説明

皮膚外用組成物

【課題】 トラネキサム酸エステル及びその塩の皮膚への付与安定性及び経皮浸透性を改善させることができる皮膚外用組成物の提供。
【解決手段】 本発明による皮膚外用組成物は、トラネキサム酸エステル及び/又はその塩(A成分)と、シリコーン油(B成分)とを含むものである。また、A成分が、下記式(1);
【化1】


で表されるトラネキサム酸エステル及び/又はその塩であることが好ましい。なお、式(1)中、Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、R中の水素原子は水酸基及び/又はアミノ基により置換されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用組成物に関し、詳しくは、トラネキサム酸エステル及び/又はその塩の皮膚への付与安定性及び長期放出持続性を向上させた皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸は、プラスミン又はフィブリン溶解酵素の活性を低下させる作用(抗プラスミン作用)を有することが知られており、抗アレルギー、抗浮腫及び抗炎症等の効果が期待されている。現在、臨床的には、トラネキサム酸は、皮膚や粘膜の紅班、かゆみ等の抑制を目的として、経口投与、静脈内注射及び筋肉内注射により投与されている。特に、皮膚疾患には、トラネキサム酸の内服投与が有効であることが知られている。
【0003】
また一方で、トラネキサム酸には上記以外にも例えば抗色素沈着剤や肌荒れ改善剤のような種々の効用が知られており、このような用途に使用する場合には経皮投与が一般的である。
【0004】
かかる経皮投与のための外用剤(外用組成物)としては、例えば、特許文献1には、トラネキサム酸エステル及びその塩を有効成分とする抗色素沈着外用剤が開示されている。また、特許文献2には、トラネキサム酸及び/又はその誘導体からなるストレス対応剤を含有する皮膚外用組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平4−46144号公報
【特許文献2】特開2002−234836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の皮膚外用組成物は、効用成分であるトラネキサム酸エステル及びその塩の皮膚への付与安定性や、経皮浸透性の点で不十分であった。すなわち、従来の皮膚外用組成物では、十分な量のトラネキサム酸エステル及びその塩を皮膚に対して長期に亘って安定に供給することが難しく、未だ改良の余地があった。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、トラネキサム酸エステル及びその誘導体の皮膚への付与安定性及び経皮浸透性を改善させることができる皮膚外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために、トラネキサム酸エステルの溶媒に対する溶解性に着目して鋭意研究を行った結果、トラネキサム酸エステル及び/又はその誘導体との相溶性に優れる成分を見出すと共に、その成分を配合したトラネキサム酸エステル組成物を用いるとトラネキサム酸エステルの有する効用が長期に亘り持続することを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明による皮膚外用組成物は、トラネキサム酸エステル及び/又はその塩(A成分)と、シリコーン油(B成分)とを含むものである。
【0009】
かかる構成によれば、A成分とB成分との相溶性が高められるので、皮膚外用組成物へのA及びB両成分の溶解性が高められ、これにより、皮膚外用組成物への両成分の含有量が増大し、且つ、皮膚外用組成物における均一性が向上される。
【0010】
上記成分(A)が、下記式(1);
【0011】
【化1】

で表される化合物及び/又はその塩であることが好ましい。なお、式(1)中、Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、R中の水素原子は水酸基及び/又はアミノ基により置換されていてもよい。
【0012】
また、上記A成分と上記B成分との配合比が質量基準で0.01:100〜100:0.01であることが望ましく、さらに20:80〜80:20であると一層望ましい。
【0013】
