説明

皮膚外用医薬乳化製剤

【課題】ウフェナマートを安定に配合し、使用感(べたつき感がない、ハリ感、ふっくら感)に優れ、かつ低温〜高温の幅広い温度域において長期保存安定性に優れるクリーム状の皮膚外用医薬乳化製剤を提供する。
【解決手段】(a)ウフェナマートと、(b)グリセリン脂肪酸モノエステルと、(c)ポリオキシエチレン(2〜50モル付加)アルキルエーテルを含み、(b)成分/(c)成分=0.1〜1.3(質量比)の割合で含有する皮膚外用医薬乳化製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用医薬乳化製剤に関する。さらに詳しくは、ウフェナマートを安定に配合し、使用感(べたつき感がない、ハリ感、ふっくら感)に優れ、かつ低温〜高温の幅広い温度域において長期保存安定性に優れるクリーム状の皮膚外用医薬乳化製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性消炎鎮痛剤であるウフェナマート(=フルフェナム酸ブチル)は、水難溶性薬剤であることから、一般に油性基剤に溶解させて皮膚外用剤に配合される。その皮膚外用剤の剤型としてはクリーム・乳液等の乳化型外用剤〔=水中油型(O/W型)若しくは油中水型(W/O型)エマルジョン製剤〕が主である。
【0003】
従来、ウフェナマート等の水難溶性薬剤を水中油型乳化製剤中に安定に配合する技術として、製剤を微細エマルジョン化する方法が知られている(例えば特許文献1〜2等)。また特許文献3には、コンドロイチンの多硫酸エステル化合物等の薬効成分を含有する乳化型製剤を塗布した後の白化を抑えるために、シリコーン油や誘電率が4.0以上の油分を配合した乳化組成物が記載され、薬効成分としてコンドロイチンの多硫酸エステル化合物の他にウフェナマート等が記載されている([0019])。
【0004】
このように、従来は水中油型乳化製剤の安定性を、乳化粒子の大きさをコントロールすること等で解決していたが、乳化剤(界面活性剤)の組合せ配合による製剤安定性への影響について記載・考察した文献は、本発明者らが知る限りにおいてこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−97859号公報
【特許文献2】特開2002−193790号公報
【特許文献3】特開2002−205937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたもので、ウフェナマートを安定に配合し、使用感(べたつき感がない、ハリ感、ふっくら感)に優れ、かつ低温〜高温の幅広い温度域において長期保存安定性に優れるクリーム状の皮膚外用医薬乳化製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、(a)ウフェナマートと、(b)グリセリン脂肪酸モノエステルと、(c)ポリオキシエチレン(2〜50モル付加)アルキルエーテルを含み、(b)成分/(c)成分=0.1〜1.3(質量比)の割合で含有する皮膚外用医薬乳化製剤を提供する。
【0008】
また本発明は、さらに(d)高級脂肪族アルコールを含む固形〜半固形油分を含む、上記皮膚外用医薬乳化製剤を提供する。
【0009】
また本発明は、さらに(e)ポリビニルアルコールを主成分とする水溶性高分子を含有する、上記皮膚外用医薬乳化製剤を提供する。
【0010】
また本発明は、(e)成分中にさらにカルボキシビニルポリマーを含む、上記皮膚外用医薬乳化製剤を提供する。
【0011】
また本発明は、(e)成分中にさらに多糖類系水溶性高分子を含む、上記皮膚外用医薬乳化製剤を提供する。
【0012】
また本発明は、さらにビタミンA油および/またはトコフェロール酢酸エステルを含有する、上記皮膚外用医薬乳化製剤を提供する。
【0013】
また本発明は、水中油型乳化皮膚外用医薬乳化製剤である、上記皮膚外用医薬乳化製剤を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、ウフェナマートを安定に配合し、使用感(べたつき感がない、ハリ感、ふっくら感)に優れ、かつ低温〜高温の幅広い温度域において長期保存安定性に優れるクリーム状の皮膚外用医薬乳化製剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。なお以下においてPOEはポリオキシエチレンを、POPはポリオキシプロピレンを、POBはポリオキシブチレンを、それぞれ示す。
【0016】
本発明に用いられる(a)成分としてのウフェナマートは、非ステロイド系抗炎症剤として知られ、化学式C18183NO2で示され、化学名はブチルO−[〔3−(トリフルオロメチル)フェニル〕アミノ]−ベンゾエートである。ウフェナマートは、炎症・痒みを発症させる種々の皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、脂漏性湿疹、急性湿疹、慢性湿疹、おむつ皮膚炎、口囲皮膚炎、帯状疱疹など等)に対して効能・作用があることが知られている。
【0017】
