説明

皮膚外用剤

【課題】美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤を含有する、乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤に於いて、エマルション粒子又はミセルの合一・会合を抑制する手段を提供する。
【解決手段】美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤を含有する、乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤に、炭素数10〜30のアシル基でアシル化された蛋白加水分解物を含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤を含有する、乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料などの皮膚外用剤に於いては、乳化技術、或いは、可溶化技術などのミセルの形成技術は一つのキー技術である。これは、乳化剤形又は可溶化剤形を取ることにより、親油性の成分と、親水性の成分とを同時に皮膚に投与できる長所が存するためである。
一方、美白剤(メラニン生成抑制剤)、抗炎症剤や真皮構造改善剤として知られるトラネキサム酸、ハイドロキノン、アスコルビン酸、トリテルペン酸等は、密に角層細胞が重層してバリアを築いている組織を通過して、表皮の基底層や真皮に到達することにより活性を発揮する成分であるため、十分な効果を得るためには、経皮吸収性を十分に高めることが必要である。
しかしながら、このような成分は、乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤に配合する場合には、形成されたエマルション粒子(エマルションの分散相粒子)やミセルが種々の環境の影響を受けて合一・会合を起こし、これらの粒子径が増大し、経皮吸収性が低下しやすいという問題がある。すなわち、上記成分の十分な経皮吸収性を保証するためには、エマルション粒子やミセルの粒径を適切なサイズに調節し、これを長期間維持する必要がある。そして、該適切なサイズは、数μm以下の小さいものであると言われている(例えば、非特許文献1を参照)。また、ミセルやエマルション粒子の合一・会合による粒子径の増大は、やがて、分離・離しょうや製剤中での結晶などの不溶物の析出の原因ともなる。特に、トリテルペン酸誘導体やフィトステロール誘導体のように、油性成分に対する溶解度も、水性成分に対する溶解度も低い成分を含有する皮膚外用剤は、不溶物の析出を生じやすい。
【0003】
一方、炭素数10〜30のアシル基を導入してアシル化した、絹などの蛋白質の加水分解物は、既に化粧料原料として知られており、毛髪の保湿を目的として使用されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照)。しかしながら、かかる成分のエマルション粒子やミセルに及ぼす影響は全く知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2004−196733号公報
【特許文献2】特開平07−304653号公報
【特許文献3】特開平04−308515号公報
【特許文献4】特開平03−020208号公報
【非特許文献1】Luppi B.,et.al., Drug Deliv. 2002;9 (3):147-52
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤を含有する乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤に於いて、エマルション粒子又はミセルの合一・会合を抑制する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な実状に鑑みて、本発明者らは、美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤を含有する乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤に於いて、エマルション粒子やミセルの合一・会合を抑制する手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、炭素数10〜30のアシル基でアシル化された蛋白加水分解物がエマルション粒子やミセルの合一・会合を抑制する作用
を有していることを見い出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
【0007】
(1)1)美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤と、2)炭素数10〜30のアシル基によりアシル化した蛋白加水分解物及び/又はその塩を含有することを特徴とする、乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤。
(2)前記蛋白加水分解物が、絹蛋白加水分解物であることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3)製造後40℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径が、製造直後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径の1.0〜2.0倍であることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4)乳化剤形であって、かつ製造直後のエマルション粒子の平均粒径、及び製造後40℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子の平均粒径がともに10μm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(5)可溶化剤形であって、かつ製造直後のミセルの平均粒径、及び製造後40℃で1ヶ月保存した後のミセルの平均粒径が共に1.0μm以下であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(6)前記アシル基は、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基及びオレオイル基の少なくとも一つであることを特徴とする、(1)〜(5)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(7)前記美白剤は、トラネキサム酸又はその誘導体、ハイドロキノン又はその誘導体、トリテルペン酸又はその誘導体、アスコルビン酸又はその誘導体、サリチル酸又はその誘導体及びセラミドから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、(1)〜(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(8)前記抗炎症剤は、トラネキサム酸又はその誘導体、トリテルペン酸又はその誘導体、アスコルビン酸又はその誘導体、サリチル酸又はその誘導体、及びセラミドから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、(1)〜(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
(9)前記真皮構造改善剤は、トリテルペン酸又はその誘導体、フィトステロール又はその誘導体、アスコルビン酸又はその誘導体、及びセラミドから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、(1)〜(6)の何れか一に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤を含有する乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤において、エマルション粒子又はミセルの合一・会合を抑制する手段を提供することができる。これにより、前記美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤の各作用を、十分に発揮させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<1>本発明の皮膚外用剤の必須成分である美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤
