説明

皮膚の疾患、傷害または損傷の予防および/または処置における使用のためのプテロスチルベン(PTER)

本発明は皮膚の疾患、傷害、損傷を予防および/または処置するための医薬組成物を製造するための、随意にQUERまたはその任意の許容可能な塩と組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩の使用を指す。それらの予防および/または処置の方法は、随意にQUERまたはその任意の許容可能な塩と組み合わせて、活性化合物としてPTERまたはその任意の許容可能な塩を含む組成物の有効な量を被検体に投与する工程を含む。本発明はまた、リポソームの形態で製剤されることによって特徴づけられる、随意にQUERまたはその任意の許容可能な塩と組み合わせて、活性化合物としてPTERまたはその任意の許容可能な塩を含む組成物それ自体、および前記リポソーム製剤を調製するための方法を指す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製薬技術分野に包含され得る。
【背景技術】
【0002】
果物および野菜の高い摂取は健康なライフスタイルに関係している。この関係は食物中の天然の抗酸化剤、主にポリフェノール化合物の存在による。科学コミュニティにおいてより多くの関心を起こしたポリフェノールの1つはレスベラトロール(3,4’,5−トリヒドロキシ−トランス−スチルベン;RESV)という、ワイン中に有意な量が存在する小さなポリフェノールであり、様々な慢性疾患(特に癌、循環器疾患、2型糖尿病および神経変性疾患)において潜在的な有益な効果があるとされてきた。RESVの抗癌性質は最初にJangら(Jang M,Cai L,Udeani GO,Slowing KV,Thomas CF,Beecher CW,Fong HH,Farnsworth NR,Kinghorn AD,Mehta RG,Moon RC,Pezzuto JM.(1997)Science 275(5297):218−20)によって、癌の発達の3つのステージ(開始,促進および進行)に対する効果をもって提唱された。RESVの抗癌効果はその低いバイオアベイラビリティによって非常に限定されている((Asensi M,Medina I,Ortega A,Carretero J Bano MC,Obrador E,Estrela JM.(2002)Free adic Biol Med.33(3):387−98)。その欠点の為に、改善されたバイオアベイラビリティを備える幾つか他のポリフェノールが癌の処置用にアッセイされた。PTER(3,5−ジメトキシ−4’−ヒドロキシ−トランス−レスベラトロール,PTER、RESVの誘導体)およびQUER(3,3’,4’,5,6−ペンタヒドロキシフラボン(pentahidroxiflavona);QUER)という,以下の化学式を有する2つの小さな天然のポリフェノールの組合せ:
【0003】
【化1】

【0004】
【化2】

【0005】
は、非常に高悪性度のマウスの悪性黒色腫の転移性の増殖を阻害するのに効果的であることが示された(Ferrer P,Asensi M,Segarra R,Ortega A,Benlloch M,Obrador E,Varea MT,Asensio G,Jorda L,Estrela JM.(2005)Neoplasia.7(l):37−47)。さらにPTERとQUERの関係は、化学療法と放射線療法の抗腫瘍作用を増強することによって免疫不全マウスにおいて、異種移植耐性ヒト結腸直腸癌(resistant human colorectal cancer xenografted)の除去を促進する(Priego S,Feddi F,Ferrer P,Mena S,Benlloch M,Ortega A,Carretero J Obrador E,Asensi M,Estrela JM.(2008)Mol Cancer Ther.7(10):3330−42)。PTERおよびQUERは静脈内に、および/または経口的に投与された。
【0006】
最近の疫学的調査は全ての皮膚癌の90%以上が日光、特に紫外線B(UVB)への過剰曝露によって引き起こされることを示した。これらの癌、黒色腫および非黒色腫型の両方の発生率は劇的に増加している(皮膚癌による死亡はこの20年間で倍増した)。
【0007】
そのために、放射線、特にUVB(紫外線B)への長期曝露によって引き起こされる皮膚の疾患(皮膚癌を含む)損傷または傷害を予防および/または処置することができる組成物が当該技術分野において長い間必要とされている。
【0008】
しかしながら、皮膚の疾患、損傷または傷害は、放射線曝露によってだけではなく、免疫性の因子として別の因子によっても引き起こされ得る。皮膚の疾患、損傷または傷害の大半は、皮膚の病理に関係する炎症性のプロセスの存在を共有している。その上、放射線への皮膚の曝露、または、前記放射線曝露か(自己免疫性皮膚疾患または乾癬、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎のようなアレルギー性皮膚疾患)他の原因かの何れかに関係する皮膚の炎症性プロセスはまた、酸素ラジカルの生成および、一例としてぺルオキシナイトラドの窒素酸化物(NO)のような、他の酸化する種の生成による皮膚の酸化ストレスの増加を共有している。
【0009】
炎症に関係する異常は幅広い多様なヒトの疾患の基礎となる、無関係の障害の大きな群を包含する。しかしながら、本発明の目的は炎症の予防/処置に限定して焦点を当てていないが、局所的な製剤の適用によって処置される、全て皮膚に関係する、兆候(indications)の特に選択された群、特に放射線曝露によって引き起こされる皮膚疾患に焦点を当てている。さらに、従来技術は炎症性障害の処置に有用であり得る経口投与される剤を開示するが、それらの経口投与される剤は皮膚のような離れた標的組織に対して潜在的な治療効果を決して働かせない。
【0010】
QUERは皮膚に対する紫外線の有害な作用の防止において有用であることが開示された(Rubia Casagrande,Sandra R.Georgetti,Waldiceu A.Verri Jr.,Daniel J.Dorta, Antonio C. dos Santos,Maria J.V.Fonseca_[2006];J. Photochem Photobiol B:Biology 84:21−27 and Alena Svobodovd,Jitka Psotovd,Daniela Walterovd[2003];Biomed.Papers 147(2):137−145)。しかしながら、QUERの吸収スペクトルはUVA(320〜400nm)の範囲内の波長で最大ピークのほとんどを示し、正確にはPTERの吸収スペクトルが最大領域を有するUVB(290〜320nm)の範囲内ではない。
【0011】
従来技術(WO01/43705 A2)において、PTERに限定しない、スチルベンの化学族の幾つかのメンバーとレチノイドの組合せはスキンケアのために使用される。
【0012】
本発明は上記の問題の解決に向けて新たな工程を与え、主要な活性化合物として、特にはPTERとQUERの組合せで、PTERによって、皮膚の疾患、損傷、または傷害を予防および/または処置することに焦点をおいて組成物を開発する。さらに、本発明はまた、任意の皮膚の疾患、傷害または損傷が現れる前に、製剤下、特には遮光剤、日焼け止め(after−sun)、アンチエイジング、抗しわ、光防護の目的を備える製剤下で哺乳動物(ヒト)に適用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は主に、皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置用の医薬組成物の製造のために、随意にQUERまたはその任意の許容可能な塩と組み合わせて、PTERまたはその任意の許容可能な塩の使用を指す。皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置の治療方法は、随意にQUERまたはその任意の許容可能な塩と組み合わせて、活性化合物としてPTER、またはその任意の許容可能な塩を含む組成物の有効な量を、必要のある被検体に投与する工程を含む。本発明はまた、随意にQUERを好ましくは局所的製剤およびさらに好ましくはリポソームの形態で組み合わせて、活性化合物としてPTER、またはその任意の許容可能な塩を含む組成物それ自体を指す。本発明はまた、前記リポソーム製剤を調製するプロセスを含む。
【0014】
PTERとの組合せが相乗効果を示す場合に、QUERは任意の他のポリフェノールによって交換され得る。
【0015】
本発明の目的について、ポリフェノールは、限定されないが、分子当たりに2つ以上のフェノールのユニットまたは基本要素(building block)の存在によって特徴づけられる、植物中に見出される科学物質の群である。ポリフェノールは一般的に加水分解型タンニン(グルコースおよび他の糖類の没食子酸エステル)およびリグニン、フラボノイド、および結合型タンニンなどのフェニルプロパノイド、に分けられる。
【0016】
PTERの作用(action)および随意に、そのQUERとの組合せは多種多様な方法で用いられる:
a)両方のポリフェノールは放射線吸収を可能にする化学構造を有するので、UVフィルターとして。
b)照射の間および/または炎症プロセスの間に生成される活性酸素種(ROS)の酸素フリーラジカルスカベンジャーとして。
c)抗炎症の、および免疫調節の剤として。
【0017】
所望の実施形態において、本発明の組成物は2つの活性化合物PTERおよびQUER、またはその任意の許容可能な塩の組合せを含む。そのため、予防および/または処置の方法はPTERとQUERの両方、またはその任意の許容可能な塩を含む組成物の有効な量を、必要とする被検体に投与する工程を含む。
【0018】
本明細書で定義されるように、「被検体」は哺乳動物、例えばヒトである。
【0019】
本明細書で定義されるように、炎症プロセスは、主に常在性マクロファージ、樹状細胞、組織球、クッパー細胞(Kuppfer cell)およびマスト細胞などの全ての組織中に既に存在する細胞によって発生する急性または慢性の炎症性プロセスを含む。感染、熱傷、または他の損傷の発症時に、これらの細胞は活性化を経験し、炎症の臨床的症状の原因である炎症性メディエーターを放出する。血管拡張およびその結果として生じる血流の増加は発赤および熱の上昇を引き起こす。血管の上昇した透過性は、組織(浮腫)への血漿蛋白質および流体の浸出(漏出)をもたらし、それ自体は腫脹として現れる。ブラジキニンのような放出されたメディエーターの幾つかは疼痛に対する感度を上昇させる(痛覚過敏)。メディエーター分子はまた、白血球、主に好中球の血管の外側(血管外遊出)から組織内への遊走を可能にするように血管を変化させる。好中球は、局在性の細胞によって作りだされた走化性を示す勾配に沿って、損傷の部位に到達するように遊走する。機能の喪失は恐らく疼痛に対する反応における神経性の反射の結果である。
【0020】
細胞由来のメディエーターに加えて、予め成形された血漿蛋白から成る幾つかの細胞の生化学カスケードシステムは、炎症反応を引き起こし広めるよう平行して作用する。これらは細菌によって活性化される補体系、およびネクローシス例えば熱傷または外傷、によって活性化された凝固線維素溶解系を含む。急性炎症反応は定常性の刺激が持続されることを要する。炎症性メディエーターは短半減期を有し、すぐに組織中に分解される。したがって、炎症は、一旦刺激が除去されると止む。
【0021】
本発明の組成物は本明細最初に含まれる活性化合物の任意の「許容可能な塩」を含み得る。本明細書で使用されているように、前記発現は、医薬品として哺乳動物における使用にとって安全かつ有効であり、所望の生物活性を有する本発明の化合物のそれらの塩を意味する。例示される塩は、限定されないが、硫酸塩、シトラート、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチナート、乳酸塩、サリチラート、酸シトラート、酒石酸塩、オレアート、タンニン酸塩、パントテナート、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、スクシナート、マレアート、ゲンチシネート(gentisinate)、フマラート、グルコン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、サッカラート、蟻酸塩、ベンゾアート、グルタメート、メタンスルフォナート、エタンスルフォナート、ベンゼンスルフォナート、p−トルエンスルフォナート、およびパモエート塩を含む。本発明の「許容可能な塩」は、好ましくは、カルボン酸官能基のような酸性官能基、および許容可能な無機または有機の塩基を有する、ポリフェノール化合物から調製される。適切な塩基は限定されないが、ナトリウム、カリウム、およびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物:アルミニウムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物:置換されていない、またはヒドロキシで置換されたモノ−、ジ−、またはトリ−アルキルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどのアンモニア、および有機アミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−;ビス−またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミン、またはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミンのようなモノ−、ビス−、またはトリス−(2−ヒドロキシ置換された低級アルキルアミン)、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、またはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミンのようなN,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミン;N−メチル−D−グルカミン;およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸を含む。用語「許容可能な塩」はまた、ポリフェノール化合物の水化物を含む。
【0022】
本明細書に定義されているように、賦形剤は、組成物中に含まれる活性化合物(PTERおよび/またはQUER)についての担体またはビヒクルとして使用される不活性物質である。本発明の組成物は任意の賦形剤を含み、好ましくは局所的な組成物(すなわち、皮膚科学の許容可能な賦形剤)に含まれるのに適している。以下に言及される次の補助的薬剤は本発明の組成物中に互いに独立して存在し得る:ゲル化剤、油、ろう、粘稠化剤、親水性のまたは疎水性のポリマー、乳化剤(emulsifying agents)、皮膚軟化薬、脂肪酸、有機溶媒、抗酸化剤、安定剤、金属イオン封鎖剤、酸性化または塩基性化剤、乳化剤(emulsifiers)、皮膚軟化薬、界面活性剤、塗膜形成要素、アミノ酸、蛋白質、バニラ、アロエエキスまたはバイオフラビノイド(bioflavinoids)などの性能および/または消費者への魅力を増強するための生物学的添加剤、バッファー、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)またはシュウ酸のようなキレート剤、着色剤、色素、噴射剤、消泡剤、湿潤剤、ビタミン、乳化安定剤、pH調整剤、粘稠化剤、香料、防腐剤、乳白剤、水および/またはアルコール。本発明の組成物についての前述の補助的薬剤は当業者によって知られる通常の量で使用される。
