説明

皮膚感染症の局所処置のための組成物および方法

本発明は、有効で且つ安全な量の一つまたはそれ以上の多価金属化合物を局所的に適用することによって、きわめて効果があり、簡便であり、新規であり、安価であり、安全であり、迅速である、それぞれ異なった病因であり異なった臨床的症状である、アクネおよびゆうぜいの両方を処置する方法を述べている。本発明はまたアクネの予防のために使用することもできる。多価金属化合物には、ビスマス化合物、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、銅化合物、チタン化合物、マンガン化合物、クロム化合物、バリウム化合物、セレン化合物、および鉄化合物が含まれるが、これらに限定されない。本発明はまた、しゅさの処置に適用することも可能である。本発明はまた瘢痕が残ることを防止し、一旦形成された瘢痕を治癒し、除去することを容易にするのに使用することができ、色素脱失に有益である。本発明はまた歯周炎および歯牙動揺の予防および処置、および口腔の粘膜および組織の健康的な成長を促進するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、米国を除く指定国のすべての出願人である、米国法人であるチョウ・コンサルティング・インコーポレイテッドの名前で、そして米国指定国だけの出願人としては米国国民であるウィン・エル・チョウの名前でPCT国際特許出願として出願されており、そして2003年12月4日に出願され、米国出願番号10/727,376に対して優先権を主張している。
【0002】
[発明の分野]
本発明は一つまたはそれ以上の多価金属化合物を含む局所適用によって、アクネ(acne)およびゆうぜい(warts)を処置することに関連し、また瘢痕(scars)を防止し、治癒し、または除去させる(sloughing)ことに関連し、または皮膚の色素脱失(depigmentation)に関連し、更に歯周炎および歯牙動揺(tooth mobility)の予防および処置に関連する。
【0003】
[発明の背景]
皮膚感染症は、通常、経口的および/または局所的に抗菌剤によって処置される。局所的処置は、薬剤の全身への副作用の可能性を最小限にすることができ、そしてまたより安価であるので好ましい。主としてP.アクネスによって引き起こされるアクネおよびヒトパピローマウイルスによって引き起こされるゆうぜい(すなわち、いぼ(verruca))は、二つの通常よく起こりうる深刻な皮膚感染症である(L. M. Tierneyによる“最近の医学診断と処置(Current Medical Diagnosis and Treatment)”, Jr. et al., Lange Medical Books, NY, 2004, pp. 111-113 および123-125; R.B. Odom らによる“皮膚のアンドリュー病、臨床皮膚病学(Andrews' Diseases of the Skin, Clinical Dermatology)”, Philadelphia, 2000, pp. 284-306および509-519)。局所的なアクネの処置は、通常、処方箋が必要な抗生物質(エリスロマイシンおよびクリンダマイシンのような)および効力のあるレチノイドを含む。上記の処置方法は、一般に毎日連続的な処置が何週間あるいは何ヶ月も必要であるので、満足すべき状況はないようである。たとえば、ある研究では、12週間のエリスロマイシンあるいはクリンダマイシン処置の後、約50%の患者だけが満足すべき応答を示した(J.J. Leyden, et al., J. Am. Acad. Dermatol. 1987; 16: 822-827)。硫黄およびサルチル酸のような局所非処方箋薬は効果が少ないと考えられている。ゆうぜいの局所処置の場合には、おそらくサルチル酸を除いて、ブレオマイシン、5−フルオロウラシル、ポドフィリンおよびイミキモドのような薬剤は医師の処方箋が必要である。更に、少なくとも二または三ヶ月の持続的な処置が一般には必要である。アクネとゆうぜいの両方の局所または全身的な処置には、深刻な副作用が起こりうることがよく知られている。更に処置の終了後、見苦しい“永続的な”瘢痕がしばしば存在する。
【0004】
報告されている抗菌性化合物の多くが微生物を殺すことができ、疾患を“治癒する”ことができるが、しばしば創傷治癒を阻害することをここで強調することは重要である(Della Valleらによる米国特許5,567,716、1996年10月22日)。更に、疾患、病変または創傷の治癒または処置はまた、アクネ、ゆうぜいおよび単純ヘルペスの従来の処置で例証されているように、見苦しい、望ましくない皮膚の瘢痕を形成することになる(D.B. Garalnikによって編集された“Webster's New World Dictionary”, Prentice Hall Press, 1986, pp.1271)。
