説明

皮膚処置組成物

本発明は、皮膚と同一のラメラ構造を模倣することのできる混合物であるセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸の混合物と、非イオン性乳化剤とから本質的になる皮膚処置組成物を開示する。これらの組成物は、室温で液体であり、ポンプ汲み出し可能であり、このことは、これらを加熱する必要なく、化粧品製剤中に容易に組み込むことができることを意味する。さらに、この皮膚処置組成物は、水中油型エマルジョン中、ならびに油中水型エマルジョン中に、長鎖セラミドを安定に包含させることを可能にする。皮膚調整剤として作用することのできる短鎖セラミドを包含させても、ラメラ脂質構成に影響しなかった。この皮膚処置組成物、ならびに化粧品製剤および皮膚製剤におけるその使用を特許請求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオアベイラビリティーの最適化およびヒトの皮膚への適用のための、結晶化を防止する、ラメラ構造中に組み込まれた脂質からなる局所的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、物理的、化学的、および生物学的攻撃に対するプロテクターとして作用する、高度に複雑な組織である。これは、脱水からの保護および体温の制御において重要な役割を果たす(A Short Textbook of Cosmetology、KF de Polo(編)、Verlag fur chemische Industrie、H. Ziokowski GmbH、Augsburg (D)、1998)。このバリアーは、「角質層(horny layer)」(角質層(stratum corneum)、SC)によって提供され、表皮の最外層を代表している。角質層は、薄い、不活性な、保水性バリアーであり、これは、皮膚の水分含量を調節するとともに、皮膚を外部の影響から保護する。
【0003】
その構造のために、角質層は、れんが壁と比較されることが多く、脂質のマトリックス(「モルタル」)中に、成長できない角質細胞がれんがのように埋め込まれている(Elias PM、J. Invest. Dermatol. 80 (Suppl 1)、44 (1983))。この脂質混合物が集合して、セラミド、コレステロール、および脂肪酸からなる、高密度に詰め込まれたラメラ構造を構築する。文献では、行われた抽出および分析方法、ならびに分析に使用された皮膚の素性に応じて、皮膚脂質の様々な組成が示されている。重量ベースでは、これらの脂質は、約47重量%のセラミド、24重量%のコレステロール、11重量%の遊離脂肪酸、および18重量%のコレステロールエステルからなる(Rawlings AV、Int. J. Cosmet. Sci. 25、1-33 (2003))。
【0004】
角質層の脂質環境は、皮膚の平衡状態を維持するための重要な要因である。年齢、健康または環境状態の結果として脂質組成の変化が起こり、バリアー機能の低下につながる(Rawlings, A.V.ら、J.Invest.Dermatol. 103、731-740 (1994); Motta S;Arch Dermatol. 1994; 130、452-456; Choiら、J Invest Dermatol. 2005年3月、124(3)、587-595)。これらの知見により、コレステロールおよび脂肪酸と組み合わせたセラミドは、スキンケア製品の価値ある成分であるという概念が導かれたが、これは、そのような製品の局所適用により、低レベルの角質層脂質を補充することができるためである。
【0005】
セラミド、脂肪酸、およびコレステロールを含有する脂質混合物の局所適用により、様々な準最適条件下で皮膚の性能が改善される。例えば、経時的に老化した皮膚(Zetterstenら、J Am Acad Dermatol. 1997年9月、37、403-408)、心理的にストレスのかかった皮膚(Choiら、J Invest Dermatol. 2005年3月、124(3)、587-595)におけるバリアー回復、または接触性皮膚炎における皮膚のバリアー性および臨床症状の改善(Beradescaら、Contact Dermatitis、2001、45、280-285)である。
【0006】
EP0644764(Eliasら)には、表皮加湿およびバリアー機能の修復のための、コレステロールおよび/または脂肪酸とともにアシルセラミド、セラミド、またはグルコシルセラミドからなる特定の脂質混合物が記載されている。この発明は、過剰増殖およびバリアー機能の破壊を示す皮膚疾患の治療に関する。
【0007】
ケラチノサイトの増殖および分化への短鎖セラミドの活性は、文献に記載されている(Pillaiら、J Invest Dermatol. Symp. Proceed.1、39-43)。US5578641(Jacksonら)には、表皮における皮膚自体のセラミド産生経路の補足のための、1種または複数種のセラミド経路中間体または前駆体の局所適用が記載されている。列記された構造には、1から10個の原子の炭素鎖長を有する遊離スフィンゴイド塩基およびそのN−アシル誘導セラミドが含まれる。この発明は、しわ形成を低減または遅延させるための乾燥皮膚および/または(光−)損傷皮膚の治療に関する。
【0008】
EP0975325(Lambers)には、脂質バリアー機能への正の相乗効果を示す、遊離スフィンゴイド塩基とセラミドの組合せを含む組成物が記載されている。
【0009】
膜二重層構造の物理的構成は、有効な皮膚バリアーにとって重要であり、これは、密接に詰め込まれた斜方晶構造中の脂質ラメラのアセンブリーによって提供される。SC脂質のアセンブリーに対する詳細な研究が実施され、いわゆる「サンドイッチモデル」が確立された(Bouwstra Jら、Skin Pharmacol. Appl. Skin Physiol. 14、52-62 (2001))。電子顕微鏡法およびX線回折によって、SC脂質は、流体領域を含む狭い中央の脂質層によって隔てられた、結晶構造を有する2つの広い脂質層を表す二重層の、交互の広い/狭い/広い配列として観察される。角質層脂質セラミド、コレステロールおよび脂肪酸の局所適用のための最適な比は、モルベースで1:1:1の範囲内である。in vivoでの角質層脂質の構造構成は、詳細に明らかにされた合成セラミド1、2、3および9を用いて調製される脂質混合物によって模倣することができる(de Jagerら、J. Lipid Res. 2005年12月、46(12)、2649-2656)。セラミド分類のさらに最近のレタリング方式(Mottaら、BBA、1993、1182、147-151)を使用すると、これらのセラミドは、それぞれ、Cer(amide)EOS、Cer NS、Cer NPおよびCer EOPと呼ばれる。
