皮膚外用剤等の配合成分に対する安定化剤
【課題】皮膚外用剤等に有効成分として配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の経時での光分解等を抑制し、皮膚外用剤等の組成物中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができる安定化剤とそれを用いた皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】本発明のハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の安定化剤は、フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とする。
【解決手段】本発明のハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の安定化剤は、フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤等に配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類に対する安定化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキノンは皮膚のメラニン生成に関与するチロシナーゼ活性を阻害する美白成分として化粧品や医薬部外品等に使用されており、たとえば、皮膚の美白化、紫外線に過度に暴露されるために生じる、しみ・そばかす、肝班等の予防・改善のためにハイドロキノンを配合した皮膚外用剤が知られている。
【0003】
しかしながら、ハイドロキノンは比較的不安定であり、配合が難しいという問題点があった。
【0004】
また、アスタキサンチン類は、自然界では動植物界に広く分布するカロテノイド系色素であり、抗酸化作用、活性酸素や一重項酸素の消去作用などを示すことが知られている。アスタキチンサンは、従来より化粧品、食品などに配合されているが、色素は一般に光等により分解され易く、アスタキサンチンは分解による抗酸化力の低下が化粧品等への配合上問題になっており、現状では光を透過しないシートで覆うなどの方法が用いられている。さらに、アスタキサンチン類の抗酸化剤として、従来、アスコルビン酸、トコフェロール、ポリフェノール類などが提案されている。
【0005】
また、コエンザイムQ10に代表されるユビキノンは、補酵素と呼ばれ、細胞が働くためのエネルギーを生み出す上で必要な栄養素である。たとえばコエンザイムQ10は、抗酸化、免疫力の向上、心臓機能の維持、動脈硬化の予防、血栓防止、悪玉コレステロールの減少、疲労回復、肌トラブルの改善などに有効であると言われており、化粧品や健康食品などに使用されている。
【0006】
しかしながら、コエンザイムQ10は、光等により分解され易くその安定化が課題とされており、そのための各種の技術が検討されている(特許文献1等参照)。
【0007】
また、レチノール類は、ビタミンAとも呼ばれ、抗酸化能を有しており光老化(シワ等)、夜盲症、角化性皮膚疾患等の治療・予防に有効であることが知られており、化粧品や医薬品等に配合され、食品中にも含まれている。
【0008】
しかしながら、レチノール類は比較的不安定であり、配合が難しいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】再公表2005−035477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、皮膚外用剤等に有効成分として配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の経時での光分解等を抑制し、皮膚外用剤等の組成物中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができる安定化剤とそれを用いた皮膚外用剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0012】
第1:フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤。
【0013】
第2:皮膚の美白化のための有効量で配合されたハイドロキノンと、上記第1のハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0014】
第3:フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするユビキノンの光分解抑制用安定化剤。
【0015】
第4:ユビキノンがコエンザイムQ10であることを特徴とする上記第3のユビキノンの光分解抑制用安定化剤。
【0016】
第5:ユビキノンと、上記第3または第4のユビキノンの光分解抑制用安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0017】
第6:フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするアスタキサンチン類の安定化剤。
【0018】
第7:アスタキサンチン類と、上記第6のアスタキサンチン類の安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0019】
第8:フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするレチノール類の安定化剤。
【0020】
第9:レチノール類と、上記第8のレチノール類の安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0021】
本発明者等は、フラーレン類を配合することによりハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の光分解等を抑制し、皮膚外用剤等の組成物中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
フラーレン類は抗酸化活性を有し、皮膚外用剤の成分として使用することが提案されている(特開2004−269523号公報)。しかしながら、フラーレン類をハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類と共存させることや、それによりこれらの化合物の光分解等を顕著に抑制し安定化させることは、本発明者等の知る限りにおいて、本発明者等が初めて明らかにしたものであり、従来の知見としては全く教示されていないものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の安定化剤によれば、皮膚外用剤等に有効成分として配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の経時での光分解等を抑制し、皮膚外用剤等の組成物中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができる。
【0024】
本発明の皮膚外用剤によれば、フラーレン類を含有する上記の安定化剤を配合しているので、皮膚外用剤に有効成分として配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の経時での光分解を抑制し、皮膚外用剤中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】HPLC分析によるハイドロキノン相対量の経時変化(紫外線照射下)を示すグラフである。
【図2】実施例2での紫外線照射前後の石英セル内溶液の写真である。
【図3】HPLC分析によるコエンザイムQ10の量の経時変化(可視光照射下)を示すグラフである。
【図4】Radical Sponge10%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを含有する溶液を用いた蛍光灯(可視光)照射による比較試験の結果を示すグラフである。
【図5】HPLC分析によるコエンザイムQ10の量の経時変化(紫外光照射下)を示すグラフである。
【図6】リノール酸を用いたアスタキサンチン退色試験の結果を示すグラフである。
