説明

皮膚の評価方法及び皮膚の評価システム

【課題】クベルカムンク理論を用いて、科学的に妥当なレベルで皮膚内部色素濃度を推定し、さらに角層の状態も把握可能とする。
【解決手段】皮膚の分光反射率の推定式として次式(1)を使用し、


角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか一つ以上をパラメータとして皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出し、該推定値Rest(λ)と皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差が規定値よりも小さくなる、または差が最小になる推定値Rest(λ)を求め、その推定値Rest(λ)の算出に用いたパラメータで皮膚を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クベルカムンク理論を用いて、皮膚内部色素濃度と角層の状態、および表皮や真皮の厚みを推定する皮膚の評価方法及び皮膚の評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚を表皮、真皮、皮下組織の3層構造ととらえてクベルカムンクの理論により皮膚の分光反射率の式をたて、皮膚のメラニン量とヘモグロビン量を推定する方法が知られている(特開2010-51589)。
【0003】
しかしながら、クベルカムンク理論を用いて皮膚内部色素濃度を推定する従来の方法では、推定精度が低いので推定値が必ずしも科学的に妥当なものとはいえず、また、角層の状態を把握することもできない。そのため、皮膚内部色素濃度の推定値に基づいて複数の試料を相対的に対比することはできても、推定された皮膚内部色素濃度の絶対値に基づいて、その皮膚に適した基礎化粧料を選択することができず、基礎化粧の方法をアドバイスすることもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-51589
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来技術に対し、本発明は、クベルカムンク理論を用いて皮膚内部色素濃度を推定するにあたり、科学的に妥当なレベルまで推定精度をあげること、即ち、個々の皮膚内部色素濃度を、計測手法が確立している計測機器で計測する場合とほぼ同じ程度の計測値を取得できること、また、角層の状態を把握できるようにすることを目的とし、さらに、推定された皮膚内部色素濃度や角層の状態に基づいて、当該皮膚に適した基礎化粧料を選択したり、基礎化粧料の方法をアドバイスできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、クベルカムンク理論を用いて皮膚内部色素濃度を推定する従来の方法において推定精度が低いのは、角層の影響が考慮されていないためであること、クベルカムンク理論を適用する皮膚の光学モデルに角層を含め、皮膚の分光反射率の推定式として、角層の分光透過率と、角層表面と空気層との間の境界面の反射率(以下,角層表面の境界面反射率という)を含む特定の式を使用することにより、従来に比して著しく高い精度で皮膚内部色素濃度を求められ、さらに角層の分光透過率も求められることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、第1に、本発明は、皮膚の分光反射率の推定式として次式(1)を使用し、
【0008】
【数1】

(式中、
λは可視光波長、
1は角層表面の境界面反射率、
sc(λ)は、角層の分光透過率、
R’(λ)は、クベルカムンク理論に基づく表皮以下の皮膚の分光反射率の推定式であって、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みをパラメータとして有する。)
式(1)において、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか一つ以上をパラメータとして皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出し、該推定値Rest(λ)と皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差が規定値よりも小さくなる、または差が最小となる推定値Rest(λ)を求め、そのときの推定値Rest(λ)の算出に用いたパラメータとして前記パラメータの1つ以上を求める皮膚の評価方法を提供する。
【0009】
第2に、本発明は、化粧料の適用前後の皮膚について、上述の評価方法で皮膚内部色素濃度、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上を推定し、化粧料の適用前後の推定値の変化に基づいて化粧料の作用を評価する化粧料の評価方法を提供する。
【0010】
第3に、本発明は、被験者の皮膚について、上述の皮膚の評価方法によって求められた角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上に基づいて化粧料を被験者に推奨する化粧料の推奨方法を提供する。
【0011】
第4に、本発明は、皮膚の分光反射率に基づいた角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上を推定する皮膚の評価システムであって、
皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)の入力部、及び演算手段を備え、
演算手段が、皮膚の分光反射率の推定式として次式(1)を使用し、
【0012】
【数2】


(式中、
1は角層表面の境界面反射率、
sc(λ)は、角層の分光透過率、
R’(λ)は、クベルカムンク理論に基づいた表皮以下の皮膚の分光反射率の推定式であって、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みをパラメータとして有する。)
式(1)において、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか一つ以上をパラメータとして皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出し、該推定値Rest(λ)と皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差が規定値よりも小さくなる、または差が最小となる推定値Rest(λ)を求め、そのときの推定値Rest(λ)の算出に用いたパラメータとして前記パラメータの1つ以上を出力する皮膚の評価システムを提供する。
【0013】
第5に、本発明は、上述の皮膚の評価システムにおける演算装置が備えるコンピュータプログラムであって、
次式(1)による皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上をパラメータとして算出する工程、
【0014】
【数3】


