説明

皮膚改善剤

【課題】 新規な皮膚改善剤およびこれを含有する健康食品を提供すること。
【解決手段】 皮膚改善剤として、松樹皮抽出物を用いる。好ましい松樹皮抽出物はOPC(oligomeric proanthocyanidin)を20重量%以上含有し、かつ、カテキン(catechin)類を5.0重量%以上含有する。この松樹皮抽出物とアスコルビン酸またはその塩とを含有する食品は、優れた皮膚のコラーゲン含量を増加させ、皮膚を改善する効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、松樹皮抽出物を含有することを特徴とする、皮膚改善剤およびそれを含有する健康食品に関する。
【0002】
【従来の技術】アスコルビン酸(以下、ビタミンCということもある)は人にとって必要不可欠な微量栄養素であり、免疫賦活作用、血中コレステロールの低下作用などのほかに、美白や美肌作用などの皮膚改善作用を有することが報告されている。しかしながら、このビタミンCは、水溶性ビタミンであり、体内で長時間維持することができず、通常、摂取しても2〜3時間で尿中に排出されてしまう。このため、体に必要なビタミンCは、一日に摂取するビタミンCの量を数回に分けて摂るなどの工夫が必要とされている。
【0003】従って、アスコルビン酸(ビタミンC)の皮膚改善作用を十分に発揮させるためには、一定時間に絶えず飲みつづけることが必要となるため、ビタミンCを単独で用いる皮膚改善剤はあまり効果があるとはいえず、新たな皮膚改善作用を有する物質およびその物質を含む食品が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記状況に鑑み、なされたものであり、本発明の目的は、新規の皮膚改善剤およびそれを含有する健康食品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、皮膚質を改善できる天然素材の探索を行った結果、松樹皮抽出物を用いることにより、皮膚質が改善されることを見出して、本発明の完成に至った。
【0006】上記課題は、松樹皮抽出物を含有することを特徴とする皮膚改善剤およびこの皮膚改善剤を有する食品により解決される。すなわち、本発明は、松樹皮抽出物を含有することを特徴とする、皮膚改善剤を提供する。
【0007】好ましい実施態様においては、前記松樹皮抽出物が、OPC(oligomeric proanthocyanidin)を20重量%以上含有する松樹皮抽出物である。
【0008】さらに好ましい実施態様においては、前記松樹皮抽出物が、20重量%以上のOPCを含有することに加えて、カテキン(catechin)類を5.0重量%以上含有する松樹皮抽出物である。
【0009】また、別の実施態様においては、本発明の皮膚改善剤は、アスコルビン酸またはその塩を含有する。
【0010】本発明は、また、前記いずれかの皮膚改善剤を含有する健康食品を提供する。
【0011】本発明の松樹皮抽出物を含有する皮膚改善剤およびこの皮膚改善剤を含有する健康食品を摂取することにより、日常的に皮膚が改善される。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の皮膚改善剤は、松樹皮抽出物を含有することを特徴とする。松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダ等の樹皮抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮抽出物が好ましく用いられる。
【0013】フランス海岸松は、南仏の大西洋沿岸の一部に生育している海洋性松をいう。このフランス海岸松の樹皮は、フラボノイド類であるプロアントシアニジン(proanthocyanidin)を主要成分として含有する他に、有機酸並びにその他の生理活性成分等を含有している。この主要成分であるプロアントシアニジンには、活性酸素を除去する強い抗酸化作用があることが知られている。
【0014】松樹皮抽出物は、上記松の樹皮を水または有機溶媒で抽出して得られる。水を用いる場合には温水、または熱水が用いられる。抽出に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、ブタン、アセトン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロピレングリコール、含水エタノール、含水プロピレングリコール、エチルメチルケトン、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、食用油脂、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロエテン等の食品あるいは薬剤の製造に許容される有機溶媒が好ましく用いられる。これらの水、有機溶媒は単独で用いてもよいし、組合わせて用いてもよい。特に、熱水、含水エタノール、含水プロピレングリコール等が好ましく用いられる。
【0015】松樹皮からの抽出方法は特に制限はないが、例えば、加温抽出法、超臨界流体抽出法などが用いられる。
【0016】超臨界流体抽出法とは、物質の気液の臨界点(臨界温度、臨界圧力)を超えた状態の流体である超臨界流体を用いて抽出を行う方法である。超臨界流体としては、二酸化炭素、エチレン、プロパン、亜酸化窒素(笑気ガス)等が用いられるが、二酸化炭素が好ましく用いられる。
【0017】超臨界流体抽出法では、目的成分を超臨界流体によって抽出する抽出工程と、目的成分と超臨界流体を分離する分離工程とを行う。分離工程では、圧力変化による抽出分離、温度変化による抽出分離、吸着剤・吸収剤を用いた抽出分離のいずれを行ってもよい。
【0018】また、エントレーナー添加法による超臨界流体抽出を行ってもよい。この方法は、抽出流体に、例えば、エタノール、プロパノール、n−ヘキサン、アセトン、トルエン、その他の脂肪族低級アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類を2〜20W/V%程度添加し、この流体を用いて超臨界流体抽出を行うことによって、OPC、カテキン類などの目的とする抽出物の抽出溶媒に対する溶解度を飛躍的に上昇させる、あるいは分離の選択性を増強させる方法であり、効率的な松樹皮抽出物を得る方法である。
