説明

皮膚外用剤

【課題】トラネキサム酸を配合した皮膚外用剤においては、トラネキサム酸は非常に結晶性が強いため、容器の口元に付着した製剤が経時で蒸発乾固し硬い結晶が析出する。特にディスペンサー容器に充填され、容器口元で結晶が固化した場合は問題が多い。現在は容器形態を工夫することで本課題に対応しているが、本発明は中味基剤からの根本的な解決を目的とし、容器口元でトラネキサム酸の結晶析出の少ない皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【解決手段】下記成分(A)〜(E)を配合した乳化組成物からなる皮膚外用剤において、成分(D)の酸により当該皮膚外用剤のpHを5.5以下に調製したことを特徴とする皮膚外用剤。
(A)トラネキサム酸
(B)油分
(C)PEG−60水添ヒマシ油
(D)有機酸及び/又は無機酸
(E)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトラネキサム酸を配合した乳化組成物からなる皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、トラネキサム酸を配合し、PEG−60水添ヒマシ油を界面活性剤とする乳化系組成物において、有機酸及び/又は無機酸を用いて製剤のpHを5.5以下に調製することにより、トラネキサム酸の結晶生成を抑制することを目的とする皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸は美白剤等の薬剤として皮膚外用剤に配合されるが、非常に結晶性が強く、容器の口元に付着した皮膚外用剤中のトラネキサム酸が経時で蒸発乾固し、硬い結晶が析出固化する現象が問題となっている。この問題点は、トラネキサム酸を含有する皮膚外用剤を特にディスペンサー容器に充填する場合に重要な技術的課題となる。
【0003】
現在はかかる問題に対して、容器形態を工夫することで本課題に対応しているが、中味基剤からの根本的な解決策が要望されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、トラネキサム酸、油分、PEG−60水添ヒマシ油を含む化粧料が開示されている(処方例1、化粧水)。しかしながら、上述したトラネキサム酸の問題点は解決されておらず、トラネキサム酸特有の結晶化が抑制された処方とはなっていない。すなわち、ディスペンサー容器充填した場合に、その口元に付着した皮膚外用剤が経時で蒸発乾固し、トラネキサム酸の結晶を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−242326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、上述した観点からトラネキサム酸を配合した皮膚外用剤において、その特有の結晶化を抑制する方法について、容器形態からではなく新規処方の観点から鋭意研究した結果、特定の乳化剤により乳化した乳化組成物において酸を添加することにより、
トラネキサム酸特有の結晶化を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の目的は、トラネキサム酸を配合した皮膚外用剤において、当該皮膚外用剤がディスペンサー容器を始めとする容器の口元に付着した場合に、非常に結晶性が強いトラネキサム酸の結晶化を抑制できる皮膚外用剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分(A)〜(E)を配合した乳化組成物からなる皮膚外用剤において、成分(D)の酸により当該皮膚外用剤のpHを5.5以下に調製したことを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
(A)トラネキサム酸
(B)油分
(C)PEG−60水添ヒマシ油
(D)有機酸及び/又は無機酸
(E)水
【0009】
また、本発明は、前記皮膚外用剤がディスペンサー容器に充填され、容器口元で前記(A)トラネキサム酸の結晶析出を抑制したことを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トラネキサム酸を配合した皮膚外用剤においても、容器口元等でトラネキサム酸の結晶生成を効率的に抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、各pHにおいて、クエン酸、乳酸、塩酸によるトラネキサム酸の結晶析出率(%)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<(A)トラネキサム酸>
本発明に用いるトラネキサム酸はトランス−4アミノメチルシクロへキサンカルボン酸であり化粧料配合成分として公知の薬剤である。美白剤等として配合されることが多い。
【0013】
<トラネキサム酸の配合量>
皮膚外用剤中の配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.0001〜30質量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜10質量%である。
特に好ましくは1〜3質量%であり、この配合範囲においては、本願発明の皮膚外用剤をディスペンサー容器に充填しても製品として問題にならない程度にトラネキサム酸の結晶化を抑制できる。
【0014】
<(B)油分>
