説明

皮膚外用組成物

【課題】光老化予防改善作用又はシワ予防改善作用を有する皮膚外用組成物を提供する。
【解決手段】次式(I):


(式中、R1は、C2-25-アルキル基、Xは、-CO-NH-等、Yは、C1-4-アルキレン基、R2は、水素原子等、R3は、C1-4-アルキル基、R2とR3とは同じ又は異なるC1-4-アルキル基であってもよい)で示される化合物もしくはその塩、及び/又は、式(I)と同様のR1−X−Y基を有し、更に式(I)のN基がアンモニウム基であり、該アンモニウム基に、R4、R5及びR6は、同じ又は異なるC1-4-アルキル基が置換し、対イオンとしてA-を有する第四級アンモニウム塩、を含有する皮膚外用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば皮膚外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚が老化することにより生じる外観変化の例としては、シワやたるみの発生、はりの減少等が挙げられる。従来において、このような皮膚の形態的変化に対して、例えばコラーゲンを配合した化粧料が用いられている。しかしながら、このような化粧料を用いても、シワ発生等に対する十分な防止効果は得られていない。
【0003】
シワ等の発生については、特に紫外線との関連性が強いとされている。紫外線照射により生じた皮膚の老化は「光老化」と称され、種々研究されている。しかし、光老化を防止するために、未だ紫外線吸収剤又は紫外線防禦剤に代わる化粧料が開発されていないのが現状である。
【0004】
一方、特許文献1には、アルベリンを含有するシワやコジワの低減に有用な薬剤が開示されている。具体的には、特許文献1には、アルベリンが横紋筋における脱収縮化及び/又は弛緩効果を誘発可能であり、この効果によりシワ及びコジワを矯正し、皮膚の平滑化を促進できることが開示されている。しかしながら、アルベリンはそのアセチルコリン作動阻害作用に基づき、欧州では、筋弛緩剤として使用されるものであり、元来が医薬品であることから、毒性が高い(非特許文献1)。
【0005】
このように、従来において、安全に使用でき、且つ十分な効果を有する光老化予防改善組成物又はシワ予防改善組成物は知られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特許第3549823号公報(特開2001-114676号公報)
【非特許文献1】David Malkaら, Journal of Hepatology, 1997年, 第27巻, p.399-403
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した実情に鑑み、光老化予防改善組成物又はシワ予防改善組成物として使用できる皮膚外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、特定の化合物が光老化予防改善活性又はシワ予防改善活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下を包含する。
(1)次式(I):
【化1】

(式中、
R1は、置換又は非置換で直鎖又は分岐鎖のC2-25-アルキル基であり、
Xは、-CO-NH-、-O-CO-O-、-NH-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-であり、
Yは、置換又は非置換のC1-4-アルキレン基であり、
R2は、水素原子又はC1-4-アルキル基であり、
R3は、C1-4-アルキル基であり、
R2とR3とは同じ又は異なるC1-4-アルキル基であってもよい)
で示される化合物もしくはその塩、及び/又は、
次式(II):
【化2】

(式中、
R1、X及びYは、前記と同じ意味であり、
R4、R5及びR6は、同じ又は異なるC1-4-アルキル基であり、
A-は、対イオンである)
で示される第四級アンモニウム塩、
を含有する皮膚外用組成物。
(2)上記R1が直鎖又は分岐鎖のC6-20-アルキル基である、(1)記載の皮膚外用組成物。
(3)上記Xが-CO-NH-、-NH-CO-、-CO-O-又は-O-CO-である、(1)又は(2)記載の皮膚外用組成物。
(4)上記Yがメチレン基又はエチレン基である、(1)〜(3)のいずれか1記載の皮膚外用組成物。
(5)上記R2が水素原子又はメチル基もしくはエチル基であり、且つ上記R3がメチル基又はエチル基であり、上記R2とR3とは同じ又は異なる、(1)〜(4)のいずれか1記載の皮膚外用組成物。
(6)上記A-がハロゲンイオン又はカルボキシレートイオンである、(1)〜(5)のいずれか1記載の皮膚外用組成物。
