説明

皮膚損傷の減少のための方法、及び組成物

RhoE GTPアーゼ経路が、短期及び長期のUVBによって引き起こされる皮膚損傷の予防及び/又は軽減、例えばUVBによって引き起こされるシワの予防及び/又は軽減、のためのスクリーニング方法及び治療方法のための標的と確認された。よって、本発明は、UVBによって引き起こされる皮膚損傷の予防又は軽減のためのスクリーニング方法及び治療方法、並びに関連組成物、例えば化粧品組成物を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
当該出願は、2007年11月15日に出願された米国特許出願番号第61/003,351号に対して優先権を主張し、上記米国特許出願の全体を本明細書中に援用する。
【背景技術】
【0002】
背景
RhoEなどのRas関連GTPアーゼのRhoファミリーのメンバーは、細胞外増殖因子に対応してアクチン細胞骨格の構築を調節する。
【発明の概要】
【0003】
概要
本発明は、RhoE経路が皮膚の保守及び/又は外観に重要であるという発見に一部基づいている。1つの態様において、本発明者らは、RhoE経路が皮膚損傷、例えば、紫外線B(UVB)によって引き起こされる皮膚損傷及びシワの軽減、治療、及び/又は予防において重要であることを見出した。そのため、本発明者らは、例えば急性及び/又は慢性の光損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷、の予防及び/又は軽減(例えばシワの予防及び/又は軽減)によって、皮膚の状態及び/又は外観を改善するためのスクリーニング及び治療方法のための標的としてのRhoE経路を確認した。よって、本発明は、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷、例えばシワ、の軽減、治療、及び/又は予防によって、皮膚の状態及び/又は外観を改善するスクリーニング及び治療方法、並びに関連組成物、例えば化粧品組成物、を特徴とする。
【0004】
従って、1つの側面において、本発明は、UVBによって引き起こされる皮膚損傷、例えばシワ、を予防及び/又は軽減する作用物質のスクリーニング方法を特徴とする。その方法には、RhoE経路活性を増強する、例えばRhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、RhoキナーゼI(ROCK I)活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる、作用物質を同定することが含まれる。
【0005】
前記方法にはまた、増強されたRhoE経路活性(例えば増強されたRhoE活性か、増強されたRhoE発現か、軽減されたROCK I活性か、又は減少したROCK I発現)を、シワを予防する及び/又は軽減する作用物質の能力と関連付けること、例えば同定された作用物質をシワ予防及び/又は軽減作用物質とし確認すること(例えば同定された作用物質又はその使用に関連した印刷物若しくはコンピュータで読み込み可能な媒体、例えば情報提供用、マーケティング、若しくは教育用の印刷物又はコンピュータで読み込み可能な媒体を提供すること)、も含んでいる。関連付けるとは、RhoE経路活性を増強する試験作用物質を、シワを予防、軽減、及び/又は治療することができる作用物質と確認することを意味する。前記関連付けステップには、例えば、研究所の記録、データセット、若しくはメールなどの記録、例えば印刷物又はコンピュータで読み込み可能な記録を作成するか又は提供し、RhoE経路活性を増強する試験作用物質を、シワを軽減及び/又は治療することができる作用物質と確認することを含み得る。前記記録には、特定の試験作用物質の確認者、日付、その方法の操作者、又は試験作用物質の起源、構造、精製方法、又は生物学的活性に関する情報などのその他の情報を含み得る。前記記録、又は前記記録から得られた情報は、試験作用物質を、例えば医薬的若しくは治療的使用のための化合物若しくは候補作用物質(例えば、鉛化合物)と確認するために、使用され得る。同定された作用物質は、シワの治療及び/又は軽減のための作用物質又は作用物質候補と確認される。この方法によって確認された作用物質、例えば化合物は、例えばシワの治療(又は治療の開発、例えば美容処置の開発)に使用され得る。
【0006】
1つの態様において、前記方法には、皮膚に対する作用物質の効果を評価、例えば測定、すること、例えばシワに関連したパラメーター、例えばシワの存在、程度、又はタイプ、を評価し;そしてスクリーンから作用物質、例えば皮膚に対する損傷を予防する及び/又は軽減する、例えば皮膚のシワを予防する及び/又は軽減する、作用物質を選択することを含んでいる。好ましくは、皮膚への作用物質の効果を評価することは、組織又は対象に、例えば局所に作用物質を投与し、そしてシワに関連するパラメーター、例えば上記組織又は対象のシワの存在、程度、又はタイプ、を任意に基準値、例えば対照又は基礎値、例えば、違った治療をされた、例えば作用物質を投与されなかった若しくはプラシーボを投与された、組織又は対象の同じパラメーターについての値と比較することを含んでいる。皮膚への作用物質の効果は、皮膚損傷の原因、例えばシワ形成を引き起こす作用物質若しくは処置、例えばUVB照射、の不存在下又は存在下で評価され得る。いくつかの態様において、前記評価には、評価についての値、例えばシワの存在、程度、若しくはタイプについての値、をデータベース又は他の記録に入力することを含んでいる。
【0007】
1つの態様において、作用物質は、UVBによって引き起こされるシワを予防及び/又は軽減する能力について評価される。
他の態様において、前記対象は、実験動物、例えば野生型若しくはトランスジェニック実験動物、例えば齧歯動物、例えばラット、マウス、若しくはモルモットである。前記対象はまた、ヒトでもあり得る。さらなる態様において、前記評価ステップは、前記作用物質を、例えば局所的に、対象の皮膚に投与することを含んでなる。
【0008】
1つの態様において、RhoE経路活性(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)を増強する作用物質が同定される。
【0009】
他の態様において、前記同定ステップには:(a)レポーター・ポリペプチド(例えば、可視光に基づく標識、例えば発光(例えばルシフェラーゼ)比色若しくは蛍光性の検出可能な(例えば蛍光レポーター・ポリペプチド、例えばGFP、EGFP、BFP、RFP)標識)をコードするヌクレオチド配列に作動できるように連結されたRhoE経路(例えばRhoE若しくはROCK I)の構成要素の調節領域(例えばプロモーター若しくはエンハンサ)を含む外来核酸を持っている細胞、組織、又はヒト以外の動物を提供し;(b)細胞、組織、又はヒト以外の動物においてレポーター・ポリペプチドの活性を増強する試験作用物質の能力を評価し;そして(c)RhoE経路の構成要素を調節する作用物質として(例えば基準対照に対して)レポーター・ポリペプチドの活性を調節する試験作用物質を選択することが含まれる。1つの態様において、前記細胞又は組織は、皮膚細胞又は組織、例えばケラチン生成細胞又は組織、例えば皮膚外植片又は人工皮膚組織である。他の態様において、前記のヒト以外の動物は、核酸を持っているトランスジェニック動物、例えばトランスジェニック齧歯動物、例えばマウス、ラット、又はモルモットである。
【0010】
1つの態様において、前記方法は2つの評価ステップを含んでいる、例えば前記方法は、第1の系、例えば細胞若しくは組織系で試験作用物質を評価する第1ステップ、及び第2の系、例えば第2の細胞若しくは組織系で又はヒト以外の動物で試験作用物質を評価する第2ステップを含んでいる。他の態様において、前記方法は、同じタイプの系における2つの評価ステップを含んでいる、例えば前記作用物質は、同じ又は異なったヒト以外の動物における最初の評価の後に、ヒト以外の動物で再評価される。前記2つの評価は、あらゆる時間、例えば日、週、月、又は年によっても分けられ得る。
【0011】
他の態様において、UVBによって引き起こされるシワへの作用物質の効果が評価される。例えば、前記作用物質は、UVBに晒す前、晒している間、及び/又は晒した後に評価される。
【0012】
RhoE経路の構成要素、例えばRhoEの発現、活性、及び/又はレベルを調節する作用物質は、未精製又は準精製抽出物、例えば有機抽出物、例えば、動物若しくは植物抽出物、又は単離された化合物、例えば小分子、タンパク質、脂質、又は核酸である。代表的作用物質は、天然の物質又は抽出物、例えば植物又は真菌抽出物である。例えば、前記作用物質は、以下のもののいずれかであり得る:(a)RhoE経路のポリペプチド構成要素、例えばRhoEポリペプチド又は機能的なその断片若しくは模倣体;(b)RhoE経路の活性を増強するRhoE経路の構成要素のペプチド又はタンパク質作動物質又は拮抗物質;(c)