【図7】AOAの測定結果を示すグラフである。
【図8】45℃加温後2時間での溶液の退色度合を示す写真である。
【図9】UVB照射によるアスタキサンチン退色試験の結果を示すグラフである。
【図10】UVB照射によるアスタキサンチン退色試験の結果を示すグラフである。
【図11】Radical Sponge1%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを含有する溶液を用いたUVB照射によるアスタキサンチン退色試験の比較結果を示すグラフである。
【図12】HPLC分析によるレチノールの量の経時変化(紫外光照射下)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
本発明の安定化剤に使用されるフラーレン類は、フラーレン、フラーレン誘導体、フラーレン包接化合物、フラーレン複合体、あるいはそれらの塩の1種以上であってよい。このうちのフラーレンは、C32、C44、C50、C60、C58、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96などがあるが、C60単独または、C60の60質量%以上含有物であることが好ましい。
【0028】
フラーレン誘導体については、フラーレン骨格の炭素原子に水酸基などの修飾基が結合したものなどが挙げられる。
【0029】
フラーレンを包接しまたは複合化する化合物の例としては、有機オリゴマー、有機ポリマー、包接化合物や包接錯体が形成可能なシクロデキストリン、クラウンエーテル、またはそれらの類縁化合物などが挙げられる。具体的には、たとえばポリビニルピロリドン包接フラーレン、γ−シクロデキストリン包接フラーレン、ポリエチレングリコール修飾フラーレンなどが使用できる。
【0030】
フラーレンを包接しまたは複合化する有機ポリマーは、その重量平均分子量は、たとえば1200〜100000であり、ポリビニルピロリドンでは、通常は8000〜100000、好ましくは10000〜100000、より好ましくは40000〜100000である。
【0031】
本発明の安定化剤は、上記のフラーレンを配合した各種の形態、たとえば液状、固形状等とすることができるが、ハイドロキノン、ユビキノン、アスタキサンチン類、またはレチノール類を配合した組成物への配合が容易である点などからは、包接や複合化により水溶化したフラーレンの水性溶解液とすることや、フラーレン類をスクワラン類等に溶解した油性溶解液とすることが好ましい。スクワラン類としては、スクワラン、スクワレン、これらの混合物等を挙げることができ、植物由来、あるいは動物や魚類由来のものが例示される。
【0032】
本発明のフラーレン類を有効成分とする安定化剤は、ハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤として使用することができる。特に、UVA、UVB等の紫外線によるハイドロキノンの光分解抑制用に好適であり、フラーレン類としてはポリビニルピロリドン包接フラーレン等が好適である。ハイドロキノンは、しみ、そばかす等の治療のために用いられており、また医薬部外品としてのハイドロキノンは、その強力な漂白作用により、美白剤として皮膚科などで処方される他、薬局などでハイドロキノンを配合した軟膏、クリームなどが市販されている。皮膚外用剤にハイドロキノンを配合する場合、美白作用その他の点を考慮するとその配合量は、好ましくは0.01〜10質量%である。また、フラーレン類の配合量は、光分解抑制作用や皮膚外用剤としての使用等を考慮すると、ハイドロキノンの配合量に対して好ましくは0.00002〜0.01質量%である。
【0033】
また本発明のフラーレン類を有効成分とする安定化剤は、ユビキノンの光分解抑制用安定化剤として使用することができる。UVA、UVB等の紫外線によるユビキノンの光分解抑制用には、フラーレン類としてポリビニルピロリドン包接フラーレン等が好適である。可視光によるユビキノンの光分解抑制用には、スクワラン類に溶解したフラーレン等が好適である。ユビキノンとしては、1〜12個のイソプレン単位からなるイソプレノイド鎖を側鎖として有するものなどが例示されるが、代表的なものとしてはコエンザイムQ10が挙げられる。コエンザイムQ10は、10個のイソプレン単位からなるイソプレノイド鎖を側鎖として有する下記式:
【0034】
【化1】
【0035】
で表されるベンゾキノン誘導体であり、広く自然界に分布する。動植物等においては、ミトコンドリア内で酸化的リン酸化の電子伝達系に関与する。
【0036】
本発明に使用されるコエンザイムQ10としては、生体、たとえば、哺乳動物、中でもヒトが摂取、適用可能なものであれば特に限定されるものではない。たとえば、一般的に用いられている工業的合成品、発酵法により得られる酵母抽出品等の菌体抽出品、イワシ、ブタ、ウシ、ニワトリ、ブロッコリー、ナス、ニンニク、キャベツ等の動植物からの抽出品等を使用することができる。
【0037】
皮膚外用剤にユビキノンを配合する場合、その配合量は、好ましくは0.001〜5質量%である。また、フラーレン類の配合量は、光分解抑制作用や皮膚外用剤としての使用等を考慮すると、ユビキノンの配合量に対して好ましくは0.00002〜3.3質量%である。
【0038】
また本発明のフラーレン類を有効成分とする安定化剤は、その他、コエンザイムQ10を含有する食品等に配合することができる。
【0039】
また本発明の安定化剤は、フラーレン類を有効成分として含有するアスタキサンチン類の安定化剤として使用することができる。特に、UVA、UVB等の紫外線によるアスタキサンチン類の光分解抑制用に好適であり、フラーレン類としてはポリビニルピロリドン包接フラーレン等が好適である。アスタキサンチン類は、抗酸化能、活性酸素消去、一重項酸素の消去等を有しており、化粧品や食品等に配合されている。アスタキサンチンは、赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属しており、その化学構造は3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione (C40H5204、分子量596.82)であり、化学式は下記式で表される。
【0040】
【化2】
【0041】
アスタキサンチン類は自然界に広く分布し、アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白としても存在することが明らかにされている。アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)-位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’-体、3S,3R’-体(meso-体)、3R,3R’-体の三種で、さらに分子中央の共役二重結合のcis-、trans-の異性体も存在する。例えば全cis-、9-cis体と13-cis体などである。
【0042】
皮膚外用剤にアスタキサンチン類を配合する場合、その配合量は、好ましくは0.00001〜5質量%である。また、フラーレン類の配合量は、アスタキサンチン類の安定化作用や皮膚外用剤としての使用等を考慮すると、アスタキサンチン類の配合量に対して好ましくは0.00002〜0.001質量%である。
【0043】
本発明に係るアスタキサンチン類の安定化剤は、その他、アスタキサンチン類を含有する食品等に配合することができる。
【0044】
また本発明の安定化剤は、フラーレン類を有効成分として含有するレチノール類の安定化剤として使用することができる。特に、UVA、UVB等の紫外線によるレチノール類の光分解抑制用に好適であり、フラーレン類としてはポリビニルピロリドン包接フラーレン等が好適である。
【0045】
レチノール類としては、レチノールおよびその誘導体を挙げることができ、レチノール誘導体としては、たとえば、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酪酸レチノール、オクチル酸レチノール、ラウリル酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ステアリン酸レチノール、ミリスチン酸レチノール、オレイン酸レチノール、リノレン酸レチノール、リノール酸レチノールなどのレチノール脂肪酸エステル;レチナール、レチノイン酸などのレチノール酸化物;レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、レチノイン酸トコフェロールなどのレチノイン酸エステルなどが挙げることができ、レチノイン酸においてはレチノイン酸ナトリウムなどの塩であってもよい。