(7)上記式(I)で示される化合物が、ドデカン酸2-ジメチルアミノ-エチルエステル、2-ジメチルアミノ-N-ドデシル-アセトアミド、ジメチルアミノ酢酸ドデシルエステル、(2-ドデシルオキシ-エチル)-ジメチルアミン及びドデカン酸(2-ジメチルアミノエチル)-アミドから成る群より選択される化合物である、(1)記載の皮膚外用組成物。
(8)上記皮膚外用組成物が、光老化予防組成物、光老化改善組成物、シワ予防組成物及びシワ改善組成物から成る群より選択される組成物である、(1)〜(7)のいずれか1記載の皮膚外用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な光老化予防改善作用又はシワ予防改善作用を有する皮膚外用組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る皮膚外用組成物は、上記式(I)で示される化合物及び/又は上記式(II)で示される第四級アンモニウム塩を含有するものである。本発明に係る皮膚外用組成物は、皮膚の老化により生じる形態的変化(例えばシワやたるみ)の発生やはりの減少に対して予防又は改善作用を有する。特に、本発明に係る皮膚外用組成物は光老化に対して予防又は改善作用を有し、光老化に起因するシワに対する予防又は改善作用が優れている。ここで、「光老化」とは、紫外線照射により生じた皮膚の老化を意味する。
【0012】
上記式(I)又は式(II)のR1で示される直鎖又は分岐鎖のC2-25-アルキル基は、直鎖状又は分枝状の炭素数2〜25のアルキル基であり、例えば、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノナニル基、n-デシル基、トリメチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n−トリデシル基、n-テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、メチルヘプタデシル基(メチル分岐イソステアリル基)、n-ノナデシル基、n-イコシル基、n-ヘニコサシル基、n-ドコサニル基、n-トリコサニル基、n-テトラコサニル基、n-ペンタコサニル基等が挙げられる。特に、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノナニル基、n-デシル基、トリメチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n−トリデシル基、n-テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、メチルヘプタデシル基(メチル分岐イソステアリル基)、n-ノナデシル基、n-イコシル基等の直鎖又は分岐鎖のC6-20-アルキル基が好ましい。
【0013】
上記式(I)又は式(II)のXは、-CO-NH-、-O-CO-O-、-NH-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-であり、特に-CO-NH-、-NH-CO-、-CO-O-又は-O-CO-であることが好ましい。
【0014】
上記式(I)又は式(II)のYで示されるC1-4-アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基が挙げられ、特にメチレン基又はエチレン基が好ましい。
【0015】
上記式(I)のR2及びR3並びに上記式(II)のR4、R5及びR6で示されるC1-4-アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基が挙げられる。特に、式(I)のR2及びR3で示されるC1-4-アルキル基は、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0016】
上記式(I)又は式(II)のR1で示されるC2-25-アルキル基及びYで示されるC1-4-アルキレン基は、1以上の置換基で置換されていてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アシル基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよいカルボキシル基、複素環式基等が挙げられる。ここでハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。アルコキシル基としては、炭素数1〜12のアルコキシル基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。