説明

皮膚外用剤組成物

【課題】皮膚刺激性が極めて低く、且つ優れた表皮細胞増殖促進作用を有し、しかも簡便に使用することが可能な皮膚外用剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明にかかる皮膚外用剤組成物は、ADP及びキサンチン誘導体を含有することを特徴とする。
前記皮膚外用剤組成物において、ADPを0.01〜100mM含有し、キサンチン誘導体を0.0005〜5質量%含有することが好適である。
前記皮膚外用剤組成物において、キサンチン誘導体がカフェイン及び/またはテオフィリンであることが好適である。
また、前記皮膚外用剤組成物において、該組成物は表皮細胞増殖促進剤であることが好適である。
また、本発明にかかるリーブオン型化粧料は、前記皮膚外用剤組成物を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる表皮細胞増殖促進方法は、ADP及びキサンチン誘導体を含む皮膚外用剤組成物を皮膚表面に適用することを特徴とする。
前記方法において、皮膚外用剤組成物がADPを0.01〜100mM含有し、キサンチン誘導体を0.0005〜5質量%含有することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤組成物、特にADP及びキサンチン誘導体の配合による低皮膚刺激性の表皮細胞増殖促進剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ATP及びADPは、表皮細胞増殖作用を有することが知られていた(非特許文献1)。前記作用は、表皮細胞に存在し、ATPやADPが結合するATP受容体のサブタイプであるP2Y及びP2Yを介したものであると考えられている。また、ADPが特にP2Yのアゴニストであることも知られている。
また、一般にケミカルピーリング剤に用いられるグリコール酸が表皮細胞の増殖をもたらすことが知られており、そのメカニズムが報告されている(特許文献1)。特許文献1では、グリコール酸(α−ヒドロキシ酸の一種)が表皮細胞に存在するTRPV1(VR1)受容体に結合することにより、表皮細胞内のCaイオンが増加し、表皮細胞から細胞外にATPを遊離すること、それがP2Y受容体に結合し、その結果増殖を誘導することが明らかにされている。また、同文献には乳酸についても、マウス表皮細胞においてATPの細胞外遊離を誘起することが報告されている。
すなわち、これらはある一定濃度の細胞外ATPによって、表皮細胞の増殖が亢進されることを示唆している。
【0003】
しかしながら、前記TRPV1受容体は、ケミカルピーリング剤などの酸による刺激によって活性化するため、用いうる酸濃度によっては皮膚刺激、発赤、ピリピリ感、疼痛を惹起することが知られている。また、皮膚に炎症刺激を与えるという性質から、薬剤濃度調整が極めてデリケートである上、厳格に設定された塗布時間の後直ちに薬剤を洗い流す等、その適用方法においても管理を要するため、一般にケミカルピーリングは専門医による施術が推奨されている。したがって、刺激が少なく、且つ皮膚の細胞増殖効果にも優れ、しかも通常の化粧品のように簡便に使用することのできる薬剤の開発が望まれていた。
【0004】
ところで、HaCaT cell line(株化ヒトケラチノサイト)には、ADPのATP変換に関与するアデニル酸キナーゼ、FATPシンターゼ、及びヌクレオチドジホスホキナーゼ(NDPK)が存在し、皮膚細胞(HaCaT)培養系にADPを添加するとATP濃度の上昇が認められたことが報告されている(非特許文献2)。
また、有効量のADPを含む化粧品もしくは医薬組成物が皮膚の線維芽細胞のATPレベルを増加させ、皮膚老化を防止し得ることが開示されている(特許文献2)。
これらの知見から、前述した従来のケミカルピーリング剤(酸)に替え、ケラチノサイトにADPを供給することで、皮膚に炎症刺激を与えることなく細胞外へATPを遊離させることが可能となると考えられる。
【0005】
しかしながら、HaCaT cell lineにおいて細胞外ATPを適用すると、時間と共に細胞外ATP濃度が減少することから、ATP分解酵素の存在もまた示唆されている(非特許文献2)。すなわち、ヒトケラチノサイトには、ADPをATPに変換する酵素と、そのATPを分解する酵素が存在する。したがって、細胞外にADPを適用し、それがATPに変換されたとしても、ATP分解酵素による作用を受けてATP遊離量が減少し、細胞増殖に寄与するほどのATP濃度を維持することができなかった。
【非特許文献1】Greig AVH etal,: Purinergic receptors are part of a functional signaling system forproliferation and differentiation of humab epidermal keratinocytes. J Invest Dermatol 120:1007-1015, 2003
【非特許文献2】Burrell,H. E., Wlodarski, B., et al.,: Human Keratinocytes Release ATP and UtilizeThree Mechanisms for Nucleotide Interconversion at the Cell Surface. J. Biol.Chem., Vol. 280, No. 33, pp. 29667-29676, 2005