例えばその遺伝子のプロモーター域に結合することによって、RhoE経路の構成要素、例えばRhoE、の発現を増強する小分子又は化学物質(例えば有機化合物、例えば天然又は合成有機化合物);(d)例えばその遺伝子のプロモーター域に結合することによって、RhoE経路の構成要素、例えばROCK I、の発現を減少させる小分子;(f)RhoE経路ポリペプチド、又はその機能的な断片、アナログ、活性化された対立遺伝子、又は活性化因子をコードするヌクレオチド配列;あるいは(g)RhoE経路のポリペプチド(例えば、ROCK I)の発現を減少させるヌクレオチド配列(例えば、アンチセンス、siRNA、dsRNA、又はヘアピン核酸)。前記ヌクレオチド配列は、ゲノム配列又はcDNA配列であり得る。前記ヌクレオチド配列、例えばウイルス・ベクター(例えば、アデノウイルス・ベクター、アデノ随伴ウイルス・ベクター、レトロウイルス・ベクター、又はレンチウイルス・ベクター)は、以下の:RhoE経路構成要素コード領域;プロモーター配列、例えば、RhoE経路構成要素の遺伝子又は別の遺伝子からのプロモーター配列;エンハンサ配列; 非翻訳調節配列、例えば5’非翻訳領域(UTR)、例えばRhoE遺伝子又は別の遺伝子からの5’UTR、3’UTR、例えばRhoEの遺伝子又は別の遺伝子からの3’UTR;ポリアデニル化部位;及び/又はインスレーター配列を含み得る。他の態様において、RhoE経路の構成要素(例えばRhoE)のレベルは、RhoE経路の内在性構成要素の発現レベルを増強することによって、例えばRhoE遺伝子の転写を増強すること又はRhoE mRNAの安定性を増強することによって、増強される。1つの態様において、RhoE遺伝子の転写は、例えば体細胞において、内因性因子であるRhoE遺伝子の調節配列を変更することによって、例えば(エンハンサ又は転写活性化因子のDNA結合部位などの)正の調節要素の追加によって;(転写抑制因子のDNA結合部位などの)負の調節要素の除去、及び/又は内在性調節配列若しくは要素の、別の遺伝子のものとの置き換えによって増強され、それによってRhoE遺伝子のコード領域をより効率的に転写させる。他の態様において、前記作用物質は、未精製又は部分的に精製された植物抽出物である。
【0013】
1種類以上の作用物質が、本明細書中に記載した方法のために組み合わせ物で使用される。
【0014】
1つの側面において、本発明は、皮膚損傷を軽減、治療、及び/又は予防するのに十分な量で、RhoE経路活性を増強する(例えばRhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を対象に投与することによって皮膚損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷及び/又はシワ、を軽減、治療、及び/又は予防する方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、RhoE経路の構成要素、例えばRhoE、を調節する。いくつかの態様において、前記方法は、皮膚損傷の軽減、治療、及び/又は予防を必要としている対象を特定することをさらに含む。いくつかの態様において、前記作用物質は、局所的に投与される。いくつかの態様において、前記対象は、UVB照射(例えば皮膚に損傷を与える量のUVB照射)に晒されてきているか又はに晒されるであろう。いくつかの態様において、前記作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。RhoE経路の他の作動物質もまた、前記方法で使用できる。
【0015】
さらに別の側面において、本発明は、シワ、例えばUVB照射に晒すことによって引き起こされたシワ、を軽減するのに十分な量で、RhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を対象に投与することによって、対象の皮膚損傷の1以上の兆候、例えば1以上のシワ(例えばシワの数又は形態)、発赤、炎症、落屑、及び色素沈着、を軽減する方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、RhoE経路の構成要素、例えばRhoE、を調節する。いくつかの態様において、前記作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。いくつかの態様において、前記作用物質は局所的に投与される。前記作用物質は、組成物、例えば化粧品組成物であり得る。前記組成物は、無菌のであり得る、及び/又はそれは化粧品作用物質をさらに含んでいる。
【0016】
他の側面において、本発明は、皮膚損傷を防ぐのに十分な量でRhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を含んでいる組成物を対象に供給することによって、対象の皮膚損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷、を防ぐ方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記組成物は、RhoE経路の構成要素を調節する。いくつかの態様において、前記方法は、皮膚損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷、及び/又はシワを防ぐために組成物を使用することに関する取扱説明書を対象に供給することをさらに含む。いくつかの態様において、前記取扱説明書は、太陽光暴露前、暴露中、及び/又は暴露後に組成物を皮膚に適用するように指図することを含む。前記組成物は、RhoE経路作動物質、例えば表1に提示されたものから選ばれた作用物質、を含んでいる。前記組成物は、化粧品作用物質を含み得る。
【0017】
他の側面において、本発明は、RhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を対象に投与することによって、その結果、皮膚恒常性を維持する、対象の皮膚恒常性を維持する方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、局所的に投与される。いくつかの態様において、前記対象は、UVB照射(例えば皮膚に損傷を与える量のUVB照射)に晒されてきているか又は晒されるであろう。いくつかの態様において、前記作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。
【0018】
他の側面において、本発明は、対象の中でRhoE経路活性を活性化する(例えばRhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を対象に投与することによって、その結果、上皮機能を正常化する、表皮機能を正常化する方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、局所的に投与される。いくつかの態様において、前記対象は、UVB照射(例えば皮膚に損傷を与える量のUVB照射)に晒されてきているか又は晒されるであろう。いくつかの態様において、前記作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。
【0019】
他の側面において、本発明は、RhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を対象に投与することによって、その結果、皮膚の老化を予防するか、軽減するか、又は治療する、対象の皮膚の老化を予防する、軽減する、及び/又は治療する方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、局所的に投与される。いくつかの態様において、前記対象は、UVB照射(例えば皮膚に損傷を与える量のUVB照射)に晒されてきているか又はに晒されるであろう。いくつかの態様において、前記作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。
【0020】
