説明

皮膚外用剤

【課題】
皮膚外用剤において、非イオン性の界面活性剤を使用した製剤の安定性、特に高温保存時の安定性を向上させる手段を提供することを課題とする。
【解決手段】
外用剤基材中に、リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチド又はそれらの塩からなる群より選択される1種乃至は2種以上を含有させることにより、高温保存時の安定性に優れた皮膚外用剤を提供することができた。特に、ポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を使用した製剤系において効果が顕著であった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料などの皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤に於いて、界面活性剤はその乳化作用、可溶化作用、さらには感触改良作用を活かして種々の使われ方をしている。特に、乳液やクリーム剤型は、水性成分と油性成分を一度に投与でき、しかも使用時の感触が良いので、化粧料や皮膚外用医薬品などに広く適用されている。これらの界面活性作用を有する化合物は、脂肪酸石鹸やアルキル硫酸塩のようなアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン性の界面活性剤、アルキル変性カルボキシビニルポリマーのような界面活性能を有する合成高分子、ラポナイト、ベントナイトなどの粘度鉱物など種々のものが知られている。特に、非イオン性の界面活性剤は皮膚に対する刺激感などが緩和であるため多くの化粧料などで使用されている。その中でも、ポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤は、皮膚刺激性が少なく、界面活性能が高いために多用されている。このポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤中のポリオキシエチレン鎖は、その鎖中のエーテル結合中の酸素原子に対する水分子の水素結合による配位によりポリオキシエチレン鎖が水中へ拡がり安定化している。ポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤は、このポリオキシエチレン鎖の水中への拡がりと親油性のアルキル鎖によって形成される界面活性作用を利用している。このような水素結合により水中で安定化されたポリオキシエチレン鎖の水和能は、温度の上昇や塩の存在の影響を受けやすく、時としては安定性などが損なわれる場合がある。そのため、非イオン性の界面活性剤、とりわけポリオキシエチレン鎖を有する非イオン性の界面活性剤を用いた製剤系の安定性を向上せしめる技術の開発が望まれており、種々の検討の結果、耐塩性を有する乳化剤を使用する技術(例えば、特許文献1を参照)、ノニオン界面活性剤と常温で液状の多価アルコール多価脂肪酸エステルを使用する技術(例えば特許文献2を参照)などが開発されている。しかしながら、この様な技術で常に安定化向上が為されるわけではなく、これらによらない安定化方法の開発が望まれていると言える。
【0003】
また、ペプチド類を含有する化粧料としては、グルタミンを構成単位として有するジペプチドとグリコーゲンやSODを化粧料に含有させる技術(例えば、特許文献3を参照)、ε−N−(γ−グルタミル)リジンを保湿の目的で化粧料に含有せしめる技術(例えば、特許文献4を参照)、N−末端にアルギニン残基を有するジペプチドを皮膚柔軟化剤として化粧料に含有させる技術(例えば、特許文献5を参照)は知られている。
【0004】
ここで、リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチドを含有する皮膚外用剤は知られていないし、リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチドを含有する皮膚外用剤が、非イオン性の界面活性剤を使用した製剤の安定性を向上させる作用を有することは全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平01−210029号公報
【特許文献2】特開平11−035447号公報
【特許文献3】特開2003−306420号公報
【特許文献4】特開平05−301814号公報
【特許文献5】特開平07−330572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、非イオン性の界面活性剤を使用した製剤の安定性を向上させる手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチドを含有する皮膚外用剤が、非イオン性の界面活性剤を使用した製剤の安定性を向上させる作用を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す通りである。
【0008】
(1) リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチド又はそれらの塩からなる群より選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(2) 前記ペプチドが、ジペプチド又はトリペプチドであることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3) 前記ペプチドが、下記構造式(I)に表される化合物であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
【0009】
【化1】

構造式(I)
【0010】
(4) 前記ペプチドの皮膚外用剤中における含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする(1)〜(3)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(5) 更に、非イオン性の界面活性剤を含有することを特徴とする(1)〜(4)何れか1項に記載の皮膚外用剤・