【0010】
セラミドの皮膚科学的重要性は知られているが、化粧品製剤中にセラミドを安定な方法で組み込むという目的に挑戦することが依然として残っている。この観点における安定は、製剤が物理的に安定であるだけでなく、セラミドがこれらの製剤から再結晶化しないことも意味する。
【0011】
この結晶化現象を回避しながら、化粧品製剤中にセラミドをどのように包含させることができるかを説明するものが公表されてきた(例えば、T. Dietz、P. Hameyer、SOFW-Journal (5)、2-9 (2003))。これらの研究において、セラミド3(NS)の例で、最大1重量%のこのセラミドを、結晶化することなく、化粧品の水中油型エマルジョン中に包含させることができることが示された。セラミドを首尾よく製剤化することにおける重大なステップとして、第1の処理ステップでセラミドを油相中に溶解させなければならないことが指摘された。これを達成するために、油相は、90℃に加熱しなければならなかった。
【0012】
残念ながら、利用可能な処理設備の制限、または製剤中の温度感受性の成分によって生じる制約のために、そのような処理は、多くの種類の化粧品製剤にとって可能ではない。また、環境上および経済上(より長い処理、加熱のための費用)の理由のために、そのような処理方法は最適でない。
【0013】
さらに、Dietzの論文では、セラミド3(Cer NS)を、油中水型エマルジョン中に安定な方法で包含させるというすべての試みは失敗したことも記載されている。すべての製剤中で、これらの製剤中、0.1重量%の非常に低いセラミド濃度でさえ、室温で数日貯蔵した後に、セラミド3(Cer NS)結晶が現れた。
【0014】
水中油型エマルジョンに対してだけに製剤中にセラミドが安定に包含されるという制限は、化粧品配合者にとって著しい制約であるが、これは、油中水型エマルジョンが、特に乾燥皮膚に対して、その加湿することの利点で知られているためである。
【0015】
さらに、18個の炭素原子より長いN−アシル側鎖を有するセラミドを、製剤中に安定に包含させることは、よりいっそう困難であるが、これは、これらの長鎖セラミドは、はるかに容易に結晶化する傾向があるためである。
【0016】
しかし、皮膚と同一のラメラ構造を模倣することのできる、セラミド/コレステロール/脂肪酸の混合物を提供するために、Bouwstraおよび彼女のグループは、特にそのような長鎖セラミドが必要であることを示した(Bouwstra, J.A.ら、J. Lipid Research 1999、39、186-196; Bouwstra, J.A.ら、J. Invest. Dermatol. 2002、118、606-617; de Jager,M.W.ら、Chem.Phys. Lipids 2003、124、123-134)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
すべてのこれらの理由のために、化粧品および医薬品配合者に、以下のことができる組成物を提供する必要がある。
1)貯蔵しても組成物中にセラミドが結晶化することなく、長鎖セラミド(18個の炭素原子より長いN−アシル側鎖)を含有する、皮膚と同一のラメラ構造を模倣すること。
2)40℃を超える温度に油相または水相を加熱する必要なく、製剤中に容易に組み込むこと。したがって、この組成物は、室温で液体である必要があり、かつ、陰イオン性、両性、または陽イオン性成分と、適合性の問題を有するべきではない。
3)水中油型エマルジョンならびに油中水型エマルジョン中に長鎖セラミドを安定に包含させることを可能にすること。両型のエマルジョン系において、この組成物は、貯蔵したときにセラミドの再結晶化を防止することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
驚いたことに、すべての3つ目的は、非イオン性親水性乳化剤と、粘稠性エンハンサーと、中鎖および長鎖セラミドを含有する特定のセラミド混合物と、脂肪酸と、コレステロールとに基づく皮膚処置組成物を適切に設計することによって満足することができることが判明した。このコレステロールは、動物に由来するか、微生物によって産生されるか、植物起源を有するか、または植物由来材料から出発して合成されるかのいずれかであることができる。
【0019】
さらに、驚いたことに、短鎖セラミド(C4からC8アルキル鎖)を包含させても、ラメラ脂質構成が変化しないことが判明した。ただし、この包含により皮膚中のセラミドの産生が増大した。
【0020】
したがって、化粧品組成物を皮膚上に適用したとき、短鎖セラミドは、驚いたことに調整剤として作用した。
【0021】
したがって、本発明は、液体のポンプ汲み出し可能な(pumpable)皮膚処置組成物であって、
A)A1)10から80重量%の、セラミドまたは少なくとも2種のセラミドの混合物であって、ただし、これらのセラミドの少なくとも1種は、18個の炭素原子を超える長いアルキル、アルケニルまたはアシル側鎖を含有し、40重量%未満が26個の炭素原子より大きな側鎖を有する、セラミドまたはセラミドの混合物と、
A2)10から45重量%のコレステロールと、
A3)10から45重量%の遊離脂肪酸(C12からC30のアルキル−、アルケニル−、アルカジエニル−、アルカトリエニル−、アルカポリエニル鎖、またはこれらの組合せ)と
からなる、0.1から10重量%、好ましくは0.2から8重量%、特に好ましくは0.5から5重量%の混合物と、
B)0.5から10重量%、好ましくは1から8重量%、特に好ましくは4から6重量%の、12から19の混合HLB値(combined HLB value)を有する非イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤混合物と、
C)40重量%以上の水と、場合により、
D)0.1から10重量%、好ましくは0.1から6重量%、特に好ましくは1から5重量%の、ステアリン酸グリセリルまたはC16〜C22アルカノールのような粘稠性エンハンサーと、場合により、
E)助剤および添加剤と
を含有し(すべてのパーセンテージは、重量%として示される)、ただし、A)からE)は、合計100重量%にならなければならない、液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物に関する。
【0022】
本発明の混合物の主な利点は、以下の通りである。
1)室温、すなわち、約20℃から30℃で、液体で、ポンプ汲み出し可能/注入可能(pourable)状態を有し、
