説明

皮膚外用剤、水中油型エマルション組成物及びこれを含有する皮膚外用剤

【課題】油溶性薬剤は、酸素、水分、熱などの影響を受けるため、皮膚外用剤中において経時により分解、変質、劣化等を生じることが知られている。そこで本発明は、これら油溶性薬剤を安定に配合した皮膚外用剤、水中油型エマルション組成物、及びこれを配合してなる使用感に優れた皮膚外用剤を提供することにある。
【解決手段】これらの実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を重ねた結果、フッ素系界面活性剤を中和剤により中和して乳化剤として皮膚外用剤に使用すること、この乳化剤を用いて水中油型エマルション組成物を調製すること、および/又は該エマルション組成物を皮膚外用剤に含有させることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な機能を有する皮膚外用剤、水中油型エマルション組成物、及びこれを含有する皮膚外用剤に関する。詳しくは酸素、水分、熱などにより分解する脂溶性ビタミンおよびそれらの誘導体などの油溶性薬剤を、フッ素系界面活性剤を中和して乳化剤として使用することで安定化した皮膚外用剤、水中油型エマルション組成物、及びこれを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
油溶性薬剤、なかでも脂溶性ビタミン類は多岐にわたる効能をもつことから皮膚外用剤に多く配合されている。ビタミンAは皮膚角化症等の予防、治療や皮膚老化の防止、回復に有効な成分であることが知られている。ビタミンCは抗酸化、コラーゲン合成促進、色素沈着抑制などに有効な成分である。ビタミンEは脂質、特に不飽和脂肪酸に対する抗酸化作用により過酸化脂質の生成を防ぐといわれており、皮膚については直接投与で血管系に働き、末梢血管を拡張し、血流を促進する作用もある。しかしながら、これらビタミン類は各種の誘導体が開発されているものの、必ずしも安定性に優れるものではなく、光、水、酸素、熱、金属イオン、酸、アルカリ等により酸化、異性化、分解などの変質を起こすため、種々の方法で安定化が試みられている。
【0003】
例えば、油溶性抗酸化剤を配合する方法が最も一般的であり、それ以外ではカプセルや脂質二重膜中に内包する手法も取られている。その例を次に示す。
特許文献1は、ビタミンA類と共にブタンジオールとBHTなどの油溶性抗酸化剤を配合することにより、ビタミンA類の安定性を向上させた皮膚外用剤を教示する。
油溶性抗酸化剤 、特定の両親媒性物質(ベヘニルアルコール)、親水性ノニオン界面活性剤を特定の配合比でエマルション化することにより、安定性を向上させた皮膚外用剤を教示する(特許文献2)。
ビタミンA脂肪酸エステルに油溶性抗酸化剤及び分子量が5000以上の非イオン系両親媒性高分子を併用することにより、ビタミンA脂肪酸エステルの安定性を向上させた皮膚外用剤を教示する(特許文献3)。
ビタミンA誘導体と共に油溶性抗酸化剤およびスーパーオキサイド除去率75%以上の薬剤を配合することによりビタミンA誘導体の安定性を向上させた皮膚外用剤を教示する。(特許文献4)
【0004】
ビタミンA脂肪酸エステルに油溶性抗酸化剤および両親媒性物質及び親水性非イオン系界面活性剤を配合することによりビタミンA脂肪酸エステルの安定化を図った皮膚外用剤を教示する。(特許文献5)
レチノール類やアスタキサンチンに、水にも有機溶媒にも難溶性の抗酸化剤であるフラーレンを併用することによる安定化を実現した外用剤を教示する。(特許文献6)
レチノールと共にヒドロキシカルボン酸塩の一種又は二種以上を配合することにより、レチノールの安定性を向上させた皮膚外用剤を教示する。(特許文献7)
レチノール、トコフェロールを陽イオン性ナノカプセルに捕集することにより安定化させた皮膚外用剤を教示する(特許文献8)。
水素添加リン脂質からなる脂質二分子膜中に、レチノイドと疎水性抗酸化剤を内包するレチノイド内包粒子を含有することにより、レチノイドの安定性を向上させた皮膚外用剤を教示する(特許文献9)。
しかしながら、これらビタミン類およびその誘導体の安定化は、ある特定の処方に限定されている、感触が好ましくない、結晶化が起きやすいなど未だ十分に満足できるものではなく、更なる有用な新規方法の開発が望まれていた。
【0005】
フッ素系界面活性剤は優れた化学的、物理的安定性および表面張力を低下させるなどの機能があるが、外用剤に汎用される炭化水素系油との相溶性が悪いことから、乳化剤としての使用はない。そのため化粧品用途としては、ファンデーション、口紅などの固体化粧品への添加や粉体の表面処理剤として応用されている(特許文献10)。またフッ素系界面活性剤は撥水撥油剤、浸透剤として、塗料、繊維、紙、建築、土木分野で広く使用されている。繊維処理用のエマルションにパーフルオロポリエーテルおよびフッ素樹脂が用いられているが、これは水に溶解しない親油性界面活性剤ソルビタンモノステアレートを用いて乳化している。(特許文献11)