(6) 前記非イオン性の界面活性剤がポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤であることを特徴とする、(5)に記載の皮膚外用剤。
(7) 更に、グリチルレチン酸アルキル、グリチルリチン酸又はその塩から選択される1種乃至は2種以上を0.01〜1質量%含有することを特徴とする、(1)〜(6)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(8) グリチルリチン酸又はその塩がグリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸アルキルがグリチルレチン酸ステアリルであることを特徴とする、(7)に記載の皮膚外用剤。
(9) 化粧料であることを特徴とする、(1)〜(8)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(10) 医薬部外品であることを特徴とする、(1)〜(9)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リシン−グルタミンを部分構造として有するペプチドを皮膚外用剤に含有させることにより、製剤系の安定性に優れた皮膚外用剤に有用な皮膚外用剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるリシル−グルタミンを部分構造として有するペプチド又はそれらの塩
本発明の皮膚外用剤は、リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチド或いはそれらの塩を含有していることを特徴としている。構造式(I)で表される化合物はリシル−グルタミンであり、リシンのα位のカルボキシル基が、グルタミンのα位のアミノ基の間でアミド結合したジペプチド化合物である。この様なジペプチド化合物は、常法によって作成可能であるが、例えば、東京化成工業株式会社より市販されているジ−BOC−リシンを塩化チオニルで酸クロリド体とし、グルタミンと反応させ、次いで常法で脱保護することにより、構造式(I)の化合物が得ることができる。ここで、これらのジペプチド体の合成反応の途中で、BOC基の脱保護を行わずに、更に酸クロリド体として、別のアミノ酸を反応させることによりトリペプチド体を合成することも可能である。
【0013】
<製造例1> 構造式(I)の化合物の製造
ジ−BOC−リシン2.46gに塩化チオニル10gを添加し、室温で30分間撹拌した後、過剰の塩化チオニルを留去した。これをジクロロメタンに溶解し、グルタミン2.60gとトリエチルアミンをジクロロメタンに添加した溶液中に、激しく撹拌しながら滴下し、さらに室温で24時間撹拌した。析出物を濾別後、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムにて分画・精製した(クロロホルム/メタノール=100/0〜95/5にて溶出)。分画物を濃縮後、トリフルオロ酢酸にて処理して保護基を脱保護した。濃縮後、ダイアイオンHP−20に通し、水/エタノール=100/0〜80/20で溶出し、構造式(I)の化合物2.02gを得た。
【0014】
<製造例2> (リシル−グルタミニル)−アラニンの製造
ジ−BOC−リシン2.46gに塩化チオニル10gを添加し、室温で30分間撹拌した後、過剰の塩化チオニルを留去した。これをジクロロメタンに溶解し、グルタミン2.60gとトリエチルアミンをジクロロメタンに添加した溶液中に、激しく撹拌しながら滴下し、さらに室温で24時間撹拌した。析出物を濾別後、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムにて分画・精製した(クロロホルム/メタノール=100/0〜95/5にて溶出)。分画物を濃縮後、塩化チオニル10gを添加し、室温で30分間撹拌した後、過剰の塩化チオニルを留去した。これをジクロロメタンに溶解し、アラニン2.4gとトリエチルアミンをジクロロメタンに添加した溶液中に、激しく撹拌しながら滴下し、さらに室温で24時間撹拌した。析出物を濾別後、濾液を濃縮し、シリカゲルカラムにて分画精製した(クロロホルム/メタノール=100/0〜92/8)。分画物を濃縮後、トリフルオロ酢酸にて処理して保護基を脱保護した。濃縮後、ダイアイオンHP−20に通し、水/エタノール=100/0〜80/20で溶出し、(リシル−グルタミニル)−アラニン2.62gを得た。
【0015】
また、リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチドは、塩の形で用いても良い。塩の形で用いる場合の対塩基の種類としては、塩酸、臭素酸なその鉱酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、アスコルビン酸などの有機酸、グルタミン酸、アスパラギン酸などの酸性アミノ酸、アンモニア、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類などが例示できるが、溶解性等を考慮すると塩酸塩が有利に使用できる。
【0016】
かくして得られるリシル−グルタミンを部分構造として有するペプチド又はそれらの塩は、無臭の白色粉末であり、エタノール、アセトン等の各種有機溶剤には難溶或いは不溶であるが、アルカリ性水又は酸性水などに溶解し、特に酸性から弱酸性の水に良く溶解し、各種化粧料基剤に配合可能である。
【0017】
本発明では、リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチド又はそれらの塩の含有量は、通常、化粧料全体に対して総量で0.01〜10質量%、好ましくは、0.05〜5質量%である。0.01質量%より少ない量では、本発明の効果が充分に得られず、また、10質量%を越えた量を用いても効果の増強は見られず、不経済である。