(a)成分の配合量は、特に限定されるものでなく、薬効発現に十分な量であればよく、さらに、治療目的、患者の年齢、体重、疾病の進行度などに応じて適宜増減されるが、通常、本発明皮膚外用医薬乳化製剤全量中に概ね1〜10質量%配合するのが好ましく、より好ましくは1〜6質量%である。1質量%未満では(a)成分の薬効を十分発揮することが難しく、一方、10質量%を超えて配合すると資源の有効利用の観点や製剤安定性上もやや不安定となり、好ましくない。
【0018】
本発明では乳化剤として(b)グリセリン脂肪酸モノエステルと(c)ポリオキシエチレン(2〜50モル付加)アルキルエーテルを含み、(b)成分/(c)成分=0.1〜1.3(質量比)の割合で配合する。これにより(a)成分の安定配合に加え、使用性効果、製剤の保存安定性を得ることができる。
【0019】
(b)成分を構成する脂肪酸としては、炭素原子数8〜24の飽和または不飽和の脂肪酸が好ましい。また、直鎖状または分岐状いずれでもかまわない。脂肪酸の具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、2−パルミトイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸、イソステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。本発明では炭素数12〜20の脂肪酸グリセリンモノエステルが好ましいく、特にモノステアリン酸グリセリンが好ましい。(b)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
(c)成分におけるアルキル基として炭素数12〜22のアルキル基を含むものが好ましく、ラウリル基、セチル基、オレイル基、ステアリル基、ベヘニル基等を含むものが好ましい。(c)成分の具体例としては、POEベヘニルエーテル、POEステアリルエーテル、POEセチルエーテル等が挙げられる。中でも、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル等が特に好ましい。(c)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
(b)成分と(c)成分の配合量は、(b)成分/(c)成分=0.1〜1.3(質量比)であり、好ましくは0.1〜1.0(質量比)である。(b)成分と(c)成分の配合比が上記範囲を逸脱すると保存安定性、使用感(特にはべたつき感)に劣る。(b)成分と(c)成分の合計配合量は0.5〜3質量%とするのが好ましく、より好ましくは1〜2質量%である。(b)成分と(c)成分の合計配合量を上記範囲内とすることで、特に保存安定性をより一層効果的に向上させることができる。
【0022】
本発明ではさらに(d)高級脂肪族アルコールを含む固形〜半固形油分を配合することができる。高級脂肪族アルコールとしては、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、バチルアルコール等の常温で固体の高級脂肪族アルコールが例示される。(d)成分を配合した場合、高級脂肪族アルコールと親水性界面活性剤が水中で形成する会合体をとり、十分に固化し、クリーミングを防ぐゲルを形成する。該ゲルは〔(b)成分および(c)成分〕:(d)成分=1:3(モル比)で形成される。したがって高級脂肪族アルコールは該ゲル形成に必要な量含まれていればよいが、それよりも過剰量含まれているのが好ましい。(d)成分中に含まれる高級脂肪族アルコール以外の固形〜半固形油分としては、一般に皮膚外用剤に用いられる常温で固形若しくは半固形の油性成分であれば特に限定されるものでなく、例えば、固形パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、バリコワックス、ポリエチレンワックス、シリコンワックス、カルナウバロウ、ビーズワックス(=ミツロウ)、キャンデリラロウ、ジョジョバロウ、セラックロウ、鯨ロウ、モクロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン等のロウ類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の常温で固体の高級脂肪酸類;カカオ脂、硬化ヒマシ油、硬化油、水添パーム油、パーム油、硬化ヤシ油、ワセリン、各種の水添加動植物油脂、脂肪酸モノカルボン酸ラノリンアルコールエステル等が挙げられる。本発明では、使用性の点から、特にはマイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ワセリン等の固形若しくは半固形の炭化水素油を用いることが好ましい。
【0023】
(d)成分を配合する場合、その総配合量は、ハリ感、ふっくら感向上等の点から、本発明皮膚外用医薬乳化製剤中に1〜20質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜10質量%である。
【0024】
本発明ではさらに、ハリ感向上のために(e)ポリビニルアルコールを主成分として含む水溶性高分子を配合することができる。ポリビニルアルコールは、具体的には、(e)成分中に50質量%以上の割合で配合するのが好ましく、より好ましくは60質量%以上である。ポリビニルアルコールを主成分として含有させることにより、ハリ感、ふっくら感を効果的に得ることができる。
【0025】