2)−5℃から40℃の間の温度で最大1年間貯蔵しても、セラミドの結晶化を示さず、
3)40℃を超える温度に油相または水相を加熱する必要なく、化粧品製剤中に容易に組み込むことができ、陰イオン性、両性、または陽イオン性成分と不適合性作用を示さず、
4)5℃から40度の間の温度で最大1年間貯蔵したときに、これらの製剤中のセラミドの再結晶化を防止することによって、水中油型ならびに油中水型エマルジョン中に、長鎖セラミドを安定に包含させることを可能にする。
5)5℃から40度の間の温度で最大1年間貯蔵したときに、これらの製剤中のセラミドの再結晶化を防止することによって、水中油型ならびに油中水型エマルジョン中に、皮膚と同一のラメラ構造を模倣することのできる特定のセラミド混合物を安定に包含させることを可能にする。
6)上述したいずれの利点も失うことなく、これらの特定のセラミド混合物に短鎖セラミドを加えることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1における、A1としてSynthCerII混合物を用いたSAXDパターンを示す。
【図2】実施例1における、A1としてScer6混合物を用いたSAXDパターンを示す。
【図3】実施例2における、A1 lam混合物として、Ser6、Ser6+10%の短鎖セラミドNS+NP、Ser6 FFAリノール酸を用いたSAXDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、皮膚処置組成物は、0.5から5重量%のセラミド/コレステロール/遊離脂肪酸の混合物A)と、4から6重量%の、12から19の混合HLB値を有する非イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤混合物と、1から5重量%の、ステアリン酸グリセリルまたはC16からC22のアルカノールのような粘稠性エンハンサーと、場合により、助剤および添加剤とを含有し、水で合計100重量%にされる。
【0025】
混合物A1)中に存在するセラミド(複数も)は、
1)式1
【0026】
【化1】

(式中、
Aは、−CH−CH−、−CH=CH−、または−C(H)OH−CH−であり、
Rは、10から22個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基であり、これは、場合により、1個または複数個の二重結合を含むことができ、および/または場合により、1個または複数個のヒドロキシル基で置換することができる)
による一般構造式を有するスフィンゴイド塩基
からなる。
【0027】
Rは、12から18個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、または11から17個の炭素原子を有する直鎖アルキル基に結合したC(H)OHのいずれかであることが好ましい。
【0028】
最も好ましいAとRの組合せは、フィトスフィンゴシン(P)、スフィンゴシン(S)、6−ヒドロキシスフィンゴシン(H)およびスフィンガニン(Sa)である。
【0029】
上記スフィンゴイド塩基は、式2
【0030】
【化2】

(式中、
は、1から55個の炭素原子、好ましくは3から50個の炭素原子、およびより好ましくは5から44個の炭素原子を含有する直線または分岐のアルキル鎖である)
により、アミド結合を介して脂肪酸(ヒドロキシおよび非ヒドロキシ脂肪酸の両方)に結合している。
【0031】
アルキル鎖は、酸素原子または内部エステル基によって中断されていてもよく、最終的に1個または複数個の二重結合を含んでもよく、最終的に1個または複数個のヒドロキシル基、
または
皮膚と同一のセラミド(これらは、上記のような組成を有するが、哺乳動物の皮膚中に存在する天然セラミドと同一である立体化学配置を有するセラミドである)、
または
天然セラミド(これらは、上記のような組成を有するセラミドであり、哺乳動物の皮膚から抽出され、抽出過程の間、その最初の立体化学配置を維持している)、
または
その組合せによって置換されていてもよい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、セラミド/コレステロール/遊離脂肪酸の混合物Aは、
A1a)長いアルキル、アルケニル、またはアシル鎖(C18超)を有する、30重量%超の含量のセラミドであるが、非常に長い鎖(C27超)のアシルセラミドの含量は40重量%以下であるべきであるセラミドと、
A1b)短いアルキル鎖(C4からC8)を有する、1から30重量%の含量のセラミドと
からなる天然または皮膚と同一のセラミドの組合せ物A1)を含有する。
【0033】
本発明による組成物中に存在する混合物A1)は、以下からなることが好ましい。
− 長いアルキル、アルケニル、またはアシル側鎖を有する少なくとも2種のセラミドの組合せ物であって、長いとは、18個の炭素原子を超えることを意味する組合せ物と、
− これらのセラミドのうちの少なくとも1種は、20から26個の炭素原子の鎖長を有するセラミドNS、NP、NHであるべきであり、混合物A1)の少なくとも40重量%を形成するべきであることと、
− セラミドEOS、EOP、EOHのようなアシルセラミドは、混合物A1)の40重量%超で存在すべきでないことと、
− スフィンゴシン、6−ヒドロキシスフィンゴシン、およびフィトスピンゴシン(phytospingosine)由来のセラミドの一部は、そのスフィンガニン由来等価物と交換することができることと、
− 場合により、中程度の側鎖長(16から18個の炭素原子)のセラミドを、最大30重量%まで、混合物A1)に加えることができることと、
− 場合により、1)短い側鎖長(4から8個のC原子)のセラミド、または2)2個の炭素原子の側鎖を有するスフィンゴイド塩基および/またはセラミドを、それぞれ最大30重量%(1)および15重量%(2)まで加えることができること。
【0034】
本発明のより好ましい実施形態では、セラミド/コレステロール/遊離脂肪酸の混合物Aは、皮膚と同一のラメラ構造を模倣することのできる、天然または皮膚と同一のセラミドの特定の組合せ物A1(以下ではA1 lam)と呼ぶ)を含有する。この目的のために、セラミド混合物A1lamは、少なくとも3種だが、好ましくは4種の天然または皮膚と同一のセラミド、すなわち、
− 8から35重量%、好ましくは9から15重量%の、27個以上の炭素原子の側鎖を有する、1または2種のアシルセラミドであり、全アシルセラミドの最大45重量%までは、セラミド9とすることができるアシルセラミドと、
− 10重量%以上、好ましくは25から40重量%の、少なくとも1種のスフィンゴシンベースのセラミドNSまたはASと、
