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皮膚感作性物質の検出および皮膚感作性物質と皮膚刺激性物質との識別を同時に行う方法
説明

皮膚感作性物質の検出および皮膚感作性物質と皮膚刺激性物質との識別を同時に行う方法

【課題】簡便に、かつ特別な機器を用いることなく、皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質を検出でき、これらを同時に識別することができる方法を提供する。
【解決手段】マウス1の一方の耳介3に被験物質を塗布するステップS1と、一定期間後に、他方の耳介3に同じ被験物質を塗布するステップS2と、前記他方の耳介3における惹起反応を検出するステップS3とを含む、皮膚感作性物質の検出および皮膚感作性物質と皮膚刺激性物質との識別を同時に行う方法、皮膚感作性物質または皮膚刺激性物質の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に、皮膚感作性物質を検出し、なおかつ、皮膚感作性物質と皮膚刺激性物質との識別を同時に行う新規な手法に関する。
【0002】
また本発明は、皮膚感作性物質の新規な検出方法、ならびに、皮膚刺激性物質の新規な検出方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
化粧品、洗剤などの開発において、その主成分の原料、添加剤などとして材料を選択する場合、その材料に触れた消費者などにおいて皮膚免疫応答が惹起される性質を有する(「皮膚感作性」を有する)、皮膚に一過性の刺激を与える性質を有する(「皮膚刺激性」を有する)かを判別する必要がある。特に、皮膚感作性を有する物質(皮膚感作性物質)は、消費者の感受性によっては重篤なアレルギー反応を引き起こしてしまう場合もあり、皮膚感作性の有無の検出は特に重要である。
【0004】
天然物、化学物質の皮膚感作性を検出する方法としては、従来、モルモット、マウスなどの動物を用いる方法、培養細胞を用いる方法、さらには、ペプチドとの結合性を調べる方法などが開発されている。これらの方法は、いずれも、ヒトにおける皮膚感作性と80%程度の相関があることが明らかにされており、天然物、化学物質の皮膚感作性の検出に有効であることが示されている。
【0005】
化学物質などによる感作の成立には、大きく分けて、2つの段階があることが知られている。第一の段階は、化学物質が体内に入って、生体内のタンパク質などと結合し、これを樹状細胞が異物として認識し、一連の免疫応答を開始する「感作段階」である。第二の段階は、感作されたリンパ球が全身に広がり、再び、同一の化学物質などが体内に入ったときに、よりすばやく、より激しい応答を呈する「惹起段階」である。すなわち、上述した従来の皮膚感作性を検出する手法は、感作の成立のいずれかの段階を検出することを目的としている。
【0006】
たとえば、アジュバントを用いるGPMT(Guinea Pig Maximisation Test)法、アジュバントを用いないビューラー法は、「惹起段階」を検出する手法であり、これらの試験で陽性であるということは、原理的かつ原則的に感作が成立していると判断することができる(たとえば、「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、406 皮膚感作性、[平成23年9月12日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/ghs/tgj/tg406j.pdf>(非特許文献1)を参照。)。ただし、これらの試験は、惹起を確認するために、試験期間としては、4週間以上の時間を必要としてしまう。また、これらの方法はモルモットを用いる方法であり、動物愛護の観点から代替し得る方法を見出すことが課題とされていた。
【0007】
近年では、皮膚感作性を検出する方法として、モルモットではなくマウスを用いたLLNA(Local Lymph Node Assay、局所リンパ節試験)が主流となっている(たとえば、「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、429 皮膚感作:局所リンパ節試験、[平成23年9月12日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/ghs/tgj/tg429j.pdf>(非特許文献2)を参照。)。LLNAは、「感作段階」を検出する手法であり、試験開始1日目、2日目、3日目に、マウスの両耳に被験物質を塗布した後、6日目に、マウスから耳介リンパ節を採取する。被験物質が皮膚感作性物質であれば、耳介リンパ節においてリンパ球の増殖を惹起する。リンパ球の増殖は適用された用量(アレルゲンの効力)に比例するため、LLNAでは、短い試験期間で、客観的かつ定量的に簡単に皮膚感作性を検出することができる。
【0008】
