説明

皮膚の老化に対する食事用、医療用若しくは美容用組成物へのスペルミン及び/又はスペルミジンの使用

本発明は、活性成分としてのスペルミン及びスペルミジンの、食事用、医薬用又は美容用の組成物の調製への使用に関するものであって、皮膚及び皮膚の付随物の健康及び美容用にヒトへ適用するものに関する。また、ヒトに投与する医薬用、食事用又は美容用の関連する組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミン類であるいわゆるスペルミン(N,N’−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチレンジアミン)及びスペルミジン(N−(3−アミノプロピル)テトラメチレンジアミン)に係る新規の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ポリアミン類に属する化合物が細胞の成長、分裂及び分化並びに動物組織の増殖の生物学的な機構の調節において決定的な役割を実行することは、文献的に知られている。これらのポリアミン類としては、プトレシン、スペルミン及びスペルミジン等が本質的に挙げられる。特に、後2者は、ヒト精子において最初に発見されたことから、そのように名付けられている。実際、スペルミジンは、事実上、全ての体液(血液、唾液、涙、乳)中に存在する。続いて、スペルミジンは、動物由来(肉、魚、卵、牛乳、チーズ)や植物由来(果実、野菜)の両方で多くの食品にも見出されている。その濃度は、乳児に特に重要な機能を発揮するヒトの乳において特に高い(24時間の間、平均して約600μg)。乳児において、事実、消化管の粘膜は、完全に形成されておらず、乳に含まれるスペルミジンは、消化器の上皮細胞及び小腸の粘膜の成長を惹起する。
【0003】
スペルミンは、スペルミジンに生合成的に由来しており、特定のアミノプロピルラジカル供与酵素の作用を介して共通の前駆体であるプトレシンを最初にN−モノアミノプロピル誘導体(スペルミジン)に変換し続いてN,N−ジアミノプロピル対称誘導体(スペルミン)へと変換する。
【0004】
スペルミジン及びスペルミンは、従って、細胞の成長及び増殖因子として重要である。
【0005】
本発明によると、経口的か、皮膚に適用するかによりスペルミン又はスペルミジンを有する調製物が細胞の成長及び再生を伴って皮膚や、毛髪、爪などの皮膚付随物の細胞を刺激することが、驚くべきことに見出された。この結果は、皮膚及び皮膚の付随物に係る外観及び機能性の両方を向上させ老化に対抗する効果である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、皮膚及び皮膚付随物に係る健康及び美容を保ち、且つ老化に対抗することを目的として、ヒトの食事用、医薬用又は美容用の組成物の調製における活性成分として、ポリアミン類であるスペルミン及びスペルミジン並びにこれらの塩の使用に関する。
【0007】
また、本発明の目的は、皮膚及び皮膚付随物の健康及び美容を保持する、ヒトへの医薬用、食事用又は美容用の組成物に係り、活性成分として、スペルミン及びスペルミジン並びにこれらの塩を有することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による組成物は、活性成分として、スペルミン、スペルミジン及び/又はこれらの塩を有してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の特徴及び利点の理解をより深めるため、本発明に係る検討の詳細について、以下に述べる。
【0010】
(臨床検討)
この検討において、健康の基礎的指標並びに皮膚及び皮膚付随物の機能のいくつかが同定された。検討される物質の効果を検証するため、特に重要と考えられる以下のパラメーターについて、同定し、評価した。
【0011】
水分含量
弾力性
細胞の再生
【0012】
(水分含量及び弾力性に係る評価)
承諾済みの20人の被検者(18〜55歳)に対してin vivoで使用することにより、本発明による製品の効果について評価した。
【0013】
各被検者の前腕に3つの領域を選択した:
その一は、試験対象であるスペルミンを有する製品を適用する領域;
その一は、試験対象であるスペルミンを有さない製品を適用する領域;及び
その一は、コントロール領域。