【0023】
本発明の組成物について適切な油は動物または野菜あるいは合成油から選択される。特に好ましい油は鉱油、流動パラフィン、揮発性および非揮発性のシリコン油、イソパラフィン、ポリアルファオレフィン、フッ素酸塩および過フッ素酸塩(perfluorated)の油からなる群から選択される。
【0024】
本発明の組成物について適切な安定剤は、非イオンの、アニオンの、カチオンのおよび両親媒性の性質であり得る。好ましい安定剤はポリエチレングリコール(PEG)およびその誘導体、ツイーン、トリトン、スパン、ポリグリセリン(polygycerines)、ポリアルキルグリセリド、アルキルスルフォナート、アリールスルフォナート、アルキルリン酸塩、アルキル−ベタインおよびホスファチジルグリセロールの誘導体から成る群から選択される。
【0025】
乳化剤は、好ましくは、本発明の組成物において前記組成物の成分の均一な混合を提供するのに有効な量で使用される。適切な乳化剤は脂肪酸石鹸のような陰イオン剤、例えばカリウムステアラートステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、およびステアリン酸トリエタノールアミン;脂肪酸石鹸を含むポリオール脂肪酸モノエステル、例えば、カリウムかナトリウム塩の何れかを含むグリセロールモノステアレート;硫酸エステル(ナトリウム塩)、例えばナトリウムラウリル5スルファートおよびナトリウムアセチルスルファート;および硫酸エステルを含むポリオール脂肪酸モノエステル、例えばナトリウムラウリルスルファート(surfate)を含むモノステアリン酸グリセリン;(ii)N(ステアロイルコルアミノホルミルメチル)ピリジウムのような陽性イオン塩化物;N−大豆−N−エチルモルホリニウムエトスルファート;アルキルジメチルベンジル塩化アンモニウム;ジイソブチルフェノキシテオキシエチルジメチルベンジル塩化アンモニウム;およびアセチル塩化ピリジウム;および(iii)ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテルのような非イオン物質、例えばモノステアラート;ポリオキシエチレンラウリルアルコール;ポリオキシプロピレン脂肪族アルコールエーテル、例えば、プロポキシラート(propoxylated)オレイルアルコール;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばポリオキシエチレンステアラート;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート;ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ソルビタン;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチレングリコールモノステアラート;およびポリオール脂肪酸エステル、例えば、モノステアリン酸グリセリンおよびプロピレングリコールモノステアラート;およびエトキシレート(ethoxylated)ラノリン誘導体、例えば、エトキシレートラノリン、エトキシレートラノリンアルコールおよび/またはエトキシレートコレステロール。
【0026】
皮膚軟化薬はまた、乾燥を予防または和らげるような量で本発明の組成物中に使用され得る。適切な皮膚軟化薬は、限定されずに、炭化水素油および蝋;シリコン油;トリグリセリドエステル;アセトグリセリドエステル;エトキシレートグリセリド;アルキルエステル;アルケニルエステル;脂肪酸;脂肪族アルコール;脂肪族アルコールエーテル;エーテルエステル;ラノリンおよび誘導体;多価アルコール(ポリオール)およびポリエーテル誘導体;多価アルコール(ポリオール)エステル;蝋エステル;蜜蝋誘導体;植物蝋;リン脂質;ステロール;および/またはアミド。
【0027】
界面活性剤はさらに本発明の組成物中にも使用されることができる。適切な界面活性剤は、例えば、クレンジング剤、乳化剤、起泡力増進剤、ヒドロトロープ、可溶化剤、懸濁剤として通常分類される界面活性剤、および液体中の固体の分散を促進する非界面活性剤である。
【0028】
好ましくは本発明の組成物中に使用され得る塗膜形成要素は、組成物を滑らか且つ平らに保ち、好ましくは制限がない。適切な塗膜形成要素はアクリルアミド/ナトリウムアクリレートコポリマー;アンモニウムアクリレートコポリマー;バルサムペルー;セルロースガム;エチレン/マレイン酸無水物コポリマー;ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシプロピルセルロース;ポリアクリルアミド;ポリエチレン;ポリビニルアルコール;pvm/MAコポリマー(ビニルメチルエーテル/マレイン酸無水コポリマー);PVP(ポリビニルピロリドン);無水マレイン酸ポリマー、ビニルピロリドン/ヘキサデセンコポリマー;アクリルアクリレート(acryliclacrylate)コポリマーなどから成る群から選択される。
【0029】
pH調整剤もまた、本発明の組成物中に使用され得る。これらのpH調整剤は好ましくは:水酸化アンモニウム、トリエタノールアミンまたはクエン酸から選択される。
【0030】
本発明の組成物のために使用される増粘剤は好ましくは:キャンデリア、カルナウバ、および微小蝋、架橋アクリル酸ポリマー、カルボマー、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルセルロースおよびポリエチレン増粘剤から選択される。
【0031】
本発明の組成物にとって好ましい有機溶媒の例は、低級脂肪族アルコールおよびポリオールを含む。
【0032】
本発明で使用される組成物にとって適切な抗酸化剤は、好ましくはアスコルビン酸(ビタミンC)、ナトリウム−L−アスコルベート、カルシウム−L−アスコルベート、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシオキソトルエン、カルシウム−二ナトリウム−EDTA、イソアスコルビン酸、レシチン(lecitine)、乳酸、ポリホスファート、[アルファ]−トコフェロール、[ガンマ]−トコフェロール、[デルタ]−トコフェロールのようなトコフェロール(ビタミンE)、没食子酸プロピル、没食子塩オクチル、没食子酸ドデシル、ナトリウム−イソアスコルベート、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびスズ−ll−塩化物を含む群から選択される。
【0033】
好ましくは本発明の組成物中に使用されるゲル化剤は、天然のまたは合成ポリマーであり得る。天然ポリマーは好ましくは:寒天、アルギナート、ペクチン、カルボマー、カラギーナン、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、アラビアゴム、ケラチン(keratine)、ローカストビーンガム、キサンタンガムから選択される。本発明の組成物中に使用されることができる、好ましい合成ポリマーは:アクリル酸(acylic acid)ポリマー、ポリアクリルアミドおよびアルキレンオキシドポリマーから選択される。
【0034】
被検体に対して本発明の組成物を投与するために任意の投与経路が使用されることができ、好ましい投与経路は静脈内、経口および局所的である。好ましい実施過程において、本発明の組成物は、液体のまたは半固体の形態で、好ましくは液体、流体、気泡、クリーム、ゲル,ペースト、バルサム、スプレー、軟膏、ローション、コンディショナー、トニック、ミルク、ムース、エマルジョン、血清、油、スティック(stick)、シャンプー、ゼリー、懸濁液、分散液、ラッカー、ペイント、エリキシル、滴剤またはエアロゾルとして製剤され得る局所的な製剤である。特定の実施形態において、本発明の活性化合物はリポソームの調製において局所的に投与された。本発明で使用されるように、「リポソーム」は、特に身体の細胞に物質(すなわりPTERおよび/またはQUER)を送達するために使用される、1つ以上の同心性の層から成る人工の小胞である。
【0035】
本発明の組成物の局所的な投与は、活性化合物PTERおよび/またはQUERの高いバイオアベイラビリティを導き、投与された被検体の50%において治療反応をもたらす本発明の組成物の量を減らし、すなわち有効薬量(ED50)を減らす。薬理学において、生物学的利用率は、薬剤の主要な薬物動態学的特性の1つである、体循環に至る同一薬剤の投与量の割合(fraction)を説明するために使用される。そのために、生物学的利用率は薬物動態学において基本的な手法の1つであり、それは投与の非静脈経路のための用量を計算する際に考慮されなければならない。
【0036】
皮膚癌を含む任意の皮膚の疾患、傷害、または損傷は本発明の組成物によって予防および/または処置されることができる。本発明の好ましい実施形態において、皮膚の疾患、傷害、損傷は炎症性プロセスに関係している。そのため、好ましい実施形態において、本発明は炎症性皮膚疾患に罹患しやすい、または苛まされている被検体を予防および/または処置することに焦点を当て、冒された皮膚の領域(唇、顔、または皮膚一般)に対して本発明の組成物を投与する工程、および/または任意の他の代替的な投与の方法で投与する工程を含む。用語「炎症性皮膚病(inflammatory dematosis)」は、限定されないが、皮脂腺障害,丘疹鱗屑状皮疹(papulosquamous dermatoses)、アレルギー性皮膚病、掻痒性皮膚病、血管性皮膚病、細菌性皮膚病、ウイルス性皮膚病、ミコール皮膚感染(mycolic skin infections)、肉芽腫性皮膚病、寄生虫性皮膚病、剥脱性皮膚炎、水疱症、色素性皮膚病、光線過敏性皮膚病、膠原病によって引き起こされる皮膚病、および内科的疾患による皮膚病を含む皮膚障害の範囲を含む。炎症性皮膚病はまた、自己免疫の疾病にも関係し得、その場合それは本明細書で「自己免疫性皮膚病」として呼ばれる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、炎症性皮膚病は皮脂腺障害であり、例えば尋常性ざ瘡、集簇性ざ瘡(acne conglombata)、汗腺膿瘍、酒さ性ざ瘡、脂漏、脂漏性皮膚炎、グラム陰性菌、毛包炎、顔面膿皮症、多発性皮脂嚢腫症、脂腺過形成、または鼻瘤のようなざ瘡障害である。本発明のさらに好ましい実施形態において、PTERまたはその任意の許容可能な塩を含む組成物/製剤は、随意にQUERまたはその任意の許容可能な塩と組み合わせて、尋常性ざ瘡を処置するために使用される。周知のように、尋常性ざ瘡は、にきびおよび丘疹によって特徴付けられた慢性の皮膚疾病であり、大変重度になり得;特に重度の場合、膿疱、包嚢、および永続的な瘢痕が生じ得る。
【0038】
本発明のまた別の好ましい実施形態において、予防および/または処置される炎症性皮膚病は、例えば、乾癬、バラ色粃糠疹、癜風、または扁平苔癬などの丘疹鱗屑皮疹である。本発明の方法および製剤は、乾癬、従来の剤では処置が困難とされてきた自己免疫性炎症障害の処置に特に有用である。
【0039】
本発明のさらに好ましい実施形態において、処置される炎症性皮膚病は、一例としてアトピー性皮膚炎、肥満細胞疾患、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、壊死性脈管炎、円板状紅斑性狼瘡、全身性エリテマトーデス、または疱疹状皮膚炎などの自己免疫皮膚病である。
【0040】
他の実施形態において、本発明の方法および製剤が有効である様々なタイプの炎症性皮膚病の例は以下のとおりである。
・アレルギー性皮膚病:接触皮膚炎;光アレルギー性皮膚炎;産業によって使用される接触刺激物(contact irritants)である様々な化合物に曝されることによって引き起こされる産業性皮膚障害;アトピー性湿疹(幼児および成人);薬品および貨幣状湿疹によって引き起こされる皮膚病。
・掻痒性皮膚病:冬期、老人性および本態性掻痒症;肛門掻痒;絶え間ない(eternal)耳炎;冬季掻痒症;外陰部掻痒症;および陰嚢掻痒症(pruritus scrotae)。
・血管性皮膚病:多形性紅斑;結節性紅斑;うっ血性皮膚炎;血小板減少性紫斑病、血小板非減少性紫斑病、異常蛋白紫斑病(dysproteinemic purpura)、光化性紫斑病(actinic purpura)、壊血病性紫斑病、およびヘノッホ紫斑病に関係しているような紫斑性皮膚病(purpuric dermatoses);斑状出血;うっ血性紫斑;主要および副次的な毛細管拡張症。
・細菌性皮膚病:膿痂疹、膿瘡、毛包炎、せつ麦粒腫(furuncles styes)、カルブンケル、汗腺感染、丹毒、紅色陰癬、感染した潰瘍、および感染した湿疹様皮膚炎、のような膿皮症;猩紅熱、鼠径肉芽腫、軟性下疳、結核、ハンセン病、淋疾、リケッチア症、放線菌症、および梅毒、のような全身性の細菌感染に関係する細菌性皮膚疾患。
・ウイルス性皮膚病:単純性疱疹ウイルス、カポジ水痘様発疹、帯状疱疹、水痘、天然痘、種痘疹、伝染性軟属腫、性病性リンパ肉芽腫症、風疹とバラ疹のような発疹性疾患、および伝染性紅斑などによって引き起こされるようなウイルス性皮膚病。
・ミコール皮膚感染:股部白癬(体の様々な部位における皮膚の表層真菌感染症);足白癬(毛瘡白癬菌への感染に生じる足の皮膚糸状菌症);爪白癬(爪真菌症);スポロトリコーシス;コクシジオイデス症;ヒストプラズマ症;
および北アメリカブラストミセス症。
・肉芽腫性皮膚病:サルコイドーシス;環状肉芽腫;細網組織球腫;およびシリカ誘発性の肉芽腫。
・寄生虫性皮膚感染:疥癬、ダニ性皮膚炎(cheyletiella dermatitis);毛嚢虫症;シラミ症
・色素性皮膚病:肝斑(黒皮症)および尋常性白斑。
・膠原病:強皮症および皮膚筋炎。
・内科的疾患による皮膚病:潰瘍性大腸炎および糖尿病による潰瘍に関係する壊疽性膿皮症。
・光線過敏性皮膚病:薬剤誘発性の光線皮膚炎および光アレルギー性成分による接触皮膚炎などの外因性型;および、ポルフィリン症および多型光線疹と関係しているような内因性型。
【0041】
好ましい実施形態において、皮膚の疾患、傷害、または損傷は、急性か慢性の何れか、放射線曝露によって引き起こされる。その際に疾患は:皮膚癌、黒色腫、多型光線疹、紫外線角化症、日光蕁麻疹、色素性乾皮症、光線加齢、慢性の光線性皮膚炎または日焼けから選択される。用語「放射線」は皮膚において損傷または傷害を引き起こすことができる任意の種の放射線を含み、例えば、癌を処置するための放射線療法または紫外線(UV)、好ましくは太陽から放射されるUVBである。
【0042】
