説明

皮膚ガス検出装置

【課題】皮膚ガスから、血中の検出対象物質の濃度を精度よく検出することができるようにする。
【解決手段】第1センサ出力取得部32によって、アルコールセンサ24Aからの検出信号に基づいて、エタノールガスの濃度のベース値及び飽和値を取得する。第2センサ出力取得部34によって、二酸化炭素センサ24Bからの検出信号に基づいて、二酸化炭素の濃度のベース値及び飽和値を取得する。血中濃度算出部36によって、エタノールガスの濃度の変化量、及び二酸化炭素の濃度の変化量に基づいて、血中のエタノール濃度を算出して、表示装置40に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚ガス検出装置に係り、特に、検出対象者の皮膚から拡散したガスを検出し、血中の検出対象物質の濃度を検出する皮膚ガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血中の特定物質を皮膚ガス濃度から推定する検出装置が知られている。例えば、皮膚ガス透過ガスを貯留するとともに開口を有する容器と、皮膚透過ガスを循環させる送風ファンと、ガス循環路にガス測定装置を有する皮膚透過ガス測定装置が知られている(特許文献1)。この特許文献1では、皮膚から透過するガスを集め貯留するとともに、その濃度をガスクロマトグラフ等により定量する方法が示され、血中濃度と皮膚ガス濃度が相関することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−234845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、血中から皮膚組織への拡散において、個人差及び環境による影響(気温などによる皮下温度の変化など)が大きいため、皮膚ガス濃度から血中濃度を精度よく検出することができない、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、皮膚ガスから、血中の検出対象物質の濃度を精度よく検出することができる皮膚ガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の皮膚ガス検出装置は、検出対象者の血中の検出対象物質が皮膚からガスとして拡散した検出対象ガスの濃度を検出する対象ガス検出手段と、血中濃度が安定し、かつ、水溶性を有し、皮膚から拡散される参照ガスの濃度を検出する参照ガス検出手段と、前記対象ガス検出手段によって検出された前記検出対象ガスの濃度、及び前記参照ガス検出手段によって検出された前記参照ガスの濃度に基づいて、血中の前記検出対象物質の濃度を算出する血中濃度算出手段とを含んで構成されている。
【0007】
本発明に係る皮膚ガス検出装置によれば、対象ガス検出手段によって、検出対象者の血中の検出対象物質が皮膚からガスとして拡散した検出対象ガスの濃度を検出する。また、参照ガス検出手段によって、血中濃度が安定し、かつ、水溶性を有し、皮膚から拡散される参照ガスの濃度を検出する。
【0008】
そして、血中濃度算出手段によって、対象ガス検出手段によって検出された検出対象ガスの濃度、及び参照ガス検出手段によって検出された参照ガスの濃度に基づいて、血中の検出対象物質の濃度を算出する。
【0009】
このように、皮膚から拡散した検出対象ガスの濃度及び参照ガスの濃度を検出することにより、皮膚ガスから、血中の検出対象物質の濃度を精度よく検出することができる。
【0010】
本発明の参照ガスの、血中から皮膚に拡散される程度を示す拡散係数が、検出対象物質の拡散係数と相関関係にある。これによって、拡散係数の変化による影響を低減して、血中の検出対象物質の濃度を精度よく検出することができる。
【0011】
本発明に係る皮膚ガス検出装置は、検出対象者の所定部位を載置するための載置部、及び所定部位の皮膚から拡散されるガスを貯める貯留室を備えた筐体を更に含み、対象ガス検出手段は、貯留室内の検出対象ガスの濃度を検出し、参照ガス検出手段は、貯留室内の参照ガスの濃度を検出することができる。
【0012】
本発明に係る血中濃度算出手段は、以下の式に従って、血中の検出対象物質の濃度を算出するようにすることができる。
【0013】
血中の検出対象物質の濃度=a×(ΔGas)/(ΔRef)
【0014】