アシル基としては、炭素数1〜12のアルカノイル基が好ましく、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル等が挙げられる。保護されていてもよいアミノ基としては、例えばアミノ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。保護されていてもよいカルボキシル基としては、例えばカルボキシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。複素環式基としては、例えば、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子を1〜3個有する5〜14員の単環又は縮合環の基が好ましく、例えばピリジル基、ピリダジニル基、フリル基、チエニル基、インドリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0017】
上記式(II)のA-で示される対イオンとしては、例えば、ハロゲンイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、硫酸イオン、硝酸イオン等が挙げられるが、特にハロゲンイオン及びカルボキシレートイオンが好ましい。ハロゲンイオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられる。また、カルボキシレートイオンとしては、例えば、ホルミレートイオン、アセチレートイオン、プロピレートイオン、フマレートイオン、マレートイオン等が挙げられる。
【0018】
上記式(I)で示される化合物の塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸、又はグルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸との塩が挙げられる。
【0019】
特に、上記式(I)で示される化合物としては、ドデカン酸2-ジメチルアミノ-エチルエステル、2-ジメチルアミノ-N-ドデシル-アセトアミド、ジメチルアミノ酢酸ドデシルエステル、(2-ドデシルオキシ-エチル)-ジメチルアミン及びドデカン酸(2-ジメチルアミノエチル)-アミドが好ましい。
【0020】
上記式(I)で示される化合物及び式(II)で示される第四級アンモニウム塩は、例えば、Izv. Vyssh. Ucheb. Zaved., Khim. Khim. Tekhnol., 14(9), 1369(1971).等に記載の方法により、例えば、塩化コリンを脂肪酸塩化物と、窒素気流下で反応させることによって製造することができる。
【0021】
本発明に係る皮膚外用組成物には、上記式(I)で示される化合物及び/又は式(II)で示される第四級アンモニウム塩の他に、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種任意成分、例えば保湿剤、粉体、ゲル化剤、増粘剤、界面活性剤、乳化剤、抗炎症剤、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料等、また紫外線吸収剤、紫外線防御剤、コラーゲン等の既存の皮膚老化防止・改善剤等を適宜配合し、使用形態に応じて常法に従って製造することができる。
【0022】
本発明に係る皮膚外用組成物は、その使用形態において、薬用皮膚外用剤及び化粧料を包含する。薬用皮膚外用剤としては、例えば薬効成分を含有する各種軟膏剤を挙げることができる。軟膏剤としては、油性基剤をベースとするもの、水中油型又は油中水型の乳化系基剤をベースとするもののいずれでもよい。油性基剤としては、例えば植物油、動物油、合成油、脂肪酸及び天然又は合成のグリセライド等が挙げられる。薬効成分としては、例えば鎮痛消炎剤、鎮痒剤、収斂剤、ホルモン剤等が挙げられる。
【0023】
また、化粧料としては、ローション状、乳液状、クリーム状、軟膏状、テスィック状、有機溶媒や精製水等による溶液状、パック状、ゲル状、エアゾール状等の形態を挙げることができる。すなわち、化粧料としては、ローション、オイルエッセンス、O/W型又はW/O型のクリーム、パック、ファンデーション、皮膚洗浄剤、トニック、浴用剤、エアゾール等として使用することができる。
【0024】
上記式(I)で示される化合物及び/又は式(II)で示される第四級アンモニウム塩の本発明に係る皮膚外用組成物への配合量は、例えば0.0001〜40重量%、特に0.01〜20重量%が好ましい。
【0025】
