説明

皮膚外用剤

【課題】化学的、生物的に安定なシリコーン油は安定性が高く、さっぱりした使用感からSPF効果を持つ皮膚外用剤に広く使われている。反面、生分解しないため、使用後の環境面の懸念があった。また、使用後の乾燥感や、洗浄しにくいなどの懸念もあり、そのシリコーン油を含まないか含んでも僅かに抑えられ、皮膚に対する安全性も問題ない日焼け止め皮膚外用剤が課題である。
【解決手段】シリコーン油を含まないか微量の配合に抑え、常温で液状のポリグリセリル脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤と動植物油やエステル油などと紫外線散乱剤、紫外線散乱剤以外に吸油性がある粉体を配合した油中水型乳化物である皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日焼け防止効果を有する化粧品、医薬部外品等の皮膚に塗布する製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日常生活においても太陽の紫外線は、肌の老化に影響していて、紫外線対策は美容には必須になってきている。
【0003】
市場には多くの紫外線対策の製品が見られ、その効果をSPFで著されている。SPF表示ができる製品はその働きを有する成分として紫外線吸収剤及びまたは紫外線散乱剤を配合している。
【0004】
NIKKEI−NETの2008.2.16の記事において「日焼け止めでサンゴが白化――伊大学、実験で確認」の見出しで、日焼け止めの「パラベン、桂皮酸、ベンゾフェノン、カンファー抽出物という4種類の物質に、使用時に海に溶け出すのと同程度の量で、サンゴを白化させる作用があることが分かった。」と記載された。桂皮酸、ベンゾフェノンは紫外線吸収剤の構成成分である。さらに紫外線吸収剤は高配合すると皮膚への安全性の問題もあるため、パラメトキシケイ皮酸2―エチルヘキシル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウムなど厚生労働省告示第331号で使用上限が決められている。
【0005】
また、通常、紫外線量が多くなる夏に使用される事が多いため、さっぱりとしたシリコーン油が好まれ、殆どの日焼け止めに用いられている。特に紫外線散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛が主であり、汗で流れないように表面を疎水化処理して、分散媒にシリコーン油を使われる場合がほとんどであった。反面、シリコーン油は生分解性に乏しく、使用後も長く存在し、環境面の懸念も考えられる。
【0006】
シリコーン油の代わりにさっぱりしたエステル油や鉱物油などもあるが、皮膚への安全性が問題になり、実用的ではなかった。
【0007】
紫外線散乱剤を配合し、シリコーン油を分散媒の主体に使用せず、水に容易に流れ落ちない油中水型乳化組成物からなる日焼け止め効果を有する製品の発明が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
化学的、生物的に安定なシリコーン油は分解しないため、使用後の環境面の懸念があった。そのシリコーン油を含まないか含んでも僅かに抑えられ、紫外線散乱剤を用いた日焼け止めで皮膚に対する安全性が高い皮膚外用剤が課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する為に、本発明による製剤は、紫外線散乱剤を常温で液体の油であるエステル油、動物油、植物油、鉱物油に分散し、シリコーン油を含まないか含んでも1%以下に抑え、常温で液状の非イオン性界面活性剤を6重量%以下、水を10重量%以上、紫外線散乱剤以外に吸油性がある粉体を1重量%以上含有し、SPF5以上の油中水型乳化物であることを特徴としている。水分量は10重量%以上であれは特に限定しない。10重量%未満であれば、油感が強く使用の感覚が好ましくない。
【0010】
常温で液体の油としては、サフラワー油、ヤシ油、パーシック油、メドウフォーム油、オリーブ油、コメ胚芽油、ホホバ油、ヒマワリ油、スクワラン、マカデミアナッツ油等の動植物油、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸グリセリル等のトリグリセライド、パルミチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル等のエスイル油、その他、流動パラフィン、オレフィンオリゴマー等であり、これらの油の一種以上を含有し、この油の合計を15〜70重量%配合する。微量で安全性など本発明の特徴が損なわれない範囲であれば炭酸ジカプリル、エチルヘキサン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、イソノナン酸イソノニルなど分子量290以下の比較的低分子量の油を配合する事も可能である。
【0011】
非イオン性界面活性剤がポリグリセリル脂肪酸エステルまたはグリセリル脂肪酸エステルで、グリセリンの重合度が1〜10で、脂肪酸はイソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、縮合リシノレイン酸、カプリル酸などであり、HLBが7以下であり、1〜6重量%配合とする。陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などその他の界面活性剤の配合も安全性など本発明の特徴が損なわれない範囲での配合は可能である。
【0012】
吸油性がある粉体としては無水ケイ酸、酸化鉄、水酸化アルミニウム、タルク、カオリン、雲母、マイカ、水酸化クロム、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、モンモリロナイト、ナイロン末、ポリメタクリル酸メチル、セルロース末、ポリエチレン末等や無水ケイ酸、デンプン、ベントナイト、セルロース等に疎水基を化合させた誘導体であり、1〜30重量%配合とする。1重量%未満であれば、油のべたつきが問題になり、使用の感覚が好ましくない。30重量%以上では粉の感覚が強く、肌に厚く残り使用の感覚が好ましくない。