本発明に使用されるように、用語「予防」は、酸化ストレス、放射線への、特に日焼けに関連するUV放射線への、特に日焼けに起因するUVB放射線への、特に日焼け、アレルギー、免疫反応および炎症性プロセスに起因するUVB放射線への過剰曝露に関係する皮膚の病態生理学のプロセスの出現を完全に、または部分的に回避することを意味する。
【0043】
本発明で使用されるように用語「光防護」は被検体が放射線、主にUVB放射線に曝される前に本発明の組成物を投与し、傷害を被るリスクを減らす、または軽減することを指す。したがって用語「光防護」は用語「予防」のもとに含まれているということが本発明では理解される。
【0044】
他方で、用語「処置」は、被検体が皮膚の疾患、傷害、または損傷の症状を被った後の、本発明の組成物の投与に関連している。一例として、用語「処置」は、好ましくは、放射線に、主にUVB放射線に、曝されたヒトに対して本発明に開示される任意の組成物の投与に適用され、皮膚の傷害した部分を修復し、元の機能および完全性を回復する。さらに用語「処置」は、炎症性プロセスに関係する任意の皮膚の疾患、傷害、または損傷を被る被検体に対する本発明の組成物の投与に関連している。
【0045】
随意にQUERと共にPTERは、またはその任意の許容可能な塩は、他の活性化合物と組み合わせて製剤され得る。それらの他の活性化合物の中では、鎮痛剤、抗炎症剤、抗アレルギー薬、免疫調節剤、治癒剤(healing agents)および放射フィルターが好ましい。PTER、および随意にQUER、またはその任意の許容可能な塩を伴う、本発明の医薬製剤の成分に適切なUVフィルターのリストについては、WO2008067928に開示されたUV吸収物質を参照する。最も好ましいUVフィルターは以下から選択される。
【0046】
【表1−1】

【0047】
【表1−2】

【0048】
【表1−3】

【0049】
皮膚の疾患、病変、または傷害を予防および/または処置するにあたって本発明の組成物の効果または効率を解明するために、放射線に曝露される前と後の両方で皮下脂肪または表皮の厚さの測定などの、幾つかの技術が本発明では実施された。それら全ての技術は当業者によく知られており、共通の一般知識に属する。さらに、両方の技術は、異なる化合物が皮膚の疾患、傷害、損傷を予防または処置する能力を試験するために日常的に使用されている。表皮の厚さまたは襞が小さければ小さいほど、処置はより有効である。実施例に示されるように、活性化合物PTER、またはその任意の許容可能な塩は、皮膚の疾患、傷害または損傷の予防および/または処置のための局所的な組成物の製造のために使用されることができる。さらに、活性化合物PTERとQUERの組合せ、またはその任意の許容可能な塩は、以下に説明されるように、幾つかのアッセイにおいて、別々に摂取される各々の活性化合物の機能を向上させる相乗効果を示す。したがって用語「相乗的な」は、本発明との関連で使用される場合、放射線への暴露によって引き起こされる皮膚の疾患、傷害または損傷を予防および/または処置するための併用療法として投与される際に、PTERとQUERの組合せ、またはその任意の許容可能な塩の全体的な治療効果が、各々が独立して投与される場合のこれらの活性化合物の治療効果よりも大きいことを意味する。
【0050】
実施例において示されるように、皮下脂肪厚の測定が実行された。図1はPTERとQUERの組合せ、およびまた単独でのPTERが、UVBへの曝露の前に適用される場合、市販のクリーム剤:Vichy(VICHY Capital Soleil 50+UVB+UVA)、Heliocare(Heliocare ultra 90 UVB/UVA)およびIsdin(ISDIN Extrem 40 high protection UVA and UVB)、よりも、光防護剤(photoprotector)としてより有効であることを示し、PTERとQUERの組合せは僅かにより良い結果を示している。それら3つの市販のクリーム剤は本願明細書全体に渡って比較効果のために使用される。また、本願に渡ってRESVもまた、同じ条件のアッセイにおいて、PTERおよびPTERとQUER、と比較される。RESVは、従来は、皮膚癌の化学保護剤として開示されている(Moammir Hasan Aziz,Shannon Reagan−Shaw,Jianquiang Wu,B.Jack Longley and Nihal Ahmad;FASEB J.express article 10.1096(2005):1−18)。図1では、PTER単独またはPTERとQUERの組合せは、UVB曝露の後または前の何れにおいてもRESVよりも皮膚の光防護についてより大きな効果を示している。
【0051】
したがって、PTERとQUERの組合せ、またはPTER単独の何れも、太陽放射線への暴露によって誘発される皮膚疾患の予防において有効に使用され得る。PTERはその放射線の特にUVB成分を吸収するが、QUER(図13を参照)はまた、放射線(太陽)曝露による発癌の原因の一部でもある太陽放射線のUVA成分に相当する波長において吸収スペクトルをさらに有する。したがって、PTERとQUERの組合せの本明細書の幾つかのアッセイにおいて相乗効果が観測される。
【0052】
さらに、図1はまた、PTERとQUERの組合せが、UVBへの曝露の後に適用される場合に市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)、およびPTER単独よりも、放射線による皮膚の疾患、損傷、傷害の処置においてより有効であることを示している。したがって、PTERとQUERの組合せは、紫外線B放射線によって誘発される皮膚の疾患、損傷、傷害の処置において有効に使用され得る。
【0053】
実施例に示されるように、表皮の厚さの測定は、照射(24時間)の前に実効された。
図2は、PTERの単独での、またはQUERと組み合わせての使用は、UVBへの曝露の前に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)よりも光防護剤としてより有効であることを示している。したがって、単独での、またはQUERとの組合せでのPTERは紫外線B放射線によって誘発される皮膚疾患の予防に有効に使用され得る。
【0054】
さらに図2はまた、PTERとQUERの組合せ、または単独でのPTERは、UVBへの曝露の後に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)よりも、放射線によって引き起こされる皮膚の疾患、損傷、または傷害の処置においてより有効であることを示しており、PTERとQUERの組合せが僅かにより良い結果を示している。したがって、PTER単独と並びにPTERとQUERの組合せは、紫外線B放射線によって誘発される皮膚の疾患、傷害、または損傷の処置において有効に使用され得る。
【0055】
実施例に示されるように、表皮の厚さの測定は照射(1週間)の前に実行された。図3はPTERの単独での使用が、UVBの曝露の前に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)よりも、光防護剤としてより有効であることを示している。したがって、単独でのPTERは、紫外線B放射線によって誘発される皮膚の疾患、傷害、損傷の予防において有効に使用され得る。
【0056】
さらに図3はまた、PTERとQUERの組合せ、および単独でのPTERが、UVBへの曝露の後に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)よりも、放射線によって引き起こされる皮膚の疾患、損傷、または傷害の処置においてより有効であることを示しており、PTERとQUERの組合せが最も良い結果を示している。したがって、PTER単独と並びにPTERとQUERの組合せは、紫外線B放射線によって誘発される皮膚の疾患、損傷、または傷害の処置において有効に使用され得る。
【0057】
したがって、本発明の第1の実施形態は、皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置で使用するための、随意にQUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩を参照する。好ましい実施形態において、本発明はまた、皮膚癌の予防および/または処置における使用のための、随意にQUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩を参照する。本発明の別の好ましい実施形態は、皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置における使用のための、QUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩を参照する。本発明の別の好ましい実施形態は、皮膚癌の予防および/または処置における使用のための、QUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩を参照する。本発明の別の好ましい実施形態は、放射線への曝露によって引き起こされる皮膚疾患の処置における使用のための、QUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩を参照する。本発明の別の好ましい実施形態は、皮膚疾患または乾癬の予防および/または処置における使用のための、QUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩を参照する。局所的投与による上記の使用が好ましい。
【0058】
本発明の第2の実施形態は、皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置用の医薬組成物の製造のための、随意にQUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩の使用を参照する。好ましい実施形態において、本発明はまた、皮膚癌の予防および/または処置用の医薬組成物の製造のための、随意にQUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩の使用を参照する。好ましい実施形態において、本発明は皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置用の医薬組成物の製造のための、随意にQUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩の使用を参照する。好ましい実施形態において、本発明は、皮膚癌の予防および/または処置用の医薬組成物の製造のための、随意にQUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩の使用を参照する。好ましい実施形態において、本発明は、放射線への曝露によって引き起こされた皮膚病の処置用の医薬組成物の製造のための、随意にQUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩の使用を参照する。好ましい実施形態において、本発明は、皮膚病または乾癬の予防および/または処置用の医薬組成物の製造のための、随意にQUERと組み合わせたPTER、またはその任意の許容可能な塩の使用を参照する。好ましく製造された医薬組成物は、局所的に投与されるものである。
【0059】
本発明の第3の実施形態は、局所的投与用の、より好ましくはリポソームの形態で製剤されたPTERを含む医薬組成物を参照する。好ましい実施形態において、医薬組成物はQUERと組み合わせて製剤されたPTERを含む。好ましい実施形態において、医薬組成物は遮光剤または日焼け止めの製剤の形態で製剤される。
【0060】
本発明の第4の実施形態は、以下の工程を含むリポソーム製剤を製造するプロセスを参照する:活性化合物PTER、またはその任意の許容可能な塩、およびレシチンを有機溶媒中に溶解し、溶媒を蒸発させ、PBSバッファーを添加し、形成されたリポソームを収集し超音波処理し、乳化安定剤、好ましくはカルボマー、さらに好ましくはカーボポールで1:1に希釈し、随意に防腐剤、好ましくはフェノニプ(Phenonip)を添加する工程。好ましい実施形態において、リポソーム製剤の製造するためのプロセスはまた、第1の工程でPTERと組み合わせてQUERを、またはその任意の許容可能な塩を溶解する工程を含む。カーボポールはカルボマーである。カルボマーはまた、医薬品および化粧品における乳化安定剤または増粘剤として使用されるアクリル酸の合成ポリマーについての総称である。それらは、アリルエーテルペンタエリトリトール、スクロースのアリルエーテル、またはプロピレンのアリルエーテルと架橋結合した、アクリル酸のホモポリマーであり得る。
【0061】
フェノ二プは多数の用途において作用する防腐用の透明な液体である。それは、油中で可溶性であり水中で分散性である点において独特である。この防腐剤は、油ベースの生成物と併用される場合に特に有効であるが、水溶液中においても非常によく作用する。このことは、それが鎮静薬および軟膏のような油のみを含む製品おいても作用するであろうことを意味する。フェノ二プはまた、より広い温度域に耐えることができる。試験は、それが防腐効果の質を下げることなく殺菌温度まで熱せられることを示している。それは3〜8のphの範囲で作用する。使用率は(用途に応じて)総体の化学式の重量の1%から3%まで変化する。フェノ二プは以下から成り立ち、および以下のものとして標識化されなければならない:フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン。
【0062】
本発明の第5の実施形態は、随意にQUER、またはその任意の許容可能な塩と組み合わせてPTERを投与する工程を含む、皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置のための方法を参照する。好ましい実施形態において、本発明は、随意にQUERと組み合わせてPTERを、またはその任意の許容可能な塩を投与する工程を含む、皮膚癌の予防および/または処置のための方法を参照する。好ましい実施形態において、本発明は、QUERと組み合わせてPTERを、またはその任意の許容可能な塩を投与する工程を含む、皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置のための方法を参照する。好ましい実施形態において、本発明は、随意にQUERと組み合わせてPTERを、またはその任意の許容可能な塩を投与する工程を含む、皮膚癌の予防および/または処置のための方法を参照する。好ましい実施形態において、本発明は、QUERと組み合わせてPTERを、またはその任意の許容可能な塩を投与する工程を含む、放射線への曝露によって引き起こされる皮膚疾患の処置のための方法を参照する。好ましい実施形態において、本発明は、QUERと組み合わせてPTERを、またはその任意の許容可能な塩を投与する工程を含む、皮膚病または乾癬の予防および/または処置のための方法を参照する。より好ましくは、本発明の方法は局所的に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】UVBに曝露される前(左列)または後(右列)に異なる組成物で処置されたマウスの皮下脂肪厚(%)を示している。市販のクリーム剤(Vichy、Heliocare−Helio−およびIsdin)。C+UVB=一切の処置なしで照射された対照;C Lipo+UVB=(活性化合物を一切含まない)リポソームのみが適用される照射された対照。RESV=レスベラトロール;P+Q=PTER+QUER。図1〜3の全てにおいて、ヒストグラムのバー(bars histogram)に示されるアスタリスク*は、対照値と比較した場合の統計的に有意な差(p<0.05)を表わす。
