説明

皮膚性状測定用の多機能プローブ

【課題】皮膚の肌色及び皮脂量を迅速かつ正確に測定するためのプローブを提供する。
【解決手段】プローブの端部に設けられた測定端面と、測定端面に配設された光透過体と、
RGB放射源及びRGB光受光器を有する肌色センサと、近赤外放射源及び近赤外光受光器を有する皮脂量センサを備えた皮膚性状測定プローブにおいて、RGB放射源及び近赤外放射源からの放射光及びそれらの反射光が同じ光透過体を通過する構成とした。これにより、皮膚の同じ部位についての肌色と皮脂量を単一のプローブによる一回の操作でほぼ同時に測定可能である。また、光透過体の下面を平面状に形成して測定端面と同一平面をなすように配設したことにより、皮膚の形状の影響を受けることなく、より正確な肌色の測定が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の皮膚の性状を測定する装置及び方法に関し、特に、人体の皮膚の皮脂量及び肌色を測定するためのプローブ及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体の皮膚、特に、人体の皮膚の性状に関する情報は、個々人の肌の状態に適合した化粧品を選定する際等において有益な情報であり、従来より、皮膚の皮脂量及び肌色を測定するための装置が開発されている。
【0003】
図7(c)は、皮脂量を測定するための一従来技術の説明図であり、光透過体を皮膚に接触させた状態で、放射源から特定波長領域の光(たとえば赤外光)を光透過体を通して照射し、皮脂からの反射量を受光器で検出するようにしている。特開2004−77332号に開示された、皮膚に皮脂採取面を接触させた状態で皮脂量を測定する構成はかかる従来技術に対応するものである。また、特開平7−47056号公報に記載された装置では、皮脂をプローブの皮脂サンプリング板に付着させた後に、プローブを皮脂測定用の光学系を備えた別個の装置に合体させて皮脂量を測定するようにしている。
【0004】
図5(b)は、肌色を測定するための一従来技術の説明図であり、プローブのスリーブ(外筒)の底部開口部を皮膚に接触させた状態で、フルカラー放射源(RGBLED)からの赤(R)、緑(G)、青(B)の各波長光を皮膚に照射して、皮膚からのそれらの各波長光の反射量を受光器で検出するようにしている。肌色は、各波長光の受光強度に基づいて決定される。かかる構成は、たとえば、特開平11−218447号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−77332号
【特許文献2】特開平7−47056号公報
【特許文献3】特開平11−218447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、皮脂量と肌色の測定は、別個の装置で行われていることから、皮脂量と肌色を一度に測定する作業は繁雑であり、しかも、皮脂量と肌色の状態を皮膚の同じ箇所についてかつ同時に測定することは困難であった。
【0007】
また、上記した従来技術による皮脂量の測定方法によれば、図7(c)に示すように、皮脂を通過した放射光が皮膚によっても反射されてしまうため、この皮膚からの反射光が本来測定対象としている皮脂からの反射光に混入し、しかも、この皮膚からの反射は皮膚表面の色や形状によって大きく変動するために、皮脂量を正確に測定することが困難であった。また、特開平7−47056号公報に記載の装置では、一つのプローブで皮脂データの測定を完結させることができないため、皮脂量を測定する際の装置の操作が煩雑で、かつ、迅速な測定も困難であった。
【0008】
また、特開平11−218447号公報等に開示された従来技術による肌色の測定装置では、外乱光の影響を受けないようにするために、測定時にスリーブの底部の開口部を皮膚に密着するように押し当てているが、この押圧のために図5(b)に示すように、測定部位の皮膚が変形して隆起してしまう。こうした押圧による皮膚の形状の変化や皮膚表面自体の凹凸のために、光源からの光の皮膚への入射面や反射面を適切な状態に維持することができず、正確な肌色の測定が困難であった。さらに、スリーブの底部の開口部から、皮膚上の化粧料や皮脂などの埃がスリーブ内の光源及び受光器に付着しがちであり、このことも肌色の正確な測定を困難にする要因となっていた。
【0009】
さらに、従来の測定装置では、皮膚の皮脂量、肌色、水分量及び弾力という異なる4つの性状を測定する場合には、別個の装置または複数のセンサを個別に動作させる必要があるため、測定装置の操作が煩雑であり、また、迅速な測定を実施できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様は、RGB放射源と該RGB放射源からの放射光の反射光を受光してその反射量を検出する第一の受光器を有する肌色センサと、近赤外放射源と該近赤外放射源からの放射光の反射光を受光してその反射量を検出する第二の受光器を有する皮脂量センサの両方を備えたプローブであって、プローブの測定端面に設けられた光透過体を両センサで共有し、両方の放射源からの放射光及び反射光が同じ光透過体を通る構成とされている。
【0011】
本発明の第二の態様は、上記第一の態様におけるプローブにおいて、光透過体の底面が平面状とされ、その底面が、測定端面と同一平面をなすように光透過体が配設される構成とされている。
【0012】
本発明の第三の態様は、上記第一または第二の態様におけるプローブにおいて、光透過体を、スリーブの底面を形成する測定端面に隙間なく一体的に配設した構成とされている。
【0013】
本発明の第四の態様は、上記第一乃至第三の態様におけるプローブにおいて、測定端面が所定の押圧力で押圧されているときに、肌色の測定が実施されるように構成されている。
【0014】
本発明の第五の態様は、上記第一乃至第四の態様におけるプローブにおいて、光透過体が皮膚に接触した後、光透過体が皮膚から離れたときに、皮脂量の測定が実施されるように構成されている。
【0015】
本発明の第六の態様は、上記第一乃至第五の態様におけるプローブにおいて、光透過体が皮膚に接触する前に検出された近赤外光の反射量と、光透過体を皮膚に接触させた後、皮膚から離れたときに検出された近赤外光の反射量とに基づいて、皮膚の皮脂量が測定されるように構成されている。
【0016】
本発明の第七の態様は、上記第一乃至第六の態様におけるプローブにおいて、近赤外放射源として、その放射光の強度が、890nm〜990nmの波長領域中の所要の波長において最大強度を有するものが選択されるように構成されている。
【0017】
本発明の第八の態様は、上記第一乃至第七の態様におけるプローブにおいて、第二の受光器の前に、第二の受光器による外乱光の受光を阻止するための可視光遮断フィルタを設けた構成とされている。
【0018】
本発明の第九の態様は、上記第一乃至第八の態様におけるプローブにおいて、R、G、Bの各三波長光の反射率と近赤外光の反射率を測定し、R、G、Bの各三波長光の反射率を、近赤外光の反射率を用いて補正するように構成されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記第一の態様によれば、R、G、Bの波長光と近赤外光の放射光及びそれらの反射光が同じ光透過体を通過するようにしたことによって、プローブをコンパクトに維持しつつ、皮脂量と肌色の測定を皮膚の同じ部位について、簡便かつ迅速に行うことが可能である。
【0020】
本発明の上記第二の態様によれば、光透過体の下面全体を皮膚に均一に押し当てて、R、G、Bの各波長光を皮膚に対して常に同じ角度で入射させることができるので、皮膚形状の影響を受けないより正確な肌色の測定が可能である。
【0021】
本発明の上記第三の態様によれば、皮膚上の皮脂などの埃が測定端面を介してスリーブ内に侵入するのを阻止できるので、放射源や受光器にそれらの埃が付着することによる測定精度の劣化を防止することができる。
【0022】
本発明の上記第四の態様によれば、スリーブに所定の押圧力が印加されているときに自動的に肌色を測定することができることから、簡便かつ正確な肌色の測定が可能となる。
【0023】
本発明の上記第五及び第六の態様によれば、光透過体が皮膚から離れたときに、皮脂量の測定を行うようにしたので、皮膚による放射光及び反射光の散乱・吸収の影響を受けずにより正確な皮脂量の測定が可能となる。また、一つのプローブ単独で皮脂の付着から皮脂量の測定までを行うことができるので、プローブ外部に皮脂量測定のための別個の装置を設ける必要がなく、皮脂量の測定をより簡便かつ迅速に実施可能である。
【0024】
本発明の上記第七及び第八の態様によれば、周辺光の可視光領域の影響を極力排除し、また、周辺光が外乱光として第二の受光器に入射するのを効果的に阻止できるので、正確な皮脂量の測定が可能である。
【0025】
本発明の上記第九の態様によれば、肌色の測定において、肌色を測定したのと同じ部位の皮膚の皮脂の影響を補正して除去するようにしたので、皮脂の影響が排除されたより正確な肌色の測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施例によるプローブの構成を説明する図であり、(a)は、プローブの断面図、(b)は、プローブの端部に設けられた測定端面の平面図、(c)は、プローブの全体外観図、(d)は、近赤外放射源と対応する受光器、RGB放射源と対応する受光器、及び光透過体の配置関係を示す平面図である。
【図2】本発明の第一の実施例によるプローブの機能ブロック図である。
【図3】本発明の第一の実施例によるプローブにおける押圧検出器の動作を説明する図であり、(a)は、測定端面が皮膚に接触しておらず、押圧検出器のスイッチが開いた状態を、(b)は、測定端面が所定の押圧力で皮膚に押し当てられているために、押圧検出器のスイッチが閉じている状態を、それぞれ示す。
【図4】本発明の第一の実施例によるプローブにおける肌色データ測定手段の構成を説明する図である。
【図5】(a)は、本発明の第一の実施例によるプローブにおける肌色センサを、(b)は、従来の肌色センサを、それぞれ皮膚に押し当てたときの皮膚との接触の様子を概念的に示す図である。
【図6】本発明の第一の実施例によるプローブにおける皮脂量データ測定手段の構成を説明する図である。
【図7】(a)、(b)は、本発明の第一の実施例によるプローブにおけるセンサ部の構成を示す概念図であり、(a)は、光透過体の下面に皮脂を付着させるために、センサ部の測定端面したがって光透過体を皮膚に接触させたときの光透過体と皮膚との接触状態を示し、(b)は、皮脂付着時近赤外反射量を測定するために、光透過体を皮膚に接触させた後に、光透過体を皮膚から離したときの状態を示す。(c)は、従来技術の皮脂センサによる皮脂量の測定時における、光透過体と皮膚の接触状態を説明する図である。
【図8】本発明の第一の実施例によるプローブの動作を説明するフローチャートである。
【図9】(a)、(b)、(c)は、それぞれ、R、G、Bの各三波長光の反射率に及ぼす皮脂の影響を示すグラフであり、横軸に基準反射率をとり、縦軸に皮脂を付着させたときの反射率をプロットしたものである。
【図10】(a)は、皮脂影響率を三つの既知の皮脂量に対してプロットしたグラフであり、(b)は、最大強度が950nmの波長にある近赤外LEDからの放射光を照射したときの反射率を種々の既知の皮脂量に対してプロットしたグラフであり、(c)は、(b)のグラフ中の三つの反射率に対して、対応する皮脂影響率をプロットしたグラフである。
【図11】本発明の第二の実施例によるプローブの構成を説明する図であり、(a)は、プローブの断面図、(b)は、プローブの端部に設けられた測定端面の平面図、(c)は、近赤外放射源と対応する受光器、RGB放射源と対応する受光器、及び光透過体の配置関係を示す平面図である。
【図12】本発明の第二の実施例によるプローブの機能ブロック図である。
【図13】本発明の第二の実施例によるプローブにおける水分量データ測定手段の構成を説明する図である。
【図14】本発明の第二の実施例によるプローブにおける弾力データ測定手段の構成を説明する図である。
【図15】本発明の第二の実施例によるプローブの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