しかしながら、上述のLLNAは、感作性の検出にラジオアイソトープ(RI)であるH-thymidineを用いることから、日本においては実施できる施設に制限があるという実情があった。このため、その改良法として、放射性物質を用いずに、生物発光によりATP(アデノシン三リン酸)を定量することで、リンパ球の増殖の指標とする、LLNA:DA(modified LLNA of Daicel based on ATP)が提案されている(たとえば、「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、442A 皮膚感作性:局所リンパ節試験:DA、[平成23年9月12日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/ghs/tgj/tg442aj.pdf>(非特許文献3)を参照。)。
【0009】
LLNA、LLNA:DAのいずれの場合でも、一部の皮膚刺激性物質、界面活性剤などを試験に供した場合に、偽陽性(ある試験法で、被験物質が実際は陰性または非活性であるにもかかわらず、誤って陽性または活性と判定されること)になることが報告されている(たとえば、Christine Garcia et al., "Comparative testing for the identification of skin-sensitizing potentials of nonionic sugar lipid surfactants", Regulatory Toxicology and Pharmacology, 58, 2010, p301-307(非特許文献4)を参照)。したがって、マウスを用いて皮膚刺激性物質や界面活性剤を評価するときには、試験濃度と皮膚刺激性の関係や、構造情報も含めて、総合的な判断が必要とされている(たとえば、David Basketter et al., "Application of a weight of evidence approach to assessing discordant sensitisation datasets:Implications for REACH", Regulatory Toxicology and Pharmacology, 55, 2009, p90-96(非特許文献5)を参照)。
【0010】
また、たとえば、G. Frank Gerberick et al., "Use of a B Cell Marker(B220) to Discriminate between Allergens and Irritants in the Local Lymph Node Assay", Toxicological Sciences, 68, 2002, p420-428(非特許文献6)には、マウスを用いた試験法として、フローサイトメーターを用いて、細胞表層抗原を検出することにより、皮膚感作性物質と皮膚刺激性物質とを識別する手法が提案されている。しかしながら、このような非特許分文献6に記載された手法を実施するためには、特別な装置が必要となってしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、406 皮膚感作性、[平成23年9月12日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/ghs/tgj/tg406j.pdf>
【非特許文献2】「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、429 皮膚感作:局所リンパ節試験、[平成23年9月12日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/ghs/tgj/tg429j.pdf>
【非特許文献3】「経済協力開発機構(OECD)の化学物質の試験に関するガイドライン」、442A 皮膚感作性:局所リンパ節試験:DA、[平成23年9月12日検索]、インターネット<URL:http://www.nihs.go.jp/hse/chem-info/ghs/tgj/tg442aj.pdf>
【非特許文献4】Christine Garcia et al., "Comparative testing for the identification of skin-sensitizing potentials of nonionic sugar lipid surfactants", Regulatory Toxicology and Pharmacology, 58, 2010, p301-307
【非特許文献5】David Basketter et al., "Application of a weight of evidence approach to assessing discordant sensitisation datasets:Implications for REACH", Regulatory Toxicology and Pharmacology, 55, 2009, p90-96