【図2】照射(24時間)に曝される前(左列)または後(右列)に異なる組成物で処置された表皮の厚さ(μm)を示している。市販のクリーム剤(Vichy、Heliocare−Helio−およびIsdin)。対照=照射せず、処置せず;C+UVB=一切の処置なしで照射された対照;C Lipo+UVB=(活性化合物を一切含まない)リポソームのみが適用される照射された対照。RESV=レスベラトロール;P+Q=PTER+QUER。図1〜3の全てにおいて、ヒストグラムのバーに示されるアスタリスク*は、対照値と比較した場合の統計的に有意な差(p<0.05)を表わす。
【図3】照射(1週間)に曝される前(左列)または後(右列)に異なる組成物で処置された表皮の厚さ(μm)を示している。市販のクリーム剤(Vichy、Heliocare−Helio−およびIsdin)。C Lipo+UVB=(活性化合物を一切含まない)リポソームのみが適用される照射された対照。RESV=レスベラトロール;P+Q=PTER+QUER。図1〜3の全てにおいて、ヒストグラムのバーに示されるアスタリスク*は、対照値と比較した場合の統計的に有意な差(p<0.05)を表わす。
【図4】TNCBを用いた実験用のアトピー性皮膚炎の誘発に関する試験における(TNCBへの事前の露出から1週間後、および隔日の継続曝露の開始である)0日目に関する皮下脂肪の増加を示している。
【図5】TNCBを用いた実験用のアトピー性皮膚炎の誘発に関する試験における、TNCBへの4°曝露の24時間後の経皮の流体喪失(TEWL)を示している。
【図6】TNCBを用いた実験用のアトピー性皮膚炎の誘発に関する試験における、TNCBへの4°曝露の24時間後の病変を示している。
【図7】TNCBを用いた実験用のアトピー性皮膚炎の誘発に関する試験において展開されたプロトコルを図示している。
【図8】TPAを用いた実験用の乾癬の誘発に関する試験において、TPA処置の0日目に関する皮下脂肪の増加を示している。
【図9】TPAを用いた実験用の乾癬の誘発に関する試験における、TPAへの7°曝露の24時間後の経皮の流体喪失(TEWL)を示している。
【図10】TPAを用いた実験用の乾癬の誘発に関する試験における、TPAへの曝露についての病変の進化を示している。 A.TPA2nモルを3日間曝露して24時間後のマウスの画像; B.TPA2nモルを6日間曝露して24時間後の同じマウスの画像; C.ヒトの指上の実際の乾癬の画像(皮膚科学イメージアトラス(Dermatology Image Atlas)からの画像); D.患者の膝上の実際の乾癬の画像(皮膚科学イメージアトラスからの画像)。
【図11】TPAを用いた実験用の乾癬の誘発に関する試験において展開されたプロトコルを示している。
【図12】オキサゾロンへの接触による実験用の過敏症の誘発に関する試験において展開されたプロトコルを示している。
【図13】ポリフェノールのメカニカルフィルター能力の評価に関する試験において、純粋なエタノール中の、ポリフェノールの吸収作用、特に各々のポリフェノール(PTER、レスベラトロールおよびQUER)の異なる溶液1mMの吸収スペクトルを示している。
【図14】ポリフェノールの光防護剤役割の評価に関する試験における、UV−Bへの慢性的な曝露の後のマウスの状態を示している。それは(1週間3回)25週間の180mJ/cmへの慢性的な曝露の後の異なる実験群の写真である。基準化合物と本研究の対象(10μモル/マウスのポリフェノール、または光防護剤各200μl)の両方がUV−Bへの曝露前にマウスの背部に20分間適用された。
【図15】ポリフェノールの光防護剤役割の評価に関する試験における、病変の発達の進化を示している。(1週間に3回)30週間の180mJ/cmへの慢性的な曝露の後の異なる実験群における、直径が1mmよりも大きい前癌性病変の最初の兆候。基準化合物と本研究の対象(10μモル/マウスのポリフェノール、または光防護剤各200μl)の両方がUV−Bへの曝露前にマウスの背部に20分間適用された。
【図16】UV−Bへの慢性的な曝露の後の皮膚の解剖病理学的(anatomopathological)研究を示している。(1週間に3回)30週間の180mJ/cmへの慢性的な曝露の後のマウスの組織学的部分の解剖病理学的評価。基準化合物と本研究の対象(10μモル/マウスのポリフェノール、または光防護剤各200μl)の両方がUV−Bへの曝露前にマウスの背部に20分間適用された。
【図17】皮膚炎に対する様々なポリフェノールの効果の評価に関する試験において、処置の継続する実施の後の皮下脂肪を示している。10μモル/マウスのポリフェノールおよび0.5μモル/マウスのデキサメタゾンの処置の適用は6日間毎日マウスの背部の3分の1になされた。皮下脂肪はノギスを活用して測定された。対照に関してはp>0.001である。分散分析の後にチューキー法が続いた。
【図18】放射線UV−Bへの重度の曝露からの保護の評価に関する試験における様々な実験条件を表わす組織学的部分を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、または200μlの各光防護剤)の適用は360mJ/cmのUV−Bによる照射の前後に20分間なされた。マウスはUV−Bへの照射の24時間後処分された。当該図は表皮の厚みにおける変化を示している。
【図19】TNCBによって誘発されるアトピー性皮膚炎の実験モデルでの保護に関する試験における、最初のTNCB投与の24時間後の皮下脂肪の増加を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、既に1TNCBに対して感作されたマウスに対して1%のTNCB100μlを適用する24時間前(0日目)になされた。皮下脂肪はノギスを活用して測定され、0日目についての増加が計算された。対照に関してはp>0.05である;TNCBで処置された対照に関してはp>0.05である。分散分析の後にチューキー法が続いた。
【図20】障害の巨視的評価(macroscopic assessment)に関する実験における、アトピー性皮膚炎のモデルでの病変評価を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、既に1TNCBに感作されたマウスに対して1%のTNCB100μlを適用する24時間前になされた。Tewameterシステム TM 210(CK エレクトロニクス、ドイツ)を用いて流行性伝播(epidemic transmission)の水分喪失の測定が評価された。対照に関してはp>0.05である;中空リポソーム(enpty Liposomes)で処置された対照に関してはp>0.05である。分散分析の後にチューキー法が続いた。
【図21】病変の巨視的評価に関する試験における、アトピー性皮膚炎モデルのマウスでの評価を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、既に1TNCBに感作されたマウスに対して2日毎に1%のTNCB100μlを適用する前になされ、TNCBの適用は4回までなされた。
【図22】オキサゾロンに誘発される接触過敏性(contact hypersensivity)のモデルに対する保護に関する試験における、オキサゾロンの投与から24時間後の皮下脂肪の増加を示している。処置(1μモル/マウスのポリフェノール、20mgのディプロゾン(diprosone))の適用は、予めオキサゾロンに感作されたマウスの耳上にエタノール中の2.5%のオキサゾロン20μlの適用の24時間前(0日目)になされた。皮下脂肪はノギスによって測定され、0日目についての増加が計算された。オキサゾロンで処置された対照に関してはp>0.05である。オキサゾロンの適用の前に、ディプロゾンで処置された対照に関してはp>0.05である。分散分析の後にチューキー法が続いた。
【図23】TPAによって誘発される乾癬モデルに対する保護に関する試験における、手順を通して0日目に関する皮下脂肪の増加の進化を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、2nモル/マウスのTPAが適用される前に30分間なされた。投与ガイドラインは6日間毎日繰り返された。皮下脂肪はノギスによって測定され、0日目についての増加が計算された。
【図24】TPAによって誘発される乾癬モデルに対する保護に関する試験における、最初のTPA投与の24時間後の皮下脂肪の増加を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、2nモル/マウスのTPAの投与の前に30分間なされた。皮下脂肪はノギスによって測定され、0日目についての増加が計算された。対照に関してはp>0.05である。分散分析の後にチューキー法が続いた。
【図25】TPAによって誘発される乾癬モデルに対する保護に関する試験における、第3のTPA投与の24時間後の皮下脂肪を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、2nモル/マウスのTPAの適用の前に30分間なされた。皮下脂肪はノギスを活用して測定され、0日目についての増加が計算された。対照に関してはp>0.05である;TNCBの群に関してはp>0.05である。分散分析の後にチューキー法が続いた。
【図26】TPAによって誘発される乾癬モデルに対する保護に関する試験における、乾癬モデルのマウスの巨視像を示している。写真は、(A)TPAの投与の24時間後および(B)7aTPAの投与の24時間後に撮られた。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、2nモル/マウスのTPAの適用の前に30分間なされた。
【図27】TPAによって誘発される乾癬モデルに対する保護に関する実験における、7回のTPA投与の24時間後の表皮剥離(descaling)の評価を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、2nモル/マウスのTPAの適用の前に30分間なされた。皮膚の表皮剥離の態様は0〜3の段階に定量化され、0はなにも無く、1は軽度、2は中度、3は重度である。および各々の群の媒体は炎症の程度を示した。
【図28】乾癬手順の組織学的分析を示している。処置(10μモル/マウスのポリフェノール、0.5μモル/マウスのデキサメタゾン)の適用は、2nモル/マウスのTPAが適用される前に30分間なされた。7日間に渡って毎日2nモルのTPAで処置されて(A)24時間後、(B)72時間後、のマウスからのヘマトキシリン−エオシン染色を伴った5μmの片の顕微鏡像の画像。
【発明を実施するための形態】
【0064】
紫外線B放射線によって誘発される(皮膚癌などの)皮膚疾患を予防するための本発明の組成物の能力を評価するための研究を360mJ/cmの用量での急照射によって実行した
【0065】
(UVB放射線への曝露についてのプロトコル)
UVBへ曝露するために、特別にアップグレードされたカメラ(最大放射312nmを備えた、UVBとして80%の放射線を放射する5つのチューブを備えたクロスリンカー)を使用した。
【0066】
UVB急性曝露プロトコルを使用した:マウスに1回の360mJ/cm2の曝露をさせた。曝露から24時間後に研究を行った。当該プロトコルを研究される化合物の光防護効果を評価するために使用した。同じ急性期プロトコル(acute−phase protocol)で、全ての群のマウスを照射した。次に、炎症反応および浮腫の進化を見るためにマウスを動物保管領域に1週間留めた。
【0067】
(研究下の化合物の投与および用量)
(慢性または急性の)UVB曝露の研究に関して、マウスの背部への局所的投与を行った。市販の遮光剤をマウスに直接塗布した。当該研究のポリフェノールをリポソームのビヒクルとなるカーボポールポリマーで1:1に希釈したリポソーム調製物の形で投与した。投与した各々のポリフェノールの用量は、遊離酸として10μモル/マウスであった。
【0068】
(皮膚の傷害のパラメーター指標(Parameters indicators))
1.浮腫形成:最初の曝露から24時間後にキャリパで皮下脂肪厚を測定した。
2.急照射へ曝された後の表皮の厚さの研究(360mj/cm 照射から24時間および7日後)。
3.組織学的研究:組織学的セクションから得られた写真において表皮の厚さの測定。
【0069】
(組織学的研究)
急性の曝露の研究について、皮膚のサンプルをマウスの背部から取った。これらのサンプルを4%のパラホルムアルデヒドで固定し(24時間)、パラフィンに包埋した。サンプルをカットした後、ヘマトキシリンおよびエオジンで染色した。
【0070】
(様々な化合物の吸収スペクトルの研究)
各々のポリフェノール(PTER、レスベラトロール、およびQUER)の1mMの溶液を無水エタノール(HPLS品質;Quima)中に調製し、吸収スペクトルをMultiskan Spectrum(Thermo Scientific)を使用して、200〜800nmの間で研究した。
【0071】
(光発癌の手順(放射線UV−Bへの慢性的な曝露))
腫瘍形成におけるUV−B放射線の役割はよく知られている。UV−Bへの継続的な曝露は、様々な転写因子(それらの中にはNF−κBおよびAP−1がある)を活性化するDNA、蛋白質、などの変性に伴う酸化/ニトロソ化ストレスの形成および、発癌を次々に誘発するテロメラーゼ活性、ストレスなどの増加を促進する。
【0072】
さらに、UV−Bへの曝露は抗アポトーシス性の蛋白質の発現およびレベルを増加させ、それは増殖および一定の炎症性マーカーの増加と相関する。
【0073】
この研究用に選択されたマウスはSKH−1であった。これらのマウスは低用量のUV放射線に対する慢性的な曝露を受けて腫瘍を進化させるリスクがより大きい(ヒトが日常に受ける曝露と比較して)。
【0074】
使用したプロトコルは標準化されたプロトコルであり、そこでは数匹のマウスを24週間の曝露を180mJ/cm2の用量で週に3回照射した。しかしながら、試験の期間中、使用した異なる処置に対する光防護効果についてより多くの証拠を得るために曝露の時間を28週に長くすることでプロトコルを修正した。
【0075】
曝露の用量は180mJ/cm2であった。なぜなら従来の試験において、これがこの種のげっ歯類にとって最小紅斑量であると測定されたためである。
【0076】
この研究では、さまざまな異なる市販の光防護剤を含んでいる:
・Vichy:Capital Soleil SPF−50+ (Vichy Laboratoires)。
・Isdin:光防護剤 Isdin Extrem (SPF−40(Isdin SA)
・Heliocare:Heliocare gel Protection Ultra 90 (Difa Cooper S.P.A.)
