説明

皮膚外用剤

【課題】美白効果に優れた皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】フェルラ酸糖エステルには日焼けによるメラニン生成を防御、抑制し、また皮膚をみずみずしい状態にするというさまざまなメカニズムにより強力な美白効果を発揮するうえ、しかもフェルラ酸と比べてはるかに水への溶解が容易であることから、幅広い剤形の適用が可能となることを見出し本発明の完成に至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性に優れ、日焼けによるしみ、そばかすなどの各種色素沈着の改善又は防止効果に優れた美白用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の色素沈着であるしみ、そばかすは、一般的には日光からの紫外線の刺激やホルモン分泌の異常、メラニン代謝の異常などが原因となって表皮でのメラニン色素産生が亢進し、これが皮膚内に沈着するものと考えられている。日焼けのように一時的に作られるメラニンは消えていくが、しみやそばかすは継続的にメラニンが過剰に作られている状態である。
【0003】
皮膚の色素沈着の軽減、防止に対して様々な物質が応用されている。その中には、メラノサイトを細胞死させるハイドロキノンが知られているが、化粧品への高濃度の配合は皮膚に対する作用が強力過ぎて永久的な色素脱色をきたす場合があるなど安定性や安全性の面で問題がある。またメラニン合成の鍵酵素であるチロシナーゼの働きを抑制するコウジ酸やビタミンCおよびその誘導体など種々の美白剤が開発応用されているが効果が緩徐で、長期間連用しないと効果が得られにくいという問題があり、より安全でしかも皮膚美白効果の高い治療方法が求められている。
【0004】
一方、フェルラ酸は紫外線吸収剤などの化粧品原料として用いられいるが、アルカリ性においては黄変したり、空気中で長期間放置しておくと品質が劣化するという点で安定性に問題があった。またフェルラ酸は水への溶解性が非常に悪く、加工する際の溶解が困難である。さらにはフェルラ酸水溶液を紫外線吸収剤として用いる場合、UV−B(290〜320nm)領域では高い吸収を示すが、UV−A領域(320〜400nm)の紫外線吸収性は満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平9−322794号公報
【特許文献2】特開2006−180875号公報
【特許文献3】特開2007−000010号公報
【特許文献4】特開2007−39469号公報
【特許文献5】特開2002−345458号公報
【特許文献6】特開2006−249077号公報
【非特許文献1】Ishii T. and Hiroi T.,Carbohydr. Res.,Vol.206:297−310(1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は優れた美白効果を有する新規皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討した結果、フェルラ酸糖エステルが幅広い領域での紫外線吸収効果および抗酸化作用を有しており、紫外線による刺激から皮膚を保護すること、また、フェルラ酸糖エステルはチロシナーゼ活性阻害効果を有することから、メラノサイトにおけるメラニン合成を抑制できること、さらには、真皮線維芽細胞の増殖およびコラーゲン産生を増強することにより、皮膚をみずみずしい状態に導くことなどを見出した。上記のごとくフェルラ酸糖エステルには日焼けによるメラニン生成を防御、抑制し、また皮膚をみずみずしい状態にするというさまざまなメカニズムにより強力な美白効果を発揮するうえ、しかもフェルラ酸と比べてはるかに水への溶解が容易であることから、幅広い剤形の適用が可能となることを見出し本発明の完成に至った。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
(項目1)
フェルラ酸糖エステルを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(項目2)
フェルラ酸糖エステルの糖部分がグルコースであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【化1】