(式中、
1は角層表面の境界面反射率、
sc(λ)は、角層の分光透過率、
R’(λ)は、クベルカムンク理論に基づいた表皮以下の皮膚の分光反射率の推定式であって、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みをパラメータとして有する。)
上記皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)と、予め入力された皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差を算出する工程、
該差が規定値よりも小さくなる、または差が最小となる推定値Rest(λ)を求める工程、
その推定値Rest(λ)の算出に用いたパラメータを出力する工程
を含むコンピュータプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の皮膚の評価方法によれば、クベルカムンク理論を用いて皮膚内部色素濃度を推定するにあたり、クベルカムンク理論を適用する皮膚の光学モデルに角層を含め、皮膚の分光反射率の推定式として、角層の分光透過率と、角層表面と空気層との境界面反射率を含む特定の式を使用するので、科学的に妥当なレベルの推定精度で、皮膚内部色素濃度(例えば、表皮のメラニン、真皮の酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、ビリルビン、カロチンなど)を求めることができ、さらに角層の分光透過率や表皮と真皮の厚み等も求めることができる。
【0016】
角層の分光透過率には、角層の水分含量などが反映され、表皮および真皮の厚みには、加齢変化や肌の代謝状態が反映される。
【0017】
したがって、本発明は、基礎化粧料の美白効果の評価、基礎化粧料の開発、顧客への化粧方法のアドバイス等の美容目的で使用する皮膚もしくは化粧料の評価方法又は評価ツールとして有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の皮膚の評価方法が基とする皮膚の光学モデルの説明図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例の皮膚の評価方法のフローチャートである。
【図3】図3は、本発明の一実施例の皮膚の評価システムのブロック図である。
【図4】図4は、実施例で求めた、酸化ヘモグロビン濃度の推定値と酸化ヘモグロビン濃度の実測値との散布図である。
【図5】図5は、実施例で求めた、皮膚の色素沈着部位と正常部位におけるメラニン濃度の推定値のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
図1は、クベルカムンク理論を用いて皮膚の分光反射率を推定するにあたり、本発明の皮膚の評価方法が基とする光学モデルの説明図である。
【0020】
同図に示した皮膚の分光反射率の推定式Rest(λ)として、本発明では次式(1)を使用する。
【0021】
【数4】


(式中、
λは可視光波長、
1は角層表面の境界面反射率、
sc(λ)は、角層の分光透過率、
R’(λ)は、クベルカムンク理論に基づく表皮以下の皮膚の分光反射率の推定式であって、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みをパラメータとして有する。)
【0022】
この式(1)は、皮膚の光学モデルとクベルカムンク理論に基づいて本発明者が導出した皮膚の分光反射率の推定式である。従来のクベルカムンク理論に基づく皮膚の分光反射率の推定式では、特許文献1に示されているように、角層の影響が考慮されていない。これは、角層が、皮膚表面を形成する層であり、皮膚構造を構成する表皮や真皮に比して著しく薄く、角層にはメラニン等の皮膚内部色素も含まれていないためと考えられる。
【0023】
しかしながら、本発明者は、角層の境界面反射率k1や角層の分光透過率tsc(λ)によって、皮膚の分光反射率が大きく影響を受けることを見出し、さらに、クベルカムンク理論に基づいて皮膚の分光反射率を推定する場合に、これらを考慮することにより分光反射率の推定精度が著しく向上することを見出した。これは、次のような理由による。即ち、一般に、境界面反射率k1は、媒質の屈折率を1、反射する面の屈折率をnとすると、
1=(n−1)2/(n+1)2
で表され、角層の境界面反射率k1も、角層の屈折率をnとするとこの式によって変化するが、境界面反射率k1は角層の表面粗さにも依存する。また、角層の屈折率nや角層の分光透過率tsc(λ)および表面粗さは、角層内部の水分や脂質の量や割合によって変動する。さらに、角層の肥厚は角層における水分や脂質の保持状態や、ターンオーバーが上手く行われているか否かによって異なる。したがって、角層と空気層との境界面における境界面反射率k1や分光透過率tsc(λ)は被験者ごとに異なり、皮膚の分光反射率に影響する重要なパラメータになると考えられる。なお、一般的には角層中には色素が存在しないといわれているため、角層の分光透過率tsc(λ)は可視域(約400〜700nmの波長領域)で一定値とすることができ、一定値とすることが式を簡単にする点から望ましい。
【0024】
式(1)において、R’(λ)は、クベルカムンク理論に基づく表皮以下の皮膚の分光反射率の推定式であり、例えば、表皮以下の皮膚として、表皮、真皮及び皮下組織の3層の積層構造を考えるとき、R’(λ)は次式(1b)で表される。なお、表皮以下の皮膚の光学モデルとして、表皮及び真皮の2層の積層構造を考えるときもこれに準じてR’(λ)を定めることができるが、皮膚の内部色素を推定する際に重要な分光反射率の再現精度を向上させる点から、表皮、真皮及び皮下組織の3層の積層構造を考えることが好ましい。
【0025】
【数5】

