説明

皮膚外用剤

【課題】色素沈着を予防するより優れた手段を提供する。具体的には、レーザー治療又はケミカルピーリングなどに代わりうる、色素沈着を予防する優れた皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】1)トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩と、2)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩とを組み合わせて皮膚外用剤の成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に関し、詳しくは、色素沈着の予防に有用な皮膚外用剤に関する。本発明において、「化粧料」には、医薬部外品が含まれる。
【背景技術】
【0002】
紫外線の過度の照射は、火ぶくれ(水泡)などを伴う重度の炎症及びそれに続く局在的または不均一な色素沈着を引き起こす。また、長期に渡る紫外線の照射は、老人性色素斑といわれる色素沈着を引き起こす。
これらの色素沈着は、印象的な美観を損なうものであることから、その予防や治療に対する関心は、女性を中心に高い。
【0003】
従来、色素沈着の治療には、レーザー治療やケミカルピーリング等の物理的処置が行われてきた。また、美白を目的として、トラネキサム酸、アスコルビン酸及びその誘導体、アルブチン、コウジ酸、4−アルキルレゾルシノール等の各種薬剤が内服剤又は外用剤として使用されてきた(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながらレーザー治療やケミカルピ−リング等は患者の体調によっては症状を悪化させる場合がある。また、患者の正常皮膚に対する負担も大きいことが問題となっている。また、トラネキサム酸、アルブチン、4−アルキルレゾルシノール(非特許文献1、2、特許文献3、4)等の薬剤には、一定の美白作用は認められるものの、単独使用では色素沈着の予防効果は十分ではない。
このような背景において、色素沈着を予防するより優れた手段が求められている。
【0004】
一方、ウルソール酸、オレイン酸などのトリテルペン酸は、しわ改善・美肌作用(例えば、特許文献1を参照)、抗酸化作用、メラニン産生抑制作用(例えば、特許文献2を参照)、抗炎症作用等の様々な生物活性を示すことが知られ、化粧料などの皮膚外用剤に含有できることも知られている。また、トリテルペン酸の油性または水性成分への溶解性向上のために、リン酸化トリテルペン酸が開発されている。
例えば、ウルソール酸の水酸基のひとつをリン酸化したリン酸化ウルソール酸は、ウルソール酸に比較し油性または水性成分に対する溶解性が向上した化合物であり、美白作用(例えば、特許文献5を参照)及び肌荒れ改善作用(例えば、特許文献6を参照)を示すことが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−005727号公報
【特許文献2】特開平9−143050号公報
【特許文献3】特開平07−002643号公報
【特許文献4】特開2006−124358号公報
【特許文献5】国際公開第2006/132033号パンフレット
【特許文献6】特開2007−246459号公報
【非特許文献1】T.Okubo, M.Oyohikawa, K. Futaki. M. Matustkami, Journal of Dermatological. Science, 10(1), 88, 1995..
【非特許文献2】武田ら監修「化粧品の有用性評価技術の進歩と将来展望」、株式会社薬事日報社、2001年3月31日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、色素沈着を予防するより優れた手段を提供することを課題とする。具体的には、レーザー治療又はケミカルピーリングなどに代わりうる、色素沈着を予防するより優
れた皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意努力を重ねた結果、1)トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩と、2)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩とを組み合わせた皮膚外用剤が、色素沈着を予防する効果に優れることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下に示す通りである。
【0008】
(1)1)トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩と、2)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
(2)トリテルペン酸が、ウルソール酸であることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3)4−アルキルレゾルシノールが、4−n−ブチルレゾルシノールであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4)トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩を、0.01質量%〜5質量%含有することを特徴とする、(1)〜(3)の何れかに記載の皮膚外用剤。
(5)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩を、0.01質量%〜5質量%含有することを特徴とする、(1)〜(4)の何れかに記載の皮膚外用剤。
(6)さらに、α、ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを含有することを特徴とする、(1)〜(5)の何れかに記載の皮膚外用剤。
(7)α、ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンが、ベシクルを形成していることを特徴とする、(6)に記載の皮膚外用剤。
(8)化粧料であることを特徴とする、(1)〜(7)の何れかに記載の皮膚外用剤。
(9)色素沈着の予防用であることを特徴とする、(1)〜(8)の何れかに記載の皮膚外用剤。
(10)紫外線照射の直後に使用するための、(1)〜(9)の何れかに記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用剤は、色素沈着を予防する効果に優れる。本発明の皮膚外用剤は、紫外線照射の直後に使用することで、その後の色素沈着を十分に予防することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(1)必須成分であるトリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩
本発明の皮膚外用剤は、トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩を含有することを特徴とする。
トリテルペン酸のリン酸エステルは、水酸基を有するトリテルペン酸(以下、単にトリテルペン酸という場合もある)の該水酸基の少なくとも1個がリン酸化された構造を有する。水酸基を有するトリテルペン酸としては、化粧料など皮膚外用剤の分野で使用されているものであれば特段の限定無く適用することができ、例えば、ウルソール酸、オレアノール酸、ベツリン酸、アジア酸(asiatic acid、(2α,3β,4α)−2,3,23−トリヒドロキシ−12−エン−ウルソール酸((2α,3β,4α)−2,3,23−Trihydroxyurs-12-en-28-oic acid))などが好ましく例示でき、これらの中ではウルソール酸が特に好ましく例示できる。
【0011】
トリテルペン酸のリン酸エステルは、通常知られている方法により、トリテルペン酸をリン酸化することにより行うことができる。例えば、トリテルペン酸を1〜3倍当量のジエチル−N,N−ジエチルホスホロアミデートで、テトラゾールの存在下処理し、t−ブチルハイドロパーオキサイドを反応させ、トリテルペン酸のメチルホスフェートとなし、
更に、ブロモトリメチルシランを作用させることにより製造することが出来る。
この様な方法で、ウルソール酸を処理して得られたウルソール酸のリン酸エステルは、下記式(1)で表される構造を有する。
【0012】
【化1】