また、本発明による皮膚外用組成物は、化粧品として用いると殊に有用なものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の皮膚外用組成物によれば、主たる効用(薬効)成分としてのA成分が、B成分、すなわちシリコーン油と共に用いられるのでA成分の皮膚への付与安定性及び長期放出持続性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明による皮膚外用組成物は、A成分及びB成分を含むものである。
【0016】
(A成分)
A成分は、トラネキサム酸エステル及び/又はその塩であり、特に制限されるものではないが、下記式(1)で表される化合物又はその誘導体が好適である。
【0017】
【化2】

【0018】
上記式(1)中、Rは炭素数が1〜22、好ましくは12〜18である直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示す。また、R中の水素原子は、水酸基及び/又はアミノ基により置換されていてもよい。
【0019】
具体的には、トラネキサム酸エステルとしては、例えばトラネキサム酸ラウリルエステル、トラネキサム酸ミリスチルエステル、トラネキサム酸セチルエステル及びトラネキサム酸ステアリルエステル等が挙げられる。それらの中でも、本発明の効果がより高められる観点からトラネキサム酸セチルエステル及びトラネキサム酸ステアリルエステルが特に好ましい。
【0020】
また、トラネキサム酸エステルの塩としては、生理的に許容される塩であれば特に限定されず、例えばリン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩等の無機塩、α-ヒドロキシ酸(グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸等)、酸性アミノ酸、長鎖脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸等)等の有機酸との塩が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
このA成分は、皮膚外用組成物の一成分として用いられたときに、主たる薬効成分として機能する。
【0022】
かかる薬効に関し、従前の研究によれば、トラネキサム酸エステルの塩の一つであるトラネキサム酸セチルエステル塩酸塩は、種々のサイトカイン、ケミカルメディエーター、ホルモンの産生に対する抑制作用を奏することが知られている。例えば、紫外線照射された表皮角化細胞からのエンドセリン−1(ET−1)及び炎症系のケミカルメディエーターであるプロスタグランジンE2(PGE2)の分泌、並びに外来性のメラノサイト刺激ホルモン(MSH)とET−1との相互作用を抑制する作用が明らかにされている。
【0023】
また、近年、ET−1は、皮膚の真皮組織構成成分であるコラーゲンの分解酵素マトリクッスメタロプロテアーゼ(MMP)の誘導を行うことによりコラーゲンの分解を促進することが報告されている(Roy-Beaudry M et al., Arthritis Rheum. 2003 Oct;48(10):2855-64.)。さらに、ET−1はストレスによって誘導され、MMPの誘導も促進することが報告されている(Ergul A et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2003 Nov;285(5):H2225-32. Epub 2003 Jul 03.)。
【0024】
一方、MSHは、タイプI、IIIコラーゲンの合成を抑制し、MMPの誘導を促進することが報告されている(Bohm M et al., "Collagen metabolism-a novel target of the neuropeptide alpha-melanocyte-stimulating hormone.", J Biol Chem. 2003 Nov 28.及びKiss M et al., Biol Chem Hoppe Seyler. 1995 Jul;376(7):425-30.)。
【0025】
他方、PGE2は炎症を惹起することが報告されている(Ponec M and Kempenaar J, Skin Pharmacol. 1995;8(1-2):49-59.)。
【0026】
これらET−1、PGE2及びMSHとそれらが皮膚の生理機能に及ぼす影響(生起される症状)を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