ただし、ΔGasは対象ガス検出手段によって検出された検出対象ガスの濃度の変化量、ΔRefは参照ガス検出手段によって検出された参照ガスの濃度の変化量、aは係数である。
【0015】
上記の検出対象物質を、エタノール及びアセトンの何れか一方とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、皮膚から拡散した検出対象ガスの濃度及び参照ガスの濃度を検出することにより、皮膚ガスから、血中の検出対象物質の濃度を精度よく検出することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態のエタノール濃度検出装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態のエタノール濃度検出装置の構成を示す概略図である。
【図3】(A)アルコールセンサのセンサ出力の変化を示すグラフ、及び(B)二酸化炭素センサのセンサ出力の変化を示すグラフである。
【図4】本発明の第1の実施の形態のエタノール濃度検出装置の構成を示すブロック図である。
【図5】血中から皮下組織を介して皮膚から外部へ拡散する様子を示すイメージ図である。
【図6】皮膚ガス測定値と血中濃度との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施の形態のエタノール濃度検出装置のコンピュータにおけるエタノール濃度検出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態のエタノール濃度検出装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、検出対象者の手掌の皮膚から拡散されるガスを検出して、検出対象物質としてのアルコールの一種であるエタノールの血中の濃度を検出するエタノール濃度検出装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0019】
図1、図2に示すように、第1の実施の形態に係るエタノール濃度検出装置10は、上面中央部が開口している筐体12を備え、筐体12には、開口部によって開口した凹部であって、ガスを貯留するための貯留室14が形成されている。筐体12の開口部の周辺部分は、検出対象者の手掌を載置するための載置部として用いられる。
【0020】
筐体12の貯留室14の底部には、センサ群24が取り付けられている。センサ群24は、貯留室14内のガスを検出するように取り付けられた、アルコールセンサ24Aと二酸化炭素センサ24Bとで構成されている。
【0021】
アルコールセンサ24Aは、貯留室14内の気体中に含まれるエタノールガスを検出するセンサであり、エタノールガスに対して高い感度を有する。アルコールセンサ24Aとして、例えば、電気化学式アルコールセンサを使用することができる。
【0022】
二酸化炭素センサ24Bは、貯留室14内の気体中に含まれる二酸化炭素を検出するセンサであり、二酸化炭素に感度を有する。二酸化炭素センサ24Bとして、例えば、固体電解質式二酸化炭素センサを使用することができる。
【0023】
この実施の形態によれば、筐体12の上面(載置部)に検出対象者が手掌を載置することにより、手掌の皮膚から拡散されるガスが貯留室14に貯留される。このとき、アルコールセンサ24Aは、貯留室14内の気体中のエタノールガス成分の濃度に応じた検出信号を出力し、センサ応答として、図3(A)に示すような出力が得られる。また、二酸化炭素センサ24Bは、貯留室14内の気体中の二酸化炭素の濃度に応じた検出信号を出力し、センサ応答として、図3(B)に示すようなセンサ出力が得られる。
【0024】
アルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bから出力された検出信号は、後述するコンピュータ26に入力され、入力された検出信号に基づいて、検出対象者の血中のエタノール濃度が検出される。なお、アルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bから出力された検出信号は、コンピュータ26によって、一定間隔で同時に取り込まれる。
【0025】
図4に示すように、エタノール濃度検出装置10は、アルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bに接続され、かつ、検出対象者の血中のエタノール濃度を検出して、表示装置40に表示させるコンピュータ26を備えている。
