説明

皮膚外用組成物

【課題】 マンノシルエリスリトールリピッドが有する皮膚への効果を維持しつつ、さらに細胞間脂質のラメラ構造を回復させ、角層バリア機能をきわめて向上させることができる皮膚外用組成物の提供を課題とした。
【解決手段】マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルの質量比が9:1〜8:2からなるベシクルを含有することを特徴とする皮膚外用組成物により、目的とする角層バリア機能をきわめて向上させる皮膚外用組成物が提供された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルからなるベシクルを含有することを特徴とする皮膚外用組成物、皮膚角層改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
角層は皮膚の最外層に存し、外部からの物理的、化学的刺激を防ぐ機能を有した重要な生体防御器官であるといえる。かかる防御は角層を構成する角層細胞の緻密な重層構造、言わば皮膚バリア構造に由来する。このような皮膚のバリア機能は、角層細胞の構造に由来するところが大きく、角層細胞あるいはその重層構造物である角層に異常が生じると、生体外異物の侵入を阻止することができなくなり、生体内に好ましくない細菌、ウイルス、生体に悪影響を及ぼす物質が入り込み、炎症などの疾病を引きおこし、生体内物質の生体内への保持が不全となり、皮膚からの水の散逸を抑制することができなくなり、皮膚の水分量を低下させ、皮膚の乾燥感、みずみずしさ等の見た目の美観を損なうこととなる。
【0003】
このような角層のバリア機能を向上させるために様々な化粧料が開発され、角層細胞間脂質の多くを占めるセラミドを配合した化粧料や角層の水分保持機能の維持・補強を目的にグリセリン等の多価アルコール、アミノ酸等の有機酸、植物エキスを配合した化粧料などが開発されてきた。また、セラミド類とタンニンを併用することにより、これらの成分を単独使用する場合に比べて顕著に優れた皮膚バリア機能の補強作用を発揮する化粧料が得られることをも報告されている(例えば、特許文献1参照)。その他、動物分泌物を含有する化粧料としては、ローヤルゼリーを化粧料に配合したものが開発され、角質細胞を成熟させ、皮膚バリア機能を向上させる効果があることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
マンノシルエリスリトールリピッドは、酵母が作る天然系の界面活性剤いわゆるバイオサーファクタントであり、外用剤や化粧品としての用途としては、抗炎症剤及び抗アレルギー剤(特許文献3)、養毛・育毛剤(特許文献4)としての有用性や、抗菌作用(特許文献5)や肌荒れを改善する効果(特許文献6)は知られていた。しかし、マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルからなるベシクルを含有する皮膚外用組成物が、角層下層とりわけ下層10層までの細胞間脂質のラメラ構造を回復させ、角層バリア機能をきわめて向上させること、とりわけ角層下層の水分量35質量%を超えた環境下で、投与した皮膚外用組成物のベシクルが平板ラメラ状態に相転移し、細胞間脂質のラメラ構造を回復させることは、全く知られていなかった。マンノシルエリスリトールリピッドは、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【0005】
【化1】