A.第一の実施形態
A−1.プローブの全体構成
図1は、本発明の第一の実施形態によるプローブ10の構成を説明するための図であり、
(a)は、プローブ10の断面図、(b)は、プローブ10の端部に設けられた接触端面36(以下、測定端面という)の平面図、(c)は、プローブ10の全体外観図である。
【0029】
図1(a)に示すように、プローブ10は、オペレータの手で把持可能に形成された本体ケーシング12に収容されたプローブ本体部20と、本体ケーシング12の先頭部分に設けられたセンサケーシング14に収容されたセンサ部30から構成される。尚、図1の(a)は、同図(c)のX−X’ラインに沿って切り取ったときの断面図であり、同図(c)においてセンサ部30は点線で示されている。
【0030】
センサ部の構成
センサ部30は、肌色測定のための肌色センサと皮脂量測定のための皮脂量センサを備え、これらのセンサを囲むように配置された円柱状のスリーブ34とスリーブ34の端部に配設されてスリーブ34の底面を形成する測定端面36と、押圧検出器58を備える。
【0031】
肌色センサは、R(赤)、G(緑)、B(青)の各波長光を放射するフルカラー放射源76と、フルカラー放射源76から放射されたR、G、Bの各波長光を、プローブ10の外部、すなわちスリーブ34外へと透過させると共に、各波長光の反射光を、プローブ10の内部、すなわちスリーブ34内へと戻すための光路を提供する光透過体70、及び、各波長光の反射光を受光して、受光した反射光の反射量を検出するための受光器78から構成される。
【0032】
皮脂量センサは、近赤外光を放射する近赤外放射源72と、近赤外放射源72から放射された近赤外光を、プローブ10の外部、すなわちスリーブ34外へと透過させると共に、近赤外光の反射光を、プローブ10の内部、すなわちスリーブ34内へと戻すための光路を提供する光透過体70と、近赤外光の反射光を受光して、受光した反射光の反射量を検出するための受光器74、及び、受光器74への可視光波長領域の外乱光の入射を阻止するために受光器74の前方に配置された可視光遮断フィルタ(図6の610)から構成される。
【0033】
このように、測定端面36の中央部に設けられた光透過体70は、肌色センサと皮脂量センサにおいて共用されている。さらに、光透過体70は、近赤外光及びR、G、Bの各波長光のための光路を提供するだけでなく、光透過体70が皮膚に接触したときに皮膚との接触面に皮脂を付着させることによって皮脂を採取する機能を有し、これによって、同一部位の皮膚に対する肌色データと皮脂量データを一回の操作でほぼ同時に測定できるようになっている。
【0034】
光透過体70は、ガラスやアクリル樹脂等の光に対して透明性の高い材料から形成されたものを使用することができ、本実施形態では、光透過体70として光学的に透明なガラスを採用した。光透過体70は、測定端面36に隙間なく一体的に嵌め込まれて、スリーブ34の下部を密閉構造としており、これによって、皮膚表面上の化粧料や皮脂等の埃が測定端面36を介してスリーブ34内部に侵入しないようにされている。さらに、光透過体70は少なくともその下面(測定時に皮膚と接触する側の面)が平坦とされた円柱状をなしており、かつ、その下面は測定端面36と同一平面をなしている。本実施形態の光透過体70は、さらに上面も平坦とされ、上面と下面は平行をなしている。
【0035】
本体ケーシング12とスリーブ34とは、スリーブ34の上面に対向する本体ケーシング12の所定の位置に設けられたリング状のスプリング(バネ)62で連結されており、このスプリング62によって、スリーブ34、それゆえ測定端面36を皮膚に対して弾性的に押圧できるようになっている。したがって、測定端面36を皮膚に当接させつつスリーブ34への押圧力を増すと、それに伴ってスプリング62が縮むとともに、スリーブ34がセンサケーシング14内を本体ケーシング12の下面に向かって(すなわち、図1(a)の矢印で示すZ方向に)移動するようになっている。
【0036】
押圧検出器58は、測定端面36が所定の押圧力で皮膚に押し当てられていることを示す信号を後述の測定制御部230に送るものである。本実施形態では、押圧検出器58は本体ケーシング12の所定の位置に配置された機械式スイッチであり、測定端面36が皮膚に接触していないときは、図3(a)に示すように、押圧検出器58のスイッチは開いたままであるが、測定端面36が所定の押圧力で皮膚に押し当てられているときには、スリーブ34の上面が本体ケーシング12に接近することにより、同図(b)に示すように押圧検出器58が閉じるように構成されている。
【0037】
尚、参照番号300で示されているプローブ本体部20内のブロックは、後述の肌色データ測定回路及び皮脂量データ測定回路(それぞれ、図2の210及び220)である。
【0038】
プローブ本体部の構成
図2は、プローブ10の機能ブロック図であり、プローブ10は、肌色センサと肌色データ測定回路210から構成される肌色データ測定手段(図4の400)、皮脂量センサと皮脂量データ測定回路220から構成される皮脂量データ測定手段(図6の600)、及び測定制御部230から構成される。プローブ本体部20は、肌色データ測定回路210、皮脂量データ測定回路220及び測定制御部230を備える。
【0039】
肌色データ測定回路210及び皮脂量データ測定回路220の具体的な構成については後述するので、ここでは、測定制御部230の構成及び機能について説明する。
【0040】
測定制御部230は、CPU(中央演算処理装置)231及び内部メモリ232を備え、肌色データ測定回路210及び皮脂量データ測定回路220の動作の制御やそれらの測定回路からのデータの処理を行う。また、測定制御部230は、オペレータからの入力を受け付けるための入力部233、オペレータに動作状況を通知するための出力部234、及び、外部装置(PC等)との通信を行うためのI/F部235を備える。本実施形態は、入力部233として測定スイッチを、出力部234として、測定中ランプや測定エラーランプ(いずれもLED(発光ダイオード))を備える。
【0041】
測定制御部230は、後述のRGB基準反射量と接触時RGB反射量との比(反射率)を計算し、この反射率を肌色値として内部メモリ232に格納する。また、測定制御部230は、後述の近赤外基準反射量と皮脂付着時近赤外反射量との比(反射率)を計算し、この反射率を皮脂値として内部メモリ232に格納する。近赤外基準反射量は、皮脂値を測定する毎に測定されて内部メモリ232に格納される。
【0042】
プローブ10は、不図示の係合機構によって外部の装置と電気的・物理的に接続可能なI/F部235を介して外部のデータ処理装置240と通信可能であり、データ処理装置240は、所定の肌診断ソフトにより、プローブから送信されたデータに対して肌診断のための所定の処理を行い、その結果を、表示装置250に表示したり、プローブ10に戻したりできるものである。データ処理装置240は、パーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータシステムで構築することができる。
【0043】
I/F部235の通信規格として、たとえば、USB(Universal Serial Bus)を採用することができ、この場合は、プローブ10は、USBケーブルを接続する為のコネクタを係合機構として備える。I/F部235は、かかる接続ケーブルを要するUSBI/Fのようなものに限定されるものではなく、赤外線通信を用いるものであってもよい。
【0044】
A−2.プローブを皮膚に押し当てて測定を開始するまでのプローブの動作
次に、測定端面36を適切な押圧力で皮膚に押し当てて、各測定手段によるデータ測定が可能になるまでのプローブの動作を図1及び図3を参照して説明する。
【0045】
オペレータは、先ず、プローブ10を測定可能状態にするために不図示の測定スイッチをオンにする。次にオペレータが、測定端面36を皮膚に接触させた状態でスリーブ34を押圧すると、それに応じて、スプリング62が縮むことにより、スリーブ34の上面が本体ケーシング12の下面に向かって移動する。
【0046】
スリーブ34への押圧力が所定の大きさに達すると、スリーブ34の上面が押圧検出器58のスイッチ端子を押し上げてスイッチが閉じる。スイッチが閉じると測定制御部230に設けられた不図示のスイッチ回路に電流が流れて所定押圧力検出信号が測定制御部230に伝送される。図3(b)に、所定押圧力検出信号が生成されているときの測定端面36と皮膚との接触状態を概念的に示す。
【0047】
測定制御部230は、所定押圧力検出信号を受信すると、不図示の測定中ランプを点灯させる。測定端面36への押圧力が所定の押圧力に維持されている間は、所定押圧力検出信号が生成されていることから、オペレータは、測定中ランプの点灯によって、測定端面36すなわち光透過体70が皮膚に接触して測定端面36に対する押圧力が所定の大きさになったこと、及び、測定中ランプが表示されている間は測定中であることを知ることができる。
【0048】
また、押圧検出器58は、押圧力が所定の値から外れる(実際には所定の値より小さい)と所定押圧力検出信号をオフにし、測定制御部230は、所定押圧力検出信号がオフであること、すなわち、該信号を受信しないことに応答して、測定中ランプを消灯させる。こうして、オペレータは、測定中ランプを点灯させるべく、プローブ10に加える押圧力を適宜に加減して、測定端面36に対する押圧力を所定の大きさに維持することができる。
【0049】
測定制御部230は、所定押圧力検出信号を受信すると、肌色データ測定回路210に測定を開始させるための肌色測定開始信号を送信する。一方、所定押圧力検出信号が生成されていないときには、測定制御部230は、肌色測定開始信号をオフにする。
【0050】
A−3.肌色データ測定手段の構成
図4は、肌色データ測定手段400の構成及び動作を説明するための概念図であり、図1及び図2と同じ構成要素にはそれらの図面と同じ参照番号を付している。但し、説明の便宜上、以下の肌色データ測定手段の動作の説明に必要とされない部分は図中から省いている。
【0051】
肌色データ測定手段400は、肌色データ測定回路210と、センサ部30に設けられた上述の肌色センサとから構成され、肌色データ測定回路210は、フルカラー(RGB)放射源76のオン/オフを制御するためのRGB発光回路412と、RGB光の反射量を測定するためのRGB反射量測定回路414から構成される。
【0052】
肌色データ測定手段400は、フルカラー放射源76から光透過体70に向けてR、G、Bの各三波長光を放射し、光透過体70を介する各三波長光の反射量を光検出器78で検出して測定制御部230に送るように構成されている。
【0053】
本実施形態では、フルカラー放射源76としてR、G、Bの各三波長光を放射するRGB LEDを採用し、受光器78として一個のフォトトランジスタを採用した。尚、受光器78としては、フォトトランジスタの他に、フォトダイオードやCCDセンサ等の光電センサを適宜使用することができる。
【0054】
本実施形態では、受光器78として一個のフォトトランジスタを用いたので、RGB発光回路412により、RGB LED76が、R、G、Bの各波長光毎に順次(たとえば、R、G、Bの順番で)適宜のタイミングで発光するように制御され、RGB反射量測定回路414が、この発光タイミングに同期してフォトトランジスタ78からの出力電流をサンプリングする構成とした。このタイミング調整は、RGB発光回路412とRGB反射量測定回路414との動作タイミングを測定制御部230によって制御することにより行われる。RGB反射量測定回路414によって順次サンプリングされた電流値は測定制御部230に送られる。尚、RGBLED76からR、G、Bの各波長光を同時に放射するようにしてR、G、Bの発光毎の同期化を不要とすることもできるが、この場合には、フォトトランジスタが少なくとも三個必要となり、さらに、R(赤)、G(緑)、B(青)の各波長領域のみを通過させるためのフィルターを別途設ける必要がある。
【0055】