− 10重量%以上、好ましくは25から40重量%の、少なくとも1種のフィトスフィンゴシンベースのセラミドNPまたはAP、好ましくはセラミド3(Cer NS)と、場合により加えることができる、
− 最大30重量%までの、短いアルキル側鎖(C4からC8)を有する、天然または皮膚と同一のセラミドと
からなるべきである。
【0035】
皮膚と同一のラメラ構造を模倣することのできる、最も好ましい混合物A1lamの組成物は以下のものからなる。
− 50から70重量%の、45/55の比のセラミドNS+セラミドNP(両方とも20から26個のC原子の側鎖長を有し、このNS+NPの最大20重量%までは、同様の側鎖長を有するセラミドNHによって置換することができる)、
− 14から20重量%の、6対4の比のセラミドEOS+セラミドEOP(両方とも27と32個のC原子の間の側鎖長を有し、このEOS+EOPの最大20重量%までは、同様の側鎖長を有するセラミドEOHによって置換することができる)、
− 10重量%以上、好ましくは15重量%の、16から18個のC原子の中程度の側鎖長を有するセラミドNP(このセラミドNPの約30重量%は、そのスフィンゴジン[NS]、6−OHスフィンゴシン[NH]、またはスフィンガニン[NSa]ベースの等価物によって置換することができる)、
− 0重量%以上、好ましくは10重量%の、16から24個のC原子の側鎖長を有するセラミドAP(セラミドNPの約30重量%は、そのスフィンゴジン[NS]、6−OHスフィンゴシン[NH]、またはスフィンガニン[NSa]ベースの等価物によって置換することができる)、
− 場合により、A1混合物に加えることのできる、約10重量%の、1/1の比の短鎖(4から8個のC原子の側鎖)セラミドNS+NP(NS+NPの最大20重量%までは、同様の側鎖長を有するセラミドNHまたはNSaによって置換することができる。この選択肢を使用する場合、混合物A1lam中の中鎖および長鎖セラミドの適用量は、比例して低減される)。
【0036】
本発明による組成物中に存在する遊離脂肪酸A3)は、C12からC30、最も好ましくはC18からC26のアルキル、アルケニル−、アルカジエニル−、アルカトリエニル−、アルカポリエニル−鎖、またはその組合せを有する脂肪酸からなることが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、ベヘン酸(C22)が遊離脂肪酸成分A3)として使用される。
【0037】
本発明による組成物中に存在する非イオン性乳化剤または乳化剤混合物B)は、以下の群のうちの少なくとも1つからの化合物を含む。
− 8から22個の炭素原子を有する直鎖脂肪アルコール上、12から22個の炭素原子を有する脂肪酸上、およびアルキル基中に8から15個の炭素原子を有するアルキルフェノール上への、2から30molのエチレンオキシドおよび/または0から5molのプロピレンオキシドの付加生成物、
− グリセロール上への1から30molのエチレンオキシドの付加生成物のC12/18脂肪酸モノ−およびジエステル、
− 6から22個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸ならびにそのエチレンオキシド付加生成物の、グリセロールモノ−およびジエステルならびにソルビタンモノ−およびジエステル、
− アルキル基中に8から22個の炭素原子を有する、アルキルモノ−およびオリゴグリコシド、ならびにそのエチレンオキシド付加生成物、
− ヒマシ油および/または硬化ヒマシ油上への2から200molエチレンオキシドの付加生成物、
− 直鎖、分岐、不飽和または飽和C6〜22−脂肪酸、リシノール酸、および12−ヒドロキシステアリン酸およびグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリトリトール、糖アルコール(例えば、ソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)、およびポリグルコシド(例えば、セルロース)に基づく部分エステル(ここでは、グリセロール、ポリグリセロール、およびソルビトールの部分エステルの使用が好ましく、これらは、例えば、グリセリルラウレート、ポリグリセリル−4ラウレートおよびソルビタンラウレートである)、
− モノ−、ジ−およびトリアルキルホスフェート、
− DE−11 65 574に記載のペンタエリスリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステルならびに/または6から22個の炭素原子を有する脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオール、好ましくはグリセロールもしくはポリグリセロールの混合エステル。
【0038】
本発明による組成物中に存在する非イオン性乳化剤または乳化剤混合物B)は、12から19の全HLB値、最も好ましくは14から18のHLB値を有する非イオン性エトキシ化乳化剤または非イオン性エトキシ化乳化剤の混合物からなることが好ましい。
【0039】
エトキシ化乳化剤EについてのHLB値は、式(1)
【0040】
【数1】

によって一般に計算され、Eは、エトキシ化乳化剤i中のエチレンオキシド基の重量パーセントである。乳化剤混合物が使用される場合、全HLB値(HLBmixture)は、式(2)
【0041】
【数2】

によって与えられるような単純な線形質量加重平均として計算され、(m/mtotal)は、乳化剤iの質量の割合である。
【0042】
非イオン性乳化剤および乳化剤混合物のHLB値のこの種の計算は、Griffinsによって導出された経験式に基づく(W.C. Griffin、J. Soc. Cosmet. Chem.、1949, 1、311およびW.C. Griffin、J. Soc. Cosmet. Chem.、1954, 5、249)。HLB値の代替の計算は、エマルジョン科学についてのいくつかの教科書に要約されている(例えば、B. P. Binks (編)、Modern Aspects of Emulsion Science、The Royal Society of Chemistry、Cambridge、1998)。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、セテアレス−25(HLB=16.2)が、親水性非イオン性乳化剤成分B)として使用される。
【0044】