(e)成分にはさらにカルボキシビニルポリマーを含有することができる。カルボキシビニルポリマーを配合することにより、ハリ感をより一層効果的に得ることができる。
【0026】
(e)成分にはポリビニルアルコールの他にも多糖類系水溶性高分子を含有することができる。多糖類系水溶性高分子としては、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、サクシノグリカン、カゼイン、ゼラチン、サクシノグルカン等が挙げられる。本発明では特に、ふっくら感向上等の点からキサンタンガムが好ましく用いられる。キサンタンガムを配合する場合、(e)成分に対し5〜20質量%程度の割合で配合するのが好ましい。
【0027】
(e)成分を配合する場合、その総配合量は本発明皮膚外用医薬乳化製剤中に0.4質量%以上の割合で配合するのが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。(e)成分を0.4質量%以上の割合で配合することにより、十分なハリ感をより効果的に得ることができる。なお配合量上限は特に限定されるものでないが、使用感等の点から1.0質量%程度以下にするのが好ましい。配合量が多すぎるとべたつき感やヨレ等を生じやすくなる。
【0028】
本発明では油分として上記固形〜半固形油分以外にも液状油分を配合することができる。液状油分は、常温(25℃)で揮発しない流動油分をいう。具体的には、例えば、流動パラフィン、スクワラン、オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン(=軽質流動パラフィン)などの炭化水素油;2−エチルヘキサン酸トリグリセリド、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール、2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソノナン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジエチルなどのエステル油;ホホバ油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、綿実油、茶実油、サフラワー油、米糠油などの天然系植物油;デカメチルペンタシクロシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン油、などが挙げられるが、これら例示に限定されるものでないことはもちろんである。
【0029】
なお本発明では薬剤成分として(a)成分のみならず、他の油溶性薬剤成分(例えば、ビタミンA油、トコフェロール酢酸エステル等)を併せて配合した場合でも、これら薬剤成分も安定して配合することができる。
【0030】
本発明皮膚外用医薬乳化製剤は、水中油型、油中水型のいずれの乳化型も取り得るが、好ましくは水中油型である。
【0031】
本発明の皮膚外用医薬乳化製剤は、常法により調製することができ、乳化の方法は特に限定されるものでない。例えば水中油型乳化型製剤の場合、油相(内相)と水相(外相)を、それぞれ70℃程度に加温し、加温した油相を水相に徐々に添加して、乳化機で乳化し、その後、室温まで冷却する等の方法が挙げられるが、これに限定されるものでない。
【0032】
水中油型乳化皮膚外用剤では通常、油相(内相)の配合量は皮膚外用剤全量中に10〜30質量%程度配合される。その理由は30質量%を超えて配合すると乳化不良を起こし、安定性上好ましくないからである。しかるに本発明では、特に(b)成分と(c)成分を上記配合比で配合することにより、油相(内相)配合量を30質量%を超えて高配合しても硬度が低くならず、クリーム状を維持し、薬剤安定性に優れるという効果を奏する。
【0033】
本発明の水中油型皮膚外用医薬乳化製剤には、上記した配合成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲内で通常皮膚外用剤に用いられる他の任意添加成分、例えば、界面活性剤((b)成分、(c)成分以外)、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、粉末成分、糖、アミノ酸およびその塩、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0034】
その他の配合可能成分としては、例えば、防腐剤(メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等);消炎剤(例えば、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)、抗ヒスタミン剤(例えば塩酸ジフェンヒドロミン)等が挙げられる。ただしこれら例示に限定されるものでない。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限りすべて質量%である。
【0036】
まず初めに、本実施例で用いた試験方法、評価方法について説明する。
【0037】
[保存安定性(1日後、4週間後)]
各試料を調製後、1日間経過後(25℃)の性状(光沢、弾性化の有無)について目視により外観を観察し、下記評価基準に基づき評価した。