【0005】
上記の概要・総括によれば、新しく、新規であり、簡単であり、迅速で、安全性が高く、効果が高いが、処置のあと瘢痕を残さないアクネおよびゆうぜいの局所処置を開発する差し迫ったニーズがあることがはっきり示されている。理想的には、この新しい薬剤による処置は、処方箋を必要としない可能性があり、そして、同一の薬剤が両方の疾患を処置するために用いられることができることである。本発明はこの上述の目的を達成することを意図している。
【0006】
[発明の概要]
本発明は、一つまたはそれ以上の多価金属化合物を含んでいる混合物の局所適用が、適切な投与形態で適用される場合、ヒトのアクネおよびゆうぜいを効果的に治癒することができるという驚くべき発見に関連する。すなわち、たとえば、炎症性丘疹アクネの場合、いかなる瘢痕も残さない完全な治癒が、たった一回の適用の後一日以内に数人の患者で見られた(実施例IおよびII)。膿疱性炎症性アクネの場合は、処置のほんの約一日から二日で、事実上完全な治癒が見られた(実施例IないしIII)。かなり重症の慢性多病変アクネの場合は、劇的な効果が6日で見られた(実施例IV)。ゆうぜいの場合は、一回の適用の後、かさぶたが形成され、すぐに治癒が起こるのが見られた。約一週間でほぼ治癒されることが見られた。いかなる瘢痕も残さない完全な治癒が約二週間で達成された。本発明の組成物の局所投与の後の治癒が早いことと、永続的な瘢痕を残さないことは(実施例IないしV)、永続的な瘢痕を残すかあるいは残さずに治癒するのに通常何週間あるいは何ヶ月もかかった従来の処置方法と比較してきわめて劇的でかつ驚くべきことであった。更に研究検討(実施例IないしV)において、ほとんどの場合まったく副作用も見られなかった。投与量強度を適切に調節するかあるいは異なる金属塩を使用すれば、実際に重大な副作用はまったく予期されない。
【0007】
従って、本発明はアクネまたはゆうぜいの病変部分に適切な投与形態で、有効で且つ安全な量の一つまたはそれ以上の多価金属化合物を局所的に適用することによって、きわめて効果があり、有効であり、簡便であり、迅速であり、新規であり、安全であり、安価である、アクネおよびゆうぜいの両方を処置する方法を提供する。重大な副作用も全くなく、且つ瘢痕を全く残さずにきわめて迅速に治癒することは、上記に述べた従来の処置方法と対比すると最も劇的な違いである。
【0008】
PCT国際特許出願番号PCT/US02/18223に述べられているアフター性潰瘍および単純ヘルペスを処置する場合の早期成功に鑑みて、本発明もまた、ウイルス、菌類(fungi)および酵母菌を含む他の微生物によって引き起こされる他の表在性皮膚疾患を効果的に処置するのに適用されうる;一つのこうした疾患は、アクネの場合と同様な薬剤を用いてしばしば局所的に処置し、有意な応答のためには5〜8週間の処置を必要とするしゅさ(rosacea)である。
【0009】
本発明は、また、瘢痕部分に、適切な投与形態中に有効な量の一つまたはそれ以上の多価金属化合物を含んでいる局所的適用によって、瘢痕の形成を防止し最小限にし、そしてアクネおよびゆうぜいのような疾患によって引き起こされるか、または薬剤処置、レーザー処置、寒冷療法および手術のあとに引き起こされる皮膚病変中にひとたび形成された瘢痕を迅速に治癒または除去させる、大変驚くべき高い効果のある方法を提供する(L. M. Tierneyによる“最近の医学診断と処置(Current Medical Diagnosis and Treatment)”, Jr.et al., Lange Medical Books, NY, 2004, pp. 111-113および123-125; R.B. Odom らによる“皮膚のアンドリュー病,臨床薬理学(Andrews' Diseases of the Skin, Clinical Pharmacology)”, Philadelphia, 2000, pp. 16, 284-306および509-519);この方法は色素脱失にも有効である。
【0010】
出願人はまた驚くべきことに一つまたはそれ以上の安全な多価金属化合物の適切な投与形態での使用が、歯周炎および歯牙動揺の予防および処置に有効であることを見出している(実施例VI)。歯周炎の場合、従来の薬剤療法は通常処方箋を必要とする抗生物質の経口投与を使用し、薬剤耐性の出現に関わっている。歯牙動揺の場合には、効果のある薬剤処置はないようであり、この疾患は一般に不可逆的であると考えられている。従って、上記の歯科治療における本発明は歯科学において大きな前例のない進歩に相当する。本発明方法は、また有効で安全な量のマグネシウム化合物を含有する練り歯磨き、マウスウオッシュ、ゲル(gel)またはペーストを定期的に使用することによって口腔粘膜および組織の健康状態を増進させるために用いることができる。