【非特許文献6】G. Frank Gerberick et al., "Use of a B Cell Marker(B220) to Discriminate between Allergens and Irritants in the Local Lymph Node Assay", Toxicological Sciences, 68, 2002, p420-428
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、簡便に、かつ特別な機器を用いることなく、皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質を検出でき、これらを同時に識別することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、マウスの一方の耳介に被験物質を塗布するステップと、一定期間後に、他方の耳介に同じ被験物質を塗布するステップと、前記他方の耳介における惹起反応を検出するステップとを含む、皮膚感作性物質の検出および皮膚感作性物質と皮膚刺激性物質との識別を同時に行う方法を提供する(以下、当該方法を「第1の方法」と呼称する。)。
【0014】
本発明はまた、マウスの一方の耳介に被験物質を塗布するステップと、一定期間後に、他方の耳介に同じ被験物質を塗布するステップと、前記他方の耳介における惹起反応を検出するステップとを含む、皮膚感作性物質の検出方法を提供する(以下、当該方法を「第2の方法」と呼称する。)。
【0015】
本発明はさらに、マウスの一方の耳介に被験物質を塗布するステップと、一定期間後に、他方の耳介に同じ被験物質を塗布するステップと、前記他方の耳介における惹起反応を検出するステップとを含む、皮膚刺激性物質の検出方法も提供する(以下、当該方法を「第3の方法」と呼称する。)。
【0016】
上述した本発明の第1の方法、第2の方法、第3の方法(以下、これらを「本発明の方法」と総称する。)における一定期間は、7日以上2週間以内であることが好ましい。
【0017】
また本発明の方法は、惹起反応の検出を、以下の(a)〜(e)の少なくともいずれかの方法によって行うことが好ましい。
【0018】
(a)マウスの左右の耳介リンパ節の重量を測定する、
(b)マウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量を測定する、
(c)マウスの左右の耳介の厚みを測定する、
(d)マウスの左右の耳介リンパ節のDNA量を測定する、
(e)マウスの左右の耳介の重量を測定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、マウスを用いて、簡便かつ短期間で、特別な装置を必要とせずに、被験物質が皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質であるか否かを検出でき、また、皮膚感作性物質の検出および皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質の同時識別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の方法を模式的に示す図である。
【図2】実験例での各ケージにおける測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の方法を模式的に示す図である。本発明の皮膚感作性物質の検出および皮膚感作性物質と皮膚刺激性物質との識別を同時に行う方法(第1の方法)、皮膚感作性物質の検出方法(第2の方法)、ならびに、皮膚刺激性物質の検出方法(第3の方法)は、いずれも、以下のステップを共通して含む。
【0022】
(1)マウス1の一方の耳介2に被験物質を塗布するステップ(ステップS1)、
(2)一定期間後に、他方の耳介3に同じ被験物質を塗布するステップ(ステップS2)、
(3)前記他方の耳介3における惹起反応を検出するステップ(ステップS3)。
【0023】
ここで、本発明の方法に用いるマウスについては特に限定されないが、これまで世界的に多くの統計データが蓄積されてきたLLNA、LLNA:DAとの相関性が高ければ、LLNA、LLNA:DAと試験結果を照合しやすくなることから、たとえばCBA/Jの系統の未経産で非妊娠の若齢(8〜12週齢)の雌マウスなど、LLNA、LLNA:DAに従来よりよく用いられているマウスを用いることが好ましい。
【0024】
本発明の方法におけるステップS1では、まず、マウス1の一方の耳介2に被験物質を塗布する。ここで、「耳介」は、マウスの外耳のうち外側に張り出している部分を指す。被験物質を塗布する部分は耳介に含まれるいずれの領域であってもよいが、塗布のしやすさ、LLNA、LLNA:DAで蓄積されたデータと比較しやすいなどの観点から、耳背部の領域が好ましい。
【0025】