また、フッ素系化合物による不安定な物質の安定化については、パーフルオロポリエーテルホスフェートによる水溶性物質ポリフェノールの安定化が報告されているが、親油性乳化剤であるステアレス2と親水性乳化剤であるステアレス21を用いて乳化しており、パーフルオロポリエーテルホスフェートは乳化剤として機能しておらず、未中和のまま処方に添加されている。また得られた外皮用組成物のpHは3.6〜3.8と強酸性であるため、皮膚刺激性が懸念される(特許文献12)。
【0006】
このように油溶性薬剤である脂溶性ビタミンA及びその誘導体、脂溶性ビタミンC誘導体やプロビタミンA類の一種であるアスタキサンチンを安定に配合したエマルションを作る事が種々提案されているものの、製造工程が複雑であることや、限定された処方でのみ安定化されているなどで、容易に安定なエマルションを得る事ができていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−32716号公報
【特許文献2】特開平11−228377号公報
【特許文献3】特開平11−349439号公報
【特許文献4】特開2005−104962号公報
【特許文献5】特開平11−228342号公報
【特許文献6】特開2009−269915号公報
【特許文献7】特開平6−32711号公報
【特許文献8】特表2009−514811号公報
【特許文献9】特開2009−256268号公報
【特許文献10】特開平04−89418号公報
【特許文献11】公開平5−163678号公報
【特許文献12】特表2007−511549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術を課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、油溶性薬剤を安定に配合し、かつ使用感に優れた皮膚外用剤、水中油型エマルション組成物を調製すること、およびこの水中油型エマルション組成物を含有する皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本課題を解決すべく鋭意検討を加えたところ、フッ化炭素鎖を疎水/疎油基とした界面活性剤をアルカリで中和し乳化剤として用いることにより、油溶性薬剤を安定化できる皮膚外用剤又は水中油型エマルション組成物が得られる事を見出した。さらに、これらが炭化水素鎖を親油基とする親油性両親媒性物質および/又は乳化力をもつ水溶性高分子を含有すると、さらに安定化し得る事を見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明により調製された皮膚外用剤および水中油型エマルション組成物は、フッ素系界面活性剤を用いずに調製した場合と比較して、油溶性薬剤がより安定に保たれた。また両親媒性物質および/又は乳化力をもつ水溶性高分子を含有することにより、より高い安定性を示した。さらに、酸化チタンや酸化亜鉛など触媒活性がある成分は油溶性薬剤の安定性に悪影響を及ぼすが、本発明ではその問題も解消出来た。得られた皮膚外用剤、水中油型エマルション組成物のpHは4.5〜9.0の範囲にあることから、皮膚に対して優しい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は油溶性薬剤を安定に水中に分散させる容易な方法である。本発明で言う油溶性薬剤とは、通常医薬品、化粧品等に対して配合される油分に対して溶解することが可能な成分であれば、いずれのものも使用可能である。また油分に溶解可能な両親媒性の薬剤も使用することができる。具体的には、保湿剤、肌荒れ防止剤、美白剤、タンニング剤、育毛剤、抑毛剤、皮脂ケア剤、にきびケア剤、スリミング剤、毛髪コンディショニング剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、刺激緩和剤、抗老化剤、抗酸化剤、抗菌剤、ビタミン類、抗アトピー剤、ステロイド剤、抗癌剤等が挙げられ、本発明においては、これらの一種又は二種以上を選択することが望ましい。
【0012】
なお、具体的にはビタミンAおよびその誘導体として、ビタミンA、レチノイン酸、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、リノール酸レチノール、レチノイン酸トコフェリル、水添レチノール等が挙げられる。
プロビタミンA類(カロチノイド類)としては、α−カロチン、β−カロチン、γ−カロチン、δ−カロチン、リコピン、ピオラキサンチン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、ネオキサンチン、クリプトキサンチン、エキネノン、アスタキサンチン、ルテイン等が挙げられる。
【0013】
脂溶性ビタミンB誘導体としては、トリスヘキシルデカン酸ピリドキシン、ジカプリル酸ピリドキシン、ジパルミチン酸ピリドキシン等が挙げられる。
脂溶性ビタミンC誘導体としては、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、アスコルビン酸メチルシラノール、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、イソステアリルアスコルビンリン酸2Na等が挙げられる。
【0014】