【0013】
紫外線散乱剤は酸化チタン、酸化亜鉛等の無機粉体であり、脂肪酸や脂肪酸の金属石鹸、シリコーン等により表面処理したそれらを含み、1〜25重量%配合する。1重量%未満では日焼け防止効果が弱く、25重量%を超えると使用時に白さが増し、使用性が悪くなる。
【0014】
シリコーン油はデカメチルシクロペンタシロキサンなどのシクロメチコン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどの液状の油で、これらを含有しないか、含有しても1重量%以下である。
【0015】
SPFは5未満でも本発明の皮膚外用剤の調製は可能であるが、市場において日焼け止めの効果を有す製品はより高いSPF値を表記しているため、SPFは5以上の油中水型乳化物である皮膚外用剤とした。ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリルなど紫外線吸収剤を配合することも可能であり、紫外線散乱剤との併用によりより高いSPFが期待できる。
【0016】
本発明の効果が損なわれない範囲で、通常、皮膚外用剤に使用されるエタノール、グリセリン、ソルビトール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ブドウ糖、ジプロピレングリコール、異性化糖などのアルコール類、リン酸リボフラビンナトリウム、アスコルビン酸、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、トコフェロールなどのビタミンおよびその誘導体、アスパラギン酸、カチオニン、メチオニン、リジン、トリメチルグリシンなどのアミノ酸およびその誘導体、ポリクオタニウム−51、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、コラーゲン、エラスチン、メチルセルロースやヒアルロン酸ナトリウムなどの水溶性高分子、グリチルリチン酸およびその誘導体、グリチルレチン酸およびその誘導体、アラントインおよびその誘導体などの抗炎症剤、リゾレシチン、レシチン、セラミド、水素添加大豆リン脂質、水酸化大豆リン脂質、水素添加リゾレシチンなどのリン脂質、グコール酸、アルギン酸、サリチル酸、グルタミン酸、エデト酸、ジエチレントリアミン五酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、デヒドロ酢酸やその塩、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アルギニンなどpH調節剤、ナイロン末や架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、酸化鉄などの粉体、タール系色素などの色素、シコンエキス、ソウハクヒエキスなどの植物エキス、香料、パール剤、防腐剤や殺菌剤、菌代謝液、還元剤、γ−オリザノール、セラミド、トコトリエノール、ユビキノンなどの配合も可能である。
【0017】
クリーム、乳液、化粧水、エアゾール、ファンデーションなど剤型は限定しない。
【発明の効果】
【0018】
生分解性が悪いとされるシリコーンを配合しないか、少量の配合でも安全でSPF効果を有する油中水型乳化物である皮膚外用剤が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
常温で液状の非イオン性界面活性剤は親水基、親油基ともに植物又は動物由来で作ることができるポリグリセリル脂肪酸エステルまたはグリセリル脂肪酸エステルが適している。天然界に存在する物質からなり、環境に優しい。グリセリンの重合度が1〜10で、脂肪酸はイソステアリン酸でHLBが7以下に相当数のモル数エステル化した活性剤で、1〜6重量%を配合する。好ましくは1〜3重量%を配合する。
【0020】
SPF効果を有する油中水型乳化物である皮膚外用剤の多くはシリコーン油を配合してさっぱりとしてべたつかなく、使用性が良好である。シリコーン油を常温で液体の油に代替すると、油感が強く、使用性が悪くなる。分子量290以下の比較的低分子量の油で代替すると比較的近い使用感が得られるが、皮膚に対して刺激を与え易くなる。サフラワー油、ヤシ油、パーシック油、メドウフォーム油、オリーブ油、コメ胚芽油、ホホバ油、ヒマワリ油、スクワラン、マカデミアナッツ油等の動植物油、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸グリセリル等のトリグリセライドとパルミチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル等のエスイル油や流動パラフィン、オレフィンオリゴマー等の組み合わせ、又は炭酸ジカプリル、エチルヘキサン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、イソノナン酸イソノニルなどエステル油のみ又は主体として配合する。特にミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシルは使用性、安全性ともに良好であり、この一方又は両者の合計が25〜50重量%、他の油は10重量%以下の配合が最も好ましい。
【0021】
シリコーン油(デカメチルシクロペンタシロキサンなどのシクロメチコン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどポリシロキサン鎖を有する液状の油)を含有しない。紫外線散乱剤の微粒子酸化亜鉛や微粒子酸化チタンの表面処理にもメチコンやジメチコンなどシリコーン処理をしていない方が望ましい。たとえば、微粒子酸化亜鉛や微粒子酸化チタンなどをステアリン酸、ラウリン酸などの脂肪酸の鉄、マグネシウム、カルシウム、鉄などの金属塩で表面処理して表面を疎水化した紫外線散乱剤が好ましい。