本発明に使用する油分は特に限定されない。例えば、液体油脂としては、例えば、アボカド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、スクワレン、ワセリン等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等);環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
なお、最も好ましい油分は、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ワセリン、ジイソステアリン酸グリセリル、水添ポリデセン、ジメチルポリシロキサンなどである。
【0015】
<油分の配合量>
皮膚外用剤中の配合量は、皮膚外用剤全量に対して1〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは3〜15質量%であり、最も好ましくは5〜15質量%である。油分は一種または二種以上が配合される。
【0016】
<(C)PEG−60水添ヒマシ油>
本発明に用いるPEG−60水添ヒマシ油は、化粧料に使用する公知の界面活性剤である。すなわち、本発明において、乳化組成物を製造するための界面活性剤であり、本発明は水中油型乳化組成物又は油中水型乳化化粧料のいずれかである。さっぱり感の使用性の観点から水中油型乳化組成物が好ましい。
【0017】
<PEG−60水添ヒマシ油の配合量>
皮膚外用剤中の配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.01〜5質量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。最も好ましくは、0.1〜2質量%である。
【0018】
<(D)有機酸及び/又は無機酸>
本発明に使用する有機酸及び/又は無機酸は、化粧料等の皮膚外用剤において、通常のpH調製に使用される有機酸又は無機酸である。
本発明において好ましくは、クエン酸、乳酸、塩酸であり、中でも、乳酸、塩酸が特に好ましい。本願発明の処方系において、これらの有機酸及び/又は無機酸により、トラネキサム酸の結晶化抑制効果を見出したのは本願発明者等が初めてであり、当該効果は当業者に予期せぬ顕著な効果である。
当該効果を「図1」を参照して説明する。皮膚外用剤(表1及び表2)のpHが6.2の場合(すなわち、pH調整剤を配合せずにpHが5.5を超えている比較例1)は、トラネキサム酸の結晶析出率は40%を超えてしまう。しかし、そのpHを5.5に調製すると、クエン酸又は塩酸の配合により、トラネキサム酸の結晶析出率は40%を下回る結果となる。
一方、そのpHを5.3に調製すると、乳酸又や塩酸の配合により、トラネキサム酸の結晶析出率は20〜25%となり、40%を大きく下回る結果となる。
また、そのpHが5.3以下の場合には、クエン酸よりも、乳酸及び塩酸の方がトラネキサム酸の結晶析出率の抑制効果が高い。
さらに、そのpHが5.2以下の場合には、クエン酸、乳酸、塩酸の全ての酸において、結晶析出率の格別顕著な抑制効果が認められた。
結晶化の発生は、経時での溶媒(水)の蒸散による飽和限界によって生じる。このため、製剤中の蒸散しない成分(保湿剤等)にトラネキサム酸を溶解させることで結晶化を抑制することが可能となる。親水性のトラネキサム酸は通常保湿剤には溶解しないが、塩型として極性を下げることで溶解が可能となる。塩型の形成には強酸が有用であり、塩酸がもっとも効果的であったのはこのためと考えられる。
【0019】
<有機酸及び/又は無機酸の配合量>
これらの有機酸及び/又は無機酸の配合量は、クエン酸や乳酸の場合には、皮膚外用剤全量に対して0.1〜1.0程度であり、塩酸の場合には10%塩酸にて0.5〜2.0程度である。調整する皮膚外用剤のpHによって配合量が適宜決定されるが、いずれにしても、皮膚外用剤のpHが市販のpHメーターにて5.5以下になるように配合量が決定される。
【0020】
<(E)水及び配合量>
水は精製水やイオン交換水を使用するのが好ましい。皮膚外用剤に配合する配合量は、皮膚外用剤全量に対して30〜95質量%が好ましく、最も好ましくは40〜90質量%である。
製品が水中油型乳化組成物か油中水型乳化組成物かによって、水の配合量は適宜決定される。
【0021】
<(F)増粘剤>
本発明の皮膚外用剤は、乳化安定性の点から増粘剤を配合することが好ましい。増粘剤としては、例えば、アラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、PVA、PVM、PVP、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、無水ケイ酸等が挙げられる。
最も好ましい増粘剤は、本発明の実施例で配合したジメチルアクリルアミドと2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体からなるミクロゲル増粘剤である。
【0022】
<増粘剤の配合量>
皮膚外用剤に配合する配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.001〜5質量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜3質量%であり、最も好ましくは0.01〜1質量%である。増粘剤は一種または二種以上が配合される。
【0023】
本発明の皮膚外用剤には上記した必須構成成分の他に通常化粧料等の皮膚外用剤に用いられる他の成分、例えば、粉末成分、保湿剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することが出来る。