【0026】
コンピュータ26は、CPU、後述するエタノール濃度検出処理ルーチンを実現するためのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、及びHDD等の記憶装置を備えて構成されている。コンピュータ26を以下で説明するエタノール濃度検出処理ルーチンに従って機能ブロックで表すと、図4に示すように、アルコールセンサ24Aからの検出信号に基づいて、エタノールガスの濃度のベース値及び飽和値を取得する第1センサ出力取得部32と、二酸化炭素センサ24Bからの検出信号に基づいて、二酸化炭素の濃度のベース値及び飽和値を取得する第2センサ出力取得部34と、エタノールガスの濃度の変化量、及び二酸化炭素の濃度の変化量に基づいて、血中のエタノール濃度を算出して、表示装置40に出力する血中濃度算出部36とを備えている。
【0027】
次に、本実施の形態における血中のエタノール濃度を算出する原理について説明する。
【0028】
まず、図5に示すように、エタノールなどの揮発性物質は、血中から皮下組織(組織液)へ拡散し、さらに皮膚ガスとして一部が皮膚から体外へ放出される。血中から皮下組織を介して皮膚に拡散する程度は、拡散係数αで表わされ、拡散係数は、分子量の大きさに応じて決定される。血中のエタノール濃度がX%である場合、皮下組織を介して皮膚に拡散されるガス中のエタノールガス濃度は、αX%となる。
【0029】
また、図6に示すように、血中濃度と皮膚ガスとして放出されるガス濃度とには、個人を特定すれば比例関係が認められるが、その比率は個人差が大きいため、皮膚ガス濃度だけでは血中濃度を精度よく推定することができない。この要因は、個人により皮下脂肪や皮膚角質層が異なることや、環境温度により皮膚温度が変化することから、血中から皮下組織及び皮膚を介して拡散する程度が変化するためである。
【0030】
そこで、本実施の形態では、血中及び皮下組織中の二酸化炭素及び酸素が安定した濃度で存在することに着目し、また、これらは、水溶性を有し、皮膚から拡散されると共に、皮下脂肪や皮膚温度による影響をエタノールと同様に受ける(エタノールに対して拡散係数が近い)ため、これを参照ガスとして検出対象物質のガス濃度との比を取る。これにより、上記に述べた個人差及び環境温度の変化による影響や、拡散係数の変化による影響を大きく低減することができる。
【0031】
血中のエタノール濃度を算出するための一般式は、以下の(1)式で表される。
f(EtOH)blood=a×f(EtOH)skin/(COskin
・・・(1)
【0032】
ただし、(EtOH)bloodは、血中のエタノール濃度であり、(EtOH)skinは、皮膚ガス中のエタノールガスの濃度であり、(COskinは、皮膚ガス中の二酸化炭素濃度であり、aは、予め求められた係数である。
【0033】
血中濃度算出部36は、上記(1)式を用いた算出例として、以下の(2)式に示す式に従って、血中のエタノール濃度を算出する。
(EtOH)blood=a×(△EtOH)skin/(△COskin
=a×{(EtOH)sat−(EtOH)base
/{(COsat−(CObase
・・・(2)
【0034】
ただし、(EtOH)satは、エタノールガス濃度の飽和値(皮膚ガス貯留時のアルコール濃度)であり、(EtOH)baseは、エタノールガス濃度のベース値(大気中のエタノールガス濃度)である。また、(COsatは、二酸化炭素濃度の飽和値(皮膚ガス貯留時の二酸化炭素濃度)であり、(CObaseは、二酸化炭素濃度のベース値(大気中の二酸化炭素濃度)であり、aは、予め求められた係数である。なお、エタノールガス濃度及び二酸化炭素濃度の各々のベース値として、例えば、皮膚ガス入力前の任意区間の平均値又は最小値を用いればよい。
【0035】
上記(2)式に示すように、 エタノールガスの濃度の変化量と、二酸化炭素の濃度の変化量との比と、予め定められた係数とを乗算することにより、血中のエタノール濃度が算出される。
【0036】
次に、第1の実施の形態に係るエタノール濃度検出装置10の作用について説明する。
エタノール濃度検出装置10のメインスイッチ(図示省略)がオンされると、エタノール濃度検出装置10のコンピュータ26において、図7に示すエタノール濃度検出処理ルーチンが実行される。
【0037】