【0013】
トリテルペン酸のリン酸エステルの塩は、皮膚外用剤に使用されるものであれば、特段の限定無く使用できる。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0014】
本発明の皮膚外用剤は、トリテルペン酸のリン酸エステル及びその塩の一種を単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
本発明の皮膚外用剤における、トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩の含有量は、好ましくは0.01質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜1質量%である。
【0015】
かかる成分は、本発明の皮膚外用剤においては、後記4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩と共働して、色素沈着を予防する。特に、紫外線照射によって皮膚が受けたダメ−ジを、炎症が起こる前に消去する作用を有する。
【0016】
(2)必須成分である4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩
本発明の皮膚外用剤は4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩を含有することを特徴とする。4−アルキルレゾルシノールにおけるアルキル基は、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、この中でも炭素数3〜7のアルキル基が好ましい。アルキル基は、直鎖でも分岐でもよい。
具体的には、4−メチルレゾルシノール、4−エチルレゾルシノール、4−プロピルレゾルシノール、4−(1−メチルエチル)レゾルシノール、4−n−ブチルレゾルシノール、4−(2−メチルプロピル)レゾルシノール、4−(1−メチルエチルレゾルシノール )、1−エチルプロピルレゾルシノール、1−エチル−2−メチルプロピルレゾルシノール、1−イソプロピル−2−メチルプロピルレゾルシノール、1−ブチルペンチルレゾルシノール、1−イソブチル−3−メチルブチルレゾルシノール、4−(1−メチルプロピル)レゾルシノール、4−(1−メチルブチル)レゾルシノール、4−tert−ブチルレゾルシノールなどが挙げられる。中でも、4−n−ブチルレゾルシノールが好ましい。
【0017】
4−n−ブチルレゾルシノールなどの4−アルキルレゾルシノールは、公知の物質であ
り、常法に従って製造することができ、例えば、Lille, J.; Bitter, L. A.; Peiner, V.
Trudy-Nauchono-Issledovatel' skii Institut Slantsev (1969), No.18, 127-34に記載された方法に従って製造することができる。すなわち、4−n−ブチルレゾルシノールの製造方法としては、レゾルシンとブタン酸を塩化亜鉛の存在下縮合し、亜鉛アマルガム/塩酸で還元する方法や、レゾルシンとn−ブチルアルコールとを200〜400℃で縮合させる方法が例示できる。ここで、n−ブチルアルコールを他のn−ヘキシルアルコールなどに置換することにより他の4−アルキルレゾルシノールを合成することが可能である。また、4−n−ヘキシルレゾルシノールは、アルドリッチ社より市販されており、それを購入して使用することも可能である。
【0018】
また、4−アルキルレゾルシノールの塩は、皮膚外用剤に使用されるものであれば、特段の限定無く使用できる。例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩、リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示される。これらの塩の内、特に好ましいものは、アルカリ金属であり、中でもナトリウム塩が特に好ましい。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、4−アルキルレゾルシノール及びその塩の一種を単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
本発明の皮膚外用剤中における、4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%以上であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%以上である。
【0020】
また、トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩と、4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩の含有比(質量)は、好ましくは20:1〜1:20、さらに好ましくは10:1〜1:10である。
【0021】
かかる成分は、本発明の皮膚外用剤においては、前記トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩と共働して、色素沈着を予防する。特に、紫外線照射によって皮膚が受けたダメ−ジを、炎症が起こる前に消去する作用を有する。
【0022】
(3)好ましい成分であるα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン
本発明の皮膚外用剤は、好ましくは、さらに、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを含有する。かかる成分はフリー体を含有することもできるし、塩の形で含有することもできる。アシル基は炭素数10〜30のものであることを特徴とする。この様なアシル基は、直鎖であっても、分岐構造を有していても、環状構造を有していても良く、飽和脂肪族であっても、不飽和脂肪族であっても良い。アシル基の具体例としては、例えば、デカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、リノロイル基等が例示でき、これらの中ではラウロイル基が特に好ましい。又、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは2つのアシル基を有するが、かかる2つのアシル基は、同じであっても、異なっていても良い。α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンは例えば、次のような手順で製造することができる。即ち、グルタミン酸をトリエチルアミンなどのアルカリの存在下、アシルクロリドと反応させてN−アシルグルタミン酸を得る。しかる後に、モル比2:1でリジンと、DCC等のペプチド合成試薬の存在下縮合させることにより、製造することができる。斯くして得られた反応生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製することができる。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの溶出溶媒としては、クロロホルム−メタノール混液系が好ましく例示できる。かかるα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜
30)アシルグルタミル)リジンの構造を下記式(2)に示す。
【0023】
【化2】