【0046】
皮膚外用剤にレチノール類を配合する場合、抗しわ作用等を考慮するとその配合量は、好ましくは0.001〜10質量%である。また、フラーレン類の配合量は、光分解抑制作用や皮膚外用剤としての使用等を考慮すると、レチノール類の配合量に対して好ましくは0.05〜5質量%である。
【0047】
本発明において、皮膚外用剤には、化粧品、医薬部外品、医薬品などに一般に用いられる各種成分、たとえば水、油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子等の高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、保湿剤、香料、pH調整剤などを配合することができる。その他、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分などを配合することができる。
【0048】
本発明の皮膚外用剤は、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏、硬膏、ハップ剤、エアゾール剤などの種々の剤型とすることができ、従来公知の方法でこれらを調製し、身体への塗布、貼付、噴霧などにより適用することができる。
【0049】
本発明の皮膚外用剤を化粧料として使用する場合には、化粧水、乳液、クリーム、パック、メイクアップベースローション、メイクアップクリーム、ファンデーション、ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローション等の形態とすることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、下記において%表示は特に明示しない限り質量%を表す。
<実施例1>
フラーレンによるハイドロキノンの光分解抑制作用について試験を行った。フラーレン試料として、Radical Sponge(ビタミンC60バイオリサーチ(株)、登録商標)を使用した。Radical Spongeは、混合フラーレン(C60、C70)をPVPにて包接した後、1,3−ブチレングリコールと水に溶解したものであり、組成はPVP10%、1,3−ブチレングリコール75%、水15%、C60200ppm以上である。Radical Sponge1%は、約2ppmのC60を含有している。
【0051】
ハイドロキノン(ナカライテスク(株)製)を蒸留水に溶解し、NaOHでpH5.3〜5.8に調整した2%のハイドロキノン溶液を調整した。
【0052】
2%ハイドロキノン溶液に、Radical Sponge0.1%、1%を添加した2つの試料と、Radical Spongeを添加しない2%ハイドロキノン溶液のそれぞれを光路長1cmの石英セルに3mL収容し、120分間の紫外線照射を行った。
【0053】
紫外線照射は大型マスクアライメント装置M−2L型(ミカサ(株)製)を使用し、UVA/B(照射強度50mW/cm2:365nm)を照射することにより行った。
【0054】
紫外線照射前後の酸化物質の分析は高速液体クロマトグラフィー(日立HPLC)を使用して行った。分析条件は次のとおりである。
HPLCカラム:Cosmosil 5C18MSII(4.6mm×150mm)
展開溶媒:20%→100%メタノール
流速:0.5mL/min
検出:UV 280nm
2%ハイドロキノン溶液を100%としたときのHPLC分析による相対量の経時変化を図1に示す。紫外線の照射時間と共にハイドロキノン(HQ)の分解が見られた。この分解は0.1%ラジカルスポンジ添加で分解の遅延が見られ、1%ラジカルスポンジ添加で分解が抑制された。
【0055】
なお、蛍光灯(可視光)照射による上記と同様の試験を行ったが、フラーレンの添加、未添加に関わらずハイドロキノンの量は一定であった。
<実施例2>
実施例1において確認されたフラーレンによるハイドロキノンの光分解抑制作用について、その機構を検討した。実施例1で使用した石英セルを用いて、4%ハイドロキノン溶液を収容した石英セルと蒸留水を収容した石英セルを重ねて、蒸留水を収容した石英セル側から15分間の紫外線照射を行った(条件1)。一方、別途に4%ハイドロキノン溶液を収容した石英セルと5%Radical Sponge溶液を収容した石英セルを重ねて、フラーレン溶液を収容した石英セル側から15分間の紫外線照射を行った(条件2)。
【0056】
紫外線照射前後のセル内溶液を図2に示す。条件1では、ハイドロキノンが紫外線照射により酸化されてベンゾキノンを経由して茶褐色のベンゾキノン重合体が多く生成していることが確認された。この結果より、フラーレンの有する抗酸化力のみならず、フラーレンの紫外線吸収能もハイドロキノンの安定化に寄与していることが明らかになった。
<実施例3>
フラーレンによるコエンザイムQ10の光分解抑制作用について試験を行った。フラーレン試料としてRadicalSpongeを使用した。コエンザイムQ10(Sigma C9538)の0.03%エタノール溶液に、RadicalSponge0.1%、1%を添加した2つの試料と、Radical Spongeを添加しないコエンザイムQ10の0.03%エタノール溶液のそれぞれを光路長1cmの石英セルに3mL収容し、5日間の蛍光灯(可視光)照射を行った。
【0057】
蛍光灯としてパルック(National パルック FL15EX−N、15ワット)を使用し、40cm離間した位置から石英セルに可視光照射を行った。
【0058】
可視光照射前後の酸化物質の分析は高速液体クロマトグラフィー(日立HPLC)を使用して行った。分析条件は次のとおりである。
HPLCカラム:Cosmosil 5C18MSII(4.6mm×150mm)
展開溶媒:アセトニトリル70%−クロロホルム30%
流速:1mL/min
検出:UV 275nm
HPLC分析によるコエンザイムQ10の量の経時変化を図3に示す。0.1%のRadicalSponge添加により、コエンザイムQ10の光分解抑制効果が認められ、1%のRadical Sponge添加によりコエンザイムQ10の光分解はさらに抑制された。
【0059】
なお、紫外線照射による上記と同様の試験を行ったが、フラーレンの添加、未添加に関わらずコエンザイムQ10の光分解量は同程度であった。
【0060】
次に、比較試験として、コエンザイムQ10の0.03%エタノール溶液に、Radical Sponge10%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを含有する溶液を加えて、上記と同様に5日間の蛍光灯(可視光)照射を行った。その結果を図4に示す。Radical Sponge10%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを加えても、コエンザイムQ10の0.03%エタノール溶液と比べてコエンザイムQ10の光分解抑制効果はみられず、フラーレンがコエンザイムQ10の光分解を抑制していることが明らかとなった。
<実施例4>
次に、フラーレン試料として、油溶性フラーレンのLipo Fullerne(LF:ビタミンC60バイオリサーチ(株)、登録商標)を用いてコエンザイムQ10の光分解抑制作用について試験を行った。Lipo Fullerneは、植物性スクワランに混合フラーレン(C60、C70)を溶解したものであり、C60を200ppm以上含有する。
【0061】
コエンザイムQ10(Sigma C9538)の0.03%スクワラン溶液に、Lipo Fullerne0.1%、1%、5%を添加した3つの試料と、タートラジン0.003%およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール0.006%を添加した試料と、これらを添加しないコエンザイムQ10の0.03%スクワラン溶液のそれぞれを光路長1cmの石英セルに3mL収容し、30分間の紫外線照射を行った。なお、タートラジンが光安定性を改善することが知られており(特許第3091913号明細書)、対照として用いた。
