説明

皮膚化粧料

【課題】塗布直後のべたつきが少なく、保湿効果が持続する皮膚化粧料の提供。
【解決手段】次の成分(A)〜(F):
(A)ポリオール 1〜25質量%、
(B)油性成分 0.5〜15質量%、
(C)疎水化ポリビニルピロリドン 0.1〜3質量%、
(D)高級アルコール 1〜10質量%、
(E)界面活性剤 0.3〜10質量%、
(F)水
を含有する皮膚化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ボディローション等の皮膚化粧料は、主に保湿を目的として使用され、保湿剤として、グリセリン、ワセリン、ビタミン類等が配合されている。しかしながら、十分な保湿効果を得るため、このような保湿剤を多量に配合すると、塗布直後にべたつくなどの問題が生じる。また、これらの保湿剤を用いることにより、保湿効果が得られたとしても、その効果は十分持続するものではなかった。
【0003】
保湿効果に優れた化粧料として、特許文献1には、(1)C14〜C22脂肪酸、(2)脂肪酸モノ又はジグリセリルエステル、(3)EO脂肪酸エステル、(4)非極性油、(5)脂肪族アルコール、(6)融点30℃以上の親油性増粘剤、(7)分子量100−4000の水添ポリイソブテン、(8)極性脂質を含有するO/W乳化化粧料が記載されている。しかしながら、この化粧料も、保湿効果の持続性の点では、十分満足できるものではなかった。
【特許文献1】米国特許第6551601号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、塗布直後のべたつきが少なく、保湿効果が持続する皮膚化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ポリオール、油性成分、疎水化ポリビニルピロリドン、高級アルコール、及び界面活性剤を特定の割合で組み合わせて用いることにより、塗布直後のべたつきが少なく、保湿効果が持続する皮膚化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)〜(F):
(A)ポリオール 1〜25質量%、
(B)油性成分 0.5〜15質量%、
(C)疎水化ポリビニルピロリドン 0.1〜3質量%、
(D)高級アルコール 1〜10質量%、
(E)界面活性剤 0.3〜10質量%、
(F)水
を含有する皮膚化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚化粧料は、塗布直後のべたつきが少なく、しかも、優れた保湿効果が持続するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)ポリオールとしては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、分子量200〜1000のポリエチレングリコール、分子量200〜3000のポリプロピレングリコール、ソルビトール等が挙げられる。
【0009】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜25質量%、好ましくは3〜22質量%含有される。この範囲内であると、皮膚に高い保湿感を与えられるので好ましい。
【0010】
本発明で用いる成分(B)の油性成分としては、成分(D)以外のもので、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、米胚芽油、小麦胚芽油、トリオクタン酸グリセリン等の液体油脂;カカオ脂、パーム油、モクロウ、硬化ヒマシ油等の固体油脂;ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類;流動パラフィン、流動イソパラフィン、ワセリン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;ジメチルポリシロキサン、シクロジメチルポリシロキサン等のシリコーン油などが挙げられる。
【0011】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜15質量%、好ましくは1〜10質量%含有される。この範囲内であると、使用感の良い、安定な化粧料が得られる。
【0012】
成分(C)の疎水化ポリビニルピロリドンは、ポリビニルピロリドンの分子中に疎水性部を有するもので、例えば、ビニルピロリドンと疎水性化合物の共重合体が挙げられる。疎水性化合物としては、長鎖α−オレフィン(好ましくは、炭素数16〜30)、ヘキサデセン、エイコセン、トリアコンテン等が挙げられる。
【0013】
成分(C)としては、長鎖α−オレフィンとビニルピロリドンの共重合体が好ましい。このような共重合体としては、例えば、アンタロンV−216、V−220、V−220F、WP−660(以上、ISPジャパン社製)等の市販品を用いることができる。
【0014】
成分(C)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜3質量%、好ましくは0.5〜2質量%含有される。この範囲内であると、使用感の良い、安定な化粧料が得られる。
【0015】
成分(D)の高級アルコールとしては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、炭素数12〜22のものが好ましく、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0016】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%含有される。この範囲内であると、使用感の良い、安定な化粧料が得られる。
【0017】
成分(E)の界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤等の何れでも用いることができる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアミドスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルエーテルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルアミドスルホコハク酸塩、アルキルサクシンアミド塩、アルキルスルホ酢酸塩、アシルサルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸塩;N−アシルタウリン塩、N−アシルグリシン塩、N−アシルアラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルアスパラギン酸塩等のアシル化アミノ酸塩などが挙げられる。
【0018】
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;塩化ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等のジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられる。
【0019】
両性界面活性剤として、例えば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシルメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルスルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0020】
非イオン界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びこれらの誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセリルトリイソステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのポリオキシエチレン付加型界面活性剤のほか、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0021】
成分(E)としては、特に、脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのポリオキシエチレン付加型界面活性剤、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等が好ましい。
【0022】
成分(E)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.3〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%含有される。この範囲内であると、使用感の良い、安定な化粧料が得られる。
【0023】
成分(F)の水は、全組成中に37〜97.1質量%、特に60〜85質量%含有されるのが、使用感が良く、安定な化粧料が得られるので好ましい。
【0024】
本発明の皮膚化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、防腐剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、粉体、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、前記以外の保湿剤、香料、pH調整剤、高分子化合物等を含有することができる。また、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の薬効成分、生理活性成分を含有することもできる。
【0025】
本発明の皮膚化粧料は、前記成分を混合し、通常の方法に従って製造することができる。特に、水中油型乳化組成物とするのが好ましい。
【0026】
本発明の皮膚化粧料は、ボディローションとして好適である。
【実施例】
【0027】
実施例1〜3及び比較例1
表1に示す組成の皮膚化粧料(ボディローション)を製造し、動摩擦力を評価した。結果を表1に併せて示す。
【0028】
(製造方法)
(B)油性成分、(C)疎水化ポリビニルピロリドン、(D)高級アルコール、(E)界面活性剤を75℃に加熱、混合した油相を、(A)ポリオールと(F)水を混合した水相(75℃に加熱)に添加し、撹拌混合した後、冷却して、目的の皮膚化粧料を得た。
【0029】
(評価方法)
動摩擦力が高いほど保湿感が高いという相関関係があることが判った。そこで、以下の方法により、動摩擦力を評価した。
(1)5×12cmの人工皮革(大同レザー社製、GT-202、材質はウレタン)に、皮膚化粧料を各々0.12g塗布した。塗布24時間後(21℃、46%RHにて放置)の人工皮革を、新東科学社製表面性測定機(Type:14DR)に両面テープで固定した。
(2)表面性測定機のセンサー部に3×5cmの上記と同じ材質の人工皮革を両面テープで固定した。モデル系として人工皮革同士を擦り合わせることで、皮膚を手によって擦るときの感触を評価できる。
(3)塗布24時間後の人工皮革の動摩擦力を、表面性測定機にて以下の条件で測定した。
表面性測定機の測定条件:
垂直荷重 70g、 サンプリング時間 50ms、 サンプリング点数 150個、
移動速度 1200mm/min、 移動距離 70.0mm
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果より、疎水化ポリビニルピロリドンを含有する実施例1〜3の皮膚化粧料は、これを含有しない比較例1よりも、24時間後の動摩擦力が増大しており、このことから保湿感の持続性が向上していることがわかる。
【0032】
実施例4〜6及び比較例2
表2に示す組成の皮膚化粧料(ボディローション)を製造し、実施例1〜3と同様にして、動摩擦力を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0033】
(製造方法)
(B)油性成分、(C)疎水化ポリビニルピロリドン、(D)高級アルコールを80℃に加熱、混合した油相を、少量の水と(A)ポリオール、(E)界面活性剤を混合した水相(80℃に加熱)に添加した。加熱を中止し、水を徐々に添加しながら撹拌混合し、目的の皮膚化粧料を得た。
【0034】
【表2】