本実施形態では、図1(d)に示すように、光透過体70に対してRGB LED76の中心光軸の入射角と反射角が等しい光軸上に受光器78を配置し、また、図1(a)に示すように、それらのLEDと受光器を、測定端面36を基準として、スリーブ34の上面方向にほぼ同じ高さに配置した。
【0056】
図5(a)、(b)は、それぞれ、本実施形態による肌色センサと、従来構成による肌色センサとを、それぞれ皮膚に押し当てたときの皮膚との接触の様子を概念的に示すものである。図5(a)では、(b)と異なり、光透過体70の平坦な下面が測定端面36と共に皮膚に均一に接触している。したがって、本実施形態の肌色センサは、R、G、Bの各波長光を常に一定の角度で皮膚に照射することができるので、従来構成に比して皮膚の内部散乱光による影響を受けにくいことがわかる。
【0057】
ここで、接触時RGB反射量とは、光透過体を皮膚などの測定部位に接触させた状態で測定された各三波長光毎の反射量をいうものとする。また、RGB基準反射量とは、プローブ10の製造工程または較正時において、測定端面36(及び光透過体70)の下に鏡面を配置した状態で、フルカラー放射源76から鏡面に対してR、G、Bの各三波長光を照射したときに測定されたその鏡面からの各三波長光毎の反射量をいうものとする。RGB基準反射量は、製造時または較正時において測定制御部230の内部メモリ232に格納されている。尚、接触時RGB反射量については、R、G、Bの各波長光に対して、それぞれ、接触時R反射量、接触時G反射量、接触時B反射量と呼んで区別し、RGB基準反射量については、R、G、Bの各波長光に対して、それぞれ、R基準反射量、G基準反射量、B基準反射量と呼んで区別する。
【0058】
A−4.皮脂量データ測定手段の構成
図6は、本発明の一実施例による皮脂量データ測定手段600の構成及び動作を説明するための概念図であり、図1及び図2と同じ構成要素にはそれらの図面と同じ参照番号を付している。但し、説明の便宜上、以下の皮脂量データ測定手段の動作の説明に必要とされない部分は図中から省いている。
【0059】
皮脂量データ測定手段600は、皮脂量データ測定回路220と、センサ部30に設けられた上述の皮脂量センサとから構成され、皮脂量データ測定回路220は、近赤外放射源72のオン/オフを制御するための近赤外発光回路612と、近赤外光の反射量を測定するための近赤外反射量測定回路614から構成される。
【0060】
皮脂量データ測定手段600は、近赤外放射源72から光透過体70に向けて近赤外光を放射し、光透過体70を介する近赤外光の反射量を光検出器74で検出して測定制御部230に送るように構成されている。
【0061】
近赤外放射源72は、放射光の波長が890nm〜990nmの近赤外波長領域中の特定の波長において最大強度を有するものが好ましく、本実施形態では、950nmに最大強度を有する近赤外LEDを採用した。また、受光器74として一個のフォトトランジスタを採用した。受光器74としては、フォトトランジスタの他に、フォトダイオードやCCDセンサ等の光電センサを適宜使用することができる。
【0062】
また、本実施形態では、図1(d)に示すように、光透過体70に対して近赤外LED72の中心光軸の入射角と反射角が等しい光軸上に受光器74を配置し、また、図1(a)に示すように、近赤外LED72と受光器74を、測定端面36を基準として、スリーブ34の上面方向にほぼ同じ高さに配置した。
【0063】
以下、近赤外基準反射量とは、光透過体70が皮膚に接触していない状態において、光透過体70に皮脂やその他の埃が付着していないとみなしうる状態で測定された近赤外光の反射量をいい、皮脂付着時近赤外反射量とは、光透過体70を皮膚に接触させるなどすることにより、光透過体70に皮脂が付着したとみなしうる状態で測定された近赤外光の反射量をいうものとする。本実施形態では、光透過体70を皮膚に接触させて光透過体70の下面に皮脂を付着させ(図7(a)参照)た後、光透過体70を皮膚から離して(図7(b)参照)、近赤外光を光透過体70に照射することにより、皮脂付着時近赤外反射量を測定するようにした。これによって、皮膚による近赤外光の散乱などの影響を排除して、より正確に皮脂量を測定することができる。
【0064】
A−5.プローブによる測定処理の流れ
次に、以上のように構成されたプローブ10による測定処理を図8に示すフローチャートを参照して説明する。各データ測定手段の動作の制御、各データ測定手段からのデータの処理、及び、プローブ内外への入出力処理を含むプローブ全体の動作制御は、測定制御部230のCPU231によって実行される内部メモリ232に格納されたプログラムに基づいて実施される。
【0065】
尚、測定スイッチは、本体ケーシング12に設けられて、測定制御部230の入力部233の一部を構成する不図示のスイッチであり、測定中ランプ及び測定エラーランプは、いずれも、本体ケーシング12に設けられて、測定制御部230の出力部234の一部を構成する不図示のLEDランプである。
【0066】
先ず、ステップ80で、測定制御部230は、オペレータからの測定開始指示、すなわち、測定スイッチがオンとなるのを待つ。この間、実際には、測定を開始するために、オペレータは、プローブ10が皮膚から離れた状態で、測定スイッチをオンにすることになる。
【0067】
測定制御部230は、測定スイッチがオンになったのを検出すると、ステップ82で皮脂量データ測定回路220に近赤外基準反射量を測定させるための制御信号を送出する。
【0068】
この制御信号に応答して、皮脂量データ測定回路220は、近赤外LED72をオンにして、近赤外光を光透過体70に向けて放射させる。光透過体70を介してスリーブ34内に戻った反射光は、可視光遮断フィルタ610によって可視光領域の外乱成分が除去された後、受光器74で検出される。検出された近赤外基準反射量(電流値)は、測定制御部230に送られて、CPU231の内部レジスタに保持される。
【0069】
ステップ84で、測定制御部230は、ステップ82で測定した近赤外基準反射量が妥当な値の範囲内にあるか否かを判定する。妥当な範囲内の値でないと判断した場合には、処理はステップ82に戻り、測定値が妥当な値の範囲に入るまで、近赤外基準反射量の測定(ステップ82)とその測定値が妥当な値の範囲にあるか否かの判断(ステップ84)が繰り返される(実際には、妥当な値の範囲にないと判定された場合には、その旨の表示がなされ、オペレータは、光透過体70を拭くなどの光透過体70の汚れを落とす作業を行うことになる)。この妥当な値の範囲は、光透過体70が皮膚から離れており、かつ、皮脂やその他の埃が光透過体70に付着していないときに測定されるべき値の範囲として、個々のプローブについて予め実験的に決定されて、測定制御部230の内部メモリ232に格納しておくことが可能である。
【0070】
オペレータは、ステップ86乃至90の処理中に、プローブ10(の測定端面36)を皮膚に対して押圧することができ、これによってスプリング62が圧縮される。
【0071】
ステップ84で測定された近赤外基準反射量が妥当な値であると判定した場合には、測定制御部230は、ステップ86で、肌色データ測定回路210及び皮脂量データ測定回路220にそれぞれの測定を実行させるための制御信号を送出する。この制御信号に応答して、各データ測定回路は、R、G、Bの各三波長光の反射量、近赤外光の反射量をそれぞれ測定する。
【0072】
ステップ88で、測定制御部230は、測定されたそれぞれの反射量の測定値が、それぞれに対応する所定の値の範囲にあるか否かを判定する。いずれか一つの測定値が対応する所定の値の範囲内にない場合には、その範囲内に入るまで、(プローブの押し当てによるスプリングの圧縮と並行して)それぞれのデータの測定(ステップ86)と、測定されたデータが対応する所定の値の範囲にあるか否かの判定(ステップ88)を繰り返す。
【0073】
これらの所定の値の範囲は、光透過体が皮膚に接触しているときに測定される可能性のある値の範囲として予め実験的に決定され、測定制御部230の内部メモリ232に格納しておくことが可能である。したがって、それぞれの測定値が対応する所定の値の範囲内にあれば、各測定手段が動作しており、かつ、光透過体70が皮膚に接触していると判断することができる。
【0074】
ステップ88でいずれの反射量の測定値も所定の値の範囲に入っていると判定した場合には、ステップ90で、測定制御部230は、測定端面36への押圧力が所定の大きさになるまで、すなわち、所定押圧力検出信号が生成されるまで待つ。ここで、測定端面36に所定の大きさの押圧力が印加されているときの測定端面36と皮膚との接触状態は、接触時RGB反射量を測定し、かつ、光透過体70に皮脂が付着するのに適した状態とされる。
【0075】
測定制御部230は所定押圧力検出信号を受信すると、ステップ92で、肌色データ測定回路210に肌色測定開始信号を送出すると共に、測定中ランプを点灯させて、プローブ10がデータ測定中であることをオペレータに知らせる。
【0076】
肌色データ測定回路210は肌色測定開始信号を受信すると、ステップ100において、R、G、Bの各三波長光の反射量の測定を行う。
【0077】
すなわち、ステップ102で、RGB発光回路412が、RGB LED76にR、G、Bの各波長光をこの順で所定のタイミングで放射させる。放射された各波長光は光透過体70を通過して皮膚を照射し、皮膚から反射して、再度、光透過体70を通過してスリーブ34内に戻る。この反射光はフォトトランジスタ78で受光されて反射量に応じた電流が生成される。
【0078】
ステップ104で、RGB反射量測定回路414は、生成された電流を不図示の増幅器で増幅して、上述のように、R、G、Bの各波長光の照射タイミングに同期したタイミングでサンプリングした後、測定制御部230に伝送する。サンプリングされた電流値はCPU231の内部レジスタに保持される。
【0079】
測定制御部230は、ステップ100においてR、G、Bの各三波長光の反射量が取得されると、ステップ110で測定中ランプを消灯して、それらの反射量が測定されたことをオペレータに通知する。オペレータはこの測定中ランプの消灯を確認することによって、皮脂量データの測定のためにプローブ10を皮膚から離すことができる。
【0080】
ステップ112乃至116と並行して、オペレータがプローブ10を皮膚から離す過程で、スプリング62が伸長して押圧検出器58のスイッチが開き所定押圧力検出信号がオフになる。
【0081】
測定制御部230は、ステップ112において、肌色データ測定手段400及び皮脂量データ測定手段600にR、G、Bの各三波長光の反射量、近赤外光の反射量をそれぞれ測定させ、ステップ114において、ステップ112で測定された反射量の値がそれぞれに対応する所定の値の範囲内にあるか否かが判定される。
【0082】
これらの所定の値の範囲は、光透過体70が皮膚から十分離れているときに各測定手段によって測定されるべき妥当な値の範囲として予め実験的に決定されて、測定制御部230の内部メモリ232に格納されている。したがって、測定制御部230は、これらの反射量の測定値がそれぞれに対応する所定の値の範囲内にあれば、測定端面36は皮膚から離れたと判断することができる。それらの全ての反射量の測定値がそれぞれに対応する所定の範囲内に入るまでステップ112と114は繰り返される。
【0083】
ステップ114において、ステップ112で測定された全ての反射量の測定値が各々に対応する所定の値の範囲内にあると判定した場合には、測定制御部230は、ステップ116で、たとえば、内蔵のタイマー回路を用いて、所定時間(たとえば、0.5秒程度)経過するまで待つ。このように、所定時間待つのは、オペレータが、測定端面を皮膚から十分な距離離した状態にすることができるようにするための時間を確保するためである。
【0084】
測定制御部230は、ステップ116で所定時間が経過したことを判定すると、ステップ118で、測定中ランプを点灯させると共に、皮脂量データ測定回路220に皮脂測定開始信号を送出する。
【0085】
皮脂量データ測定回路220は、皮脂測定開始信号を受信すると、ステップ120で、皮脂付着時近赤外反射量の測定を開始する。すなわち、ステップ122で、皮脂量データ測定回路220中の近赤外発光回路612が近赤外LED72をオンにして近赤外光を放射させる。放射された近赤外光は、光透過体70を通過して、光透過体70の下面に付着した皮脂で反射して、再び光透過体70を通過する。この反射光は、可視光遮断フィルタ610を通過してフォトトランジスタ74で受光され、受光した反射量に応じた電流が生成される。
