを含んでなる。
【0054】
好ましくは、本発明による組成物は、その組成物の総重量に対して0.01重量%〜10重量%の間のL−セリン、好ましくは、その組成物の総重量に対して0.5重量%〜3重量%の間のL−セリンを含んでなる。
【0055】
本発明による組成物は、局所経路、経口経路、皮下経路、注射経路、直腸経路または生殖器経路により投与するように処方することができる。
【0056】
好ましくは、本発明による組成物は、局所経路により投与するように処方される。
【0057】
本発明による組成物は、所望の投与様式によって通常使用される総てのガレヌス製剤で準備することができる。
【0058】
その担体は、所望の組成物の種類によって様々な性質を有するものであってよい。
【0059】
より特には、局所経路による投与を目的とする組成物に関しては、その担体は、水性、水アルコール性もしくは油性の溶液、溶液形態の分散液もしくはローション形態もしくは美容液形態の分散液、液体エマルジョンもしくは乳状の半流動性エマルジョン、クリーム状の懸濁液もしくはエマルジョン、水性もしくは無水のゲル、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微粒子またはイオン性および/もしくは非イオン性ベシクル分散液であってよい。これらの組成物は、標準的な方法によって調製される。
【0060】
これらの組成物は、特に、顔、手、足、多数の解剖学的皺襞または身体のクレンジング、保護、トリートメントまたはケア用クリーム(例えば、デイクリーム、ナイトクリーム、メイク落としクリーム、下地クリーム、日焼け止めクリーム)、リキッドファンデーションなどの仕上げ用化粧品、メイク落とし乳液、身体保護またはケア用乳液、日焼けケア乳液、スキンケアローション、ゲルまたはフォーム、例えば、クレンジングローションまたは殺菌消毒ローションなど、日焼け止めローション、人工日焼けローション、浴用組成物、殺菌薬を含有する脱臭組成物、アフターシェーブゲルまたはローション、脱毛クリーム、または虫除け組成物を構成することができる。
【0061】
本発明による組成物はまた、石鹸またはクレンジングバーを構成する固体調製物からなってもよい。
【0062】
本発明による組成物はまた、溶液、クリーム、ゲル、エマルジョン、フォームの形態でまたは加圧噴射剤を含有するエアゾール組成物の形態で髪に使用することもできる。
【0063】
本発明の組成物がエマルジョンである場合には、脂肪相の割合は、その組成物の総重量に対して5重量%から80重量%まで、好ましくは5重量%から50重量%までに及んでよい。エマルジョン形態の組成物に使用される油、乳化剤および補助乳化剤は、化粧料分野および/または皮膚科学分野で一般に使用されているものから選択される。
【0064】
その乳化剤および補助乳化剤は、組成物中に、その組成物の総重量に対して0.3重量%から30重量%まで、好ましくは0.5重量%から15重量%までに及ぶ割合で存在してよい。
【0065】
本発明の組成物が油性ゲルである場合には、脂肪相は、その組成物の総重量の90%を超えていてもよい。
【0066】
本発明の化粧料組成物および/または皮膚科用組成物はまた、化粧料分野、製薬分野および/または皮膚科学分野で一般に使用されているアジュバント、例えば、親水性または親油性ゲル化剤、親水性または親油性活性剤、防腐剤、酸化防止剤、溶媒、香料、充填剤、遮蔽剤、殺菌薬、臭気吸収剤および着色剤などを含んでよい。これらの様々なアジュバントの量は、目的の分野で一般に使用されている量、例えば、その組成物の総重量の0.01%〜35%である。
【0067】
これらのアジュバントは、それらの性質に応じて、脂肪相および/または水相に導入することができる。
【0068】
本発明に使用することができる脂肪としては、鉱油(例えば、水添ポリイソブテンおよび石油など)、植物油(例えば、シアバターの液体留分、ヒマワリ油および杏仁油など)、動物油(例えば、ペルヒドロスクアレンなど)、合成油(とりわけ、ピュアセリンオイル、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸エチルヘキシル)、およびフッ素化油(例えば、ペルフルオロポリエーテルなど)を挙げることができる。脂肪アルコール、脂肪酸(例えば、ステアリン酸など)、および例えば、蝋(とりわけ、パラフィン、カルナバ蝋および蜜蝋)なども使用することができる。シリコーン化合物、例えば、シリコーン油(例えば、シクロメチコンおよびジメチコン)、シリコーン蝋、シリコーン樹脂およびシリコーンガムなども使用することができる。