本発明の皮膚外用剤は、美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤を含有することを特徴とする。
前記美白剤としては、例えば、トラネキサム酸及び/又はその塩、トラネキサム酸エチル、トラネキサム酸プロピルなどのトラネキサム酸エステル、トラネキサム酸メチルアミド、トラネキサム酸エチルアミドなどのトラネキサム酸アルキルアミド等のトラネキサム酸又はその誘導体;
ハイドロキノン及び/又はその塩、ハイドロキノングルコシド、ハイドロキノンマルトシドなどのハイドロキノンの配糖体等のハイドロキノン又はその誘導体;
ウルソール酸及び/又はその塩、オレアノール酸及び/又はその塩、ベツリン酸及び/又はその塩等のトリテルペン酸及び/又はその塩、ウルソール酸ベンジル、ウルソール酸
メチル、ウルソール酸ラウリル、ウルソール酸リン酸エステル、ウルソール酸硫酸エステルなどのトリテルペン酸エステル類等のトリテルペン酸又はその誘導体;
アスコルビン酸及び/又はその塩、アスコルビン酸リン酸エステル及び/又はその塩等のアスコルビン酸エステル又はその塩、アスコルビン酸2−グルコシド及び/又はその塩などのアスコルビン酸配糖体又はその塩等のアスコルビン酸又はその誘導体;
サリチル酸及び/又はその塩、サリチル酸メチル、サリチル酸エチルなどのサリチル酸エステル、3−メトキシサリチル酸 、3−エトキシサリチル酸 、4−メトキシサリチル酸 、4−エトキシサリチル酸 、4−プロポキシサリチル酸 、4−イソプロポキシサリチル酸 、4−ブトキシサリチル酸 、5−メトキシサリチル酸 、5−エトキシサリチル酸 、5−プロポキシサリチル酸等のアルコキシサリチル酸及び/又はその塩等のサリチル酸又はその誘導体;
セラミドタイプ1、セラミドタイプ2、セラミドタイプ3、セラミドタイプ4、セラミドタイプ5、セラミドタイプ6、セラミドタイプ7等のセラミドなどが挙げられる。
【0010】
前記抗炎症剤としては、例えば、前述したようなトラネキサム酸又はその誘導体;トリテルペン酸又はその誘導体;アスコルビン酸又はその誘導体;サリチル酸又はその誘導体;セラミド;エストラジオール、エストリオールなどのエストロゲン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトチフェン、塩酸チアラミド、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類;ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等などが挙げられる。
【0011】
前記真皮構造改善剤としては、例えば、前述したようなトリテルペン酸又はその誘導体;カンペステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロールグルコシド、シトステロールグルコシド、スチグマステロールグルコシド、スチグマステロールマルトシド等のフィトステロール又はその誘導体;前述したようなアスコルビン酸又はその誘導体;セラミド;デキサメタゾン、プレドニゾロンなどが挙げられる。
【0012】
かかる美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤の好ましい含有量は、成分の種類に応じて決定されるが、それぞれ0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜5質量%である。
【0013】
<2>本発明の皮膚外用剤の必須成分であるアシル化した蛋白加水分解物及び/又はその塩
本発明の皮膚外用剤は、炭素数10〜30のアシル基によりアシル化された蛋白加水分解物及び/又はその塩を含有する。アシル化された蛋白加水分解物とは、蛋白質を加水分解して得られたポリペプチドのアミノ基がアシル化されたものである。
前記蛋白質は、化粧料などの皮膚外用剤で使用されている蛋白質であればよく、特に限定されないが、大豆蛋白、小麦蛋白、米蛋白などの穀物蛋白質、絹蛋白、セリシンなどの繊維由来蛋白質、魚類由来コラーゲンや豚由来のコラーゲンなどのコラーゲン類、コンキオリンなどの貝蛋白質等が好ましく例示できる。これらの蛋白質の中では、絹蛋白質が好ましく用いられる。蛋白加水分解物の分子量は200〜1000程度であることが好ましい。
前記アシル基は、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、飽和であっても、不飽和であってもよい。炭素数は、10〜30であり、10〜24のものがより好ましい。具体的には、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、イソステアロイル基、イソパルミトイル基、オレオイル基、リノロイル基などが好適に例示でき、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基及びオレオイル基から選択されるものがより好ましく、ラウロイル基が特に
好ましい。
前記アシル化された蛋白加水分解物は、これらのアシル基のうち、一種を有していてもよいし、二種以上を有していてもよい。例えば、ヤシ油などの複数の脂肪酸を含む天然油由来の脂肪酸を用いて、蛋白加水分解物をアシル化したものであってもよい。なお、ヤシ油由来の脂肪酸でアシル化した蛋白加水分解物は、ココイル蛋白加水分解物とも呼ばれる。
【0014】
前記アシル化された蛋白加水分解物は、例えば以下のようにして製造することができる。上記蛋白質を、塩酸や硫酸などの酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ、ペプシン、トリプシン、パパインなどのプロテアーゼを用いて加水分解する。酸又はアルカリを使用する場合には、必要に応じて40℃〜100℃くらいに加熱することによって反応時間が短縮できる。プロテアーゼを使用する場合は、酵素の至適pHや至適温度によって反応条件を設定することができる。このようにして得られた加水分解物は、必要に応じて中和処理などをした後に、ゲル濾過、限外濾過、透析、イオン交換カラムなどを通して精製することが好ましい。
【0015】
続いて、蛋白加水分解物をアシル化する。アシル化は、アシル化剤を用いて行うことができる。アシル化剤としては、酸クロリドなどを用いることができる。具体的には、上記アシル基に対応する脂肪酸を酸クロリドとし、前記ポリペプチドとアルカリ存在下反応させることにより、本発明に使用されるアシル化された蛋白加水分解物が得られる。
【0016】
また、アシル化された蛋白加水分解物は、そのまま使用することもできるが、アルカリ等によって塩と為すのも好ましい形態である。アシル化された蛋白加水分解物の塩は、通常化粧料などに使用される生理的に許容される塩であればよい。例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示されるが、使用性上、ナトリウム塩が好ましい。
【0017】
また、前記アシル化された蛋白加水分解物は市販されており、このような市販品を購入して使用することも好ましい。市販品としては、「プロモイス ECP−C」(ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンカリウム塩;成和化成株式会社製)、「プロモイス EFLS」(ラウロイル絹蛋白加水分解物ナトリウム塩;成和化成株式会社製)、「プロモイス EF−118(IS)」(イソステアロイル絹蛋白加水分解物;成和化成株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
本発明の皮膚外用剤は、前記アシル化された蛋白加水分解物及びその塩の一種を含有するものであっても、二種以上を含有するものであっても良い。