(式(1b)中、
epi(λ)は表皮の分光反射率で次式(2)で表され、
【0026】
【数6】

epi(λ)は表皮の分光透過率で次式(3)で表され、
【0027】
【数7】

dh(λ)は真皮と皮下組織の2層分の分光反射率で次式(4)で表され、
【0028】
【数8】

dermis(λ)は真皮の分光反射率で次式(5)で表され、
【0029】
【数9】

dermis(λ)は真皮の分光透過率で次式(6)で表され、
【0030】
【数10】

ただし、
d(λ)=(Sd (λ)+Kd (λ))/Sd (λ)
e(λ)=(Se (λ)+Ke (λ))/Se (λ)
d(λ)=(ad(λ)2−1)1/2
e(λ)=(ae(λ)2−1)1/2
Ddは、真皮厚み
Deは、表皮厚み
d (λ)は、真皮吸収係数
e (λ)は、表皮吸収係数
d(λ)は、真皮散乱係数
e(λ)は、表皮散乱係数であり、
h(λ)は皮下組織の分光反射率である。皮下組織はほぼ白色であることから、式を簡単にする点でRh(λ)=1.0とすることが望ましい。)
【0031】
なお、これらの式(1b)〜式(6)の基となった式はP.Kubelka, Journal of the Optical Society of America, vol38, no.5, pp448-457,1948に記載されている。
【0032】
また、上述の式(2)、(3)中の
e(λ)=(Se(λ)+Ke(λ))/Se (λ)
のパラメータとなっている表皮吸収係数Ke (λ)は、表皮に含まれるメラニン等の色素の吸収によるもので、次式(7)で表わされる。
【0033】
【数11】

(式中(7)、εs1(λ)は、表皮に存在する第1の皮膚内部色素のモル吸光係数で、ws1は、その皮膚内部色素のモル濃度であり、εs2(λ)は第2の皮膚内部色素のモル吸光係数で、ws2は、その皮膚内部色素のモル濃度であり、表皮にさらに異なる色素が存在する場合、同様に式(7)にモル吸光係数とモル濃度の積が加算される。)
【0034】
上述の式(5)、(6)中の
d(λ)=(Sd(λ)+Kd(λ))/Sd(λ)
のパラメータとなっている真皮吸収係数Kd(λ)は、真皮中に含まれる酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、ビリルビン、カロチン等の色素の吸収によるもので、次式(8)で表わされる。
【0035】
【数12】