【0014】
上述の手法に従い、1ヶ月の間一日当たり2回の割合で、適用される被検者に、本発明による局所用の組成物(スペルミジンを有する組成物)及びスペルミジンを有さない製品(プラセボ)を投与する。
【0015】
試験の開始及び終期に、上述の効果に係る以下の機器を用いた評価を行った。
【0016】
角層水分量計(corneometer)による皮膚の水分含量
肌弾力計(cutometer)による皮膚の弾力性
【0017】
各領域(製品、プラセボ、コントロール)に関し、試験開始時に記録した値と、試験の終期に得たデータとを、適当な統計学的評価により、比較した。製品で処理した領域で得た変動と、プラセボを適用した領域で記録した変動とを、さらに比較した。
【0018】
その結果、製品で処置した後に観察された平均値とプラセボを処置した後に観察された対応する値との間に、統計学的な有意差を以て、皮膚の水分含量が増加した。角層水分量計で測定した静電容量で同定した水分含量の程度は、高い統計学的有意差を以て(p<0.001)、10%以上増加した。
【0019】
肌弾力計で記録した値は、処置の前後における弾力性の値の間及びプラセボによる効果も考慮に入れた上で、統計学的有意差(+20%、p<0.001)で、増加した。
【0020】
(細胞再生に関する評価)
各被検者の前腕に3つの領域を選択し、ワセリンの5%ダンシルクロライド懸濁液をそれぞれに適用した(20±4時間の間、密封包帯した)。後日、パッチを除去し、3つの皮膚の領域に石英製UVランプを照射して、ダンシルクロライドで誘導された蛍光強度を測定した。参照数値スケールを用いて、各スポットにおける強度にスコアを割り当てた。
【0021】
その後、以下の要領で、被検者に本発明による組成物及びプラセボを適用した。
【0022】
スペルミジンを有する製品を適用する第1の領域;
スペルミジンを有さない製品を適用する第2の領域;及び
製品を適用しないコントロール領域としての第3の領域。
【0023】
被検者には、一日当たり2回の割合でサンプルを適用し、上述の蛍光のスポットが完全に消失するまで、被検者を定期的に呼び出した。この試験の開始及び終期において、対応する2つの領域を選択し、D−Squame(透明の接着ディスク)を用いて、皮膚表面の角質細胞の量を測定した。
【0024】
細胞再生の効果は、コントロール領域に対して、(製品又はプラセボで)処理した領域における蛍光強度を消失させるのに必要な日数として、示す。その結果、統計分析により、20%のオーダー(p<0.01)で、細胞再生の期間が短縮されたことが判明した。
【0025】
(例)
以下、本発明による組成物として、限定されない例を示す。
【0026】
(例1)
皮膚及び爪の健康及び美容のために経口的に使用する食事用組成物
(錠剤)
各錠剤には、
メチルスルフォニルメタン 200mg
スペルミジン・三塩酸 0.25mg
ビタミンC 61.86mg
ビタミンE(dl−αトコフェロール) 32.89mg
ビタミンB6(ピリドキシン) 3.65mg
d−パントテン酸カルシウム 4mg
d−ビオチン 0.23mg
亜鉛−アミノ酸キレート 37.5mg
銅−アミノ酸キレート 12mg
マンガン−アミノ酸キレート 22.5mg
セレニウムイースト(2000μg/g) 13.75mg
(selenium yeast)
微結晶セルロース 120mg
第二リン酸カルシウム・二水和物 98.89mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 52.5mg
ステアリン酸マグネシウム 8mg
二酸化珪素 3.5mg
を有する。
【0027】
(例2)
放射線照射された皮膚の健康及び美容のため経口的に使用する食事用組成物
各錠剤には、
スペルミジン・三塩酸 0.25mg
パントテン酸カルシウム 4mg
ユビデカレノン 10mg
ビタミンC 62mg
ビタミンE(dl−αトコフェロール) 33mg
βカロテン 36mg
ビタミンB6(ピリドキシン) 3.65mg
d−ビオチン 0.225mg
亜鉛−アミノ酸キレート 37.5mg
銅−アミノ酸キレート 12mg
マンガン−アミノ酸キレート 17.5mg
第二リン酸カルシウム・二水和物 120mg
微結晶性セルロース 259.38mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 56mg