【0086】
ステップ124で、近赤外反射量測定回路614は、フォトトランジスタ74で生成された電流を不図示の増幅回路で増幅した後サンプリングする。サンプリングされた測定値は、測定制御部230に伝送されて、CPU231の内部レジスタに保持される。
【0087】
ステップ130において測定制御部230は、ステップ104及びステップ124においてそれぞれ測定された接触時RGB反射量と皮脂付着時近赤外反射量を内部レジスタから読み出して、これらの反射量の測定値がそれぞれに対応する正常値の範囲内にあるか否かを判定し、いずれか一つの測定値が正常値の範囲内にない場合には、ステップ132において、測定中ランプを消灯するとともに不図示の測定エラーランプを点灯させてステップ80に処理を戻す。オペレータは、このエラー表示によって、有効な測定ができなかったことを知ることができる。
【0088】
尚、接触時RGB反射量の正常値の範囲は、測定端面36が皮膚に適切に接触しているときに測定される可能性のあるR、G、Bの各三波長光の反射量の範囲として、皮脂付着時近赤外反射量の正常値の範囲は、人間の皮膚の皮脂量からの近赤外光の反射量として測定される可能性のある反射量の範囲として、それぞれ予め実験的に画定しておくことができる。これらの正常値の範囲は、測定制御部230の内部メモリ232に格納されている。
【0089】
ステップ130で、全ての反射量の測定値が正常値の範囲内にあると判定すると、測定制御部230は、ステップ134において、測定された各データから皮膚の肌色値と皮脂値を求める。すなわち、測定制御部230の内部メモリ232に格納されているRGB基準反射量とステップ104で測定された接触時RGB反射量との各波長光毎の比(すなわち、R基準反射量と接触時R反射量との比、G基準反射量と接触時G反射量との比、B基準反射量と接触時B反射量との比)を肌色値とする。また、ステップ82で測定した近赤外基準反射量とステップ124で測定した皮脂付着時近赤外反射量との比(近赤外反射率)を皮脂値とする。測定制御部230は、ステップ136で測定中ランプを消灯して、肌色値と皮脂値の測定が正常に終了したことをオペレータに通知する。
【0090】
尚、ステップ112〜116の代わりに、プローブが皮膚から離れたことをオペレータが確認することによって皮脂量の測定に移行するようにしてもよい。
【0091】
B.第二の実施形態
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、皮脂量データ測定手段及び肌色データ測定手段を組み込んだ第一の実施形態におけるプローブに、さらに、皮膚の水分量を測定するための手段(水分量データ測定手段)と皮膚の弾力を測定するための手段(弾力データ測定手段)を組み込み、これらの四つの測定手段による測定を一回のプローブ操作で測定可能としたものである。
【0092】
B−1.プローブの全体構成
図11は、図1(c)に示す第一の実施形態のプローブ10の全体外観と同様の全体外観を有する第二の実施形態のプローブ900の構成を説明する図であり、図11(a)は、プローブ900の不図示の全体外観図において、図1(c)のX−X’ラインに対応するラインで切り取ったときのセンサ部の断面図、図11(b)は、プローブ900の端部に設けられたプローブの接触端面(測定端面)936の平面図である。プローブ900は、第一の実施形態と同じくオペレータの手で把持可能に形成された本体ケーシング912に収容されたプローブ本体部920と、本体ケーシング912の先頭部分に設けられたセンサケーシング914に収容されたセンサ部930から構成される。
【0093】
センサ部930は、第一の実施形態と同様の肌色センサ及び皮脂量センサに加え、水分量センサ及び弾力センサを備え、これらのセンサを円柱状のスリーブ934が囲むように配設されている。
【0094】
肌色センサは、R、G、Bの各三波長光を放射するRGB放射源976、R、G、Bの各三波長光の反射光を受光して、受光した反射光の反射量を検出するための受光器978、及び光透過体970から構成され、皮脂量センサは、近赤外光を放射する近赤外放射源972、近赤外光の反射光を受光して、受光した反射光の反射量を検出するための受光器974、及び光透過体970から構成される。
【0095】
水分量センサは、皮膚の導電度を測定するための一対の電極937及び938から構成され、弾力センサ950は、振動子951、振動子951の先端部に設けられた接触子952、及び振動検出素子953から構成される。
【0096】
測定端面936は、第一の実施形態と同様にスリーブ934の底面を形成するが、図11(b)に示すように、第一の実施形態と異なり、その中央部には、弾力センサ950の先端部が測定端面936を介してスリーブ934内外に移動できるようにするための開口部954が設けられている。電極937は、環状電極として測定端面936の円周部に沿って配設されている。
【0097】
第一の実施形態の光透過体70に対応する本実施形態の光透過体970は、図11(b)に示すように、開口部954と環状電極937の間の適宜な箇所に設けられている。光透過体970はその配置位置を除き、その構成、機能及び材料等は第一の実施形態の光透過体70と同じものとすることができるのでそれらについての詳細な説明は省略する。
【0098】
弾力センサ950の先端部には皮膚の弾力の測定時に皮膚と当接する接触子952が設けられているが、接触子952の表面は環状電極937と対をなす一方の電極938としても機能する。接触子952が設けられた弾力センサ950の先端部分は、弾力センサ950が皮膚に対して押圧されていない状態では、図11(a)に示すように開口部954から突出している。
【0099】
一方、弾力センサ950の後端部は、スリーブ934の上面に設けられた開口部954から突出した状態でスプリング(バネ)960を介して本体ケーシング912に連結されている。これによって、弾力センサ950を皮膚に対して弾性的に押圧すると共に、接触子952もまた、測定端面936の開口部954を介してスリーブ934内外に可動自在とされている。
【0100】
本体ケーシング912とスリーブ934とは、第一の実施形態と同様に、スリーブ934の上面に対向する本体ケーシング912の所定の位置に設けられたリング状のスプリング(バネ)962で連結されており、このスプリング962によって、スリーブ934、それゆえ測定端面936を皮膚に対して弾性的に押圧できるようになっている。したがって、接触子952と測定端面936を皮膚に当接させつつスリーブ934への押圧力を増すと、スプリング960及び962が縮むとともに、スリーブ934がセンサケーシング914内を本体ケーシング912に向かって(すなわち、図11(a)の矢印で示すZ方向に)移動するようになっている。
【0101】
押圧検出器958の構成、動作及び配置は、第一の実施形態の押圧検出器58と同様であるので詳細な説明は省く。
【0102】
尚、参照番号1250、1060でそれぞれ示されている本体ケーシング912内の二つのブロックは、それぞれ、後述の測定制御部からなるブロック、肌色/皮脂量/水分量/弾力の各データ測定回路からなるブロックである。
【0103】
図12は、第一の実施形態の機能ブロック図である図2に対応する本実施形態のプローブ900の機能ブロック図であり、プローブ900は、肌色データ測定回路1210と、センサ部930に設けられた肌色センサとから構成される肌色データ測定手段、皮脂量データ測定回路1220と、センサ部930に設けられた皮脂量センサとから構成される皮脂量データ測定手段(以上、第一の実施形態のものと同様の構成とすることができる)、水分量データ測定回路1230と、センサ部930に設けられた水分量センサとから構成される水分量データ測定手段(図13の1300)、弾力データ測定回路1240と、センサ部930に設けられた弾力センサとから構成される弾力データ測定手段(図14の1400)、及び測定制御部1250から構成される。プローブ本体部920は、肌色データ測定回路1210、皮脂量データ測定回路1220、水分量データ測定回路1230、弾力データ測定回路1240及び測定制御部1250を備える。
【0104】
測定制御部1250は、水分/弾力/皮脂量/肌色の各データ測定手段の制御、データ処理及び入出力処理等を含むプローブ全体の動作の制御を行う。肌色/皮脂量の各データ測定回路に関する測定制御部1250の動作は第一の実施形態と同様である。
【0105】
測定制御部1250には、第一の実施形態と同様の、外部のデータ処理装置1260との通信を行うためのI/F部1255が設けられており、このI/F部を介して測定された各データをデータ処理装置1260に送ることができる。データ処理装置1260は、所定の肌診断ソフトによって、プローブ900から送信されたデータに対して肌診断のための所定の処理を行い、その結果を、表示装置1270に表示したり、プローブ900に戻したりできるものであり、パーソナルコンピュータ等の一般的なコンピュータシステムで構築することができる。
【0106】
次に、測定時のプローブの押圧動作について説明する。
【0107】
測定を開始するために、オペレータが測定端面936を皮膚に近付けていくと、先ず、接触子952が皮膚に当接する。プローブ900を皮膚に対して押圧していくと、それに応じてスプリング960が縮み、接触子952はスリーブ934内に埋没する方向に移動する。さらに押圧力を加えていくと、接触子952の先端が測定端面936と同一平面をなした時点で測定端面936が皮膚に当接し、今度は、スプリング960と共にスプリング962が縮むことによって、接触子952と測定端面936が共に皮膚に接触した状態で、スリーブ934の上面が本体ケーシング912に向かって(図11(a)の矢印で示すZ方向に)移動する。
【0108】
スリーブ934への押圧力が所定の大きさに達すると、スリーブ934の上面が押圧検出器958のスイッチ端子を押し上げてスイッチが閉じる。スイッチが閉じると測定制御部1250に設けられた不図示のスイッチ回路に電流が流れて所定押圧力検出信号が測定制御部1250に伝送される。
【0109】
肌色データ測定手段及び皮脂量データ測定手段の構成及び動作は、第一の実施形態と同様であるので、以下、水分データ測定手段と弾力データ測定手段の構成及び動作について説明する。
【0110】
B−2.水分量データ測定手段の構成及び動作
図13は、水分量データ測定手段1300の構成及び動作を説明するための概念図であり、図11及び図12と同じ構成要素にはそれらの図面と同じ参照番号を付している。但し、説明の便宜上、以下の水分量データ測定手段の動作の説明に必要とされない部分は図中から省いている。
【0111】
水分量データ測定手段1300は、上述のように、水分量データ測定回路1230と、センサ部930に設けられた水分量センサとしての電極937及び938から構成され、電極937、938間に直流電圧及び交流電圧を印加し、それらの電極間の直流導電度及び交流導電度を測定し、測定したそれらの導電度を測定制御部1250に送るように動作する。ここで得られる交流導電度の測定データから換算して、皮膚の表層における水分量を求めることができる。
【0112】
水分量測定回路1230は、環状電極937と、接触子952と兼用された電極938との間に直流電圧及び交流電圧を印加するためのDC/AC電圧印加回路1310、及び、それらの電極間の直流導電度、交流導電度をそれぞれ測定するための直流導電度測定回路1320、交流導電度測定回路1330から構成される。
【0113】
本実施形態のDC/AC電圧印加回路1310は、直流電圧源を有する直流電圧印加手段1312と交流電圧源を有する交流電圧印加手段1314を備え、それらの間には、交流電源側に直流電圧が直接印加されないようにカップリングフィルタ1316が設けられている。
【0114】