まず、ステップ100において、アルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bの各々から検出信号を取得して、メモリ(図示省略)に記憶する、ステップ102において、二酸化炭素センサ24Bからの検出信号の変化から、皮膚ガスが貯留室14内に入力されたか否かを判定する。二酸化炭素センサ24Bの検出信号から得られる二酸化炭素濃度が閾値未満であると、手掌が筐体12上面に載置されておらず、皮膚ガスが入力されていないと判断し、上記ステップ100へ戻る。一方、二酸化炭素センサ24Bの検出信号から得られる二酸化炭素濃度が閾値以上になると、手掌が筐体12上面に載置され、皮膚ガスが入力されたと判断し、ステップ104へ進む。
【0038】
ステップ104では、上記ステップ100で取得したアルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bの各々の検出信号に基づいて、双方のセンサ出力が飽和値に到達したか否かを判定する。アルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bの少なくとも一方のセンサ出力が飽和値に到達していない場合には、上記ステップ100へ戻るが、一方、アルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bの双方のセンサ出力が飽和値に到達した場合には、ステップ106へ進む。
【0039】
ステップ106では、上記ステップ100で記憶されたアルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bの各々の検出信号の時系列データに基づいて、皮膚ガスが入力されたと判断される時刻より前の検出信号から、エタノールガス濃度のベース値及び二酸化炭素濃度のベース値を取得する。また、センサ出力が飽和したときの検出信号から、エタノールガス濃度の飽和値及び二酸化炭素濃度の飽和値を取得する。
【0040】
次のステップ108では、上記ステップ106で取得したエタノール濃度のベース値及び飽和値と、二酸化炭素濃度のベース値及び飽和値とに基づいて、上記(2)式に従って、検出対象者の血中のエタノール濃度を算出する。
【0041】
そして、ステップ110では、上記ステップ108で算出された血中のエタノール濃度を表示装置40に表示させて、エタノール濃度検出処理ルーチンを終了する。
【0042】
以上説明したように、第1の実施の形態に係るエタノール濃度検出装置によれば、皮膚から拡散したエタノールガスの濃度の変化量及び二酸化炭素の濃度の変化量の比率に基づいて、個人差等による影響を低減して、皮膚ガスから、血中のエタノールの濃度を精度よく検出することができる。
【0043】
また、参照ガスとして、エタノールと拡散係数が近い二酸化炭素を採用することにより、拡散係数の変化による影響を低減して、血中のエタノールの濃度を精度よく検出することができる。
【0044】
また、検出対象者は、手掌の皮膚を筐体の貯留室上に置くことにより、貯留室内のアルコールセンサ及び二酸化炭素センサによって同時計測が実施され、アルコールセンサによる検出値を二酸化炭素センサによる検出値で補正して、個人差による影響を低減し、血中のエタノール濃度を正確に検出することができる。また、簡便な操作で飲酒状態を判断することが可能となる。
【0045】
なお、上記の実施の形態では、電気化学式アルコールセンサを用いて、エタノールガスの濃度を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、酸化物半導体方式のアルコールセンサを用いてもよい。
【0046】
次に、第2の実施の形態に係るエタノール濃度検出装置について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となっている部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
第2の実施の形態では、光吸収方式のセンサを用いて、エタノールガスの濃度及び二酸化炭素の濃度を検出している点が、第1の実施の形態と主に異なっている。
【0048】