ステアリン酸マグネシウム 7mg
二酸化珪素 1.75mg
を有する。
【0028】
(例3)
局所的に皮膚を処理するための美容用組成物
100mLのエマルジョン中に、
スペルミジン・三塩酸 0.02g
Emulgade SE 4.5g
(ステアリン酸グリセリル、セテアレス−20、セテアレス−12、セテアリルアルコール、パルミチン酸セチル)
セテアレス 201g
ココ−カプロン酸/カプリン酸 5g
ジカプリリルエーテル 5g
水 適量
を有する。
【0029】
(例4)
100mLのローション中、
スペルミジン・三塩酸 0.01g
Emulgade SE 3.9g
(ステアリン酸グリセリル、セテアレス−20、セテアレス−12、セテアリルアルコール、パルミチン酸セチル)
セテアレス 203.1g
ココ−カプロン酸/カプリン酸 7g
オクチルケイ皮酸メトキシ 4g
イソアミルケイ皮酸メトキシ 6g
ベンゾフェノン−3 2g
トコフェロール 0.5g
グリセロール 5g
保存料、香料 適量
水 64.5g
を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
老化を防止するように、皮膚及び皮膚付随物の健康及び美容のためヒトにおいて食事用、医薬用又は美容用に使用する組成物の調製への、活性本体としてのスペルミン及び/又はスペルミジン並びにこれらの塩の使用。
【請求項2】
水分含量、弾力性及び細胞再生のうち少なくとも1つのヒトの皮膚における特性を向上させる、ヒトにおいて食事用、医薬用又は美容用に使用する組成物の調製への、活性本体としてのスペルミン及び/又はスペルミジン並びにこれらの塩の使用。
【請求項3】
皮膚及び皮膚付随物の健康及び美容のため、ヒトに投与する医薬用、食事用又は美容用組成物であって、当該組成物は、活性本体として、スペルミン若しくはスペルミジン又はこれらの塩のいずれかを有することを特徴とする組成物。
【請求項4】
水分含量、弾力性及び細胞再生のうち少なくとも1つのヒトの皮膚における特性を向上させるように、皮膚及び皮膚付随物の健康及び美容のため、ヒトに投与する医薬用、食事用又は美容用組成物であって、当該組成物は、活性本体として、スペルミン若しくはスペルミジン又はこれらの塩のいずれかを有することを特徴とする組成物。
【請求項5】
メチルスルフォニルメタン又はメチオニン、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB6、d−パントテン酸カルシウム、d−ビオチン、亜鉛(アミノ酸キレートとして)、銅(アミノ酸キレートとして)、マンガン(アミノ酸キレートとして)及び有機セレンを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
200mgのメチルスルフォニルメタン、0.25〜0.5mgのスペルミジン三塩酸、60〜90mgのビタミンC、33mgのビタミンE(dl−αトコフェロール)、3.7mgのビタミンB6、4mgのd−パントテン酸カルシウム、0.23mgのビオチン、7.5mgの亜鉛(アミノ酸キレートとして)、1.25mgの銅(アミノ酸キレートとして)、2.25mgのマンガン(アミノ酸キレートとして)及び0.03mgのセレン(セレン酵母として)を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項7】
経口投与に適することを特徴とする請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項8】
ローション又はクリームなどの局所投与に適することを特徴とする請求項3又は4に記載の組成物。


【公表番号】特表2007−500678(P2007−500678A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521542(P2006−521542)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008572
【国際公開番号】WO2005/013932
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(504244025)ギウリアニ ソシエタ ペル アチオニ (7)
【Fターム(参考)】