ここで、直流電圧印加手段1312及び直流導電度測定回路1320を設けたのは、測定部位の皮膚の発汗状態を検出して、汗中を交流電流が流れることによる不正確な交流導電度の測定を回避するためである。すなわち、測定部位の皮膚が発汗していないときには、電極937、938間に3V程度の直流電圧を印加しても直流電流はほとんどまたは全く流れず、したがって、直流導電度測定回路1320によって測定された直流導電度はゼロかまたは極めて小さい値をとる。一方、測定部位の皮膚が発汗しているときには、電極937、938間に印加された直流電圧によって汗中を直流電流が流れ、直流導電度測定回路1320によって測定された直流導電度は比較的大きな値を取りうる。そこで、直流電圧を電極937、938間に印加したときのそれらの電極間の直流導電度を測定することによって、発汗の有無を判定することが可能である。
【0115】
以下では、電極937、938を皮膚に接触させた状態で水分量データ測定手段1300によって測定された直流導電度、交流導電度をそれぞれ、接触時直流導電度、接触時交流導電度という。接触時直流導電度、接触時交流導電度は、測定制御部1250に送られて、それぞれ、皮膚の発汗値、皮膚の水分値として内部メモリ1252に格納される。
【0116】
B−3.弾力データ測定手段の構成及び動作
図14は、弾力データ測定手段1400の構成及び動作を説明するための概念図であり、図11及び図12と同じ構成要素にはそれらの図面と同じ参照番号を付している。但し、説明の便宜上、以下の弾力データ測定手段の動作の説明に必要とされない部分は図中から省いている。
【0117】
弾力データ測定手段1400は、上述のように、弾力データ測定回路1240と、センサ部930に設けられた弾力センサ950から構成される。
【0118】
弾力データ測定手段1400は、弾力センサ950の振動子951を振動させて、その周波数を測定し、測定した振動周波数を測定制御部1250に送るように構成されている。
【0119】
弾力データ測定回路1240は、振動子951を自励発振させるための自励発振回路1412、及び、自励発振回路1412の周波数を計測する周波数測定回路1414から構成される。
【0120】
弾力データ測定手段1400の基本構成及び動作原理は、特開平5−322731号公報、特開平8−29312号公報等に記載されたものと同様である。すなわち、図14に示す構成において、振動検出素子953からの出力信号が自励発振回路1412中の不図示の増幅回路に入力され、該増幅回路で増幅された信号が振動子951に供給されて強制帰還を行わせることにより自励発振させ、周波数測定回路1414で、接触子952が皮膚に接触していない状態での振動子951の振動周波数(以下、非接触時周波数ともいう)と接触している状態での振動子951の振動周波数(以下、接触時周波数ともいう)を測定する構成としている。
【0121】
ここで、振動子951としては、圧電セラミック振動子、水晶振動子等を使用することができる。振動検出素子は、振動子951上に設けられ、振動子951の振動数を検出できるものであればよく、例えば、圧電セラミック素子、高分子圧電フィルム、圧電型加速度ピックアップ等を使用することができる。
【0122】
本実施形態では、上述のように水分量センサの電極の一方として接触子952を機能させるために接触子952に導電性を持たせる必要がある。このために、接触子952を、樹脂やセラミックス等で形成し、その表面に金やニッケルクロム等をメッキした構成としたり、接触子952全体を導電性材料から形成することができる。導電性材料としては、銅やアルミ等の金属を使用することができる。接触子952と直流電源及び交流電源とは銅線やスズメッキ線で電気的に接続することができる。尚、接触子952の形状については特に制限はなく、球状、円筒状、角柱状などとすることができる。また、接触子952の大きさは、一般に、直径5〜10mmの範囲から選択される。
【0123】
また、本実施形態では、振動子951、振動検出素子953として、それぞれ、圧電セラミック振動子を採用し、接触子952としては、樹脂にニッケルクロムをメッキした半球体(直径5mm)を採用した。
【0124】
周波数測定回路1414で測定された非接触時周波数及び接触時周波数は測定制御部1250に送られ、そこで、それらの周波数の差が計算されて、その差が弾力値として内部メモリ1252に格納される。
【0125】
B−4.プローブによる測定処理の流れ
次に、以上のように構成されたプローブ900の動作を図15に示すフローチャートを参照して説明する。第一の実施形態と同様に、各データ測定手段の動作の制御、各データ測定手段からのデータの処理、及び、プローブ内外への入出力処理を含むプローブ全体の動作制御は、測定制御部1250のCPU1251によって実行される内部メモリ1252に格納されたプログラムに基づいて実施される。
【0126】
尚、測定スイッチは、本体ケーシング912に設けられて、測定制御部1250の入力部1253の一部を構成する不図示のスイッチであり、測定中ランプ、発汗検知ランプ及び測定エラーランプは、いずれも、本体ケーシング912に設けられて、測定制御部1250の出力部1254の一部を構成する不図示のLEDランプである。
【0127】
ステップ150で、測定制御部1250は、オペレータからの測定開始指示、すなわち、測定スイッチがオンとなるのを待つ。この間、実際には、測定を開始するために、オペレータは、プローブ900が皮膚から離れた状態で、測定スイッチをオンにすることになる。
【0128】
測定スイッチがオンになったのを検出すると、ステップ152で測定制御部1250は皮脂量データ測定回路(図12の1220)に近赤外光の反射量を測定させるための制御信号を送出する。
【0129】
この制御信号に応答して、皮脂量データ測定回路は、近赤外LED972から近赤外光を光透過体970に向けて放射する。光透過体970を介してスリーブ934内に戻った近赤外反射光は、不図示の可視光遮断フィルタを通過した後、受光器974で検出され、検出された反射量(第一の実施形態において説明した近赤外基準反射量(電流値)とされる)が測定制御部1250に送られて、CPU1251の内部レジスタに保持される。この可視光遮断フィルタは、第一の実施形態の可視光遮断フィルタ(図6の610)に相当するものであり、それと同様に、受光器974の前に配置されて、可視光領域の外乱成分が受光器974で受光されるのを防止するためのものである。
【0130】
ステップ154で、測定制御部1250は、第一の実施形態における図8のステップ84と同様に、ステップ152で測定した近赤外基準反射量が妥当な値の範囲内にあるか否かを判定する。妥当な値の範囲内でないと判断した場合には、処理はステップ152に戻り、測定値が妥当な値の範囲に入るまで、近赤外光の反射量の測定(ステップ152)とその測定値が妥当な値の範囲にあるか否かの判断(ステップ154)が繰り返される。
【0131】
測定された近赤外基準反射量が妥当な値であると判定した場合には、測定制御部1250は、ステップ156で、弾力データ測定回路1240に振動周波数を測定させるための制御信号を送出し、この制御信号に応答して、弾力データ測定回路1240は、自励発振回路1412を起動して振動子951を振動させ、次に、周波数測定回路1414において振動子951の振動周波数を測定する。この周波数の値は測定制御部1250のCPU1251の内部レジスタに保持される。保持されたこの周波数は、オペレータが、プローブ900を皮膚に接触させる前に測定されたものとされることから、非接触時周波数である。
【0132】
ステップ158乃至162と並行して、オペレータは、プローブ900(の測定端面936)を皮膚に対して押圧することができ、これによってスプリング960及び962が圧縮される。
【0133】
ステップ158で、測定制御部1250は、肌色データ測定回路1210、皮脂量データ測定回路1220、水分量データ測定回路1230、弾力データ測定回路1240に、各データを測定させるための制御信号を送出する。この制御信号に応答して、各測定回路は、R、G、B各三波長の反射量、近赤外光の反射量、交流導電度、振動周波数をそれぞれ測定する。
【0134】
ステップ160で、測定制御部1250は、それらの測定データが、それぞれに対応する所定の値の範囲にあるか否かを判定する。いずれか一つの測定データが対応する所定の値の範囲内にない場合には、その範囲内に入るまで、(プローブの押し当てによるスプリング960、962の圧縮と並行して)それぞれのデータの測定(ステップ158)と、測定されたデータが対応する所定の値の範囲にあるか否かの判定(ステップ160)を繰り返す。
【0135】
これらの所定の値の範囲は、電極937、938、接触子952及び光透過体970が皮膚に接触しているときに測定されるべき妥当な値の範囲として実験的に予め決定されて、測定制御部1250の内部メモリ1252に格納されている。したがって、それぞれの測定値が対応する所定の値の範囲内にあれば、各測定手段が動作しており、かつ、電極937、938、接触子952及び光透過体970が共に皮膚に接触していると判断することができる。尚、ステップ160では、ステップ158で測定された全てのデータ値がそれぞれに対応する所定の値の範囲内に入るまでステップ158と160を繰り返すものとしたが、ステップ158で測定された交流導電度が対応する所定の値の範囲内にある場合には、次のステップ162に移行するようにしてもよい。
【0136】
ステップ160で上記全てのデータ値がそれぞれに対応する所定の値の範囲に入っていると判定した場合には、ステップ162で、測定制御部1250は、測定端面936への押圧力が所定の大きさになるまで、すなわち、所定押圧力検出信号が生成されるまで待つ。ここで、測定端面936に所定の大きさの押圧力が印加されているときの測定端面936と皮膚との接触状態は、接触時交流導電度、接触時周波数、及び接触時RGB反射量の測定に適し、かつ、光透過体970に皮脂が付着するのに適した状態とされる。
【0137】
所定押圧力検出信号を受信すると、測定制御部1250は、ステップ164で、水分量データ測定回路、弾力データ測定回路、及び肌色データ測定回路に、それぞれ、水分量測定開始信号、弾力測定開始信号及び肌色測定開始信号を送出すると共に、測定中ランプを点灯させて、プローブ900が測定中であることをオペレータに知らせる。
【0138】
水分量データ測定回路、弾力データ測定回路、肌色データ測定回路が、それぞれ、水分量/弾力/肌色測定開始信号を受信すると、接触時直流導電度及び接触時交流導電度の測定(ステップ170)、接触時周波数の測定(ステップ180)、及び接触時RGB反射量の測定(ステップ190)が同時に開始されて、それらの測定が同時並列的に実施される。
【0139】
ステップ190にけるR、G、Bの各三波長光の反射量の測定は第一の実施形態に関する図8のフローチャートにおけるステップ100と同様であるので、それについての説明は省き、ここでは、ステップ170と180における水分量データ測定手段と弾力データ測定手段の測定動作について説明する。
【0140】
先ず、ステップ170における水分量データ測定手段1300によるよる直流/交流導電度の測定動作から説明する。水分量データ測定回路1230は、水分量測定開始信号を受信すると、ステップ172で、DC/AC電圧印加回路1310によって電極938、937間に直流電圧と交流電圧を同時に印加し、直流導電度測定回路1320、交流導電度測定回路1330によってそれらの電極間の直流導電度及び交流導電度をそれぞれ測定する。
【0141】
測定制御部1250は、ステップ172で測定された直流導電度及び交流導電度をCPU1251の内部レジスタに保持する。
【0142】
ステップ174で、測定制御部1250は、直流導電度回路1320によって測定された直流導電度に基づいて測定部位の皮膚が発汗しているか否かを判断する。具体的には、測定された直流導電度が所定値以下(一実施形態では、この所定値は、測定限界下限値以下、たとえばゼロである)の場合には、測定制御部1250は、測定部位の皮膚は発汗していないと判断する。
【0143】