また、本発明に係る皮膚外用組成物の塗布量は、被験者の年令、体重、疾患の程度等により異なるが、式(I)で示される化合物及び/又は式(II)で示される第四級アンモニウム塩の重量として例えば0.0002mg〜100mg、好ましく0.02mg〜50mgを、1日1回又は数回に分けての塗布が適当である。
【0026】
本発明に係る皮膚外用組成物の光老化予防作用又はシワ予防作用及び光老化改善作用又はシワ改善作用の評価としては、例えば、へアレスマウス等のシワモデル動物を用いた方法が挙げられる。
【0027】
光老化予防作用又はシワ予防作用の評価では、先ずモデル動物をUVB等の紫外線照射に供した直後に、本発明に係る皮膚外用組成物を塗布する。次いで、本発明に係る皮膚外用組成物を塗布したモデル動物について、例えば、シワ目視評価によるシワスコア評価(Bisselt et al., Photochem. Photobiol., 1989, 50, p.763-769及びTsukahara et al., Br. J. Dermatol., 2004, 151, p.984-994)、レプリカの画像解析による画像解析面積比評価(Tsukahara et al., Br. J. Dermatol., 2004, 151, p.984-994)及び皮膚弾力性測定(Tsukahara et al., Br. J. Dermatol., 2004, 151, p.984-994)を行う。このような評価において、陰性対照のモデル動物(例えば、本発明に係る皮膚外用組成物の塗布なし又は溶媒の塗布)と比較して、本発明に係る皮膚外用組成物を塗布したモデル動物において、有意なシワ形成抑制が認められた場合には、本発明に係る皮膚外用組成物は光老化予防作用又はシワ予防作用について良好であると判断することができる。
【0028】
一方、光老化改善作用又はシワ改善作用の評価では、先ずモデル動物をUVB等の紫外線照射に供し、シワを形成させる。次いで、シワ形成モデル動物に本発明に係る皮膚外用組成物を塗布する。次いで、本発明に係る皮膚外用組成物を塗布したシワ形成モデル動物について、上述したシワスコア評価、画像解析面積比評価及び皮膚弾力性測定を行う。このような評価において、陰性対照のシワ形成モデル動物(例えば、本発明に係る皮膚外用組成物の塗布なし又は溶媒の塗布)と比較して、本発明に係る皮膚外用組成物を塗布したシワ形成モデル動物において、シワの有意な低下が認められた場合には、本発明に係る皮膚外用組成物は光老化改善作用又はシワ改善作用について良好であると判断することができる。
【0029】
以上に説明したように、本発明に係る皮膚外用組成物は、十分な光老化予防改善作用又はシワ予防改善作用を有するものである。特に、本発明に係る皮膚外用組成物は、表情筋や皮下組織といった深いシワ(シワの分類については、例えば、「化粧品の有用性-評価技術の進歩と将来展望-」, 株式会社 薬事日報社, 2001年, 第1章第7節, p.162-177;芋川玄爾及び武馬吉則, 「香粧会誌」, 1992年, Vol. 16, No. 3, p.153-155;並びに、Genji Imokawa and Yoshinori Takema, 「Cosmetics & Toiletries」, 1993, Vol. 108, p.65-77参照)に対して予防作用又は改善作用を有する。
【0030】
特許文献1に記載のアルベリンはそのアセチルコリン作動阻害作用に基づき、欧州では、筋弛緩剤として使用されるものであり、元来が医薬品であることから、毒性が高い(非特許文献1)。
【0031】
一方、本発明に係る皮膚外用組成物に含有される上記式(I)で示される化合物及び式(II)で示される第四級アンモニウム塩も同様にアセチルコリン作動阻害作用を有するものであると考えられる。しかしながら、上記式(I)で示される化合物及び式(II)で示される第四級アンモニウム塩は、アルベリンに比べ、ヒトにおける代謝が早く(すなわち、無害化されやすく)、安全性が高い。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕本発明に係る化合物の合成
以下の式(III)〜式(VII)中の「-Me」はメチル基を表す。
1)ドデカン酸2-ジメチルアミノ-エチルエステル(化合物1)の合成
次式(III):
【化3】

で示されるドデカン酸2-ジメチルアミノ-エチルエステルを以下のように合成した。
【0033】
50mlの3ツ口フラスコにジメチルアミノエタノール(10g、11.2mmol)とクロロホルム(20ml)とを加え、攪拌し、氷浴で5℃に冷却した。次いで、塩化ラウロイル(2.5g、11.2mmol)を20分間で滴下した。得られた混合物を氷浴下で0.5時間、さらに室温で2時間攪拌し、反応を終了した。
【0034】