本発明による助剤および添加剤Gとして、化粧品および医薬品用途において慣例的であり、当業者に既知のすべての助剤および添加剤を使用することができる。これらには、例えば、DE 10 2005 011 785.6に記載されているような、追加の粘稠性調整剤、増粘剤、ワックス、UV光保護フィルター、抗酸化剤、ヒドロトロープ、保存剤、香油、染料、および追加の生体活性成分が含まれる。
【0045】
上記に説明したように、液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物は、コールドプロセスで化粧品製剤、皮膚製剤(dermatological formulation)または医薬品製剤中に容易に組み込むことができる。
【0046】
化粧品製剤または皮膚製剤は、水溶液、油中水型(W/O)エマルジョン、水中油型(O/W)エマルジョン、水性もしくは水−アルコールゲル、ウェットワイプまたはエアロゾルとすることができる。所望の製剤の種類、例えばエマルジョンを含有する固形スティックまたはワックスを調製するためにホットプロセスが必要な場合、液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物は、そのような種類のホットプロセスにも使用することができる。
【0047】
化粧品製剤または皮膚製剤は、製剤全体の重量に対して、1から50重量%の油相および47から99重量%未満の水を含有するW/OまたはO/Wエマルジョンであることが好ましい。油相は、当業者に既知のすべての種類の化粧用皮膚軟化剤を含有することができる。エマルジョンは、当業者に既知のすべての種類の乳化剤、安定化ポリマーおよび増粘剤によって安定化される。そのような皮膚軟化剤、乳化剤、安定化ポリマーおよび増粘剤の例は、DE 10 2005 011 785.6に記載されている。
【0048】
したがって、本発明は、本発明による皮膚処置組成物を含有するセラミドを含む、化粧品製剤、皮膚製剤または医薬品製剤をさらに提供する。
【0049】
本発明の実施形態では、皮膚処置組成物は、0.001と20重量%の間の有効量で、局所皮膚処置製剤中に包含される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、皮膚処置組成物は、最小限の費用で利益を最大にするために、0.05と10重量%の間の有効量で、局所皮膚処置製剤中に包含される。
【0051】
皮膚処置組成物に加えて、他の特定の皮膚に利益となる活性剤、例えば、老化防止剤、モイスチャライザー、日焼け止め、皮膚美白剤、皮膚日焼け剤なども包含させることができる。
【0052】
一般的な追加の生理活性化合物は、以下のものである。
− トコフェロール、アスコルビン酸、ナイアシンアミド、レチノール、パンテノールのようなビタミンおよびその誘導体、
− α−リポ酸、コエンザイムQ10、イデベノン、ポリフェノール、フラボノイド、スチルベン、ヒドロキシスチルベン、キサントンまたはイソフラボンのような抗酸化剤、
− ビサボロール、アラントイン、フィタントリオール、フィトスフィンゴシン、スフィンゴシンのような抗炎症剤、
− 保湿剤、アミノ酸、ヒアルロン酸、ポリグルタミン酸、トリメチルグリシン、ミオイノシトール、ピログルタミン酸、タウリン、グアニジンおよびヒドロキシ酸、
− ペプチド、修飾ペプチド、タンパク加水分解物、リゾリン脂質、β−グルカン、クレアチン、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、植物抽出物または微生物抽出物のような老化防止剤、
− カフェインまたはカルニチンのような抗脂肪沈着剤、
− コウジ酸、アルブチン、ビタミンCおよび誘導体、ヒドロキノン、クレアチニンのような皮膚美白剤
− ジヒドロキシアセトン、エリトルロースまたはN−アセチルチロシンのような皮膚日焼け剤。
【0053】
さらに、化粧品および医薬品用途において慣例的であり、当業者に既知の助剤および添加剤を使用することができる。これらには、例えば、共乳化剤、粘稠性調整剤、増粘剤、ワックス、有機および無機UVフィルター、色素、緩衝液、ヒドロトロープ、脱臭剤および制汗剤活性成分、防虫剤、抗酸化剤、セルフタンニング剤、保存剤、香油ならびに染料が含まれる(例えば、DE 10 2005 011 785.6に記載されているような)。
【0054】
局所皮膚処置製剤に加えて、皮膚処置組成物は、頭皮の働きへの刺激的な効果を示すことができる場合、ヘアケア製剤、例えば、シャンプーおよびコンディショナーなどの中にも組み込むことができる。
【0055】
したがって、本発明の別の実施形態は、ヘアケア用途のための液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物の使用である。
【0056】
本発明による液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物は、いわゆる「ウォッシュオフ」製品、例えば、ボディーウォッシュ製剤、またはバスゲルもしくはシャワーゲルにおいても使用することができる。
【0057】
したがって、本発明の別の実施形態は、「ウォッシュオフ」用途における、液体のポンプ汲み出し可能なスキンケア処理剤の使用である。
【0058】
本発明による液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物を含有する製剤を調製するために、そのような製剤を調製するための通常の様式を使用することができる。本発明の皮膚処置組成物を含有する製剤は、従来の様式で、任意の適当な方法、例えば、ジャー、瓶、チューブ、ロールボール(roll-ball)などの中に梱包することができる。
【0059】
皮膚は、時間の経過(経時的老化、皮膚障害、ホルモンの変化)とともに、環境の酷使(environmental abuse)(風、空調、集中暖房、汚染、日光暴露など)を通じて劣化を受けやすい。これらの要因は皮膚性能の低下につながり、これはとりわけ、乾燥皮膚、粗い皮膚および硬い皮膚によって顕在化する。これらの作用は、皮膚水分(コルネオメーター測定)、バリアー機能(経表皮水分損失測定)または弾力性(キュートメーター測定)によって、in vivoで観察可能である。生理学的に観察可能なパラメーターに付随して、以下のような分子レベル上で関与するプロセスも存在する。
− 皮膚バリアーの構造的および酵素的成分(例えば、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリン、トランスグルタミナーゼ)の分化およびビルトアップ(built up)に関与する遺伝子の発現、
− バリアーの脂質成分、特にスフィンゴ脂質の生合成(例えば、セリン−パルミトイルトランスフェラーゼおよびグルコシル−セラミドトランスフェラーゼ)に関与する遺伝子の発現、