本発明の皮膚外用剤における前記アシル化された蛋白加水分解物及び/又はその塩の含有量は、皮膚外用剤全体に対して、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜1質量%含有する。また、前記アシル化された蛋白加水分解物及び/又はその塩の含有量は、前記美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤に対して、好ましくは0.1〜20質量倍、さらに好ましくは0.2〜2質量倍である。
前記アシル化された蛋白加水分解物及び/又はその塩は、乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤が、著しい環境変化、例えば高温域に保存されたり、極低温域に保存され凍結されたりするような環境変化によって、エマルション粒子又はミセルが合一・会合し、その粒径が増大するのを抑制する作用を有する。
【0019】
<3>本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有し、乳化剤形又は可溶化剤形であることを
特徴とする。
本発明の皮膚外用剤は、製造後40℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径が、製造直後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径の好ましくは1.0〜2.0倍、さらに好ましくは1.0〜1.5倍である。加えて、製造後5℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径が、製造直後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径の好ましくは1.0〜1.5倍、さらに好ましくは1.0〜1.1倍である。この場合の、製造後40℃、5℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径の測定方法と、製造直後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径の測定方法は同一である。
また、乳化剤形の場合は、製造直後のエマルション粒子の平均粒径、及び製造後40℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子の平均粒径が、ともに、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは9μm以下である。加えて、製造後5℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子の平均粒径は、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは9μm以下である。
また、可溶化剤形の場合は、製造直後のミセルの平均粒径、及び製造後40℃で1ヶ月保存した後のミセルの平均粒径が、ともに、好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下である。加えて、製造後5℃で1ヶ月保存した後のミセルの平均粒径は、好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下である。
これらの場合の、平均粒径の測定方法は、以下の通りである。
組成物約1gに1%オスミウム酸を1%添加し、スパーテルですくい取り、液体窒素中に投入し、凍結塊と為し、これを10質量%カルボキシメチルセルロース水溶液を用いて、オートクライオトームの試料台に凍結固定し、オートクライオトームで5μmの厚さに切り出し切片を作成する。これを粘着テープに固定し、凍結乾燥し、金蒸着し、試料とする。試料を走査型電子顕微鏡で15000倍に拡大して、20視野におけるミセルに相当する丸い凸部の構造を抽出し、拡大写真上で実際に計測し、その平均を求める。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、乳化剤形である場合に、特にエマルション粒子の合一・会合による美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤の作用の低下を抑制する効果を顕著に享受できる。
【0021】
また、本発明の皮膚外用剤は、エマルション粒子又はミセルを形成するための乳化剤又は可溶化剤として、界面活性剤を含有することが好ましい。この場合の界面活性剤としては、通常皮膚外用剤に使用されるものであれば特に制限されず、以下のものが挙げられる。
レシチンなどの天然界面活性剤、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンセスキオレエート等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(POEモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(PO
Eベヘニルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類。
中でも、POEアルキルエーテル類、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル類が好ましく用いられる。
【0022】
また、アクリル酸・メタクリル酸アルキルコポリマー及び/又はその塩、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はアルギン酸塩、アルギン酸の多価アルコールエステル、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、カゼイン、ペクチン等の増粘剤類を用いることも好ましい。
【0023】
本発明の皮膚外用剤においては、上記成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。
【0024】
マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラ
アミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体等の表皮構造改善剤;硫酸ゲンタマイシン、バシトラシン、ミノマイシン、パロマイシンなどの抗生物質、ビフォナゾール、テルビナフィン、ブテナフィン、シクロピロクス等の抗真菌剤などが好ましく例示できる。
【0025】
本発明の皮膚外用剤は、例えば、皮膚外用医薬組成物、医薬部外品を含む化粧料、皮膚外用雑貨等とするのに好適である。特に好ましいのは皮膚外用医薬組成物又は化粧料の内、医薬部外品である。更に剤形は、乳化剤形又は可溶化剤形であれば特段の限定はなく、例えば、ローション、乳液、エッセンス、クリーム、粉体化粧料等とすることが好ましく例示される。
【0026】
本発明の皮膚外用剤は、前記美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤等が有している種々の作用に応じて、特定の皮膚の疾患や症状の治療、予防、改善の目的で用いることができ、例えば、メラニン生成抑制用、抗炎症用、抗菌用、ニキビケア用、抗酸化用、美白用の皮膚外用剤、色素沈着の予防・改善用の化粧料(医薬部外品を含む)、シワ改善用、たるみ改善用などとすることが好ましい。具体的には、サンケアローション、サンケアミルク等の化粧料、紫外線防護のための基礎化粧料、抗炎症のための化粧料や皮膚外用医薬、シワ改善のための基礎化粧料、アンダーメークアップ、コントロールカラー、ファンデーションとすることが好ましい。
【0027】
本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分、任意成分を常法に従って処理することにより、製造することが出来る。
【実施例1】
【0028】
以下に示す処方に従って、可溶化剤形のローション(医薬部外品)を作製した。即ち、イ、ロの成分をそれぞれ80℃に加熱し、攪拌下、イに徐々にロを加え、可溶化した後、攪拌冷却し、可溶化剤形のローション1を得た。同様に操作して「プロモイス EFLS」(ラウロイル絹蛋白加水分解物ナトリウム塩;成和化成株式会社製)を水に置換した比較例1、POE(80)硬化ヒマシ油に置換した比較例2も同様に作製した。
【0029】
【表1】

