説明

皮膚外用剤

【課題】 皮膚の表皮再生を促進することにより、乾燥、紫外線等によるダメージを受けた皮膚の改善効果に優れた皮膚外用剤
【解決手段】(1)オオヒレアザミ(Onopordum acanthium)の花、葉、茎からの抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(2)上記抽出物がエチルアルコールと水との混液による抽出で得られる抽出物である上記(1)記載の皮膚外用剤。
(3)上記抽出物0.01〜95.0重量%を含有する上記(1)(2)記載の皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物のオオヒレアザミの地上部位即ち花、葉、茎からの抽出物を含有する皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、皮膚の表皮再生を促進することにより、乾燥、紫外線等によるダメージを受けた皮膚の改善効果に優れた皮膚外用剤に関する。本発明でいう皮膚外用剤とは、基礎化粧品、メーキャップ化粧品、ボディー化粧品等の化粧料を含む。
【背景技術】
【0002】
皮膚は常に紫外線、酸化、乾燥という、皮膚にとって好ましくない環境に曝されている。皮膚はそこで、特に角層に水分を維持するメカニズムを持って、自ら外的攻撃から身を守るバリアとして機能している。このメカニズムは、皮膚表面の皮脂膜、角層内の細胞間脂質、天然保湿因子により健常な皮膚の状態を維持しているものでる。
【0003】
皮膚がさまざまな刺激を受けた時、所謂肌荒れが生じる。表皮ターンオーバーのリズムが乱れてスケーリングを起こしたり、角層の最外層が正常でなくなる状態である。
【0004】
このような状態の皮膚を正常な状態に戻す為に、従来種々の油性成分、多価アルコール、アミノ酸、或いは植物抽出物などを配合した皮膚外用剤が用いられている。油性成分としては、例えばオリーブ油、スクワラン、ワセリン等、多価アルコールとしては、例えばグリセリン、他にセラミド、コレステロール、ピロリドンカルボン酸などの配合例がある。また、植物抽出液では、甘草エキス、オドリコソウエキス、ビワ葉エキスなどの例がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの成分の肌荒れ防止、即ち皮膚のバリア機能改善効果は必ずしも満足できるものとは言い難い。
【0006】
また、特に油性成分、多価アルコール系保湿剤の場合、効果を得る為に相当量の配合が必要であるが、この時、皮膚上での使用感触としてべたついたものとなり、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような状況下でなされたものであり、皮膚のバリア機能改善に優れる皮膚外用剤を開発すべく鋭意研究した結果、オオヒレアザミの地上部位即ち花、葉、茎からの抽出物を配合することで上記目的が達成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、(1);オオヒレアザミ(Onopordum acanthium)の花、葉、茎からの抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【0009】
本発明は、また(2);上記抽出物がエチルアルコールと水との混液による抽出で得られる抽出物である上記(1)記載の皮膚外用剤である。
【0010】
本発明は、また(3);上記抽出物0.01〜95.0重量%を含有する上記(1)(2)記載の皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオオヒレアザミ(Onopordum acanthium)の抽出物は、糖、フラボノイド、セスキテルペンのラクトン誘導体を有効成分とするものである。
【0012】
本発明の詳細な作用機序は不明であるが、オオヒレアザミ抽出物中の糖、フラボノイド、セスキテルペンのラクトン誘導体が表皮内でタンパク質分解酵素阻害剤として作用することによりインボルクリン、ロリクリン等の前駆体タンパク質の量バランスを維持したり、真皮内でプロコラーゲンの産生を促進するものと考えられる。
【0013】
図1は、ストリッピングによりダメージを与えたヒト皮膚(15名)に本発明の抽出物2重量%配合のクリームを1日1回塗布した時のTEWL(経皮蒸散水分量)を測定したものである。適用直後から7日後の時点まで、本発明の抽出物を含有しない市販クリームに比べて、本発明によるクリームを塗布した皮膚の保湿性が有意差を持って向上していることが確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。本発明に用いるオオヒレアザミ(Onopordum acanthium)はヨーロッパからアジア大陸を起源として、現在では北アメリカ、オーストラリア大陸まで広く分布しており、強壮、強心剤として、或いは小児のくる病予防作用を有する植物として利用されている。このオオヒレアザミの地上部位、即ち花、葉、茎を採取してエチルアルコールと水との混液で抽出して得られたものが本発明の抽出物である。
【0015】
本発明において抽出溶媒として用いるエチルアルコールと水との混液の組成割合は、特に限定されないが、エチルアルコールが50%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明のオオヒレアザミの抽出物は、市販品として例えば、ガテフォッセ社