他の側面において、本発明は、RhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を対象に投与することによって、その結果、皮膚のバリア機能を改善する、対象の皮膚のバリア機能を改善する方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、局所的に投与される。いくつかの態様において、前記対象は、UVB照射(例えば皮膚に損傷を与える量のUVB照射)に晒されてきているか又は晒されるであろう。いくつかの態様において、前記作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。
【0021】
他の側面において、本発明は、RhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を対象に投与することによって、その結果、皮膚乾燥を予防するか、軽減するか、又は治療する、皮膚乾燥を予防する、軽減する、及び/又は治療する方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、局所的に投与される。いくつかの態様において、前記対象は、UVB照射(例えば皮膚に損傷を与える量のUVB照射)に晒されてきているか又は晒されるであろう。いくつかの態様において、前記作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。
【0022】
他の側面において、本発明は、RhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を対象に投与することによって、その結果、シワ形成を予防するか、軽減するか、又は治療する、シワ形成を予防する、軽減する、及び/又は治療する方法を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、局所的に投与される。いくつかの態様において、前記対象は、UVB照射(例えば、皮膚に損傷を与える量のUVB照射)に晒されてきているか又は晒されるであろう。いくつかの態様において、前記作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。
【0023】
用語「RhoE経路」は、アポトーシス及び分化に対するRhoEの効果を媒介する生物学的構成要素を指す(図9を参照のこと)。前記経路には、例えばRhoE及びROCK Iが含まれる。用語「RhoE経路作動物質」は、RhoE経路の活性を増強する作用物質、例えばRhoEポリペプチドの生物学的活性の1つ以上、例えば本明細書中に記載したような生物学的活性、を増化、誘発、又は他の方法で促進する作用物質、を指す。
【0024】
1つの態様において、前記RhoE経路作動物質は、RhoEポリペプチド又は正に作用する細胞質経路構成要素をコードする核酸である。他の態様において、RhoE経路作動物質は、ROCK Iの発現を阻害する核酸(例えばアンチセンス又はRNAi核酸)である。
前記対象は、哺乳動物であり、通常ヒト(例えば女性又は男性、且つ、成人又は若年のヒト対象)である。
【0025】
前記方法は、例えば投与前、投与中、又は投与後に対象の皮膚損傷の1以上の兆候を評価することをさらに含んでいる。こうした兆候に関する例を本明細書中に記載する。前記方法は、対象のRhoEの関連パラメーター、例えばRhoEポリペプチド、RhoE受容体、又はRhoE経路活性のレベルに関連しているパラメーター、を評価することをさらに含んでいる。用語「パラメーター」は、定性的及び定量的記述語、例えば値、レベル、測定値など、を含んでいる情報を指す。「RhoE関連パラメーター」は、RhoE経路の構成要素、例えばこうした構成要素、例えばRhoEポリペプチド又は他の細胞質構成要素の存在、不存在、レベル、発現、安定性、細胞内局在性、又は活性を説明するパラメーターを指す。前記パラメーターはまた、RhoE経路の構成要素をコードするmRNAを説明することもできる。
【0026】
他の側面において、本発明は、組成物、例えばRhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を含んでいる化粧品組成物、を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、RhoE経路の構成要素、例えばRhoE、を調節する。前記化粧品組成物は、第2の構成要素、例えば化粧品成分(例えば香料、保湿剤、又は日焼け止め剤)、をさらに含んでいる。いくつかの態様において、RhoE経路の構成要素を調節する作用物質は、表1に提示されたものから選ばれる。これらの組成物は、皮膚損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷及び/又はシワ、の治療及び/又は予防方法に使用され得る。
【0027】
他の側面において、本発明は、皮膚損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷及び/又はシワを軽減するのに十分な量でRhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質を含んでいる組成物、例えば局所適用のための組成物を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、RhoE経路の構成要素を調節する。前記作用物質は、例えば表1に提示されたものから選択され得る。前記組成物は、化粧品成分、例えば香料又は日焼け止め剤、をさらに含んでいる。
【0028】
他の側面において、本発明は、皮膚損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷及び/又はシワ、を予防する、軽減する、及び/又は治療するための医薬品又は化粧品の調製における、有効な量のRhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質の使用、あるいは皮膚損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷及び/又はシワ、を予防する、軽減する、及び/又は治療するための、有効な量のRhoE経路活性を増強する(例えば、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる)作用物質の使用を特徴とする。いくつかの態様において、前記作用物質は、RhoE経路の構成要素を調節する。前記作用物質は、例えば表1に提示されたものから選択され得る。前記の医薬品又は化粧品は、化粧品成分、例えば香料又は日焼け止め剤、をさらに含んでいる。
【0029】
さらに別の側面において、本発明は、RhoE経路活性、レベル、又は発現を増強する作用物質、例えばRhoE経路の構成要素を調節する作用物質、を含んでいる組成物、並びに皮膚損傷を予防するように上記組成物を使用することを指図した取扱説明書を含んでいる、対象の皮膚損傷、例えば、UVBによって引き起こされる皮膚損傷及び/又はシワを軽減する、治療する、及び/又は予防するためのキットを特徴とする。前記組成物は、化粧品成分、例えば香料又は日焼け止め剤、をさらに含んでいる。前記取扱説明書は、太陽光暴露前、暴露中、又は暴露後に前記組成物を皮膚に適用する指図を含んでいる。
【0030】
別段の規定のない限り、本明細書中に使用されるすべて技術及び学術用語は、本願発明が属する当業者により一般的に理解されているのと同じ意味を持つ。本明細書中に記載したものと同様又は同等な方法及び材料を当該発明の実施又は試験において使用するが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書中で触れたすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体を本明細書中に援用する。不一致の場合には、規定を含めた当該明細書が規制される。加えて、材料、方法、及び実施例は、説明のためだけのものなので、制限することを意図していない。
【0031】
1以上の本発明の態様の詳細は、添付図面と以下の説明に規定される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明と請求項から明らかになるだろう。本明細書中に引用されたすべての参考文献が、援用される。
【0032】
詳細な説明
本発明者らは、皮膚損傷、例えばUVBによって引き起こされる皮膚損傷、例えばシワ、の治療、予防、及び/又は軽減に関するスクリーニング及び治療方法、並びに組成物、例えば化粧品組成物のための標的としてRhoE経路を特定した。本願発明は、有効成分としてRhoE誘発因子を含む組成物を特徴とする。
【0033】
皮膚損傷