【特許文献1】特開2006−262806号公報
【特許文献2】特表2001−503447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題により、皮膚に炎症刺激を与えることなく細胞外のATP濃度を高め、表皮細胞の増殖を賦活し得る皮膚外用剤は未だ知られていない。
本発明は、かかる事情に鑑みて行なわれたものであり、皮膚刺激性が極めて低く、且つ優れた表皮細胞増殖促進作用を有し、しかも簡便に使用することが可能な皮膚外用剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究を行なった結果、ADPとキサンチン誘導体とを特定量配合した皮膚外用剤が、ATPの分解抑制及び細胞外ATP濃度の上昇を引き起こし、これにより表皮細胞の増殖が促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる皮膚外用剤組成物は、ADP及びキサンチン誘導体を含有することを特徴とする。
前記皮膚外用剤組成物において、ADPを0.01〜100mM含有し、キサンチン誘導体を0.0005〜5質量%含有することが好適である。
前記皮膚外用剤組成物において、キサンチン誘導体がカフェイン及び/またはテオフィリンであることが好適である。
また、前記皮膚外用剤組成物において、該組成物は表皮細胞増殖促進剤であることが好適である。
前記皮膚外用剤組成物において、ADP:キサンチン誘導体の配合比が、質量比で1:1〜5:1であることが好適である。
また、本発明にかかるリーブオン型化粧料は、前記皮膚外用剤組成物を含むことを特徴とする。
また、本発明にかかる表皮細胞増殖促進方法は、ADP及びキサンチン誘導体を含む皮膚外用剤組成物を皮膚表面に適用することを特徴とする。
前記表皮細胞増殖促進方法において、皮膚外用剤組成物がADPを0.01〜100mM含有し、キサンチン誘導体を0.0005〜5質量%含有することが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、炎症刺激を伴わずに表皮細胞の増殖を賦活することがすることができる。本発明の皮膚外用剤組成物は皮膚に炎症を起こさないため、従来のケミカルピーリング剤では困難であったリーブオン型の化粧料として提供し、誰もが簡便に使用することを可能とする。また、前記組成物は、表皮細胞の増殖が促進されることにより、抗老化、美白、抗しわ、抗くすみ、創傷治癒等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
体内において、細胞内ATPが、例えば筋肉の収縮、生体物質の生合成、イオン輸送・濃縮などを起こす際にエネルギーとして非常に重要な役割を果たしていることは周知である。一方、細胞外ATPについては、1990年代になってG.Burnstockらによって情報伝達物質としての役割を果たしていることが見出され、細胞外に放出されたATPが情報伝達物質として周辺細胞に働きかけ、細胞増殖や痛みなど種々の生理作用が発現されることが明らかとなってきている。従来のケミカルピーリング剤は、この細胞外ATPの情報伝達物質としての役割を利用し、主成分である酸によって表皮細胞のVR1受容体に炎症刺激を与え、この刺激により該細胞における細胞外ATPの遊離を促進し、細胞の増殖を誘導するというものである。すなわち、ケミカルピーリング剤は、炎症刺激によって表皮細胞の増殖機能を作動させることに基づく。
一方、本発明にかかる皮膚外用剤組成物は、ADP及びキサンチン誘導体を含むものである。前記皮膚外用剤組成物において、ADPは主にATP合成に利用され、キサンチン誘導体は主にATPの分解を抑制する。これら両作用によって表皮細胞外ATP濃度が上昇し、細胞増殖を促進せしめる。すなわち、本発明は細胞増殖に際して炎症刺激を必要としない。したがって、本発明は細胞増殖に際して炎症刺激を必要としないため、基本的に炎症刺激によりVR−1受容体に作用する物質(ケミカルピーリング成分)を含まない。
【0010】
以下、本発明により表皮細胞の増殖が促進される機構について説明する。
ATP及びADPのようなATPアナログは、P2X(イオンチャンネル内蔵型)及びP2Y(Gタンパク質共役型)の2つのサブグループを有するP2受容体の活性化を経て、増殖等の様々な細胞プロセスに関与することが知られている。P2受容体サブタイプの発現は種及び細胞型に依存し、正常なヒトケラチノサイトにおいては、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y、P2Y11、P2Y12、P2Y13の存在が確認されている。
例えば、組織の損傷などの状況下で近傍細胞から放出されたATPは、前記P2Y受容体に結合することによって、細胞内Ca濃度を増加させる。その後ATPは分解酵素により直ちにADP、AMP、もしくはアデノシンへ分解され、前記活性は沈静化する。
このような表皮細胞の増殖機構において、本発明は、ADPを配合した外用剤を皮膚へ適用することによって、ATPによるP2Y受容体の活性化を積極的に誘起することを意図するものである。
【0011】
ADPの供給により、表皮細胞におけるADP濃度が0.01mM以上となると、細胞外に遊離されるATPの量は顕著に増進する。したがって表皮細胞へADPを供給するほどATPの産生は活発になるが、生体に対する影響を考慮するならば、該細胞におけるADPの濃度は0.01〜100mM程度とすることが好適である。