本発明において用いられる「被験物質」は、溶媒または分散媒に溶解または分散させることでマウスの耳介に塗布可能となる被験物質塗布液に調製できるものであればよく、皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質、その他皮膚感作性、皮膚刺激性のいずれも示さない物質など、未知の材料、公知の材料のいずれもを包含する。なお、被験物質は、非特許文献3に記載された定義に沿って、単一の化合物であってもよく、また、多成分(最終製品、調製物など)からなるものであってもよい。溶媒、分散媒などは、当分野において用いられている公知の溶媒、分散媒を被験物質に応じて用いればよく、たとえば、アセトン/オリーブオイル(4:1(v/v))(AOO)、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。中でも、陽性対照(PC)として用いた場合に一貫した応答を示すことから、アセトン/オリーブオイル(4:1(v/v))(AOO)が好ましい。
【0026】
「皮膚感作性物質」とは、個体が誘導性アレルゲンに局所的に曝露された際に生じる免疫学的過程によって皮膚免疫応答を惹起し、その結果、接触感作性の発現に至る性質(皮膚感作性)を有する物質を指す。このような皮膚感作性物質としては、たとえば、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド(HCA)、イソオイゲノール、ジニトロクロロベンゼン(DNCB)、オイゲノール、パラフェニレンジアミン、コバルトクロライド、シトラル、イミダゾイルウレアなどが知られている。また、「皮膚刺激性物質」とは、皮膚に対し一過性の刺激を与える性質(皮膚刺激性)を有する物質を指し、このような皮膚刺激性物質として、たとえば、塩化ベンザルコニウム、ラウリル硫酸ナトリウムなどが知られている。なお、上記に例示したイソオイゲノール、DNCBなどのように、皮膚感作性を有し、かつ、皮膚刺激性を有するものも知られている。
【0027】
本発明の方法において、ステップS1で一方の耳介2に塗布する被験物質の量(投与量)は、LLNA、LLNA:DAで採用される基準(非特許文献2、3などを参照)で調製されることが好ましいが、これに限定されるものではない。被験物質塗布液中の被験物質の濃度についても特に制限されるものではないが、耳介が欠損するなどの著しい毒性、腐食性を示さない濃度であれば、0.01〜100%(w/v)の範囲内であることが好ましく、また、たとえば、LLNA、LLNA:DAなどで求めたEC3の値の、0.2倍から50倍の範囲内であることがより好ましい。これは、化学物質などの、刺激性及び感作性にはばらつきがあるが、本試験法では、感作の判定に影響を与える刺激性の影響を無視して、感作性を評価できるためであると共に、LLNA、LLNA:DAで得られた結果を有効に活用できるためである。
【0028】
また本発明において、ステップS1における被験物質塗布液の塗布回数は、1回の塗布量、被験物質塗布液中の被験物質の濃度、感作性の強さにも依存するが、1〜10回であることが好ましく、1〜3回であることが好ましく、LLNA、LLNA:DAとの相関性を高めることができる観点からは3回であることが特に好ましい。なお、被験物質を塗布する耳介の領域は、複数回の塗布ごとに(たとえば1回目の塗布と2回目の塗布とで)同じであってもよいし、同じ側の耳介であれば異なっていてもよい。また、ステップS1における塗布の間隔についても特に制限されないが、LLNAとの相関性を高めることができることから、LLNAで採用されているように1日目、2日目、3日目に塗布することが好ましい。この場合、各塗布の間に少なくとも12時間以上の間隔をあけることが好ましく、同一の時刻に塗布するようにすることが特に好ましい。
【0029】
なお、LLNA:DAにおいて、被験物質を塗布する前に、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などを予め被験物質を塗布する耳介に塗布しておくことで、検出の感度が上昇することが知られており、本発明の方法においても、これを採用してもよい。SDSを用いる場合、その濃度は、0.01〜10%の範囲が好ましく、0.1〜1%の範囲がより好ましい。
【0030】
続くステップS2では、一定期間後に、他方の耳介3に同じ被験物質を塗布する。この「一定期間」について特に制限するものではないが、被験物質が皮膚感作性物質である場合には、この一定期間が当該皮膚感作性物質による感作開始から惹起までの期間となることから、7日以上2週間以内であることが好ましく、9日以上12日以内であることがより好ましい。一定期間が7日未満であると、被験物質が皮膚感作性物質であった場合に、感作されたリンパ球の伝播による全身の感作が未だ起こっていないか起こっていたとしても検出には不十分であると言う傾向にあり、また、2週間を超えても、感作性の検出、刺激との区別は可能であると考えるが、従来のモルモットを用いた試験と比較して、試験期間の短縮というメリットが薄れてしまう。
【0031】
本発明の方法において、ステップS2で他方の耳介3に塗布する被験物質の量(投与量)、被験物質塗布液中の被験物質の濃度についても特に制限はされないが、LLNA、LLNA:DAの豊富なデータを活用するという理由からは、ステップS1において一方の耳介2に塗布した1回分の被験物質の量、濃度と同程度であることが好ましい。また、ステップS2における被験物質塗布液の塗布回数について特に制限されないが、1回であることが好ましい。