(式(8)中、εp1(λ)は、真皮に存在する第1の皮膚内部色素のモル吸光係数で、wp1は、その皮膚内部色素のモル濃度であり、εp2(λ)は第2の皮膚内部色素のモル吸光係数で,wp2は、その皮膚内部色素のモル濃度であり、真皮にさらに異なる色素が存在する場合、同様に式(8)にモル吸光係数とモル濃度の積が加算される。)
【0036】
なお、分子量が既知の皮膚内部色素では、モル濃度に分子量を掛けて、質量濃度に変換することができるため、質量濃度から適宜モル濃度に変換することで、表皮吸収係数Ke(λ)、真皮吸収係数Kd(λ)を求めることもできる。従って、質量濃度等のモル濃度に変換可能なものであれば、表皮吸収係数Ke(λ)、真皮吸収係数Kd(λ)を求めることができるため、モル濃度に変換可能な濃度を、以下、単に「濃度」と記載する。
【0037】
本発明の皮膚の評価方法においては、上述の式(1)中の角層の分光透過率tsc(λ)、角層表面の境界面反射率k1、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか一つ以上をパラメータとして皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出し、該推定値Rest(λ)と皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差が規定値よりも小さくなる、または差が最小となるパラメータとして前記パラメータの1つ以上を求め、そうして得られた角層の分光透過率tsc(λ)、角層表面の境界面反射率k1、皮膚内部色素濃度等から皮膚を評価する。
【0038】
以下、本発明の皮膚の評価方法の具体的な処理の流れを、本発明の一つの実施例のフローチャート(図2)、及びこれを実施する皮膚の評価システムのブロック図(図3)を参照して説明する。
【0039】
この評価システム1は、皮膚の分光反射率の実測値の入力部2、及び演算手段3を備え、演算手段3は記憶部3Aと計算部3Bを有する。
【0040】
入力部2には、積分球方式の分光測色計、非接触の分光放射輝度計、マルチバンドカメラ等の分光反射率の実測を可能とする分光反射率実測装置が接続される。あるいは、文献などにより既知となっている分光反射率のデータ入力を可能とする入力端子が設けられる。
【0041】
演算手段3の記憶部3Aは、皮膚の分光反射率の推定式、皮膚の分光反射率の実測値又はその入力値、及び各パラメータの入力値又は算出値等を記憶する。
【0042】
また、演算手段3の計算部3Bは、皮膚の分光反射率の推定式(1)を使用し、皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上をパラメータとして算出する工程、
上記皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)と、予め入力された皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差を算出する工程、
該差が規定値よりも小さくなる、または差が最小となる推定値Rest(λ)を求める工程、
該差が規定値よりも小さくなる、または差が最小となる推定値Rest(λ)を算出するために用いたパラメータを出力する工程
を備えたプログラムを有し、このプログラムにより皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)と皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)との差が規定値よりも小さくなる、または差が最小となるパラメータを出力する。
なお、このような演算手段3の計算機能は、パーソナルコンピュータに、市販の関数演算ソフトを組み込むことにより得ることができる。
【0043】
本実施例では、まず、皮膚の分光反射率を推定する式(1)中のR’(λ)が、表皮、真皮及び皮下組織の3層の積層構造の分光反射率を推定する上述の式(1b)で表され、式(1b)中の表皮の分光反射率Repi(λ)が上述の式(2)で表され、式(1b)中の表皮の分光透過率Tepi(λ)が上述の式(3)で表され、式(1)中の真皮と皮下組織の2層分の分光反射率Rdh(λ)が上述の式(4)で表され、式(4)中の真皮の分光反射率Rdermis(λ)が上述の式(5)で表されるとし、式(4)中の真皮の分光透過率Tdermis(λ)が上述の式(6)で表されるとする。
【0044】
また、表皮中の内部色素としてメラニンを仮定し、真皮中の内部色素として、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、ビリルビン、カロチンを仮定する。
【0045】
そこで、式(1)中のパラメータとして、次のP0〜P8を考え、これらを演算手段3にパラメータとして登録する。
P0:酸化ヘモグロビンの濃度(Whemo)( 式(8) )
P1:還元ヘモグロビンの濃度(Wdhemo)( 式(8) )
P2:ビリルビンの濃度(Wbill)( 式(8) )
P3:カロチンの濃度(Wcaro )( 式(8) )
P4:メラニンの濃度(Wmela )( 式(8) )
P5:真皮の厚み(Dd )( 式(6) )
P6:表皮の厚み(De )( 式(6) )
P7:角層の分光透過率(tsc(λ))( 式(1) )
P8:境界面反射率(k1)( 式(1) )
【0046】
また、本実施例においては、表1に示した内部色素のモル吸光係数、真皮の散乱係数Sd(λ)及び表皮の散乱係数Se(λ)として文献値を採用し、これらの数値を演算手段3に入力しておく。なお、皮膚内部色素のモル吸光係数の文献値としては、例えばOregon Medical Laser Centerの公開データを使用することができ、散乱係数の文献値としてはAndersonらの報告データを使用することができる。
【0047】
【表1】