【0018】
(2)本発明の皮膚外用剤
本発明は、0.01〜10質量%のリシル−グルタミンを部分構造として有するペプチド又はそれらの塩を含有することにより、非イオン性の界面活性剤を使用した製剤の安定性が向上した皮膚外用剤に関するものである。本発明においては、前記ペプチドを含有させることにより、非イオン性の界面活性剤を使用した製剤の安定性の向上に有用であることから、本発明は非イオン性の界面活性剤を含有していることが好ましい。このような非イオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤、ポリグリセリン鎖を有する界面活性剤、糖質系界面活性剤などが挙げられる。特に好ましいものはポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤である。これは、本発明の効果が著しいためである。
【0019】
ポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(10EO)モノラウリン酸エステル,ポリオキシエチレンモノステアリン酸エステル(10EO),ポリオキシエチレン(25EO)モノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(40EO)モノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(10EO)モノオレイン酸エステル等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(9EO)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20EO)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20EO)オレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(20EO)ソルビタンモノパルミチン酸エステル,ポリオキシエチレン(20EO)ソルビタンモノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(6EO)ソルビタンモノオレイン酸エステル等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(60EO)ソルビットテトラステアリン酸、ポリオキシエチレン(6EO)モノラウリン酸等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(5EO)グリセリルモノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(15EO)グリセリルモノステアリン酸エステル,ポリオキシエチレン(5EO)グリセリルモノオレイン酸エステル,ポリオキシエチレン(15EO)グリセリルモノオレイン酸エステル等のポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20EO)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50EO)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油などが例示できる。ポリグリセリン鎖を有する界面活性剤としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル等のポリグリセリン脂肪酸エステルなどが例示できる。また、糖質系界面活性剤とは、ソルビタンモノラウリン鎖エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、オクチルグルコシド等のアルキルグリコシドなどが例示できる。これらの非イオン性の界面活性剤のうち、本発明においてはポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を含有していることが、特に好ましい。これはポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤を使用したときに、本発明の効果が一番得られやすいからである。また、これらの、非イオン性の界面活性剤の配合量としては、0.1〜10重量%が好ましい。
【0020】
また、本発明の皮膚外用剤は、非イオン性の界面活性剤を使用した製剤の安定性を向上させる効果があるので、グリチルリチン酸塩等のような、非イオン性の界面活性剤を使用した製剤系の安定性に影響を与える可能性のある化合物を含有している製剤系に適用するのにも好ましい。即ち、本発明の効果を活かすには、本発明の皮膚外用剤にグリチルリチン酸塩のような抗炎症成分を含有させるのも好ましい形態である。かかる成分は、医薬部外品の有効成分として知られている成分であり、グリチルリチン酸の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩類、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩類、アンモニウム塩等が例示できるが、溶解性等を考慮するとアルカリ金属塩が有利に使用できる。なかでも、ジカリウム塩が市販されておりこのものを購入して使用することができ、好ましい。本発明の皮膚外用剤中でのグリチルレチン酸アルキル、グリチルリチン酸又はその塩から選択される1種乃至は2種以上の含有量は0.01質量%〜1.0質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。このような抗炎症成分と組み合わせて医薬部外品として使用することも、本発明の効果的な使用法である。
【0021】
