説明

皮膚を再構成するためのオドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物の使用、使用される組成物、および前記抽出物を使用する美容方法

【課題】本発明は、皮膚を再構成する、またはその劣化を回避するために、組成物中において、オドンテラ・アウリタの少なくとも1種類の脂溶性抽出物を化粧用に使用することに関係する。
【解決手段】本発明はまた、活性成分として、化粧用または皮膚科学上適切な経皮ナノコロイド型賦形剤と結合した、オドンテラ・アウリタの天然脂溶性抽出物を含む新規配合物にも関係する。本発明はまた、皮膚老化または皮膚の構造破壊に対抗するため、ならびに/あるいは皮膚の再構成のための化粧上のケア方法にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚再構成剤、特に老化防止剤としての、珪藻オドンテラ・アウリタ(Odontella Aurita)の脂溶性抽出物の化粧用組成物における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、体全体を覆う強靭で柔軟な組織の形態に集積される細胞の集合体である。その第一の機能は、環境の攻撃に対する防護障壁を確立する一方、内部および外部媒質の間である交換を可能にする。それは、器官の生理的状態および環境状態により制御される多くの代謝プロセスの所在地である。皮膚は、表皮および真皮の2種類の結合層により形成され、それらの層に皮下組織が結合しているであろう。
【0003】
表皮は、第一に体を保護するために機能し、皮膚の最も表面である層を構成し、不浸透性および強靭性を皮膚に提供する。それは、4週間ごとに自身を新生する。種々のタイプの細胞が表皮に共存する;ケラチノサイトがその大部分である(90%)。それらの特徴的な活性は、表皮の総タンパク質の95%を占めるケラチンの合成である。ケラチンは、水不溶性である線維性タンパク質で、表皮の角質層の構成要素であり、表皮は、熱、低温、脱水などのような外的攻撃に対して皮膚を保護する。
【0004】
表皮は、真皮表皮ジャンクションまたは表皮基底膜と呼ばれる領域を通して真皮と結合されている。この構造は、真皮を表皮に結合させ、部分的に皮膚の張り(tonus)を担う機械的補助物として働く。それは、基底ケラチノサイトおよび真皮線維芽細胞の両方を含み、真皮乳頭層に存在する固着プラーク(anchoring plaque)に基底膜を結合する、固着プラークに関わるタイプ4コラーゲンを大量に含む。
【0005】
真皮、皮膚の内部層は、細胞外マトリックスと呼ばれる複合媒体中に分散される細胞、線維芽細胞からなる線維弾性結合組織(fibro-elastic conjunctive tissue)である。このマトリックスは、コラーゲンおよび弾性線維、糖タンパク質、すなわちフィブロネクチンおよびラミニン、ならびにグルコサミノグリカンすなわちGAGSが加えられる中央タンパク質(central protein)により形成されるプロテオグリカンから構成される。
【0006】
これらの種々の成分の性質および量は、皮膚の機械的特性を決定し、老化の間に観察されることができる皮膚のプロフィールに対する最も目に見える生理病理学的変化の原因である。線維は、堅さ、強靭さ、弾性、および張りを皮膚に与える。糖タンパク質およびプロテオグリカンは、容積を与え、水和に関係する。
【0007】
コラーゲン、特に真皮の75%を構成する1型および3型線維性コラーゲンタンパク質は、真皮の線維状ネットワークを形成する。それらは、皮膚に担持および弾性の大部分を与えることにより機械的役割を果たす。それらの特定の空間的配置により、ある程度の剛性が真皮の構造に付与され、そうしてそれらの機械的機能に貢献する。それらはプロコラーゲン、線維芽細胞により合成される前駆体に由来する。
【0008】
真皮結合組織の線維の間に分散するプロテオグリカンは、皮膚の張りの大部分を付与する。それらの構造(グリコサミノグリカンおよび多糖の長鎖により形成されるポリマー)は、プロテオグリカンにイオン、水、および種々の代謝物を捕捉する負電荷を付与し、それにより皮膚の水和、ならびに圧力および引っ張り力に対する抵抗に主に貢献する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
老化において、皮膚のしわ、たるみ(slacken)は、水和が少なく、それ自身の修復がより困難である。これらの臨床上兆候は、外見に影響し、または皮膚病を引き起こすが、本質的に紫外線の作用による、および汚染のような環境因子による攻撃による、外因性のプロセス、ならびに20歳より始まる実際の老化に相当する内因性プロセスの重ね合わせの結果である。
【0010】
老化は、最初に表皮に影響する。基底層におけるケラチノサイトの分裂力は低下し、表面角質層の再生時間は長くなる。表皮細胞の分裂力におけるこの低下はまた、「細胞寿命(cell longevity)」に関わる酵素(SIR2)群、特に酵素SIRT1において低下する結果ともなる。
【0011】