【0077】
UV−Bの曝露の前に、基準化合物と本研究の対象の両方をマウスの背部に20分間適用した。
【0078】
この評価について20匹のマウスの群は以下の通りである:
・未処置。
・事前の基準化合物Vichy:照射の20分前に適用された200μlのIsdin。
・事前の基準化合物Isdin:照射の20分前に適用された200μlのIsdin。
・事前の基準化合物Heliocare:照射の20分前に適用された200μlのHeliocare。
・事前の媒体:照射の20分前に適用された真空化された200μlのリポソーム。
・事前のレスベラトロール:照射の20分前に適用された200μlのレスベラトロールリポソーム(合計で10μモル)。
・事前のPTER:照射の20分前に適用された200μlのPTERリポソーム (合計で10μモル)。
・事前のQUER:照射の20分前に適用された200μlのQUERリポソーム (合計で10μモル)。
・事前のPTER+QUER:照射の20分前に適用された200μlのPTER+QUERリポソーム(合計で10μモル)。
【0079】
UV−Bは短期的に浮腫および紅斑を誘発する。この炎症は過剰増殖プロセスにとって必要不可欠である。
【0080】
UVに曝露された皮膚細胞は、より高いレバルの核転写NF−κB因子を有し、この因子はCOX−2およびiNOSの生成を制御し、とりわけこれがUV−Bが皮膚の炎症の明らかな原因である理由の1つである。
【0081】
研究される光防護化合物の効果を評価する目的で、生後6〜8週の雌のマウスSKH−1を1回の360mJ/cmの曝露にさらした。
【0082】
紫外線B(UVB)照射の曝露について、我々の研究所で利用可能な特別に準備された、(クロスリンカー;Bio−Link BLX 254)312nmの最大放射を備えた、UVB放射線の80%を生成する5つのチューブが備え付けられたカメラを使用した。
【0083】
使用したUV−B曝露の2つのプロトコルは以下である:
・1回の360mJ/cmの曝露の後の強烈な曝露。曝露から24時間後に研究を行った。研究される化合物の光防護効果を評価するためにこのプロトコルを使用した。
・1回の360mJ/cmの曝露の後の強烈な曝露。曝露から1週間後に研究を行った。炎症および浮腫の反応の進化を観測するために、マウスを1週間格納庫に保管した。
【0084】
参照として、幾つかの市販の光防護製品を使用した(Vichy、IsdinおよびHeliocare)。観測された反応が太陽光フィルターによるものか否かを決定するために、本研究の対象の製品ならびに基準化合物を、UV−Bによる照射の前後に20分間マウスの背部に適用した。
【0085】
この評価について5匹のマウスの群は以下の通りである:
・未処置。
・事前の基準化合物Vichy:照射の20分前に適用された200μlのIsdin。
・事後の基準化合物Vichy:照射の20分後に適用された200μlのIsdin。
・事前の基準化合物Isdin:照射の20分前に適用された200μlのIsdin。
・事後の基準化合物Isdin:照射の20分後に適用された200μlのIsdin。
・事前の基準化合物Heliocare:照射の20分前に適用された200μlのHeliocare。
・事後の基準化合物Heliocare:照射の20分後に適用された200μlのHeliocare。
・事前の媒体:照射の20分前に適用された真空化された200μlのリポソーム。
・事後の媒体:照射の20分後に適用された真空化された200μlのリポソーム。
・事前のレスベラトロール:照射の20分前に適用された200μlのレスベラトロールリポソーム(合計で10μモル)。
・事後のレスベラトロール:照射の20分後に適用された200μlのレスベラトロールリポソーム(合計で10μモル)。
・事前のPTER:照射の20分前に適用された200μlのPTERリポソーム(合計で10μモル)。
・事後のPTER:照射の20分後に適用された200μlのPTERリポソーム(合計で10μモル)。
・事前のQUER:照射の20分前に適用された200μlのQUERリポソーム(合計で10μモル)。
・事後のQUERr:照射の20分後に適用された200μlのQUERレスベラトロールリポソーム(合計で10μモル)。
・事前のPTER+QUER:照射の20分前に適用された200μlのPTER+QUERリポソーム(合計で10μモル)。
・事後のPTER+QUER:照射の20分後に適用された200μlのPTER+QUERリポソーム(合計で10μモル)。
【0086】
異なる処置の実施から24時間または1週間後に、マウスを処分し、その皮膚を4%のPFAで固定した。
【0087】
(耳の厚さ)
反応の結果の前の耳の厚さと24時間後の耳の厚さの差として浮腫を計算し、ノギスによって測定した。
【0088】
変化を0日目に関して相対的な増加として表わした。
【0089】
(皮膚の巨視的評価)
皮膚の外観の変化または任意の一般的な変化を検出するために、マウスを毎日観測した。
【0090】
また、マウスを処分する前の特定の日に、それらを獣医に診せ、獣医は皮膚病変を分析し、皮膚病変を以下の機能において限定した:
・紅斑:血管の拡張によって過剰な血液灌流(blood irrigation)による炎症に条件づけられる皮膚の発赤。
・擦過創:または、はがれやすい(flaky)態様の皮膚の刺激作用、過角化症をもたらし得る皮膚の表皮剥離の増加。
・皮膚の破かれた箇所(soars)または潰瘍をもたらしかねない真皮に届く、病変の深さ。
【0091】
各々の変数は0〜4のスケールで評価され、0はなにも無く;1は軽度;2は中度;3は顕著;および4は非常に顕著、である。各々のマウスに加えられた3つの値は炎症の程度を示す。
【0092】
光発癌のプロセスの間、様々な腫瘍が存在し、プロセスを通して定量化された。直径1mmよりも大きい任意の病変は、病変として認識される。
【0093】
(顕微鏡分析)
顕微鏡レベルで、異なる手順の皮膚の組織を研究するために組織学的技術を使用した。
【0094】
組織をPBS中の4%のホルムアルデヒド中に22℃で24時間以上固定した。組織を固定した後、ミクロトームでそれらを薄く切るために充分な一貫性を提供するようにパラフィンに組織を貫通させるようにすべく、組織を大量のエタノール中で脱水させ、疎水性かつキシレン混合物中に入れなければならなかった。
【0095】
パラフィン中のサンプルは、約5〜10μmの薄片を有するミクロトームでパラフィンのサンプルを処理した。サンプルを、37℃で1滴のゼラチン上に広げ、ゼラチン化されたスライド中に集めた。
【0096】
他の手順については、キシリンでサンプルを洗浄することによって、およびエタノールを用いてサンプルに水を加えて元に戻すことによって、パラフィンを60℃以上の温度で除去する必要があった。
【0097】
ヘマトキシリンはカチオンの着色料であり、一方でエオシンはキサンテンに属するアニオンの着色料である。したがって、その核は青に染色され、および細胞質はピンクに染色される。
【0098】
サンプルを染色するために使用したプロトコルは以下である。:
1.10〜15分間のマイヤーヘマトキシリンでのインキュベーション。
2.青みを帯びるまで流水下で洗浄する。
3.エオシン(1%)で2〜4分間インキュベートする。
4.70°のエタノール中の残りのエオシンを除去する。
5.脱水。
6.キシロールで3分間すすぐ。
7.トレーを37°でストーブ上で乾かす。
【0099】
(統計分析)
結果を平均±標準偏差で表示した。標準偏差はエラーバーの形態で表わされ、幾つかの場合では、グラフを単純化するために正のセミバー(positive semi bars)のみが示される。
【0100】
データを必要に応じて1つ以上の因子または試験の偏差に基づいて分析(分散分析)した。変量の均質度をルービン法で分析した。値Fが0.05よりも大きい値pに対して有意でない試験の全ての値について帰無仮説を採用した。値Fが有意であるデータを0.05の値pを伴うチューキー法で分析した。
【0101】
使用したコンピュータプログラムは、計算およびグラフ用のエクセルであり、そして統計についてはWindows用のSPSS14.0版(SPSS Inc)を使用し、バレンシア大学がこのユーザーライセンスを有している。
【0102】
(実施例)
(実施例1:実験動物モデル)
Charles River Companyによって提供されたSKH−1マウス種を実験動物として使用した。それらは無毛の免疫応答性のマウスである。実験群を、表2で示されるように、生後3〜4週間の雌のマウスで形成した。光防護の実験群を5〜6匹の動物で構成した。これらの研究にでは、各々の実験群を20匹のマウスで構成した。
【0103】
【表2】

【0104】
さらに、Charles Riverからの生後4週間の無毛の雌のマウスSKH1−Eに、または生後6〜8週間のBALB/cマウスに、インビボ試験を行った。
【0105】
TNO Quality of Life(ライデン、オランダ)でなされたオキサゾリンに対する過敏性についての研究を除いては、バレンシア大学の、動物生産科からの動物実験分野における実験調査セントラルサポートサービス(CSSER)で研究を行った。
【0106】
一旦、2週間後に動物が順応すると、温度:22±2℃、相対湿度:65〜80%、1時間につき12回の換気および12時間中12の光周期:現行の国際規則[欧州共同体理事会指令(86/609,OJ L 358.1,December 12,1987)ナショナルヘルスインスティテュート(実験動物のケアと使用に関するガイド、NIH Publ.No.85−23,1985,USA)]に従った、制御条件下で防護壁が備え付けられた部屋で実験を行った。
【0107】
動物を頸椎脱臼によって処分した。組織学用に後部から取ったサンプルを4%のホルムアルデヒドで一晩固定した。強烈なUV−B曝露の手順と、それに続く炎症および酸化/ニトロソストレスの評価のために、サンプルの一部を液体Nで保った。
【0108】
続いて、20μlの血液を取り80μlのN−エチルマレイミド(NEM)に加えた。
【0109】
4%の過塩素酸(PCA)100μlを約10分間のインキュベーションのあとで加えた。サンプルを激しく振った(viorous shacking)後で、氷中に保存した。最終的に全てのサンプルを4℃で15分間、13000rpmで遠心分離機にかけた。上澄液を集め、GSH(グルタチオンの還元型)/GSSG(グルタチオンの酸化型)比率の分析まで、−20℃で格納した。GSH/GSSG比率は、細胞内の酸化還元状態、および特には細胞内チオールの酸化還元状態を反映するパラメーターである。したがって、この比率の変化を酸化ストレスを評価するために使用する。
【0110】
後部の皮膚から4つのサンプルを取った。1つは組織学的検査用(4%のホルムアルデヒド中に一晩固定した)であり、および3つを生化学分析用に液体窒素で凍結した。
【0111】
(実施例2:リポソームの調製)
ポリフェノールに関わらず、リポソームの調製方法を均等に使用した:大豆レシチン;PTERおよび/またはQUERの場合は有機溶媒としてジクロロメタン、および、ジクロロメタン中で溶解できないためにレスベラトロールについては有機溶媒としてエチルエーテル。有機溶媒の蒸発をバキュームに繋がれた回転蒸発装置を使用して、40℃の温度で行った。有機溶媒を取り除いた後で、リポソームを1mMに希釈したPBS中に再懸濁した。最終リポソーム濃度において、カーボポールを加える前、各々のポリフェノールの濃度は、HPLC/MS−MSで測定されたように20μMポリフェノールであった。
【0112】
リポソームを調製する工程は以下のように要約され得る。
1.重量ポリフェノールおよびレシチン
PTER:0,517gr
QUER:0,676gr
RESV:0.458gr
レシチン:2.376
2.ポリフェノールおよびレシチンを40mlのジクロロメタン中に溶かし(PTERおよび/またはQUERの場合)、または140mlのエチルエーテルも溶かす(レスベラトロールの場合)。
3.溶液を回転蒸発装置フラスコに導入し、装置(device)に取り付けた。一旦、全ての溶媒が蒸発すれば、予期される真空をカットし、なり得た溶媒の全ての痕跡を除去するために15分間待つ。
4.希釈したPBS(1mM)20mlを回転蒸発装置フラスコに加え、今回は真空なしで装置に再度取り付ける。
5.形成されたリポソームを50mlチューブに集める。
6.リポソームの音波処理(6秒間、25周期、各周期間に3秒の間隔をおく;高強度)。
7.カーボポールで1:1に希釈(終濃度10μモル/200μl)
8.起こり得る感染を防ぐためにフェノ二プ(1000ml中6mlのフェノ二プの調製)を加える。
【0113】
PTERおよびQUERと同様の方法で対照リポソームを作ったが、レシチン(2.376g)のみを含む。
【0114】
リポソームを獲得する手順は、コロイドリサーチユニット(バレンシア大学、化学物理学部)との共同で我々の研究所で行った。
【0115】
リポソームにはポリフェノールのような様々な有効成分を負荷させることができる。皮膚に浸透する能力のために、リポソームはこれらの有効成分を皮膚中で長距離運ぶことができ、定められた地点で止まることができる。このため、リポソームを皮膚疾患の治療に使用することができる。緑茶に由来するポリフェノールを含む様々な製品(Replenix;Kaplan cosmetic Surgery Centers)と、およびブドウに由来するレスベラトロール(Resveraderm; SesDERMA Laboratorios)がある。
【0116】
リポソームを得るために大豆レシチンの混合物を使用した。これは90%のホスファチジルコリンおよび他の脂肪酸の天然の混合物である。GUINAMA S.L(バレンシア,スペイン)が大豆レシチン(純度99%)を提供した。
【0117】
PTER(CMLヨーロッパBV)およびQUER(シグマ)のためにジクロロメタン(シグマ)、レスベラトロール(シグマ)のためにエーテル(シグマ)、などのように溶解性(solubility)のために極性有機溶媒を使用した。