損傷を受けた皮膚は、炎症、表皮過形成、真皮弾力線維症や基質タンパク質分解、及び細静脈周囲のリンパ組織球増加型(perivenular lymphohistiocytic)真皮内浸潤の存在のうちの1以上を通常特徴とする。本明細書中に記載した結果は、RhoEが皮膚損傷、例えばUVB照射で引き起こされた皮膚損傷、を防ぐことを明らかにした。
【0034】
有効な量の組成物は、対象に投与することで、対象の皮膚損傷の1以上の兆候、例えば炎症、表皮過形成、真皮弾力線維症や基質タンパク質分解、細静脈周囲のリンパ組織球増加型真皮内浸潤、及びシワ(例えば小ジワ)の形成、を予防するか又は軽減する組成物の量と規定される。対象に投与されるべき有効な量は、年齢、性別、表面積、体重、及び皮膚の状態を含めた様々な要因に通常基づいている。体表面積は、患者の身長と体重からおおまかに決定されることもできる。例えばScientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardley, New York, 1970, 537を参照のこと。有効投与量は、当業者によって認識されているとおり、投与経路、賦形剤の使用、及びシワ軽減化合物の使用などの他の処置との同時使用の可能性に依存して変わる。組成物の有効な量を決定する方法において、実験動物が使用され得る。
【0035】
本明細書中に使用されるとき、「皮膚損傷を予防又は治療すること」は、皮膚損傷の出現を軽減するか(reduce)、改善するか(improve)、緩和するか(alleviate)、変えるか(alter)、矯正するか(remedy)、和らげるか(ameliorate)、又は影響を与える(affect)ことを目的として、皮膚損傷、例えばシワ、があるか、又は皮膚損傷に向かう素因を持っているか、又は皮膚損傷を引き起こす可能性が高い作用物質、例えばUV放射、例えばUVB照射に晒されてきている対象への治療薬の適用又は投与を意味する。前記治療薬は、対象自身、別の人、例えば医療提供者又は化粧品の提供者、によって対象に投与され得る。本明細書中に記載した方法の好ましい態様において、皮膚損傷は、対象において少なくとも5%、通常少なくとも10%、例えば少なくとも20%、25%以上、軽減される。
【0036】
前記方法及び組成物は、予防的に使用され得るか、又はそれらは、対象のさらなる皮膚損傷、例えばシワ、を軽減する、治療する、及び/又は予防するか、若しくは皮膚損傷の出現を軽減するのに使用され得る。前記組成物はまた、皮膚損傷、例えばシワ、を予防する、軽減する、及び/又は治療するための医薬品又は化粧品の製造のためにも使用され得る。
【0037】
シワ
シワは、一般的に、皮膚の自然な老化過程及び太陽の紫外線への暴露の結果である。シワは、組織学レベルの特定の構造変化を伴わない皮膚の表面における構成変化である。一般的に、シワは、(本明細書中に援用される)Kligman et al. (1985) Br. J. Derm. 113:37-42に記載のとおり分類される。Kligmanはシワを3つのクラス:線状ジワ(linear wrinkles)、図形ジワ(glyphic wrinkles)、及び縮緬ジワ(crinkle)、に分類している。線状ジワは、直線状であり、顔面皮膚に通常見られ、そして自然な老化又は紫外線への暴露によって引き起こされる。図形ジワは、見かけ上はシワの三角形又は長方形として形成され、太陽光に晒されてきている顔、手、及び首に見られ、そして紫外線への暴露又は太陽皮膚症(dermatoheliosis)によってさらに悪化する。縮緬ジワは、皮膚のいたるところに見られるが、手の甲とマブタの周りに一般的に見られる、たるんだ皮膚上の細い縮れたシワである。
【0038】
線状ジワは、さらに(a)通常のシワと(b)小ジワに亜分類され得る。通常のシワは、長くて、深く、はっきりとしていて、カラスの足跡とも呼ばれる。小ジワは、細くて、浅い。通常のシワは、少なくとも約155ミクロン(約155μm)(0〜32 Hz)、通常約160〜250ミクロン(約160〜250μm)の幅がある。小ジワは、(例えば、基本的にTakasu et al. (1996) J. Soc. Cosmet Chem. Japan 29:394-405;及び1995年5月2日に公開された日本国特許出願公開番号第07-113623号に記載のとおり、Shiseido Wrinkle Analyzer 3D Proシステムを使用して)例えば二次元フーリエ変換によって三次元形状データを周波数領域のデータに変換することによって得られたパワースペクトルで、計算されるとおり約154ミクロン(約154μm)未満、通常約40〜154ミクロン(約40〜154μm)(32〜126 Hz)の幅がある。
【0039】
スクリーニングの方法
RhoE及びROCK Iを含めたRhoE経路が、Ongusaha et al. (2006) Curr. Biol. 16:2466-72及びBoswell et al. (2007) J. Biol. Chem. 282:4850-58に記載されており、それの両方を本明細書中に援用する。前記経路の構成要素は、複数の種からクローン化されていたので、それらのタンパク質及び遺伝子配列は当業者にとって容易に入手可能である。RhoE配列は、例えばヒトと、チンパンジーと、アカゲザルと、マウスと、ラットと、ウシと、ウマから入手可能である。ROCK-I配列は、例えばヒトと、チンパンジーと、アカゲザルと、マウスと、ラットと、イヌと、ウサギと、ウシと、ウマから入手可能である。
代表的なヒトRhoEポリペプチドを配列番号1として提供する。
【0040】
【化1】

【0041】
代表的なヒトROCK1ポリペプチドを配列番号2として提供する。
【0042】
【化2】

【0043】
これら又は他のRhoEとROCK-1配列の天然に存在する変異体及び合成変異体が、本明細書中に記載した方法で使用され得る。
【0044】
多数の方法が、作用物質が特定のmRNA又はタンパク質の発現、レベル、又は活性を変更するかどうか評価するために存在している。1つの態様において、試験作用物質がRhoE経路プロモーター(例えばRhoEプロモーター)からの発現を(例えば持続的に又は一時的に)調節する(例えば増減する)能力は、例えばレポーター(例えばルシフェラーゼ、LacZ、又はGFP)転写アッセイによって評価される。例えば、そのゲノムがRhoE経路プロモーターに作動できるように連結されたレポーター遺伝子を含んでなる細胞又はトランスジェニック動物を試験作用物質と接触させることができ、そしてレポーター活性を増強するか又は減弱させる試験作用物質の能力は、その作用物質がRhoE経路活性を調節する能力を示唆している。他の態様において、RhoE発現、レベル、又は活性を調節する試験作用物質の能力は、トランスジェニック動物で評価される。RhoE発現、レベル、又は活性に対する試験作用物質の効果は、細胞、細胞溶解物、又は対象、通常ヒト以外の実験用哺乳動物、例えば齧歯動物(例えばラット・マウス、ウサギ)、若しくはその外植片(例えば皮膚)において評価されることもできる。mRNA発現を評価する多数の方法、例えばノーザン解析、リボヌクレアーゼ・プロテクション・アッセイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、又はRNA in situハイブリダイゼーションが、当該技術分野で周知である(例えばSambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed. 2001)を参照のこと)。タンパク質レベルは、例えばウエスタン解析、イムノアッセイ、又はin situハイブリダイゼーションによって観察されることもできる。小分子スクリーニングの一般的な方法は、例えばSchrieber (2003) Chem. & Eng. News 81:51-61;及びFlaumenhaft and Sim (2003) Chem. Biol. 10:481-6の中で議論されている。
【0045】
本明細書中に記載した核酸は、例えばその核酸を発現する核酸を含んでいるウイルスとして、ベクター内に含まれることもできる。代表的なウイルス・ベクターとしては、アデノウイルス(Altaras et al., 2005, Adv. Biochem. Eng. Biotechnol., 99:193-260で概説される)、アデノ随伴ウイルス(Park et al., 2008, Front. Biosci., 13:2653-59で概説される;Williams, 2007, Mol. Ther., 15:2053-54もまた参照のこと)、パルボウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス(Tai et al., 2008, Front. Biosci., 13:3083-95で概説される)、及び単純ヘルペスウイルスが挙げられる。核酸の送達方法は、Patil et al., 2005, AAPS J., 7:E61-77で概説されている(その文献の全体を本明細書中に援用する)。