【0011】
[発明の詳細な説明]
“処置(treatment)”または“処置すること(treating)”という言葉は、本明細書中で使用される場合、アクネおよびゆうぜいのような所与の疾患の症状を改善すること、治療または治癒すること、および発症を防止することを含む。“有効な量(effective amount)”という表現は、こうした処置または防止を必要とする哺乳類に投与する場合に、安全な処置をおこなうのに十分である化合物の量を意味する。“防止(prevention)”という言葉は、予防(prophylaxis)を意味する。“瘢痕(scar)”という言葉は、傷、やけど、潰瘍、膿疱、病変などが治癒した後の皮膚に残された痕跡を意味する。瘢痕に関連する“治癒すること(healing)または除去させること(sloughing)”という言葉は、傷跡をつけた組織に取って代わる新しい皮膚組織を再生させることを示している。
【0012】
“多価金属化合物(polyvalent metal compound)”という表現が、本明細書中で使用される場合は、明細書で述べられている有益な治療特性を有する任意の有機または無機の多価化合物を意味する。多価金属化合物には、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、亜鉛化合物、カルシウム化合物、ビスマス化合物、チタン化合物、銅化合物、マンガン化合物、鉄化合物、クロム化合物、セレン化合物、およびバリウム化合物が含まれるが、これらに限定されない。多価化合物は、無機または有機の塩、酸化物またはコンプレックス(complex)でありうる。金属に対する反対のイオンまたは金属に対する配位部分もまた治療的に活性があるか、または金属部分の治療活性を高めることができるのが理想的である。一つのこうした例としては、サリチレートが抗炎症作用を有することが知られているので、サリチル酸マグネシウムであることが可能である。本発明中で述べられている有効な治療特性を有していることがこれまで知られている多価金属化合物は本発明から除外される。
【0013】
一つまたはそれ以上の多価金属化合物の適切な投与形態には、様々な粘度を有する液体溶液または混合物、懸濁液、ゲル、クリーム、ローション、乳化液、ペースト、スプレー、および薬用バンデージ(包帯)またはパッチ(medicated bandage or patch)が含まれるが、それらに限定されない。純微粉末または希釈微粉末もまた露出している病変部分に適用することができる。投与形態を調製する方法は、様々な薬学文献に述べられている標準的な方式および方法に基づく。
【0014】
本発明において有益でありうる可能性のある多価金属化合物のすべてを列挙することは不可能である。実際に、下記に述べられる多価金属化合物の実例のすべては標準的な引用中に列挙されているものである(J.E.F. Reynoldsによって編集された“Martindale, The Extra Pharmacopoeia”, The Pharmaceutical Press, London, 1989; K.Parfittによって編集された“Martindale, the Complete Drug Reference”, Pharmaceutical Press, London, 1999; “メルクインデックス(The Merck Index)”, Merck & Co., Inc., Whitehouse Station, New Jersey, 2001)。様々なアミノ酸との多価金属化合物のコンプレックスもまた本発明に含まれる。
【0015】
本発明の実施態様の一つでは、治療的に有効な化合物は、次サリチル酸ビスマス(bismuth subsalicylate)、塩化ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス(bismuth subcarbonate)、次没食子酸ビスマス(bismuth subgallate)、次硝酸ビスマス(bismuth subnitrate)、リン酸ビスマス、ビスマスアルミネート(bismuth aluminate)、サリチル酸ビスマス、ビスマストリブロモフェネート(bismuth tribromophenate)、ビスマスジプロピルアセテート、クエン酸ビスマス、次クエン酸ビスマス(bismuth subcitrate)、アスコルビン酸ビスマス、次炭酸ビスマス、酒石酸ビスマス、コロイド状次クエン酸ビスマス、および他のビスマス含有化合物から成る群より選択される。