ただしR、Rは、炭素数6〜20のアシル基を表す。R、Rは、アセチル基または水素を表す。
【0006】
【特許文献1】特開2001−261520号公報
【特許文献2】特開2001−240529号公報
【特許文献3】特開2005−68015号公報
【特許文献4】特開2003−261424号公報
【特許文献5】特開昭57−145896号公報
【特許文献6】再表WO2007−060956
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マンノシルエリスリトールリピッドが有する皮膚への効果を維持しつつ、さらに細胞間脂質のラメラ構造を回復させ、角層バリア機能をきわめて向上させることができる皮膚外用組成物の提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、化粧品分野で用いられている素材を組み合わせて使用し、マンノシルエリスリトールリピッドが有する皮膚への効果を維持しつつ、さらに細胞間脂質のラメラ構造を回復させ、角層バリア機能をきわめて向上させることを目指して鋭意研究した結果、以下に示すような皮膚外用組成物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は以下に示すとおりである。
【0009】
(1) 前記一般式(1)で表される構造を有するマンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルからなるベシクルを含有することを特徴とする皮膚外用組成物。
(2) マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルの質量比が9:1〜8:2であることを特徴とする(1)に記載の皮膚外用組成物。
(3) マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルの総量が65質量%未満で、ベシクル状態から平板ラメラ状態に変化するベシクルであることを特徴とする(1)または(2)に記載の皮膚外用組成物。
(4) 皮膚角層下層のラメラ構造を改善することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの皮膚角層改善剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マンノシルエリスリトールリピッドが有する皮膚への効果を維持しつつ、さらに細胞間脂質のラメラ構造を回復させ、角層バリア機能をきわめて向上させることができる皮膚外用組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<1>本発明のベシクル
本発明のベシクルは、化粧料用の小球体であって、マンノシルエリスリトールリピッドと、ショ糖脂肪酸エステルを有するベシクルであることを特徴とする。マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルを混合することでベシクルの安定性、皮膚浸透性を高め、角層バリア機能を高める作用を有する。マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルとの含有質量比は、9:1〜8:2が好ましい。
【0012】
この様な成分を常法に従って処理することにより、本発明のベシクルは調製することが出来る。具体的な処理方法としては、ホモミキサー、ディスパーミキサー、エクストルーダー、マイクロフルイダイザーなどを用いて整粒し、調製することが好ましく例示できる。斯くして得られたベシクルは、化粧料中への均一安定分散性、皮膚内への浸透性に優れる。かかるベシクルの化粧料における好ましい含有量は、化粧料全量に対し、0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは、0.01〜1質量%である。
【0013】
本発明のベシクルでは、ベシクルの脂質二重膜構造を強化する成分を含有することが更に好ましく、該ベシクルの脂質二重膜構造を強化する成分としては、例えば、コレステロールや、カンペステロール、シトステロール、スティグマスタノールなどのフィトステロール等ステロール類やその配糖体、スフィンゴシン、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴリン脂質などのスフィンゴ関連物質などが好適に例示できる。
【0014】
<2>本発明のマンノシルエリスリトールリピッド
本発明のベシクルは、マンノシルエリスリトールリピッドを含有することを特徴とする。マンノシルエリスリトールリピッドは、マンノースの4位および6位のアセチル基の有無からMEL−A、MEL−B、MEL−CおよびMEL−Dの4種類が知られている。式(1)中、R、Rは炭素数6〜20の飽和または不飽和であるアシル基、R、Rは、アセチル基または水素を表す。すなわち、MEL−Aは、式(1)中、マンノースの2位、3位に炭素数6〜20の飽和または不飽和であるアシル基を有し、マンノースの4位、6位にアセチル基を有する化合物である。なおMEL−Bは、式(1)中、マンノースの2位、3位に炭素数6〜20の飽和または不飽和であるアシル基を有し、マンノースの4位に水素、6位にアセチル基を有する化合物である。MEL−Cは、式(1)中、マンノースの2位、3位に炭素数6〜20の飽和または不飽和であるアシル基を有し、マンノースの4位にアセチル基、6位に水素を有する化合物である。MEL−Dは、式(1)中、マンノースの2位、3位に炭素数6〜20の飽和または不飽和であるアシル基を有し、マンノースの4位、6位に水素を有する化合物である。
【0015】
マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法は特に制限されるものはないが、公知の生産微生物を用いた発酵方法を任意に選択して行えばよい。例えば培養生産は、Pseudozyma antarctica NBRC 10736を常法に従って培養することにより生産することができる。生産微生物としては、上記以外にCandida antarctica、Candida sp.等を用いることができる。これらの微生物の培養により、容易にマンノシルエリスリトールリピッドが得られることは周知である。生産微生物は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
上述のようにして得られるマンノシルエリスリトールリピッドは、化粧品、医薬部外品、医薬品、食品に配合して利用することが好ましい。マンノシルエリスリトールリピッドを配合する濃度は、吸収程度、作用程度、製品形態、使用頻度などによって適宜選択され、特に限定されるのもではない。化粧料における好ましい含有量は、化粧料全量に対し、0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは、0.01〜1質量%である。
【0017】
<3>本発明のショ糖脂肪酸エステル
本発明のベシクルは、ショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。ショ糖脂肪酸エステルとしては、アシル基の数が1個乃至は2個のものが好ましい。該アシル基としては、炭素数8〜22のものが好ましく、炭素数10〜18のものが更に好ましい。また、アシル基は脂肪族であることが好ましく、脂肪族であれば不飽和結合を有することも出来る。かかるショ糖脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、例えば、ショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖モノイソステアリン酸エステル、ショ糖ジイソステアリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖ジオレイン酸エステル等が例示出来、これらの中では、ショ糖モノラウリン酸エステルが特に好ましい。かかるショ糖脂肪酸エステルは唯一種を含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有することも出来る。かかるショ糖脂肪酸エステルの好ましい含有量は、化粧料全量に対し、0.0001〜1質量%が好ましく、より好ましくは、0.001〜0.1質量%である。
【0018】
<4>本発明の皮膚外用組成物
本発明の皮膚外用組成物は、前記必須成分を含有することを特徴とする。本発明で言う皮膚外用組成物とは、皮膚に外用で投与されるものであれば特段の限定はなく、例えば、医薬部外品を包含する化粧料、皮膚外用雑貨等が好適に例示できる。これらの内では、化粧料が特に好ましい。特に、皮膚保湿性を維持するための化粧料に適用することが特に好ましい。又、本発明の皮膚外用組成物は、通常知られている、ローション剤形、乳液剤形、エッセンス剤形、クリーム剤形、粉体含有剤形の何れをも取ることが出来る。化粧料としては、基礎化粧料、毛髪化粧料、メークアップ化粧料の何れもが適用可能であるが、基礎化粧料に適用することが特に好ましい。
【0019】
本発明の皮膚外用組成物に於いては、前記の成分以外に、通常化粧料や皮膚外用医薬で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等) 、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等) 、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB塩酸塩、ビタミンBトリパルミテート、ビタミンBジオクタノエート、ビタミンB又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類などが好ましく例示できる。
【0020】
さらに必要に応じて、水溶性の高分子を配合することも好ましい態様として例示できる。このような高分子として、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩が例示できる。このようなアルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、既に市販されているものが存在し、この様な市販品を使用することができる。市販品の内、好ましいものとして、BFGoodrich社製のカーボポール1382、ペミレンTR−1、ペミレンTR−2が例示できる。このような化合物の本皮膚外用組成物中の配合量は0.01〜0.5質量%が好ましい。
【0021】
以下に、実施例を挙げて、本発明について詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ、限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0022】
<本発明のローションの製造>
表1に示す処方に従ってローションを作製した。すなわち、(イ)の各成分を80℃で加熱溶解し、(ロ)の混合物を加え、ホモミキサーで回転数8000rpm、10分間攪拌した。さらに、実施例1のローションのうち、マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルの比率をかえた実施例2、比較例1、2も同時に調製した。比較例1はショ糖脂肪酸エステルを含有していない。
【0023】
【表1】