一方、測定された直流導電度が所定値より大きな値の場合には、測定制御部1250は、測定部位の皮膚が発汗していると判断して、ステップ176において、発汗検知ランプを点灯させる。オペレータは、発汗検知ランプの点灯によって、測定部位の皮膚が発汗しているために、水分量の正確な測定を実施できる状態にはないことを知ることができる。この場合は、図15には示していないが、オペレータが、測定を一旦中止し、汗を拭き取るなどの適宜な処理をした後、再度プローブの測定スイッチをオンにして、発汗が検知されないことを確認した後で測定を実施するようにするか、あるいは、そのまま測定を続行するかを選択できるようにプローブ900を構成してもよい。尚、ステップ172において、直流電圧と交流電圧を同時に印加するものとしたが、先に直流電圧を印加して発汗の有無を判断するようにしてもよい。
【0144】
次に、ステップ180における、弾力データ測定手段1400による接触時周波数の測定動作について説明する。弾力データ測定回路1240は、測定制御部1250から弾力測定開始信号を受信すると、ステップ182において、ステップ156と同様にして、自励発振回路1412を起動して振動子951を振動させ、ステップ184において、周波数測定回路1414において振動子951の振動周波数を測定する。これによって、接触子952が皮膚に接触した状態における振動周波数(接触時周波数)が測定される。この接触時周波数は、測定制御部1250のCPU1251の内部レジスタに保持される。
【0145】
測定制御部1250は、ステップ172、184及び190において各測定データが取得されると、ステップ200で測定中ランプを消灯させて、それらのデータが測定されたことをオペレータに通知する。オペレータはこの測定中ランプの消灯を確認することによって、皮脂量データの測定のためにプローブ900を皮膚から離すことができる。
【0146】
ステップ202乃至206と並行してオペレータがプローブ900を皮膚から離す過程で、スプリング960、962が伸長して押圧検出器958のスイッチが開き、所定押圧力検出信号がオフになる。
【0147】
測定制御部1250は、ステップ202において、水分/弾力/肌色/皮脂量の各四つのデータ測定手段に、交流導電度/振動周波数/R、G、Bの各三波長光の反射量/近赤外光の反射量をそれぞれ測定させ、ステップ204において、ステップ202で測定されたデータの各々が対応する所定の値の範囲内にあるか否かを判定する。
【0148】
これらの所定の値の範囲は、光透過体970が皮膚から十分離れているときに各測定手段によって測定されるべき妥当な値の範囲として予め実験的に決定されて、測定制御部1250の内部メモリ1252に格納されている。したがって、測定制御部1250は、ステップ202で測定された全てのデータ値がそれぞれに対応する所定の値の範囲内にあれば、測定端面936は皮膚から離れたと判断することができる。それらのデータ値の全てがそれぞれに対応する所定の値の範囲内に入るまでステップ202と204は繰り返される。
【0149】
光透過体970に付着した皮脂量(皮脂付着時近赤外反射量)の測定に関するステップ206乃至214は図8のフローチャートにおけるステップ116乃至124と同様であるので説明は省く。
【0150】
ステップ220において測定制御部1250は、ステップ172、184、190及び214においてそれぞれ測定された接触時交流導電度、接触時周波数、接触時RGB反射量、皮脂付着時近赤外反射量を内部レジスタから読み出して、それらのデータ値が、それぞれに対応する正常値の範囲内にあるか否かを判定し、いずれか一つが正常値の範囲内にない場合には、ステップ222において、測定中ランプを消灯するとともに測定エラーランプを点灯させてステップ150に処理を戻す。オペレータは、このエラー表示によって、有効な測定ができなかったことを知ることができる。
【0151】
尚、接触時RGB反射量及び皮脂付着時近赤外反射量の正常値の範囲は、第一の実施形態に関して図8のステップ130で述べたのと同様であり、接触時交流導電度及び接触時周波数の正常値の範囲は、電極937、938及び弾力センサ950の接触子952が皮膚に適切に接触しているときに測定される可能性のある交流導電度及び振動周波数の範囲として予め実験的に画定しておくことができる。これらの正常値の範囲は、測定制御部1250の内部メモリ1252に格納されている。
【0152】
ステップ220で、上記の全てのデータ値が正常値の範囲内にあると判定すると、測定制御部1250は、ステップ224で、測定された各データから皮膚の各性状値(発汗値、水分値、弾力値、肌色値、皮脂値)を求めて内部メモリ1252に格納する。具体的には、ステップ172で測定された接触時直流導電度、接触時交流導電度をそれぞれ、発汗値、水分値とし、ステップ156で測定された非接触時周波数とステップ184で測定された接触時周波数との差を弾力値とし、予め内部メモリ1252に格納されているRGB基準反射量とステップ190で測定された接触時RGB反射量との各波長光毎の比(R、G、Bの各三波長の反射率)を肌色値とし、ステップ152で測定された近赤外基準反射量とステップ214で測定された皮脂付着時近赤外反射量との比(近赤外反射率)を皮脂値としてそれぞれ内部メモリ1252に格納する。
【0153】
測定制御部1250は、ステップ226で測定中ランプを消灯して、すべての測定が正常に終了したことをオペレータに知らせる。
【0154】
以上のように、本発明の第二の実施形態は、所定の押圧力が測定端面936に加えられた時点で、測定制御部1250からの指示によって、皮脂量データ測定手段を除く三つのデータ測定手段がその測定動作を同時に開始し、それらの測定が終了してプローブが皮膚から離されると皮脂付着時近赤外反射量の測定に移行するように構成されている。したがって、第二の実施形態によれば、プローブを皮膚に接触させて離すという一回の操作でほぼ同時に、異なる五つの皮膚性状値を測定することができる。
【0155】
尚、第一の実施形態(図8のステップ112〜116)と同様に、ステップ202〜206の代わりに、プローブが皮膚から離れたことをオペレータが確認することによって皮脂量データの測定に移行するようにしてもよい。
【0156】
また、第二の実施形態の水分量/弾力データ測定手段のいずれか一方または両方については、従来構成のものを採用してもよい。すなわち、第二の実施形態の水分量データ測定手段において、特開平1−126535号に記載されたような、発汗検知のための直流電圧印加手段及び直流導電度測定回路を具備しない従来の水分量測定構成を採用してもよい。その場合、当然ながら、図15のステップ170における発汗検知に関するステップは存在しない。
【0157】
また、皮膚の表面温度を測定するための皮膚温度測定手段を測定端面936に設けることもできる。具体的には、サーミスタや熱電対などの接触型の温度センサを測定端面の適宜な箇所に設けて、測定端面936が皮膚に接触しているときに、皮膚の表面温度を測定するようにすることが可能である。測定制御部1250において、この温度情報と同時に測定された直流導電度(発汗情報)とを関連付けて内部メモリ1252に格納し、肌のほてりや血行状態等に関する診断を行う上で有益な情報として使用することができる。
【0158】
また、第一及び第二の実施形態の皮脂量データ測定手段は、光透過体を皮膚に接触させて皮脂を付着させた後で、プローブが皮膚から離れたときに皮脂付着時の近赤外光の反射量を測定するように構成されているが、この代わりに、特開2004−77332号公報に開示されているように、皮脂採取面すなわち光透過体を皮膚に接触させた状態で皮脂付着時の近赤外光の反射量を測定するようにしてもよい。上述の第一の実施形態においてかかる従来構成の皮脂量データ測定手段を採用した場合には、図8のステップ112乃至124に代えて、図8のステップ100と同時並列的に、図8のステップ120における皮脂付着時の近赤外光の反射量の測定を実施することができるので、肌色と皮脂量を同時に測定することが可能となる。また、上述の第二の実施形態においてかかる従来構成の皮脂量データ測定手段を採用した場合には、図15のステップ202乃至214に代えて、図15のステップ170、180及び190と同時並列的に、図15のステップ210における皮脂付着時の近赤外光の反射量の測定を実施することができるので、皮膚の水分量、発汗値、弾力、肌色の同時測定に加えて、さらに、皮脂量も同時に測定することが可能となる。
【0159】
また、第二の実施形態のセンサ部において、特開2001−46344号に記載されているような、水分量センサと弾力センサ間で水分量測定用の電極の一方を共用せず、測定端面に弾力センサとは独立した電極対を設けるようにした従来のセンサ構成を採用することも可能である。
【0160】
また、第二の実施形態において、二つのスプリング(960及び962)の両方を備えることは必須ではない。すなわち、スリーブと本体ケーシング間にはスプリング962を設けるが、弾力センサの後端部にはスプリング960を設けずに弾力センサを本体ケーシングまたはセンサケーシングに対して固定し、測定端面が皮膚に押し当てられる前の状態では、弾力センサの接触子がスリーブ内に後退した状態とされた構成を採用してもよい。この場合は、スリーブが押圧されてスプリング962が圧縮されるに伴って、弾力センサの接触子が測定端面の開口部に接近し、所定の押圧力がスプリング962を介してスリーブに印加された時点で、接触子の先端部と測定端面が共に皮膚に接触するようにすることができる。
【0161】
また、逆に、弾力センサの後端部と本体ケーシング間にはスプリング960を設けるが、スリーブにはスプリングは962を設けずにスリーブを本体またはセンサケーシングに対して固定して、測定端面が皮膚に押し当てられる前の状態では、弾力センサの接触子がスリーブ外に突出した状態とされた構成を採用してもよい。この場合は、弾力センサが押圧されてスプリング960が圧縮されるに伴って、弾力センサの接触子が測定端面の開口部に接近し、所定の押圧力がスプリング960を介して弾力センサに印加された時点で、接触子の先端部と測定端面が共に皮膚に接触するようにすることができる。
【0162】
また、第一及び第二の実施形態において、オペレータに動作状況を通知するために複数のLEDを用いたが、一つのLEDだけを用いて、その点灯の色や点滅周期を適宜変更するようにしてもよく、また、LEDの代わりにブザー音やLCD表示を採用してもよい。
【0163】
また、第一及び第二の実施形態の皮脂量データ測定手段における皮脂量センサの放射源として近赤外領域以外の波長領域の光を放射する放射源を採用することもできるが、可視光〜近赤外光の波長領域内の光を放射する放射源が好ましい。
【0164】
また、第一及び第二の実施形態の肌色データ測定手段におけるRGB LEDとしては
、Rの波長光として620nm〜640nm、Gの波長光として510nm〜530nm、Bの波長光として460nm〜480nmの範囲内の波長をそれぞれ放射するものを採用することができる。今回は、RGBLEDとして、R:630nm、G:520nm、B:470nmの各波長光を放射するものを使用した。
【0165】
また、第二の実施形態では、交流電圧と直流電圧を同じ電極間に印加する構成としたが、交流電圧印加用の電極対と直流電圧印加用の電極対を別個のものとしてもよく、たとえば、交流電圧印加用の電極対を図11に示す938と937で形成し、直流電圧印加用の電極対を、測定端面936の所定の位置に所定の形状及び大きさで配置された電極と図11に示す937とで形成することができる。この場合、DC/AC電圧印加回路における直流電圧印加手段と交流電圧印加手段とをカップリングフィルタを介さずに独立して設けることができ、交流電圧印加手段、直流電圧印加手段のそれぞれによって、交流電圧、直流電圧を対応するそれぞれの電極間に印加し、交流導電度測定回路、直流導電度測定回路のそれぞれによって、それらの電極間の交流導電度及び直流導電度を測定することができる。
【0166】
また、図8のステップ84、86、88、112〜116、130、132、図15のステップ154、158、160、202〜206、220、及び222をオプションとしてもよい。
【0167】
また、図8のステップ90、図15のステップ162に代えて、オペレータが、測定端面が皮膚に適度の押圧力で接触したことを確認した後、適宜に設けたスイッチをオンにすることにより、以降のステップが開始されるようにしてもよい。
【0168】