【0016】
本発明の別の実施態様では、治療的に有効な化合物は、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、ウンデセン酸亜鉛(zinc undecenoate)、および他の亜鉛含有化合物から成る群より選択される。
【0017】
本発明の別の実施態様では、治療的に有効な化合物は、酢酸マグネシウム、アスコルビン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、酸化マグネシウム、および他のマグネシウム含有化合物から成る群より選択される。
【0018】
本発明の別の実施態様では、治療的に有効な化合物は、酢酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、アルミニウムグリシネート、水酸化アルミニウム、乳酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムサブアセテート(aluminum subacetate)、硫酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、リン酸アルミニウム、および他のアルミニウム含有化合物から成る群より選択される。
【0019】
本発明の別の実施態様では、治療的に有効な化合物は、酢酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酸化カルシウム、および他のカルシウム含有化合物からなる群より選択される。
【0020】
本発明の別の実施態様では、治療的に有効な化合物は、グルコン酸銅、サリチル酸銅、硫酸銅、および他の銅含有化合物から成る群より選択される。
【0021】
本発明の実施態様の一つでは、治療的に有効な化合物は、二酸化チタン、過酸化チタン、サリチル酸チタン、タンニン酸チタン、および他のチタン含有化合物から成る群より選択される。
【0022】
本発明の別の実施態様では、治療的に有効な化合物は、塩化第二鉄、クエン酸第二鉄、酸化第二鉄、硫酸第二鉄、アスコルビン酸第一鉄、炭酸第一鉄、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、フマル酸第一鉄、グリシン第一鉄(ferrous glycine)、および乳酸第一鉄、並びに他の第一鉄または第二鉄含有化合物から成る群より選択される。
【0023】
本発明の別の実施態様では、治療的に活性のある化合物は、酢酸マンガン、安息香酸マンガン、ホウ酸マンガン、炭酸マンガン、サリチル酸マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン(manganese iodide)およびマンガンジヨージド(manganese diiodide)、並びに他のマンガン含有化合物から成る群より選択される。
【0024】
本発明の別の実施態様では、治療的に活性のある化合物は、硫酸クロムカリウム、硫酸クロム、三塩化クロム(chromium trichloride)、ピコリン酸クロム(chromium piconilate)および三酸化クロム、並びに他のクロム含有化合物から成る群より選択される。
【0025】
本発明の別の実施態様では、治療的に活性のある化合物は、硫酸バリウム、水酸化バリウム、塩化バリウム、炭酸バリウムおよび硫化バリウム、並びに他のバリウム含有化合物の群より選択される。
【0026】
通常、アクネ、ゆうぜいおよびしゅさの処置のためおよび瘢痕形成の防止のため、色素脱失(実施例I)のため、または形成された瘢痕の治癒または除去のためまたは歯周炎および歯牙動揺の予防および処置のための多価金属化合物の投与形態中の濃度は、約0.001%〜約50%(重量)であろう。他の実施態様では約0.1%〜約40%、約0.5%〜約30%、または約1.0%〜約10%(重量)の多価金属化合物を含む。有効な量の一つまたはそれ以上の多価金属化合物はまたアクネ処理における予防目的のために脆弱な皮膚部分に毎日適用することが可能であり、または歯周炎および歯牙動揺の防止、更には口腔組織の健康的成長を促進するために歯肉および歯に毎日適用させることができる。更に、アクネ、ゆうぜい、歯周炎または歯牙動揺の処置および口腔粘膜および組織の健康状況を促進する場合の多価化合物の有効性をさらに増大させることが可能な任意の化合物または化合物群をこの投与形態の中に組み込むことができる;これには、抗炎症性化合物を含めることができる。乳酸、クエン酸およびサリチル酸のような皮膚剥離化合物(skin-peeling compounds)およびグリチルリチンのような他の吸収促進剤を添加し、皮膚を介して吸収を増大させることもできる。本発明はまた瘢痕の予防および処置および色素脱失のために有益である。