本発明にかかる皮膚外用剤組成物の適用によって、表皮細胞におけるADP濃度を前述のレベルとする場合、組成物中のADP濃度が0.01〜100mM、好ましくは0.01〜10mMとなるように配合することが好ましい。組成物における配合質量は前記濃度範囲に応じて適宜調整することができるが、好ましくは0.0005〜5質量%である。
ケラチノサイト(表皮細胞)には、ATP合成反応を触媒する酵素としてエクトアデニル酸キナーゼ(AK)、エクトFATPシンターゼ、エクトヌクレオチドジホスホキナーゼ(NDPK)の存在が知られており、本発明によりケラチノサイトへ供給されたADPは、下記反応をもってATPへ変換される(Piはリン酸を示す)。
【0012】

なお、上記反応を経由せず、ATPを直接皮膚外用剤組成物へ配合すると、様々な調節にかかるATPが過剰に供給されることによる生体システムへの影響が危惧される。したがって、本発明においては、ADPとして表皮細胞へ供給し、生体が上記合成酵素の調整を経て必要なATPを産出する形態とすることが好ましい。通常、表皮細胞へADPを供給すれば、ADPはATPに変換され、該ATPの細胞外への放出も活性化される。
【0013】
また、ケラチノサイトには、上記ATP合成酵素と共に、ATPをADP及びAMPへ加水分解するATP分解酵素が存在する。
本発明者らは、ATP分解酵素として知られる4種類のNTPDaseのうち、3種類(NTPDase2、3、4)がヒトケラチノサイトにおいて発現していることを確認した。また、AMPをさらにアデノシンへ分解する酵素として5’−ヌクレオチダーゼが知られている。すなわち、ケラチノサイトでは、前述のATP合成反応と共に下記ATP分解反応が酵素調整の上行われている。
【0014】

【0015】
したがって、表皮細胞へADPを供給したのみでは、ADPから合成されたATPがP2受容体と結合せず、直ちに上記分解を受けてしまうことがある。そのため、供給したADPから変換されたATPを効率的に作用させるには、上記ATP分解反応を抑制する必要があった。
上記の一連の分解反応の検討において、本発明者らは5’−ヌクレオチダーゼを阻害することが知られたキサンチン誘導体(Tsuzuki and Newburgh, 1975)が、ATP分解にかかるNTPDaseの発現を阻害することを見出した。
【0016】
つまり、ADPとの共存下において、キサンチン誘導体を表皮細胞へ供給すると、細胞外ATP合成酵素によってADPによるATPの合成がなされる共に、キサンチン誘導体によるATPの分解抑制が同時に機能する。これらの作用により、表皮細胞におけるATP濃度は平常時よりも著しく高まってATPのP2Y受容体への結合が活発化し、表皮細胞の増殖が促進されることになる。
【0017】
特に、表皮細胞レベルでは、0.01〜100mMのADP共存下において、キサンチン誘導体濃度が0.0005〜5%であると、ATPの細胞外遊離量は相乗的に増加する。
ADPの添加を伴わずにキサンチン誘導体を表皮細胞へ適用しても、ATP産生の向上において十分な効果を得ることはできない。
本発明にかかる皮膚外用剤組成物の適用によって、表皮細胞におけるキサンチン誘導体濃度を前述の好適なレベルとする場合、組成物中にキサンチン誘導体を0.0005〜5質量%配合することが好ましく、より好ましくは0.0005〜0.5質量%である。
本発明に用いることのできるキサンチン誘導体としては、例えば、キサンチン、アミノフィリン、テオフィリン、コリンテオフィリン、カフェイン、テオブロミン、1,7−ジメチルキサンチン、オクストリフィン、ジプロフィリン、プロキシフィリン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、特にカフェイン及び/またはテオフィリンが好適である。
ADPに対するキサンチン誘導体の配合比は、質量比として1:1〜5:1とすることが好ましい。
【0018】
なお、NTPDaseの阻害手段としては、上記の他に表皮細胞を低pH環境下に曝すことが知られ、一般のケミカルピーリング剤に利用されてきた。すなわち、従来のケミカルピーリング剤の主成分であるグリコール酸等は、VR1受容体の刺激を介して細胞からATPを放出させると共に、そのATPの分解を阻害する作用を担っている。これに対し、本発明においては、ADP及びキサンチン誘導体の配合により、酸による刺激を与えることなく高い表皮細胞増殖効果を達成することができる。
【0019】
本発明の皮膚外用剤組成物は、上記必須成分の他、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤形に応じて常法により製造することが出来る。
【0020】
また、その他の配合可能成分として、例えば、防腐剤(エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【0021】
本発明の皮膚外用剤の剤形は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ジェル、ミスト、スプレー、ムース、ロールオン、スティック等、どのような剤形でも構わない。あるいは、不織布等のシートに含浸ないし塗布した製剤なども可能である。また、本発明の皮膚外用剤の製品形態も任意であり、化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー等のメーキャップ化粧料;日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤);ボディー化粧料;芳香化粧料;メーク落とし、ボディーシャンプーなどの皮膚洗浄料;ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、シャンプー、リンス、育毛料等の毛髪化粧料;軟膏等に用いることが出来る。特に、本発明は、日常的な使用が可能であり、塗布直後の洗い流しを要さないリーブオン型の化粧料として好適に用い得る。