【0062】
紫外線照射は大型マスクアライメント装置M−2L型(ミカサ(株)製)を使用し、UVA/B(照射強度50mW/cm2:365nm)を照射することにより行った。実験に用いる試薬については、あらかじめ試薬中に安定化剤(酸化防止剤)が入っていないことを確認した。
【0063】
紫外線照射前後の酸化物質の分析は高速液体クロマトグラフィー(日立HPLC)を使用して行った。分析条件は次のとおりである。
HPLCカラム:Cosmosil 5C18MSII(4.6mm×150mm)
展開溶媒:65%メタノール/35%エタノール
流速:1mL/min
検出:UV 254nm
HPLC分析によるコエンザイムQ10の量の経時変化を図5に示す。1%および5%のLipo Fullerne添加により、コエンザイムQ10の光分解抑制効果が認められた。
【0064】
なお、可視光照射による上記と同様の試験を行ったが、フラーレンの添加、未添加に関わらずコエンザイムQ10の光分解量は同程度であった。
<実施例5>
フラーレンによるアスタキサンチンの安定化作用について、アスタキサンチン退色法により試験を行った。アスタキサンチンのクロロホルム溶液(1mg/mL)1.1mL、Tween40のクロロホルム溶液(0.2mg/mL)2.2mL、リノール酸のクロロホルム溶液(0.1mg/mL)440μLの混合液を調製し、次いでクロロホルムをエバポレーターで除去した後、リン酸緩衝液(pH7.0)72mLで希釈し、アスタキサンチン溶液を調製した。
【0065】
一方、試験溶液としてRadical Sponge(最終濃度14μM)、APPFローション((株)ITO、APPSおよびフラーレン含有、最終濃度14μM)、γ−シクロデキストリン包接フラーレン(最終濃度12μM)、ビタミンE(最終濃度15μM)、アスコルビン酸(最終濃度15μM)を使用し、各試験溶液10μlをウェルに加えた後、各ウェルに上記のアスタキサンチン溶液190μlを加えて計200μlとした。
【0066】
各ウェル内の溶液を45℃に加温し、プレートリーダーで経時の吸光度(450nm)を測定した。その結果を図6に示す。またAOA(100(kcontrol−ksample)/kcontrol)の測定結果を図7に、45℃加温後2時間での溶液の退色度合を図8に示す。
【0067】
アスタキサンチンの退色は抗酸化力の低下を意味しており、リノール酸は試験の上で脂質ラジカルを発生させるために配合している。リノール酸の酸化によりアスタキサンチンは退色するが、フラーレン含有試料はいずれもアスタキサンチンの退色を抑制した。
<実施例6>
フラーレンによるアスタキサンチンの光分解抑制作用について、アスタキサンチン退色法により試験を行った。アスタキサンチンのクロロホルム溶液(1mg/mL)275μL、Tween40のクロロホルム溶液(0.2mg/mL)550μLの混合液を調製し、次いでクロロホルムをエバポレーターで除去した後、リン酸緩衝液(pH7.0)18mLで希釈し、アスタキサンチン溶液を調製した。
【0068】
一方、試験溶液としてRadical Sponge(最終濃度5%、1%、0.5%)、APPFローション((株)ITO、APPSおよびフラーレン含有、最終濃度1%、14μM)、アスコルビン酸(最終濃度14μM)、ビタミンE(最終濃度14μM)、緑茶カテキン(最終濃度14μM)、Ptコロイド(最終濃度1ppm)を使用し、各試験溶液10μlをウェルに加えた後、各ウェルに上記のアスタキサンチン溶液190μlを加えて計200μlとした。
【0069】
各ウェルにUVBランプからの紫外線を30分照射し、プレートリーダーで紫外線照射前後の吸光度差ΔABS(450nm)を測定した。得られたΔABSより、コントロールに水を用いて、%lnh(=ΔABScontrol−ΔABSsample)/ΔABScontrolを算出した。
【0070】
その結果を図9、図10に示す。各グラフの縦軸は%lnhを示している。図9、図10より、フラーレン含有試料はいずれもアスタキサンチンの光分解を抑制した。
【0071】
次に、比較試験として、試験溶液としてRadical Sponge(最終濃度1%)を添加したものと、Radical Sponge1%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを含有する溶液を添加したものを使用し、上記と同様の試験を行った。その結果を図11に示す。Radical Sponge1%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを加えても、Radical Sponge1%添加による大幅な退色抑制はみられず、アスタキサンチンの退色抑制にはフラーレンが作用していることが明らかとなった。
<実施例7>
次に、フラーレン試料として、油溶性フラーレンのLipo Fullerne(LF:ビタミンC60バイオリサーチ(株)、登録商標)を用いてレチノールの光分解抑制作用について試験を行った。
【0072】
レチノール(Sigma RO271)の0.04%ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール溶液に、Lipo Fullerne0.1%、1%、5%を添加した3つの試料と、ベントナイト((株)ホージュン製、エスベンN−400)0.016%を添加した試料と、これらを添加しないレチノールの0.04%ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール溶液のそれぞれを光路長1cmの石英セルに3mL収容し、60分間の紫外線照射を行った。なお、ベントナイトは光安定性を改善することが知られており(特開2008−106041号公報)、対照として用いた。
【0073】
紫外線照射は大型マスクアライメント装置M−2L型(ミカサ(株)製)を使用し、UVA/B(照射強度50mW/cm2:365nm)を照射することにより行った。実験に用いる試薬については、あらかじめ試薬中に安定化剤(酸化防止剤)が入っていないことを確認した。
【0074】
紫外線照射前後の酸化物質の分析は高速液体クロマトグラフィー(日立HPLC)を使用して行った。分析条件は次のとおりである。
HPLCカラム:Cosmosil 5C18MSII(4.6mm×150mm)
展開溶媒:100%メタノール
流速:0.5mL/min
検出:UV 254nm
HPLC分析によるレチノール量の経時変化を図12に示す。紫外線照射時間の経過と共にLipo Fullerne未添加の試料ではレチノールの分解が見られた。これに対して、Lipo Fullerneの添加により、濃度依存的にレチノール分解が抑制された。
【0075】
なお、可視光照射による上記と同様の試験を行ったが、フラーレンの添加、未添加に関わらずレチノールの光分解量は同程度であった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤等に配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類に対する安定化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイドロキノンは皮膚のメラニン生成に関与するチロシナーゼ活性を阻害する美白成分として化粧品や医薬部外品等に使用されており、たとえば、皮膚の美白化、紫外線に過度に暴露されるために生じる、しみ・そばかす、肝班等の予防・改善のためにハイドロキノンを配合した皮膚外用剤が知られている。
【0003】
しかしながら、ハイドロキノンは比較的不安定であり、配合が難しいという問題点があった。
【0004】
また、アスタキサンチン類は、自然界では動植物界に広く分布するカロテノイド系色素であり、抗酸化作用、活性酸素や一重項酸素の消去作用などを示すことが知られている。アスタキチンサンは、従来より化粧品、食品などに配合されているが、色素は一般に光等により分解され易く、アスタキサンチンは分解による抗酸化力の低下が化粧品等への配合上問題になっており、現状では光を透過しないシートで覆うなどの方法が用いられている。さらに、アスタキサンチン類の抗酸化剤として、従来、アスコルビン酸、トコフェロール、ポリフェノール類などが提案されている。
