説明

皮膚バリア機能回復促進用水中油型乳化組成物

【課題】皮膚の機能は様々あるが、その1つにバリア機能があが、紫外線や化学物質の外部からの刺激やストレスや老化等の内部要因によっても皮膚バリア機能が低下する。この皮膚バリア機能の回復をすみやかに行う製剤を提供する。
【解決手段】ステロールエステルを70%以上含む油溶性成分と、界面活性剤の1種または2種以上と、水溶性成分からなる乳化物で、平均粒子径が300nm以下である皮膚バリア機能回復促進用水中油型乳化組成物。さらには、界面活性剤が、レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、糖セラミドより選択された1種または2種以上である場合に特に有効であった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品や医薬品として用いられる水中油型乳化組成物に関する。さらに詳しくは皮膚バリア機能回復促進に有効な水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の機能は様々あるが、その1つにバリア機能があるが、紫外線や化学物質の外部からの刺激やストレスや老化等の内部要因によっても皮膚バリア機能が低下する。
皮膚バリア機能の回復にはセラミドやニコチン酸類(特許文献1参照)グリチルリチン或いはその誘導体やアスパラガスやブッチャーズブルームの抽出物(特許文献2参照)等が知られている。
化粧品等の分野ではステロールエステルは原料として使用されている。その一例は液晶構造を取るので外観上の美観や保湿性の高い化粧品として用いられている。(特許文献3参照)
【特許文献1】特開平11−292765号公報
【特許文献2】特開2000−053533号公報
【特許文献1】特開平01−246209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化粧品ですでに、皮膚バリア機能回復を目的としたものは存在するが、より優れた皮膚バリア機能回復能を有した化粧品を見出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ステロールエステルを70%以上含む油溶性成分と、界面活性剤の1種または2種以上と水溶性成分からなる水中油型乳化物であって、平均粒子径が300nm以下にすることによって皮膚バリア機能回復能が非常に優れた製剤を得ることができた。(なお、本願においては%は重量%を示す)
【0005】
まず、本発明に用いるステロールエステルは、コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、ジヒドロラノステロール、デスモステロール、スチグマステロール、シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール等のステロールと、炭素数2〜30の飽和または不飽和の分岐を有していてもよいさらにはヒドロキシ基を有していてもよいカルボン酸とのエステルである。 これの1種または2種以上を用いる。
これらのステロールエステルは油溶性成分の70%以上を占めるように配合する。その他油溶性成分には特に限定はない。
【0006】
界面活性剤は陰イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤いずれでもよいが、ステロールエステルの種類や量、その他の油溶性成分、水溶性成分の種類や量によって界面活性剤の種類や量が選択されるが、主に非イオン界面活性剤選択される。
とくに安全性や天然物の利用、皮膚への有効性等の問題よりレシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、糖セラミドが好ましい。
レシチンは卵黄や植物から抽出されたレシチンはもちろんのこと、これらをさらに精製して得られるレシチンまたは水添物、リゾレシチンを含む。
ポリグリセリン脂肪酸エステルはグリセリンの重合度が5〜15のポリグリセリンと炭素数16〜22の直鎖、分岐、飽和、不飽和の脂肪酸とのエステルで平均エステル化度は2以下であるものがもっともよく利用される。
糖セラミドはガラクトシルセラミド、グルコシルセラミドあるいはこれらを含む動物性スフィンゴ脂質、植物性スフィンゴ脂質等がもっともよく利用される。
【0007】
水溶性成分は水、多価アルコール、水溶性薬剤等を配合するが、特に多価アルコールは配合することが好ましい。
多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、それ以上のポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、それ以上のポリプロピレングリコール類、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のブチレングリコール類、グリセリン、ジグリセリン、それ以上のポリグリセリン類、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコール類、グリセリン類のエチレンオキシド(以下、EOと略記)、プロピレンオキシド(以下、POと略記)付加物、糖アルコール類のEO、PO付加物、ガラクトース、グルコース、フルクトース等の単糖類とそのEO、PO付加物、マルトース、ラクトース等の多糖類とそのEO、PO付加物などの多価アルコール等が例示される。特にこのなかでもグリセリンが本発明の趣旨に合致し、諸条件によって異なるが水溶性成分うち、20%以上はグリセリンであることが好ましい。
多価アルコールは粒子の大きさに影響するので配合量や種類を目的に合致するように選択する。