以下、本発明の実施例を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、下記実施例において、成分の濃度は全て培養細胞に対するものとする。
【実施例1】
【0022】
<ATPアナログの選出>
試験方法
市販の正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、クラボウ社製)をそのプロトコル従い、KGM−2培地(クラボウ社製)にて培養を行なった。細胞は96穴ブラックプレートに1ウェル当たり1×104となるように播種し、24時間の培養後、PBS(−)で洗浄して1時間静置した。
その後、各ウェルの培地に、ADP、UTP、GTP、アデノシン、AMP、UDPをそれぞれ10μMとなるように添加し、ATPアッセイキット(ATPLite、Perkin Elmer社製)を用いて室温で5分間処理し、プレートごと発光プレートリーダーに置いて測定した。
本試験より得た各ATPアナログ添加による細胞外ATP遊離量を図1に示す。
【0023】
図1に示すとおり、アデノシン、AMP、UDPを添加した場合は、ATPアナログ無添加(medium)のサンプルと同様、細胞外へのATPの遊離はほとんど認められなかった。これに対し、ADP、UTP、GTPを添加した場合においては、明らかなATP遊離量の増加が認められた。
以上のことから、ADP、UTP、GTPの添加により、皮膚細胞のATP産出量が亢進されることが明らかである。
【0024】
<細胞増殖に対するATPアナログの影響>
上記試験においてATP産生の亢進が認められたADP、UTP、GTPについて、alamar blue試薬を用いて細胞増殖に対する作用を評価した。
試験方法
市販の正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、クラボウ社製)をそのプロトコル従い、KGM−2培地(クラボウ社製)にて培養を行なった。細胞は96穴ブラックプレートに1ウェル当たり3×10となるように播種し、4日間培養した。培養5日目に各ウェルの培地に、ADP、UTP、GTPをそれぞれ0.01〜250μMの濃度で添加し、翌日にalamar blue試薬(BIOSOURCE社製)を添加した。さらに24時間後、蛍光プレートリーダーにて590nmにおける蛍光強度を測定した。
ATPアナログを添加していない未処置の培養系における蛍光強度を100%とし、ADP、UTP、GTPを0.01〜250μMの濃度で添加した各サンプルの吸光度の相対値を算出し、これを細胞増殖率とした。結果を図2に示す。
【0025】
図2に示すとおり、GTPを添加した培養系では、低濃度域では若干の細胞増殖率の増加が見られたが、1.95μMをピークに減少し始め、250μMになると未処置時とほぼ同等となった。UTPを添加した場合、UTP濃度の上昇に伴って細胞増殖率も上昇した。ADPを添加した場合は、すべての濃度において優れた細胞増殖率を示した。特に、62.5μM以上の添加からさらに増殖率は上昇傾向にあった。
以上の結果から、皮膚細胞の増殖において、特にADPを添加することが好適である。
【0026】
さらに、ATP、ADP、アデノシンを0.03〜250μM添加した細胞系において、MTTアッセイをそれぞれ行った。試験方法及び細胞増殖率の算出は上記に準じた。結果を図3に示す。
図3に示すとおり、ATP及びADPの添加により細胞増殖率の増加が認められたが、ADPを添加したサンプルの方により高い細胞増殖が認められた。アデノシンを添加した場合、濃度が上がるほど細胞増殖率は著しく減少した。
以上の試験結果から、表皮細胞における細胞外ATP遊離量を増加させ、細胞増殖を促進する物質として、特にADPが適することが明らかである。
【0027】
<ADP濃度>
試験方法
市販の正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、クラボウ社製)をそのプロトコルに従い、KGM−2培地(クラボウ社製)にて培養を行なった。細胞は96穴ブラックプレートに1ウェル当たり1×10となるように播種し、24時間の培養後、PBS(−)で洗浄して1時間静置した。
その後、各ウェルの培地に、ADPをそれぞれ0、0.01、0.1、1、10、100μMとなるように添加し、ATPアッセイキット(ATPLite、Perkin Elmer社製)を用いて室温で5分間処理し、プレートごと発光プレートリーダーに置いて測定した。
本試験より得た各濃度のADPによる細胞外ATP遊離量を図4に示す。
【0028】
図4に示すとおり、ADPの濃度を1μMよりも高くしたサンプルにおいて、ATP遊離量の著しい増加が認められた。一方、ADP濃度が1μMに至るまでは、細胞外ATPの遊離量の増加はほとんど増加しなかった。
以上のことから、細胞外ATP遊離量の促進効果を得るには、ADP濃度を10μM(0.01mM)以上とすることが好適であることが明らかになった。
【0029】
<キサンチン誘導体のATP分解酵素抑制能>
試験方法