得られた反応混合物に炭酸水素ナトリウム(1.0g、11.8mmol)とイオン交換水10mlとを加え、室温で1時間攪拌した後、水層を除去した。有機層を飽和食塩水10mlで洗浄した後、減圧濃縮し、油状の反応混合物(1.4g)を得た。
【0035】
得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル60、30g)に供し、クロロホルム/メタノール混合溶媒(クロロホルム:メタノール=100:1〜1:1)での溶出及び濃縮を行い、無色透明油状物としてドデカン酸2-ジメチルアミノ-エチルエステル(1.2g、78.8%)を得た。
【0036】
得られたドデカン酸2-ジメチルアミノ-エチルエステルを核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析及び赤外線吸収(IR)スペクトル分析に供し、以下の結果が得られた。
1H-NMR(MeOH-d4):0.90(t, 3H, J=7Hz), 1.18-1.40(m, 16H), 1.55-1.70(m, 2H), 2.28(s, 6H), 2.32(t, 2H, J=7Hz), 2.60(t, 2H, J=6Hz), 4.18(t, 2H, J=6Hz) ppm
13C-NMR(MeOH-d4):14.5, 23.7, 25.9, 30.2, 30.4, 30.5, 30.6, 30.7, 33.1, 34.9, 45.8, 58.6, 62.6, 174.9 ppm
IR(NaCl):3316, 2932, 2810, 2780, 2730, 1742, 1154 cm-1
【0037】
2)2-ジメチルアミノ-N-ドデシル-アセトアミド(化合物2)の合成
次式(VI):
【化4】

で示される2-ジメチルアミノ-N-ドデシル-アセトアミドを以下のように合成した。
【0038】
n-ドデシルアミン(1.00g、5.4mmol)にN,N-ジメチルグリシンメチルエステル(1.50g、12.8mmol)を加え、150〜160℃で、5.5時間攪拌し、反応を終了した。
【0039】
放冷後、酢酸エチル(70ml)とn-ヘキサン(30ml)とを加え、不溶物をろ過に供した後、濃縮し、油状物(1.4g)を得た。
【0040】
得られた油状物をカラムクロマトグラフィーに供し、クロロホルム/メタノール混合溶媒で溶出したところ、微黄色油状物として2-ジメチルアミノ-N-ドデシル-アセトアミド(1.27g、87.0%)を得た。
【0041】
得られた2-ジメチルアミノ-N-ドデシル-アセトアミドをNMRスペクトル分析及びIRスペクトル分析に供し、以下の結果が得られた。
1H-NMR(DMSO-d6) δ:0.84(t, 3H, J=6Hz), 1.12〜1.40(m, 20H), 2.17(s, 6H), 2.80(s, 2H), 3.04(q, 2H, J=7Hz), 7.67(t, 1H, J=6Hz) ppm
IR(ATR):2923, 2853, 2777, 1660, 1520 cm-1
【0042】
3)ジメチルアミノ酢酸ドデシルエステル(化合物3)の合成
次式(V):
【化5】

で示されるジメチルアミノ酢酸ドデシルエステルを以下のように合成した。
【0043】
n-ドデカノール(3.16g、17.0mmol)にN,N-ジメチルグリシンメチルエステル(1.00g、5.6mmol)と28%ナトリウムメトキシド(0.11g、0.6mmol)とを加え、140〜150℃で、2.5時間攪拌し、反応を終了した。
【0044】
放冷後、得られた混合物を酢酸エチル(70ml)を用いた抽出に供し、水洗し、減圧濃縮することで、油状物(3.6g)を得た。
【0045】
得られた油状物をカラムクロマトグラフィーに供し、酢酸エチル/n-ヘキサン混合溶媒で溶出したところ、微黄色油状物としてジメチルアミノ酢酸ドデシルエステル(1.18g、77.6%)を得た。
【0046】
得られたジメチルアミノ酢酸ドデシルエステルをNMRスペクトル分析及びIRスペクトル分析に供し、以下の結果が得られた。
1H-NMR(DMSO-d6) δ:0.84(t, 3H, J=7Hz), 1.13〜1.32(m, 18H), 1.54(qn, 2H, J=7Hz), 2.22(s, 6H), 3.12(s, 2H), 4.01(t, 2H, J=7Hz) ppm
IR(ATR):2924, 2853, 2771, 1736, 1465 cm-1
【0047】
4)(2-ドデシルオキシ-エチル)-ジメチルアミン(化合物4)の合成
次式(VI):
【化6】

で示される(2-ドデシルオキシ-エチル)-ジメチルアミンを以下のように合成した。
【0048】