ただし、式(1)において、Rは糖類で表されるフェルラ酸糖エステルを有効成分とする皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフェルラ酸糖エステルを有効成分として含有する皮膚外用剤を塗布することにより、メラニン産生の引き金となる紫外線(UV−AおよびUV−B)を効果的に吸収し、表皮への刺激を低減するとともに、表皮色素細胞でのメラニン形成に大きくかかわる酸化酵素チロシナーゼの活性を抑制させ、メラニン色素の産生を減少させ、皮膚の白色化、色素沈着の改善に効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1.フェルラ酸糖エステル)
本発明の組成物は、上記一般式(1)で示されるフェルラ酸糖エステルを含む。式中、Rは好ましくはグルコースである。又、本発明によれば、上記式(1)で表わされるフェルラ酸糖エステルを含有する皮膚外用剤が提供される。
本明細書で用いる場合、本発明における糖とは、ポリアルコールのアルデヒド、ケトン、酸、さらにポリアルコール自身や、それらの誘導体、縮合体などをいい、単糖、オリゴ糖、多糖のいずれも含む。具体的には、アラビノース、キシロース、グルコース、フラクトース、マンノース、フコース、ガラクトースのような中性単糖、デキストリン、サイクロデキストリン、マルトース、マルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクトシュクロース、イソマルトオリゴ糖、セロオリゴ糖、セロビオースのような中性オリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、セルロース、マンナンのような中性多糖、アスコルビン酸、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコールノイラミン酸のような酸性単糖、ポリシアル酸、ペクチン、アルギン酸、カラギーナンのような酸性多糖、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミンのようなアミノ糖、キトオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、のようなアミノ糖のオリゴ糖、キチン、キトサンのようなアミノ糖の多糖などを例示することができる。
本発明に用いるフェルラ酸糖エステルは種々の方法を用いて得ることが可能である。フェルラ酸糖エステル
は、(特許文献1)に記載されるフェルラ酸アルコールエステルと糖を、リパーゼ、エステラーゼ、セリンプロテアーゼ等、エステル結合を切断し得る酵素を用いて溶媒中で反応させる方法を用いて製造できるほか、米ぬかのようなフェルラ酸糖エステル
を含む天然物から抽出することもできる。米ぬかからフェルラ酸糖エステル を抽出する方法は、例えば、Ishii and
Hiroi の方法(非特許文献1)に従って行うことができる。この方法では、ホモジナイズした米ぬかを脱脂した後、ドリセラーゼで処理し、カラムクロマトグラフィーによりフェルラ酸糖エステルを単離精製する。上記フェルラ酸糖エステルのなかでもフェルラ酸グルコースエステルは(特許文献2)に記載の方法のように、有機溶媒を用いることなく合成反応が可能であり、かつ基質となるショ糖が安価であることから、製法面およびコスト面で優れている。本発明で用いられるフェルラ酸糖エステルは、純粋な1種類の化合物として用いられてもよく、複数種の混合物として用いられてもよい。糖の構造中にはフェルラ酸とのエステル結合が可能な水酸基が複数存在していることから、フェルラ酸が結合する水酸基の位置が異なる各種異性体が存在する。例えば(特許文献2)に記載される方法に従って製造すると、酵素反応によりフェルラ酸のカルボキシル基がグルコースの1位の水酸基にアルファ型で結合したフェルラ酸糖エステルが得られた後、分子内アシル基転位反応によりグルコースの他の水酸基にフェルラ酸が転位した各種異性体を得ることができるし、(特許文献3)に記載される方法に従って製造するとグルコースにフェルラ酸が結合したフェルラ酸糖エステルが得られる。フェルラ酸糖エステルはその混合物をそのまま用いてもよく、純粋な化合物に分離した後に、1種類の化合物のみを選択して用いてもよい。フェルラ酸糖エステルは、1種類で用いた場合も、混合物として用いた場合も、優れた性能を発揮する。
【0010】
フェルラ酸糖エステルにはTNFの産生抑制作用があることが知られている(特許文献4)。しかしながらフェルラ酸を糖エステル化することにより、水溶液にした際の紫外線に対する吸収スペクトルが変化し、UV-Aの吸収作用が向上することは全く知られていなかった。さらにフェルラ酸糖エステルがメラニン形成に大きくかかわる酵素チロシナーゼの活性を抑制させることについても明らかではなかった。前述の如く紫外線は、皮膚細胞を刺激し、皮膚中でのメラニン合成反応を亢進させる。また酵素チロシナーゼはメラニン合成の律速反応である、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンへの反応を触媒する鍵酵素であることから、フェルラ酸糖エステルを及びフェルラ酸糖エステルを含む外用剤を外用することによりメラニン色素の産生を減少させ、皮膚の白色化、色素沈着の改善に効果が得られる。
また、前述したように本発明のフェルラ酸糖エステルはUV-A、UV-B両領域における幅広いUV吸収作用を有することから、紫外線への暴露によって引き起こされる肌弾力の低下やシワに代表される光老化の抑制にも非常に有効である。
【0011】
本明細書において、用語「皮膚外用剤」とは皮膚に接触させることにより、所望の効果を達成する、皮膚に対して使用する製剤をいう。特に長時間継続的に皮膚に接触させる用途(例えば、1時間以上継続的に皮膚に接触させる用途、または5時間以上継続的に皮膚に接触させる用途)に本発明は有効である。
皮膚外用剤の好ましい例は、化粧料である。