【0038】
また各試料を調製後、−5℃、0℃、50℃の恒温槽に4週間放置し、性状(光沢、弾性化の有無)について目視により外観を観察し、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
○:表面に光沢があり、弾性化せずやわらかな性状であった
○△:表面の光沢がややなく、やや弾性化がみられたが、実用上問題がない程度であった
△:表面の光沢がなく、やや弾性化した性状であった
×:表面の光沢がなく、弾性化した性状であった
【0039】
[使用感(ハリ感)]
女性専門パネル(10名)により、各試料を肌へ塗布したときのハリ感を、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
◎:8名以上が、ハリ感に優れると回答
○:6〜7名が、ハリ感に優れると回答
○△:5〜6名が、ハリ感に優れると回答
△:3〜4名が、ハリ感に優れると回答
×:2名以下が、ハリ感に優れると回答
【0040】
[使用感(ふっくら感)]
女性専門パネル(10名)により、各試料を肌へ塗布したときのふっくら感を、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
◎:8名以上が、ふっくら感に優れると回答
○:6〜7名が、ふっくら感に優れると回答
○△:5〜6名が、ふっくら感に優れると回答
△:3〜4名が、ふっくら感に優れると回答
×:2名以下が、ふっくら感に優れると回答
【0041】
[使用感(べたつき感のなさ)]
女性専門パネル(10名)により、各試料を肌へ塗布したときのべたつき感のなさを、下記評価基準に基づき評価した。
(評価基準)
◎:8名以上が、べたつき感のなさに優れると回答
○:6〜7名が、べたつき感のなさに優れると回答
○△:5〜6名が、べたつき感のなさに優れると回答
△:3〜4名が、べたつき感のなさに優れると回答
×:2名以下が、べたつき感のなさに優れると回答
【0042】
[総合評価]
A(合格):全6評価項目に△、×評価がなく、使用感評価(3項目)がすべて◎評価で、保存安定性評価(3項目)がすべて○評価のもの
B(合格):全6評価項目中に△、×評価がなく、使用感評価(3項目)中の◎評価が1または2個、○△評価が1個以下で、保存安定性評価(3項目)中の○評価が1または2個、○△評価が1個以下のもの
C(不合格):全6評価項目中に△、×評価のいずれかが1個以上あるもの
(実施例1:保存安定性、使用性評価)
下記表1に示す組成の試料を常法により調製し、上記試験方法、評価基準に従い、保存安定性、使用感について評価した。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示す結果から明らかなように、本発明品である試料1〜3は使用感、保存安定性(低温〜高温)のいずれにおいても優れた効果が得られた。これに対し、(c)成分に対する(b)成分の配合比(質量比)が本発明範囲を外れる試料4〜5、(b)成分の配合がなり試料6では本発明効果が得られなかった。また(b)成分に代えてPOE硬化ヒマシ油を用い、このPOE硬化ヒマシ油と(c)成分を組合せた試料7では長期保存安定性に劣る結果となった。
【0045】
(実施例2:薬剤成分残存率測定試験)
上記表1に示す試料の中から、下記試料:
・試料1:(b)成分0.5質量%、(c)成分0.7質量%配合
・試料4:(b)成分1.0質量%、(c)成分0.7質量%配合
・試料6:(b)成分0質量%、(c)成分0.7質量%配合
を用いて、各々をポリエチレン製容器に入れ、0℃で1ヵ月間、50℃で1ヵ月間保存した後の、薬剤成分の残存率について、日本薬局方の一般試験法の液体クロマトグラフ法に従って測定試験(加速試験)を行った(n=3、各試料3点測定)。結果を表2〜3に示す。なお表2は実測値(薬剤成分残存率)を示し、表3は表2を加工したもので、0℃で1ヵ月間保存した後の残存率を100%とし、それに対する50℃で1ヵ月間保存した後の薬剤成分残存率を示す。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
薬事法上、対表示量の90.0〜110.0%が薬剤安定性があるとされている。表2、3の結果から明らかなように、試料6、1、4のいずれにおいても、50℃で1ヵ月間経過後も薬剤残存率が高く、薬剤安定性に優れることが確認された。また任意添加成分で、油溶性ビタミンである酢酸トコフェロール、ビタミンA油ともに残存率が高いことがわかった。
【0049】
(まとめ)
表1、表2〜3の結果から、(a)成分の薬剤成分残存率は(c)成分を配合することによって達成できるが、使用性効果、製剤保存安定性効果を併せて奏するには、(b)成分と(c)成分を(b)/(c)=0.1〜1.3の比率で配合する必要があることがわかった。
【0050】
以下にさらに配合処方例を示す。
[配合処方例1]
(配 合 成 分) (質量%)
精製水 残余
グリセリン 10
1,3−ブチレングリコール 10
ヒアルロン酸ナトリウム 0.001
カルボキシビニルポリマー 0.15
ポリビニルアルコール 0.4
キサンタンガム 0.03
POE(20)ベヘニルエーテル 0.75
モノステアリン酸グリセリン 0.75
ウフェナマート 1
ビタミンA油 0.2