− 生存表皮と角化角質層との間の分離層(例えば、クローディン−1)および表皮の生存層中の水輸送体(例えば、アクアポリン−3)のようなタイトジャンクションの形成に関与する遺伝子の発現。
【0060】
老化の明らかな徴候を処置し、または遅延させ、環境保護を改善する化粧品製品は、上述した遺伝子の発現マーカーを増加させ、古典的な皮膚性能パラメーターの測定可能な改善を導くべきである。
【0061】
皮膚科学研究により、皮膚処置組成物を含有する化粧品製剤を適用すると、これらの発現マーカーのそのような著しい増加を示すことが明らかになった。
【実施例】
【0062】
以下の実施例のエマルジョンは、これらの実施例に限定することなく、本発明の主題をより詳細に例示する役割を果たす。すべての実施例中の濃度データは、重量%として示す。
【0063】
液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物についての実施例
実施例STC1から10は、本発明による液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物を例示する。この皮膚処置組成物は、存在するセラミドに応じて(適用したセラミドの融点を超えるために)、油相を90から120℃に加熱し、水相を90℃に加熱することによって調製する。次いで、両相を合わせ、短時間ホモジナイズする。例えば、化粧品製剤中に容易に組み込むことのできる、液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物を得る。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
すべての組成物は、−5から40℃の温度で、少なくとも1年間安定である。この期間内で、すべての試験温度について、セラミド結晶をまったく見出すことはできない。これにより、この皮膚処置組成物の優れた貯蔵安定性が例証される。
【0067】
皮膚と同一のラメラ構造を模倣することのできるセラミド/コレステロール/遊離脂肪酸の混合物についての実施例
材料の概要およびSAXD実験の方法
方法
SAXD回折研究に使用したすべての方法は、Bouwstra教授と彼女のグループの研究から得た(de Jagerら、J. Lipid Res. 2004、45、923-932; de Jager ら、J. Lipid Res. 2005、46、2649-2656)。
【0068】
Allam混合物組成[長鎖セラミド+中鎖セラミドの合計は100%である]
天然セラミド
ブタCER(1〜6)混合物、組成は、Bouwstraら、J. Lipid Res.、1998、39、186から196に一致する(注意されたい:組成は、重量%の代わりに%molである)。
【0069】
ヒトCer混合物、組成は、Bouwstraら、J. Invest. Dermatol.、2002、118、606-617に一致する(注意されたい:組成は、重量%の代わりに%molである)。
【0070】
皮膚と同一のセラミド
SynthCER II、mol%での組成(De Jagerら、J. Lipid Res. 2005、46、2649-2656)
セラミド1(C30)15;セラミド2(C24)51;セラミド3(C24)16;セラミド3(C16)9;セラミド4(C24)4;セラミド6(C24)5
【0071】
SynthCER II、mol%での組成(De Jagerら、J. Lipid Res. 2005、46、2649-2656)
セラミド1(C30)10;セラミド9(C30)5;セラミド2(C24)51;セラミド3(C24)16;セラミド3(C16)9;セラミド4(C24)4;セラミド6(C24)5
【0072】
【表3】

【0073】
A2コレステロール組成物
コレステロール
他で具体的に述べていない場合、動物ベースのコレステロールHPを使用し、これは、Solvay.Pharmaceuticals、Veenendaalによって供給された。
【0074】
植物由来の半合成コレステロール
Degussa Care Specialtiesによって提供された植物コレステロールまたはSigmaによって供給されたSyntechol。
【0075】
A3遊離脂肪酸
FFA混合物、組成は、de Jagerら、J. Lipid Res. 2004、45、923-932に一致する。
脂肪酸C16:0、C18:0、C20:0、C22:0、C23:0、C24:0およびC26:0を、それぞれ1.3、3.3,6.7、41.7、5.4、36.8および4.7重量%のモル比で混合した。
FFA、リノール酸 上記の通りであるが、C23:0をリノール酸によって置換した。
FFA、アラキドン酸 上記の通りであるが、C23:0をアラキドン酸によって置換した。
【0076】
ベヘン酸[C16からC24]
主にベヘン酸を含有する(±85%mol)植物由来の遊離脂肪酸混合物。さらにC16:0、C18:0、C20:0、C21:0、C23:0およびC24:0が存在する。
【0077】
SAXD回折用の混合物の調製
試料は、上述したセラミド混合物を用いて調製した。他で具体的に述べていない場合、CER混合物を、コレステロールおよび遊離脂肪酸と等モル比で混合した。クロロホルム:メタノール(2:1)中に溶解させた、適切な量の個々の脂質を合わせることによって、7mg/mlの全脂質濃度を有する所望の組成で、約1.5mgの全重量の混合物を得た。Camag Linomat IVを使用して、この脂質混合物を雲母上に施した。これは、連続窒素流下で4.3μl/分の速度で行った。この試料は、65℃の適切な温度で10分間平衡化し、引き続いてpH5.0の酢酸緩衝液を用いて水和させた。最後に、この試料を、−20℃と室温の間の10回の連続する凍結−融解サイクルによってホモジナイズし、その間試料を気体アルゴン下で貯蔵した。
【0078】
小角X線回折(SAXD)
すべての測定は、Grenobleの欧州シンクロトロン放射光施設ESRFで、ステーションBM26Bを使用して実施した。X線波長および試料から検出器までの距離は、それぞれ1.24Åおよび1.7mであった。回折データは、2次元マルチワイヤーガス充填面積検出器を用いて収集した。この検出器の空間較正は、ベヘン酸銀を使用して実施した。試料は、雲母窓を有する温度制御試料ホルダー中に取り付けた。脂質混合物の回折パターンを、10分間室温で得た。
【0079】
小角X線回折により、試料中のより大きな構造単位、すなわち、ラメラ相の繰り返し距離についての情報が提供される。散乱強度I(任意単位で)を、散乱ベクトルq(nmの逆数で)の関数として測定した。後者は、q=(4nsinθ)/λ(式中、θは散乱角であり、λは波長である)として定義される。一連の等距離のピーク(q)の位置から、ラメラ相の周期性またはd間隔を、式d=2nπ/q(nは、回折ピークの次数である)を使用して計算した。