化粧料の好ましい例としては、スキンケア化粧料が挙げられる。化粧料の具体的な例としては、化粧水、乳液、クリーム等のスキンケア化粧料、リキッドファンデーション、ファンデーション、アイシャドウ、口紅、頬紅などの化粧品、頭髪化粧料、エモリエントクリーム、エモリエントローション、クリーム、ゼリー、クリームリンス、コールドクリーム、バニッシングクリーム、ローション、パック剤、ジェル、フェイスパック、石鹸、ボディーソープ、シャンプー、コンディショナー、リンス、入浴剤、浴用剤、洗顔料、シェービングクリーム、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアートリートメント、髪パック、グロス、リップクリーム、ケーキ、などが挙げられる。特に、美白効果が望まれる用途に本発明は有効である。例えば、スキンケア化粧料に本発明は有効である。本発明は、長時間皮膚に接触させる用途に特に有効であるが、洗顔料やシャンプーなどのように、短時間で使用した後に洗い流してしまうような用途においても本発明は有効である。
上述したとおり、化粧品も化粧料に含まれる。化粧品としては、清浄用化粧品、頭髪用化粧品、基礎化粧品、メークアップ化粧品、芳香化粧品、日焼け用化粧品、日焼け止め用化粧品、爪化粧品、アイライナー化粧品、アイシャドウ化粧品、チーク、口唇化粧品などに分類され、そのいずれの用途にも本発明は有効である。また、皮膚外用剤は、医薬品または医薬部外品であってもよい。例えば、薬学的に有効な成分を含む軟膏にフェルラ酸糖エステルを配合することもできる。
本発明の皮膚外用剤は公知の方法により製造することができる。
本明細書中では、フェルラ酸糖エステルを繊維に結合したり、繊維材料に混合したり、繊維に含浸させたり、または布帛の表面に塗布したりすることにより、その繊維または布帛から製造した衣類(例えば、肌着など)と皮膚とが接触したときにフェルラ酸糖エステルが経皮吸収されるような利用方法におけるフェルラ酸糖エステルを含む衣類も、皮膚外用剤の概念に含む。フェルラ酸糖エステルを繊維に結合することは、例えば、架橋などにより行われ得る。化合物を繊維に結合する方法、繊維材料に混合する方法、繊維に含浸させる方法、布帛表面に塗布する方法などは、当該分野で公知である。
本発明の方法で合成されたフェルラ酸糖エステルを皮膚外用剤に添加するには特別な工程を必要とせず、皮膚外用剤の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を皮膚外用剤の種類および性状に応じて選択する。本発明の方法で合成された皮膚外用剤は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0012】
本発明の皮膚外用剤の剤形の例としては、軟膏、増粘ゲル系、ローション、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、固形状、シート状、パウダー状、ジェル状、ムース状およびスプレー状が挙げられる。メーク落としパックなどのように、皮膚外用剤を布等に含浸させた形態の製品としてもよい。その配合成分も化粧品、医薬部外品および医薬品などに常用されている各種の成分、例えばアルコール等の溶剤および溶解補助剤、界面活性剤、保湿剤、香料、着色剤、防腐剤、粘度調整剤等を適宜配合することが出来る。
【0013】
本発明の皮膚外用剤に含まれるフェルラ酸糖エステルの含有量は剤型などによって左右され、特に限定的ではないが、通常は、0.01〜10重量%、好ましくは0.03〜5重量%であり、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。0.05重量%未満の場合には充分な皮膚の紫外線防止効果や色素沈着の改善に効果が得難い。
【0014】
本発明の、フェルラ酸糖エステルを含有する皮膚外用剤は、加えて、通常化粧料で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、(特許文献6)に記載されるリン酸化オリゴ糖Caやリン酸化オリゴ糖Mg等のリン酸化糖及び/又はその塩、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸ナトリウムグリセリン、プロピレングリコール、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、尿素、コラーゲン、海洋コラーゲン、ブドウ糖、ホホバオイル、アミノ酸、イソフラボン、セラミド、カモミールエキス、セリシン、ポリエチレングリコール、絹セリシン、シコンエキス、トウキエキス、オリーブオイル、トレハロース、アロエエキス、海藻抽出物、ローズマリー油、カミツレエキス、紅藻エキス、アボカドエキス、ヘチマ水、オウゴンエキス、シコンエキス、ソウハクヒエキス、オランダカラシエキス、サボンソウエキス、セージエキス、グリシン、システイン、ハーブエキス、スクワラン、ローヤルゼリーエキス、乳酸菌発酵エキス、米エキス、和漢植物エキス等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸,ローカストビーンガム,サクシノグルカン,カロニン酸,キチン,キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、ビタミンP又はその誘導体、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類、アスコルビン酸及び/又はその誘導体、アルブチン及び/又はその塩、エラグ酸及び/又はその塩、トラネキサム酸及び/又はその塩若しくは4−メトキシサリチル酸及び/又はその塩等の美白剤或いはグリチルレチン酸ステアリル、グリチルリチン酸ジカリウム若しくはトラネキサム酸及び/又はその塩等の抗炎症剤などが好ましく例示できる。これらの内、特に好ましいものは美白剤、抗炎症剤或いは保湿成分であり、美白剤としては、アスコルビン酸及び/又はその誘導体、ハイドロキノン、α-アルブチン及び/又はその塩/又はその誘導体、アルブチン及び/又はその塩/又はその誘導体、エラグ酸及び/又はその塩、トラネキサム酸及び/又はその塩若しくは4−メトキシサリチル酸及び/又はその塩が好ましく例示できる。前記アスコルビン酸の誘導体としては、アスコルビン酸リン酸エステル及び/又はその塩、アスコルビン酸グルコシドの様なアスコルビン酸の配糖体及び/又はその塩、アスコルビン酸脂肪酸エステル及び/又はその塩などが好ましく例示できる。