本発明の皮膚外用剤に於いては、前記の成分以外に、通常化粧料や皮膚外用医薬で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類等の非イオン界面活性剤類、グリセリン、1,3−ブタンジオール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、2,4−ヘキシレングリコール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール,β−トコフェロール,γ−トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。これらを常法に従って処理することにより、本発明の皮膚外用剤は製造することが出来る。
【0022】
本発明の皮膚外用剤は、グリチルレチン酸アルキル、グリチルリチン酸又はその塩などの抗炎症剤から選択される1種乃至は2種以上の医薬部外品の有効成分を含有させて、医薬部外品とすることも可能であり、好ましい。この様な医薬部外品の形態をとる場合には、表示において医薬部外品である旨、炎症を鎮める作用を訴求した医薬部外品である旨の表示と、その使用方法に於いて、適量を取り、軽い炎症のある部位にカット綿などに含ませ、それを軽く擦過、押し当て動作により、塗布して使用される旨と、前記塗布により、炎症を鎮める旨の表示と、前記操作により、ひりひり感や火照り感を感じた場合には直ちに使用を止める旨の表示をしていることが好ましい。
【0023】
本発明の皮膚外用剤は、これらの成分を常法に従って処理することにより得ることができる。本発明の皮膚外用剤の剤型は、特に限定されるものではないが、具体的には、クリーム、乳液、ミルクローション、パックなどが例示できる。
【0024】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、かかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0025】
以下に示す処方に従って、本発明の皮膚外用剤1を作成した。即ち、イ)、ロ)、ハ)の成分をそれぞれ秤取り、イ)、ロ)、ハ)を80℃に加熱し、攪拌下イ)にロ)を、続けてハ)を加え皮膚外用剤1を得た。実施例1において、リシル−グルタミン(製造例1)を水に置換したものを比較例1とした。
イ)
グリセリン 5.0 質量%
1,3−ブタンジオール 5.0 質量%
ポリオキシエチレン(50EO)硬化ヒマシ油 1.0 質量%
α−トコフェロール 0.1 質量%
ロ)
水 40.0 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2 質量%
(Goodrich社製)
グルチルリチン酸ジカリウム 0.1 質量
ハ)
リシル−グルタミン(製造例1) 2.0 質量%
水 46.6 質量%
【実施例2】
【0026】
以下に示す処方に従って、実施例1と同様の方法で、本発明の皮膚外用剤2を作成した。実施例2において、リシル−グルタミン(製造例1)を水に置換したものを比較例2とした。
イ)
グリセリン 5.0 質量%
1,3−ブタンジオール 5.0 質量%
ショ糖モノラウリン酸エステル 0.5 質量%
デカグリセリンモノラウリン酸エステル 0.5 質量%
α−トコフェロール 0.1 質量%
ロ)
水 40.0 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2 質量%
(Goodrich社製)
グルチルリチン酸ジカリウム 0.1 質量
ハ)
リシル−グルタミン(製造例1) 2.0 質量%
水 46.6 質量%
【0027】
<試験例1> 製剤系の安定性試験1
実施例1、実施例2で作製した皮膚外用剤を20℃で1日放置後に、粘度(mPs)を回転式粘度計にて測定した。その後50℃に1週間放置後、20℃に1日戻し、再度粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1の結果より、実施例1の皮膚外用剤1は、比較例1のサンプルと比べて、高温保存後の粘度の低下が抑制されていることが判った。実施例2の皮膚外用剤においても、比較例2のサンプルと比べて、高温保存時の粘度の低下が抑制されていることが判った。ただ、ポリオキシエチレン系の界面活性剤を使用した皮膚外用剤1の方が、ポリグリセリンや糖質系の界面活性剤を使用した皮膚外用剤2より、粘度の低下が少なく、本発明の効果がよりはっきりと現れている。
【実施例3】
【0030】
下記に示す処方に従って本発明の皮膚外用剤3を作製した。すなわち、(イ)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(ロ)の各成分を混合し80℃に加熱した。(イ)の混合物に、(ロ)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、その後35℃にまで冷却し、本発明の皮膚外用剤3を得た。実施例3において、リシル−グルタミン(製造例1)を水に置換したものを比較例3とした。
イ)
ポリオキシエチレン(20EO)ステアリン酸エステル 2.0 質量%
ポリオキシエチレン(5EO)グリセリルモノステアリン酸エステル 1.0 質量%
スクワラン 10.0 質量%
セチルイソオクタネート 4.0 質量%
セタノール 5.0 質量%
メチルパラベン 0.2 質量%
グリセリン 10.0 質量%
1,3−ブタンジオール 5.0 質量%
(B)
グリチルリチン酸ジカリウム 0.01質量%
リシル−グルタミン(製造例1) 1.0 質量%
水 61.79質量%
【0031】
<試験例2> 製剤系の安定性試験2
実施例3で作製した皮膚外用剤の硬度の測定を行った。各サンプルは直径5cmφ高さ3cmのガラス容器に充填し蓋をして、20℃で1日保管した後で、硬度計(Curdmeter MAX ME−303)を用い、接触面8mmφ、加重100gを用いて硬度を測定した。次に各サンプルを50℃の恒温室に1週間保管した。1週間保管後に、サンプルを20℃の部屋に戻して1時間後に硬度の測定を行った。結果を表2に示した