【0035】
表2の結果より、疎水化ポリビニルピロリドンを含有する実施例4〜6の皮膚化粧料は、これを含有しない比較例2よりも、24時間後の動摩擦力が増大しており、このことから保湿感の持続性が向上していることがわかる。
【0036】
実施例7及び比較例3〜4
表3に示す組成の皮膚化粧料(ボディローション)を、実施例1〜3と同様にして製造し、塗布直後のべたつきの少なさ及び保湿感(直後、塗布7時間後)を評価した。結果を表3に併せて示す。
【0037】
(評価方法)
専門パネラー10名により、各皮膚化粧料をそれぞれ下腿に塗布し、塗布直後のべたつきの少なさ、塗布直後と塗布7時間後の保湿感を官能評価した。以下の基準でスコアを求め、その平均スコアにより、判定した。
【0038】
(1)塗布直後のべたつきの少なさ:
各皮膚化粧料を塗布したとき、下腿の塗布直後のべたつきを以下の基準に基づき官能評価した。
べたつかない・・・スコア4。
あまりべたつかない・・・スコア3。
ややべたつく・・・スコア2。
べたつく・・・スコア1。
【0039】
(2)保湿感(直後、7時間後);
各皮膚化粧料を塗布したとき、下腿の塗布直後と7時間後の保湿感を以下の基準に基づき官能評価した。
保湿感(しっとり感)が高い・・・スコア4。
やや保湿感(しっとり感)が高い・・・スコア3。
あまり保湿感(しっとり感)が高くない・・・スコア2。
保湿感(しっとり感)が低い・・・スコア1。
【0040】
判定基準;
A:平均スコア3.5〜4.0。
B:平均スコア2.5〜3.4。
C:平均スコア1.5〜2.4。
D:平均スコア1.0〜1.4。
【0041】
【表3】

【0042】
実施例8及び比較例5〜6
表4に示す組成の皮膚化粧料(ボディローション)を、実施例4〜6と同様にして製造し、実施例7と同様にして、塗布直後のべたつきの少なさ及び保湿感(直後、塗布7時間後)を評価した。結果を表4に併せて示す。
【0043】
【表4】

【0044】
実施例9
表5に示す組成の皮膚化粧料を、実施例1〜3と同様にして製造する。
得られた皮膚化粧料は、塗布直後のべたつきが少なく、保湿効果が持続するものである。
【0045】
【表5】

【0046】
実施例10
表6に示す組成の皮膚化粧料を、実施例4〜6と同様にして製造する。
得られた皮膚化粧料は、塗布直後のべたつきが少なく、保湿効果が持続するものである。
【0047】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(F):
(A)ポリオール 1〜25質量%、
(B)油性成分 0.5〜15質量%、
(C)疎水化ポリビニルピロリドン 0.1〜3質量%、
(D)高級アルコール 1〜10質量%、
(E)界面活性剤 0.3〜10質量%、
(F)水
を含有する皮膚化粧料。
【請求項2】
成分(C)が、ビニルピロリドンと長鎖α−オレフィンの共重合体である請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
ボディローションである請求項1又は2記載の皮膚化粧料。

【公開番号】特開2010−6725(P2010−6725A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165428(P2008−165428)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】