これらの美白剤、抗炎症剤の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。美白剤は唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。美白剤の好ましい含有量は、総量で、化粧料全量に対して、0.1〜10質量%であり、より好ましくは、0.2〜5質量%である。抗炎症剤は唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。本発明の化粧料に於ける抗炎症剤の好ましい含有量は、総量で、化粧料全量に対して0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.02〜1質量%である。また、本発明の化粧料に於ける保湿成分の好ましい含有量は、総量で、化粧料全量に対して0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0015】
以上のようにして調製される本発明の皮膚外用剤は、フェルラ酸糖エステルを使用することにより、効果的にUV−A、UV−Bを吸収するとともに、チロシナーゼの阻害作用により皮膚中におけるメラニン産生を抑制することにより、優れた美白作用を有するものである。また、本皮膚外用剤は、高い水溶性を有するフェルラ酸糖エステルを用いているため、フェルラ酸では高濃度での配合が困難であった化粧水等、さまざまな剤形での使用が可能である。
【0016】
かくして得られる本発明の皮膚外用剤の有効性についての結果は次の通りである。
【0017】
(実施例1:フェルラ酸グルコースエステルの調製)
フェルラ酸グルコースエステルを、(特許文献2)実施例8に記載のスクロースホスホリラーゼを用いる方法に準じて調製した。すなわち、フェルラ酸0.5gおよびスクロース20gを400mlの蒸留水に溶解し、5N
NaOHで一旦pHを7.0に調整し、フェルラ酸を完全に溶解した後、5N HClでpH4.6に調整した。この溶液にSP活性10000単位を含有する(特許文献5)の実施例1.1に記載の方法にて調製した組換えStreptococcus
mutansスクロースホスホリラーゼ溶液5mlを添加した。上記溶液を40℃において10時間反応させた。なお反応の進行に伴いpHの上昇が起きることから、5N HClを用いて反応液のpHが4.8を超えないように調整を行った。分析反応液の分析については、HPLCにより以下の条件で分析を行った結果、フェルラ酸グルコースエステルが生成されたことが確認された。
【0018】
[HPLCによる分析条件]
カラム:Lichrospher
100 RP18、内径4.0mm、長さ250mm
流速:0.8ml/分
移動相:水/MeOH/85%リン酸溶液(和光純薬)=85/15/0.3
検出波長:280nm。
【0019】
得られた酵素反応液をあらかじめ蒸留水で平衡化したアンバーライトXAD−7カラムに供し、400mLの蒸留水で洗浄後、500mLの50%アセトンで溶出した。得られた50%アセトン画分は減圧濃縮にてアセトンを除去した後、塩酸を加えてpH3に調整し、酢酸エチルによる液相−液相抽出を行った。この操作によりフェルラ酸が完全に除去された。酢酸エチル抽出での水画分から酸を除去するため、再度蒸留水で平衡化したアンバーライトXAD−7カラムに供し、水400mLで洗浄後、50%アセトンで溶出した。溶出液からアセトンを減圧濃縮にて除去したのち凍結乾燥を行った結果、淡黄色のフェルラ酸グルコースエステル粉末0.2gを得た。
得られた粉末について、KOHを用いたアルカリ加水分解反応および分解物の定量を行った結果、得られたフェルラ酸グルコースエステルはフェルラ酸1分子とグルコース1分子がエステル結合したものであることが確認された。
【0020】
(実施例2:フェルラ酸グルコースエステルのUV吸収効果)
フェルラ酸および実施例1で得られたフェルラ酸グルコースエステルをそれぞれ100mMリン酸緩衝液(pH7.0)あるいは100mM酢酸緩衝液(pH5.5)に50μMとなるよう溶解し、BECKMAN
DU600を用いて全波長吸収測定を行った。pH7での結果を図1、pH5.5での結果を図2に示す。どちらのpHにおいてもフェルラ酸グルコースエステルではフェルラ酸と比較して長波長側に吸収のシフトが認められ、特にUV−A領域の吸収性が向上していた。このようにフェルラ酸糖エステルはフェルラ酸と比べ、水溶液として用いる際にもバランスの良い紫外線吸収作用を有していることが明らかとなった。
【0021】
(実施例3:フェルラ酸グルコースエステルの抗酸化作用)
実施例1で得られたフェルラ酸グルコースエステルを10mMの濃度となるようジメチルスルホキシドに溶解してサンプル溶液とし、このサンプル溶液のSOD作用についてSODテストワコー(和光純薬製)を用いてアッセイを行った。SOD活性はNBT還元阻害率として評価した。その結果、対照区(フェルラ酸糖エステル無添加)に比べフェルラ酸糖エステルはNBT還元を約7%阻害し、SOD活性を有することが確認できた。
【0022】
(実施例4:フェルラ酸グルコースエステルの水溶性)
実施例1で得られたフェルラ酸グルコースエステル約80mgを200μLの蒸留水に加えたところ、完全に溶解し、非常に粘性のある液体となった。この溶解液の10万倍蒸留水希釈液と0.001%フェルラ酸グルコースエステル水溶液の300nmの吸光度を比較した結果、上記溶解液のフェルラ酸グルコースエステル濃度は38.5%であることがわかった。フェルラ酸は室温ではほとんど水には溶解せず、70℃の温水にも約0.6%しか溶解しないことが知られていることから、フェルラ酸を糖エステル化することにより、水への溶解性が劇的に向上したことが確認された。
【0023】
(実施例5:フェルラ酸グルコースエステルのチロシナーゼ阻害作用)
チロシナーゼ活性を以下の方法により測定した。40μLの1mMフェルラ酸グルコースエステル水溶液にB16マウスメラノーマ細胞由来チロシナーゼ15μLおよび1Mリン酸緩衝液(pH6.8)5μLを加え37℃にて10分間プレインキュベートした。さらに、8.3mM
L−DOPA溶液40μLを加え、37℃にて10分間反応した。反応前後の吸光度(475nm)を測定し、酵素阻害活性を計算した。