【0005】
また、コエンザイムQ10に代表されるユビキノンは、補酵素と呼ばれ、細胞が働くためのエネルギーを生み出す上で必要な栄養素である。たとえばコエンザイムQ10は、抗酸化、免疫力の向上、心臓機能の維持、動脈硬化の予防、血栓防止、悪玉コレステロールの減少、疲労回復、肌トラブルの改善などに有効であると言われており、化粧品や健康食品などに使用されている。
【0006】
しかしながら、コエンザイムQ10は、光等により分解され易くその安定化が課題とされており、そのための各種の技術が検討されている(特許文献1等参照)。
【0007】
また、レチノール類は、ビタミンAとも呼ばれ、抗酸化能を有しており光老化(シワ等)、夜盲症、角化性皮膚疾患等の治療・予防に有効であることが知られており、化粧品や医薬品等に配合され、食品中にも含まれている。
【0008】
しかしながら、レチノール類は比較的不安定であり、配合が難しいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】再公表2005−035477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、皮膚外用剤等に有効成分として配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の経時での光分解等を抑制し、皮膚外用剤等の組成物中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができる安定化剤とそれを用いた皮膚外用剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0012】
第1:フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤。
【0013】
第2:皮膚の美白化のための有効量で配合されたハイドロキノンと、上記第1のハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0014】
第3:フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするユビキノンの光分解抑制用安定化剤。
【0015】
第4:ユビキノンがコエンザイムQ10であることを特徴とする上記第3のユビキノンの光分解抑制用安定化剤。
【0016】
第5:ユビキノンと、上記第3または第4のユビキノンの光分解抑制用安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0017】
第6:フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするアスタキサンチン類の安定化剤。
【0018】
第7:アスタキサンチン類と、上記第6のアスタキサンチン類の安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0019】
第8:フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするレチノール類の安定化剤。
【0020】
第9:レチノール類と、上記第8のレチノール類の安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0021】
本発明者等は、フラーレン類を配合することによりハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の光分解等を抑制し、皮膚外用剤等の組成物中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
フラーレン類は抗酸化活性を有し、皮膚外用剤の成分として使用することが提案されている(特開2004−269523号公報)。しかしながら、フラーレン類をハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類と共存させることや、それによりこれらの化合物の光分解等を顕著に抑制し安定化させることは、本発明者等の知る限りにおいて、本発明者等が初めて明らかにしたものであり、従来の知見としては全く教示されていないものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の安定化剤によれば、皮膚外用剤等に有効成分として配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の経時での光分解等を抑制し、皮膚外用剤等の組成物中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができる。
【0024】
本発明の皮膚外用剤によれば、フラーレン類を含有する上記の安定化剤を配合しているので、皮膚外用剤に有効成分として配合されるハイドロキノン、アスタキサンチン類、ユビキノン、およびレチノール類の経時での光分解を抑制し、皮膚外用剤中においてこれらの化合物を長期間に渡り安定に存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】HPLC分析によるハイドロキノン相対量の経時変化(紫外線照射下)を示すグラフである。
【図2】実施例2での紫外線照射前後の石英セル内溶液の写真である。
【図3】HPLC分析によるコエンザイムQ10の量の経時変化(可視光照射下)を示すグラフである。
【図4】Radical Sponge10%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを含有する溶液を用いた蛍光灯(可視光)照射による比較試験の結果を示すグラフである。
【図5】HPLC分析によるコエンザイムQ10の量の経時変化(紫外光照射下)を示すグラフである。
【図6】リノール酸を用いたアスタキサンチン退色試験の結果を示すグラフである。
【図7】AOAの測定結果を示すグラフである。
【図8】45℃加温後2時間での溶液の退色度合を示す写真である。
【図9】UVB照射によるアスタキサンチン退色試験の結果を示すグラフである。
【図10】UVB照射によるアスタキサンチン退色試験の結果を示すグラフである。
【図11】Radical Sponge1%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを含有する溶液を用いたUVB照射によるアスタキサンチン退色試験の比較結果を示すグラフである。
【図12】HPLC分析によるレチノールの量の経時変化(紫外光照射下)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
本発明の安定化剤に使用されるフラーレン類は、フラーレン、フラーレン誘導体、フラーレン包接化合物、フラーレン複合体、あるいはそれらの塩の1種以上であってよい。このうちのフラーレンは、C32、C44、C50、C60、C58、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C96などがあるが、C60単独または、C60の60質量%以上含有物であることが好ましい。
【0028】
フラーレン誘導体については、フラーレン骨格の炭素原子に水酸基などの修飾基が結合したものなどが挙げられる。
【0029】
フラーレンを包接しまたは複合化する化合物の例としては、有機オリゴマー、有機ポリマー、包接化合物や包接錯体が形成可能なシクロデキストリン、クラウンエーテル、またはそれらの類縁化合物などが挙げられる。具体的には、たとえばポリビニルピロリドン包接フラーレン、γ−シクロデキストリン包接フラーレン、ポリエチレングリコール修飾フラーレンなどが使用できる。
【0030】
フラーレンを包接しまたは複合化する有機ポリマーは、その重量平均分子量は、たとえば1200〜100000であり、ポリビニルピロリドンでは、通常は8000〜100000、好ましくは10000〜100000、より好ましくは40000〜100000である。
【0031】