市販の正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、クラボウ社製)をその操作書に従い、KGM−2培地(クラボウ社製)にて培養を行なった。細胞は96穴ブラックプレートに1ウェル当たり1×10となるように播種し、24時間の培養後、PBS(−)で洗浄して1時間静置した。
その後、各ウェルの培地には、カフェインを0%、0.0005%、0.005%の濃度となるように添加し、37℃にて24時間培養した。
培養後、各ウェルの培養細胞について、ISOGEN(ニッポンジーン社製)を用い、そのプロトコルに従って全RNA抽出し、常法によりcDNAを作製してRT−PCRを行なった。PCR産物はアガロースゲル電気泳動に供し、NTPDase1〜4の発現を確認した。結果を図5に示す。
(プライマー及びプローブ)
NTPDase1
5’- ATGCAGGGTTAAAGGTCCTGGAATCTC
5’-TGACTGAATTTGCCCAGCAGATAGTTG
NTPDase2
5’-CTACCGAGTCTACACCCACAGCTTC
5’-TCCACAGTGTAGAAGAAGGCAGAGA
NTPDase3
5’- AAAGCTACTTCAAGTCCCAGCCCTTTG
5’-CAGGAGCATTGCCAGAAACTTCTTCTC
NTPDase4
5’- CGAGTATTTGTTTACTGCTGGCCAAGG
5’-GGGATATCGGTCAGAAGGTCTTCCAG
【0030】
図5に示すとおり、培養ヒト表皮細胞において、ATP分解酵素であるNTPDase2〜4が発現していた。NTPDase1は既に報告されているとおり、表皮細胞において発現が認められなかった(Georgiou JG et al, :Human epidermal and monocyte-derived langerhans
cells express functional P2X7 receptors. J Invest Dermatol: 125:482-490, 2005)。
発現が認められた3種の分解酵素(NTPDase2〜4)の全てにおいて、カフェイン添加による発現の抑制が認められた。この酵素阻害作用は極めて低いカフェイン濃度から認められ、濃度が高くなるほど酵素発現は抑制された。
【0031】
さらに、HaCaT細胞(ヒトケラチノサイト)を96穴プレートに1ウェル当たり1×10となるように播種し、24時間後にBSS(NaCl 150 mM; KCl 5 mM; CaCl2 1.8 mM; D-glucose 10 mM; HEPES 25 mMを溶かし、NaOHでpHを7.4に調整した水溶液)で洗浄後、30分間静置した。
その後、各ウェルの培地にATP10μM、ATP10μM+カフェイン0.0005%混液、ATP10μM+テオフィリン10μM混液をそれぞれ添加し、直後、BIOMOL GREEN(BIOMOL社製)を100μL添加し、室温で20分放置後、吸光プレートリーダーにて620nmにおける吸光度を測定した。
ATP及びキサンチン誘導体無添加で24時間培養した系(未刺激)における吸光度を100%として、各サンプルの吸光度の相対値を算出し、これを遊離リン酸量とした。結果を図6に示す。
【0032】
図6に示すとおり、表皮細胞へATPを添加した場合、通常時(未刺激)よりも遊離リン酸量が増加した。これは、ATPを添加したことにより細胞の恒常性維持機能が働き、リン酸の遊離を伴うATP分解反応が活性化したためと考えられる。培養系にATPとカフェインまたはテオフィリンの混液を添加すると、遊離リン酸量は低下した。これは、カフェイン及びテオフィリンがATP分解反応を抑制することにより、遊離リン酸量が減少したためであると考えられる。
以上の結果から、キサンチン誘導体がNTPDaseの発現を阻害し、表皮細胞における遊離ATPの分解反応が抑制されていることが明らかである。
【0033】
<ADP+キサンチン誘導体によるATP遊離量>
試験方法
市販の正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、クラボウ社製)をその操作書に従い、KGM−2培地(クラボウ社製)にて培養を行なった。細胞は96穴ブラックプレートに1ウェル当たり1×10となるように播種し、24時間の培養後、PBS(−)で洗浄して1時間静置した。
その後、各ウェルの培地に、培養液のみ、ADPを10μM、GTPを10μMとなるように添加し、さらにそれぞれについてカフェインを濃度が0、0.0005、0.005%となるように加えたサンプルを用意し、ATPアッセイキット(ATPLite、Perkin Elmer社製)を用いて室温で5分間処理し、プレートごと発光プレートリーダーに置いて測定した。結果を図7に示す。また、ADP無添加培地(コントロール)とADP10μM添加培地とを、0.0005%カフェインの有無で比較した結果を図8に示す。
【0034】
培養液のみ(medium)の場合、カフェイン濃度を上げてもATP遊離量の増加はほとんど見られなかった。GTPを添加した培地の場合は、GTPの添加だけでも培養液のみの場合に比べてATP遊離量の著しく増加したが、カフェインの添加によるATP遊離量への影響はほとんど認められなかった。
一方、ADPを添加した培地の場合、カフェイン無添加のサンプルはGTP添加による細胞外ATP遊離量に及ばなかったものの、カフェインを添加すると細胞外ATP遊離量が飛躍的に増加し、GTP添加よりも優れたATP遊離量(およそ300nM)を示した。