細胞成熟が不完全であり、ケラチン化はもはや整然として均一な角質を作り出すことができず、結果として表皮の厚さが減少し、それが乾燥し、および外見が粗雑になる。同時に、皮膚の深部はより組織化されなくなる。真皮は、皮膚の結合および栄養摂取の基礎的機能を付与し、皮膚損傷の主要な標的である。老化において、線維芽細胞は、皮膚の構成基質の供給源であるが、消失する、または線維細胞(fibrocyte)に形質転換する。結果として、フィブロネクチンの量が減少することが観察される。フィブロネクチンは、接着および細胞機能において、ならびに弾性線維の数および質を低下させる際に、主要な役割を果たす。
【0012】
コラーゲン(1年につき1%)、グリコサミノグリカン、および真皮劣化の原因であるメタロプロテイナーゼの主要なインヒビター、TIMP1の質の低下により、真皮の弾性が消失すること、および皮膚の厚さが減少することが説明される。
【0013】
真皮細胞を一緒に連結する結合の柔軟性が失われることが、老人に観察されることができる種々の打撲傷および裂傷の原因である。これはまた、目の下の袋および皮膚上のしわの外見、ならびに軽度の外傷の間における目だった真皮損傷を説明する。
【0014】
若い外見を保持する願望に関連する長い寿命は、老化の間に皮膚の構造が変化することを理解する研究を刺激してきた。しわおよび小じわの外見は、主に皮膚の構造組織、すなわち結合、角質、および線維芽細胞組織による。それらの構成要素のうち、コラーゲン、エラスチン、およびケラチンは全て、皮膚に対する外見的改変において本質的役割を果たしている。老化防止化粧製品はこれらのうちの一部に作用する。多数の顔面「つり上げ(lifting)」治療およびプログラムが市場にあり、しわを減らし、皮膚の弾性を改善することを目的としている。これらは普通、皮膚の表面、または上記言及される標的タンパク質の一つのみに作用する;それらの効果は暫定的で、部分的に満足できるものである。さらに、適用される化合物の多くは、完全に毒性がないわけでなく、それらの習慣的な適用が、炎症のような皮膚問題の出現を引き起こすかもしれない。それらはしばしば、化学合成、または時間がかかり、および高価である両方の天然基質からの抽出を使用して生産される。
【0015】
これらの理由から、上記のような不利益を有さない、すなわち非毒性であり、取得するのが容易であり、および複数のタンパク質標的に同時に作用する、化合物または組成物が必要とされている。
【特許文献1】フランス特許文献FR-A-2 795958号
【非特許文献1】P GanterおよびG Jolles,"HIstochimie normale et pathologue"[Normal and pathological Histochemistry], Gautier Villars出版(1970)
【非特許文献2】M Dowsett, "Effect of raloxafene on breast cancer cells - Ki67 apoptosis", Cancer Epidemiology Biomarkers出版、September (2001)
【非特許文献3】Jean Chevreau, Jacqueline BellotおよびMarie-Jose Cabanier "Formularie de techniques histologiques"[Formulary of histological techniques], Maloine出版(1956)
【非特許文献4】Fyrand O, "Studies on fibronectin in the skin. III Indirect immunofluorescence studies in lichen planus", Acta Derm Venereol (1979); 59(6): 687-92
【非特許文献5】Dal Farra CおよびDomloge N, "SIRT1, the human homologue to Sir 2 etc", Soc Cosm Chem Annual Sci Meeting (2005), 65-66
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、出願人はオドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物が、真皮および表皮の両方において、これらの標的の複数に同時に作用することができ、その結果複数のレベルで同時に作用することができることを発見した。そのような抽出物はまた、単離が容易であり、使用が容易であるという有利性も有する。さらに、その性質により、すなわち特定のステロールに豊富である脂溶性のものにより、そのような抽出物は、生物に対して非常に低い毒性を有する、またはまったく毒性を有さない。
【0017】
オドンテラ・アウリタからの脂質抽出物は既知であり(CTFA 12540)、肥満を治療する分野における使用のためのフランス特許文献FR-A-2 795958号に記載されている。
【0018】
それゆえ本発明は、皮膚を再構成する、またはその構造破壊(destructuring)を回避するための薬剤として、オドンテラ・アウリタの少なくとも1種類の脂溶性抽出物を化粧用に使用することに関係する。