本発明の安定化剤は、上記のフラーレンを配合した各種の形態、たとえば液状、固形状等とすることができるが、ハイドロキノン、ユビキノン、アスタキサンチン類、またはレチノール類を配合した組成物への配合が容易である点などからは、包接や複合化により水溶化したフラーレンの水性溶解液とすることや、フラーレン類をスクワラン類等に溶解した油性溶解液とすることが好ましい。スクワラン類としては、スクワラン、スクワレン、これらの混合物等を挙げることができ、植物由来、あるいは動物や魚類由来のものが例示される。
【0032】
本発明のフラーレン類を有効成分とする安定化剤は、ハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤として使用することができる。特に、UVA、UVB等の紫外線によるハイドロキノンの光分解抑制用に好適であり、フラーレン類としてはポリビニルピロリドン包接フラーレン等が好適である。ハイドロキノンは、しみ、そばかす等の治療のために用いられており、また医薬部外品としてのハイドロキノンは、その強力な漂白作用により、美白剤として皮膚科などで処方される他、薬局などでハイドロキノンを配合した軟膏、クリームなどが市販されている。皮膚外用剤にハイドロキノンを配合する場合、美白作用その他の点を考慮するとその配合量は、好ましくは0.01〜10質量%である。また、フラーレン類の配合量は、光分解抑制作用や皮膚外用剤としての使用等を考慮すると、ハイドロキノンの配合量に対して好ましくは0.00002〜0.01質量%である。
【0033】
また本発明のフラーレン類を有効成分とする安定化剤は、ユビキノンの光分解抑制用安定化剤として使用することができる。UVA、UVB等の紫外線によるユビキノンの光分解抑制用には、フラーレン類としてポリビニルピロリドン包接フラーレン等が好適である。可視光によるユビキノンの光分解抑制用には、スクワラン類に溶解したフラーレン等が好適である。ユビキノンとしては、1〜12個のイソプレン単位からなるイソプレノイド鎖を側鎖として有するものなどが例示されるが、代表的なものとしてはコエンザイムQ10が挙げられる。コエンザイムQ10は、10個のイソプレン単位からなるイソプレノイド鎖を側鎖として有する下記式:
【0034】
【化1】
【0035】
で表されるベンゾキノン誘導体であり、広く自然界に分布する。動植物等においては、ミトコンドリア内で酸化的リン酸化の電子伝達系に関与する。
【0036】
本発明に使用されるコエンザイムQ10としては、生体、たとえば、哺乳動物、中でもヒトが摂取、適用可能なものであれば特に限定されるものではない。たとえば、一般的に用いられている工業的合成品、発酵法により得られる酵母抽出品等の菌体抽出品、イワシ、ブタ、ウシ、ニワトリ、ブロッコリー、ナス、ニンニク、キャベツ等の動植物からの抽出品等を使用することができる。
【0037】
皮膚外用剤にユビキノンを配合する場合、その配合量は、好ましくは0.001〜5質量%である。また、フラーレン類の配合量は、光分解抑制作用や皮膚外用剤としての使用等を考慮すると、ユビキノンの配合量に対して好ましくは0.00002〜3.3質量%である。
【0038】
また本発明のフラーレン類を有効成分とする安定化剤は、その他、コエンザイムQ10を含有する食品等に配合することができる。
【0039】
また本発明の安定化剤は、フラーレン類を有効成分として含有するアスタキサンチン類の安定化剤として使用することができる。特に、UVA、UVB等の紫外線によるアスタキサンチン類の光分解抑制用に好適であり、フラーレン類としてはポリビニルピロリドン包接フラーレン等が好適である。アスタキサンチン類は、抗酸化能、活性酸素消去、一重項酸素の消去等を有しており、化粧品や食品等に配合されている。アスタキサンチンは、赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属しており、その化学構造は3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione (C40H5204、分子量596.82)であり、化学式は下記式で表される。
【0040】
【化2】
【0041】
アスタキサンチン類は自然界に広く分布し、アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白としても存在することが明らかにされている。アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)-位の水酸基の立体配置により異性体が存在する3S,3S’-体、3S,3R’-体(meso-体)、3R,3R’-体の三種で、さらに分子中央の共役二重結合のcis-、trans-の異性体も存在する。例えば全cis-、9-cis体と13-cis体などである。
【0042】
皮膚外用剤にアスタキサンチン類を配合する場合、その配合量は、好ましくは0.00001〜5質量%である。また、フラーレン類の配合量は、アスタキサンチン類の安定化作用や皮膚外用剤としての使用等を考慮すると、アスタキサンチン類の配合量に対して好ましくは0.00002〜0.001質量%である。
【0043】
本発明に係るアスタキサンチン類の安定化剤は、その他、アスタキサンチン類を含有する食品等に配合することができる。
【0044】
また本発明の安定化剤は、フラーレン類を有効成分として含有するレチノール類の安定化剤として使用することができる。特に、UVA、UVB等の紫外線によるレチノール類の光分解抑制用に好適であり、フラーレン類としてはポリビニルピロリドン包接フラーレン等が好適である。
【0045】
レチノール類としては、レチノールおよびその誘導体を挙げることができ、レチノール誘導体としては、たとえば、酢酸レチノール、プロピオン酸レチノール、酪酸レチノール、オクチル酸レチノール、ラウリル酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ステアリン酸レチノール、ミリスチン酸レチノール、オレイン酸レチノール、リノレン酸レチノール、リノール酸レチノールなどのレチノール脂肪酸エステル;レチナール、レチノイン酸などのレチノール酸化物;レチノイン酸メチル、レチノイン酸エチル、レチノイン酸レチノール、レチノイン酸トコフェロールなどのレチノイン酸エステルなどが挙げることができ、レチノイン酸においてはレチノイン酸ナトリウムなどの塩であってもよい。
【0046】
皮膚外用剤にレチノール類を配合する場合、抗しわ作用等を考慮するとその配合量は、好ましくは0.001〜10質量%である。また、フラーレン類の配合量は、光分解抑制作用や皮膚外用剤としての使用等を考慮すると、レチノール類の配合量に対して好ましくは0.05〜5質量%である。
【0047】
本発明において、皮膚外用剤には、化粧品、医薬部外品、医薬品などに一般に用いられる各種成分、たとえば水、油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子等の高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、保湿剤、香料、pH調整剤などを配合することができる。その他、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分などを配合することができる。
【0048】
本発明の皮膚外用剤は、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏、硬膏、ハップ剤、エアゾール剤などの種々の剤型とすることができ、従来公知の方法でこれらを調製し、身体への塗布、貼付、噴霧などにより適用することができる。
【0049】
本発明の皮膚外用剤を化粧料として使用する場合には、化粧水、乳液、クリーム、パック、メイクアップベースローション、メイクアップクリーム、ファンデーション、ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローション等の形態とすることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、下記において%表示は特に明示しない限り質量%を表す。
<実施例1>
フラーレンによるハイドロキノンの光分解抑制作用について試験を行った。フラーレン試料として、Radical Sponge(ビタミンC60バイオリサーチ(株)、登録商標)を使用した。Radical Spongeは、混合フラーレン(C60、C70)をPVPにて包接した後、1,3−ブチレングリコールと水に溶解したものであり、組成はPVP10%、1,3−ブチレングリコール75%、水15%、C60200ppm以上である。Radical Sponge1%は、約2ppmのC60を含有している。