また、図8によれば、ADPが添加されていないとカフェインを適量添加してもATP遊離量の増加はほとんど認められなかった(コントロール)のに対し、ADP配合系においてはカフェインの添加により著しいATP遊離量の増加が起こったことが分かる。
この顕著なATPの増加は、ATPの基質となるADPの添加に基づくATP合成の亢進と、カフェインの添加に基づくATP分解の抑制によるものと考えられる。さらに、図8のコントロールにおけるカフェイン添加によるATP遊離量の増加幅と、ADP添加培地における増加幅との比較から、ADP及びカフェインがATP遊離量の増加に対し、相乗的に作用していると推察された。
以上のことから、特にADPをキサンチン誘導体とを共存させることにより、表皮細胞の細胞外ATP遊離量が著しく促進されることが明らかである。
また、さらに検討を行ったところ、ADP:キサンチン誘導体濃度が質量比で1:1〜5:1であるとき、特に顕著な細胞外ATP遊離量の増加が認められた。
【0035】
<細胞増殖に対するADP+キサンチン誘導体の作用>
テストスキンへADP及びキサンチン誘導体を適用し、細胞増殖活性の変化を測定した。
テストスキンは、ヒト由来表皮ケラチノサイト(表皮細胞の一つである表皮角化細胞)からなる表皮層と真皮線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲルから成る3次元皮膚モデルであり、特に表皮層はマウスよりもヒトの皮膚に近い厚さをもち、培養しながら情報伝達物質などの測定が容易である。表皮の上には角質層も形成されており、薬剤の塗布と除去が可能である。
【0036】
試験方法
テストスキン(LSE−011A、東洋紡社製)をそのプロトコルに従って培養した。添付のシリコンリングを表皮上に装着し、水(コントロール)、ADP3mM溶液、ADP10mM溶液、ADP30mM溶液、カフェイン0.1%溶液、ADP及びカフェイン溶液(ADP濃度10mM、カフェイン濃度0.1%)をリングの中央に入れ、24時間培養後、培養液とテストスキンを回収した。回収の2時間前にBrdU(5−ブロモ−2’−デオキシ−ウリジン)を培養液に添加し(終濃度50μM)、複製中の細胞のDNAを標識した。
テストスキンは中央部を含むように幅2mm、長さはモデル全直径となるように採取し、常法に従いパラフィンブロックに包埋し、薄切切片を作製した。この切片を抗BrdU抗体で免疫染色し、BrdUで標識された細胞核(BrdU陽性細胞)の数をカウントし、細胞増殖活性の指標とした。BrdUは、チミジンの類似体として複製中のDNAに取り込まれ、増殖中の細胞の識別に用いられる。BrdUを添加して1〜2時間後に組織を採取し、BrdUに対する抗体で染色すると、増殖中の細胞の核が染まる。この核が多いほど増殖活性が高い。
図9に各切片の抗BrdU染色画像、及び1切片あたりのBrdU陽性細胞数を示す。
【0037】
図9左画像に示すように、ADPの添加により、BrdUを取り込み染色された細胞数が増加した。特に、ADPに加え、カフェインを添加したサンプルにおいてBrdU陽性細胞数が多数認められた。なお、図9の各画像において、上方の帯状の部分は表皮、その下の部分が真皮に相当する部分であり、染色された細胞は濃色の点として現れている。
また、図9の右グラフに示すように、ADP溶液またはカフェイン溶液の添加においても水に比べてBrdU陽性細胞数の増加が認められたが、特にADPとカフェインの両方を含む溶液により、極めて高い陽性細胞数の増加を示した。この細胞数の増加は、ADPのみによる増加幅及びカフェインのみによる増加幅よりも顕著であり、ADPとカフェインの併用により両者が相乗的に細胞増殖効果を奏するものと考えられる。
【0038】
<ケミカルピーリング剤との比較>
ADP及びキサンチン誘導体を添加した皮膚細胞と、一般的なケミカルピーリング剤成分であるグリコール酸(GA)による処理を行った皮膚細胞について下記比較試験を行った。
試験方法
市販の正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、クラボウ社製)をその操作書に従い、KGM−2培地(クラボウ社製)にて培養を行なった。細胞は96穴ブラックプレートに1ウェル当たり1×10となるように播種し、24時間の培養後、PBS(−)で洗浄して1時間静置した。
その後、各ウェル細胞を、濃度を変えたグリコール酸溶液に5〜10秒間曝して刺激を与えた。同じ細胞に前記刺激を2回与え、培養液で酸を洗浄後、培養液を加えて37℃にて24時間培養した。また、別のウェルの細胞には、ADPを10μM、カフェインを0.0005%添加して同様に培養を行った。培養後、ATPアッセイキット(ATPLite、Perkin Elmer社製)を用いて室温で5分間処理し、プレートごと発光プレートリーダーに置いて測定した。
【0039】
図10に示すように、グリコール酸(GA)によるATP遊離量の増加は、GA濃度が0.59%のときに最も顕著に現れ、その際のGA溶液のpHは3.7と極めて高い酸性を示した。一方、ADP10μM及びカフェイン0.0005%を配合したサンプルは、濃度0.59%GA処理のものと同等のATP遊離量(約270nM)を示した。その際の培養液pHは7.6であり、生理的pHに近いものであった。
特開2006−262806号公報によれば、皮膚モデル上で40%グリコール酸(pH2.8)による処理を3分間行い、10分後に培養液中の遊離ATPが約300nmであることが示され、このようなATP遊離によって表皮細胞の増殖が促進され得ることが示唆されている。これは、図8で示した、ADP及びカフェイン共存下におけるATP遊離量とほぼ等しい。これらを考慮すると、細胞外ATP遊離量が約300nMであることが、表皮細胞の増殖促進を示す指標となり得ると考えられる。