【0118】
リポソームを獲得するための理想的な混合物は以下を含む:
・ジクロロメタン中に溶解した、5.9(w/v)のレシチン、1.28(w/v)のPTERおよび1.69(w/v)のQUER。
・エーテル中に溶解した、1.69(w/v)のレシチンおよび1.15(w/v)のレスベラトロール。
【0119】
真空回転蒸発装置で大豆レシチンを40℃で脱水することによって、異なるポリフェノールの微視的パッケージングを達成し、後にレシチンを、最終溶液中の化合物につき0.1mMの終濃度に向けて20℃で1mM、pH7のホスファート溶液によって水和した。
【0120】
顕微鏡を介して形態を観測することでリポソームを粒子の大きさに関して標準化した。リポソーム懸濁液中のポリフェノールの濃度をHPLC−MS/MSによって定量化した。
【0121】
溶液をカーボポール940(Guinama)で希釈度1:1に安定化し、0.6%(v/v)の抗菌性の防腐剤フェノ二プ(Guinama)を加え、それによって各ポリフェノール/200μlに対して10μモルのリポソームの溶液を得た。
【0122】
自動マイクロピペットを用いて、クリーム剤の均質なフィルムをマウスの背部に適用し平滑化することでリポソームを投与した。
【0123】
投与プロトコルに従って化合物を適用した。前記プロトコルは以下の各手順に記載されている。:
・中空リポソーム:荷電されていないリポソーム。
・PTERリポソーム:1μモル/20μLのクリーム剤。
・QUERリポソーム:1μモル/20μLのクリーム剤。
・PTER+QUERリポソーム:各々の化合物の1μモル/20μLのクリーム剤。
・レスベラトロールリポソーム:1μモル/10μLのクリーム剤。
【0124】
(実施例3:照射から24時間後の皮下脂肪の測定)
マウスの脇の下から臀部までの、背部からの皮膚上に襞をつくることで皮下脂肪を測定した。襞をノギスによって測定した。
【0125】
反応の作用の前の最初の時点、および各時点における厚さの差異によって、襞の増大を計算した。
【0126】
図1はマウスの後部の皮膚の厚さを測定して得られた結果を示している(そこでは、様々な処置を適用した)。結果を分散分析によって統計的に分析しチューキー法によって対比し、そして有意な差異に基づき分類した。標準偏差を図1に組み入れている。図1に示されるように、PTERとQUERの組合せ、および単独でのPTERは、UVBへの曝露の前に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)およびRESVよりも、光防護剤としてより有効である。したがって、PTERとQUERの組合せ、または単独でのPTERは、紫外線B放射線に誘発される皮膚疾患の予防に有効に使用され得る。
【0127】
さらに、図1はまた、PTERとQUERの組合せ、または単独でのPTERが、UVBへの曝露後に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)およびRESVよりも、放射線による皮膚の疾患、傷害、または損傷の処置により有効であることを示している。したがって、PTERとQUERの組合せは、紫外線B放射線に誘発される皮膚の疾患、傷害、または損傷の処置に有効に使用され得る。
【0128】
(実施例4:照射後(24時間)の表皮の厚さの測定)
起こり得る過形成を評価するよう表皮の厚さを測定するために、コンピュータプログラム、Image Jを使用し、表皮の測定を可能にするノイバウアーカメラ(Neubauer camera)を活用して測定した。得られた結果を分散分析によって分析し、チューキー法で対比し、そして有意な差異に基づいて分類した。図2に示されるように、PTER単独の使用は、UVBの曝露の前に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)よりも光防護剤としてより有効である。したがって、PTERは単独で紫外線B放射線に誘発される皮膚の疾患、損傷または傷害の予防に有効に使用され得る。
【0129】
さらに、図2はまた、PTERとQUERの組合せが、UVBへの曝露後に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)およびRESVよりも放射線によって誘発される皮膚の疾患、傷害、または損傷の処置についてより有効であることを示している。したがって、PTERとQUERの組合せ、並びに単独でのPTERは、紫外線B放射線に誘発される皮膚の疾患、傷害または損傷の処置に有効に使用され得る。この実験における対照は放射線および処置が与えられないことを意味する。
【0130】
(実施例5:照射後(1週間)の表皮の厚さの測定)
皮膚の厚さの評価をコンピューターソフトウェア(IMAGE J)を使用して行った。分散分析によって得られた結果をチューキー法で対比し、有意な差異に基づいて分類した。図3に示されるように、PTERの単独での使用は、UVBの曝露の前に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)よりも光防護剤としてより有効である。したがって、PTERは単独で、紫外線B放射線に誘発される皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防に有効に使用され得る。
【0131】
さらに、図3はまた、PTERとQUERの組合せは、UVBへの曝露後に適用される場合、市販のクリーム剤(Vichy、HeliocareおよびIsdin)およびRESVよりも放射線によって引き起こされる皮膚の疾患、傷害、または損傷の処置についてより有効であることを示している。したがって、PTER単独と並びにPTERとQUERの組合せは、紫外線B放射線によって誘発される皮膚疾患の処置において有効に使用され得る。
【0132】
(実施例6:TNCBを用いた実験的アトピー性皮膚炎の誘発)
一般に塩化ピクリル(Pycril chloride)としても知られる剤「2−クロロ−1,3,5−トリニトロベンゼンまたは2,4,6−トリニトロクロロベンゼン」(TNCB)について、これはマウスの皮膚の炎症と組み合わせてアレルギー性プロセスを誘発する化学剤である。さらに、TNCB軟膏の継続投与は、アトピー性皮膚炎をもつヒトの患者の中で起こるように、血清中のTリンパ球、マスト細胞およびIgEの生成を増加させる。
【0133】
アトピー性皮膚炎病変を生じさせるために、マツモトによって説明されたプロトコルを使用し、SKH−1マウスの背部にアセトン中の1%のTNCB溶液100μLを[その量が広がるのを防ぎ、病変の部分をより局部的に保つために(自動マイクロピペットのディスペンサーを活用して)33μLの3回適用で]適用した。
【0134】
TNCBを用いた事前の試験期間に後続してTNCBによる処置が32日間続く、マツモトによって提唱されたプロトコルとは対照的に、TNCBを用いた1回の試験、および1週間後に2日毎のTNCBによる4回の投与から成るプロトコルを展開した。より短いプロトコルは、図4で示されるように皮下脂肪の増大をもたらし、同様に図5で示されるように経皮の流体喪失の増大をもたらし、これらの病変は図6で示されるように巨視的レベルで明らかである。
【0135】
したがって、この手順で展開されたプロトコルは図7で示されるものである。標準的な処置として、以下はデキサメタゾン(アセトン中のシグマ溶液25mM)を使用した。試験される生成物の投与および標準的な処置を、最初のTNCBの継続的な適用の24時間前およびマウスがTNCBに曝露された後(1週間前)に開始して、隔日で施した。
【0136】
この評価について5匹のマウスの群は以下の通りである:
・未処置。
・基準化合物:0.5μモルのデキサメタゾン(アセトン中の20μl溶液25mM)。
・媒体:200μlの真空化されたリポソーム。
・レスベラトロール:200μLのレスベラトロールリポソーム(合計で10μモル)。
・PTER:200μLのPTERリポソーム(合計で10μモル)。
・QUER:200μLのQUERリポソーム(合計で10μモル)。
・PTER+QUER:200μLのPTERリポソーム+QUER(合計で10μモル)。
【0137】
異なる処置の最後の投与から24時間後(9日目)、マウスを処分しそれらの皮膚を4%のPFAで固定した。
【0138】
(実施例7:TPAを用いた乾癬の実験的誘発)
乾癬の誘発のために、剤「12−O−テトラデカノイルホルボール−13アセテート」(TPA)を使用した。一般に「ホルボール12−ミリステート13−アセテート」(PMA)としても知られる、剤「12−O−テトラデカノイルホルボール−13アセテート」(TPA)に関して、これは、蛋白質Cのキナーゼ酵素(PKC)を介して信号の形質導入を活性化するために、生物医学研究において通常使用される、ホルボールのジエステルおよび腫瘍の強力な促進剤である。
【0139】
無毛のマウスSKH−1に疾患を進化させるために必要とされるTPAの用量に関して、幾人かの著者は引き上げられた用量10〜17nモル/マウスを使用し、達成された過形成の再生は、予め徐毛した、乾癬を有するBalb/Cマウスについてのそれの起こり方と類似しており、このモデルは乾癬の研究において広く使用される。しかしながら、これらのモデルは、ほんの1回のTPA投与の後の生化学的なまたは分子のパラメーターを評価するためにしか使用されない。乾癬によって引き起こされる病変の進行をポリフェノールの使用を組み合わせて評価することが我々の目的であるため、連続曝露モデルおよびより薄い濃度のTPAを、1週間の期間に渡ってTPA1日量2nモルの用量で使用し、それにより乾癬の進行を観測することができた。
【0140】
誘発を1cmの部位上に、2nモルのTPA/マウスによって行い、アセトン中の200μMの溶液の10μLを適用した。この適用のプロトコルを、モデルに明示されているよう、20μLを適用する場合、容量が相当に増大しその濃度を失うことを考慮しながら実施したので、より濃縮させるよう決定した。
【0141】
より短いプロトコルは、図8で示されるように皮下脂肪の増大をもたらし、同様に図9で示されるように経皮の流体喪失(TEWL)の増大をもたらし、これらの病変は図10で示されるように巨視的レベルで明らかである。
【0142】
したがって、この手順で展開されたプロトコルは図11で示されるものである。標準的な処置として、デキサメタゾンを使用した(アセトン中のシグマ溶液25mMから)。TPAの投与の30分前に標準的な処置および試験される生成物を投与し、両方とも同じ日に開始した。
【0143】
この評価について6匹のマウスの群は以下の通りである:
・未処置。
・基準化合物:0.5μモルのデキサメタゾン(アセトン中の25mMの溶液20μl)。
・媒体:200μlの真空化されたリポソーム。
・レスベラトロール:200μLのレスベラトロールリポソーム(合計で10μモル)。
・PTER:200μLのPTERリポソーム(合計で10μモル)。
・QUER:200μLのQUERリポソーム(合計で10μモル)。
・PTER+QUER::200μLのPTERリポソーム+QUER(合計で10μモル)。
【0144】
異なる処置およびTPAの最後の実施から24時間後(7日目)、各群からの3匹のマウスを処分し、それらの皮膚を4%のPFAで固定した。残りのマウスをTPAの曝露を伴わず処置の状態に保ち、皮膚が自力よりも処置による方がより早く回復するか否かを確認した。異なる処置の最後の実施から24時間後(9日目)、残りのマウスを処分し、それらの皮膚を4%のPFAで固定した。
【0145】
(実施例8:オキサゾロンへの接触による過敏性の実験的誘発)
同じ物質への感作の後のオキサゾロンの適用は、リンパ球およびマクロファージ浸潤、表皮の浮腫を伴う湿疹性の反応のように見える、接触による過敏症の反応をもたらす。
【0146】
BALB/cマウスを、徐毛した腹部上へ、アセトン(w/v)中の1.5%でのオキサゾロンの100μLの適用を介して0日目に感作する。過敏症の誘発の前に、耳の厚さをノギス(Mitutoyo micrometer)を使って測定した。エタノール中の2.5%mpオキサゾロン20μLを適用することで(右耳の各側へ10μL)、反応を7日目に引き起こした。
【0147】
したがって、この手順で展開されたプロトコルは図12に示されるものであった。対照測定(control measure)として左耳を使用し、そこに20μLのエタノールを適用した。そして標準的な処置、Diprosone(登録商標)クリーム剤を使用し:(シェーリング プロー B.V. ユトレヒト、オランダ)、それは0.5gのベータメタゾン/gを含んでいる。
【0148】
この評価について8匹のマウスの群は以下の通りである:
・未処置。
・基準化合物:7日目にオキサゾロンを適用して30分後に、10mgのDiprosone(登録商標)クリーム剤を耳の各側に適用。
・媒体:7日目のオキサゾロン適用の30分前に、10μlの中空リポソームを耳の各側に適用。
・事前のレスベラトロール:7日目のオキサゾロン適用の30分前に、10μlのレスベラトロールリポソームを耳の各側(合計で1μモル)に適用。
・事後のレスベラトロール:7日目のオキサゾロン適用の3〜4時間後に、10μlのレスベラトロールリポソームを耳の各側(合計で1μモル)に適用。
・事前のPTER:7日目のオキサゾロン適用の30分前に、10μlのPTERリポソームを耳の各側(合計で1μモル)に適用。
・事後のPTER:7日目のオキサゾロン適用の3〜4時間後に、10μlのPTERリポソームを耳の各側(合計で1μモル)に適用。
・事前のQUER:7日目のオキサゾロン適用の30分前に、10μlのQUERリポソームを耳の各側(合計で1μモル)に適用。
・事後のQUER:7日目のオキサゾロン適用の〜4時間後に、10μlのQUERリポソームを耳の各側(合計で1μモル)に適用。
