説明

皮膚外用剤

【課題】銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末を配合した皮膚外用剤において、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末に由来する白浮きを防止した皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】(A)銀イオン担持抗菌性ゼオライトと、(B)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールとポリブチレングリコールとの共重合体、又は、ポリプロピレングリコールの誘導体の何れかを含有することを特徴とする皮膚外用剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末を配合した皮膚外用剤において、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末に由来する白浮きを低減乃至防止した皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌性ゼオライトの粉末は、防腐剤や消臭剤として化粧料や医薬部外品等の皮膚外用剤に配合されている。
例えば、抗菌性ゼオライトを配合した抗菌性スプレー用組成物(特許文献1)や防臭化粧料(特許文献2)が開発されている。また、耐変色性を改良した防臭化粧料として、抗菌性ゼオライトにシリコーンを配合した技術が開示されている(特許文献3)。
防臭や消臭を目的とした抗菌性ゼオライトには、銀イオンを担持した抗菌性ゼオライトを使用することが多い(特許文献4、特許文献5)。
【0003】
一方、銀イオン担持抗菌性ゼオライトを配合した皮膚外用剤は、銀イオン担持抗菌性ゼオライトに由来する白浮きという問題が生じる。すなわち、銀イオン担持抗菌性ゼオライトを配合した皮膚外用剤を使用すると、塗布した身体部位に白さが目立つという白浮きの問題である。
銀イオン担持抗菌性ゼオライトに由来する白浮きを防止するために、特許文献6には、一定量のエタノールとグリセリンを配合する技術が開示されている。しかしながら、その効果は必ずしも十分ではなく、また、高温では、変臭や黒色のブツが発生するという問題点がある。
また、特許文献7には、銀イオン担持抗菌性ゼオライトを配合した制汗エアゾール化粧料に特定のアルキレンオキシド誘導体を配合することによって、使用後の白さが目立ち難い化粧料が開示されている。しかしながら、特許文献7はエアゾール化粧料に特定された技術に過ぎない。また、エアゾール化粧料ではなく、液状化粧料において、銀イオン担持抗菌性ゼオライトと特定のアルキレンオキシド誘導体とを組み合わせた場合は白浮きを防止することが出来ない。さらに特許文献7の制汗エアゾール化粧料には変臭という問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−250325号公報
【特許文献2】特開平8−26956号公報
【特許文献3】特開平8−92051号公報
【特許文献4】特開2004−307375号公報
【特許文献5】特開2010−159214号公報
【特許文献6】特開2009−234995号公報
【特許文献7】特開2004−149434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、上述した観点に鑑み、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末を配合した皮膚外用剤において、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末による白浮きを防止するため鋭意研究した結果、数平均分子量が700〜4000であるポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールとポリブチレングリコールとの共重合体、又は、ポリプロピレングリコールの誘導体を配合すると、塗布後の白さが目立たず、白浮きを低減乃至防止できる皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の目的は、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末を配合した皮膚外用剤において、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末に由来する白浮きを低減乃至防止した皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、(A)銀イオン担持抗菌性ゼオライトと、(B)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールとポリブチレングリコールとの共重合体、又は、ポリプロピレングリコールの誘導体の何れかを含有することを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記(B)ポリプロピレングリコールの誘導体が、数平均分子量が700〜4000のポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシプロピレンブチルエーテルの何れかであることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【0009】