【0030】
<試験例1>
ローション1、比較例1、比較例2の凍結切片を作成し、これの15000倍の拡大写真より、ミセルに相当する凸部の粒径を実測し、平均を求め、これを平均粒径とした。具体的な測定方法は、前述したとおりである。同様に、40℃で1ヶ月保存したもの、5℃で1ヶ月保存したものについても、平均粒子径を求めた。結果を表2に示す。これより、本発明のローションは、ミセルの合一・会合が著しく抑制されていることが分かる。
【0031】
【表2】

【実施例2】
【0032】
実施例1と同様の操作で、本発明の皮膚外用剤である、水中油乳化剤形の乳液1(医薬部外品)を作製した。「プロモイス EFLS」を水に置換した比較例3、POE(80)硬化ヒマシ油に置換した比較例4も同様に作製した。乳液1、比較例3、比較例4を試験例1と同様に評価した。この結果を表4に示す。乳化剤形でも、可溶化剤形同様、アシル化蛋白加水分解物である、「プロモイス EFLS」によってミセルの合一・会合が抑制されていることが分かる。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【実施例3】
【0035】
乳液1のアスコルビン酸−2−グルコシドを表6に示す成分に変えて、乳液2〜10を作製し、実施例2と同様の検討を行った。但し、評価は、実施例2で変化の激しかった、40℃1ヶ月保存のみとした。結果を表6に示す。これより、アシル化蛋白加水分解物は、種々の有効成分を含有する皮膚外用剤において、エマルション粒子の合一・会合を抑制する効果を奏することが確認された。
【0036】
【表5】