水もある程度配合可能であるが、微粒子化が必要であるため、後工程で強力な乳化が必要であるので、微粒子化後に水および水溶性薬剤、水溶性高分子等を配合することも可能である。
【0008】
油溶性成分と、界面活性剤と、水溶性成分の配合比率はそれぞれの種類や製剤の用途、また、以下に述べるように微粒子化後に加える成分や量によって大きく異なるが、油溶性成分を1としたとき、界面活性剤量は0.01〜100、水溶性成分は1〜1000が好ましい。
【0009】
これらの原料を乳化機を使用して、平均粒子径を300nm以下、さらに好ましくは150nm以下に乳化する。
配合原料によってはプロペラ式攪拌機、ホモミキサー等でも可能な場合はあるが、マントンーゴーリン型、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルイディスク社製)、アルティマイザー(商品名、タウテクノロジー社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)等の高圧乳化機の使用が必要である。
【0010】
乳化後、必要に応じて水溶性成分や水中油型乳化組成物を加えて撹拌し、必要な製剤を得る。
水溶性成分や水中油型乳化組成物には油性成分、保湿剤、界面活性剤、ビタミン類、色素、香料、各種薬剤、水等を配合することができる。
【0011】
以下にその例示をするとオリーブ油、ミンク油、ヒマシ油、パーム油、牛脂、月見草油、ヤシ油、ヒマシ油、カカオ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、固形パラフィン、スクワラン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートイソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、エラスチン、コラーゲン、トリクロサン、トリクロロカルバン、メチルパラベン、ブチルパラベン、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、アデノシン一リン酸等のアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、サイクリックAMP、サイクリックGMP、フラビンアデニンヌクレオチド、グアニン、アデニン、シトシン、チミン、キサンチン及びそれらの誘導体であるカフェイン、テオフィリン、幼牛血液抽出液、血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、トリ等の卵成分、鶏冠抽出物、魚肉抽出物、イカスミ等軟体動物抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ヘモグロビン又はその分解物、ラクトフェリン又はその分解物等、哺乳類、鳥類、魚類、軟体動物類、甲殻類、貝類、昆虫類等の動物由来の抽出物;酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝産物等の微生物由来の抽出物;α−及びγ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸及びそれらの誘導体、エストラジオール、エテニルエストラジオール等のホルモン類、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン、パンテノール及びその誘導体並びにそれらの塩、ε−アミノカプロン酸、ジクロフェナクナトリウム、トラネキサム酸あるいは抗酸化剤が、ビタミンA類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンD類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンE類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール、フェルラ酸とカフェー酸、カロテノイド類、フラボノイド類、タンニン類及び没食子酸及びその塩並びにエステル類、トコフェロール及びその誘導体類、ノニル酸バニリルアミド、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、α−ボルネオール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール、アスコルビン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、 N,N’−ジアセチルシスチンジメチル等のシステイン及びその誘導体並びにその塩、グラブリジン、グラブレン、リクイリチン、イソリクイリチン、胎盤抽出物、アルブチン等のハイドロキノン及びその誘導体、レゾルシン及びその誘導体、フェルラ酸とカフェー酸およびそれらの誘導体並びにそれら塩、グルタチオン、蝉退抽出物、カンゾウ抽出物、カミツレ抽出物、カロチノイド類を含有する動植物抽出物、アスパラガス抽出物、エンドウ豆抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、オノニス抽出物、海藻抽出物、キイチゴ抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コーヒー抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、トマト抽出物、ビャクレン抽出物、ブナの芽抽出物、ブドウ抽出物、フローデマニータ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物、ユーカリ抽出物、ヨクイニン抽出物及び羅漢果抽出物が例示される。(多価アルコールと界面活性剤は前述したので省略する)
【0012】