【0019】
特に本発明は、皮膚の内因性または外因性老化に対抗するため、ならびに特に皮膚の弾性または張りを改善するため、ならびに/あるいは皮膚のしわまたは小じわの外見を、防ぐ、軽減する、および/または克服するための薬剤としての組成物中において、オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物を使用することに関係する。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、皮膚剥離、化学的剥離、またはレーザー美肌化(laser trsurfacing)後に、皮膚を再生する、または皮膚の再生を改善するために、オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物を使用することに関係する。
【0021】
より正確には、本発明は、プロコラーゲン、フィブロネクチン、グリコサミノグリカン、および/またはSIRT1の合成を、改善および/または刺激するために、オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物を使用することに関係する。
【0022】
さらに本発明は、オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物、および経皮ベクタービヒクルを含む化粧用組成物または皮膚科学組成物に関係する。経皮ベクタービヒクルは、ナノコロイドまたはナノ粒子型であり、好ましくはナノコロイド型である。引用されることができるナノコロイド型経皮ベクターの例は、ナノエマルジョン、リポソーム、およびシクロデキストリンである。
【0023】
最後に、本発明はまた、皮膚老化または皮膚構造破壊のケアおよび/または治療および/または防止のための美容方法にも関係し、その方法において、オドンテラ・アウリタの少なくとも1種類の脂溶性抽出物を含む化粧用組成物、および化粧用に許容しうるビヒクルを皮膚に適用する。好ましくは、オドンテラ・アウリタの脂質抽出物は、ナノコロイドの形態でビヒクル中に存在する。
【0024】
以下の詳細な記述、特に以下の配合例および実施例より明確になるであろうように、オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物、またはそのような抽出物を含む化粧用組成物の使用が、ヒトの皮膚の表皮構造を刺激することができ、それにより、処理される外植片における生細胞層の数が増加する、および表皮の厚さが増加する結果となる。
【0025】
さらに、分裂指数、あるいはGAG、フィブロネクチン、またはサーチュインの発現を計測する詳細な試験において、本発明の適用による脂溶性抽出物を使用することにより、肯定的な結果、すなわち、対照に対する分裂指数の増加、あるいは真皮乳頭層、特に真皮表皮ジャンクションに沿って存在する列における作用、ならびに線維芽細胞におけるGAGの増加、ならびに処理される皮膚の生検における高濃度のSIRT1およびフィブロネクチンにいたる。これは、表皮および真皮が、オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物の作用下で再構成されている可能性があることを意味している。
【0026】
本発明により、シアノバクテリア、微細藻類、またはプランクトンであるいずれかのオドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物を使用することができる。採集されるプランクトンは、脂溶性抽出物を取得するための通常の方法で処理される。
【0027】
これらのオドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物を、例えば、ヘキサンまたはジクロロメタンのような有機溶媒を伴う伝統的な抽出方法を使用して取得してよい。しかし、オドンテラ・アウリタの脂質相を抽出することができる方法のいずれか、またはこのプランクトンからの脂溶性抽出物を抽出するための方法のいずれかを使用することができる。そして、フランス特許文献FR-A-2 795958号は、二酸化炭素のような超臨界流体を使用する抽出方法を記載している。最後に、オドンテラ・アウリタ油はCodif社より購入可能である。
【0028】
これらの脂質抽出物は脂溶性である。いずれかの油中の他の脂溶性抽出物、あるいは、シリコーンオイルまたは他の化粧用に許容しうる脂溶性基質が、本発明の使用に適している。
【0029】
オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物は、組成物総重量に対して0.001重量%から50重量%の範囲で、好ましくは0.5重量%から20重量%の範囲で、より好ましくは0.1重量%から10重量%の範囲の量で、本発明を実行するために使用される組成物中に存在する。
【0030】
「経皮ベクタービヒクル」の語は、本発明では、抽出物を皮膚に浸透させることが可能であるビヒクルのいずれかを意味する。
【0031】