【0051】
ハイドロキノン(ナカライテスク(株)製)を蒸留水に溶解し、NaOHでpH5.3〜5.8に調整した2%のハイドロキノン溶液を調整した。
【0052】
2%ハイドロキノン溶液に、Radical Sponge0.1%、1%を添加した2つの試料と、Radical Spongeを添加しない2%ハイドロキノン溶液のそれぞれを光路長1cmの石英セルに3mL収容し、120分間の紫外線照射を行った。
【0053】
紫外線照射は大型マスクアライメント装置M−2L型(ミカサ(株)製)を使用し、UVA/B(照射強度50mW/cm2:365nm)を照射することにより行った。
【0054】
紫外線照射前後の酸化物質の分析は高速液体クロマトグラフィー(日立HPLC)を使用して行った。分析条件は次のとおりである。
HPLCカラム:Cosmosil 5C18MSII(4.6mm×150mm)
展開溶媒:20%→100%メタノール
流速:0.5mL/min
検出:UV 280nm
2%ハイドロキノン溶液を100%としたときのHPLC分析による相対量の経時変化を図1に示す。紫外線の照射時間と共にハイドロキノン(HQ)の分解が見られた。この分解は0.1%ラジカルスポンジ添加で分解の遅延が見られ、1%ラジカルスポンジ添加で分解が抑制された。
【0055】
なお、蛍光灯(可視光)照射による上記と同様の試験を行ったが、フラーレンの添加、未添加に関わらずハイドロキノンの量は一定であった。
<実施例2>
実施例1において確認されたフラーレンによるハイドロキノンの光分解抑制作用について、その機構を検討した。実施例1で使用した石英セルを用いて、4%ハイドロキノン溶液を収容した石英セルと蒸留水を収容した石英セルを重ねて、蒸留水を収容した石英セル側から15分間の紫外線照射を行った(条件1)。一方、別途に4%ハイドロキノン溶液を収容した石英セルと5%Radical Sponge溶液を収容した石英セルを重ねて、フラーレン溶液を収容した石英セル側から15分間の紫外線照射を行った(条件2)。
【0056】
紫外線照射前後のセル内溶液を図2に示す。条件1では、ハイドロキノンが紫外線照射により酸化されてベンゾキノンを経由して茶褐色のベンゾキノン重合体が多く生成していることが確認された。この結果より、フラーレンの有する抗酸化力のみならず、フラーレンの紫外線吸収能もハイドロキノンの安定化に寄与していることが明らかになった。
<実施例3>
フラーレンによるコエンザイムQ10の光分解抑制作用について試験を行った。フラーレン試料としてRadicalSpongeを使用した。コエンザイムQ10(Sigma C9538)の0.03%エタノール溶液に、RadicalSponge0.1%、1%を添加した2つの試料と、Radical Spongeを添加しないコエンザイムQ10の0.03%エタノール溶液のそれぞれを光路長1cmの石英セルに3mL収容し、5日間の蛍光灯(可視光)照射を行った。
【0057】
蛍光灯としてパルック(National パルック FL15EX−N、15ワット)を使用し、40cm離間した位置から石英セルに可視光照射を行った。
【0058】
可視光照射前後の酸化物質の分析は高速液体クロマトグラフィー(日立HPLC)を使用して行った。分析条件は次のとおりである。
HPLCカラム:Cosmosil 5C18MSII(4.6mm×150mm)
展開溶媒:アセトニトリル70%−クロロホルム30%
流速:1mL/min
検出:UV 275nm
HPLC分析によるコエンザイムQ10の量の経時変化を図3に示す。0.1%のRadicalSponge添加により、コエンザイムQ10の光分解抑制効果が認められ、1%のRadical Sponge添加によりコエンザイムQ10の光分解はさらに抑制された。
【0059】
なお、紫外線照射による上記と同様の試験を行ったが、フラーレンの添加、未添加に関わらずコエンザイムQ10の光分解量は同程度であった。
【0060】
次に、比較試験として、コエンザイムQ10の0.03%エタノール溶液に、Radical Sponge10%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを含有する溶液を加えて、上記と同様に5日間の蛍光灯(可視光)照射を行った。その結果を図4に示す。Radical Sponge10%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを加えても、コエンザイムQ10の0.03%エタノール溶液と比べてコエンザイムQ10の光分解抑制効果はみられず、フラーレンがコエンザイムQ10の光分解を抑制していることが明らかとなった。
<実施例4>
次に、フラーレン試料として、油溶性フラーレンのLipo Fullerne(LF:ビタミンC60バイオリサーチ(株)、登録商標)を用いてコエンザイムQ10の光分解抑制作用について試験を行った。Lipo Fullerneは、植物性スクワランに混合フラーレン(C60、C70)を溶解したものであり、C60を200ppm以上含有する。
【0061】
コエンザイムQ10(Sigma C9538)の0.03%スクワラン溶液に、Lipo Fullerne0.1%、1%、5%を添加した3つの試料と、タートラジン0.003%およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール0.006%を添加した試料と、これらを添加しないコエンザイムQ10の0.03%スクワラン溶液のそれぞれを光路長1cmの石英セルに3mL収容し、30分間の紫外線照射を行った。なお、タートラジンが光安定性を改善することが知られており(特許第3091913号明細書)、対照として用いた。
【0062】
紫外線照射は大型マスクアライメント装置M−2L型(ミカサ(株)製)を使用し、UVA/B(照射強度50mW/cm2:365nm)を照射することにより行った。実験に用いる試薬については、あらかじめ試薬中に安定化剤(酸化防止剤)が入っていないことを確認した。
【0063】
紫外線照射前後の酸化物質の分析は高速液体クロマトグラフィー(日立HPLC)を使用して行った。分析条件は次のとおりである。
HPLCカラム:Cosmosil 5C18MSII(4.6mm×150mm)
展開溶媒:65%メタノール/35%エタノール
流速:1mL/min
検出:UV 254nm
HPLC分析によるコエンザイムQ10の量の経時変化を図5に示す。1%および5%のLipo Fullerne添加により、コエンザイムQ10の光分解抑制効果が認められた。
【0064】
なお、可視光照射による上記と同様の試験を行ったが、フラーレンの添加、未添加に関わらずコエンザイムQ10の光分解量は同程度であった。
<実施例5>
フラーレンによるアスタキサンチンの安定化作用について、アスタキサンチン退色法により試験を行った。アスタキサンチンのクロロホルム溶液(1mg/mL)1.1mL、Tween40のクロロホルム溶液(0.2mg/mL)2.2mL、リノール酸のクロロホルム溶液(0.1mg/mL)440μLの混合液を調製し、次いでクロロホルムをエバポレーターで除去した後、リン酸緩衝液(pH7.0)72mLで希釈し、アスタキサンチン溶液を調製した。
【0065】
一方、試験溶液としてRadical Sponge(最終濃度14μM)、APPFローション((株)ITO、APPSおよびフラーレン含有、最終濃度14μM)、γ−シクロデキストリン包接フラーレン(最終濃度12μM)、ビタミンE(最終濃度15μM)、アスコルビン酸(最終濃度15μM)を使用し、各試験溶液10μlをウェルに加えた後、各ウェルに上記のアスタキサンチン溶液190μlを加えて計200μlとした。
【0066】
各ウェル内の溶液を45℃に加温し、プレートリーダーで経時の吸光度(450nm)を測定した。その結果を図6に示す。またAOA(100(kcontrol−ksample)/kcontrol)の測定結果を図7に、45℃加温後2時間での溶液の退色度合を図8に示す。
【0067】