【0046】
作用物質
本明細書中に記載したスクリーニング法で試験されるべき作用物質としては、例えば未精製の若しくは精製された有機起源の抽出物、例えば動物若しくは植物抽出物、並びに部分的に若しくは完全に精製された、又は合成の作用物質、例えば小分子、ポリペプチド、脂質、及び/又は核酸、及びそれらのライブラリが挙げられる。RhoE経路活性の活性化因子と同定された作用物質は、本明細書中に記載した皮膚損傷に関連した方法及び組成物において試験及び/又は使用され得る。RhoE経路活性を活性化する(例えばRhoE発現を誘導する)いくつかの作用物質が、本明細書中で同定され、そして表1に提示されている。これら、及び構造的又は機能的に類似した作用物質が、例えば皮膚損傷とシワの治療において試験及び/又は使用され得る。
【0047】
投与
シワ又は他の肌の状態の予防若しくは軽減のため、又は本明細書中に記載の他の障害の治療のための組成物は、局所、皮下、腹腔内、筋肉内、鼻腔内、静脈内を含めた非経口経路を介して投与されることもできる。局所投与が通常使用される。組成物の反復投与、例えば反復局所投与、が使用され得る。2種類以上の投与経路、例えば経口投与を伴った局所投与、が同時に使用され得る。非経口剤形の例としては、等張食塩水、5%のグルコース、又は他の周知の医薬的に許容し得る賦形剤中、活性物質の水溶液が挙げられる。シクロデキストリン又は他の可溶化剤などの可溶化剤が、シワ軽減組成物の送達のための医薬賦形剤として利用され得る。
【0048】
本明細書中に記載した組成物はまた、従来の方法を利用した他の投与経路向けの剤形にも処方され得る。医薬組成物は、例えば経口投与のための剤形に、カプセル剤、錠剤(それぞれ、緩効性及び徐放製剤を含む)、又はゲル・シール(gel seal)、に処方され得る。カプセル剤は、ゼラチン又はセルロース誘導体などのあらゆる標準的な医薬的に許容し得る材料を含むこともできる。錠剤は、作用物質と固体担体の混合物、及び滑沢剤を圧縮することによる従来の手順に従って処方されることもできる。固体担体の例としては、デンプンと糖ベントナイト(sugar bentonite)が挙げられる。医薬組成物はまた、例えば結合剤としてのラクトース若しくはマンニトール、従来の充填剤、及び錠剤形成剤を含んでいるハード・シェル錠剤又はカプセル剤の形態でも投与され得る。
【0049】
本明細書中に記載した化合物、例えばシワ軽減化合物、の局所投与は、先に記載した多くの異なった経路の中で好ましい投与経路を提供する。局所適用のために、前記組成物は、皮膚に適合した媒質を含んでいる。こうした局所医薬組成物は、多くの形態で、例えば皮膚への適用に適合した溶液、クリーム、軟膏、ゲル、ローション、シャンプー、又はエアゾール製剤の形態で、存在し得る。シワを予防若しくは軽減するのに、又は本明細書中に記載した障害の治療に有用な組成物の有効成分(例えば表1に提示されたもの、例えばケンフェロール)の重量パーセントは、医薬的に許容し得る担体との混合物の状態で、通常、(組成物の全重量に基づいて)0.01%〜10%(例えば0.02%、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、1.0%、2.0%、5.0%、又は10%)又は0.05μM〜5mM(例えば0.1〜10μM、0.5〜50μM、1〜100μM、5〜500μM、10μM〜1mM、20μM〜2mM、50μM〜5mM、0.1〜2mM、又は0.2〜1mM)の範囲をとる。アルコールや、アロエベラ・ゲルや、アラントインや、グリセリンや、ビタミンA及びEオイルや、鉱油や、ポリエチレングリコールなどの様々な担体材料が、本明細書中に記載のシワ軽減組成物に利用され得る。他の添加物、例えば保存料、香料、日焼け止め剤、又は他の化粧品成分が、前記組成物中に存在し得る。局所組成物は適用され、そしてすぐに取り除かれてもよく、又はそれは、長期間、例えば一晩又は日中、皮膚表面、例えば顔に適用され、そしてそのままにされてもよい。
【0050】
UVB照射
UVB照射の主要な起源は自然の太陽光である。UVB光線の強さは、時刻、時節、上空の太陽の位置、高度、及び赤道からの距離によって異なる。これらの光線は、夏の昼間の時間帯の間が最も強いが、それらは冬期の間さえ常に存在している。海抜距離及び赤道からの距離もまた、考慮するために重要である。高度が高ければ高いほど、UVB光線の強さはより強くなる。そのため、登山家、スキーヤー、及び高地に生きる人は、長期UVB損傷の危険性が高い。赤道により近い人もまた、UV放射がより強いので、長期UVB損傷の危険性がより高い。
【0051】
雪、水、及び砂が太陽光を反射して、皮膚に達するUVB照射の量を高める。雲が太陽を見えなくしているときでさえ、長期暴露によってUVBレベルは皮膚損傷、例えばシワ、を引き起こすのに十分に高いままであり得る。
【0052】
(環境保護庁によって作成された)UV指数は、所定の日における太陽のUV光線の強さを示す。4つのカテゴリ‐中程度(UV指数が3未満である)、高い(UV指数が3〜6である)、非常に高い(UV指数が6〜10である)、極度(UV指数が10より高い)が存在する。中程度のUV指数は、あなたの皮膚が日焼けするには1時間より長くかかることを意味する。極度なレベルは、それが15分未満であることを意味する。前記指数は、多くの場合天気予報に含まれている。臨床的には、UVB暴露はMEDsで計測される。1MEDは、敏感な皮膚に日焼けを生じるのに必要なUVBの量である。UVB暴露の効果は累積するので、長期又は慢性的なUVB誘発シワは、急性被爆により、紅斑や水腫又は日焼けを引き起こし得るレベルを下回る(例えば1MED未満)UVBレベルへの長期暴露の結果として起こり得る。例えば、対象が低い若しくは中程度のUV指数の太陽光に何日か晒されただけであっても、対象が慢性的に太陽光に晒されているなら、対象は長期UVB誘発シワの危険性が高い。
【0053】
シワの計測
シワの形成又は出現に対する化合物の効果は、例えば目視検査によって、質的に、又は例えばシワの形態のコンピュータを使った測定によって、量的に評価される。好ましくは、シワの形態が、量的に分析される。シワを測定するための定量的方法の例としては、これに限定されることはないが、Hoshino (1992) Pixel 45:121(本明細書中に援用する)によって提案されているレーザビームを利用した光学切断技術;又は三次元皮膚レプリカを分析する方法、例えばShiseido Wrinkle Analyzer 3D Proシステム(Takasu et al. (1996) J. Soc, Cosmet Chem. Japan 29:394-405;1995年5月2日に公開された日本国特許出願公開番号第07-113623号(米国特許出願第08/364,346号に相当する))が挙げられる。SILFLO(登録商標)(Flexico Development Ltd.、Potters Bar, UK)システム又は同様のシステムが、皮膚のレプリカをとるのに使用される。皮膚レプリカの表面の凸凹、すなわち、シワは、例えば、Shiseido Wrinkle Analyzer 3D Pro又は同様のシステムで分析されて、皮膚に対応する二次元平面上の地点の高さから三次元形状データを提供する。三次元データに照らして、それぞれのシワの長さ、幅、深さ、面積、及び体積が計算される。このようにして、本明細書中に記載した通常のシワ及び小ジワに関するパラメーターにより、通常のシワ及び小ジワのサブクラスを含めた異なったクラスのシワが個別に認識され、そしてスコア化される。
【0054】
キット
RhoE経路活性を増強する作用物質、例えば本明細書中に記載した方法により同定された作用物質、例えば表1に提示された化合物が、キットの状態で提供され得る。前記キットは、(a)前記作用物質、例えば前記作用物質を含んでいる組成物、及び(b)情報提供用資料を含んでいる。前記情報提供用資料は、説明用、教育用、マーケティング、又は本明細書中に記載の方法、及び/又は本明細書中に記載の方法のための作用物質の使用に関連するその他の資料であり得る。例えば、前記情報提供用資料は、シワ又はそれらの予防若しくは軽減に関連する。