【0027】
本発明は、次の制限されない実施例によって例証される。成分のパーセンテージは重量である。
【0028】
実施例I
アクネ処置のためおよび色素脱失のための硫酸アルミニウムカリウム10%、硫酸マグネシウム8%およびグルコン酸亜鉛1%を含有するグリセリン水溶液
グリセリン約70%を含む上記の溶液を顔面に炎症性丘疹アクネを有している三人の成人に一回局所的に適用した。二人の成人の丘疹は次の日に消えるのが見られ、続く何週間も再度突発することはなかった。三人目の成人は、発赤(redness)を有していたが、隆起した丘疹が次の日に顕著に減少した。更なる処置をしなくても、発赤と隆起は完全に約10日後に消えた。
四人目の成人には、炎症性丘疹がある病変部分にこの溶液を一日に三回適用した。次の日には、乾燥した暗黒色の皮(直径約0.4cm)が形成されたが、触っても痛みは観察されなかった。この皮は約4日で瘢痕を残さずに除去されていた。
五人目の成人には、膿疱性アクネから特有の膿汁を絞り出したあと、一日に約二回この溶液を病変に適用した。乾燥した暗黒色の皮(直径約0.5cm)が次の日に形成されたが、その後痛みは観察されなかった。瘢痕が完全に除去されるのに約一週間かかったが、この成人のアクネは二日目に“治癒された”と考えられうる;瘢痕のあとを残さないこの種の迅速な治癒は、また六人目の患者でもおきた。この溶液を、早期のアクネのため顔面の瘢痕(直径約0.25cm)がある患者に適用された。この瘢痕は約3週間適用の後、完全に消失した。従って、この溶液は色素脱失に効果がある。
【0029】
実施例II
アクネ処置のための硫酸アルミニウムカリウム10%および硫酸マグネシウム10%を含有するグリセリン溶液
上記の溶液を成人女性の額の四つの小さな炎症性丘疹アクネのそれぞれに、就寝時間前に一回適用した。このアクネは次の朝完全に消失していることが判明し、一回の処置の約8時間経過した直後に完全な治癒を示した。この上記の溶液は単にグリセリンに二つの金属化合物を溶解することによって調製された。
【0030】
実施例III
アクネ処置のための硫酸アルミニウムカリウム
増粘剤としての5%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて調製された少量の20%の硫酸アルミニウムカリウム水性ペーストを、膿疱性アクネから膿を搾り出した後の成人男性の顔のアクネ病変部に適用した。二日目に病変部は乾燥し、そしてそれまで存在していた発赤がかなり減少した。二日目に更に二回の適用の後、病変は三日目には瘢痕をまったく残さず完全に治癒しているのが判明した。別の成人において、硫酸アルミニウムカリウム15%、水10%およびグリセリン75%を含む混合物は数日間毎日約1回適用したとき、アクネ病変を減少させるのにきわめて効果があることが判明した。
【0031】
実施例IV
重症のアクネのための塩化マグネシウム
塩化マグネシウム六水和物30%、水10%およびグリセリン60%を包含する溶液を慢性の重症アクネ疾患(顔面の片側に約40のアクネ)を抱えている成人男性に6日間毎日2回適用した。膿庖性アクネの大きさおよび数の減少および皮膚の発赤(炎症)の点で大きな劇的な効果が観察された。この薬剤を用いると皮膚刺激が観察された。より少ない刺激性の硫酸マグネシウムが、将来の使用に推奨される。あるいは、塩化マグネシウム強度を減少させることができるであろう。
【0032】
実施例V
ゆうぜいの処置のための多価金属懸濁液
成人男性が、数週間、顔面の右側に出血を伴う特有のゆうぜいを発症していた。グリセリン中に硫酸アルミニウムカリウム約10%、硫酸マグネシウム10%および酢酸亜鉛2%を含む少量の懸濁液を病変部分に適用し、包帯(bandage)で覆った。次の日、ぶらさがっている暗褐色の組織が取り除かれた。金属懸濁液をその日に三回適用すると、この病変が乾燥し、治癒し始めたことが判明した。この懸濁液を次の日、包帯なしで二回適用した。病変部分は毎日だんだん小さくなり、約一週間でほんの小さな針サイズの隆起が存在した。グリセリン−水混合物中の10%の硫酸アルミニウムカリウムを、その後、三日間試用すると、この病変は数日で瘢痕もまったく残さずに完全に治癒した。
【0033】
実施例VI
歯周炎および歯牙動揺の処置
慢性歯周炎(圧力を加えたりまたは歯がかみ合ったときまたは食べる際に鈍い痛みを感じる)および重症の歯牙動揺に罹患している一人の成人で、1.5%の硫酸マグネシウムを含んでいる水性ゲルを一日数回病変に適用した。おそらく硫酸マグネシウムによる一定の組織再生および感染の除去のためであろうが、約1週間で鈍い痛みは完全に消失し、歯牙動揺は約2週間の処置の後、著しく改善された;歯肉もまたかなりより健康的となった。別の場合では、2回の適用後では、軽度の歯の圧痛(tenderness)はほとんど完全に取り除かれた。歯周炎および歯牙動揺における顕著な改善はまた1週間の処置後の別の患者でも観察された。