さらに、本発明は、皮膚外用剤全量に対して、エタノールが30質量%以上含有されることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記皮膚外用剤が液状化粧料であって、ロールオン容器に充填された防臭化粧料であることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、前記皮膚外用剤が液状化粧料であって、エアゾール又はディスペンサー容器に充填されたミスト状防臭化粧料であることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、前記皮膚外用剤が液状化粧料であって、シートに含浸されたシート状防臭化粧料であることを特徴とする上記の皮膚外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果は、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末を配合した皮膚外用剤において、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末に由来する白浮きを低減乃至防止できることである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳述する。
【0015】
<(A)銀イオン担持抗菌性ゼオライト>
本発明に(A)成分として用いる銀イオン担持抗菌性ゼオライトは、ゼオライトのイオン交換可能な部分に抗菌性銀イオンを保持しているゼオライトの粉末が使用される。すなわち、ゼオライトのイオン交換可能なイオンの一部又は全部が抗菌性の銀イオンで置換されたゼオライトの粉末である。銀イオン担持抗菌性ゼオライトは常法によりゼオライトから容易に製造できる。
本発明においては、抗菌性銀イオンと共に、亜鉛イオンとアンモニウムイオンを担持したゼオライトが好ましい。本発明には市販品(セラメディックAJ10N:株式会社シナネンゼオミック)を使用できる。
【0016】
銀イオン担持抗菌性ゼオライトの粉末の平均粒径は10μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.1〜5μmである。また、平均粒径がこの範囲である場合に、その粒度分布において粒径が1μmを超えるものが20%以下であることが好ましい。
【0017】
ゼオライトは天然ゼオライト及び合成ゼオライトのいずれでもよい。ゼオライトは、一般に三次元骨格構造を有するアルミノシリケートであり、一般式としては、XM2/nO・Al23・YSiO2・ZH2Oで表示される。この一般式において、Mはイオン交換可能なイオンを表し、通常は1または2価の金属イオンである。nは(金属)イオンの原子価である。X及びYはそれぞれ金属酸化物、シリカ係数、Zは結晶水の数を表示している。
【0018】
ゼオライトの具体例としては、例えば、A−型ゼオライト、X−型ゼオライト、Y−型ゼオライト、T−型ゼオライト、高シリカゼオライト、ソーダライト、モルデナイト、アナルサイム、クリノプチロライト、チャバサイト、エリオナイト等を挙げることができる。これらのゼオライトのイオン交換容量は、A−型ゼオライト7meq/g、X−型ゼオライト6.4meq/g、Y−型ゼオライト5meq/g、T−型ゼオライト3.4meq/g、ソーダライト11.5meq/g、モルデナイト2.6meq/g、アナルサイム5meq/g、クリノプチロライト2.6meq/g、チャバサイト5meq/g、エリオナイト3.8meq/gである。いずれも抗菌性金属イオンやアンモニウムイオンでイオン交換するに十分の容量を有している。
【0019】
ゼオライト中のイオン交換可能なイオンは、例えば、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等である。また、これらのイオンに置換される抗菌性金属イオンは、例えば、銀、銅、亜鉛、水銀、錫、鉛、ビスマス、カドミウム、クロム、又はタリウムのイオンがあるが、本発明は銀イオンで交換されたものを使用する。
【0020】
抗菌性銀イオンは、抗菌性の観点からは、ゼオライト中に0.1〜15質量%含有されていることが好ましい。
例えば、銀イオン0.1〜15質量%と亜鉛イオンを0.1〜8質量%含有する抗菌性ゼオライトが好ましい。一方、アンモニウムイオンは、ゼオライト中に20質量%まで含有させることが好ましいが、ゼオライトの変色を有効に防止するという観点から、ゼオライト中0.5〜5質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。なお、質量%とは110℃乾燥基準のゼオライト中の質量百分率である。
【0021】
本発明において、銀イオン担持抗菌性ゼオライトは市販品を使用できる。抗菌性ゼオライトの製造方法としては、例えば、下記の如く調製される。すなわち、予め調製した銀イオン、亜鉛イオン等を含有する混合水溶液にゼオライトを接触させて、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンと上記イオンとを置換させる。接触は、10〜70℃、好ましくは40〜60℃で3〜24時間、好ましくは10〜24時間バッチ式又は連続式(例えば、カラム法)によって行うことができる。なお、上記混合水溶液のpHは3〜10、好ましくは5〜7に調整することが適当である。該調整により、銀の酸化物等のゼオライト表面又は細孔内への析出を防止できるので好ましい。また、混合水溶液中の各イオンは、通常いずれも塩として供給される。例えば、銀イオンは、硝酸銀、硫酸銀、過塩素酸銀、酢酸銀、ジアンミン銀硝酸塩、ジアンミン銀硫酸塩等である。亜鉛イオンは硝酸亜鉛(II)、硫酸亜鉛、過塩素酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等である。