ビタミンEおよびその誘導体としては、トコフェロール、トコトリエノール、酢酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウム、ニコチン酸トコフェロール、パルミチン酸トコフェロール、リノール酸トコフェロール等が挙げられる。
それ以外の油溶性薬剤としてはドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸や、ミツロウやシアバターなどのロウ類、さらにローズヒップ油、スクワラン、馬油のような動植物油が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本発明で言うフッ素系界面活性剤とは、パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルエーテルポリオキシリン酸、パーフルオロアルコールリン酸、フルオロ(9−15)アルコールリン酸、フルオロ(8−18)アルコールリン酸、ポリパーフルオロエトキシメトキシフルオロメチルジステアラミド、ポリパーフルオロエトキシメトキシフルオロメチルジフルオロエチルPEGリン酸、パーフルオロアルキル化オリゴマー、その他ジェミニ型などが挙げられる。
【0016】
中和剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、ポリメタリン酸ナトリウム、アルギニン、トリエタノールアミン、EDTA−4Naなどが挙げられる。
【0017】
さらに、水中油型エマルションを作る機能の低い炭化水素鎖を有する親油性両親媒性物質を含有させる事により、機能を損なう事無く安定性がより向上する事を見出した。
本発明で言う親油性両親媒性物質としては、キミルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリン酸グリセリルエーテル、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、ミリスチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリルなどが挙げられる。
【0018】
また、本発明では乳化力をもつ水溶液高分子、すなわち、高分子乳化剤を含有させる事により、機能を損なう事無く、安定性がより向上する事を見出した。
乳化力をもつ水溶性高分子としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体、ヘキシジルパルバミン酸コレステリルプルラン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ペプチド、カゼイン、アラビアガム、アラビノガラクタン、アシル化イヌリン、デキストランのアルキル化物、キトサンを親油化した誘導体などが挙げられる。
【0019】
本発明にかかる水中油型エマルション組成物は、前述の油溶性薬剤、フッ素系界面活性剤、中和剤から構成されるものであり、さらに好ましくは、高分子乳化剤、親油性両親媒性物質を添加することもできる。以下、本発明の水中油型エマルション組成物の製造方法について説明する。
必要に応じて加温しながら、フッ素系界面活性剤・精製水混液および中和剤をそれぞれ攪拌する。温度を維持しながら攪拌を続けフッ素系界面活性剤・精製水混液に中和剤を添加し混合した後、攪拌しながら室温まで冷却する。別に油溶性薬剤を攪拌しながらフッ素系界面活性剤・精製水・中和剤混液に添加し、均一攪拌して調製を終了する。
【0020】
本発明にかかる皮膚外用剤は、前述の油溶性薬剤、フッ素系界面活性剤、中和剤から構成されるものであり、さらに好ましくは高分子乳化剤、親油性両親媒性物質を添加することもできる。特に、フッ素系界面活性剤、中和剤、油溶性薬剤、水を予め調製して水中油型エマルション組成物としたプレミックス物を調製しておき、これを他の皮膚外用剤成分(外用剤)と混合することで油溶性薬剤を安定化させた皮膚外用剤を簡便に得る事もできる。
この外用剤の形態としては特に限定されず、溶液系、可溶化系、乳化系、油性系、水系又はそれらを併せ持つ二層型、三層型等の様々な形態をとることができるが、好ましくは乳化系である。
【0021】
つぎに本発明をより多くの実施例で供述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
また、実施例1〜5の表1〜表5に比較例との対比結果を、実施例6〜13には単独の試験結果を示す。
【実施例1】
【0022】
クリーム製剤中における油溶性薬剤2−テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの安定性を確認した。
【表1】


[調製方法]
1.Aを80℃まで加温して均一溶解する。
2.80℃を維持しながらAをホモミキサーで攪拌し、Bを徐々に添加する。(AB)
3.別にD、Eを80℃まで加温する。
4.80℃を維持したままDをホモミキサーで攪拌しながら徐々にEを添加し、室温まで攪拌冷却する。(DE)
5.室温でDEをホモミキサーで攪拌しながら徐々にFを添加して乳化する。(DEF)
6.ABをパドルミキサーで攪拌しながら冷却し、40℃以下でC,DEF又はGを添加する。
7.35℃以下まで冷却後、調製を終了する。
尚、上記調製方法において、比較例1−1では、D、E、F、Gが;比較例1−2では、D、E、Fが;実施例1−1では、Gが配合されない。