つまり、GAによるVR1受容体刺激によるATP遊離を経てなる細胞増殖作用(ケミカルピーリング効果)を得るには、強い酸を肌に塗布し、直ぐに洗い流す必要がある。それに対し、本発明においては、ADP及びカフェインを配合することで、表皮細胞に酸による強い刺激を与えることなく、ケミカルピーリング効果と同等の細胞増殖作用を得ることができると考えられる。
また、ADP及びカフェインの配合系は生理的pHに近く、刺激がほとんどないため、皮膚への塗布後直ぐに洗い落とさずに、長時間の使用が可能である。
【0040】
以下に、本発明にかかる皮膚外用剤組成物の処方例を示すが、これらは本発明を限定するものではない。
<処方例1:クリーム>
(成分) (質量%)
ADP 1
カフェイン 0.5
スクワラン 10
セトステアリルアルコール 3.5
ミツロウ 3
還元ラノリン 5
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミチン酸エステル 2
ステアリン酸モノグリセリド 2
1,3−ブチレングリコール 0.1
グリセリン 4
防腐剤 0.3
香料 0.05
pH調整剤 適量
精製水 残余
【0041】
<処方例2:化粧水>
(成分) (質量%)
ADP 0.5
カフェイン 0.5
エタノール 5
1,3−ブチレングリコール 4
ポリオキシエチレン(18)オレイルアルコールエーテル 0.5
グリセリン 4
防腐剤 0.2
香料 0.05
pH調整剤 適量
精製水 残余
【0042】
<処方例3:乳液>
(成分) (質量%)
ADP 0.5
カフェイン 0.5
ステアリン酸 1.5
セチルアルコール 0.5
ミツロウ 2
ポリオキシエチレン(10)モノオレイン酸エステル 1
グリセリン 7
1,3−ブチレングリコール 0.5
防腐剤 0.3
香料 0.03
pH調整剤 適量
精製水 残余
【0043】
<処方例4:化粧水>
(成分) (質量%)
グリセリン 2.0
ジプロピレングリコール 2.0
1,3−ブチレングリコール 3.0
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジメチルエーテル 3.0
ヒアルロン酸ナトリウム 0.2
PPG−13デシルテトラデセス−24 0.5
4−メトキシサリチル酸ナトリウム 0.5
水溶性コラーゲン 0.1
ADP 0.0005
テオフィリン 0.0005
エタノール 10.0
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
EDTA 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0044】
<処方例5:乳液>
(成分) (質量%)
グリセリン 10.0
ジプロピレングリコール 5.0
ポリエチレングリコール20000 0.5
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジメチルエーテル 5.0
水添ポリデセン 4.0
ワセリン 2.0
ジメチコン 3.5
バチルアルコール 1.0
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 2.0
エチルヘキサン酸セチル 4.0
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 2.0
ジステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 2.0
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー 1.5
エタノール 5.0
ADP 0.1
カフェイン 0.05
苛性カリ 適量
EDTA 適量
フェノキシエタノール 適量
メチルパラベン 適量
香料 適量
精製水 残余
【0045】
<処方例6:美容液>
(成分) (質量%)
グリセリン 10.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジメチルエーテル 5.0
エリスリトール 0.5
オクタン酸セチル 1.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
スクワラン 2.0
テトラオクタン酸ペンタエリスリット 1.0
ポリアクリルアミド 0.1
エタノール 5.0
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー 0.1
(C10−C30)アクリル酸・メタクリル酸コポリマー 0.1
ADP 0.5
テオフェリン 0.5
トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 3.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
酢酸トコフェロール 0.5
酵母エキス 1.0
シリカ 2.0
メタリン酸ナトリウム 適量
水酸化カリウム 適量
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
黄酸化鉄 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0046】