60%水素化ナトリウム(0.47g、11.2mmol)を4ツ口フラスコに入れ、室温及び窒素気流下で乾燥テトラヒドロフラン50mlを加えて攪拌した。そこに、乾燥テトラヒドロフラン(10ml)に溶解したジメチルアミノエタノール(1.00g、11.2mmol)を20分間で滴下した。
【0049】
滴下20分後に、乾燥テトラヒドロフラン(5ml)に溶解した1-ブロモドデカン(2.80g、11.2mmol)を5分間で滴下した。滴下終了後、50℃まで加温し、4時間攪拌した後、反応を終了した。
【0050】
放冷後、反応混合物にイオン交換水20mlを加えてよく攪拌した後、酢酸エチル100mlを加えて抽出した。水洗後、減圧濃縮し、油状物(2.68g)を得た。
【0051】
得られた油状物をカラムクロマトグラフィーに供し、クロロホルム/メタノール混合溶媒で溶出したところ、透明油状物として(2-ドデシルオキシ-エチル)-ジメチルアミン(1.38g、47.9%)を得た。
【0052】
得られた(2-ドデシルオキシ-エチル)-ジメチルアミンをNMRスペクトル分析及びIRスペクトル分析に供し、以下の結果が得られた。
1H-NMR(CDCl3) δ:0.88(t, 3H, J=7Hz), 1.16〜1.54(m, 18H), 1.58(qn, 2H, J=6Hz), 2.27(s, 6H), 2.50(t, 2H, J=6Hz), 3.42(t, 2H, J=7Hz), 3.51(t, 2H, J=6Hz) ppm
IR(ATR):2956, 2915, 2850, 1470, 1120 cm-1
【0053】
5)ドデカン酸(2-ジメチルアミノエチル)-アミド(化合物5)の合成
次式(VII):
【化7】

で示されるドデカン酸(2-ジメチルアミノエチル)-アミドを以下のように合成した。
【0054】
N,N-ジメチルエチレンジアミン(1.00g、11.3mmol)をクロロホルム(50ml)に溶解し、5℃まで冷却した。次いで、ドデシルクロリド(2.45g、11.2mmol)を10分間で滴下した。
【0055】
滴下終了後、室温に戻し、得られた混合物を2時間攪拌し、反応を終了した。反応終了後、反応混合物を減圧濃縮に供した後、その残留物を酢酸エチル(150ml)を用いた抽出に供した。抽出後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)を加えて洗浄した後、飽和食塩水(50ml)で洗浄し、減圧濃縮したところ、白色固体(2.99g)を得た。
【0056】
得られた白色固体にイオン交換水(13ml)を加えて、60℃で30分間攪拌し、不溶物をろ過に供した後、ろ液を5℃に冷却した。冷却後、生成した結晶をろ過に供し、40℃で12時間乾燥し、白色結晶としてドデカン酸(2-ジメチルアミノエチル)-アミド(2.45g、79.5%)を得た。
【0057】
得られたドデカン酸(2-ジメチルアミノエチル)-アミドの融点は、47.7〜48.3℃であった。さらに、得られたドデカン酸(2-ジメチルアミノエチル)-アミドをNMRスペクトル分析及びIRスペクトル分析に供し、以下の結果が得られた。
1H-NMR(DMSO-d6) δ:0.84(t, 3H, J=7Hz), 1.12〜1.32(m, 16H), 1.44(qn, 2H, J=7Hz), 2.02(t, 2H, J=7Hz), 2.12(s, 6H), 2.23(t, 2H, J=6Hz), 3.10(q, 2H, J=6Hz), 7.68(t, 1H, J=7Hz)
IR(ATR):2916, 2847, 2820, 1637, 1550 cm-1
【0058】
〔実施例2〕本発明に係る化合物によるシワ予防評価
1)シワモデル動物(へアレスマウス)の作製
HR/HRとHaM/ICRとの交配により作製した6週齢のICR/HR系雌性マウスをシワモデル動物(シワ形成へアレスマウス)として用いた。餌及び水は自由摂取させ、温度23℃、湿度55%及び紫外線の影響のない環境下にて当該マウスの飼育を行った。
【0059】
2)光老化予防作用の評価
(i) 紫外線照射条件
飼育したヘアレスマウスを8匹ずつ7群に分け、それぞれUVB照射を行った。UVB照射は、Tsukahara et al(Br J Dermatol, 2004, 151, p.984-994)等記載の公知の通常の方法に準拠した。具体的には、飼育したヘアレスマウスをケージに入れ、東芝SEランプを用い、UVB照射を行った。照射量は、通常の6週齢のへアレスマウスにおける0.8〜1MED(最小紅斑量)である40〜50mJ/cm2にて、1週あたり5回で12週間の照射であった。
【0060】
(ii) 試料の調製と塗布