【0022】
ゼオライト中の抗菌性銀イオンの含有量は、前記混合水溶液中の各イオン(塩)濃度を調整することによって、適宜制御することができる。前記混合水溶液中の銀イオン濃度を0.002M/l〜0.15M/lとすることによって、適宜、銀イオン含有量0.1〜5%の抗菌性ゼオライトを得ることができる。また、抗菌性ゼオライトがさらに亜鉛イオンを含有する場合、前記混合水溶液中の亜鉛イオン濃度は0.15M/l〜1.2M/lとすることによって、適宜、亜鉛イオン含有量0.1〜8%の抗菌性ゼオライトを得ることができる。抗菌性ゼオライトは、上記の混合水溶液以外に、各イオンを単独で含有する水溶液を用い、各水溶液とゼオライトとを逐次接触させることによって、イオン交換することもできる。各水溶液中の各イオンの濃度は、前記混合水溶液中の各イオン濃度に準じて定めることができる。
【0023】
イオン交換が終了したゼオライトは、十分に洗浄した後乾燥する。乾燥は105℃〜115℃又は減圧(1〜30Torr)下において70〜90℃で行うことが好ましい。
【0024】
<MQレジンにて表面処理を行った銀イオン担持抗菌性ゼオライト>
本発明においては、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末は、MQレジンにて常法により表面処理を行った疎水化処理粉末であることが好ましい。本発明において使用するMQレジンとは、SiO2単位(Q単位)と、R3SiO1/2単位(M単位)とからなる、部分的に架橋した公知の有機シリコーン樹脂(トリメチルシロキケイ酸)である。平均式(1)に示される構造を有し、そのM/Qモル比は0.7〜1.0のものである。
【0025】
[化1]
(R3SiO1/22・nSiO2 (1)
(式中、Rは一価炭化水素基であり、nは1〜5の数である。)
【0026】
MQレジンは、従来、撥水剤等としてファンデーション、アイクリーム、乳液、クリーム、サンスクリーン等の化粧品原料として単独で使用される他、化粧料用粉体の表面処理剤としても使用されている(特許第3378590号等)。
【0027】
また、本発明に用いるMQレジンの分子量は特に限定されないが、500〜10000の間にあることが好ましい。これは、分子量が500未満であると処理した粉末が凝集しやすいという欠点があり、10000を超えるとMQレジンの有機溶媒に対する溶解性が低下し粉体表面に均一に被覆できないという欠点があるためである。
【0028】
銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末に対するMQレジンの被覆方法は特に限定されない。例えば、抗菌性ゼオライトをヘンシェルミキサー等で攪拌しながら溶媒に溶解したMQレジンを添加混合後、溶媒を除去、乾燥することによって得られる。使用する溶媒は、MQレジンが溶解する揮発性有機溶媒であり、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、2−プロパノール、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が例示される。
【0029】
MQレジンの銀イオン担抗菌性ゼオライトに対する被覆量は、銀イオン担持抗菌性ゼオライトに対して、質量比で0.5質量%以上であり、使用性の観点から好ましくは0.5〜10質量%である。さらに好ましくは、1〜3質量%である。
【0030】
<(A)銀イオン担持抗菌性ゼオライトの配合量>
銀イオン担持抗菌性ゼオライトの配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは3〜7質量%である。製品形態に応じて適宜決定され、適する量が配合される。
【0031】
「(B)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールとポリブチレングリコールとの共重合体、又は、ポリプロピレングリコールの誘導体」
本発明において、白浮きを低減乃至防止するために配合される(B)成分は下記の通りである。下記(1)〜(3)の一種または二種以上の(B)成分が配合される。
(1)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコール
(2)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコールとポリブチレングリコールとの共重合体
(3)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコールの誘導体(具体的には、数平均分子量が700〜4000のポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシプロピレンブチルエーテル等)
【0032】
本発明において、数平均分子量は化粧品原料基準 第二版注解I(1984年 薬事日報社)の942頁に記載された方法で求めることが出来る。
【0033】
上記(1)〜(3)の成分はいずれも市販品を使用することが出来る。
(1)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコールとしては、数平均分子量が1000のニューポールPP-1000(三洋化成工業株式会社)、数平均分子量が2000のニューポールPP-2000(三洋化成工業株式会社)、数平均分子量が4000のニューポールPP-4000(三洋化成工業株式会社)などを好ましく使用できる。