【0024】
また、これらの塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノエタノールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。
α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンには既に市販されているものが存し、かかる市販品を購入し利用することもできる。この様な市販品としては、「ペリセアL−30」(旭化成株式会社製;α,ε−ビス(γ−N−ラウロイルグルタミル)リジン)が好適に例示できる。
α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの含有量は、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは、0.05〜5質量%である。
【0025】
本発明の皮膚外用剤では、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンはベシクルを形成させて含有することも出来るし、油相中に相溶した形で含有することも出来るが、ベシクルを形成させて含有することが好ましい。
本発明の皮膚外用剤は、α,ε−ビス(γ−N−ラウロイルグルタミル)リジン)にベシクルを形成させ、かつ該ベシクルに前記必須成分の少なくとも一つが含まれている形態であることが、必須成分の真皮への送達性を高める観点から特に好ましい。すなわち、ベシクルの脂質二重相の相間に前記必須成分を含有させ、脂質二重相の外側と角層との親和性を利用して、前記必須成分を真皮付近に効率的に送達することができる。
本発明の皮膚外用剤においては、特に、該ベシクルに、トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩が含まれていることが好ましい。
【0026】
ベシクルにおける、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンの含有量は、ベシクル全量に対し、下限値として好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%、上限値として好ましくは50質量%、より好ましくは10質量%である。かかる成分が多すぎても、少なすぎても安定なベシクルが形成しない場合が存する。
また、α,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジン自体も真皮に送達することで、バリア構造を強化せしめる作用を発揮する。
ベシクルは、マイクロフルイダイザ−やエクストル−ダ−などを用いて、常法に従って調整することが出来る。
【0027】
(4)好ましい成分であるセラミド類
本発明の皮膚外用剤が、ベシクルを含む場合には、その脂質二重膜を補強するためにセラミド類を共存させることが好ましい。セラミド類とは、セラミド及びその誘導体を含む概念である。
セラミドは、通常タイプ1〜タイプ7の7タイプが存することが知られており、それらのいずれもが利用できるが、その中では特にタイプ2が好ましく、N−ステアロイルジヒ
ドロキシスフィンゴシンが特に好ましい。この様なセラミドには市販品が存し、かかる市販品を購入し、利用することが出来る。この様な市販品のうち、このましいものとしては、タイプ1である、N−(27−オクタデカノイルオキシ−ヘプタコサノイル)−フィトスフィンゴシンを成分とする、「Ceramide I」(コスモファ−ム社製)、タイプ2であるN−ステアロイルジヒドロキシスフィンゴシンを成分とする、「セラミドTIC−001」(高砂香料工業株式会社製)、タイプ3であるN−ステアロイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide III」(コスモファーム社製)、タイプ3であるN−リノレオイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide IIIA」(コスモファーム社製)、タイプ3であるN-オレオイルフィトスフィンゴシンを成分とする「Ceramide IIIB」(コスモファーム社製)、タイプ6であるN−2−ヒドロキシステアロイルフィトスフィンゴシンを成分とする、「Ceramide VI」(コスモファーム社製)等が好ましく例示できる。これらは唯一種を含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。これらは唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有することも出来る。ベシクルにおける、セラミド類の含有量は、下限値として、好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%、上限値として、好ましくは50質量%、より好ましくは10質量%である。
ベシクルにおけるα,ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンとセラミド類の含有比(質量)は、好ましくは5:1〜1:5、さらに好ましくは3:1〜1:3である。
【0028】
(5)その他の好ましい成分
本発明の皮膚外用剤は、トリテルペン酸の炭素数1〜20の炭化水素エステルを含有することも好ましい。トリテルペン酸としてはウルソール酸が好ましく、特にトリテルペン酸ベンジルが好ましく挙げられる。
また、本発明の皮膚外用剤が、ベシクルを含有する場合には、該ベシクルにグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル、ピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステルを含有させることも好ましい。また、シトステロール等のフィトステロールを含有させることも好ましい。
【0029】