SKIN−REPAIR BIO)」として得ることができる。
【0017】
本発明のオオヒレアザミの抽出物の配合量は、皮膚外用剤全量中に対し、0.01〜95.0重量%、好ましくは0.1〜10.0重量%である。0.01重量%より少ない配合では、皮膚のバリア機能改善効果が発揮されず、また、95.0重量%を超えて配合しても配合量に見合う機能が期待できない。
【0018】
本発明の皮膚外用剤には上記の必須成分以外に、通常、化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に使用される他の成分を配合することができる。かかる他の成分としては下記成分が例示される。本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分にこれらの一種又は二種以上を配合して常法に従って製造される。
【0019】
油性成分として次のものを挙げることができる。オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、小麦胚芽油、サフラワー油、モリンガ油、綿実油、大豆油、茶実油、ヒマワリ油、月見草油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、牛脂、馬脂、カカオ脂、モクロウ等の油脂類、カルナバロウ、キャンデリラロウ、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン等のロウ類、流動パラフィン、パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等の炭化水素、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の高級脂肪酸、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、バチルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2−オクチルドデシル、オクタン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セチル、ペンタエリスリトールテトラエステル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリエチル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸フィトステアリル、エトキシジグリコールベヘネート、エトキシジグリコールオレエート、ヤシ油脂肪酸ブチレングリコール等のエステル類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ジメチルシリコーン油、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、3次元網目構造シリコーン、シリコーンゴム等のシリコーン。
【0020】
多価アルコールとして次のものを挙げることができる。グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、ペンタンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール等。
【0021】
糖類として次のものを挙げることができる。ソルビトール、マンニトール、ショ糖、乳糖、キシリトール、マルチトール、トレハロース等。
【0022】
高分子化合物として次のものを挙げることができる。グアーガム、クインスシード、ペクチン、マンナン、カンテン、カラギ−ナン、キサンタンガム、カードラン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、POE・POP共重合体等の合成高分子、ベントナイト、ヘクトライト、マグネシウムケイ酸ナトリウム等の無機系増粘剤、両性メタクリル酸エステル共重合体、カチオン化セルロース、ポリ塩化ジメチルピペリジニウム、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、高分子シリコーン、シリコーンレジン等の被膜形成性高分子。
【0023】
界面活性剤として次のものを挙げることができる。高級脂肪酸石鹸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、POEアルキルエーテル硫酸塩、アシルN−メチルタウリン塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、POEアルキルエーテルカルボン酸塩等のアニオン性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POEグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビット脂肪酸エステル、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油、POEアルキルエーテル、POEPOPアルキルエーテル、POEアルキルアミン・脂肪酸アミド、PEG脂肪酸エステル、アルキルアミンオキサイド等のノニオン界面活性剤。
【0024】
色剤及び粉体、粒体として次のものを挙げることができる。黒酸化鉄、ベンガラ、黄酸化鉄、群青、カーボンブラック等の無機顔料、パール顔料、有機顔料、タール色素、天然色素等の色素、タルク、カオリン、雲母、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、酸化チタン、雲母チタン、亜鉛華、ゼオライト等の無機粉体、ナイロンパウダー、ポリエチレン末、セルロースパウダー、シルクパウダー等の有機粉体、ナイロン、ポリエチレン、セルロース、ワックス、脂肪酸エステル、天然物からなる粒体。
【0025】
動植物抽出物として次のものを挙げることができる。ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のムコ多糖類、キチン・キトサン、コラーゲン、エラスチン、ペプチド等の動物抽出物、アロエエキス、オオバクエキス、オドリコソウエキス、カモミラエキス、カンゾウエキス、クルミの種子エキス、シコンエキス、シラカバエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、茶エキス、トウキエキス、ニンニクエキス、ニンジンエキス、ハマメリスエキス、ヒノキチオール、ビワ葉エキス、ブナの木の幼芽エキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ヤナギランエキス、ケーパーエキス、キバナオランダセンニチエキス、クルミ種子エキス、モモ葉エキス、ユーカリエキス、ローズ水、アスパラゴプシスアルマタエキス等の植物抽出物。
【0026】
鉱物抽出物として次のものを挙げることができる。孔雀石、菱マンガン鉱石、菱亜鉛鉱石、赤鉄鉱等の抽出物。
【0027】
殺菌・防腐剤として次のものを挙げることができる。安息香酸、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベン等)、トリクロロカルバニリド、フェノキシエタノール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、ジンクピリチオン、トリクロサン等。
【0028】
酸化防止剤として次のものを挙げることができる。没食子酸エステル、亜硫酸水素ナトリウム等。酸化防止助剤としては次のものを挙げることができる。リン酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマール酸、ケファリン、フィチン酸、EDTA等。
【0029】
金属封鎖剤として次のものを挙げることができる。エデト酸塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、フィチン酸等。
【0030】
紫外線吸収剤として次のものを挙げることができる。2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等のベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等のパラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸オクチル、ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸オクチル等のサリチル酸誘導体、ウロカニン酸等。
【0031】
pH調整剤として次のものを挙げることができる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールアミン等のアルカリ剤、クエン酸、リン酸等の酸。
【0032】
各種薬剤として次のものを挙げることができる。アルブチン、コウジ酸、ビタミンC類等の美白剤、センブリエキス、γ−オリザノール、トウガラシチンキ、ニコチン酸ベンジルエステル、エストラジオール、エチニルエストラジオール、パントテン酸、感光素301等の育毛用薬剤、β−グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、アラントイン、ε−アミノカプロン酸、酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸、乳酸、メントール、副腎皮質ホルモン、抗ヒスタミン剤等の肌荒れ防止用薬剤、イオウ、サリチル酸、レゾルシン、塩化ベンザルコニウム、ハロカルバン等のニキビ用薬剤、クロルヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、酸化亜鉛等の制汗剤、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体等のビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテート等のビタミンC類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン等のビタミン類、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジン等のアミノ酸とこれらの塩酸塩。
【0033】
本発明の皮膚外用剤の剤型は液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、エアゾールフォーム状、固形、粉末分散系など、通常皮膚外用剤として用いられる形態をとることができる。
【実施例】
【0034】
次に本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。配合量は特に断りがない限り重量%で示す。
【0035】