【0080】
[実施例1]
A1としてSynthCerII混合物[図1]およびScer6混合物[図2]を用いたSAXDパターン
Bouwstra教授および彼女のグループによって公表されたように、SynthCerIIおよびScer6は、ヒトCer混合物およびブタCer[1〜6]混合物と同様のSAXDパターンを示す。図1および図2を比較されたい。
【0081】
[実施例2]
A1 lam混合物として、
Ser6
Ser6+10%の短鎖セラミドNS+NP
Ser6 FFAリノール酸
を用いたSAXDパターン
SAXDパターンは、ラメラLPPおよびSPP構造の形成が、短鎖セラミドの添加によって影響されないことを示す。
【0082】
脂肪酸混合物中にリノール酸が存在するにもかかわらず、LPPおよびSPP構造は依然として形成される。アラキドン酸についても同様である(示していない)。
図3を比較されたい。
【0083】
化粧用(cosmetical)スキンケア製剤についての実施例
これらの実施例は、化粧品皮膚処置製剤の調製における、皮膚処置組成物(STC1、STC2、およびSTC4)の容易な使用を例示する。皮膚処置組成物は、室温で水相に加えることができる。プロセスに応じて、水相は室温で処理することができ、またはこれは、例えば、80℃に加熱することができる。したがって、皮膚処置組成物は、O/Wエマルジョン(製剤1から4および5から8)のコールドおよびホットプロセスにおいて、ならびにW/Oエマルジョン(製剤9から12)のプロセスのために使用することができる。
【0084】
すべての製剤を、−5℃から40℃の温度で少なくとも6カ月間、さらに45℃で3カ月間、安定性について試験して成功した。凍結安定性を、室温と−15℃の間で3回の凍結−融解サイクルで試験して成功した。
【0085】
製剤実施例1から4(コールドプロセスを行ったO/Wエマルジョン)
プロセス:相AおよびBを室温で合わせ、エマルジョンをホモジナイズする。その後に追加の相を加える。
【0086】
【表4】

【0087】
製剤実施例5から8(ホットプロセスを行ったO/Wエマルジョン)
プロセス:相A)およびB)を別々に約80℃に加熱する。相A)を攪拌しながら相B)に加え、ホモジナイゼーションステップが続く。エマルジョンを60℃に冷却し、相C)を加え、このエマルジョンを短時間ホモジナイズする。すべての他の相は、40℃未満で加える。
【0088】
【表5】

【0089】
製剤実施例9から12(W/Oエマルジョン)
プロセス:相A)を約80℃に加熱する。相B)を攪拌しながら加え、ホモジナイゼーションステップが続く。このエマルジョンを30℃に冷却し、相C)をやはり短時間ホモジナイズする。
【0090】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物であって、
A)A1)10から80重量%の少なくとも2種のセラミドの混合物であって、ただし、これらのセラミドの少なくとも1種は、20から26個の炭素原子を有する、長いアルキル、アルケニルまたはアシル側鎖を含有し、40重量%未満が26個の炭素原子より大きな側鎖を有する、セラミドの混合物と、
A2)10から45重量%のコレステロールであって、動物に由来するか、微生物によって産生されるか、植物起源を有するか、または、植物に由来するかもしくは微生物によって産生される出発材料から出発して合成するかのいずれかであることができるコレステロールと、
A3)10から45重量%の遊離脂肪酸(C12からC30のアルキル−、アルケニル、アルカジエニル、アルカトリエニル、もしくはアルカポリエニル鎖、またはその組合せ)と
からなる、0.1から10重量%の混合物と、
B)0.5から10重量%の、12から19の混合HLB値を有する非イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤混合物と、
C)40重量%以上の水と、場合により、
D)0.1から10重量%の、ステアリン酸グリセリルまたはC16からC22アルカノールのような粘稠性エンハンサーと、場合により、
E)助剤および添加剤と
を含有し、ただし、A)からE)は、合計100重量%にならなければならない組成物。
【請求項2】
A)A1)A1a)長いアルキル、アルケニル、またはアシル鎖(C18超)を有する、30重量%超の含量のセラミドであるが、非常に長い鎖(C26超)のアシルセラミドの含量は40重量%以下でなければならないセラミドと、
A1b)短いアルキル鎖(C4からC8)を有する、1から30重量%の含量のセラミドと
からなる、10から80重量%の皮膚と同一のセラミドの混合物と、
A2)10から45重量%のコレステロールと、
A3)10から45重量%の遊離脂肪酸(C12からC30のアルキル−、アルケニル、アルカジエニル、アルカトリエニル、もしくはアルカポリエニル鎖、またはその組合せ)と
からなる、皮膚と同一のラメラ構造を模倣することのできる、0.1から10重量%の混合物と、
B)0.5から10重量%の、12から19の混合HLB値を有する非イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤混合物と、
C)40重量%以上の水と、場合により、
D)0.1から10重量%の、ステアリン酸グリセリルまたはC16からC22アルカノールのような粘稠性エンハンサーと、場合により、
E)助剤および添加剤と
を含有し、ただし、A)からE)は、合計100重量%にならなければならない、請求項1に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項3】
A)A1)少なくとも3種だが、好ましくは4種の天然または皮膚と同一のセラミド、すなわち、
− 8から35重量%、好ましくは9から15重量%の、27個以上の炭素原子の側鎖を有する、1または2種のアシルセラミドであり、全アシルセラミドの最大45重量%までをセラミド9とすることができるアシルセラミドと、
− 10重量%以上、好ましくは25から40重量%の、少なくとも1種のフィトスフィンゴシンベースのセラミドNPまたはAP、好ましくはセラミド3(Cer NS)と、場合により加えることのできる、
− 最大30重量%までの、短いアルキル側鎖(C4からC8)を有する、天然または皮膚と同一のセラミドと
からなるべきである、特定の組合せの天然または皮膚と同一のセラミドと、
A2)10から45重量%のコレステロールと、