[結 果]実施例1−1は、フッ素系界面活性剤を用いずに乳化した比較例1−1、1−2と比較して、着色や臭いなどの変化も少なく、油溶性薬剤であるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルの定量値が高いレベルに維持されており、安定であることが確認された。
【実施例2】
【0023】
エッセンス製剤(水溶性高分子乳化剤併用)中における油溶性薬剤2−テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの安定性を確認した。
【表2】


[調製方法]
1.Aをパドルミキサーで攪拌しながらBを添加する。(AB)
2.別にE、Fを80℃まで加温する。
3.80℃を維持したままEをホモミキサーで攪拌しながら徐々にFを添加し、室温まで攪拌冷却する。(EF)
4.室温でEFをホモミキサーで攪拌しながら徐々にGを添加して乳化する。(EFG)
5.ABを攪拌しながらC、D、EFG又はHを順次添加する。
6.35℃以下まで冷却後、調製を終了する。
尚、上記調製方法において、比較例2−1では、E、F、G、Hが;比較例2−2では、E、F、Gが;実施例2−1では、Hが配合されない。
[結 果]実施例2−1は比較例2−1、2−2と比較して、着色や臭いなどの変化も少なく、油溶性薬剤であるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルの定量値が高いレベルに維持されており、安定であることが確認された。
【実施例3】
【0024】
クリーム製剤(親油性両親媒性物質併用)中における油溶性薬剤2−テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの安定性を確認した。
【表3】

[調製方法]
1.A、Bを80℃まで加温して均一溶解する。
2.80℃を維持しながらAをホモミキサーで攪拌し、Bを徐々に添加する。(AB)
3.別にE、Fを80℃まで加温する。
4.80℃を維持したままEをホモミキサーで攪拌しながら徐々にFを添加し、室温まで攪拌冷却する。(EF)
5.室温でEFをホモミキサーで攪拌しながら徐々にGを添加して乳化する。(EFG)
6.ABをパドルミキサーで攪拌しながら冷却し、40℃以下でC、D及びEFGを添加する。
7.35℃以下まで冷却後、調製を終了する。
尚、上記調製方法において、比較例3−1では、C、E、F、Gが;実施例3−1では、E、F、Gが;実施例3−2では、Cが配合されない。
[結 果]実施例3−1、3−2は比較例3−1と比較して、着色や臭いなどの変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルの定量値が高いレベルに維持されており、安定であることが確認された。またこの処方系においては、フッ素系界面活性剤で油溶性薬剤を直接乳化した実施例3−1と比較して、フッ素系界面活性剤を用いて水中油型エマルション組成物を調製して皮膚外用剤に添加した実施例3−2の方がより安定であった。
【実施例4】
【0025】
酸化チタン配合O/Wサンスクリーン製剤中における2−テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの安定性を確認した。
【表4】

[調製方法]
1.Bを80℃まで加温して均一溶解する。
2.80℃を維持しながらAをホモミキサーで攪拌し、Bを徐々に添加する。(AB)
3.別にC、Dを80℃まで加温する。
4.80℃を維持したままCをホモミキサーで攪拌しながら徐々にDを添加し、室温まで攪拌冷却する。(CD)
5.室温でCDをホモミキサーで攪拌しながら徐々にEを添加して乳化する。(CDE)
6.ABをパドルミキサーで攪拌しながら冷却し、40℃以下でCDEを添加する。
7.35℃以下まで冷却後、調製を終了する。
尚、上記調製方法において、比較例4−1及び実施例4−1では、C、D、Eが配合されない。
[結 果]実施例4−1、4−2は比較例4−1と比較して、着色や臭いなどの変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルの定量値が高いレベルに維持されており、安定であることが確認された。
【実施例5】
【0026】
酸化亜鉛配合O/Wサンスクリーン製剤中における2−テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの安定性を確認した。

【表5】


[調製方法]
1.Bを80℃まで加温して均一溶解する。
2.80℃でBをホモ処理しているところにAを徐々に添加して乳化する。(AB)
3.別にC、Dを80℃まで加温する。
4.80℃を維持したままCをホモミキサーで攪拌しながら徐々にDを添加し、室温まで攪拌冷却する。(CD)
5.室温でCDをホモミキサーで攪拌しながら徐々にEを添加して乳化する。(CDE)
6.ABをパドルミキサーで攪拌しながら冷却し、40℃以下でCDEを添加する。
7.35℃以下まで冷却後、調製を終了する。
尚、上記調製方法において、比較例5−1及び実施例5−1では、C、D、Eが配合されない。