(2)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコールとポリブチレングリコールとの共重合体としては、数平均分子量が700のPBG/PPG−9/1コポリマー(ポリブチレングリコールとポリプロピレングリコールが9:1の共重合体。ユニオールPB-700 日本油脂株式会社)を好ましく使用できる。
(3)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコールの誘導体としては、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシプロピレンブチルエーテルが好ましく使用される。
ポリオキシプロピレングリセリルエーテルとしては、数平均分子量が1000のニューポールGP-1000(三洋化成工業株式会社)、数平均分子量が4000のニューポールGP-4000(三洋化成工業株式会社)が好ましく使用できる。
また、ポリオキシプロピレンソルビットとしては、数平均分子量が700のニューポールSP-750(三洋化成工業株式会社)が好ましく使用できる。
さらに、ポリオキシプロピレンブチルエーテルとしては、数平均分子量が1200のニューポールLB-285(三洋化成工業株式会社)、平均分子量が1870のニューポールLB-625(三洋化成工業株式会社)が好ましく使用できる。
【0034】
上記(1)〜(3)の成分は、皮膚外用剤において、通常、保湿剤として配合される成分であるが、本発明においては、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末に由来する白浮きの低減乃至防止効果を発揮し、白浮き低減防止剤として配合される必須成分である。
【0035】
<「(B)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールとポリブチレングリコールとの共重合体、又は、ポリプロピレングリコールの誘導体の配合量>
上記(B)成分の配合量は、皮膚外用剤全量に対して0.1〜20質量%、好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。(B)成分の配合量は製品形態に応じて適宜決定され、適する量が配合される。
【0036】
本発明の皮膚外用剤には、上記した必須成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、通常化粧品や医薬部外品等の皮膚外用剤に配合される他の成分、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合し、目的とする剤型に応じて常法により製造することが出来る。
なお、本発明の剤型は限定されないが、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末が分散した液状の皮膚外用剤が好ましい。
特に、B成分の溶解性を上げたり、清涼感や乾きの早さを付与したりするという観点から、エタノールが、皮膚外用剤全量に対して少なくとも30質量%以上、好ましくは30質量%〜95質量%配合された液状の皮膚外用剤が好ましい。
【0037】
本発明の皮膚外用剤の製品形態は特に限定されない。例えば、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末が分散した液状化粧料を、(1)ロールオン容器に充填された防臭化粧料、(2)エアゾール又はディスペンサー容器に充填されたミスト状防臭化粧料、(3)不織布等のシートに含浸されたシート状防臭化粧料などの製品形態が好ましく、これらの製品は常法により製造される。
上記の製品形態以外にも、パウダータイプ、プレストパウダータイプ、スチックタイプなどの防臭化粧料が、本発明の皮膚外用剤として常法により製造される。
【実施例】
【0038】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。配合量は特に断りのない限り全量に対する質量%である。
【0039】
「表1」に示す処方にて、銀イオン担持抗菌性ゼオライトが分散した液状化粧料を常法により製造し、本発明の効果である塗布後の白浮きを下記の評価方法により確認した。
また、黒色の発生についても、下記の評価方法により確認した。
なお、「表2」〜「表5」は、「表1」の液状化粧料に配合されるB成分(実施例)、又は、B成分以外の各種保湿剤(比較例)のみを記載して、これらを配合した場合の評価を示している。
【0040】
「白浮き防止の評価」
「表1」〜「表5」の皮膚外用剤を、黒色の人工皮膚上の1.5cm×1.5cmの範囲に、マイクロピペットで10μLを塗布した。2時間後の白浮きを目視にて確認し、以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:白浮きが全く認められない。
○:若干の白浮きが認められるが、比較例1よりも白浮きが大幅に低減しており、許容範囲である。
×:白浮きが明確に認められる。
【0041】
「黒色のブツの評価」
「表1」〜「表5」の皮膚外用剤を60℃の恒温槽に1週間保存した。60℃の恒温槽に1週間保存後の皮膚外用剤に、黒色のブツが存在するかについて目視にて観察し、以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:黒色のブツが認められない。
×:黒色のブツが認められる。