【0037】
【表6】

【実施例4】
【0038】
実施例3と同様に、乳液1のアスコルビン酸−2−グルコシドを表8に示す水性の成分に変えて乳液11〜13を作製し、検討を行った。結果を表8に示す。これより、水性の成分を含有する皮膚外用剤においても、エマルション粒子の合一・会合が抑制されている
ことが分かる。
【0039】
【表7】

【0040】
【表8】

【実施例5】
【0041】
乳液1の「プロモイス EFLS」を、他のアシル化蛋白加水分解物である「プロモイス ECP−C」(ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンカリウム塩;成和化成株式会社製)、「プロモイスEF−118(IS)」(イソステアロイル絹蛋白加水分解物;成和化成株式会社製)に変えて、乳液14及び15を作製し、同様に検討を行った。結果を表10に示す。これより、何れのアシル化蛋白加水分解物も使用可能であるが、ラウロイル絹蛋白加水分解物が特に、エマルション粒子の合一・会合の抑制に優れることも分かった。
【0042】
【表9】

【0043】
【表10】

【実施例6】
【0044】
下記に示す処方に従って、実施例2、実施例5と同様に操作して、アシル化加水分解蛋白におけるミセルの合一抑制作用を比較した。結果を表12に示す。ラウロイル絹蛋白加水分解物の特に優れた効果が同一実験でも実証された。
【0045】
【表11】

【0046】
【表12】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、皮膚外用医薬や化粧料に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)美白剤、抗炎症剤又は真皮構造改善剤と、2)炭素数10〜30のアシル基によりアシル化した蛋白加水分解物及び/又はその塩を含有することを特徴とする、乳化剤形又は可溶化剤形の皮膚外用剤。
【請求項2】
前記蛋白加水分解物が、絹蛋白加水分解物であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
製造後40℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径が、製造直後のエマルション粒子又はミセルの平均粒径の1.0〜2.0倍であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
乳化剤形であって、かつ製造直後のエマルション粒子の平均粒径、及び製造後40℃で1ヶ月保存した後のエマルション粒子の平均粒径がともに10μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
可溶化剤形であって、かつ製造直後のミセルの平均粒径、及び製造後40℃で1ヶ月保存した後のミセルの平均粒径が共に1.0μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記アシル基は、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基及びオレオイル基の少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
前記美白剤は、トラネキサム酸又はその誘導体、ハイドロキノン又はその誘導体、トリテルペン酸又はその誘導体、アスコルビン酸又はその誘導体、サリチル酸又はその誘導体及びセラミドから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
前記抗炎症剤は、トラネキサム酸又はその誘導体、トリテルペン酸又はその誘導体、アスコルビン酸又はその誘導体、サリチル酸又はその誘導体、及びセラミドから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
前記真皮構造改善剤は、トリテルペン酸又はその誘導体、フィトステロール又はその誘導体、アスコルビン酸又はその誘導体、及びセラミドから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−23952(P2009−23952A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189054(P2007−189054)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】