(6)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤としては、医薬部外品を含む化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。これらの中で特に好ましいものは、化粧料である。かかる化粧料としては、例えば、化粧料などのロ−ション、乳液、エッセンス、クリ−ム、パック化粧料、洗顔化粧料、クレンジング化粧料等が好ましく例示できる。
本発明の皮膚外用剤の剤形は、特に制限されず、ロ−ション製剤、水中油乳化製剤、油中水乳化製剤、複合エマルション乳化製剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の皮膚外用剤は、色素沈着の予防用の皮膚外用剤とすることが好ましい。特に、紫外線照射の直後に使用するための皮膚外用剤とすることが好ましい。これは、前記必須成分を組み合わせることで、優れた色素沈着の予防効果を得ることができるためである。特に、紫外線照射の直後に使用することにより、その後の色素沈着を極めて効果的に予防することができる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤は、さらに、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリ−ブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ−油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ−ム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワック
ス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、イソステアリルアルコ−ル、ベヘニルアルコ−ル、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコ−ル、セトステアリルアルコ−ル等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ−ル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ−ルプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ−ルプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエ−テル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエ−テル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノステアレ−ト、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンモノステアレート等)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ジグリセリンモノオレート等)、ピログルタミン酸グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル(モノステアリン酸プロピレングリコ−ル等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ−テル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ−ト、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ−ト等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ−ト等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ−ルモノオレ−ト、POEジステアレ−ト等)、POEアルキルエ−テル類(POE2−オクチルドデシルエ−テル等)、POEアルキルフェニルエ−テル類(POEノニルフェニルエ−テル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ−テル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ−テル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコ−ル、エリスリト−ル、ソルビト−ル、キシリト−ル、マルチト−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、ジグリセリン、イソプレングリコ−ル、1,2−ペンタンジオ−ル、2,4−ヘキサンジオ−ル、1,2−ヘキサンジオ−ル、1,2−オクタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ−ル剤類;レ−キ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ−等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アン
トラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテ−ト、ビタミンB6ジオクタノエ−ト、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ−ル、β−トコフェロ−ル、γ−トコフェロ−ル、ビタミンEアセテ−ト等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤は、前記の任意成分や必須成分を常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0033】
以下に、実施例を挙げて、更に詳細に本発明について説明を加える。
【実施例1】
【0034】
表1に示す処方に従って、べシクルの分散液を作製した。即ち、イ、ロの成分をそれぞれ70℃に加熱し、一様に溶解せしめ、撹拌下イに序々にロを加え、これをエクストル−ダー処理し、粒径を整え、ベシクル分散液1を得た。同様に操作して、ウルソール酸リン酸カリウムを水に置換した比較ベシクル分散液1も作製した。
【0035】
【表1】