【0042】
【表1】

*1:銀イオン担持抗菌性ゼオライトのMQレジン処理は、抗菌性ゼオライトの粉末(銀イオン・亜鉛イオン・アンモニウムイオン担持ゼオライト(セラメディックAJ10N:株式会社シナネンゼオミック)50gを、小型粉砕機に入れ、攪拌しながら溶媒に溶解したMQレジン処理剤を添加した。添加後、約3分攪拌し、得られた粉末を乾燥機中120℃、24時間乾燥した。なお、用いたMQレジンは、M単位:(CH33SiO1/2と、Q単位:SiO2とからなるトリメチルシロキシケイ酸である。
【0043】
「白浮きの低減・防止効果」
【表2】

【表3】


【0044】
「黒色のブツの発生(60℃ 1W)」
【表4】

【表5】

【0045】
上記で使用したB成分、B成分以外の各種保湿剤として使用した市販品は以下の通りである。
【表6】




【表7】

【0046】
上記「表2」〜「表5」の結果から、本発明の実施例は、白浮きの防止効果に優れていると同時に、黒色のブツの発生についても優れた効果を有している。
これに対して、本発明の(B)成分の代わりに、ポリプロピレングリコール200、ポリプロピレングリコール400、POE・POPジメチルエーテル等の保湿剤を配合した比較例は、白浮きの防止効果がなく、また、黒色のブツが発生する場合がある。
【0047】
以下に、本発明の皮膚外用剤の処方例を挙げる。いずれも、白浮きの低減・防止効果に優れていると同時に、黒色のブツの発生がない化粧料である。
【0048】
「処方例1:ロールオン容器に適する化粧料(液状化粧料)」
配合成分 質量%
エタノール 残余
水 5
銀イオン担持抗菌性ゼオライト 1
ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
グルタチオン 0.5
パラフェノールスルホン酸亜鉛塩 0.5
ポリプロピレングリコール(数平均分子量4000) 10
【0049】
「処方例2:ロールオン容器に適する化粧料(液状化粧料)」
配合成分 質量%
エタノール 残余
水 5
銀イオン担持抗菌性ゼオライト 10
ヒドロキシプロピルセルロース 0.2
グルタチオン 0.5
パラフェノールスルホン酸亜鉛塩 0.5
ポリプロピレングリコール(数平均分子量2000) 10
【0050】
「処方例3:エアゾール又はディスペンサー容器に充填されたミスト状防臭化粧料」
配合成分 質量%
エタノール 残余
水 45
銀イオン担持抗菌性ゼオライト 5
シリカ 1
グルタチオン 0.5
パラフェノールスルホン酸亜鉛塩 0.5
ポリオキシプロピレングリセリルエーテル
(数平均分子量1000) 10
【0051】
「処方例4:シートに含浸されたシート状防臭化粧料」
配合成分 質量%
エタノール 残余
水 40
銀イオン担持抗菌性ゼオライト 1
タルク 3
グルタチオン 0.5
パラフェノールスルホン酸亜鉛塩 0.5
ポリオキシプロピレンブチルエーテル
(数平均分子量1870) 5
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末を配合した皮膚外用剤において、銀イオン担持抗菌性ゼオライト粉末に由来する白浮きを低減乃至防止した皮膚外用剤を提供できる。
さらに本発明の皮膚外用剤は、黒色のブツの発生の問題もないので、製品として問題がない新規有用な皮膚外用剤を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銀イオン担持抗菌性ゼオライトと、(B)数平均分子量が700〜4000のポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールとポリブチレングリコールとの共重合体、又は、ポリプロピレングリコールの誘導体の何れかを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
前記(B)ポリプロピレングリコールの誘導体が、数平均分子量が700〜4000のポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシプロピレンブチルエーテルの何れかであることを特徴とする請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
皮膚外用剤全量に対して、エタノールが30質量%以上含有されることを特徴とする請求項1又は2記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
前記皮膚外用剤が液状化粧料であって、ロールオン容器に充填された防臭化粧料であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
前記皮膚外用剤が液状化粧料であって、エアゾール又はディスペンサー容器に充填されたミスト状防臭化粧料であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
前記皮膚外用剤が液状化粧料であって、シートに含浸されたシート状防臭化粧料であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2012−206991(P2012−206991A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74581(P2011−74581)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【特許番号】特許第4959010号(P4959010)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】