図8に示すように、第1の実施の形態のエタノール濃度検出装置210は、筐体12の貯留室14の底部に、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトル(波長9.5μm)を含む所定波長帯域(例えば、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトルを中心波長とする9μm〜10μmの波長帯域)の赤外線を透過するバンドパスフィルタで構成された光学フィルタ222Aと、光学フィルタ222Aを透過した赤外線を電気信号に変換し、透過光量に応じた電気信号を出力するボロメータ、SOIダイオード、またはサーモパイル等で構成されたエタノール用光電変換素子224Aとを備えている。また、筐体12の貯留室14の底部に、二酸化炭素のC−O伸縮振動による吸収スペクトルを含む所定波長帯域(例えば、15μmを中心波長とする14μm〜16μmの所定波長帯域)の赤外線を透過する二酸化炭素用光学フィルタ222B、及び光学フィルタ222Bを透過した赤外線を電気信号に変換するボロメータ、SOIダイオード、またはサーモパイル等で構成された二酸化炭素用光電変換素子224Bが設けられている。なお、光学フィルタ222A及びエタノール用光電変換素子224Aが、対象ガス検出手段の一例である。また、光学フィルタ222B及び二酸化炭素用光電変換素子224Bが、参照ガス検出手段の一例である。
【0049】
エタノール用光電変換素子224A及び二酸化炭素用光電変換素子224Bには、コンピュータ26が接続されている。
【0050】
人間の皮膚から放射される赤外線の波長帯域は、300°Kの温度で約2μm〜100μmである。また、筐体12の上面に載置された手掌の皮膚から放射される赤外線の方向と、皮膚から拡散されるガスの拡散方向とが同じであるので、貯留室14内のエタノールガスと皮膚から放射された赤外線とが、手掌の皮膚とエタノール濃度検出装置210との間で相互作用する。
【0051】
したがって、本実施の形態のエタノール濃度検出装置210によれば、検出対象者の手掌の皮膚から放射された赤外線と貯留室14内のエタノールガスとの相互作用によって、エタノールのC−O伸縮振動による吸収スペクトル生じ、吸収スペクトルを含む所定波長帯域の赤外線の強度が低下する。
【0052】
エタノール用光電変換素子224Aから出力される電気信号の強度Te、すなわち光学フィルタ222Aを透過した赤外線の透過光量は以下の(3)式で表わされる。
【0053】
Te=ToEXP(−ne・ke・L) ・・・(3)
【0054】
ただし、Toは光源である手掌の光量、neはエタノールガスの濃度、keはエタノールガスの吸収係数、Lはガスと光の相互作用長(光学フィルタ222Aから載置された手掌までの距離で表わされる光路長)であり、EXPは指数関数を表わす。
【0055】
上記(3)式より、貯留室14内のエタノールガスの濃度(EtOH)は、以下の(4)式で表わされる。
【0056】
(EtOH)=ne=−ln(Te/To)/ke・L ・・・(4)
ただし、lnは、自然対数を表わす。
【0057】
したがって、コンピュータ26の第1センサ出力取得部32は、上記(4)式に従って貯留室14内のエタノールガスの濃度(EtOH)を演算し、エタノールガスの濃度のベース値及び飽和値を取得する。
【0058】
また、貯留室14内の二酸化炭素の濃度(CO2)は、以下の(5)式で表わされる。
【0059】
(CO2)=−ln(Tc/To)/kc・L ・・・(5)
【0060】
ただし、Tcは二酸化炭素用光電変換素子224Bから出力された電気信号より得られる透過光量、kcは二酸化炭素の吸収係数である。
【0061】
コンピュータ26の第2センサ出力取得部34は、上記(5)式に従って貯留室14内の二酸化炭素の濃度(CO2)を演算し、二酸化炭素の濃度のベース値及び飽和値を取得する。
【0062】
なお、第2の実施の形態に係るエタノール濃度検出装置210の他の構成及び作用につては、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
次に、第3の実施の形態に係るエタノール濃度検出装置について説明する。
【0064】
第3の実施の形態に係るエタノール濃度検出装置では、先端部に手掌を載置するための載置部が形成された細長円筒状の皮膚ガス導入管を備えており、皮膚ガス導入管の中間部の内部には、センサ群24が取り付けられている。センサ群24のアルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bは、皮膚ガス導入管の中間部の内部に対向するように取り付けられている。