C.肌色値(R、G、Bの各三波長光の各反射率)の補正
上記第一及び第二の実施形態による肌色データ測定手段は、光透過体(70または970)を皮膚に接触させた状態でR、G、Bの各三波長光を放射するようにしているので、受光器(78または978)で受光されるR、G、Bの各三波長光は、光透過体(70または970)の下面に付着した皮脂による吸収・散乱の影響を受けることがある。そこで、より正確な肌色の測定を可能とするために、本発明の測定制御部(230または1250)は、肌色データ測定手段によって測定されたR、G、Bの各三波長光の各反射量から求めた反射率すなわち肌色値に対して、かかる皮脂の影響を除去する補正を行うための皮脂影響補正手段を具備することができる。
【0169】
本発明による皮脂影響補正手段について説明する前に、所定の皮脂量の皮脂がR、G、Bの各波長光の反射率に及ぼす影響を測定した測定データに基づいて、皮脂の影響を補正する方法について述べる。
【0170】
図9(a)、(b)、(c)は、それぞれ、反射率に及ぼす皮脂の影響をR、G、Bの各波長毎に示すグラフであり、次のような手順で得られたものである。
【0171】
先ず、所定の条件の下でR、G、Bの各波長光を照射して反射率が測定された、皮脂が付着していないいくつかのバイオスキン(人工皮膚)のうち、各波長光に対して、それぞれが互いに異なる所定の反射率を有する4つのバイオスキンを選択した(以下、これら4つの所定の反射率を基準反射率といい、たとえば、Rの波長光に対する基準反射率の値を、それぞれ、r、r、r、rとする)。ここで、R、G、Bの各波長光の反射率を求める際の基準となる反射量(それぞれ、R基準反射量、G基準反射量、B基準反射量)は、測定端面の下に配置された鏡面にR、G、Bの各波長光を照射し、鏡面から反射した各三波長光の反射量の測定値とする。
【0172】
4つのそれぞれのバイオスキンの上に所定量の皮脂を均一に付着させて、上記所定の条件と同一の条件の下で、R、G、Bの各波長光を照射して、その反射率を測定した。即ち、皮脂量として、単位面積(1.0cm)あたり0.6μl(μl=マイクロリットル)、0.8μl、1.0μlを選択し、これらの量の皮脂を4つのバイオスキンのそれぞれ1.0cm×1.0cm=1.0cmの部分に付着させて各波長光毎に反射率を測定した。
【0173】
先ず、Rの波長光に対する基準反射率rをx-y座標軸のx軸上にとり、基準反射率rのバイオスキンに上記既知の3つの皮脂量の皮脂のそれぞれを付着させて測定した反射率の大きさをy軸にとって、x=rの直線上にプロットした。これを他の基準反射率r、r、rについても同様にプロットしたのが図9(a)である。同様にして、G、Bの波長光についてプロットした結果を図9(b)、(c)にそれぞれ示す。
【0174】
図9から、各波長光について、基準反射率と所定量の皮脂を付着させた場合のR、G、Bの各波長光の反射率の比率はバイオスキンの基準反射率に関係なくほぼ一定であることがわかる。したがって、皮脂が付着しているときのR、G、Bの各波長光の反射率を対応するR、G、Bの各波長光の基準反射率で除した値をR、G、Bの各波長光の反射率に及ぼす皮脂量の影響の指標として用いることができる。この値を皮脂影響率と呼ぶことにすると、Rの波長光に対する皮脂影響率は、
皮脂影響率=(バイオスキンに皮脂が付着しているときのRの波長光の反射率)/(皮脂が付着していないバイオスキン自体のRの波長光の反射率) ・・・ (1)
である。G、Bの波長光に対する皮脂影響率も同様に計算される。
【0175】
図10(a)は、上記のようにして得られた皮脂影響率を、上記既知の三つの皮脂量に対してプロットしたものである。
【0176】
図10(b)は、最大強度が950nmの波長にある近赤外光を、上記3つの既知の皮脂量を含む、種々の既知の皮脂量を石英ガラスなどの透明ガラスに均一に付着させたものに対して照射したときの近赤外光の反射率(以下、950nm反射率という)をプロットしたグラフである。尚、950nm反射率を求める際の基準となる基準反射量(近赤外基準反射量)は、測定端面の下に配置された石英ガラスなどの透明ガラスに近赤外光を照射したときの、透明ガラスからの近赤外光の反射量の測定値とする。
【0177】
また、図10(c)は、上記既知の三つの各々の皮脂量に対する950nm反射率を横軸(x軸)に、同じ皮脂量に対する皮脂影響率を縦軸(y軸)にそれぞれとってプロットしたものである。
【0178】
ここで、図10(a)から、皮脂影響率と皮脂量とはほぼ直線関係にあることが予測される。また、図10(b)に示すように、950nm反射率と皮脂量とにもほぼ直線関係がある。したがって、図10(c)にプロットした950nm反射率と皮脂影響率との間にも一次式で近似できる直線関係があることが予測される。
【0179】
そこで、図10(c)にプロットしたデータに対して最小二乗法等の周知の直線近似法を適用することによって、各波長光について、皮脂影響率をy、950nm反射率をxとして両者の関係をy=a×x+bという一次式で近似した場合の定数a、bを算出することができる。この式によって、任意の近赤外光の反射率xに対する皮脂影響率yを求めることができる。
【0180】
この皮脂影響率yを式(1)の左辺に、実際に測定されたRの波長光の反射率を式(1)の右辺の分子に代入することによって、式(1)における「皮脂が付着していないバイオスキン自体の反射率」すなわち、皮脂影響率が補正されたRの波長光の反射率を得ることができる。G、Bの波長光についても、同様にして補正された反射率を得ることができる。
【0181】
尚、図10(c)において、950nm反射率をxとし、R、G、Bの各波長光に対する皮脂影響率をそれぞれy、y、yと表すと、それらの間の関係は次の一次式で近似された。
【0182】
=0.22x+0.92
=0.29x+0.91
=0.26x+0.90。
【0183】
以上の検討から、本発明のプローブ(10または900)を用いて、たとえば、以下の如き作業乃至処理を行うことにより、本発明のプローブで測定された肌色値に対する皮脂の影響を補正することができる。
【0184】
1)本発明によるプローブ(10または900)によって、R、G、Bの各波長光の反射率が測定された、皮脂が付着していない基準材料(たとえば、皮膚やバイオスキンなど)のうち、各波長光に対して、互いに異なる反射率を有するm個(m≧3が好ましい)の基準材料を用意する。尚、R、G、Bの各波長光に対するこれらの反射率をそれぞれ、R波長光基準反射率、B波長光基準反射率、G波長光基準反射率と呼ぶこととする。たとえば、各基準材料について、R波長光基準反射率をRr、Rr、・・・、Rrとする。下付の数字は基準材料を識別するために基準材料に付した番号である。
【0185】
2)n個(n≧3が好ましい)の異なる既知量の皮脂量を用意し、それらの皮脂量の皮脂の各々をそれぞれの基準材料に均一に付着させて、1)と同様の条件の下で、各波長光毎に反射率を測定する。この測定された反射率を測定反射率と呼ぶこととする。たとえば、Rの波長光について説明すると次のようになる。
【0186】
1)で測定されたRrの基準反射率を有する基準材料(すなわち番号1の基準材料)に上記既知の皮脂量のうちの番号1の皮脂量を付着させて、Rの波長光についての反射率を測定し、測定された測定反射率をRk11とする。同じ番号1の皮脂量を他の基準材料にも付着させてRの波長光について同様に反射率を測定し、測定された測定反射率をRk12、Rk13・・・、Rk1mとする。ここで、下付の数字のうち、最初の数字は皮脂量を識別するためにそれぞれの皮脂量に付した皮脂番号である。その次の数字は、基準材料を識別するためにそれぞれの基準材料に付した基準材料番号であり、1)で付したものと同じものである。
【0187】
以上を他の既知の皮脂量について繰り返し、さらにこれを、G、Bの各波長について繰り返す。
【0188】
3)測定制御部(230または1250)は、これらの測定反射率と基準反射率を外部I/F部(235または1255)を介して、外部の装置、たとえば、データ処理装置(240または1260)に送る。データ処理装置(240または1260)では、各波長毎に、各々の基準材料について、基準反射率と測定反射率との比を各皮脂量毎に求める。たとえば、Rの波長光については、番号1の既知の皮脂量について、Rk11/Rr、Rk12/Rr、Rk13/Rr、・・・を求める。さらに、これらの反射率の比の平均(これを平均反射比と呼ぶこととする)を計算して、これを、番号1の皮脂量のR波長光に対する測定皮脂影響率とする。すなわち、m個の基準材料について、番号1の皮脂量のR波長光に対する測定皮脂影響率は、(Rk11/Rr+Rk12/Rr+・・・+Rk1m/Rr)/mである。他の既知の皮脂量のR波長光に対する測定皮脂影響率も同様にして求める。
【0189】
G、Bの各波長光についても同様にして、それぞれの既知の皮脂量についてのG波長光、B波長光に対する測定皮脂影響率(ここでは平均反射比)を求める。
【0190】
尚、測定皮脂影響率としては、このような平均値に限らず、上記の反射率比の中央値を選択したり、重み付け平均をとるなど他の任意の統計的処理を施したものを採用しても良い。
【0191】
4)本発明のプローブ(10または900)によって、上記複数の既知の皮脂量を含むいくつかの既知の皮脂量について近赤外反射率(以下、較正用近赤外反射率という)をそれぞれ測定して内部メモリ(232または1252)に格納する。全ての皮脂量について測定が終了すると測定制御部(230または1250)は、それらの測定値を外部I/F部(235または1255)を介してデータ処理装置(240または1260)に送る。
【0192】
5)データ処理装置(240または1260)では、上記既知の皮脂量の各々ついて、3)で得られたR、G、Bの各波長光の測定皮脂影響率(y、y、yとする)と、それと同じ皮脂量に対して4)で測定された較正用近赤外反射率(xとする)とを対応付けて、対応するもの同士を組にする(尚、この対応付けは、人為的に行うこともできる)。データ処理装置(240または1260)は、他の既知の皮脂量についても同様に対応付けを行い、皮脂量毎に得られたそれぞれn個のxとy、xとy、xとyの組を外部I/F部(235または1255)を介して本発明のプローブ(10または900)に送る。
【0193】
6)本発明のプローブ(10または900)は、受け取った複数のxとy、xとy、xとyの組を内部メモリ(232または1252)に補正テーブルとして格納し、これらの複数の組に対して、それらの関係を
=ax+b ・・・(2)
=ax+b ・・・(3)
=ax+b ・・・(4)
で表したときの定数a、b、a、b、a、bを最小二乗法等の周知の直線近似法に基づく演算を行って決定する。
【0194】
7)本発明のプローブ(10または900)において実際の人の皮膚についてR、G、Bの各三波長光の反射率の測定を行い、内部メモリ(232または1252)に格納する(これは、たとえば、図8のステップ134または図15のステップ224において実施される)。
【0195】
8)本発明のプローブ(10または900)によって、7)で測定したのと同じ部位の皮膚について近赤外反射率(皮脂値)の測定を行い、内部メモリ(232または1252)に格納する(これは、たとえば、図8のステップ134または図15のステップ224において実施される)。
【0196】
9)8)で測定された近赤外反射率を上記式(2)〜(4)のxに代入することにより、y、y、yを求める。これらのy、y、yは、それぞれ、R、G、Bの各波長光の反射率に対する皮脂影響率である。
【0197】
10)7)で測定されたR、G、Bの各波長光の反射率をX、X、Xとし、皮脂の影響が補正された各波長光の肌色値、すなわち、R、G、Bの各波長光の補正後の反射率をそれぞれ、Rc、Gc、Bcとすると、上記(1)式を参照して、y=X/Rc、y=X/Gc、y=X/Bcであるから、それぞれ、Rc=X/y、Gc=X/y、Bc=X/yを計算することにより、皮脂の影響が補正されたR、G、Bの各波長光の反射率、したがって、補正された肌色値が求められる。
【0198】