酵素阻害活性=((T1−T2)/T1)×100(%)

T1 = 検体未添加溶液の10分間後と0秒後の吸光度の差
T2 = 検体を加えた溶液の10分間後と0秒後の吸光度の差

検討の結果を表1に示すが、これにより本発明皮膚外用剤の有効成分であるフェルラ酸グルコースエステルはメラニン色素を生成させる酵素チロシナーゼの活性を阻害し、皮膚の白色化に効果を示すことがわかる。
【0024】


【0025】
(実施例6:フェルラ酸グルコースエステルのヒト皮膚線維芽細胞増殖促進効果)
ヒト皮膚由来線維芽細胞「NB1RGB」(理研細胞バンクより分譲)を1ウェル当たり2.5×10個となるように96穴マイクロプレートに播種し、牛胎児血清4容量%を添加したDMEMにて18時間培養した後、培地を、実施例1で得られたフェルラ酸糖エステルを最終濃度が0.1mM, 0.4mM及び2mMとなるように添加した牛胎児血清4容量%含有DMEMに交換し、さらに18時間培養した。18時間培養後の細胞数をテトラカラーワンアッセイキット(生化学工業製)を用いて測定した。その際、フェルラ酸糖エステルを添加しない培地での培養区を対照とした。結果は、対照区における細胞量を100として表2に示した。