本発明は、水中油型乳化組成物が好ましく、製品としては、ディスペンサー容器に充填する乳液が好ましい。
【実施例】
【0024】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における配合量は特に断りのない限り質量%で示す。
【0025】
表1及び表2に示す処方にて、常法により乳液(水中油型乳化組成物)を製造し、(D)有機酸及び/又は無機酸に、クエン酸、乳酸、塩酸を使用して、皮膚外用剤のpHを6.2〜4.8まで調製して、トラネキサム酸の結晶析出率を検討した。
【0026】
【表1】

*1:架橋型N,Nジメチルアクリルアミドジメチルアクリルアミド−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム共重合体は、実施例1〜12にて下記の合成例1の共重合体を使用した。なお、比較例1だけは無配合である。
【0027】
合成例1
ジメチルアクリルアミド(興人製)を35gと2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸(Sigma製)17.5gおよびメチレンビスアクリルアミド70mgを260gのイオン交換水に溶解し水酸化ナトリウムでpH=7.0に調節する。還流装置を備えた1000ml三つ口フラスコに、n-ヘキサン260gとポリオキシエチレン(3)オレイルエーテル(エマレックス503、日本エマルション製)8.7gおよびエポリオキシエチレン(6)オレイルエーテル(エマレックス506、日本エマルション製)17.6gを入れ混合溶解しN2置換する。この三つ口フラスコにモノマー水溶液を添加してN2雰囲気下で攪拌しながらオイルバスで65℃〜70℃に加熱する。系の温度が65℃〜70℃に達したところで系が半透明なマイクロエマルション状態になっていることを確認した後、過硫酸アンモニウム2gを重合系に添加し重合を開始する。重合系を65〜70℃に3時間攪拌しながら維持することでミクロゲルが生成する。重合終了後ミクロゲル懸濁液にアセトンを加えてミクロゲルを沈殿させ、引き続きアセトンで3回洗浄し、残存モノマーおよび界面活性剤を除去する。沈殿物は濾過後減圧乾燥し、白色粉末状のミクロゲル乾燥物を得る。
【0028】
【表2】

上記pHはpHメーターF-51(HORIBA製)により測定した。
粘度はB型粘度計(SHIBAURA SYSTEM CO. LTD製)により測定した。
【0029】
表2の結果を概略「図1」に示した。すなわち、実施例1、5、9の皮膚外用剤のpHが5.5である。実施例2、6、10の皮膚外用剤のpHが5.3である。実施例3、7、11の皮膚外用剤のpHが5.1〜5.2である。そして、実施例4、8、12の皮膚外用剤のpHが4.8〜5.1である。
図1から分かるように、皮膚外用剤のpHが5.5以下の場合には、トラネキサム酸の結晶析出率は40%を下回る結果となり、本願発明の顕著な効果となる。
すなわち、皮膚外用剤(表1及び表2)のpHが6.2の場合(有機酸及び/又は無機酸を配合せずに、そのpHが5.5を超えている比較例1)は、トラネキサム酸の結晶析出率は40%を超えてしまう。しかし、そのpHを5.5に調製すると、クエン酸又は塩酸の配合により、トラネキサム酸の結晶析出率は40%を下回る結果となる。
一方、そのpHを5.3に調製すると、乳酸又は塩酸の配合により、トラネキサム酸の結晶析出率は20〜25%となり、40%を大きく下回る結果となる。
また、そのpHが5.3以下に場合には、クエン酸よりも、乳酸及び塩酸の方がトラネキサム酸の結晶析出率の抑制効果が高い。
さらに、そのpHが5.2以下に場合には、クエン酸、乳酸、塩酸の全ての酸において、結晶析出率の格別顕著な抑制効果が認められた。
したがって、本発明により、トラネキサム酸結晶析出率が抑制されるので、ディスペンサー容器に充填した場合においても、その口元でトラネキサム酸結晶固化が減少するという顕著は効果が期待できる。
【0030】
以下に、本発明のその他の実施例を挙げる。いずれも、トラネキサム酸結晶析出率が抑制されるので、ディスペンサー容器に充填した場合においても、その口元でトラネキサム酸結晶固化が減少するという顕著は効果が期待できる。
【0031】
〔実施例13:乳液(水中油型乳化組成物)〕
配合成分 質量%
精製水 残余
エチルアルコール 5
グリセリン 5
ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 7
PEG400 1
カルボキシビニルポリマー 0.09
キサンタンガム 0.05
PEG−60水添ヒマシ油 0.5
バチルアルコール 0.1
ベヘニルアルコール 0.4
ワセリン 2
ジイソステアリン酸グリセリル 1
メチルポリシロキサン 2
水添ポリデセン 3
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.5
トラネキサム酸 2
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003
エデト酸2ナトリウム 0.02
フェノキシエタノール 0.5
(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー
0.4
乳酸 0.5
[製造方法]
70℃に加温した1部のグリセリン、ジプロピレングリコールに油相成分を加え、ホモミキサーにて混合した(油相)。一方、水溶性成分を精製水に溶解した(水相)。この水相に前述の油相を添加し攪拌混合を行った。
【0032】
〔実施例14:乳液(水中油型乳化組成物)〕