<処方例7:クリーム>
(成分) (質量%)
グリセリン 12.0
ジプロピレングリコール 8.0
水添ポリデセン 2.0
ワセリン 4.0
デカメチルシクロペンタシロキサン 5.0
セチルアルコール 1.0
テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 2.0
ジステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 2.0
ポリオキシエチレンフィトステロール 0.5
エタノール 3.0
寒天 1.0
サクシノグルカン 1.0
(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー 0.5
ADP 5.0
テオフィリン 1.0
トラネキサム酸 3.0
ビタミンCエチル 0.5
ばら抽出液 0.5
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0047】
<処方例8:日中用美容液>
(成分) (質量%)
グリセリン 5.0
アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.001
デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0
カプリリルメチコン 2.0
エチルヘキサン酸エチルヘキシル 2.0
イソステアリン酸 1.5
PEG−10ジメチコン 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
エタノール 10.0
オクトクリレン 8.0
オクチルメトキシシンナメート 7.0
酸化チタン 0.3
酸化亜鉛 0.2
サクシノグルカン 0.5
ポリアクリルアミド 0.5
(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン)コポリマー 0.2
アスコルビン酸グルコシド 3.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.01
ADP 0.0008
カフェイン 0.0006
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
精製水 残余
【0048】
上記処方例1〜3の皮膚外用剤組成物は、いずれも低刺激性で、且つ高い表皮細胞増殖効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】培養表皮細胞における、ATPアナログの添加による細胞外ATP遊離量を示すグラフである。
【図2】培養表皮細胞における、ATPアナログの添加による細胞増殖作用を示すグラフである。
【図3】培養表皮細胞における、ATPアナログの添加による細胞増殖作用を示すグラフである。
【図4】培養表皮細胞における、ADP添加濃度による細胞外ATP遊離量を示すグラフである。
【図5】培養表皮細胞における、カフェインによるATP分解酵素の発現抑制を示す画像である。
【図6】培養表皮細胞における、ATP添加により分解によって生じる遊離リン酸量に対するキサンチン誘導体の効果を示すグラフである。
【図7】培養表皮細胞における、カフェイン濃度による細胞外ATP遊離量を示すグラフである。
【図8】培養表皮細胞における、ADP及びカフェインの添加による細胞外ATP遊離量の変化を示すグラフである。
【図9】皮膚モデルにおける、ADP及びカフェインの添加による細胞増殖を示す画像、及びBrdU陽性細胞数の変化を示すグラフである。
【図10】培養表皮細胞における、各濃度のGA、またはADP及びカフェイン処理による細胞外ATP遊離量の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ADP及びキサンチン誘導体を含むことを特徴とする皮膚外用剤組成物。
【請求項2】
ADPを0.01〜100mM含有し、キサンチン誘導体を0.0005〜5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項3】
キサンチン誘導体がカフェイン及び/またはテオフィリンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項4】
表皮細胞増殖促進剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項5】
ADP:キサンチン誘導体の配合比が、質量比で1:1〜5:1であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物を含むことを特徴とするリーブオン型化粧料。
【請求項7】
ADP及びキサンチン誘導体を含む皮膚外用剤組成物を皮膚表面に適用することを特徴とする表皮細胞増殖促進方法。
【請求項8】
皮膚外用剤組成物がADPを0.01〜100mM含有し、キサンチン誘導体を0.0005〜5質量%含有することを特徴とする請求項7に記載の表皮細胞増殖促進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−298752(P2009−298752A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158042(P2008−158042)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】