上記成分配合の化粧水を常法に従って製造した。
【0036】

上記成分配合のジェルを常法に従って製造した。
【0037】

上記成分配合の美容液を常法に従って調製した。
【0038】



アレート、PEG−75 ステアレート、セテス−20、ステアレス−20混合物

ライド PEG−4 エステル
*4)「DPPG」ガテフォッセ社商品:プロピレングリコール ジペラルゴネート

上記成分配合の乳液を常法に従って調製した。
【0039】

上記成分配合のクリームを常法に従って調製した。
【0040】


上記成分配合のリップクリームを常法に従って調製した。
【0041】

上記成分配合のファンデーションを常法に従って製造した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】 図1は、ストリッピングによりダメージを与えたヒト皮膚(15名)に本発明の抽出物2重量%配合のクリームを1日1回塗布した時のTEWL(経皮蒸散水分量)を測定したものである。適用直後から7日後の時点まで、本発明の抽出物を含有しない市販クリームに比べて、本発明によるクリームを塗布した皮膚の保湿性が有意差を持って向上していることが確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオヒレアザミ(Onopordum acanthium)の花、葉、茎からの抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
上記抽出物がエチルアルコールと水との混液による抽出で得られる抽出物である請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
上記抽出物0.01〜95.0重量%を含有する請求項1及び2に記載の皮膚外用剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−163409(P2010−163409A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24251(P2009−24251)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(391056701)池田物産株式会社 (22)
【Fターム(参考)】