【0032】
本発明の方法におけるステップS3では、ステップS2で被験物質を塗布した他方の耳介3における惹起反応を検出する。この惹起反応を検出する方法は、耳介リンパ節の増殖、皮膚反応を定量化できるのであれば特に制限されるものではなく、公知の方法を必要に応じて適宜組み合わせて行うことができるが、以下の(a)〜(e)の少なくともいずれかの方法によって行い、コントロール群と比較することが好ましい。
【0033】
(a)マウスの左右の耳介リンパ節の重量を測定する、
(b)マウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量を測定する、
(c)マウスの左右の耳介の厚みを測定する、
(d)マウスの左右の耳介リンパ節のDNA量を測定する、
(e)マウスの左右の耳介の重量を測定する。
【0034】
上述した(a)〜(e)の方法は、いずれも公知であり、たとえば非特許文献2、3を含めた公知文献を適宜参照することで当業者であれば容易に実施可能である。なお、(a)マウスの左右の耳介リンパ節の重量を測定することで惹起反応を検出する場合には、汎用されている安価な精密電子天秤が使用できるという利点があり、(b)マウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量を測定することで惹起反応を検出する場合には、LLNA:DAのデータと比較することにより、感作の程度を類推できるという利点がある。また、(c)マウスの左右の耳介の厚みを測定することで惹起反応を検出する場合には、2010年7月に改定されたTG429、TG442A、TG442Bの実施の過程で取得できる耳介厚のデータが活用できるという利点があり、(d)マウスの左右の耳介リンパ節のDNA量を測定することで惹起反応を検出する場合には、豊富に市販されているDNA精製キットを用いることにより、施設間でばらつきの少ないデータが取得できるという利点がある。(e)マウスの左右の耳介の重量を測定することで惹起反応を検出する場合には、汎用されている安価な精密電子天秤が使用でき、また、作業者の熟練度の差が生じにくい可能性が高いという利点がある。
【0035】
上述したステップS1〜S3を含む本発明の方法によれば、マウスを用いて、簡便かつ短期間で、特別な装置を必要とせずに、従来、皮膚刺激性物質、界面活性剤についてLLNAを行った際に生じていた偽陽性の問題が起こることなく、被験物質が皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質であるか否かを検出でき、また、皮膚感作性物質の検出および皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質の同時識別が可能となる。なお、皮膚感作性物質、皮膚刺激性物質の識別は、イソオイゲノール、DNCBなどのように、皮膚感作性を有し、かつ、皮膚刺激性を有するものの場合には、その両方の性質を有することが検出できることを指す。
【0036】
以下、実験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
<実験例1>
CBA/Jの系統の未経産で非妊娠の若齢(8〜12週齢)の雌マウスを各ケージごとに3匹または4匹(ケージ3では4匹、ケージ3以外のケージでは3匹)個体識別ができるように飼育し、試験開始時および終了時に体重を測定した。
【0038】
また、溶媒としてアセトン/オリーブオイル(4:1(v/v))(AOO)を用い、被験物質としてα−ヘキシルシンナミックアルデヒド(HCA)(皮膚感作性を有する)、イソオイゲノール(皮膚感作性、皮膚刺激性の両方を有する)、ジニトロクロロベンゼン(DNCB)(皮膚感作性、皮膚刺激性の両方を有する)、塩化ベンザルコニウム(皮膚刺激性を有する)を用い、以下の被験物質塗布液を調製した。
【0039】
・15%(w/v) HCA/AOO溶液、
・5%(w/v) イソオイゲノール/AOO溶液、
・0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液、
・1%(w/v) 塩化ベンザルコニウム/AOO溶液。
【0040】
以下のように、各ケージごとに、操作を行った。なお、1回の塗布量は25μlとした。被験物質塗布液の塗布には、ピペットマンを用いた。
【0041】
・ケージ1:1、2、3日目にマウスの右耳にAOOを塗布し、10日目に左耳にAOOを塗布、
・ケージ2:1、2、3日目にマウスの右耳に15%(w/v) HCA/AOO溶液を塗布し、10日目に左耳に15%(w/v) HCA/AOO溶液を塗布、
・ケージ3:1、2、3日目にのみマウスの右耳に15%(w/v) HCA/AOO溶液を塗布(10日目の左耳への塗布なし)、
・ケージ4:10日目にのみマウスの左耳に15%(w/v) HCA/AOO溶液を塗布(1、2、3日目の右耳への塗布なし)、
・ケージ5:1、2、3日目にマウスの右耳に5%(w/v) イソオイゲノール/AOO溶液を塗布し、10日目に左耳に5%(w/v) イソオイゲノール/AOO溶液を塗布、