以上のことから、トラネキサム酸セチルエステル等のトラネキサム酸エステル及び/又はその塩は、ET−1及びPEG2の分泌、並びにMSHとET−1との相互作用を抑制することにより、それらが皮膚の生理機能に与える悪影響を防止するという薬効(効能)を有するものと考えられる。その結果、例えばシワ等の老化現象が緩和されたり、色素沈着が低減されたり、アトピー性皮膚炎等の肌荒れが改善されたり、ストレスが解消されたりといった効果が奏される。
【0029】
(B成分)
B成分であるシリコーン油としては、通常化粧料や外用剤に使用されているものを用いることができ、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アルコール変性ポリシロキサン、アクリル変性ポリシロキサン、架橋型ジメチルポリシロキサン、架橋型メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのかなでも、例えばジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンを用いると、粘着性が抑えられ、皮膚の‘べたつき’感や油性感(油っぽさ)を軽減することができる。なお、これらのシリコーン油は、1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0030】
ここで、本明細書で皮膚外用組成物とは、皮膚に外用で投与される組成物の総称であり、このような組成物は、例えば、皮膚外用医薬、化粧料、洗浄料、浴用剤、皮膚外用消毒剤、皮膚外用殺菌剤等として用いられ、特に化粧料として好ましく用いることができる。
【0031】
本発明の皮膚外用組成物を上記各種用途に用いる場合の剤型は、特に限定されるものではないが、クリーム、乳液、ローション、パック、リップスティック、ファンデーション、ゼリー、軟膏、皮膜、パウダー、等の通常の医薬品、医薬部外品、化粧品等に用いられる任意の剤型を使用することができる。
【0032】
その際の基剤原料としては、例えば、動植物油、鉱物油、エステル油、ワックス類、高級アルコール類、脂肪酸類、界面活性剤、リン脂質類、アルコール類、多価アルコール類、水溶性高分子類、粘土鉱物類、精製水等の公知の原料が挙げられる。
【0033】
また、本発明の皮膚外用組成物は、例えば、香料、色素、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、皮膚栄養剤、増粘剤、界面活性剤等の通常の医薬品、医薬部外品、化粧品等に用いられる添加成分を必要に応じて適宜含んでいてもよい。さらに、血流促進剤、殺菌剤、消炎剤、細胞賦活剤、ビタミン類、アミノ酸、保湿剤、角質溶解剤等の成分が配合されていてもよい。
【0034】
またさらに、皮膚外用組成物におけるA成分とB成分との配合比は、特に限定されるものではないが、美白、老化防止、及び肌荒れ防止効果がより高められる観点から、好ましくは、質量基準で0.01:100〜100:0.01、より好ましくは20:80〜80:20であることが望ましい。この配合比が下限値未満(すなわちB成分100質量部に対してA成分が0.01質量部未満)であると、美白、老化防止、及び肌荒れ防止効果が十分に向上されない傾向にある。一方、この配合比が上限値を超える(すなわちB成分0.01質量部に対してA成分が100質量部を超える)と、皮膚外用組成物中にA成分を均一に分散配合させ難い傾向にある。なお、かかる配合比は、本発明による皮膚外用組成物を老化防止剤として用いる場合に特に有用である。
【0035】
さらにまた、B成分として、環状のシリコーン油と鎖状のシリコーン油を組み合わせて用いるときには、環状のシリコーン油と鎖状のシリコーン油の配合比が質量基準で、好ましくは0.01:100〜100:0.01、より好ましくは1:100〜100:1とすると好適である。この配合比が下限値未満(すなわち鎖状のシリコーン油100質量部に対して環状のシリコーン油が0.01質量部未満)であると、B成分としてシリコーン油を用いる効果が十分に奏されない傾向にある。一方、この配合比が上限値を超える(すなわち鎖状のシリコーン油0.01質量部に対して環状のシリコーン油が100質量部を超える)と、皮膚外用組成物中にB成分を均一に分散配合させ難い傾向にある。
【0036】
また、皮膚外用組成物におけるA成分の配合量は、剤型にも依るが、質量基準で皮膚外用組成物の全成分の合計を100%とした場合に、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜6%とすると好適である。