【0048】
図2に示した皮膚の評価方法の流れの概略としては、まず、被験者の皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)を取得する(第1工程)と共に、式(1)において、上述のパラメータP0〜P8を演算手段3に適宜入力して皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出する(第2工程)。この場合、各パラメータP0〜P8の入力値を変え、それぞれについて皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出する。第3工程では、皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)と推定値Rest(λ)との差を算出し、これが規定値よりも小さくなる,または最小となるパラメータP0〜P8を求め、そうして得られたパラメータP0〜P8の数値を、被験者の皮膚におけるパラメータP0〜P8の数値であると決定し、その数値に基づいて皮膚を評価する。
【0049】
第1工程で取得する、被験者の皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)は、可視光波長(400〜700nm)で計測されたものとする。かかる実測値は、積分球方式の分光測色計、非接触の分光放射輝度計によるものだけでなく、マルチバンドカメラやカメラ画像の画素値RGB、CIE L*a*b*といった表色値から近似して計算された分光反射率でもよい。
【0050】
第2工程の、皮膚の分光反射率の推定値の算出工程においては、まず、演算手段3にパラメータP0〜P8の初期値を入力する。この初期値は、医学論文や生体分析等から得られる一般的な値を入力する。例えば、ヘモグロビンの濃度P0の初期値(質量濃度)として8.0g/dLを入力する。
【0051】
次に、入力したパラメータP0(酸化ヘモグロビン濃度Whemo)、P1(還元ヘモグロビン濃度Wdhemo)、P2(ビリルビン濃度Wbill)、P3(カロチン濃度Wcaro)の初期値、これらの内部色素のモル吸光係数の既定値、パラメータP5(真皮の厚みDd)の初期値、真皮散乱係数Sd(λ)の既定値を用いて、上述の式(5)により真皮の分光反射率Rdermis(λ)を算出し、上述の式(6)により真皮の分光透過率Tdermis(λ)を算出する。
そしてこれらの算出値を用いて上述の式(4)により真皮と皮下組織の2層分の分光反射率Rdh(λ)を求める。
【0052】
一方、入力したパラメータP4(メラニン濃度Wmela)の初期値、メラニンのモル吸光係数の既定値、パラメータP6(表皮の厚みDe)の初期値、表皮の表皮散乱係数Se(λ)の既定値を用いて、上述の式(2)により表皮の分光反射率Repi(λ)を算出し、上述の式(3)により表皮の分光透過率Tepi(λ)を算出する。
【0053】
そして、これら表皮の分光反射率Repi(λ)と表皮の分光透過率Tepi(λ)、及び先に算出した真皮と皮下組織の2層分の分光反射率Rdh(λ)を用いて上述の式(1b)により、皮膚の表皮、真皮及び皮下組織の3層の分光反射率R’(λ)を求める。
【0054】
得られた3層の分光反射率R’(λ)と、パラメータの初期値として入力した角層の分光透過率P7及び角層表面の境界面反射率P8から、式(1)により被験者の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出する。
【0055】
次に、こうして算出された分光反射率の推定値Rest(λ)と、被験者の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)とを対比するために,推定値Rest(λ)と、被験者の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差として、誤差(あるいは類似度)を算出する。
【0056】
算出された誤差が規定値より小さくなる、または、誤差がゼロで推定値と実測値が完全一致した場合には、その推定値の算出に用いたパラメータP0〜P8を被験者の皮膚の内部情報と決定する。一方、算出された誤差が規定値より大きい場合は、パラメータP0〜P8の値をさらに変化させて、再度分光反射率の推定値Rest(λ)を算出し、得られた算出値と分光反射率の実測値との誤差を算出する。この誤差が規定値よりも小さくなるか、誤差が最小となるまでパラメータP0〜P8の変更と誤差の算出を繰り返す。こうして規定値よりも小さくなる、または誤差がほぼゼロになる推定値Rest(λ)を与えるパラメータP0〜P8を決定し、この値を被験者の皮膚内部情報と決定する。ここで、規定値は、もし、算出された誤差が色差ΔEabであれば、色差ΔEabが好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下程度になるように設定し、また誤差を二乗平均平方根誤差RMSEとして求めた場合は、色差が5.0以下程度に該当するRMSE値として定めることが好ましい。なお、誤差が最小となる場合に代えて誤差が規定値よりも小さくなる場合を求めることにより、計算時間を短縮することが可能となる。
【0057】
パラメータP0〜P8の数値を変えて分光反射率の推定値の算出を繰り返し、被験者の皮膚の内部情報と決定してよいパラメータP0〜P8を見出す手法としては、最小二乗法などの最適化手法を用いることができる。
【0058】