【0036】
前記ベシクル分散液1を用いて、本発明の皮膚外用剤である皮膚外用剤を作製した。即ち、下記に示す処方に従って、乳液を作製した。即ち、(A)の各成分を混合し、80℃に加熱した。一方、(B)の各成分を80℃に加熱した。(A)の混合物に(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させ、更に(C)を加えで中和し、その後30℃にまで撹拌、冷却し、乳液1(化粧料)を作製した。同様に操作して、ベシクル分散液1を比較ベシクル
分散液1に置換した比較例1、4−n−ブチルレゾルシノールを水に置換した比較例2、ベシクル分散液を比較ベシクル分散液1に、且つ、4−n−ブチルレゾルシノールを水に置換した比較例3も作製した。
【0037】
【表2】

【0038】
<試験例1>
紫外線照射後炎症を起こし、該炎症部位が色素沈着を起こす特性を有するパネラ−(n=1)を用いて、色素沈着の予防効果を検討した。即ち、前腕内側部に2cm×4cmの部位を6つ設け、部位1〜5は最少紅斑量(MED)の3倍の紫外線照射を行い、部位1〜4には、紫外線照射の直後に乳液1、比較例1〜3をそれぞれ40μL投与し、部位5は照射対照とし、部位6は無処置対照とした。照射後24時間に紅斑の程度をドレ−ズの基準(−:無反応、±:擬陽性反応、+:明瞭な紅斑を伴う反応、++:浮腫を伴う反応)に従って判定した。更に、その10日後に、部位1〜5と部位6(無処置対照)とのL値の差をコニカミノルタ色彩色差計CR400で計測した。結果を表3に示す。
これより、ウルソール酸リン酸カリウムと、4−n−ブチルレゾルシノールを組み合わ
せて、紫外線直後に投与することにより、色素沈着が抑制できることが判った。
【0039】
【表3】

【0040】
<試験例2>
紫外線照射後炎症を起こし、該炎症部位が色素沈着を起こす特性を有するパネラ−(n=1)を用いて、色素沈着の改善効果を検討した。即ち、前腕内側部に2cm×4cmの部位を6つ設け、部位1〜5は最少紅斑量(MED)の2倍の紫外線照射を行い、10日後に、部位1〜5と部位6(無処置対照)とのL値の差をコニカミノルタ色彩色差計CR400で計測し、部位1〜5が同程度に色素沈着を起こしているのを確認した。続いて、部位1〜4には、乳液1、比較例1〜3をそれぞれ40μL投与した。乳液の投与後7日に、部位1〜5と部位6(無処置対照)とのL値の差をコニカミノルタ色彩色差計CR400で計測した。結果を表4に示す。これより、何れの乳液にも、色素沈着の改善効果はあまり認められないことが判る。
本試験結果と試験例1の結果とから、本発明の皮膚外用剤は、色素沈着の予防効果に優れることが判った。特に、紫外線照射の直後に使用することで、色素沈着を極めて効果的に予防できることが判った。
【0041】
【表4】

【実施例2】
【0042】
表5の処方に従って、実施例1と同様に、本発明の皮膚外用剤である、乳液2(化粧料)を作製した。処方中の4−アルキルレゾルシノールとしては、4−(1−メチルプロピル)レゾルシノール又は4−(1−メチルブチル)レゾルシノールを使用した。これらの試験例1に従った評価は、紅斑レベルは共に±であり、ΔLはそれぞれ0.69、0.71であった。4−アルキルレゾルシノールであれば、同様の効果が発現されることが確認されたが、4−アルキルレゾルシノールとしては、4−n−ブチルレゾルシノールが好ましいことが判った。
【0043】
【表5】

【実施例3】
【0044】
表6の処方に従って、実施例1と同様に作製したベシクル分散液2を、表2のベシクル分散液1の代わりに用いて、本発明の皮膚外用剤である乳液3(化粧料)を作製した。このものの試験例1に従った評価は、紅斑レベルが±であり、ΔLが0.65であった。本結果と実施例2の結果から、ベシクルにシトステロールを含有することがより好ましいことが判った。
【0045】
【表6】

【0046】
【表7】

【実施例4】
【0047】
表8の処方に従って、ベシクル分散液を作らずに、乳液1と同様の方法で、乳液5(化粧料)を作製した。このものの試験例1に従った評価は、紅斑レベルが+であり、ΔLが0.92であった。本結果と実施例1の結果から、ベシクル分散液を用いることが好ましいことがわかる。
【0048】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、化粧料などの皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩と、2)4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項2】
トリテルペン酸が、ウルソール酸であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
4−アルキルレゾルシノールが、4−n−ブチルレゾルシノールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
トリテルペン酸のリン酸エステル及び/又はその塩を、0.01質量%〜5質量%含有することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
4−アルキルレゾルシノール及び/又はその塩を、0.01質量%〜5質量%含有することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
さらに、α、ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンを含有することを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
α、ε−ビス(γ−N−(炭素数10〜30)アシルグルタミル)リジンが、ベシクルを形成していることを特徴とする、請求項6に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
化粧料であることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
色素沈着の予防用であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
紫外線照射の直後に使用するための、請求項1〜9の何れか一項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2010−30910(P2010−30910A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191955(P2008−191955)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】