【0055】
1つの態様において、前記情報提供用資料は、本明細書中に記載の方法を実施するために好適な様式で、例えば好適な用量、剤形、又は投与方法(例えば本明細書中に記載の用量、剤形、又は投与方法)で、作用物質を投与するための取扱説明書を含み得る。好ましい用量、剤形、又は投与方法は、例えば皮膚への、局所的な投与である。他の態様において、前記情報提供用資料は、好適な対象に、例えばヒトに、例えばシワがあるか若しくはシワの危険性が高いヒトに、作用物質を投与するための取扱説明書を含み得る。例えば、前記資料は、顔、首、又は手に前記作用物質を投与するための取扱説明書を含み得る。
【0056】
キットの情報提供用資料は、その形態に制限されない。多くの場合、前記情報提供用資料、例えば取扱説明書は、印刷物、例えば印刷された文書、図面、及び/又は写真、例えばラベル又は印刷されたシートで提供される。しかしながら、情報提供用資料はまた、点字、コンピュータで読み込み可能な物質、ビデオ記録、又は音声記録などの他の形式でも提供され得る。他の態様において、キットの情報提供用資料は、そのキットの使用者が作用物質及び/又は本明細書中に記載した方法によるその使用について確かな情報を得ることができる問い合わせ先、例えば実際の住所、電子メール・アドレス、ウェブ・アドレス、又は電話番号、である。もちろん、前記情報提供用資料はまた、形式のあらゆる組み合わせでも提供され得る。
【0057】
作用物質に加えて、前記キットの組成物には、溶媒若しくは緩衝剤、保存料、安定化剤、香料、又は他の化粧品成分などの他の構成要素、及び/又は本明細書中に記載の状態又は障害を治療するための第2の作用物質、例えば日焼け止め剤。を含み得る。あるいは、他の構成要素が、キットに含まれるが、前記作用物質と異なった組成物又はコンテナに含まれ得る。こうした態様において、前記キットは、前記作用物質と他の構成要素を混合するため、又は他の構成要素と一緒に前記作用物質を使用するための取扱説明書を含み得る。
【0058】
前記作用物質は、あらゆる形態で、例えば液体、乾燥形態、又は凍結乾燥形態で、提供され得る。前記作用物質は、実質的に純粋及び/又は無菌であることが好ましい。前記作用物質を液状溶液で提供するとき、その液状溶液は通常水溶液、例えば無菌水溶液、である。前記作用物質を乾燥形態で提供するとき、通常、再構成は好適な溶剤の添加による。前記溶媒、例えば滅菌の水又は緩衝液、が前記キットに任意に提供され得る。
【0059】
前記キットは、前記作用物質を含む組成物のために1つ以上のコンテナを含み得る。いくつかの態様において、前記キットは、組成物と情報提供用資料のための別々のコンテナ、仕切り板、又は区画を含んでいる。例えば、前記組成物は、瓶、バイアル、又はシリンジ内に入れられ得る、そして前記情報提供用資料は、プラスチック製のスリーブ又は小包(packet)内に収められ得る。他の態様において、前記キットの別々の要素は、1つの、分割されないコンテナ内に収められる。例えば、前記組成物は、それにラベルの形態で情報提供用資料が取り付けられた瓶、バイアル、又はシリンジ内に入れられる。いくつかの態様において、前記キットは、複数の(例えば1組の)個々のコンテナを含んでいて、それぞれが前記作用物質の1以上の単位投与剤形(例えば本明細書中に記載した剤形)を含んでいる。例えば、前記キットは、複数のシリンジ、アンプル、ホイル小包、又はブリスターパックを含んでいて、それぞれ前記作用物質の単回単位用量を含んでいる。前記キットのコンテナは、気密性であり、及び/又は防水性であり得る。
【0060】
前記キットは、任意に、前記組成物の投与に好適なデバイス、例えばシリンジ、吸入器、ピペット、鉗子、計量スプーン、スポイト(例えば点眼器)、スワブ(例えば綿棒又は木製スワブ)、又はいずれかのこうした送達デバイス、を含んでいる。
以下の具体例は、単なる説明のためのものとして理解されるべきであり、どのような形であっても開示の残りの部分を限定することはない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1AはRhoEルシフェラーゼ・レポーターを描く概略図であり、図1BはRhoE発現の誘発因子のスクリーニング方法のフローチャートである。
【図2】それぞれの化合物の2つの独立した反復試験に関するZ値の分布を描くグラフである。
【図3】指定の量のケンフェロールで処理した後のRhoEとp53の発現を描くウエスタンブロットである。
【図4】UVB暴露後の未処置細胞とケンフェロール処置細胞の細胞死滅率を描く棒グラフである。
【図5】UVB暴露、そして0.5mMのケンフェロール処置後のマウス皮膚におけるアポトーシスを描く顕微鏡写真のセットである。TUNEL染色を赤色で示し、そして(核の)DAPI染色を青色で示す。
【図6】UVB暴露、そして0.5mMのケンフェロール(6B)又はDMSO対照(6A)での処置後のマウス皮膚におけるDNA損傷の顕微鏡写真である。6Cは、UV暴露なしの対照を示す。TDM-2染色を緑色で示し、そしてDAPI染色を青色で示す。
【図7】UVB暴露、そして0.5mMのケンフェロール(7B)又はDMSO対照(7A)での処置後のマウス皮膚の顕微鏡写真である。7Cは、UV暴露なしの対照を示す。抗ホスホ-H2AX染色を赤色で示し、そしてDAPI染色を青色で示す。
【図8】UVB暴露、そして0.5mMのケンフェロールでの処置後のマウス表皮におけるRhoE発現を描く顕微鏡写真のセットである。DAPI染色を青色で示し、そしてRhoE染色を赤色で示す。
【図9】ケラチン生成細胞の生存、アポトーシス、及び分化におけるRhoEとROCK Iの役割のモデルである。
【図10】10A、ベクター対照(pbabe)と比較したRhoE発現(pbabe-shRhoE)の阻害;又は、10B、対照(ad-GFP)と比較したRhoE(ad-RhoE)の過剰発現、に続いて、NIC、インボルクリン、RhoE、及びβ-アクチン対照を描くウエスタンブロットである。
【図11】野生型(11A)とRhoEトランスジェニック(11B)マウスの表皮におけるケラチン1の発現を描く顕微鏡写真である。ケラチン1を赤色で示し、そして、DAPIを青色で示す。
【図12】UVB暴露後のヒト皮膚におけるRhoE発現を描く顕微鏡写真のセットである。
【図13】UVB暴露後のヒト皮膚におけるRhoE発現を描く顕微鏡写真のセットである。
【図14】指定のレベルのUVBに晒した後に定量的PCRによって計測されたヒト・ケラチン生成細胞における相対RhoE mRNAレベルを描く棒グラフである。
【実施例】
【0062】
実施例1.RhoE誘発作用物質の同定
ケラチン生成細胞においてRhoE経路を活性化し、そしてUVB暴露から保護し得る化合物を単離するために、RhoE発現を誘導する小分子の同定のために、強力で感受性の高い遺伝生化学アプローチを開発した。スクリーニング法の総説を、図1Bに提示する。簡単に言えば、luc2ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子に作動できるように連結されたRhoEプロモーターを含んでいるレポーター構築物を作製した(図1A)。前記レポーター構築物を発現した安定な細胞株を作出し、そして1ウェルあたり〜10,000個の細胞にて、その細胞を384ウェル・プレート内に蒔いた。ライブラリ試験化合物を、1化合物あたり2回の反復試験で平板培養した細胞に添加し、そしてその細胞を上記化合物と一緒に24時間インキュベートした。プレートリーダを使用して24時間で発光を計測した。そのデータをSpotfireを使用して分析した。(2回の反復試験について)2を超える合成物Z(composite Z)値を有するRhoE発現を誘導した化合物を、表1に提示する。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
前記結果は、それぞれの化合物に関して2回の反復試験の間で十分よく再現された(図2)。最も高い合成物Z値を有する6つの化合物に関する追加データを、表2に提示する。
【0068】
【表5】

【0069】
ウェスタンブロット分析は、ケンフェロールが、p53非依存性の様式でRhoE発現を活性化することができることを示し、この化合物が皮膚保護薬として有用であるかもしれないことを示唆した(図3)。
【0070】
実施例2.RhoE誘発作用物質は、UVBによる皮膚損傷を軽減する
RhoE誘発作用物質がUVB損傷媒介性細胞死に対して保護効果があるかどうかを判定するために、ケンフェロール処置(1及び2.5μM)HaCaTヒト・ケラチン生成細胞株を、UVB(30mJ/cm2)に晒し、そして24時間後に細胞死滅率を調べた(図4)。ケンフェロール処置は、HaCaT細胞におけるUVB誘発細胞死の抑制をもたらし、ケンフェロールを介したRhoE活性化がUVB損傷から細胞を保護することを示唆した。