【0065】
アルコールセンサ24Aは、皮膚ガス導入管内を流れる気体中に含まれるエタノールガスを検出する。二酸化炭素センサ24Bは、皮膚ガス導入管内を流れる気体中に含まれる二酸化炭素を検出する。
【0066】
また、皮膚ガス導入管の内部であって、アルコールセンサ24A及び二酸化炭素センサ24Bより吸い込み口側には、皮膚ガスを吸い込み口から吸い込むために駆動される吸い込みファンが設けられている。
【0067】
なお、第3の実施の形態に係るエタノール濃度検出装置210の他の構成及び作用につては、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
なお、上記の第1の実施の形態〜第3の実施の形態では、検出された血中のエタノール濃度を表示する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、検出した血中のエタノール濃度と予め定めた閾値とを比較し、検出した血中のエタノール濃度が閾値以上の場合にエタノール濃度が高いと判定し、エンジンが始動できないようにする等の不正ができないように制御するようにしてもよい。
【0069】
次に、第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態では、血中の検出対象物質としてのアセトンの濃度を検出するアセトン濃度検出装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
第4の実施の形態に係るアセトン濃度検出装置は、貯留室14が形成された筐体12を備え、貯留室14の底部には、貯留室14内のガスを検出するように取り付けられた、アセトンセンサと二酸化炭素センサ24Bとで構成されている。
【0071】
アセトンセンサは、貯留室14内の気体中に含まれるアセトンガスを検出するセンサであり、アセトンガスに対して高い感度を有する。
【0072】
アセトンセンサ及び二酸化炭素センサ24Bに接続されたコンピュータ26では、第1センサ出力取得部32によって、アセトンセンサからの検出信号に基づいて、アセトンガスの濃度のベース値及び飽和値を取得する。
【0073】
また、本実施の形態では、血中及び皮下組織中の二酸化炭素及び酸素が安定した濃度で存在することに着目し、また、これらは、水溶性を有し、皮膚から拡散されると共に、皮下脂肪や皮膚温度による影響をアセトンと同様に受ける(アセトンに対して拡散係数が近い)ため、これを参照ガスとして、アセトンガス濃度との比を取ることにより、個人差及び環境温度の変化による影響や、拡散係数の変化による影響を大きく低減する。
【0074】
血中濃度算出部36は、以下の(6)式に示す式に従って、血中のアセトン濃度を算出する。
(CO)blood=a×(△CO)skin/(△COskin
=a×{(CO)sat−(CO)base
/{(COsat−(CObase
・・・(6)
【0075】
ただし、(CO)satは、アセトンガス濃度の飽和値(皮膚ガス貯留時のアセトンガス濃度)であり、(CO)baseは、アセトンガス濃度のベース値(大気中のアセトンガス濃度)であり、aは、予め求められた係数である。
【0076】
上記(6)式に示すように、アセトンガスの濃度の変化量と二酸化炭素の濃度の変化量との比率に基づいて、血中のアセトン濃度が算出される。
【0077】
なお、第4の実施の形態に係るアセトン濃度検出装置の他の構成及び作用については第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
以上説明したように、第4の実施の形態に係るアセトン濃度検出装置によれば、皮膚から拡散したアセトンガスの濃度の変化量及び二酸化炭素の濃度の変化量の比率に基づいて、個人差等による影響を低減して、皮膚ガスから、血中のアセトン濃度を精度よく検出することができる。また、簡便な操作で体調状態を判断することが可能となる。
【0079】
なお、上記の実施の形態において、上記の第2の実施の形態で説明した内容や、上記の第3の実施の形態で説明した内容を適用してもよい。
【0080】