・事前のPTER+QUER:7日目のオキサゾロン適用の30分前に、10μlのPTER+QUERリポソームを耳の各側(合計で1μモル)に適用。
・事後のPTER+QUER:7日目のオキサゾロン適用の3〜4時間後に、10μlのPTER+QUERリポソームを耳の各側(合計で1μモル)に適用。
【0149】
オキサゾロンの投与から24時間後(1日目)、マウスを処分し両耳を4%のPFAで固定した。
【0150】
(実施例9:経皮の水分喪失)
幾つかの皮膚の疾病は、強皮症および乾癬においてのように、皮膚の機械的特性を損なうことで特徴づけられる。
【0151】
それにもかかわらず、これらの特徴の客観的な評価は複雑であり、Tewameter TM 210 システム(CK エレクトロニクス,ドイツ)を介して評価される経皮の水分喪失(PTEAまたはTEWL)を測定は皮膚の「障壁」(g/h/cm2)の機能の指標と考えられる。
【0152】
このタイプの測定の物理学的基板は1885年にアドルフ フィックによって確立された拡散法則に基づいている:
【0153】
【数1】

【0154】
式中:
A=m単位の表面積
m=水の輸送量(単位g)
t=時間(h)
D=拡散の定数(=0.0877g/m・h・mmHg)
p=大気中の蒸気圧力(mmHg)
x=皮膚から測定点までの距離(m)
【0155】
拡散法則dm/dtは、時間のある区間において輸送されたcm単位の質量を指し、それは面積Aおよび距離dc/dxによる濃度の変化量に比例する。Dは空気中の水蒸気の拡散係数を表わす。この法則は一方拡散の領域内においてのみ有効であり、それは空のシリンダーとよく似た形を有している。結果として生じる密度勾配(gradient density)はマイクロプロセッサーによって分析される2つの検出器(温度および相対湿度)に間接的に記録される。
【0156】
Tewameter TM 210 システムのプローブにおいて、温度および水和作用の検出器、並びにキャリブレーションのための測定およびデータ用の回路類は、センサーの内部に位置付けられている。センサーの頭部は中空および狭いシリンダー(直径=10mm、長さ=20mm)、およびその機能はセンサー中の大気乱流を減少させることである。
【0157】
マウスを固定した後、プローブをそれらの背部、異なる化学剤で処置した同じ部位、に置いた。TEWL読み取り(readings)は、測定基準が安定化するまで継続的に行われ、それは30〜60秒の間の読み取りを生じさせ得る。
【0158】
(実施例10:UV−B照射への慢性的な曝露の間の光防護剤および抗発癌性の作用)
(ポリフェノールのメカニカルフィルター能力)
本研究で使用されるポリフェノールの能力を研究する目的で、図13に示されるように紫外線スペクトル全体に渡って光の吸収を評価することを決定した。
【0159】
レスベラトロール並びにPTERが、紫外線Bの範囲においてピークまたは最大の吸収を有し、対照的にQUERがUV−A内の波長においてより大きな割合で吸収されることが確認された。
【0160】
(ポリフェノールの光防護役割)
研究の以下の段階は、光発癌に対するポリフェノールの起こし得る修復能力(UV−Bへの曝露の後のポリフェノールの添加)に対する、光防護成分(UV−Bへの曝露の前のポリフェノールの添加)を評価することである。
【0161】
この目的のために、図14に示されるように、UV−Bへの慢性的な曝露の後に光防護能力を評価した。マウスを曝露につき180mJ/cmのUV−Bの用量で28週間に渡って1週間につき3回の曝露に晒した。このプロトコルによって、12週目から現れ始める異常形成が誘発される。手順の全体に渡って、図15に示されるように、前癌性病変を評価し定量化した。
【0162】
病変の兆候に関連して異なる処置の効果を比較すると、対照群ならびに中空リポソームで処置された群が、UV−Bへの継続的な曝露の12週に始まって、50%以上のマウスが腫瘍を有したことが認識できるであろう。対照的に、ポリフェノールによる処置は、ResvおよびQuerの場合、およそ20週目まで腫瘍の発現を遅らせた。しかしながら、Pterの処置の下、UV−Bへの30週間の慢性曝露の後では、Pter単独またはQuerと組み合わせた場合、マウスのほんの10%しか病変を示さなかった。この防護効果は市販の光防護剤で見出されたものよりも優れていた。
【0163】
マウス当たりの病変の数に関して、PterおよびQuerと組み合わせたPterは、他の任意の処置と比較してマウス当たりの病変の数がゼロであったため、最大の防護を提供したものであった。以下の表3はマウス当たりの病変:180mJ/cmでの30週間の慢性曝露(1週間に3回)後の異なる実験群において、直径が1mmより大きい前癌性病変の最初の兆候、を示している。基準化合物および本研究の対象の化合物の両方とも、(10μモル/マウスのポリフェノール、または200μlの各光防護材)を、UV−Bへの曝露の20分前にマウスの背部に適用した。20匹のマウスの群。
【0164】
【表3】

【0165】
(解剖病理学的研究)
SKH1マウスにおけるUVへの慢性照射によって誘発される腫瘍の組織病理学試験に関して、UV−Bによる処置が、主として炎症性プロセスによって強烈な表皮肥厚を生じさせることが確認された。これは最初の兆候に取ってかわり、大抵は癌腫型であり、黒色腫型ではない。
【0166】
2つの非黒色腫型の皮膚癌の大半は:基底細胞癌および鱗状細胞癌(flaky cell carcinoma)である。
【0167】
市販の光防護剤の使用は、主に炎症から防護したが、Vichyのみが起こり得る腫瘍の進化を減退させた。
【0168】
ポリフェノールの使用は、抗炎症形成および抗腫瘍形成の効果を有した。PTERが最も大きな有益性を備える化合物であった。しかしながら、その相当物であるレスベラトロールと比較した場合、抗炎症性形成および抗腫瘍形成のレベルで大きな差異が観測された。それはまた、異なる市販の光防護材と比較した場合にも、より良い結果を示した。
【0169】
PTERとQUERの組合せについて、光防護効果に関しては、Pter単独での使用または組合せての使用の間に差異は見出されなかったが、後に議論されるように、抗炎症性効果に関して差異があった。図16に示されるように、以下の表4は、UV−Bへの慢性曝露、特に180mJ/cmへの30週間の慢性曝露(1週間に3回)後の皮膚の解剖病理学的研究を示している。基準化合物および本研究の対象の両方とも(10μモル/マウスのポリフェノール、または各200μlの光防護材)を、UV−Bへの曝露の前にマウスの背部に20分間適用した。20匹のマウスの群の媒体。パラメーターを、重症度の程度、(+)軽度〜(+++)重度に従って測定した。
【0170】
【表4】

【0171】
(実施例11:皮膚炎への効果)
皮膚炎の様々なモデルに対する様々な処置の結果を評価する前に、マウスの皮膚上へのポリフェノールの継続投与の潜在的な副作用を図17で示すように評価しなければならなかった。この目的のために、この毎日の評価のための用量が6日にわたって連続投与された。
【0172】
観察されるように、その処置だけでは長期的な処置後の皮下脂肪に影響しなかったが、コルチコイド(デキサメタゾンのような)の長期間の使用は、皮膚の構造に副作用をもたらした。
【0173】
(照射線UV−Bへの急性曝露からの保護)
ポリフェノールの抗炎症性の特徴を光発癌に対する防護とみなしていることから、抗炎症性の役割についてUV−Bへの重度の曝露後に研究した。4匹のマウスの背部の皮膚の厚みの測定で得られた結果が図1に示される。
【0174】
ポリフェノールPterおよびResvは個々に、および、Pter+Querによる組み合わせは、浮腫の形成が減少したため、UVB照射の曝露後に有益な効果を示した。
【0175】
皮膚の厚みのこの増加は、主として炎症プロセスによって、または、表皮の細胞の過剰増殖によって引き起こされる容積による場合がある。したがって、それは図2に示されるような表皮の厚みを測定するために必要とされた。
【0176】
ポリフェノールで処置されたマウスの表皮の厚みの有意な差は、UV−Bでのみ処置された群に関して見出された。実際に、QUERを含むまたは含まないPTERによる処置は、市販の光防護剤およびレスベラトロールよりも優れた結果を生み出した。
【0177】
処置が適用された時間に関して、その優れた光防護の役割(ただし、修復体(repairer)としてではなく)に関して適用時間について異なる結果を示したレスベラトロールを除けば、UV−Bへの曝露前後に適用間の重要な違いはなかった。
【0178】
同様に、表皮の厚みをUV−Bの360mJ/cmの照射の1週間後に分析した際、UV−Bへの曝露前にポリフェノールで処置したマウスがUV−Bの損傷から守られていたこと、マウスが照射の24時間後に得られた表皮の厚みと同じ結果を維持したこと、統計的な違いはなかったことが見出された。ポリフェノールは照射後に塗布された場合、UV−Bへの曝露後に塗布された場合に最悪の予後をもたらしたQUERを除けば、同じ結果が得られ、その結果は図3および図18に示されたように、市販の光防護剤で観察された結果に類似していた。
【0179】
(TNCBによって誘発されたアトピー性皮膚炎の実験モデルでの保護)
TNCBの最初の投与後24時間の皮下脂肪の増加を、図19で示されるように研究した。
【0180】
このモデルでは、皮膚の厚さを正確に測定することができなかった工程を通して生産される病変があったため、皮下脂肪を測定することはできなかった。しかしながら、TNCBによる先の感作の1週間後、TNCBへの最初の曝露の24時間後に皮下脂肪の増加があることが分かった。図で観察されるように、PTER(単独で、または、QUERと組み合わせて)と同様にデキサメタゾンは、TNCB薬剤によってそれらの炎症作用を減少させた。
【0181】
当然のことながら、中空リポソームは皮下脂肪に何の影響も与えておらず、このことは、リポソームはそれ自体はメカニカルフィルタとして働かず、予期される病変を生産する標的にTNCBを到達させることができないということを示している。
【0182】
(病変の巨視的評価)
図20および図21に示されるように、病変は異なる処置間の違いを定量化する目的で評価された。
【0183】
TNCBの最初の連続的な適用を開始してから皮膚の態様に変化があり、TNCBへの最初の曝露から、および、工程の全体にわたって水和レベルの変化があったことが観察された。
【0184】
短期間では、TEWL値の分析は、デキサメタゾンまたは中空リポソームによる前処置と同様に、TNCBAによる処置について、基底値に関して表皮の水和が統計的に有意に増加したことを示した。
【0185】
しかしながら、結果の分析によって同じく示されたことは、ポリフェノール、とりわけ、Pter−Querとの組み合わせによる処置の場合、未処置の皮膚(基底値)に関連した統計的に有意な差はなかったということであった。このことは、ポリフェノールが表皮に対して水和効果を有すること、したがって、水のみの場合よりよりも水和効果を有するか、または、TNCBによって生じる攻撃への防護効果を有することを示している。
【0186】
このとき、その差はTNCBで得られる値に対して統計的に有意でなくなった。というのは、おそらく、デキサメタゾンで処置した群を含むすべての群で病変があったためである。
【0187】
病変に関して、低レベルの程度の病変が他のモデルと対照をなしているため、TNCBを投与するためのプロトコルは、わずかな病変であるが実際の病変にもっと類似した病変を生成した低用量のそれであるという兆候が見られる。
【0188】
論評すべき最も重要な事実は、アトピー性皮膚炎の可能な予防または治療について、デキサメタゾンが、病変の指標に関して、または、皮下脂肪の増加に関して、いずれの有益な効果を生み出さなかったということであろう。Te PTERは、デキサメタゾンを使用するよりも、または、処置の不足した場合に関しても、さほど重大でない病変しかもたらさなかった。
【0189】
(オキサゾロンによって誘発された接触過敏症のモデルに対する保護)
接触過敏症、アトピー性皮膚炎、および、乾癬のような皮膚疾患は、皮膚の過剰増殖性の、および、炎症性の疾患を特徴とする。
【0190】
皮膚疾患の現在の処置は、グルココルチコイドおよび抗増殖性薬剤のような抗炎症剤の使用を含んでいる。この研究では、天然のポリフェノールの使用は、図22に示されるような皮膚炎の臨床的な改善をもたらすと言われている。
【0191】
皮膚疾患に対するPTERの効果は動物で行なわれた処置によって確立され、この処置は、耳の浮腫の予防においてオキサゾランを用いて測定される真皮の炎症との接触に対して同様の過敏症を示した。
【0192】
皮膚の免疫に関連する炎症性疾患を模倣したインビボのこの薬理学的試験の結果によると、病変に塗布された(オキサゾランの投与後に塗布された)特定のPTERにおけるポリフェノールは、オキサゾロンによって誘発された炎症の結果として炎症性の変化を防ぐことができるということが示唆されている。同様の結果はディプロゾンによって観察することができる。
【0193】
(実施例12:TPAによって誘発される乾癬に対する効果)
(乾癬における浮腫の研究)
皮膚上のTPAの塗布が血管拡張、白血球の浸潤、および、浮腫をもたらすため、組織の重量として皮下脂肪の変動だけでなく、図23に示されるように、皮膚の炎症の周囲長として測定することは面白い。
【0194】
手順全体にわたる皮下脂肪の増加を評価しながら(6日間連続で)、3つの異なる群を観察した。第1の群は、対照群と、デキサメタゾン(TPAを投与する30分前の0.5μモル/マウス)で処置した群とに対応し、処置全体を通じてこれらには違いはなく、このことは、デキサメタゾンが乾癬の進行を防いだことを示している。第2の群は、TPA、中空リポソームおよびResvによって形成された群であり、手順の少なくとも前半の間にわたって、その進化は浮腫の形成の増加と同様であった。
【0195】