[結 果]実施例5−1、5−2は比較例5−1と比較して、着色や臭いなどの変化も少なく、油溶性薬剤であるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルの定量値が高いレベルに維持されており、安定であることが確認された。
【実施例6】
【0027】
脂溶性ビタミンC配合 水中油型エマルション
A ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロ
エチルPEGリン酸(10%水溶液) : 8.0質量%
精製水で全量 :100.0
防腐剤 : 適量
B 水酸化ナトリウム(1%水溶液) : pH 6.8に調整
C テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル : 60.0
精製水
[調製方法]A、Bをそれぞれ80℃に加温して均一溶解する。Aをホモミキサーで攪拌しながらBを徐々に添加し室温まで攪拌冷却する。ABをホモミキサーで攪拌しているところにCを徐々に添加しし調製を終了する。
[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなどの変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルが安定に保たれていることが確認された。
尚、本発明品は、プレミックス物として利用し、他の皮膚外用剤成分と混合することで脂溶性ビタミンCを安定化させた皮膚外用剤を簡便に得ることができる。
【実施例7】
【0028】
日中用美容液
A ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチルPEG硫酸: 1.0 質量%
油溶性トマトエキス(β−カロチン含有) : 5.0
精製水で全量 :100.0
B 防腐剤 : 適量
C アルギニン :pH 7に調整
D パルミチン酸エチルヘキシル : 20.0
パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル : 5.0
ブチルメトキシジベンゾイルメタン : 1.0
[調製方法]A、B、C、Dをそれぞれ80℃まで加温して均一溶解する。 80℃でAをホモミキサーで処理しているところにB、C、Dを徐々に添加する。 パドルミキサーで攪拌しながら35℃以下まで冷却後、調製を終了する。
[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤である油溶性トマトエキスが安定に保たれていることが確認された。
【実施例8】
【0029】
アンチエイジングエマルション
A リノール酸レチノール : 10.0質量%
水素添加大豆リン脂質 : 1.0
B ポリパーフルオロエトキシメトキシフルオロメチル
ジステアラミド(10%水溶液) : 10.0
水酸化ナトリウム(1%水溶液) :pH 7に調整
防腐剤 : 適量
精製水で全量 :100.0
[調製方法]A、Bをそれぞれ80℃まで加温して均一溶解する。80℃でBをホモミキサーで攪拌しながらAを徐々に添加する。ABをパドルミキサーで攪拌しながら35℃以下まで冷却し調製を終了する。

[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるリノール酸レチノールが安定に保たれていることが確認された。
【実施例9】
【0030】
ホワイトニングローション
A テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル : 3.0質量%
植物性スクワラン : 3.0
PEG−10フィトステロール : 0.05
ジプロピレングリコール : 5.0
B フルオロ(9−15)アルコールリン酸(10%水溶液) : 10.0
水酸化カリウム(1%水溶液) : pH 5.8に調整
防腐剤 : 適量
精製水で全量 :100.0
[調製方法]A、Bをそれぞれ80℃まで加温して均一溶解する。80℃でBをホモミキサーで攪拌しながらAを徐々に添加する。ABをパドルミキサーで攪拌しながら35℃以下まで冷却し調製を終了する。
[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルが安定に保たれていることが確認された。
【実施例10】
【0031】
ヘアサンスプレー
A パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル : 3.0質量%
ローズヒップ油 : 3.0
シクロペンタシロキサン : 3.0
モノオレイン酸ソルビタン : 0.5
ジプロピレングリコール : 5.0
B パーフルオロ(C8−18)アルコールリン酸(10%水溶液):10.0
水酸化ナトリウム(1%水溶液) :pH 6.5に調整
防腐剤 : 適量
精製水で全量 :100.0
[調製方法]A、Bをそれぞれ80℃まで加温して均一溶解する。80℃でBをホモミキサーで攪拌しながらAを徐々に添加する。ABをパドルミキサーで攪拌しながら35℃以下まで冷却し調製を終了する。
[結果(40℃、2ヵ月後)]着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるローズヒップ油が安定に保たれていることが確認された。