「ナノコロイド」の語は、約200nmより小さい寸法である、ナノ寸法の、単分散、非固体いずれかの形態を意味する。ナノコロイドは通常、ナノエマルジョン(界面活性剤の単層)を含むが、小寸法(少なくとも1層の天然リン脂質型の界面活性剤)であるリポソーム、あるいは包接錯体(inclusion complex)を形成するα-、β-、またはγ-シクロデキストリンのようなカーゴ(cargo)分子もまた含んでよい。
【0032】
本発明により使用される化粧用組成物は、局所的使用が意図され、この型の適用のための伝統的な使用における製剤形態のいずれか、特に水中油エマルジョンO/W、油中水エマルジョンW/O、油中水中油三重エマルジョンO/W/O、または水中油中水エマルジョンW/O/W、水性ゲル、あるいは水性、水性アルコール、または油性溶液の形態で、提供されてよい。それらは程度の差はあれ液体で、白色または着色クリーム、ポマード、ミルク、ローション、セラム、ペースト、フォーム、または二相液であってよい。それゆえ、経皮ベクターはO/W、W/O、W/O/W、O/W/Oエマルジョン、ゲルまたは脂溶性液体を含んでよい。それらはまた固体形態で、例えばスティックの形態またはエアロゾルの形態であってもよい。
【0033】
脂溶性オドンテラ・アウリタに加えて、本発明で使用される組成物は、化学式中に存在する活性成分と良好な両立性を有する化合物より選択されてよい、1種類またはそれ以上の賦形剤を含む。例は、多糖(キサンタンゴム、カラウバ(carouba)ゴム、ペプチン(peptin)、ほか)またはポリペプチドのような天然型水溶性ポリマー、メチルセルロース型セルロース誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは合成ポリマー、ポロキサマー(poloxamer)、カルボマー、あるいはポリビニルアクリレート(PVA)またはポリビニルピロリドン(PVP)型ゲル化剤である。
【0034】
最後に、本発明の組成物はまた、エタノール、グリセロール、ベンジルアルコールのような種々の他の共溶媒型賦形剤、保湿剤、例えばグリセロール、拡散助剤(diffusion aid)、例えば尿素、または抗微生物保存剤、例えば0.15%メチルp-ヒドロキシベンゾエートも含んでよい。
【0035】
それらはまた、界面活性剤、安定化剤、乳化剤、濃厚剤、補完的または起こりうる相乗的効果を生じる他の活性素(active principle)、オリゴ要素(oligo-element)、エッセンシャルオイル、香料、着色剤、コラーゲン、化学的または無機濾過剤、保湿剤、または温泉も含んでよい。
【0036】
オドンテラ・アウリタ抽出物を、少なくとも1種類の他の活性素、例えば水和剤と組み合わせてもよい。
【0037】
本発明の方法は、通常の様式で、適用する組成物の局所適用により、例えば、毎日、1日2回、または皮膚を洗浄するたびごと、あるいは皮膚剥離、化学的剥離、およびレーザー美肌化後に集中的に、実行される。
【0038】
方法は、全ての皮膚に適用可能である:本発明の組成物を顔面に適用してよく、しかしそれらを体の他の部位に適用するために提供することもでき;配合物は、領域に応じて異なってよく、および/またはある領域に特異的であってよい。
【0039】
以下の実施例が、いかなる意味でも本発明の範囲を制限することなく、本発明を説明する。
【発明の効果】
【0040】
<活性の測定>
<オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物を含む調製物の再構成および老化防止活性の研究>
この研究は、49歳の女性に対して実行された腹部皮膚美容整形手術より取得されたヒト皮膚からの36個の外植片に対して実行された。
【0041】
全ての外植片は4日間培養培地中に生きたまま保持された。油性溶媒(カプリル酸カプリン酸トリグリセリド、GOGNIS社からの「Myritol 318 Neutral Oil」)中に希釈され、無菌紙の表面に置かれたオドンテラ・アウリタの脂質抽出物30 μlを、局所的におよび毎日外植片に加えた。処理の0日目および4日目(D0およびD4)に、それぞれのバッチ(対照、10%脂質抽出物、1%脂質抽出物)より3個の外植片を除き、解剖学的研究のために調製した。大まかな形態の記述、分裂指数、および酸基を含まないグリコサミノグリカンの発現の評価を実行し、以下の結果を得た。
【0042】
I. 大まかな形態
P GanterおよびG Jollesによる"HIstochimie normale et pathologue"[Normal and pathological Histochemistry], Gautier Villars出版(1970)に記載された方法を使用して、観察を行った。全ての外植片に対して観察を行い、処置の4日目からの、オドンテラ・アウリタの希釈脂質抽出物の2つの試験濃度での適用により、生細胞層の数が増加する結果となる表皮構造の刺激が誘導された。表皮の厚さの増加は、オドンテラ・アウリタの10%脂質抽出物の適用に従うとより大きかった。
【0043】
II. 分裂指数
M Dowsett, "Effect of raloxafene on breast cancer cells - Ki67 apoptosis", Cancer Epidemiology Biomarkers出版、September (2001)に記載された方法を使用して、分裂指数を測定した。