なお、上述の実施例では、表1に示した内部色素のモル吸光係数として文献値を使用するとしたが、これらをパラメータとして変化させて被験者の分光反射率の推定値を算出してもよい。
【0059】
本発明では、式(1)において、角層の分光透過率tsc(λ)、角層表面の境界面反射率k1、皮膚内部色素濃度(Whemo、Wdhemo、Wbill、Wcaro、Wmela等)、表皮の厚みDe及び真皮の厚みDdのいずれか一つ以上をパラメータとすればよく、いずれをパラメータとするかについては特に制限はない。ただし、美容上の皮膚の評価ファクターとして有用だが、従来科学的に妥当な計測値を得られていない皮膚内部色素濃度、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率をパラメータとし、それらの数値を決定すると本発明の意義が高まる。
【0060】
本発明の皮膚の評価方法は、以上のようにして求めたパラメータの数値に基づいて皮膚を美容目的で評価する方法である。例えば、パラメータとして、皮膚内部色素濃度を求めると、得られた内部色素濃度の数値は科学的に妥当な数値となるから、皮膚の表皮あるいは真皮における内部色素の量や状態を用いて美容上評価することができる。また、パラメータとして角層の分光透過率や角層表面の境界面反射率を得ると、角層における水分や油分の保持状態、ターンオーバーの良否を評価することができる。パラメータとして表皮の厚みや真皮の厚みを得ると、皮膚の代謝状態や、加齢に伴う変化を評価することができる。
【0061】
本発明の化粧料の評価方法は、化粧料の適用前後の皮膚内部色素濃度、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上を、本発明の皮膚の評価方法により推定し、化粧料の適用前後の推定値の変化に基づいて化粧料の作用を評価する方法である。上述のように、本発明の皮膚の評価方法によれば、皮膚内部色素濃度、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、表皮の厚み、真皮の厚み等を精度高く求めることができるから、化粧料の適用前後のそれらの数値を比較することにより、化粧料の作用も正確に評価することができる。例えば、美白化粧料の適用前後でメラニン濃度の変化を調べることにより、その化粧料の美白作用の有無、あるいは美白作用の程度を評価することができ、保湿化粧料の適用の前後で角層の分光透過率の変化を調べることにより、その化粧料の保湿作用を評価することができる。
【0062】
本発明の化粧料の推奨方法は、被験者の角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上を本発明の皮膚の評価方法により求め、得られた数値に基づいて化粧料を被験者に推奨する方法である。本発明の皮膚の評価方法を用いると、皮膚内部色素濃度、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、表皮の厚み、真皮の厚み等を正確に求めることができるから、被験者の皮膚に適用することを推奨すべき化粧料も選択できるようになる。この場合、予め、多数の被験者について、種々の化粧料の適用前後の皮膚内部色素濃度、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、表皮の厚み、真皮の厚み等を求め、これらの数値の特徴的なパターンから皮膚の状態を識別し、各パターンの皮膚に適した化粧料を調べておく。一方、当該被験者の皮膚のパターンと、予め調べておいた皮膚のパターンとそれに適した化粧料との関係から、当該被験者の皮膚に推奨すべき化粧料を選択できるようにしてもよい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1:美白用化粧水の評価
30代〜40代の女性32名に、市販の美白用化粧水を1ヶ月連用させ、その前後で、頬部位の皮膚の分光反射率を計測した。この場合、分光反射率の計測は、全てコニカミノルタ社製分光測色計cm2600dを用い、測定径/照明径をφ8mm/φ11mmとし、波長400〜700nmを10nmおきに計測した。
【0064】
一方、前述の式(1)において、酸化ヘモグロビンの濃度、還元ヘモグロビンの濃度、ビリルビンの濃度、カロチンの濃度、メラニンの濃度、真皮の厚み、表皮の厚み、角層の分光透過率、境界面反射率をパラメータとし、メラニンのモル吸光係数、酸化ヘモグロビンのモル吸光係数、還元ヘモグロビンのモル吸光係数、ビリルビンのモル吸光係数、カロチンのモル吸収係数を既定値とし、図2のフローに従い、美白用化粧水の適用前後のそれぞれについて、上述の分光反射率の実測値との二乗平均平方根誤差RMSEが最も小さくなる分光反射率の推定値を求め、その推定値を与えるパラメータを求めた。
【0065】
この結果として、被験者32名の平均値を表2に示す。医学データと対応できるように、メラニン以外の皮膚内部色素の濃度は、それぞれ色素の分子量を用いて変換した質量濃度を示している。なお、角層の透過率は角層を通過する際にどれだけ光が通過するかという割合であって、角層が透明である場合1.0となる。境界面反射率は、入射光が角層と空気層との境界面を通過せずに全て反射した場合は1.0となる。表2の最右側欄には、化粧料の適用前(before)と適用後(after)の各パラメータ数値の変化の有意性の有無をt検定により調べた結果を示した。さらに、表2の最終列には分光測色計で計測した頬の明度L*の平均値を示した。なお,推定誤差RMSEは、推定された皮膚の分光反射率と実測した分光反射率との二乗平均平方根誤差RMSEの値である。
【0066】
【表2】