【実施例11】
【0032】
サンスプレー
A パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル : 15.0質量%
トリスヘキシルデカン酸ピリドキシン : 3.0
シクロペンタシロキサン : 3.0
ステアリン酸ソルビタン : 0.3
ジプロピレングリコール : 5.0
B ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロ
エチルPEGリン酸(10%水溶液) : 12.0
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))
クロスポリマー(2%水溶液) : 5.0
水酸化ナトリウム(1%水溶液) :pH 7.5に調整
防腐剤 : 適量
精製水で全量 :100.0
[調製方法]A、Bをそれぞれ80℃まで加温して均一溶解する。80℃でBをホモミキサーで攪拌しながらAを徐々に添加する。ABをパドルミキサーで攪拌しながら35℃以下まで冷却し調製を終了する。
[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるトリスヘキシルデカン酸ピリドキシンが安定に保たれていることが確認された。
【実施例12】
【0033】
アンチエイジングクリーム
A パルミチン酸レチノール : 0.5質量%
シクロペンタシロキサン : 3.0
セスキイソステアリン酸ソルビタン : 0.5
グリセリン : 5.0
B ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロ
エチルPEGリン酸(10%水溶液) : 12.0
(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))
クロスポリマー(2%水溶液) : 5.0
アルギニン :pH 7に調整
精製水で全量 : 20.0
C 水素添加大豆リン脂質 : 3.0
セタノール : 1.5
バチルアルコール : 1.0
ホホバ油 : 3.0
スクワラン : 10.0
防腐剤 適量
D ヒアルロン酸ナトリウム(1%水溶液) : 1.0
精製水で全量 :100.0
[調製方法]A、B、C、Dをそれぞれ80℃まで加温して均一溶解する。80℃でBをホモミキサーで攪拌しながらAを徐々に添加する。Cをパドルミキサーで攪拌しながらDを徐々に添加した後、ホモミキサーで攪拌する。CDをパドルミキサーで攪拌しながら40℃以下まで冷却しABを添加して均一にした後調製を終了する。
[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるパルミチン酸レチノールが安定に保たれていることが確認された。
【実施例13】
【0034】
VCリッチクリーム
A テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル : 60.0質量%
植物性スクワラン : 2.0
ジプロピレングリコール : 5.0
B ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロエチル
PEGリン酸(10%水溶液) : 20.0
水酸化ナトリウム(1%水溶液) :pH 5.5に調整
防腐剤 : 適量
精製水で全量 :100.0
[調製方法]A、Bをそれぞれ80℃まで加温して均一溶解する。80℃でBをホモミキサーで攪拌しながらAを徐々に添加する。ABをパドルミキサーで攪拌しながら35℃以下まで冷却し調製を終了する。
[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるテトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルが安定に保たれていることが確認された。
【実施例14】
【0035】
アスタキサンチン配合リポソームクリーム
A 水素添加大豆リン脂質 : 2.0質量%
グリセリン : 40.0
B アスタキサンチン : 0.4
C 防腐剤 : 適量
精製水で全量 :100.0
D パーフルオロアルキルリン酸ジエタノール
アミン塩(10%水溶液) : 5.0
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル: 5.0
[調製方法] Aを80℃まで加温し、よく攪拌して均一な状態とする。Aを攪拌しながら室温まで冷却し、Bを徐々に添加して均一なゲルにする。Cをホモミキサーで攪拌しながらABを少しずつ加えて均一なリポソーム分散液とする。得られたリポソーム分散液にDを添加してよく攪拌し調製を終了する。
[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるアスタキサンチンが安定に保たれていることが確認された。
【実施例15】
【0036】
トコトリエノール配合クリーム
A 大豆油 :10.0質量%
水素添加大豆リン脂質 : 1.0
EPG−10フィトステロール : 0.05
ジプロピレングリコール : 5.0
B トコトリエノール : 0.5
C パーフルオロアルキルエーテル