ヘアレスマウスに塗布する各試料を、それぞれ1%化合物1/90%エタノール(EtOH)溶液、3%化合物1/90%EtOH溶液、1%化合物2/90%EtOH溶液、1%化合物3/90%EtOH溶液、0.1%化合物4/90%EtOH溶液及び1%化合物5/90%EtOH溶液として調製した。
90%EtOH(コントロール)並びに調製した各試料を、1週あたり5回で12週間且つ1回に100μL/日で、紫外線照射直後に各群のヘアレスマウスに塗布を行った。各試料を塗布した各ヘアレスマウス群は、90%EtOHを塗布した群を「90%EtOHコントロール群」、1%化合物1/90%EtOH溶液を塗布した群を「1%-化合物1群」、3%化合物1/90%EtOH溶液を塗布した群を「3%-化合物1群」、1%化合物2/90%EtOH溶液を塗布した群を「1%-化合物2群」、1%化合物3/90%EtOH溶液を塗布した群を「1%-化合物3群」、0.1%化合物4/90%EtOH溶液を塗布した群を「0.1%-化合物4群」、1%化合物5/90%EtOH溶液を塗布した群を「1%-化合物5群」とした。
【0061】
(iii) シワ予防評価(シワ目視評価)
Bisselt et al.(Photochem. Photobiol., 1989, 50, p.763-769)記載の方法を参考にし、Tsukahara et al.(Br. J. Dermatol., 2004, 151, p.984-994)等記載の公知の方法にて、シワを0〜4まで分類した5段階評価を行った。
当該5段階評価に基づき、90%EtOHコントロール群を100としたときの各群のシワスコアを評価した。
【0062】
(iv) レプリカ採取及び画像解析
レプリカの採取及び画像解析は、Tsukahara K et al.(Br. J. Dermatol., 2004, 151, p.984-994)等記載の公知の方法にて、ラバー系シリコン印象剤(GC社)を用い、ヘアレスマウスの背部皮膚からレプリカを採取した。
採取したレプリカは直径1.8cmにくりぬき、同印象剤にて裏打ちして補正した後、画像解析に供した。画像解析にはPIAS LA-555(PIAS社)を用い、斜め30度方向から光をあて、10mm×10mmの範囲についてできる影(画像解析面積比(%))を定量した。
定量により得られた画像解析面積比(%)に基づき、90%EtOHコントロール群を100としたときの各群の画像解析面積比(%)を評価した。
【0063】
(v) 皮膚弾力性測定
皮膚弾力性測定は、Tsukahara K et al.(Br. J. Dermatol., 2004, 151, p.984-994)等記載の公知の方法にて、キュートメータSEM575(C+K社)を用い、100mbで1秒間吸引した後に解除し、その後1秒間の計2秒間の変位を測定した。測定は、1匹に対して5回ずつ行い、瞬間弾性変位を表すパラメーターであるUeについて求め、90%EtOHコントロール群を100としたときの各群のUe値を求めた。
【0064】
(vi) 結果
(a) シワ予防評価(シワ目視評価)結果
シワ予防評価(シワ目視評価)結果を図1に示す。
図1に示すように、90%EtOHコントロール群を100として、1%-化合物5群において最もシワ形成抑制が認められ、次いで1%-化合物3群、1%-化合物1群、3%-化合物1群、1%-化合物2群、0.1%-化合物4群の順にシワ形成抑制効果が認められた。
(b) レプリカ画像解析結果
各群のレプリカの写真を図2に示す。また、レプリカ画像解析結果を図3に示す。
図2及び3に示すように、90%EtOHコントロール群を100として、1%-化合物5群において最もシワ形成抑制が認められ、次いで1%-化合物1群、0.1%-化合物4群、1%-化合物3群、3%-化合物1群、1%-化合物2群の順にシワ形成抑制効果が認められた。
(c) 皮膚弾力性測定結果
皮膚弾力性測定結果を図4に示す。
図4に示すように、90%EtOHコントロール群を基準(100)として、1%-化合物5群において最も皮膚弾力性の低下抑制が認められ、次いで1%-化合物3群、3%-化合物1群、0.1%-化合物4群、1%-化合物1群、1%-化合物2群の順に皮膚弾力性の低下抑制効果が認められた。
【0065】
(vii) 総合評価
1%及び3%化合物1、1%化合物2、1%化合物3、0.1%化合物4並びに1%化合物5について光老化予防作用が認められた。
【0066】
〔実施例3〕本発明に係る化合物によるシワ改善評価
1)シワ形成へアレスマウスの作製
シワ形成へアレスマウスの作製は、実施例2の1)及び2)(ii)の節の記載に準じて、HR/HRとHaM/ICRとの交配により作製した6週齢のICR/HR系雌性マウスをUVB照射に1週あたり5回で10週間供することによって行った。
【0067】