・ケージ6:1、2、3日目にのみマウスの右耳に5%(w/v) イソオイゲノール/AOO溶液を塗布(10日目の左耳への塗布なし)、
・ケージ7:10日目にのみマウスの左耳に5%(w/v) イソオイゲノール/AOO溶液を塗布(1、2、3日目の右耳への塗布なし)、
・ケージ8:1、2、3日目にマウスの右耳に0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液を塗布し、10日目に左耳に0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液を塗布、
・ケージ9:1、2、3日目にのみマウスの右耳に0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液を塗布(10日目の左耳への塗布なし)、
・ケージ10:10日目にのみマウスの左耳に0.25%(w/v) DNCB/AOO溶液を塗布(1、2、3日目の右耳への塗布なし)、
・ケージ11:1、2、3日目にマウスの右耳に1%(w/v) 塩化ベンザルコニウム/AOO溶液を塗布し、10日目に左耳に1%(w/v) 塩化ベンザルコニウム/AOO溶液を塗布、
・ケージ12:1、2、3日目にのみマウスの右耳に1%(w/v) 塩化ベンザルコニウム/AOO溶液を塗布(10日目の左耳への塗布なし)、
・ケージ13:10日目にのみマウスの左耳に1%(w/v) 塩化ベンザルコニウム/AOO溶液を塗布(1、2、3日目の右耳への塗布なし)、
・ケージ14:処置なし。
【0042】
11日目に、各ケージのマウスから左右両方の耳介リンパ節を摘出し、そのまま左右別々に25mm径程度の細胞培養用ディッシュに移し、精密化学天秤で重量を測定した。図2は、各ケージにおける測定結果を示すグラフであり、縦軸は、測定されたリンパ節重量の平均値(mg)、横軸はケージの番号である。
【0043】
被験物質塗布液を塗布したケージについて、1、2、3日目に右耳に被験物質を塗布し、10日目に左耳に被験物質を塗布したA群(ケージ2、5、8、11)、1、2、3日目にのみ右耳に被験物質を塗布し、10日目に塗布しなかったB群(ケージ3、6、9、12)、ならびに、1、2、3日目に塗布せず、10日目のみに左耳に被験物質を塗布したC群(ケージ4、7、10、13)に大きく分けられる。図2に示す結果から、皮膚感作性を有するものについてはA群が反応し、皮膚刺激性を有するものについてはA群とC群が同程度反応し、皮膚感作性、皮膚刺激性の両方を有するものについてはC群が反応し、A群の反応もさらに大きくなっていることが分かる。またB群の結果から、一方の耳介に皮膚感作性物質を塗布することで、試験期間中に、被験物質の種類に関係なく、他方の耳介のリンパ節が大きくならないことが確認された。
【0044】
今回開示された実施の形態および実験例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスの一方の耳介に被験物質を塗布するステップと、
一定期間後に、他方の耳介に同じ被験物質を塗布するステップと、
前記他方の耳介における惹起反応を検出するステップとを含む、皮膚感作性物質の検出および皮膚感作性物質と皮膚刺激性物質との識別を同時に行う方法。
【請求項2】
マウスの一方の耳介に被験物質を塗布するステップと、
一定期間後に、他方の耳介に同じ被験物質を塗布するステップと、
前記他方の耳介における惹起反応を検出するステップとを含む、皮膚感作性物質の検出方法。
【請求項3】
マウスの一方の耳介に被験物質を塗布するステップと、
一定期間後に、他方の耳介に同じ被験物質を塗布するステップと、
前記他方の耳介における惹起反応を検出するステップとを含む、皮膚刺激性物質の検出方法。
【請求項4】
前記一定期間が7日以上2週間以内である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介リンパ節の重量の測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介リンパ節懸濁液のATP量の測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介の厚みの測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介リンパ節のDNA量の測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
惹起反応の検出が、マウスの左右の耳介の重量の測定によって行われる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72692(P2013−72692A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210870(P2011−210870)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】