そこで、本発明のプローブにおける測定制御部(230または1250)の一実施例による皮脂影響補正手段を、上記第一の実施形態の測定制御部230におけるCPU231、内部メモリ232(または、上記第二の実施形態におけるCPU1251、内部メモリ1252)によって構成して、以下の処理を実行することによって、測定されたR、G、B各三波長光の反射率を同じ部位について測定された近赤外反射率、すなわち、皮脂値を用いて補正することができる。
【0199】
1.上記1)〜6)の手順にしたがって、R、G、Bの各波長毎に、複数の既知の皮脂量の各々の測定皮脂影響率と、同じ皮脂量について測定された較正用近赤外反射率からなる複数のデータの組を外部I/F部(235または1255)を介して受信し、内部メモリ(232または1252)に補正テーブルとして格納する。たとえば、Rの波長光に対する測定皮脂影響率は、n個の既知の皮脂量のそれぞれについて存在し(これらを、それぞれ、yr1、yr2、・・・yrnとする)、較正用近赤外反射率として、x、x、・・・xが存在する。下付の数字1、2、・・・nは、皮脂量を識別するためのものであり、数字が同じものは同じ皮脂量についてのものであることを表している。したがって、R波長光について、{(x、yr1)、(x、yr2)・・・(x、yrn)}の組ができる。G、B波長光についても同様である。
【0200】
2.R、G、Bの各波長毎に、1.で得られた値の組について、皮脂影響率と較正用近赤外反射率の関係を表す関係式を求める。すなわち、ここではその関係式を、
測定皮脂影響率=a×(較正用近赤外反射率)+b ・・・ (5)
で表される一次式として、最小二乗法等の周知の直線近似法に基づく演算を行い、係数a、bを求める。式(5)は、R、G、Bの波長光毎に存在する。
【0201】
3.測定された近赤外基準反射量と皮脂付着時近赤外反射量との比をとって近赤外反射率を求め、この近赤外反射率についてa×(近赤外反射率)+bを計算して、R、G、Bの各波長光についての皮脂影響率を決定する。
【0202】
4.測定されたR、G、Bの各基準反射量とR、G、Bの各接触時反射量の比をとり、各波長光についての反射率を求める。
【0203】
5.4.で得られた各R、G、Bの各波長光の反射率に対して、各波長光毎に、各波長光の反射率を同じ波長光の皮脂影響率で除して、その結果を皮脂の影響が排除された補正後の各波長光の反射率とする。
【0204】
以上の処理によって、皮脂の影響が補正された肌色値が求められる。
【0205】
尚、上記では、本発明のプローブとデータ処理装置とのデータの通信を行い、データ処理装置において、測定皮脂影響率の計算や、測定皮脂影響率と較正用近赤外反射率との組み合わせを実施することとしたが、本発明のプローブの測定制御部にこれらの処理を行う手段を組み込んで(たとえば、内部メモリに対応するプログラムを実装するなどして)、本発明のプローブ単体で、上記の補正処理を完結するようにすることもできる。一方、上記2.における係数a、bの決定までをデータ処理装置で行い、測定皮脂影響率と、較正用近赤外反射率からなるデータの組に代えてそれらの係数のみを外部I/F部を介して、測定制御部で受信するようにしてもよい。
【0206】
次に、CPU231、内部メモリ232(または、上記第二の実施形態におけるCPU1251、内部メモリ1252)によって実現される本発明の別の実施例による皮脂影響補正手段について説明する。
【0207】
本発明のプローブにおける肌色データ測定手段によって、R、G、Bの各波長毎に予め測定されたR基準反射量、G基準反射量、B基準反射量と、光透過体が皮膚に接触しているときに測定された、R、G、Bの各波長光の反射量(それぞれ、接触時R反射量、接触時G反射量、接触時B反射量)とにおける、同じ波長光間の反射量の比を、それぞれ、接触時R反射率、接触時G反射率、接触時B反射率とする。
【0208】
本発明のプローブにおける皮脂量データ測定手段によって、光透過体に皮脂が付着していないときに測定された近赤外光の反射量(近赤外基準反射量)と、ある皮脂量の皮脂が光透過体に付着しているときに測定された近赤外光の反射量(皮脂付着時近赤外反射量)との比を、皮脂付着時近赤外反射率とする。
【0209】
皮膚に皮脂が付着していないときに測定された接触時R反射率、接触時G反射率、接触時B反射率(それぞれ、C、C、Cとする)と、皮膚にある皮脂量の皮脂が付着しているときに測定された接触時R反射率、接触時G反射率、接触時B反射率(それぞれ、X、X、Xとする)とのそれぞれの比(それぞれ、X/C、X/C、X/C)を、接触時R反射率、接触時G反射率、接触時B反射率のそれぞれに対する当該ある皮脂量の皮脂影響率とする。
【0210】
本発明のプローブによって、上記C、C、Cと、第1、第2、・・・第n(但し、n≧2の整数)の互いに異なる既知の皮脂量を皮膚に付着させたときの接触時R反射率、接触時G反射率、接触時B反射率を測定する。これらの測定値を外部I/F部(235または1255)を介してデータ処理装置(240または1260)に送る。データ処理装置(240または1260)では、接触時R反射率、接触時G反射率、接触時B反射率のそれぞれに対する、第1、第2、・・・、第nの皮脂の皮脂影響率を計算して、それぞれ、(yr1、yr2、・・・、yrn)、(yg1、yg2、・・・、ygn)、(yb1、yb2、・・・、ybn)とする。
【0211】
本発明のプローブによって上記n個のそれぞれの既知の皮脂量の皮脂が光透過体に付着しているときに測定された近赤外反射率をx(x=x、x、・・・、x)として、外部I/F部(235または1255)を介してデータ処理装置(240または1260)に送る。データ処理装置(240または1260)において、接触時R反射率、接触時G反射率、接触時B反射率の各々に対する皮脂影響率と皮脂付着時近赤外反射率とを同じ皮脂量のものについて組み合わせた一対のデータからなる複数のデータの組を生成する。すなわち、Rの波長光について、{(x、yr1)、(x、yr2)、・・・(x、yrn)}なる第一のデータの組を、Gの波長光について、{(x、yg1)、(x、yg2)、・・・(x、ygn)}なる第二のデータの組を、Bの波長光について、{(x、yb1)、(x、yb2)、・・・(x、ybn)}なる第三のデータの組を生成する。
【0212】
ここで、本発明の皮脂影響補正手段は、以下の処理を行う。
a.データ処理装置(240または1260)から、外部I/F部(235または1255)を介して、第一乃至第三のデータの組を受信して、内部メモリ(232または1252)に格納し、
b.内部メモリ(232または1252)から第一乃至第三のデータの組を読み出して、第一、第二、及び第三の各データの組(x、y)毎に、xとyの関係式(この関係式は典型的には一次式である)を求め、
c.光透過体を皮膚に接触させたときに、肌色データ測定手段によって測定されたR、G、Bの各波長光の反射量(接触時R反射量、接触時G反射量、接触時B反射量)から、接触時R反射率X、接触時G反射率X、接触時B反射率Xを求め、
d.上記cにおいて光透過体を皮膚に接触させたことによって光透過体に付着した皮脂に対して、皮脂量データ測定手段によって測定された近赤外光の反射量(皮脂付着時近赤外反射量)から、皮脂付着時近赤外反射率を求め、
e.上記dで得られた皮脂付着時近赤外反射率をxとして、上記bで得られた関係式からR、G、Bの各波長光毎の皮脂影響率(それぞれ、y、y、yとする)を求め、
f.上記cにおいて得られた接触時R反射率X、接触時G反射率X、接触時B反射率Xと上記eにおいて得られた皮脂影響率y、y、yについて、E=X/y、E=X/y、E=X/yを計算し、これらのE、E、Eを、それぞれ、皮脂の影響が除去された、接触時R反射率X、接触時G反射率X、接触時B反射率Xの補正値とする。
【0213】
尚、上記a.では、測定制御部は、第一乃至第三のデータの組を外部I/F部を介して受信するようにしているが、測定制御部においてそれらのデータの組を生成することによって、本発明のプローブ単体で、上記の補正処理を完結するようにすることもできる。一方、上記b.における関係式の決定までをデータ処理装置で行い、第一乃至第三のデータの組に代えてそれらの関係式の係数のみを外部I/F部を介して、測定制御部で受信するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0214】
10、900 プローブ
36、936 測定端面
70、970 光透過体
72、972 近赤外放射源
74、974 近赤外光受光器
76、976 フルカラー(RGB)放射源
78、978 RGB光受光器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の性状を測定するためのプローブであって、
該プローブの端部に設けられた測定端面と、
該測定端面に配設された光透過体と、
該プローブ内に設けられた、RGB放射源、第一の受光器、及び前記光透過体からなる肌色センサと、
該プローブ内に設けられた、近赤外放射源、第二の受光器、及び前記光透過体からなる皮脂量センサと、
前記測定端面が所定の押圧力で押圧されているか否かを検出するための押圧力検出手段と、
前記光透過体が皮膚から離れた状態にあることを検知するための検知手段
を備え、
前記RGB放射源は、R、G、Bの各波長光を前記光透過体を通して前記プローブ外へと放射し、前記第一の受光器は、前記光透過体を介して前記プローブ内へ戻された前記R、G、Bの各波長光の反射量を検出するように構成され、
前記近赤外放射源は、近赤外光を前記光透過体を通して前記プローブ外へと放射し、前記第二の受光器は、前記光透過体を介して前記プローブ内へと戻された前記近赤外光の反射量を検出するように構成され、
前記押圧力検出手段によって前記測定端面が所定の押圧力で押圧されていることが検出されたときに、前記第一の受光器によって検出されたR、G、Bの各波長光の反射量が測定されるようにし、及び、
前記光透過体が皮膚に接触した後、前記検知手段によって、該光透過体が皮膚から離れた状態にあることが検知されたときに、前記近赤外放射源から放射された近赤外光の反射量が前記第二の受光器によって検出され、この近赤外光の反射量に基づいて皮膚の皮脂量が測定されるようにした、プローブ。
【請求項2】
前記光透過体の底面が平面状であって、該底面が、前記測定端面と同一平面をなすように前記光透過体が配設された、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記肌色センサ及び前記皮脂量センサを収容するためのスリーブを備え、
前記測定端面は該スリーブの底面を形成し、
前記光透過体は、前記測定端面に隙間なく一体的に配設された、請求項1または2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記第二の受光器は、前記光透過体が皮膚に接触する前に前記近赤外放射源によって放射された近赤外光の反射量を第一の反射量として検出し、該光透過体が皮膚に接触した後、前記検知手段によって、該光透過体が皮膚から離れた状態にあることが検知されたときに該近赤外放射源によって放射された近赤外光の反射量を第二の反射量として検出し、これら第一の反射量と第二の反射量とに基づいて、皮膚の皮脂量が測定されるようにした、請求項1乃至3のいずれかに記載のプローブ。
【請求項5】
前記近赤外放射源として、その放射光の強度が、890nm〜990nmの波長領域中の所要の波長において最大強度を有するものが選択される、請求項1乃至4のいずれかに記載のプローブ。
【請求項6】
前記第二の受光器の前に、該第二の受光器による外乱光の受光を阻止するための可視光遮断フィルタを設けた、請求項1乃至5のいずれかに記載のプローブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−13756(P2013−13756A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202678(P2012−202678)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【分割の表示】特願2007−335632(P2007−335632)の分割
【原出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】