フェルラ酸糖エステルの濃度依存的にヒト皮膚由来線維芽細胞の増殖が促進されることが確認できた。
【0026】
(実施例7:ヒト皮膚線維芽細胞のコラーゲン産生促進効果)
ヒト皮膚由来線維芽細胞「NB1RGB」(理研細胞バンクより分譲)を1ウェル当たり2.5×10個となるように96穴マイクロプレートに播種し、牛胎児血清4容量%を添加したDMEMにて18時間培養した後、培地を、実施例1で得られたフェルラ酸糖エステルを最終濃度が2mMおよび4mMとなるように添加した牛胎児血清4容量%含有DMEMに交換し、さらに3日間培養した。培養終了後の培地を回収し、培養上清中に含まれるコラーゲン量を、市販の定量用キット(Sircol
collagen assay kit)を用いてそれぞれ定量した。その際、フェルラ酸糖エステルを添加しないで培養した系を対照区とした。結果は、対照区におけるコラーゲン産生量を100として表3に示した。


【0027】
(実施例8:フェルラ酸グルコースエステル配合ジェルの調製)
下記表4に示す配合部Aを攪拌し溶解する。続いて配合部Bを攪拌し溶解する。配合部Bを配合部Aに加え攪拌した後、配合部Cを加え攪拌した。


【0028】
(実施例9:有色モルモットにおけるフェルラ酸グルコースエステル配合ジェルの紫外線惹起色素沈着抑制効果試験)
メラニン色素産生細胞を持つ有色モルモット(Weiser Maples、5週齢、雄)の背部を2cm×2cmの面積で毛剃りし、実施例5において得られたフェルラ酸グルコース配合ジェルを一日あたり30mgずつ1日1回、5日/週(月曜日〜金曜日)、塗布した。塗布後、塗布開始日(水曜日)および、2、5、7、9日後(金曜日、次週の月曜日、水曜日、金曜日)にそれぞれUV−Aを5J/cm3、UV−Bを12mJ/cm3照射した。モルモット皮膚でのメラニン産生の指標として色差計を用いて皮膚の明度(L*値)を測定し、メラニン産生による試験開始日からの明度の低下(ΔL*値)を比較した。フェルラ酸グルコースエステルを含まない基剤のみを塗布した群をコントロール区として比較を行った。
その結果、フェルラ酸グルコースジェル塗布区は試験の全期間を通じてコントロールジェル塗布区よりも皮膚の黒色化が抑制されていた。試験終了時のΔL*値はコントロール区が−10.0。であったのに対し、フェルラ酸グルコースエステルジェル塗布区は−8.5であった。
図3に、0日後(水曜日)、5日後(月曜日)、7日後(水曜日)、9日後(金曜日)および12日後(月曜日)に測定したΔL*値の絶対値を示す。以上の結果により、フェルラ酸グルコースエステルが、紫外線により惹起される色素沈着を抑制できることが確認された。
【0029】
下記、処方に従い常法にて化粧料を調製した。
【0030】
応用例1(化粧水)



【0031】
応用例2(クリーム)


【0032】
応用例3(乳液)


【産業上の利用可能性】
【0033】
皮膚外用剤にフェルラ酸糖エステルを配合することにより、紫外線による皮膚への刺激を低減するとともに、メラニン合成の抑制により、しみ、ソバカスなどの各種色素沈着の改善又は防止効果に優れた本発明皮膚外用剤が実現される。しかもフェルラ酸糖エステル水溶性が高いことから、水系製剤など種々の剤形での有効な本皮膚外用剤の開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1はフェルラ酸グルコースエステル水溶液のpH7における吸収曲線を示す。
【図2】図2はフェルラ酸グルコースエステル水溶液のpH5.5における吸収曲線を示す。
【図3】図3は、実施例6の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェルラ酸糖エステルを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
フェルラ酸糖エステルの糖部分がグルコースであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−37251(P2010−37251A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200709(P2008−200709)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】