アスタキサンチンの退色は抗酸化力の低下を意味しており、リノール酸は試験の上で脂質ラジカルを発生させるために配合している。リノール酸の酸化によりアスタキサンチンは退色するが、フラーレン含有試料はいずれもアスタキサンチンの退色を抑制した。
<実施例6>
フラーレンによるアスタキサンチンの光分解抑制作用について、アスタキサンチン退色法により試験を行った。アスタキサンチンのクロロホルム溶液(1mg/mL)275μL、Tween40のクロロホルム溶液(0.2mg/mL)550μLの混合液を調製し、次いでクロロホルムをエバポレーターで除去した後、リン酸緩衝液(pH7.0)18mLで希釈し、アスタキサンチン溶液を調製した。
【0068】
一方、試験溶液としてRadical Sponge(最終濃度5%、1%、0.5%)、APPFローション((株)ITO、APPSおよびフラーレン含有、最終濃度1%、14μM)、アスコルビン酸(最終濃度14μM)、ビタミンE(最終濃度14μM)、緑茶カテキン(最終濃度14μM)、Ptコロイド(最終濃度1ppm)を使用し、各試験溶液10μlをウェルに加えた後、各ウェルに上記のアスタキサンチン溶液190μlを加えて計200μlとした。
【0069】
各ウェルにUVBランプからの紫外線を30分照射し、プレートリーダーで紫外線照射前後の吸光度差ΔABS(450nm)を測定した。得られたΔABSより、コントロールに水を用いて、%lnh(=ΔABScontrol−ΔABSsample)/ΔABScontrolを算出した。
【0070】
その結果を図9、図10に示す。各グラフの縦軸は%lnhを示している。図9、図10より、フラーレン含有試料はいずれもアスタキサンチンの光分解を抑制した。
【0071】
次に、比較試験として、試験溶液としてRadical Sponge(最終濃度1%)を添加したものと、Radical Sponge1%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを含有する溶液を添加したものを使用し、上記と同様の試験を行った。その結果を図11に示す。Radical Sponge1%に相当するPVPと1,3−ブチレングリコールを加えても、Radical Sponge1%添加による大幅な退色抑制はみられず、アスタキサンチンの退色抑制にはフラーレンが作用していることが明らかとなった。
<実施例7>
次に、フラーレン試料として、油溶性フラーレンのLipo Fullerne(LF:ビタミンC60バイオリサーチ(株)、登録商標)を用いてレチノールの光分解抑制作用について試験を行った。
【0072】
レチノール(Sigma RO271)の0.04%ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール溶液に、Lipo Fullerne0.1%、1%、5%を添加した3つの試料と、ベントナイト((株)ホージュン製、エスベンN−400)0.016%を添加した試料と、これらを添加しないレチノールの0.04%ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール溶液のそれぞれを光路長1cmの石英セルに3mL収容し、60分間の紫外線照射を行った。なお、ベントナイトは光安定性を改善することが知られており(特開2008−106041号公報)、対照として用いた。
【0073】
紫外線照射は大型マスクアライメント装置M−2L型(ミカサ(株)製)を使用し、UVA/B(照射強度50mW/cm2:365nm)を照射することにより行った。実験に用いる試薬については、あらかじめ試薬中に安定化剤(酸化防止剤)が入っていないことを確認した。
【0074】
紫外線照射前後の酸化物質の分析は高速液体クロマトグラフィー(日立HPLC)を使用して行った。分析条件は次のとおりである。
HPLCカラム:Cosmosil 5C18MSII(4.6mm×150mm)
展開溶媒:100%メタノール
流速:0.5mL/min
検出:UV 254nm
HPLC分析によるレチノール量の経時変化を図12に示す。紫外線照射時間の経過と共にLipo Fullerne未添加の試料ではレチノールの分解が見られた。これに対して、Lipo Fullerneの添加により、濃度依存的にレチノール分解が抑制された。
【0075】
なお、可視光照射による上記と同様の試験を行ったが、フラーレンの添加、未添加に関わらずレチノールの光分解量は同程度であった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤。
【請求項2】
皮膚の美白化のための有効量で配合されたハイドロキノンと、請求項1に記載のハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項3】
フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするユビキノンの光分解抑制用安定化剤。
【請求項4】
ユビキノンがコエンザイムQ10であることを特徴とする請求項3に記載のユビキノンの光分解抑制用安定化剤。
【請求項5】
ユビキノンと、請求項3または4に記載のユビキノンの光分解抑制用安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項6】
フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするアスタキサンチン類の安定化剤。
【請求項7】
アスタキサンチン類と、請求項6に記載のアスタキサンチン類の安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項8】
フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするレチノール類の安定化剤。
【請求項9】
レチノール類と、請求項8に記載のレチノールの安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項1】
フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤。
【請求項2】
皮膚の美白化のための有効量で配合されたハイドロキノンと、請求項1に記載のハイドロキノンの光分解抑制用安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項3】
フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするユビキノンの光分解抑制用安定化剤。
【請求項4】
ユビキノンがコエンザイムQ10であることを特徴とする請求項3に記載のユビキノンの光分解抑制用安定化剤。
【請求項5】
ユビキノンと、請求項3または4に記載のユビキノンの光分解抑制用安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項6】
フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするアスタキサンチン類の安定化剤。
【請求項7】
アスタキサンチン類と、請求項6に記載のアスタキサンチン類の安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項8】
フラーレン類を有効成分として含有することを特徴とするレチノール類の安定化剤。
【請求項9】
レチノール類と、請求項8に記載のレチノールの安定化剤とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−269915(P2009−269915A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96265(P2009−96265)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(503272483)ビタミンC60バイオリサーチ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(503272483)ビタミンC60バイオリサーチ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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