【0071】
次に、UVB損傷マウス皮膚に対してケンフェロールに保護効果があるかどうか、及び/又はDNA修復の可能性があるかどうかを調査した。UVB暴露の2日前に、背側毛の8-週齢、C57BL/6マウスをトリミングし、そして細い毛を脱毛剤の適用によって取り除いた。拘束したマウスに、120mJ/cm2にてUVB照射を行い、そして50μlのDMSO中、0.5mMのケンフェロール又はDMSO対照で処置した。皮膚を、UVB暴露後のさまざまな時点で安楽死させたマウスから剥がし、4%の中性緩衝化パラホルム中ですぐに固定し、OCT内に包埋し、そして8μmの厚さで切片にした。製造業者の取扱説明書に従ってターミナル・ヌクレオチジル・トランスフェラーゼ媒介ニック末端標識(TUNEL)アッセイ(Roche Applied Science、Germany)によって、UVBに晒した16時間後に採集した皮膚切片においてアポトーシス細胞を検出した。ケンフェロール処置は、対照/DMSO処置皮膚と比較して、表皮におけるUVB損傷によって誘発されたアポトーシスを抑制した(図5)。そのうえ、UV損傷に起因するDNA損傷の主なタイプであるシクロブタン・ピリミジン二量体(CPD)を検出するための、(AlexaFluor488(Invitrogen、Oregon, USA)を使用して検出される)抗CPD(シクロブタン・ピリミジン二量体)モノクローナル抗体であるクローンTDM-2(MBL International、Woburn, MA)での染色は、ケンフェロール処置が表皮においてUVB暴露によって生じたピリミジン二量体形成を抑制することを示した(図6A〜6C)。
【0072】
UVB損傷に対応してDNA損傷部位にて活性化され、そして結合することが知られている活性型のH2AX(Ser139)のレベルもまた、抗-ホスホ-H2AX(Ser139)抗体(Upstate Cell Signaling Solutions、New York)で染色することによって計測した。UVB損傷に対応した活性型のH2AX(Ser139)のレベルは、ケンフェロール暴露皮膚において有意に低減した(図7A〜7C)。
【0073】
さらに、RhoE発現もまた、ケンフェロール処置皮膚の表皮の基底上領域において促進されていた(図8)。この実施例は、RhoEの活性化がUVBによって媒介されたDNA損傷を予防し、そしてDNA修復を促進して、健常な皮膚を維持し得ることを示唆している。
【0074】
実施例3.RhoEは、Notch誘発ケラチン生成細胞分化に関与する
ケラチン生成細胞分化に対するRhoEの効果を判定した。Ca2+誘発分化中に、ケラチン生成細胞においてRhoEを下方制御又は上方制御し、そして分化マーカーである細胞質活性型Notch1(NIC)とインボルクリンに対する効果を観察した。pbabe対照ベクターと比較したとき、shRNA構築物(pbabe-shRhoE)の発現によるRhoEの下方制御は、NIC、インボルクリン、及びRhoEの発現低下をもたらした(図10A)。逆に、対照アデノウイルス発現性GFP(ad-GFP)と比較したとき、アデノウイルスベクター(ad-RhoE)からのRhoEの過剰発現は、NIC、インボルクリン、及びRhoEの発現を増強した(図10B)。これらの結果は、マウスケラチン生成細胞におけるCa2+誘発分化時にRhoE発現が増強されることを実証している。
【0075】
次に、Keratin14プロモーターによって駆動されるRhoE遺伝子を発現するトランスジェニック・マウスの表皮の分化パターンを観察した。Notch1を用いて見られた結果と同様に、RhoEの過剰発現は、分化マーカーであるKeratin1(K1)の発現様式を有意に変更できる。K1特異的抗体を用いた免疫蛍光染色は、表皮の基底層及び毛嚢におけるこのタンパク質の過剰発現を示したが、一方、野性型マウスは基底上層及びそれらの毛嚢間表皮の上層部においてのみK1発現を保存している(図11A〜B)。これらの知見は、生体内においてケラチン生成細胞分化を調節する際にRhoEが重要な役割を果たしていることを示しており、そしてケラチン生成細胞分化においてRhoEとNotchの間には交差調節が存在することを示唆している。
この実施例は、RhoEがNotch1の転写下流標的であるので、RhoE活性化がNotch誘発ケラチン生成細胞分化において役割を果たすことを示唆している。
【0076】
実施例4.UVBは、生体内でヒト皮膚におけるRhoE発現を誘導する
健常男性ボランティアの背部皮膚サンプルを、UV照射後に得、そしてRhoE発現の検出のためにホルマリン又はアセトン‐メチルベンゾナート‐キシレン(AMeX)固定によって処理した。ホルマリン(図12)又はAMeX(図13)固定組織のいずれでも、RhoEの発現は、表皮の基底上層において促進されたが、基底層においていくらか減少した。これは、RhoE発現がヒト・ケラチン生成細胞においてUV DNA損傷によって誘導されたことを示唆している。
【0077】
ホルマリン固定のために、30〜49歳の5人の健常男性ボランティアの背部皮膚に、UV源としてFL-E Lamp(290〜320nm)(Toshiba、Japan)を使用して3MED(最低紅斑線量)(上記MEDをそれぞれのボランティアについてあらかじめ決定した)のUV照射した。生検皮膚サンプルを、10%のホルマリンによって固定し、そしてパラフィン中に包埋した。抗原の脱マスキングを、1mMのEDTAと10mMのTris(商標)緩衝液、pH9を用いた125℃にて15分間のオートクレーブ処理によって実施した。サンプルを、脱イオンH2Oで2分間、3回洗浄した。洗浄後に、そのサンプルを、脱イオンH2O中、0.01%の過酸化水素の中で10分間インキュベーションし免疫染色して、内因性ペルオキシダーゼ活性をクエンチした。サンプルを、PBSで5分間、2回洗浄し、次に、PBS中、10%の通常のブロッキング血清(VECTASTAIN universal elite ABCキット)と一緒に30分間インキュベートした。サンプルを、10%の通常のブロッキング血清を含むPBS中、1:200希釈の一次抗体(抗RhoE/Rnd3、クローン4、Upstate)と一緒にインキュベートした。PBSで5分間、3回の洗浄後に、前記サンプルを、希釈したビオチン化二次抗体溶液(VECTASTAIN universal elite ABCキット)と一緒にインキュベートし、PBSで5分間もう3回洗浄し、そしてプレミックスVECTASTAIN elite ABC試薬と一緒に30分間インキュベートした。PBSで5分間、3回の最後の洗浄後に、細胞を、ペルオキシダーゼ基質(Vectorペルオキシダーゼ基質キットDAB SK-4100)と一緒にインキュベートし、そして水道水ですすいだ。代表的なサンプルを、図12に示す。
【0078】
AMeX固定のために、30〜49歳の4人の健常男性ボランティアの背部皮膚に、UV源としてFL-E Lamp(290〜320nm)(Toshiba、Japan)を使用して2MED(上記MEDをそれぞれのボランティアについてあらかじめ決定した)のUV照射した。生検皮膚サンプルを、冷アセトンで固定し、そしてAMeX手順に従ってパラフィン中に包埋した(Sato et al. (1986) Am. J. Pathol. 125: 431-435)。3ミクロン(約3μm)の切片を、キシレンで脱パラフィン処理し、そして再水和させた。サンプルを、3%の過酸化水素によって15分間前処理して、内因性ペルオキシダーゼ活性を阻害した。10%の通常のヤギ血清(Histofine、Tokyo, Japan)によって非特異的結合をブロックした。そして、サンプルを、1%のウシ血清アルブミンを含むPBS中、1:100希釈の一次抗体(抗RhoE/Rnd3、クローン4、Upstate)と一緒にインキュベートした。PBSで5分間、3回の洗浄後に、サンプルを、EnVison+システム標識重合体-HRP抗マウス(DAKO)抗体と一緒にインキュベートし、そしてPBSでさらに3回洗浄した。前記サンプルを、Liquid DAB+基質‐色素体システム(DAKO)と一緒にインキュベートし、そして水道水によってすすいだ。代表的なサンプルを、図13に示す。
【0079】
実施例5.UVは、生体内で分化したケラチン生成細胞においてRhoEの発現を誘導する