【0024】
<本発明の乳液の製造>
表2に示す処方に従って、本発明の皮膚外用組成物である乳液(実施例3)を作成した。すなわち、(A)、(B)の各成分を75℃で加熱溶解し、(A)の混合物に(B)の混合物を加えて撹拌して乳化させた。その後75℃に加熱した(C)の混合物を加えて攪拌し、乳化物(イ)を得た。さらに(D)の混合物を80℃で加熱溶解し、ホモミキサーで回転数8000rpm、10分間攪拌しながら(E)を添加し、可溶化物(ロ)を得た。最後に乳化物(イ)に可溶化物(ロ)を攪拌しながら添加し、室温まで撹拌、冷却し、乳液を得た。
【0025】
【表2】

【0026】
<試験例1 ベシクル状態の評価>
ベシクル状態の評価は、偏光顕微鏡観察と目視観察により行った。まず、偏光顕微鏡観察の結果、表3に示す様に、すべての実施例、比較例にて平板ラメラやベシクル等の二分子膜構造に由来するモザイク像が観察された。一方で、目視観察の結果、実施例4、5、比較例5に平板ラメラ状態に特有のゲルが観察された。実施例4の外観を図1に示す。比較例3、4、6は、液状かつ数時間静置により透明相の分離が確認された。比較例3の外観を図2に示す。この結果から、マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルの質量比を9:1〜8:2にすることで、マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルの総量が、65質量%未満(水分量35質量%を超える)でも、ベシクル状態から平板ラメラ状態に変化するベシクルが形成できることが明らかとなった。
【0027】
【表3】

【0028】
<試験例2 皮膚の水分蒸散抑制試験>
試験は、5名のパネラーを対象として、20℃、相対湿度50%の部屋で実施した。測定部位を37℃の温水で30秒間洗浄し、20分間安静にし、その後、測定を行った。前腕内側部の皮膚を対象として、試験予定日の前日(−1日)に予め試験部位の皮膚水分量をSKICON−200EX(IBS社製)にて測定しておく。その後、アセトンを含浸させたガーゼ(2cm×2cm)を30分間接触させた。翌日(0日)SKICON−200EXにて、皮膚水分量を測定、その後、実施例1で作成した試験サンプルを塗布した。試験サンプルの塗布は、一日3回実施した。塗布1日後、2日後に再度皮膚水分量を測定した。同時に、実施例1、比較例1、2の試験サンプル、試験サンプルの塗布を行わない未処置対照の試験も実施した。評価結果を表4に示した。
【0029】
【表4】

【0030】
<試験例3 角層下層のラメラ構造の観察 >
培養皮膚Epiderm EPI−200(Mattek社製)をインキュベーターにて1時間(37℃)前培養したものに対し、角層側にアセトンを200μL塗布し、5分間振とうさせ、その後除去する操作を2回繰り返すことで、乾燥肌モデルを作製した。この乾燥肌モデルの角層側に実施例1の試験サンプルを塗布し、3時間インキュベート後、培養液上で3時間乾燥させ、ルテニウム染色を行いTEMにて観察した。その結果、実施例1の試験サンプルを塗布した乾燥肌モデルの角層下層部分に、ラメラ構造が観察された。観察結果を図3に示す。また実施例1試験サンプルを塗布しなかった場合は、乾燥肌モデルの角層下層部分に、ラメラ構造は観察されなかった。観察結果を図4に示す。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、マンノシルエリスリトールリピッドが有する皮膚への効果を維持しつつ、さらに細胞間脂質のラメラ構造を回復させ、角層バリア機能をきわめて向上させることができる皮膚外用組成物に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例4の外観である。
【図2】比較例3の外観である。
【図3】実施例1の試験サンプルを投与した乾燥肌モデルの角層下層部分のTEM像である。
【図4】実施例1の試験サンプルを投与しなかった乾燥肌モデルの角層下層部分のTEM像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有するマンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルからなるベシクルを含有することを特徴とする皮膚外用組成物。
【化1】

ただしR、Rは、炭素数6〜20のアシル基を表す。R、Rは、アセチル基または水素を表す。
【請求項2】
マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルの質量比が9:1〜8:2であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
マンノシルエリスリトールリピッドとショ糖脂肪酸エステルの総量が65質量%未満で、ベシクル状態から平板ラメラ状態に変化するベシクルであることを特徴とする請求項1または2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
皮膚角層下層のラメラ構造を改善することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの皮膚角層改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−1458(P2012−1458A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136060(P2010−136060)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】