【0069】
本発明に使用することができる乳化剤としては、例えば、ステアリン酸グリセロール、ポリソルベート60、HENKELよりSinnowax AO(登録商標)という名前で販売されている、セチル−ステアリルアルコールと33モルのエチレンオキシドでオキシエチレン化されたセチル−ステアリルアルコールとの混合物、GATTEFOSSEよりTefose(登録商標)63という名前で販売されているPEG−6/PEG−32/グリコールステアレート混合物、PPG−3ミリスチルエーテル、シリコーン乳化剤(例えば、セチルジメチコンコポリオールおよびソルビタンモノ−またはトリ−ステアレートなど)、PEG−40ステアレートおよびオキシエチレン化ソルビタンモノステアレート(200E)を挙げることができる。
【0070】
本発明に使用することができる溶媒としては、低級アルコール、とりわけ、エタノールおよびイソプロパノール、ならびにプロピレングリコールを挙げることができる。
【0071】
親水性ゲル化剤としては、カルボン酸ポリマー(例えば、カルボマーなど)、アクリルコポリマー(例えば、アクリレート/アルキルアクリレートコポリマーなど)、ポリアクリルアミド、特に、SEPPICよりSepigel 305(登録商標)という名前で販売されている、ポリアクリルアミド、C13−14−イソパラフィンおよびラウレス−7の混合物、多糖類、例えば、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシアルキルセルロースなど、特にヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース)、天然ガム(例えば、グアール、イナゴマメおよびキサンタンなど)およびクレーを挙げることができる。
【0072】
親油性ゲル化剤としては、改質クレー(例えば、ベントン(bentones)など)、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸アルミニウムなど)および疎水性シリカ、またはエチルセルロースおよびポリエチレンを挙げることができる。
【0073】
使用することができる親水性活性物質としては、タンパク質またはタンパク質加水分解物、アミノ酸、ポリオール、とりわけ、C〜C10ポリオール(例えば、グリセロール、ソルビトール、ブチレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、尿素、アラントイン、糖および糖誘導体、水溶性ビタミン、デンプン、および細菌または植物の抽出物(例えば、アロエベラ(aloe vera)抽出物など)が挙げられる。
【0074】
使用することができる親油性活性物質としては、レチノール(ビタミンA)およびその誘導体、トコフェロール(ビタミンE)およびその誘導体、セラミド、精油および不鹸化物(トコトリエノール、ゴマ、γ−オリザノール、フィトステロール、スクアレン、蝋、テルペン)が挙げられる。
【0075】
別の態様によれば、本発明は、PAR2を阻害するためのL−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリンの化粧料的用途に関する。
【0076】
好ましくは、本発明は、PAR2を阻害するためのL−セリンの化粧料的用途に関する。
【0077】
別の態様によれば、本発明は、PAR2の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための美容的処置および/または薬学的処置の方法に関し、その方法は、本発明の医薬組成物または化粧料組成物を適用する少なくとも1つの工程を含む。
【0078】
その適用工程は、例えば、皮膚もしくは乾燥した髪へのクリーム、ゲル、美容液、ローション、メイク落とし乳液もしくは日焼けケア用組成物の塗布、ぬれた髪へのヘアローションの塗布、洗髪、または歯茎への練り歯磨きの塗布であり得る。
【0079】
好ましくは、前記方法は、皮膚科学的方法であり、皮膚に上記のような皮膚科用組成物を適用する少なくとも1つの工程を含む。
【0080】
本発明による美容的方法および/または薬学的方法は、本発明による組成物の、例えば、毎日の、局所適用によって実行することができる。
【0081】
本発明による方法は、単一適用工程を含むことができる。