【0034】
上記の記述は例示的であり、制限するものではない意図であることが理解されるべきである。本技術分野の当業者は、更なるルーチンな実験を行うことなく、本明細書で述べた特定の実施態様に均等な多くのものを確認できるであろう。このことは、この出願中で特に言及されていない多くの種類の塩、酸化物、またはコンプレックスが合成されうるか、またはおそらく商業的に得られうるので、別の多価金属化合物の使用に特に当てはまる。こうした均等物は、次の請求項によって包含されることが意図されている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮吸収促進剤および/または通常の抗炎症化合物が配合されていてもよい、哺乳類のアクネ(acne)の予防および処置のための適切な局所投与形態物における、有効でかつ安全な量の一つまたはそれ以上の安全な多価金属化合物の塩、酸化物またはコンプレックスの使用。
【請求項2】
経皮吸収促進剤および/または通常の抗炎症化合物が配合されていてもよい、哺乳類のゆうぜい(warts)の処置のための適切な局所投与形態物における、有効でかつ安全な量の一つまたはそれ以上の安全な多価金属化合物の塩、酸化物またはコンプレックスの使用。
【請求項3】
経皮吸収促進剤および/または通常の抗炎症化合物が配合されていてもよい、哺乳類のしゅさ(rosacea)の予防および処置のための適切な局所投与形態物における、有効でかつ安全な量の一つまたはそれ以上の安全な多価金属化合物の塩、酸化物またはコンプレックスの使用。
【請求項4】
粘膜吸収促進剤および/または抗炎症化合物が配合されていてもよい、哺乳類の歯周炎の予防および処置のための適切な局所投与形態物における、有効でかつ安全な量の一つまたはそれ以上の安全な多価金属化合物の塩、酸化物またはコンプレックスの使用。
【請求項5】
経皮吸収促進剤および/または通常の抗炎症化合物が配合されていてもよい、哺乳類の瘢痕形成を防止するためまたは一度観察された瘢痕を治癒、除去させるためまたは色素脱失のための適切な局所投与形態物における、有効でかつ安全な量の一つまたはそれ以上の安全な多価金属化合物の塩、酸化物またはコンプレックスの使用。
【請求項6】
粘膜吸収促進剤および/または抗炎症化合物が配合されていてもよい、哺乳類の歯牙動揺の予防および処置のための適切な局所投与形態物における、有効でかつ安全な量の一つまたはそれ以上の安全な多価金属化合物の塩、酸化物またはコンプレックスの使用。
【請求項7】
塩、酸化物またはコンプレックスが、ビスマス化合物、亜鉛化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、チタン化合物、鉄化合物、銅化合物、セレン化合物、バリウム化合物、マンガン化合物またはクロム化合物である、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
ビスマス化合物が、次サリチル酸ビスマス、塩化ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス、リン酸ビスマス、ビスマスアルミネート、サリチル酸ビスマス、ビスマストリブロモフェネート、ビスマスジプロピルアセテート、クエン酸ビスマス、次クエン酸ビスマス、アスコルビン酸ビスマス、次炭酸ビスマス、酒石酸ビスマスおよびコロイド状次クエン酸ビスマス並びに他のビスマス含有化合物から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
亜鉛化合物が、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛およびウンデセン酸亜鉛並びに他の亜鉛含有化合物から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
マグネシウム化合物が、酢酸マグネシウム、アスコルビン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、乳酸マグネシウムおよび酸化マグネシウム並びに他のマグネシウム含有化合物から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項11】