また、上記の第1の実施の形態〜第4の実施の形態では、参照ガスとして、二酸化炭素の濃度を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、血中濃度が安定し、エタノールやアセトンと拡散係数が近く、かつ、水溶性を有し、皮膚から拡散される酸素の濃度を検出するようにすればよい。この場合には、固体電解質式やクラーク電極式の酸素センサを用いて構成し、エタノールガスやアセトンガスの濃度の変化量と、酸素の濃度の変化量との比率を用いて、血中のエタノール濃度やアセトン濃度を算出すればよい。
【0081】
また、エタノールガス濃度又はアセトンガス濃度のベース値と共に飽和値を取得して、エタノールガス濃度又はアセトンガス濃度の変化量を用いて、血中のエタノール濃度又はアセトン濃度を算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、エタノールガス濃度又はアセトンガス濃度のピーク値を取得して、エタノールガス濃度又はアセトンガス濃度の変化量を求めるようにしてもよい。この場合には、二酸化炭素濃度のピーク値を取得し、二酸化炭素濃度の変化量を求め、これらの変化量の比率から、血中のエタノール濃度又はアセトン濃度を算出するようにすればよい。また、エタノールガス濃度又はアセトンガス濃度の変化速度を取得し、エタノールガス濃度又はアセトンガス濃度の変化速度と、二酸化炭素濃度の変化速度との比率から、血中のエタノール濃度又はアセトン濃度を算出するようにしてもよい。
【0082】
また、検出対象者の手掌の皮膚から拡散される皮膚ガスを検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、検出対象者のその他の部位の皮膚から拡散される皮膚ガスを検出するようにしてもよい。例えば、検出対象者の指の皮膚から拡散される皮膚ガスを検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 エタノール濃度検出装置
12 筐体
14 貯留室
24A アルコールセンサ
24B 二酸化炭素センサ
26 コンピュータ
32 第1センサ出力取得部
34 第2センサ出力取得部
36 血中濃度算出部
210 エタノール濃度検出装置
222A 光学フィルタ
222B 二酸化炭素用光学フィルタ
224A エタノール用光電変換素子
224B 二酸化炭素用光電変換素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象者の血中の検出対象物質が皮膚からガスとして拡散した検出対象ガスの濃度を検出する対象ガス検出手段と、
血中濃度が安定し、かつ、水溶性を有し、皮膚から拡散される参照ガスの濃度を検出する参照ガス検出手段と、
前記対象ガス検出手段によって検出された前記検出対象ガスの濃度、及び前記参照ガス検出手段によって検出された前記参照ガスの濃度に基づいて、血中の前記検出対象物質の濃度を算出する血中濃度算出手段と、
を含む皮膚ガス検出装置。
【請求項2】
前記参照ガスの、血中から皮膚に拡散される程度を示す拡散係数が、前記検出対象物質の拡散係数と相関関係にある請求項1記載の皮膚ガス検出装置。
【請求項3】
前記検出対象者の所定部位を載置するための載置部、及び前記所定部位の皮膚から拡散されるガスを貯める貯留室を備えた筐体を更に含み、
前記対象ガス検出手段は、前記貯留室内の前記検出対象ガスの濃度を検出し、
前記参照ガス検出手段は、前記貯留室内の前記参照ガスの濃度を検出する請求項1又は2記載の皮膚ガス検出装置。
【請求項4】
前記血中濃度算出手段は、以下の式に従って、血中の前記検出対象物質の濃度を算出するようにした請求項1〜請求項3の何れか1項記載の皮膚ガス検出装置。
血中の前記検出対象物質の濃度=a×(ΔGas)/(ΔRef)
ただし、ΔGasは前記対象ガス検出手段によって検出された前記検出対象ガスの濃度の変化量、ΔRefは前記参照ガス検出手段によって検出された前記参照ガスの濃度の変化量、aは係数である。
【請求項5】
前記検出対象物質を、エタノール及びアセトンの何れか一方とした請求項1〜請求項4の何れか1項記載の皮膚ガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−281698(P2010−281698A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135512(P2009−135512)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】