【0037】
一方、皮膚外用組成物におけるB成分の配合量は、剤型にも依るが、質量基準で皮膚外用組成物の全成分の合計を100%とした場合に、好ましくは0.5〜50%、より好ましくは0.5〜30%、更に好ましくは3〜20%とすると好適である。この配合割合が0.5質量%未満であると、場合によっては所望の使用感向上効果が得られないことがあり、また、50質量%を超えると、場合によっては‘べたつき’感が生じてしまうことがある。換言すれば、B成分の配合量が上記の好適な範囲にあると、皮膚外用組成物の伸び、さらさら感、すべすべ感等の使用感が一層良好となり、且つ、A成分の皮膚外用組成物中への溶解性がより高められ、皮膚への付与安定性及び長期放出持続性を一層向上させることが可能となる。
【0038】
加えて、本発明の皮膚外用組成物のpHは、十分な効能が得られると共に安全性を高める観点から、4〜8、好ましくは4.5〜7であることが望ましい。
【0039】
このような本発明の皮膚外用組成物によれば、A成分とB成分とを含むことによりA成分の皮膚外用剤に対する溶解性を向上させることができるので、薬効成分たるA成分を皮膚外用剤中に略均一に分散させることが可能となる。その結果、皮膚への付与安定性及び長期放出持続性を向上させることが可能となる。また、A成分の薬効が美白、老化防止、肌荒れ防止効果といった美容効果を生起させるものなので、本発明による皮膚外用組成物を化粧品として用いれば、化粧効果と美容効果の優れた相乗効果を得ることができる
【実施例】
【0040】
〈実施例1及び比較例1〜5〉
皮膚外用組成物として、下記表2に示す組成(処方)のクリームを定法にて調製した。
【0041】
【表2】

【0042】
〈評価〉
実施例1及び比較例1〜5のクリーム(皮膚外用組成物)について、肌状態の改善作用、シワ改善作用等の皮膚に与える作用効果を、以下に示す試験によって測定評価した。
【0043】
(試験)
被験者
目尻に肉眼で認識できるシワを持つ男性(年齢:35歳から40歳) 10名を1群とし、表1記載の各クリームを塗布した6つの皮膚外用組成物適用群と、クリームを塗布しない1つの無塗布群(以下、「ブランク」という)の合計7群を形成した。
【0044】
試料塗布方法
各群の被験者の顔面に被験試料を1日2回、朝夜に適量を塗布した。
【0045】
試験期間
連続して8週間行い、皮膚状態 として以下の項目を試験開始直前、4週間後及び8週間後に測定した。
【0046】
測定項目
(1)皮膚表面水分量
(2)経表皮水分蒸散量(TEWL)
(3)皮膚色
(4)皮膚粘弾性
(5)剥離角層診断
(6)シワ深さの計測
【0047】
測定方法
被験者を恒温恒湿室(22℃、相対湿度45%)に入れ、15分間安静にして環境に順化させた後、以下の(1)〜(5)に示す手順にて測定を行った。なお、下記(1)〜(6)のいずれにおいても、各測定値についてStudent t検定又はWilcoxson検定による有意差検定を行い、ブランクとしての無塗布群と皮膚外用組成物適用群との差異を評価した。
【0048】
(1)皮膚表面水分量
皮膚表面水分量測定装置SKICON200(I.B.S. Co., Ltd.製)を用いて単位面積当たりの電気伝導度(mS/cm2)を測定した。測定は5回実施し、そのうち安定した3回の測定値の平均値をその部位の皮膚表面水分量とした。なお、皮膚表面水分量の増加は肌状態の改善を表す指標の一つである。測定結果を図1に示す。同図中、ブランク、及び実施例1の測定データを、黒塗り四角印、及び黒塗り丸印で示す。また、各比較例の測定データを白抜き丸印で示す。さらに、図中の実線及び破線は、プロットした各データをブランク、実施例及び比較例毎に結ぶ目安線である。また、実線B、実線E1、及び破線C1〜C5は、それぞれブランク、実施例1、比較例1〜5であることを示す(以下、図2〜9において同様とする。)。
【0049】
(2)経表皮水分蒸散量(TEWL)
経表皮水分蒸散量(TEWL)は、2チャンネル水分蒸散モニターAS−TW2(ASAHI BIOMED社製)を用いて測定した。測定は3回実施し、その平均値をTEWL(g/cm2/h)とした。なお、TEWL値の減少は肌状態の改善を表す指標の一つである。測定結果を図2に示す。
【0050】
(3)皮膚色
皮膚色は接触型測色計CM−2022(ミノルタ社製)を用いてL***表色系を用いて測定した。L*値の測定は3回行い、その平均値をもってL*値とした。L*値の上昇は皮膚色の白色化を表す指標の一つである。測定結果を図3に示す。
【0051】
(4)皮膚粘弾性