配合成分 質量%
精製水 残余
エチルアルコール 5
グリセリン 5
ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 7
PEG400 1
カルボキシビニルポリマー 0.09
キサンタンガム 0.05
PEG−60水添ヒマシ油 0.5
バチルアルコール 0.1
ベヘニルアルコール 0.4
ワセリン 2
ジイソステアリン酸グリセリル 1
メチルポリシロキサン 2
水添ポリデセン 3
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.5
トラネキサム酸 2
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003
エデト酸2ナトリウム 0.02
フェノキシエタノール 0.5
(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー
0.4
塩酸 0.17
[製造方法]
70℃に加温した1部のグリセリン、ジプロピレングリコールに油相成分を加え、ホモミキサーにて混合した(油相)。一方、水溶性成分を精製水に溶解した(水相)。この水相に前述の油相を添加し攪拌混合を行った。
【0033】
〔実施例15:乳液(水中油型乳化組成物)〕
配合成分 質量%
精製水 残余
エチルアルコール 5
グリセリン 5
ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 7
PEG400 1
カルボキシビニルポリマー 0.09
キサンタンガム 0.05
PEG−60水添ヒマシ油 0.5
バチルアルコール 0.1
ベヘニルアルコール 0.4
ワセリン 2
ジイソステアリン酸グリセリル 1
メチルポリシロキサン 2
水添ポリデセン 3
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.5
トラネキサム酸 2
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003
エデト酸2ナトリウム 0.02
フェノキシエタノール 0.5
(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー
0.4
クエン酸 0.5
[製造方法]
70℃に加温した1部のグリセリン、ジプロピレングリコールに油相成分を加え、ホモミキサーにて混合した(油相)。一方、水溶性成分を精製水に溶解した(水相)。この水相に前述の油相を添加し攪拌混合を行った。
【0034】
〔実施例16:乳液(水中油型乳化組成物)〕
配合成分 質量%
精製水 残余
エチルアルコール 5
グリセリン 5
ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 7
PEG400 1
カルボキシビニルポリマー 0.09
キサンタンガム 0.05
PEG−60水添ヒマシ油 0.5
バチルアルコール 0.1
ベヘニルアルコール 0.4
ワセリン 2
ジイソステアリン酸グリセリル 1
メチルポリシロキサン 2
水添ポリデセン 3
ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン 1.5
トラネキサム酸 2
ピロ亜硫酸ナトリウム 0.003
エデト酸2ナトリウム 0.02
フェノキシエタノール 0.5
(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー
0.4
乳酸 0.2
[製造方法]
70℃に加温した1部のグリセリン、ジプロピレングリコールに油相成分を加え、ホモミキサーにて混合した(油相)。一方、水溶性成分を精製水に溶解した(水相)。この水相に前述の油相を添加し攪拌混合を行った。
【産業上の利用可能性】
【0035】
トラネキサム酸を配合した乳化組成物からなる皮膚外用剤において、製剤のpHを5.5以下に調製することにより、トラネキサム酸の結晶生成を抑制できる。
トラネキサム酸は非常に結晶性が強いため、容器の口元に付着した製剤が経時で蒸発乾固し硬い結晶が析出する。特にディスペンサー容器に充填され、容器口元で結晶が固化した場合は問題が多い。本発明によれば、容器口元でトラネキサム酸の結晶析出が少ない皮膚外用剤を提供することが出来る。したがって、製品としては、ディスペンサー容器に充填する皮膚外用剤として特に好ましく利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜(E)を配合した乳化組成物からなる皮膚外用剤において、成分(D)の酸により当該皮膚外用剤のpHを5.5以下に調製したことを特徴とする皮膚外用剤。
(A)トラネキサム酸
(B)油分
(C)PEG−60水添ヒマシ油
(D)有機酸及び/又は無機酸
(E)水
【請求項2】
前記皮膚外用剤がディスペンサー容器に充填され、容器口元で前記(A)トラネキサム酸の結晶析出を抑制したことを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。

【図1】
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【公開番号】特開2011−195460(P2011−195460A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60541(P2010−60541)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】