A3)10から45重量%の遊離脂肪酸(C12からC30のアルキル−、アルケニル、アルカジエニル、アルカトリエニル、もしくはアルカポリエニル鎖、またはその組合せ)と
からなる、皮膚と同一のラメラ構造を模倣することのできる、0.1から10重量%の混合物と、
B)0.5から10重量%の、12から19の混合HLB値を有する非イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤混合物と、
C)40重量%以上の水と、
D)0.1から10重量%の、ステアリン酸グリセリルまたはC16からC22アルカノールのような粘稠性エンハンサーと、場合により、
E)助剤および添加剤と
を含有し、ただし、A)からE)は、合計100重量%にならなければならない、請求項1または2の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項4】
0.2から8重量%の、前記セラミド/コレステロール/遊離脂肪酸の混合物Aを含有する、請求項1から3の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項5】
1から8重量%の、12から19の混合HLB値を有する非イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤混合物を含有する、請求項1から4の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項6】
0.1から6重量%の、ステアリン酸グリセリルまたはC16からC22アルカノールのような粘稠性エンハンサーを含有する、請求項1から5の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項7】
0.5から5重量%の、前記セラミド/コレステロール/遊離脂肪酸の混合物A)と、4から6重量%の、12から19の混合HLB値を有する非イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤混合物と、1から5重量%の、ステアリン酸グリセリルまたはC16からC22のアルカノールのような粘稠性エンハンサーと、場合により、助剤および添加剤とを含有し、水で合計100重量%にされる、請求項1から6の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項8】
前記セラミド混合物が、
A1)皮膚と同一のラメラ構造を模倣することができる、最も好ましいセラミドの組合せ、すなわち、
− 50から70重量%の、45/55の比のセラミドNS+セラミドNPであって、前記NS+NPの最大20重量%までが、同様の側鎖長を有するセラミドNHによって置換することができるセラミドNS+セラミドNPと、
− 14から20重量%の、6対4の比のセラミドEOS+セラミドEOPであって、前記EOS+EOPの最大20重量%までが、同様の側鎖長を有するセラミドEOHによって置換することができるセラミドEOS+セラミドEOPと、
− 10重量%以上の、16から18個のC原子の中程度の側鎖長を有するセラミドNPであって、前記セラミドNPの最大30重量%までが、そのスフィンゴジン[NS]、6−OHスフィンゴシン[NH]、またはスフィンガニン[NSa]ベースの等価物によって置換することができるセラミドNPと、
− 0重量%以上の、16から24個のC原子の側鎖長を有するセラミドAPであって、セラミドNPの最大30重量%までが、そのスフィンゴジン[NS]、6−OHスフィンゴシン[NH]、またはスフィンガニン[NSa]ベースの等価物によって置換することができるセラミドAPと、
− 0重量%以上の、1/1の比のセラミドNS+NPと
からなる、請求項1から7の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項9】
前記遊離脂肪酸成分A3が、C14からC28のアルキルまたはアルケニル鎖を有する脂肪酸の群から選択される、請求項1から8の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項10】
遊離脂肪酸成分A3)としてベヘン酸が使用される、請求項1から9の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項11】
前記非イオン性乳化剤または乳化剤混合物B)が、14から18の全HLB値を有する非イオン性乳化剤または非イオン性乳化剤混合物からなる、請求項1から10の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項12】
非イオン性乳化剤成分B)としてセテアレス−25が使用される、請求項1から11の少なくとも一項に記載の液体のポンプ汲み出し可能な皮膚処置組成物。
【請求項13】
0.001から20重量%の、請求項1から12の少なくとも一項に記載の皮膚処置組成物を含有する、化粧品製剤、皮膚製剤、または医薬品皮膚処置製剤。
【請求項14】
ビタミン、抗酸化剤、抗炎症剤、老化防止剤、抗脂肪沈着剤、モイスチャライザー、日焼け止め、皮膚美白剤または皮膚日焼け剤からなる群から選択される、追加の皮膚に利益となる活性剤を伴う少なくとも1種の成分を含有する、請求項1から13に記載の化粧品製剤、皮膚製剤、または医薬品皮膚処置製剤。
【請求項15】
請求項1から14の少なくとも一項に記載の組成物を含有するヘアケア製剤。
【請求項16】
請求項1から14の少なくとも一項に記載の組成物を含有する「ウォッシュオフ」製剤。
【請求項17】
乾燥皮膚を治療するための、請求項1から14の少なくとも一項に記載の組成物を含有する化粧品製剤または皮膚製剤。
【請求項18】
老化した皮膚を治療するための、請求項1から14の少なくとも一項に記載の組成物を含有する化粧品製剤または皮膚製剤。
【請求項19】
皮膚の弾力を改善するための、請求項1から14の少なくとも一項に記載の組成物を含有する化粧品製剤または皮膚製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−505886(P2010−505886A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531722(P2009−531722)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009919
【国際公開番号】WO2008/043386
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(507375465)エヴォニク ゴールドシュミット ゲーエムベーハー (100)
【Fターム(参考)】