【0044】
生検切片において、有糸分裂中の細胞を、抗Ki67、モノクローナル抗体クローン7B11、マウスIgG1で標識した。標識化を、アセトン中で固定した後凍結切片に対して実行した。抗Ki67をPBS中で1/100に希釈し、室温で2時間加えた。それをVectastatin RTUユニバーサルベクターリビーリング(revealing)キット、参照PK-7200を使用して明らかにした。40倍の対物レンズを有する光学顕微鏡によりそれを可視化し、結果は平均して表皮の長さの中心とした。
【0045】
抗Ki67は、G1、S、G2、およびM期の細胞を標識する。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に見ることができるように、オドンテラ・アウリタ脂質抽出物と処理した皮膚からの生検においてD4で観察された分裂指数は、未処理対照および抽出物希釈溶媒と取得された値よりも高い値を有した。これらの値は、抽出物投与量の関数として増加した。
【0048】
III. グリコサミノグリカン(GAG)の発現
Jean Chevreau, Jacqueline BellotおよびMarie-Jose Cabanier "Formularie de techniques histologiques"[Formulary of histological techniques], Maloine出版(1956)に記載された方法を使用して、GAGの発現を研究した。
【0049】
皮膚外植片からの解剖学的切片を、酸基を有しないGAGに特異的なアルシアンブルー(Alcian blue)PASで染色し、2つの試験濃度でオドンテラ・アウリタの脂質抽出物と外植片を処理した後、皮膚のこれらのGAG成分が有意に増加したことが示された。この効果は、D4に明確に見られるが、真皮乳頭層中に、特に真皮表皮ジャンクションに沿って位置する列中の明確にPAS陽性である線維芽細胞の数が増加することにより、またはこれらの線維芽細胞におけるGAGの増加により特徴づけられる。
【0050】
IV. フィブロネクチンおよびサーチュイン(SIRT1)の発現
フィブロネクチンを検知するために、Fyrand O, "Studies on fibronectin in the skin. III Indirect immunofluorescence studies in lichen planus", Acta Derm Venereol (1979); 59(6): 687-92、ならびにSIRT1を検知するために、Dal Farra CおよびDomloge N, "SIRT1, the human homologue to Sir 2 etc", Soc Cosm Chem Annual Sci Meeting (2005), 65-66で記載された方法を使用して、フィブロネクチンおよびサーチュイン(SIRT1)の発現を評価した。
【0051】
特異的抗SIRT1および抗フィブロネクチン抗体との標識化により、D4にオドンテラ・アウリタの脂質抽出物と処理された皮膚からの生検切片において、溶媒と処理された皮膚、または未処理対照からの生検の皮膚と比較して、これらのSIRT1およびフィブロネクチン分子が高濃度であることが示された。
【0052】
<結論>
上記観察により、オドンテラ・アウリタの脂質抽出物の作用により、表皮および真皮の再構成が示される。
【0053】
この型の改変は、より若い、または若返る皮膚に対する基準を示す。
【0054】
<配合例>
以下の配合物を、当業者に標準的な方法で調製した。配合例1から4で、80°Cに加熱後、水相および脂肪相を、通常激しく撹拌して混合し、それらをエマルジョン化した。
【0055】
オドンテラ・アウリタの脂質抽出物は、Codif社により供給された。
【0056】
<配合例1:老化した皮膚のための再構成クリーム>
【表2】

【0057】
<配合例2:正常皮膚のために意図される保湿クリーム>
【表3】

【0058】
<配合例3:日光にさらされる老化した皮膚のために意図されるクリームおよび乳液>
【表4】

【0059】
<配合例4:しわ防止クリーム>
【表5】

【0060】
<配合例5:成熟した皮膚のためのメークアップ除去ローション>
【表6】

【0061】
<配合例6:傷つきやすいおよび脱栄養に苦しむ皮膚のための再生油>
【表7】

【0062】
<配合例7:オドンテラ・アウリタナノコロイド老化防止セラム>
-1- オドンテラ・アウリタ脂質抽出物のナノコロイドの調製:
油(Myritol 318-カプリル酸カプリン酸トリグリセリド)中に10%で溶解したオドンテラ・アウリタの脂質抽出物を、植物油ベースで、HLB値が12である、食品グレードの乳化剤(Degussa社からのAxol C62 - グリセリルステアレートシトレート)により安定化した。脂肪相に対する乳化剤の割合は、0.1であった。ミネラルウォーター(Source Ste Alix, Brittany)中に4分の1に稀釈した海水/ミネラルウォーター水相(SOMAIG, IleGradeからの海洋泉水)は、10%グリコールおよび0.1%ナトリウムアスコルベートを含んだ。