アルミニウム化合物が、酢酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、アルミニウムグリシネート、水酸化アルミニウム、乳酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムサブアセテート、硫酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウムおよびリン酸アルミニウム並びに他のアルミニウム含有化合物から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項12】
カルシウム化合物が、酢酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、サリチル酸カルシウムおよび酸化カルシウム並びに他のカルシウム含有化合物からなる群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項13】
銅化合物が、グルコン酸銅、サリチル酸銅および硫酸銅並びに他の銅含有化合物から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項14】
チタン化合物が、二酸化チタン、過酸化チタン、サリチル酸チタンおよびタンニン酸チタン並びに他のチタン含有化合物から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項15】
鉄化合物が、塩化第二鉄、クエン酸第二鉄、酸化第二鉄、硫酸第二鉄、アスコルビン酸第一鉄、炭酸第一鉄、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、フマル酸第一鉄、グリシン第一鉄、サリチル酸第一鉄および乳酸第一鉄並びに他の鉄含有化合物から成る群より選択される請求項7に記載の使用。
【請求項16】
マンガン化合物が、酢酸マンガン、安息香酸マンガン、ホウ酸マンガン、炭酸マンガン、サリチル酸マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガンおよびマンガンジヨージド並びに他のマンガン含有化合物から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項17】
バリウム化合物が、硫酸バリウム、水酸化バリウム、塩化バリウム、炭酸バリウムおよび硫化バリウム並びに他のバリウム含有化合物から成る群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項18】
多価金属化合物が、硫酸クロムカリウム、三塩化クロム、ピコリン酸クロムおよび三酸化クロム並びにその他のクロム含有化合物から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項19】
多価金属化合物が、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、乳酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛および塩化亜鉛並びにグルコン酸亜鉛から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項20】
多価金属化合物が、約0.001%ないし約50%(w/w)の濃度の範囲であり、投与形態がペースト、クリーム、スプレー、軟膏、ゲル、液体混合物、ローション、薬用バンデージおよびパッチ並びに粉末を含み、そして哺乳類に快適な状態を与える、請求項1〜19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
投与形態が、ゲル、ペースト、軟膏、懸濁剤、液体混合物、粉末、スプレーまたは練り歯磨きを含む、口腔粘膜および組織の健康状態を増進し、且つ哺乳類の歯周炎および歯牙動揺を処置するための適切な投与形態物における、有効で安全な量のマグネシウムの塩、酸化物またはコンプレックスの使用。

【公表番号】特表2007−513162(P2007−513162A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542673(P2006−542673)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/040038
【国際公開番号】WO2005/055927
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(504436332)チョウ・コンサルティング・インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】CHIOU CONSULTING, INC.
【Fターム(参考)】