ポリオキシリン酸(10%水溶液) :10.0
ポリアクリル酸ナトリウム : 5.0
防腐剤 適量
D 水酸化カリウム(1%水溶液) :pH 7.8に調整
カルボキシビニルポリマー(0.1%水溶液) : 適量
[調製方法]Aを80℃まで加温し、よく攪拌して均一な状態とする。Aを攪拌しながら40℃まで冷却し、Bを徐々に添加して均一にする。ABを攪拌しながらC、次いでDを添加し35℃で調製を終了する
[結果(40℃、2ヵ月後)]本製剤は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるトコトリエノールが安定に保たれていることが確認された。
【実施例16】
【0037】
アンチエイジングナノエマルション
A PEG−30フィトステロール : 0.2質量%
セラキルアルコール : 0.4
1,3−ブチレングリコール : 3.0
グリセリン : 10.0
B トコフェロール : 0.2
C 防腐剤 : 適量
D 水酸化ナトリウム(1%水溶液) : 適量
精製水で全量 :100.0
C ポリパーフルオロエトキシメトキシジフルオロ
エチルPEGリン酸(10%水溶液) : 5.0
[調製方法]Aを80℃に加温し攪拌しながらB、ついでCを徐々に添加する。ABCを高圧ホモジナイザーで処理しエマルションを微細化する(透明溶液)。ABCを攪拌しながらDを徐々に添加し、調製を終了した。
[結果(40℃、2ヵ月後)]微細エマルション(透明溶液)は着色や臭いなど外観の変化もほとんどなく、油溶性薬剤であるトコフェロールが安定に保たれていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系界面活性剤を中和して乳化剤として使用することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
安定化剤として親油性両親媒性物質及び/又は水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
被乳化成分として油溶性薬剤を使用することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
油溶性薬剤がドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、プロビタミンA類(カロチノイド類)又はプロビタミンA類を含む動植物成分、脂溶性ビタミンおよび/又はその誘導体の一種又は二種以上である請求項3記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
フッ素系界面活性剤が、パーフルオロポリエーテルリン酸および/又はその塩、パーフルオロポリエーテル硫酸および/又はその塩、パーフルオロエポリエーテルカルボン酸および/又はその塩、パーフルオロエポリエーテル酢酸および/又はその塩、パーフルオロエポリエーテルステアリン酸および/又はその塩、パーフルオロポリエーテルジステアロイルアミドの一種又は二種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
フッ素系界面活性剤を中和して乳化剤として使用することを特徴とする水中油型エマルション組成物。
【請求項7】
安定化剤として親油性両親媒性物質及び/又は水溶性高分子を含有することを特徴とする請求項6に記載の水中油型エマルション組成物。
【請求項8】
被乳化成分として油溶性薬剤を使用することを特徴とする請求項6〜7のいずれか1項に記載の水中油型エマルション組成物。
【請求項9】
油溶性薬剤がドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、プロビタミンA類(カロチノイド類)又はプロビタミンA類を含む動植物成分、脂溶性ビタミンおよび/又はその誘導体の一種又は二種以上である請求項8記載の水中油型エマルション組成物。
【請求項10】
フッ素系界面活性剤が、パーフルオロポリエーテルリン酸および/又はその塩、パーフルオロポリエーテル硫酸および/又はその塩、パーフルオロエポリエーテルカルボン酸および/又はその塩、パーフルオロエポリエーテル酢酸および/又はその塩、パーフルオロエポリエーテルステアリン酸および/又はその塩、パーフルオロポリエーテルジステアロイルアミドの一種又は二種以上である6〜9のいずれか1項に項記載のエマルション組成物。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の水中油型エマルションを含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【公開番号】特開2013−95717(P2013−95717A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240996(P2011−240996)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【出願人】(000228729)日本サーファクタント工業株式会社 (44)
【出願人】(301068114)株式会社コスモステクニカルセンター (57)
【Fターム(参考)】