【0063】
それを以下のように生産した。乳化剤を、ローター/ステーター(RAYNERI VMI TURBOTEST)を3分間使用して、熱水相中に拡散した。この第一の混合物を、高圧:700barで1pass(Lab 1000, APV)で均質化した。それを室温に冷却させた。添加物、およびオドンテラ・アウリタの熱感受性脂溶性抽出物を添加し、ローター/ステーターを使用して均質化した。混合物を、再び高圧(700 bar, 1pass)で均質化した。
【0064】
光散乱技術(MASTERSIZER HYDRO 2000S, MALVERN INSTRUMENTSレーザー顆粒メーター(granulometer))を使用して、粒径および単分散を確認した。
【0065】
粒径は200 nmであった。
【0066】
-2- オドンテラ・アウリタナノコロイド老化防止セラムの組成物
【表8】

<実施例>
オドンテラ・アウリタナノコロイド老化防止セラムのヒトにおける活性の研究
研究は15人(30歳から60歳)の2群に対して実行した。
・プラセーボ、配合例7(-2-)のオドンテラ・アウリタナノコロイドセラム賦形剤を、朝晩49日間中断なく使用する一群(平均年齢:41歳);
・配合例7(-2-)のオドンテラ・アウリタナノコロイド老化防止セラムを、朝晩49日間中断なく使用する一群(平均年齢:45歳)。
【0067】
処理の最後に、人々にアンケートを実施した。
【0068】
得られた回答を以下の表2に%で示す。
【0069】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚を再構成する、または皮膚の構造破壊を防止するための薬剤としての、オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物の使用。
【請求項2】
内因性または外因性皮膚老化に対する薬剤としての、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
皮膚の弾性および/または張りを改善するため、ならびに/あるいは皮膚のしわまたは小じわの外見を防止する、軽減する、および/または停止させるための、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
皮膚剥離、化学的剥離、またはレーザー美肌化後に、皮膚の再生を改善するための、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
プロコラーゲン、フィブロネクチン、グリコサミノグリカン、および/またはSIRT1の合成を、改善および/または刺激するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物、およびナノコロイド型経皮ベクタービヒクルを含む、化粧用組成物または皮膚科学組成物。
【請求項7】
オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物、およびナノエマルジョン型経皮ベクタービヒクルを含む、請求項6に記載の化粧用組成物または皮膚科学組成物。
【請求項8】
オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物、およびリポソーム型経皮ベクターを含む、請求項6に記載の化粧用組成物または皮膚科学組成物。
【請求項9】
オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物、およびシクロデキストリン型経皮ベクターを含む、請求項6または7に記載の化粧用組成物または皮膚科学組成物。
【請求項10】
経皮ベクターが、油中水(W/O)、水中油(O/W)、水中油中水(W/O/W)、または油中水中油(O/W/O)エマルジョン、ゲル、あるいは脂溶性液体を含む、請求項6から9のいずれか一項に記載の化粧用組成物または皮膚科学組成物。
【請求項11】
オドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物が、組成物総重量に対して0.01重量%から10重量%の範囲で、好ましくは0.05重量%から5重量%の範囲で、より好ましくは0.1重量%から2重量%の範囲の量で存在する、請求項6から10のいずれか一項に記載の化粧用組成物または皮膚科学組成物。
【請求項12】
少なくとも1種類のオドンテラ・アウリタの脂溶性抽出物、および化粧用に許容しうるビヒクルを含む化粧用組成物が皮膚に適用される、皮膚老化または皮膚構造破壊を、ケアする、および/または治療する、および/または防止するための美容方法。

【公開番号】特開2009−29806(P2009−29806A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−181831(P2008−181831)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(508210974)
【Fターム(参考)】