【0022】
SPFは高い方が好ましいが、紫外線散乱剤の量が増えると透明度が低下して使用感が悪くなる。有機化合物の紫外線吸収剤の併用も可能である。紫外線吸収剤を含まない場合、SPF15以上は可能であり、紫外線吸収剤を含む場合、SPF25以上が可能となる。
【0023】
シリコーンは化学的にも生物的にも不活性で安定であるため、シリコーン油を用いた油中水型乳化物である皮膚外用剤の場合、洗い流す場合、専用の洗浄剤を用いなければ肌に残ることもしばしばであった。シリコーンやテフロン(登録商標)など化学合成により、化学的にも生物的にも不活性で安定である油を配合しないと特別な洗浄剤を使用しなくても容易に洗い流すことが出来きる。
【0024】
紫外線散乱剤以外に吸油性がある粉体は無水ケイ酸、タルク、カオリン、ナイロン末が良好で、この一種以上で、その合計3〜15重量%が望ましい。ただ、平均粒子径が1μm以下の粉体は1〜3重量%で良好である。これらの形状は板状、球状、不定形等、特に限定はしないが、無水ケイ酸、ナイロン末は球状が望ましい。
【0025】
水分量は10重量%以上であれは特に限定しない。10重量%未満であれば、油感が強く使用の感覚が好ましくない。
【0026】
前記記載の組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、エタノール、グリセリン、ソルビトール、ブドウ糖、異性化糖などのアルコール類、リン酸リボフラビンナトリウム、アスコルビン酸、リン酸L−アスコルビルマグネシウム、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビルなどのビタミンおよびその誘導体、アスパラギン酸、カチオニン、メチオニン、リジン、トリメチルグリシンなどのアミノ酸およびその誘導体、ポリクオタニウム−51、キトサン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、メチルセルロースやヒアルロン酸ナトリウムなどの水溶性高分子、グリチルリチン酸およびその誘導体、グリチルレチン酸およびその誘導体、アラントインおよびその誘導体などの抗炎症剤、ナイロン末や架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体、タルク、酸化鉄などの粉体、タール系色素などの色素、シコンエキス、ソウハクヒエキスなどの植物エキス、香料、パール剤、防腐剤や殺菌剤、菌代謝液、還元剤、γ−オリザノール、セラミド、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどの配合も可能である。
【実施例】
【0027】
[処方例]
実施例として、SPF10美容液、SPF25クリーム、SPF25クリーム、SPF35クリーム、SPF25振って使用する乳液の5点につき下記に例示する。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0028】
本発明のSPF25乳液の実施例1、実施例2と比較例1、比較例2、比較例3の処方を表5に示した。パネラー15名での通常のサンスクリーン製品と同様に肌に塗布して調べた使用感評価とパッチテストの結果を表6に示した。使用感評価の塗布時の油感は、油感が無いが1、適度が3、油感が強いが5として1〜5の5段階評価を行い、その平均値を記した。使用3時間後の保湿感は同様に、しっとり感が強いが1、適度が3、乾燥が強いが5とした。使用3時間後の脂肪酸石鹸での洗浄性は洗浄しなくても落ちているが1、適度が3、洗浄しても残るが5とした。実施例1のパルミチン酸イソステアリルは分子量508.9、実施例2のエチルヘキサン酸セチルは分子量368.9、比較例1のミリスチン酸イソプロピルの分子量は270.5である。比較例1の使用性は大差は無いが、パッチテストの結果が悪い。比較例2はシリコーン油を用いた例で、パッチテストは良好であり、塗布時の感触はさっぱりして良好であるが、3時間後は乾燥し、一般的な洗浄剤である脂肪酸石鹸では落ち難い。比較例3は酸化チタン以外の吸油性がある粉体であるナイロン末、カオリンを抜いた処方であるが、パッチテストの結果が悪く、刺激がある。
【表5】

【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温で液状の非イオン性界面活性剤を1〜6重量%、常温で液体の油を15〜70重量%、紫外線散乱剤を1〜25重量%、水を10〜60重量%、シリコーン油を含有しないか、含有しても1重量%以下である組成物であり、SPF(Sun Protection Factor)が5以上の油中水型乳化物である皮膚外用剤。
【請求項2】
非イオン性界面活性剤がポリグリセリル脂肪酸エステルまたはグリセリル脂肪酸エステルで、グリセリンの重合度が1〜10で、脂肪酸はイソステアリン酸であり、HLBが7以下である請求項第一項記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
液体の油がスクワラン、流動パラフィン、ホホバ油、オリーブ油、ヒマワリ油、分岐を有すし重量平均分子量が290以上のエステル油の一種以上である請求項第一項記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
紫外線散乱剤以外に吸油性がある粉体を一種以上配合し、その合計が1〜30重量%である請求項第一項記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−234933(P2009−234933A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79603(P2008−79603)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(399091120)株式会社ピカソ美化学研究所 (29)
【Fターム(参考)】