【0032】
【表2】

【0033】
表2の結果より、本発明の皮膚外用剤3は、比較例3のサンプルと比べて、高温保存後の硬度の低下が抑制されていることが判った。
【実施例4】
【0034】
下記に示す処方に従って本発明の皮膚外用剤4を作製した。すなわち、(イ)の各成分を混合し、70℃に加熱した。一方、(ロ)の各成分を混合し70℃に加熱した。(ロ)の混合物に、(イ)の混合物を加えて予備乳化を行い、さらにホモミキサーで均一に乳化し、乳化後かき混ぜながら30℃にまで冷却して、本発明の皮膚外用剤4を得た。実施例4において、リシル−グルタミン(製造例1)を水に置換したものを比較例4とした。
イ)
ベへニルアルコール 1.0 質量%
セチルイソオクタネート 2.0 質量%
スクワラン 8.0 質量%
ステアリン酸 0.5 質量%
ポリオキシエチレン(40EO)モノステアリン酸エステル 1.0 質量%
モノステアリン酸グリセリン 0.5 質量%
α−トコフェロール 0.1 質量%
メチルパラベン 0.1 質量%
ロ)
1,2−オクタンジオール 2.0 質量%
グリセリン 5.0 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.2 質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05質量%
ハ)
リシル−グルタミン(製造例1) 0.2 質量%
水 79.35質量%
【実施例5】
【0035】
下記に示す処方に従って、実施例4と同様の方法で、本発明の皮膚外用剤5を作製した。実施例5において、製造例2で作成したトリペプチドを水に置換したものを比較例5とした。
イ)
ベへニルアルコール 1.0 質量%
セチルイソオクタネート 2.0 質量%
スクワラン 8.0 質量%
ステアリン酸 0.5 質量%
ポリオキシエチレン(20EO)モノステアリン酸エステル 1.0 質量%
ポリオキシエチレン(6EO)ソルビタンモノオレイン酸エステル 0.5 質量%
グリセリンモノラウリン酸エステル 0.5 質量%
グリチルレチン酸ステアリル 0.1 質量%
メチルパラベン 0.1 質量%
ロ)
1,2−ペンタンジオール 2.0 質量%
1.2−ブタンジオール 5.0 質量%
カルボキシビニルポリマー 0.1 質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1 質量%
ハ)
トリペプチド(製造例2) 4.0 質量%
水 75.1 質量%
【0036】
<試験例3> 製剤系の安定性試験3
実施例4、実施例5で作製した各サンプルを20℃で1日放置後に、粘度を回転式粘度計にて測定した。その後50℃に1週間放置後、20℃に1日戻し、再度粘度を測定した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3の結果より、実施例4の皮膚外用剤4、実施例5の皮膚外用剤5は、それぞれ比較例4、比較例5のサンプルと比べて、高温保存後の粘度の維持効果が高く、製剤系の構造が安定化されていることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、医薬部外品や化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リシル−グルタミンを部分構造として有するペプチド又はそれらの塩からなる群より選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
前記ペプチドが、ジペプチド又はトリペプチドであることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記ペプチドが、下記構造式(I)に表される化合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【化1】

構造式(I)
【請求項4】
前記ペプチドの皮膚外用剤中における含有量が0.01〜10質量%であることを特徴とする請求項1〜3何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
更に、非イオン性の界面活性剤を含有することを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記非イオン性の界面活性剤がポリオキシエチレン鎖を有する界面活性剤であることを特徴とする、請求項5に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
更に、グリチルレチン酸アルキル、グリチルリチン酸又はその塩から選択される1種乃至は2種以上を0.01〜1質量%含有することを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
グリチルリチン酸又はその塩がグリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸アルキルがグリチルレチン酸ステアリルであることを特徴とする、請求項7に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
化粧料であることを特徴とする、請求項1〜8何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
医薬部外品であることを特徴とする、請求項1〜9何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2007−70268(P2007−70268A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257253(P2005−257253)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】