正常ヒト・ケラチン生成細胞を、ケラチン生成細胞成長培地(KGM)中で集密度に達するまで培養した。1.5mMのCa2+を加えることによって分化を誘発し、そしてその翌日に、その細胞をUV源としてFL-E Lamp(290〜320nm)(Toshiba、Japan)を使用したUVBに晒した。UV暴露の24時間後に、細胞内RNAを得、そしてLightCyclerを使用して定量的RT-PCRを実施して、RhoEレベルを測定した。UV照射は、分化したヒト・ケラチン生成細胞におけるRhoEの遺伝子発現をさらに促進した(図14)。
【0080】
他の態様
多くの本発明の態様を説明した。それにもかかわらず、当然のことながら、本発明の要旨と範囲から逸脱することなく様々な修飾がなされ得る。従って、他の態様は、以下の請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の皮膚損傷を予防するか、軽減するか、又は治療する方法であって、RhoE経路活性を増強する作用物質を上記対象に投与し、それによって、皮膚損傷を予防するか、軽減するか、又は治療することを含んでなる前記方法。
【請求項2】
対象の皮膚恒常性を維持する方法であって、RhoE経路活性を増強する作用物質を上記対象に投与し、それによって、皮膚恒常性を維持することによる前記方法。
【請求項3】
対象の上皮機能を正常化する方法であって、RhoE経路活性を増強する作用物質を上記対象に投与し、それによって、上皮機能を正常化することによる前記方法。
【請求項4】
対象の皮膚の老化を予防するか、軽減するか、又は治療する方法であって、RhoE経路活性を増強する作用物質を上記対象に投与し、それによって、皮膚の老化を予防するか、軽減するか、又は治療することによる前記方法。
【請求項5】
対象の皮膚のバリア機能を改善する方法であって、RhoE経路活性を増強する作用物質を上記対象に投与し、それによって、皮膚のバリア機能を改善することによる前記方法。
【請求項6】
皮膚乾燥を予防するか、軽減するか、又は治療する方法であって、RhoE経路活性を増強する作用物質を対象に投与し、それによって、皮膚乾燥を予防するか、軽減するか、又は治療することによる前記方法。
【請求項7】
シワ形成を予防するか、軽減するか、又は治療する方法であって、RhoE経路活性を増強する作用物質を対象に投与し、それによって、シワ形成を予防するか、軽減するか、又は治療することによる前記方法。
【請求項8】
前記作用物質が、RhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、RhoキナーゼI(ROCK I)活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記作用物質が、局所的に投与される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、UVB照射に晒されてきているか又はUVB照射に晒されるであろう、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記皮膚損傷、皮膚の老化、皮膚乾燥、又はシワ形成が、UVB照射によって引き起こされる、請求項1、4、6、又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記作用物質が、表1から選ばれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記作用物質が、ケンフェロールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ケンフェロールが、50μM〜5mMの濃度にて存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
RhoE経路活性を増強する作用物質を含んでなる化粧品組成物。
【請求項16】
前記組成物が、化粧品成分をさらに含んでなる、請求項15に記載の化粧品組成物。
【請求項17】
前記化粧品成分が、香料である、請求項16に記載の化粧品組成物。
【請求項18】
前記化粧品成分が、日焼け止め剤である、請求項16に記載の化粧品組成物。
【請求項19】
前記作用物質が、表1から選ばれる、請求項15に記載の化粧品組成物。
【請求項20】
前記作用物質が、ケンフェロールである、請求項19に記載の化粧品組成物。
【請求項21】
前記ケンフェロールが、50μM〜5mMの濃度にて組成物中に存在している、請求項20に記載の化粧品組成物。
【請求項22】
前記組成物が、局所適用のために処方される、請求項15に記載の化粧品組成物。
【請求項23】
皮膚損傷の治療のための作用物質のスクリーニング方法であって、以下の:
試験作用物質を準備し;
上記試験作用物質がRhoE経路活性を増強するかどうかを判定し;そして
RhoE経路活性を増強する上記試験作用物質の能力を、皮膚損傷を軽減する上記試験作用物質の能力と関連付け、それによって、皮膚損傷の治療のための作用物質をスクリーニングすること、
を含んでなる前記方法。
【請求項24】
対象の皮膚損傷に対する前記作用物質の効果を評価することをさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
RhoE経路活性を増強する試験作用物質を選ぶことをさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記判定ステップが、前記試験作用物質がRhoE活性を増強するか、RhoE発現を誘導するか、ROCK I活性を低減させるか、又はROCK I発現を減少させるかどうか判定することを含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記試験作用物質が、以下の:動物抽出物、植物抽出物、真菌抽出物、小分子、タンパク質、脂質、及び核酸から成る群から選ばれる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記判定ステップが、以下の:
レポーター・ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動できるように連結されたRhoE経路の構成要素の調節領域を含んでなる外来核酸を含んでなる細胞、組織、又はヒト以外の対象を準備し;そして
上記の細胞、組織、又はヒト以外の対象においてレポーター・ポリペプチドの活性を増強する試験作用物質の能力を評価すること、
を含んでなり、
ここで、もし上記試験作用物質が基準対照と比べてレポーター・ポリペプチドの活性を増強すれば、上記試験作用物質がRhoE経路活性を増強すると判定される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記判定ステップが、以下の:
レポーター・ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動できるように連結されたRhoE調節領域を含んでなる外来核酸を含んでなる細胞、組織、又はヒト以外の対象を準備し;そして
上記の細胞、組織、又はヒト以外の対象においてレポーター・ポリペプチドの活性を増強する試験作用物質の能力を評価すること、
を含んでなり、
ここで、もし上記試験作用物質が基準対照と比べてレポーター・ポリペプチドの活性を増強すれば、上記試験作用物質がRhoE経路活性を増強又は誘発すると判定される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記評価ステップが、前記作用物質を対象の皮膚に局所的に投与することを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、実験動物である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が、ヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
UVBによって引き起こされるシワに対する前記作用物質の効果が評価される、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2011−503211(P2011−503211A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534266(P2010−534266)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/083829
【国際公開番号】WO2009/065141
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】