製剤の形態としては、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、水溶液、パック等の任意の剤形を選択することができる。
【実施例】
【0013】
実施例1 重量部
A部
水素添加レシチン 0.500
グリセリン 13.200
1,3ブチレングリコール 3.300
B部
オレイン酸ジヒドロコレステリル 0.761
ノナン酸コレステリル 0.761
酪酸コレステリル 0.453
酪酸ジヒドロコレステリル 0.305
オレイン酸フィトステアリル 0.120
長鎖分岐脂肪酸コレステリル 0.600
作成方法
A部、B部をそれぞれ撹拌しながら85℃で溶解した。A部にB部を加えながらホモジナイザー(プライミクス社製 型番T.K.ロボミックス)5000rpmで1分間撹拌した。
これをマイクロフルイダイザー(マイクロフルイディスク社製型番M−110−EH)124MPaで1回処理した。
これを35℃まで徐冷した。
なお、水素添加レシチンは(辻製油社製SLP−PC70HS)を長鎖分岐脂肪酸コレステリルは日本精化社製YOFCO CLE−NEを用いた。
【0014】
実施例2 重量部
実施例1 20.0
精製水 58.4
1,3ブチレングリコール 4.7
1,2ペンタンジオール 3.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
グリセリン 1.8
2%カルボキシビニルポリマー水溶液(中和) 12.0
作成方法
これらを混合した。
【0015】
実施例3 重量部
A部
スクワラン 15.0
オリーブ油 1.0
ミンク油 1.0
ホホバ油 2.0
ミツロウ 2.0
セトステアリルアルコール 2.0
グリセリンモノステアレート 1.0
ソルビタンモノステアレート 2.0
B部
精製水 37.9
ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 1.0
グリセリン 5.0
1.0%ヒアルロン酸ナトリウム水溶液 5.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
C部
実施例1 20.0
A部とB部をそれぞれ計量し、70℃まで加温し、B部にA部を撹拌しつつ徐々に加えたのち、ゆっくり撹拌しつつ30℃まで冷却した。これにC部を撹拌しつつ徐々に加えた
【0016】
比較例1
マイクロフルイダイザー処理のみを省略した実施例1を用いた実施例2で、他は同一のもの
【0017】
皮膚バリア機能回復促進試験
健常男子(34〜54才)6名で以下の試験を実施した。
左前腕内側部3ヶ所に内径2cmのガラス円筒を押し付けでガラス円筒に1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を5ml入れ、5分間放置後取り除いた。これを1日2回、3日間実施した。
ラウリル硫酸ナトリウムで肌荒れを起こした部位に、検体1(実施例2)、検体2(比較例1)、を1日2回、25日間塗布した。(1ヶ所は無塗布)
ラウリル硫酸ナトリウムで肌荒れを起こす前(初期)、ラウリル硫酸ナトリウムを6回塗布後、検体塗布後4日後、11日後、18日後、25日後に以下の方法で皮膚からの水分蒸発量(TEWL)を測定した。
左前腕内側部を市販の洗顔フォームで洗浄した後、温度21℃±2℃、湿度45%±5%の恒温恒湿室で30分間経過後、水分蒸発量(TEWL)を測定した。
測定にはアサヒバイオメッド社製VAPOSCAN AS−VT100RSを用いた。
結果は6名の平均を取り、初期値を1として示した。(表1)
【0018】
【表1】

【0019】
粒子径の測定
実施例1及び比較例1で用いたマイクロフルイダイザー処理を省略した実施例1と同一処方部の1%水溶液をマルバーン社製ゼータサイザーナノで粒子径を測定した結果、平均粒子径は、実施例1が133nm、比較例1で用いたマイクロフルイダイザー処理を省略した実施例1と同一処方部で2970nmであった。
【0020】
このように、実施例2と比較例1は同一配合物であるにも関わらず、平均粒子径が異なることによって肌荒れの改善すなわち、皮膚バリア機能の回復をすみやかに行うことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステロールエステルを70%以上含む油溶性成分と、界面活性剤の1種または2種以上と、水溶性成分からなる乳化物で、平均粒子径が300nm以下である皮膚バリア機能回復促進用水中油型乳化組成物
【請求項2】
界面活性剤が、レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、糖セラミドより選択された1種または2種以上である請求項1の皮膚バリア機能回復促進用水中油型乳化組成物
【請求項3】
ステロールエステルの一部が分岐脂肪酸(炭素数12〜31)とコレステロールのエステルである請求項1乃至請求項2の皮膚バリア機能回復促進用水中油型乳化組成物
【請求項4】
平均粒子径が150nm以下である請求項1乃至請求項3の皮膚バリア機能回復促進用水中油型乳化組成物
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の水中油型乳化組成物に水溶性成分および/または水中油型乳化組成物を加えた皮膚バリア機能回復促進用組成物

【公開番号】特開2010−24180(P2010−24180A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187103(P2008−187103)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000166959)御木本製薬株式会社 (66)
【Fターム(参考)】