【0082】
別の実施形態によれば、美容的処置方法は、適用工程を、1日間以上、一般的には少なくとも4週間、4〜15週間までもの長期間、1日に2〜3回繰り返すことを含み、場合によって1回以上の休みをとる。
【0083】
別の態様によれば、本発明は、L−セリンおよび/またはL−アスパラギンおよび/またはL−バリン、アベンヌ温泉水およびグリセリン、ならびに薬学上または化粧料上許容される担体を含んでなる組成物に関する。
【0084】
好ましくは、本発明は、L−セリン、アベンヌ温泉水およびグリセリン、ならびに薬学上または化粧料上許容される担体を含んでなる組成物に関する。
【0085】
有利には、前記組成物は、皮膚化粧料組成物である。
【0086】
好ましくは、前記組成物は、抗炎症作用を示す活性物質を他には含まない、特に好ましくは、活性物質を他には含まない。
【実施例】
【0087】
実施例1:
HaCaT細胞株ケラチノサイトモデルを用いた。L−セリンおよびL−アスパラギンはEVONIKから購入し、L−アルギニンはAMINOから購入し、L−バリンはAJINOMOTOから購入した。
【0088】
96ウェルプレートに接種する細胞に蛍光プローブ(2μMの濃度のFluo−4/AM)を30分間組み込み、試験する活性剤を30分間インキュベートする。カルシウムイオンと結合している脱エステル化型プローブだけが485nm蛍光下で励起し、535nmで放射する。使用するインキュベーションバッファーは、HEPES(20mM)および水溶性プロベネシド(2.5mM)を補給したHBSSバッファーである。
10nMトリプシンを用いて細胞を刺激した。
使用する参照分子は、1μMの濃度のSTI分子(大豆トリプシンインヒビター)である。
【0089】
蒸留水中に50mg/mlで可溶化したL−セリンおよびL−アスパラギン(L−セリンについては475.8mMおよびL−アスパラギンについては378.4mM)を、3μM、10μM、30μMおよび100μMの濃度で評価した。
L−アルギニンは、蒸留水中に100mMに可溶化した。
L−バリンは、蒸留水中に200mMに可溶化した。
L−アスパラギン酸は、蒸留水中に200mMに可溶化した。
【0090】
カルシウム流(PAR2活性化を表す)は、トリプシンの注入前後の速度論に従って、リアルタイムでウェルごとに蛍光により測定する。PAR2活性化の阻害率は、カルシウム流の阻害率に相当する。
【0091】
図1に示した結果は、L−セリンの適用によって、PAR2活性化を用量依存的に阻害することを示している。
表1に示した結果は、L−アスパラギンの適用によって、用量依存的ではないがPAR2活性化を阻害することを示している。
表1に示した結果は、L−バリンの適用によって、PAR2活性化を阻害することを示している。
さらに、それらの結果は、L−アルギニンはPAR2活性化をさほど阻害しないことを示している。
【0092】
表1
【表2】

【0093】
実施例2:
皮膚のバリア機能は外部環境からの保護を与える。表皮ケラチノサイトは、様々な種類の刺激物またはアレルゲンに直接反応し、特に、タンパク質起源のメディエーターである炎症誘発性サイトカインの合成および分泌を通じて、炎症および免疫性を伴う皮膚のプロセスに積極的に酸化する可能性がある。
【0094】
ケモカイン−インターロイキン−8(IL−8)−は、ケラチノサイトによって発現され、炎症応答の増幅に大きく関わっており、より詳細に研究された。ケモカインの主要な機能は、好中性顆粒球を、とりわけ、それらの炎症誘発性分子分泌を刺激することによって動員し活性化することである。
【0095】
実施した試験では、細胞株(HaCaT)由来のヒトケラチノサイトにおいて、トリプシンにより刺激を受けたIL−8分泌に関してL−セリンの抗炎症活性を評価可能であった。
【0096】
IL−8アッセイの原理:培養上清中に分泌されたIL−8の定量についてのサンドイッチELISA。
マイクロプレートウェルと結合しているモノクローナル抗体によってIL−8を捕捉する。第2の抗IL−8抗体を加える。
この抗体はビオチン化されており、それによってペルオキシダーゼ活性を備えたストレプトアビジンの結合が可能であった。ペルオキシダーゼ基質を加えることによって、450nmで吸光度を測定することにより各ウェルにおけるIL−8濃度を定量することが可能になる。
【0097】
材料と方法
a)細胞:
HaCaTヒトケラチノサイト細胞株を用いた。
b)材料:
細胞培養用96ウェルマイクロプレートおよびインジェクター搭載プレートリーダー、Mithras LB940TM(Berthold Technologies(登録商標))を使用した。
c)試薬:
10nMトリプシンを刺激物質として用いた。
Human CXCL8/IL8 DuoSet R&D Systemキット(参照DY208(E))の試薬を用いた。
d)試験した製品:
蒸留水中に475.8mMに可溶化したL−セリンを、3μM、10μM、30μM、100μM、300μMおよび1mMの濃度で評価した。
e)プロトコール:
L−セリンを37℃で1時間インキュベートする(HBSSバッファー)。次いで、刺激物質(トリプシン T03)を加え、37℃で24時間インキュベートする。
培養上清を回収し、+4℃で遠心分離し、その後、−20℃で保存する。
サンプルのIL−8濃度を下式の標準曲線から算出する:
OD=(Bmax[IL−8])/(K+[IL−8])
次に、IL−8分泌の阻害率を下式によって算出する:
【数1】

【0098】
結果
下の表に示した値は、HaCaTケラチノサイトのトリプシン刺激後のL−セリンによるIL−8分泌阻害を表している。
IL−8分泌の阻害率:
独立した試験:(n=2)
【0099】
表2
【表3】

【0100】
結論
in vitroでは、細胞規模において、トリプシンによるPAR2活性化などの炎症誘発性刺激によってケラチノサイトによるIL−8分泌が誘導される。
L−セリンは、トリプシンによるPAR2刺激後にケラチノサイトによるIL−8分泌の大きな阻害を示し、1mMの濃度において平均阻害は74%である。
【0101】
実施例3:本発明による組成物
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
PAR2の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤として用いるためのL−セリン。
【請求項2】
PAR2の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答を予防および/または治療するための薬剤として用いるための、L−セリンを含んでなる、医薬組成物。
【請求項3】
アベンヌ温泉水をさらに含んでなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
グリセリンをさらに含んでなる、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
L−セリンが、組成物の唯一の活性物質である、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
PAR2受容体の過剰発現および/または過剰活性化によって引き起こされる皮膚の炎症応答が、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、乾癬、そう痒症、脂漏性皮膚炎、酒さ、クーペロシスおよび皮膚過敏症を含んでなる群から選択される皮膚の炎症性病変に関与する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
L−セリン濃度が、該組成物の総重量に対して0.01重量%〜10重量%の間であり、好ましくは、該組成物の総重量に対して0.5重量%〜3重量%の間である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
L−セリン、アベンヌ温泉水、グリセリン、および化粧料上許容される担体を含んでなる、皮膚化粧料組成物。

【公表番号】特表2012−531457(P2012−531457A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518093(P2012−518093)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059401
【国際公開番号】WO2011/000930
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500166231)ピエール、ファブレ、デルモ‐コスメティーク (30)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO−COSMETIQUE
【Fターム(参考)】