皮膚粘弾性はキュートメーターSEM575CK(electronic Gmb.)社製を用いて測定した。皮膚のハリの指標としてR2値(R2=Ua/Uf、Ua:吸引開放時の皮膚の戻り、Uf:吸引時の皮膚の伸び)を用いて評価した。なお、R2値の上昇は皮膚粘弾性の改善を表す指標の一つである。測定結果を図4に示す。
【0052】
(5)剥離角層診断
皮膚を消毒用エタノールにて清拭後、市販のセロハンテープ(30×24 mm)を用いて角層細胞を剥離した。剥離された角層細胞をスライドグラスに移しとったものを、ブリリアントグリーン・ゲンチアナバイオレット(BG)染色およびN-(7-Dimethylamino-4-methyl-3-coumarinyl) maleimide(DACM)染色用の試料とした。診断パラメーターとしては、角層細胞面積、角層細胞剥離パターン(多重剥離度)、有核細胞率、及び遊離のSH基に起因するSH染色度を用いた。なお、角層細胞面積の減少は表皮ターンオーバー速度の促進を表す指標の一つである。また、角層細胞剥離パターンの減少、有核細胞率の減少、及びSH染色度の減少はいずれも正常な角化を表す指標の一つである。各々の測定結果を図5〜図8に示す。
【0053】
(6)シワ深さ
まず、レプリカ剤を用いて目尻に存在するシワの鋳型(レプリカ)を採取した。次いで、その鋳型に対し、シワの主たる走行方向に直交する方向から且つ斜め30゜の上方より光をあててシワの影を生じせしめた。さらに、その画像解析を行い、生じたシワの影の深さを計測した。なお、レプリカ剤としては、微細な形態の転写が可能で、レプリカ採取としての実績報告が数多くあるSILFLO(Flexico.England社製)を用いた。結果を図9に示す。
【0054】
評価結果
図1〜9より、上記すべての測定項目において、実施例1のクリームは、比較例1〜5のクリームよりも高い改善効果を示すことが判明した。このことから、本発明の皮膚外用組成物が、シワ及び肌状態を有意に改善し且つ皮膚の白色化を十分に促進できることが確認された。また、本発明に係る皮膚外用組成物は、所定期間経過後においても高い改善効果を維持できることが判明した。このことから、トラネキサム酸エステルの皮膚への付与安定性、経皮浸透性、及び皮膚からの長期放出持続性が向上していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】皮膚表面水分量の測定結果を示すグラフである。
【図2】経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定結果を示すグラフである。
【図3】皮膚色の測定結果を示すグラフである。
【図4】皮膚粘弾性の測定結果を示すグラフである。
【図5】細胞面積(角層細胞面積)の測定結果を示すグラフである。
【図6】多重剥離度の測定結果を示すグラフである。
【図7】有核細胞率の測定結果を示すグラフである。
【図8】SH染色度の測定結果を示すグラフである。
【図9】シワ深さの測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラネキサム酸エステル及び/又はその塩(A成分)と、シリコーン油(B成分)と、を含む皮膚外用組成物。
【請求項2】
前記A成分が、下記式(1);
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、R中の水素原子は水酸基及び/又はアミノ基により置換されていてもよい)、
で表されるトラネキサム酸エステル及び/又はその塩である、
請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記A成分と前記B成分との配合比が質量基準で0.01:100〜100:0.01である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
前記皮膚外用組成物は化粧品に用いられるものである、請求項3に記載の皮膚外用組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−306744(P2006−306744A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128631(P2005−128631)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【出願人】(304040474)株式会社シャネル化粧品技術開発研究所 (7)
【Fターム(参考)】