そして、最後に、第3の群は、Pter、Quer、および、Pter+Querの群によって形成され、TPAの群全体で皮下脂肪の増加の重要な減少がみられ、図24に示されるように最初の投与から少なくとも24時間後は有意差があった。
【0196】
皮下脂肪の増加によって観察されるように、マウスの皮膚上へのTPAの塗布は、投与から24時間後の浮腫、非常に強い炎症をもたらす。引例における製品、すなわち、デキサメタゾン(0.5μモル/マウス)の、TPAの局所投与の30分前の塗布は、皮下脂肪の増加を有意に減少させた。
【0197】
同時に、PTER、QUER、および、その両方の組み合わせによる処置は、浮腫の出現を著しく減少させた。中空リポソーム(荷電させていない)の使用は浮腫の出現にまったく効果がなく、Pter、Quer、または、Pter+Querによって観察される効果はリポソームの組成によるものではなく、その代わりにポリフェノールの特定の効果によるものであったことを示しているということに注意することは重要である。この効果は、問題になっているポリフェノール、レスペラトロールで荷電されたリポソームとの比較で実証され、これは、TPAの群と比較して、皮下脂肪の増加に対するなんの効果を生まなかった。
【0198】
皮下脂肪がTPAの3度の投与後に比較される場合(巨視的レベルでの病変が明白である場合)、それは図25のように得られる。
【0199】
このとき、Pter、Quer、および、その両方の組み合わせを用いることが、TPAによって生成される炎症に対していかにして減少効果を生み出すのかということが明白であった。
【0200】
(病変の巨視的評価)
図26で示されるように、病変は異なる処置の差を定量化する目的で評価された。
【0201】
TPAの7度の投与の24時間後の病変の剥脱(excoritation)に応じて1つの数値が病変に与えられた。というのも、これが認められた唯一の変化であり、紅斑または潰瘍の兆候はまったくなかったからである。
【0202】
皮膚の鱗状の態様は0−3の段階で定量化され、0は何もなく、1は軽度であり、2は中程度であり、3は重度であり、そして、各群の媒体は、図2で示されるような炎症の程度を示した。
【0203】
それ自体でPTERを含むか、または、QUERと組み合わせてPTERを含む群だけが、剥脱または表皮剥離の指標を少し含む群であることが観察される。
【0204】
(病変の組織学的分析)
この分析は図28で例証される。
【0205】
組織学的に、内部部分(乾癬状の過形成(psoriasiform hyperplasia))の厚さをした乳頭間突起の伸張、乳頭の伸張と浮腫、(Kogojの)スポンジ状の角膜内の膿疱を含む乳頭上の(suprapapillary)の表皮萎縮、顆粒層の不足または低顆粒症(hypo granulosis)、不全角化、ムンロ(Munro)の表皮内微小膿瘍(intraepidermal microabscess)、拡張した、および、蛇行した乳頭毛細血管、血管周囲のリンパ組織球性(lymphohistiocytic)浸潤、および、わずかの好酸球と形質細胞がある。
【0206】
乾癬は、豊富な真珠のような白くて光沢のある表皮剥離を含む丘疹と落屑性紅斑の形をした病変によって臨床的に特徴付けられる慢性的な炎症性の皮膚病である。一般に、乾癬は増悪と寛解の周期により長期的に進化するが、その経過は注意深く取り組む必要がある。同じ患者内でもばらつきがあり得るため、一般的に定められた枠組みは存在しないが、様々な臨床的な記載があった。我々は、実験の間、または、病気の異なる進化の段階の間に、その多くを見ることができる。
【0207】
乾癬における表皮の過形成は、増殖段階での発芽細胞の数と、表皮での成長の分裂を特徴とする角化細胞の過剰増殖に伴うものであることが何年にもわたって知られてきた。有糸分裂の指標と臨床段階中の細胞の数の増加が検出されている。
【0208】
安定した乾癬病変の典型的な組織病理学的特徴は、「表皮の乾癬状過形成(epidermal psoriasiform hyperplasia)」(Lever’s Histopathology of the Skin. 10th edition)である。それは、底部で広く上方部分上で狭い乳頭間隆起を含む規則的な表皮肥厚を特徴とし、通常、乳頭上の表皮の菲薄化がある。
【0209】
我々のモデルでは、TPAを含む群における乾癬の誘発によって、この乳頭腫症が観察された。しかしながら、乳頭上の表皮の狭小化はなかった。同様に、不全角化角化症(hyperkeratosis parakeratosis)が観察された。
【0210】
処置で用いられなくなったマウスが切断されると、巨視的レベルで明瞭な病変の証拠はなにもなかった。ゆえに、剥脱のレベルが誤差につながりかねないため、我々はその値を分析しなかった。しかしながら、組織学的分析は皮膚が健康な皮膚ではないことを示した。したがって、徹底的にそれを分析すると、乾癬病変が退行期間に突入した際に、正常な角化(cronification)は回復する傾向にあり、不全角化は消え始め、さらに、表皮は減少(thin out)し始める。同様に、その形態が正常な皮膚のそれであるためのレベルに達しなかったが、乳頭腫症は消滅する。
【0211】
処置の異なる群を比較する際、デキサメタゾンで処置された群は乳頭腫症または不全角化のない非常に薄い表皮を示すことが観察された。幾つかの点で、皮脂腺に対する病変の証拠も存在した。
【0212】
PTERで処置された群に関連して、最も重要な違いは、乳頭腫症の兆候がまったくなかったが、過度の増殖による表皮肥厚は存在したということであった。そして、我々がTPAのみで処置した群と、中空リポソームで処置した群とを比較した場合、表皮肥厚はさほど目立たず、不全角化の場合と同じであった。
【0213】
これはPTERと同様の構造であるレスベラトロールで処置した群では生じなかった。なぜなら、この群では、PTERで処置した群におけるほど増殖と表皮肥厚が明白ではなかったためである。その上、様々な処置を比較すると、レスベラトロールで処置した群は、PTERで処置した群よりも、TPAで処置した群により似ている。
【0214】
同様に、QUERとPTERの組み合わせによって、PTERのみで見つかった表現型に類似した表現型が見つかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置で使用するための、随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩。
【請求項2】
皮膚癌の予防および/または処置で使用するための、請求項1に記載の、随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩。
【請求項3】
局所投与によって使用するための、請求項1または2のいずれかに記載の、随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩。
【請求項4】
皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置で使用するための、請求項1に記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩。
【請求項5】
皮膚癌の予防および/または処置で使用するための、請求項1に記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩。
【請求項6】
放射線への曝露によって引き起こされる皮膚の疾患の処置で使用するための、請求項1に記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩。
【請求項7】
皮膚病または乾癬の予防および/または処置で使用するための、請求項1に記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩。
【請求項8】
局所投与によって使用するための、請求項4乃至7のいずれかに記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩。
【請求項9】
皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置のための医薬組成物の製造のための、随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩の使用。
【請求項10】
皮膚癌の予防および/または処置のための医薬組成物の製造のための、請求項9に記載の、随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩の使用。
【請求項11】
局所投与用の医薬組成物の製造のための、請求項9または10のいずれかに記載の、随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩の使用。
【請求項12】
皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置のための医薬組成物の製造のための、請求項9に記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩の使用。
【請求項13】
皮膚癌の予防および/または処置のための医薬組成物の製造のための、請求項9に記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩の使用。
【請求項14】
放射線への曝露によって引き起こされる皮膚疾患の処置のための医薬組成物の製造のための、請求項9に記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩の使用。
【請求項15】
皮膚病または乾癬の予防および/または処置のための医薬組成物の製造のための、請求項9に記載のQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩の使用。
【請求項16】
局所投与用の医薬組成物の製造のための、請求項12乃至15のいずれかに記載の、随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その任意の許容可能な塩の使用。
【請求項17】
局所投与のための、随意にQUERと組み合わせたPTERを含む医薬組成物。
【請求項18】
PTERがQUERと組み合わせて製剤されることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
遮光剤または日焼け止めの製剤の形態で製剤されることを特徴とする請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
リポソームの形態で製剤されることを特徴とする請求項17に記載のPTERを含む医薬組成物。
【請求項21】
以下の工程を含むリポソーム製剤を製造するためのプロセス。
a)活性化合物PTERまたはその任意の許容可能な塩、および、レシチンを有機溶媒中に溶解させる工程、
b)溶媒を蒸発させる工程、
c)PBSバッファーを添加する工程、
d)形成されたリポソームを収集し超音波処理する工程、
e)乳化安定剤、好ましくはカルボマー、さらに好ましくはカーボポールで1:1に希釈する工程、
f)随意に防腐剤、好ましくはフェノニプを添加する工程。
【請求項22】
QUERまたはその任意の許容可能な塩が工程(a)で同様に溶解させられることを特徴とする請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その許容可能な塩の投与を含む、皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置のための方法。
【請求項24】
随意にQUERと組み合わせたPTER、または、その許容可能な塩の投与を含む、皮膚癌の予防および/または処置のための、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
QUERと組み合わせたPTER、または、その許容可能な塩の投与を含む、皮膚の疾患、傷害、または損傷の予防および/または処置のための、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
QUERと組み合わせたPTER、または、その許容可能な塩の投与を含む、皮膚癌の予防および/または処置のための、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
QUERと組み合わせたPTER、または、その許容可能な塩の投与を含む、放射線への曝露によって引き起こされる皮膚の疾患の処置のための、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
QUERと組み合わせたPTER、または、その許容可能な塩の投与を含む、皮膚病または乾癬の予防および/または処置のための、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
局所投与によって適用される請求項23乃至28のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図22】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2013−509385(P2013−509385A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535862(P2012−535862)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066544
【国際公開番号】WO2011/051483
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(512112954)グリーン モールキュラー,エス.エル (1)
【Fターム(参考)】