【0067】
表2から、化粧料の適用により、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの濃度がそれぞれ有意に低下していることから、皮膚の赤みが低減していることが分かる。また、化粧料の適用によりメラニン濃度が低下して、明度が高くなったという肌状態の改善も示されている。したがって、この化粧料は美白作用を有すると評価できる。また、化粧料の適用により境界面反射率が有意に増加していることから、この化粧料は、肌を滑らかにする作用も有すると評価できる。
【0068】
実施例2、比較例1:パラメータの推定に及ぼす角層の分光透過率の寄与
32名の女性の顔にある色素沈着部位と、色素沈着がない部位(正常部位)の分光反射率を用いて、式(1)と、皮膚の分光反射率の推定式として式(1)に代えて角層の分光透過率を考慮しない式(9)を使用し、皮膚の分光反射率の再現精度として、推定した分光反射率と実測した皮膚の分光反射率との二乗平均平方根誤差RMSEを求め、再現精度を検証した結果を表3に示す。角層の分光透過率を考慮せずに推定した場合のRMSEと比べて、本件の式(1)で推定した場合はRMSEが低く、分光反射率の再現精度が良いことが分かる。
【0069】
【数13】

【0070】
【表3】

【0071】
実施例3:ヘモグロビン濃度の推定値の妥当性の評価
女性70名の頬の分光反射率を用いて実施例1と同様にして酸化ヘモグロビン濃度を推定した。推定した酸化ヘモグロビン濃度と、同一被験者の血液検査による血色素量(ヘモグロビン濃度)の実測値をプロットした散布図を図4に示す。
【0072】
推定した酸化ヘモグロビン濃度と実測値とのPearsonの積率相関係数Rを調べた結果、高い相関(R=0.81)があった。これは、本推定式を用いることで医学データに近い精度でヘモグロビン濃度が推定できることを示している。
【0073】
実施例4:メラニン濃度の推定値の妥当性の評価
32名の女性の顔にある色素沈着部位と、顔の正常部位の分光反射率を用いて、実施例1と同様にしてメラニン濃度を推定した。結果を図5に示す。色素沈着部位は正常部位と比べてメラニン濃度が高いことが知られている。本手法で推定されたメラニン濃度は、正常部位と色素沈着部位の間に有意差(t検定:p<0.01)があることより、本推定式を用いることで色素沈着部位と正常部位の違いを評価できることがわかる。
【符号の説明】
【0074】
1 皮膚の評価システム
2 実測値の入力部
3 演算手段
3A 記憶部
3B 計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の分光反射率の推定式として次式(1)を使用し、
【数1】

(式中、
λは可視光波長、
1は角層表面の境界面反射率、
sc(λ)は、角層の分光透過率、
R’(λ)は、クベルカムンク理論に基づく表皮以下の皮膚の分光反射率の推定式であって、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みをパラメータとして有する。)
式(1)において、角層の分光透過率、角層と空気層との境界面における境界面反射率(以下、角層表面の境界面反射率という)、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか一つ以上をパラメータとして皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出し、該推定値Rest(λ)と皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差が規定値よりも小さくなる、または差が最小になる推定値Rest(λ)を求め、そのときの推定値Rest(λ)の算出に用いたパラメータとして前記パラメータの1つ以上を求める皮膚の評価方法。
【請求項2】
皮膚内部色素濃度として、表皮中のメラニン濃度、真皮中の酸化ヘモグロビン濃度、還元ヘモグロビン濃度、ビリルビン濃度及びカロチン濃度の少なくとも一つ以上を求める請求項1記載の評価方法。
【請求項3】
式(1)のR’(λ)として次式(1b)を使用する請求項1記載の皮膚の評価方法。
【数2】