ステアリルアルコール 2
ベヘニルアルコール 2
白色ワセリン 2
マイクロクリスタリンワックス 1
ミリスチン酸イソプロピル 12
流動パラフィン 5
水酸化カリウム 0.1
フェノキシエタノール 0.3
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
【0051】
[配合処方例2]
(配 合 成 分) (質量%)
精製水 残余
グリセリン 10
ジプロピレングリコール 5
1,3−ブチレングリコール 5
シカクマメエキス(乾燥質量) 0.001
カルボキシビニルポリマー 0.15
ポリビニルアルコール 0.4
POE(20)ベヘニルエーテル 0.7
モノステアリン酸グリセリン 0.5
ウフェナマート 3
酢酸トコフェロール 2
セチルアルコール 2
ステアリルアルコール 2
白色ワセリン 2
マイクロクリスタリンワックス 1
トリイソオクタン酸グリセリン 10
トコフェロール酢酸エステル 0.05
流動パラフィン 5
ジメチルポリシロキサン 2
水酸化カリウム 0.1
クエン酸水和物 0.02
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
【0052】
[配合処方例3]
(配 合 成 分) (質量%)
精製水 残余
グリセリン 5
1,3−ブチレングリコール 7
マクロゴール1000 2
トラネキサム酸 2
カルボキシビニルポリマー 0.25
ポリビニルアルコール 0.3
POE(20)ベヘニルエーテル 0.3
モノステアリン酸グリセリン 0.2
ウフェナマート 4
ビタミンA油 0.5
酢酸トコフェロール 0.5
ステアリルアルコール 0.5
ベヘニルアルコール 0.5
白色ワセリン 0.5
ミリスチン酸イソプロピル 5
軽質流動パラフィン 5
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
【0053】
[配合処方例4]
(配 合 成 分) (質量%)
精製水 残余
グリセリン 12
ジプロピレングリコール 5
ユズ種子エキス(乾燥質量) 0.001
4−メトキシサリチル酸カリウム 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.35
ポリビニルアルコール 0.4
キサンタンガム 0.05
POE(20)ベヘニルエーテル 1
モノステアリン酸グリセリン 0.1
ウフェナマート 2
ビタミンA油 0.2
酢酸トコフェロール 0.5
ステアリルアルコール 0.7
ベヘニルアルコール 0.5
白色ワセリン 0.5
硬化油 1
ミリスチン酸イソプロピル 5
流動パラフィン 5
水酸化カリウム 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
【0054】
[配合処方例5]
(配 合 成 分) (質量%)
精製水 残余
グリセリン 10
1,3−ブチレングリコール 5
ビタミンAアセテート 0.5
マクロゴール1500 2
カルボキシビニルポリマー 0.2
ポリビニルアルコール 0.4
キサンタンガム 0.05
ウフェナマート 5
POE(20)ベヘニルエーテル 1.5
モノステアリン酸グリセリン 1.5
ベヘニルアルコール 3
白色ワセリン 2
マイクロクリスタリンワックス 1
ミリスチン酸イソプロピル 12
軽質流動パラフィン 5
ジメチルポリシロキサン 2
水酸化カリウム 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、ウフェナマートを安定に配合し、使用感(べたつき感がない、ハリ感、ふっくら感)に優れ、かつ低温〜高温の幅広い温度域において長期保存安定性に優れるクリーム状の皮膚外用医薬乳化製剤が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ウフェナマートと、(b)グリセリン脂肪酸モノエステルと、(c)ポリオキシエチレン(2〜50モル付加)アルキルエーテルを含み、(b)成分/(c)成分=0.1〜1.3(質量比)の割合で含有する皮膚外用医薬乳化製剤。
【請求項2】
さらに(d)高級脂肪族アルコールを含む固形〜半固形油分を含む、請求項1記載の皮膚外用医薬乳化製剤。
【請求項3】
さらに(e)ポリビニルアルコールを主成分とする水溶性高分子を含有する、請求項1または2記載の皮膚外用医薬乳化製剤。
【請求項4】
(e)成分中にさらにカルボキシビニルポリマーを含む、請求項3記載の皮膚外用医薬乳化製剤。
【請求項5】
(e)成分中にさらに多糖類系水溶性高分子を含む、請求項3または4記載の皮膚外用医薬乳化製剤。
【請求項6】
さらにビタミンA油および/またはトコフェロール酢酸エステルを含有する、請求項1〜5いずれか記載の皮膚外用医薬乳化製剤。
【請求項7】
水中油型乳化皮膚外用医薬乳化製剤である、請求項1〜6記載の皮膚外用医薬乳化製剤。

【公開番号】特開2011−219369(P2011−219369A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86591(P2010−86591)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】