上記UVB照射にてシワを作製したヘアレスマウスについて、Bisselt et al.(Photochem. Photobiol., 1989, 50, p.763-769)記載の方法を参考にし、Tsukahara et al.(Br. J. Dermatol., 2004, 151, p.984-994)等記載の公知の方法にて、目視によりシワスコア(実施例2の2)(iii)の節の記載に準じて評価)の平均値が各群ほぼ均一になるように各群8匹づつ2群に分けた。
【0068】
2)光老化改善作用の評価
(i) 試料の調製と塗布
シワ形成ヘアレスマウスに塗布する試料を1%化合物1/90%EtOH溶液として調製した。
90%EtOH(コントロール)及び調製した試料を、1週あたり5回で6週間且つ1回に100μL/日で、シワ形成ヘアレスマウスに塗布を行った。90%EtOHを塗布した群を「90%EtOHコントロール群」、1%化合物1/90%EtOH溶液を塗布した群を「1%-化合物1群」とした。
(ii) シワ改善評価(シワ目視評価)
実施例2の2)(iii)の節の記載に準じて、シワを0〜4まで分類した5段階評価を行った。
(iii) 結果
シワ改善評価(シワ目視評価)結果を図5に示す。
図5に示すように、90%EtOHコントロール群と比較して1%-化合物1群においてシワスコアの低下が認められた。
(iv) 総合評価
1%化合物1に光老化改善作用が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、シワ予防評価(シワ目視評価)結果を示す。
【図2】図2は、各群のレプリカの写真を示す。
【図3】図3は、レプリカ画像解析結果を示す。
【図4】図4は、皮膚弾力性測定結果を示す。
【図5】図5は、シワ改善評価(シワ目視評価)結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

(式中、
R1は、置換又は非置換で直鎖又は分岐鎖のC2-25-アルキル基であり、
Xは、-CO-NH-、-O-CO-O-、-NH-CO-、-CO-O-、-O-CO-又は-O-であり、
Yは、置換又は非置換のC1-4-アルキレン基であり、
R2は、水素原子又はC1-4-アルキル基であり、
R3は、C1-4-アルキル基であり、
R2とR3とは同じ又は異なるC1-4-アルキル基であってもよい)
で示される化合物もしくはその塩、及び/又は、
次式(II):
【化2】

(式中、
R1、X及びYは、前記と同じ意味であり、
R4、R5及びR6は、同じ又は異なるC1-4-アルキル基であり、
A-は、対イオンである)
で示される第四級アンモニウム塩、
を含有する皮膚外用組成物。
【請求項2】
上記R1が直鎖又は分岐鎖のC6-20-アルキル基である、請求項1記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
上記Xが-CO-NH-、-NH-CO-、-CO-O-又は-O-CO-である、請求項1又は2記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
上記Yがメチレン基又はエチレン基である、請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】
上記R2が水素原子又はメチル基もしくはエチル基であり、且つ上記R3がメチル基又はエチル基であり、上記R2とR3とは同じ又は異なる、請求項1〜4のいずれか1項記載の皮膚外用組成物。
【請求項6】
上記A-がハロゲンイオン又はカルボキシレートイオンである、請求項1〜5のいずれか1項記載の皮膚外用組成物。
【請求項7】
上記式(I)で示される化合物が、ドデカン酸2-ジメチルアミノ-エチルエステル、2-ジメチルアミノ-N-ドデシル-アセトアミド、ジメチルアミノ酢酸ドデシルエステル、(2-ドデシルオキシ-エチル)-ジメチルアミン及びドデカン酸(2-ジメチルアミノエチル)-アミドから成る群より選択される化合物である、請求項1記載の皮膚外用組成物。
【請求項8】
上記皮膚外用組成物が、光老化予防組成物、光老化改善組成物、シワ予防組成物及びシワ改善組成物から成る群より選択される組成物である、請求項1〜7のいずれか1項記載の皮膚外用組成物。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−120515(P2009−120515A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294763(P2007−294763)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】