[式(1b)中、
epi(λ)は表皮の分光反射率で次式(2)で表され、
【数3】


epi(λ)は表皮の分光透過率で次式(3)で表され、
【数4】


dh(λ)は真皮と皮下組織の2層分の分光反射率で次式(4)で表され、
【数5】

dermis(λ)は真皮の分光反射率で次式(5)で表され、
【数6】

dermis(λ)は真皮の分光透過率で次式(6)で表され、
【数7】


(ただし、
d(λ)=(Sd (λ)+Kd (λ))/Sd (λ)
e(λ)=(Se (λ)+Ke (λ))/Se (λ)
d(λ)=(ad(λ)2−1)1/2
e(λ)=(ae(λ)2−1)1/2
Ddは、真皮厚み
Deは、表皮厚み
d (λ)は、真皮吸収係数
e (λ)は、表皮吸収係数
d(λ)は、真皮散乱係数
e(λ)は、表皮散乱係数である。)
h(λ)は皮下組織の分光反射率である。]
【請求項4】
表皮吸収係数Ke(λ)を次式(7)で計算し、真皮吸収係数Kd(λ)を次式(8)で計算する請求項3記載の皮膚の評価方法。
【数8】

(式中(7)、εs1(λ)は、表皮に存在する第1の皮膚内部色素のモル吸光係数で、ws1は、その皮膚内部色素のモル濃度であり、εs2(λ)は第2の皮膚内部色素のモル吸光係数で、ws2は、その皮膚内部色素のモル濃度であり、表皮にさらに異なる色素が存在する場合、同様に式(7)にモル吸光係数とモル濃度の積が加算される。
式(8)中、εp1(λ)は、真皮に存在する第1の皮膚内部色素のモル吸光係数で、wp1は、その皮膚内部色素のモル濃度であり、εp2(λ)は第2の皮膚内部色素のモル吸光係数で、wp2は、その皮膚内部色素のモル濃度であり、真皮にさらに異なる色素が存在する場合、同様に式(8)にモル吸光係数とモル濃度の積が加算される。)
【請求項5】
化粧料の適用前後の皮膚について、請求項1〜4のいずれかに記載の評価方法で皮膚内部色素濃度、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上を推定し、化粧料の適用前後の推定値の変化に基づいて化粧料の作用を評価する化粧料の評価方法。
【請求項6】
被験者の皮膚について、請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚の評価方法によって求められた角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上に基づいて化粧料を被験者に推奨する化粧料の推奨方法。
【請求項7】
皮膚の分光反射率に基づいて角層の分光透過率、角層と空気層との境界面における表面の境界面反射率(以下、角層表面の境界面反射率という)、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上を推定する皮膚の評価システムであって、
皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)の入力部、及び演算手段を備え、
演算手段が、皮膚の分光反射率の推定式として次式(1)を使用し、
【数9】

(式中、
1は角層表面の境界面反射率、
sc(λ)は、角層の分光透過率、
R’(λ)は、クベルカムンク理論に基づく表皮以下の皮膚の分光反射率の推定式であって、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みをパラメータとして有する。)
式(1)において、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか一つ以上をパラメータとして皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を算出し、該推定値Rest(λ)と皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差が規定値よりも小さくなる、または差が最小になる推定値Rest(λ)を求め、そのときの推定値Rest(λ)の算出に用いたパラメータとして前記パラメータの1つ以上を出力する皮膚の評価システム。
【請求項8】
請求項7に記載の皮膚の評価システムにおける演算装置が備えるコンピュータプログラムであって、
次式(1)による皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)を、角層の分光透過率、角層表面の境界面反射率、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みのいずれか1つ以上をパラメータとして算出する工程、
【数10】

(式中、
1は角層と空気層との境界面における境界面反射率、
sc(λ)は、角層の分光透過率、
R’(λ)は、クベルカムンク理論に基づいた表皮以下の皮膚の分光反射率の推定式であって、皮膚内部色素濃度、表皮の厚み及び真皮の厚みをパラメータとして有する。)
上記皮膚の分光反射率の推定値Rest(λ)と、予め入力された皮膚の分光反射率の実測値Rmeasure(λ)との差を算出する工程、
該差が規定値よりも小さくなる、または差が最小になる推定値Rest(λ)を求める工程、
その推定値Rest(λ)の算出に用いたパラメータを出力する工程
を含むコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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