【0019】超臨界流体抽出法は、比較的低い温度で操作できるため、高温で変質・分解する物質にも適用できるという利点、抽出流体が残留しないという利点、溶媒の循環利用が可能でるため、脱溶媒工程などが省略でき、工程がシンプルになるという利点がある。
【0020】松樹皮からの抽出は、上記の抽出法以外に、液体二酸化炭素回分法、液体二酸化炭素還流法、超臨界二酸化炭素還流法等により行ってもよい。
【0021】また、松樹皮のからの抽出は、複数の抽出方法を組み合わせてもよい。複数の抽出方法を組み合わせることにより、種々の組成の松樹皮抽出物を得ることが可能となる。
【0022】本発明に用いられる松樹皮抽出物には、プロアントシアニジンの縮重合体、すなわち、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2以上の縮重合体が含まれている。縮重合体としては、重合度の低い縮重合体が好ましく用いられる。重合度が2〜30の縮合重合体(2〜30量体)が好ましく、重合度が2〜10の縮合重合体(2〜10量体)がより好ましく、重合度が2〜4の縮合重合体(2〜4量体)がさらに好ましく用いられる。
【0023】本明細書では、プロアントシアニジンの縮重合体のうち、フラバン−3−オールおよび/またはフラバン−3,4−ジオールを構成単位とする重合度が2〜4の重合体を、OPC(オリゴメリック・プロアントシアニジン;oligomeric proanthocyanidin)という。
【0024】OPCは、ポリフェノールの一種で、植物が作り出す強力な抗酸化物質であり、植物の葉、樹皮、果物の皮や種の部分に集中的に含まれている。具体的には、ブドウの種、松の樹皮、ピーナッツの皮、イチョウ、ニセアカシアの果実、コケモモなどに含まれている。また、西アフリカのコーラナッツ、ペルーのラタニアの根、日本の緑茶にも、OPCが含まれることが知られている。OPCは、ヒトの体内では、生成することのできない物質である。
【0025】このようなOPCは、抗酸化物質であるため、ガン・心臓病・脳血栓などの成人病の危険率を低下する効果、関節炎・アトピー性皮膚炎・花粉症などのアレルギー体質の改善効果等を有する。
【0026】さらにOPCは、抗酸化作用のほか、口腔内のバクテリア増殖を抑制してプラーク(歯こう)を減少させる効果、血管の弾力性を回復させる効果、血液中でのリポたんぱくが活性酸素によりダメージを受けるのを防止して、損傷した脂肪が血管の内壁に凝集し、コレステロールが付着することを防止する効果、活性酸素によって分解されたビタミンEを再生させる効果、ビタミンEの増強剤としての効果等を有することが知られている。
【0027】本発明においては、OPCを20重量%以上含有する松樹皮抽出物が好ましく用いられる。好ましくは30重量%以上である。
【0028】松樹皮抽出物として、OPCを用いると、重合度の高いものを用いた場合と対比して、より優れた皮膚改善効果が得られる。
【0029】本発明に用いられる松樹皮抽出物は、カテキン(catechin)類を、5重量%以上含有することが好ましい。カテキン類は、松樹皮からも抽出され、松樹皮抽出物に含まれる。すなわち、カテキン類は、OPCとともに抽出され得る。
【0030】カテキン類とは、ポリヒドロキシフラバン−3−オールの総称であり、狭義のカテキンといわれている(+)−カテキンのほか、ガロカテキン、アフゼレキン、(+)−カテキンまたはガロカテキンの3−ガロイル誘導体が、天然物から単離されている。カテキン類としては、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレートなどが知られている。カテキン類には、発癌抑制、動脈硬化予防、脂肪代謝異常の抑制、血圧上昇の抑制、血栓予防、抗アレルギー、抗ウイルス、抗菌、虫歯予防、口臭防止、腸内細菌叢正常化効果、活性酸素やフリーラジカルの消去作用、抗酸化作用等があることが知られている。また、カテキン類には、血糖の上昇を抑制する抗糖尿病効果があることが知られている。
【0031】カテキン類は、OPCの存在下で水に溶解しやすくなると同時に、活性になる性質がある。
【0032】本発明の皮膚改善剤としては、カテキン類を5重量%以上含有し、かつOPCを20重量%以上含有する松樹皮抽出物を用いることが最も好ましい。松樹皮抽出物のOPC含量が20重量%未満の場合、あるいはカテキン類含量が5重量%未満の場合、OPC含量が20重量%以上となるように、あるいはカテキン類含量が5重量%以上となるように、OPCあるいはカテキン類を添加してもよい。
【0033】本発明の皮膚改善剤に用いられる松樹皮抽出物は、具体的には、以下のような方法により調製されるが、これは例示であり、この方法に限定されない。
【0034】フランス海岸松の樹皮1kgを、塩化ナトリウムの飽和溶液3Lで、100℃にて30分間、抽出し、抽出液を得る(抽出工程)。その後、抽出液をろ過し、得られる不溶物を塩化ナトリウムの飽和溶液500mlで洗浄し、洗浄液を得る(洗浄工程)。この抽出液と洗浄液を合わせて、松樹皮の粗抽出液を得る。
【0035】次いで、この粗抽出液に酢酸エチル250mlを添加して分液し、酢酸エチル層を回収する酢酸エチル層回収工程を5回行う。なお、この酢酸エチル層回収工程では、酢酸エチル層を、無水硫酸ナトリウム200gで脱水、回収する。その後、この酢酸エチル層を濾過し、濾液を元の5分の1量になるまで減圧濃縮する。濃縮された酢酸エチル層を2Lのクロロホルムに注ぎ、攪拌して得られる沈殿物を濾過により回収する。その後、この沈殿物を酢酸エチル100mlに溶解した後、再度1Lのクロロホルムに添加して沈殿させる操作を2回繰り返す洗浄工程を行う。この方法により、2〜4量体のOPCを20重量%含み、かつカテキン類を5重量%以上含有する、約5gの松樹皮抽出物が得られる。
【0036】本発明の皮膚改善剤としての効果を得るには、松樹皮抽出物が1日あたり50mg〜2000mg、好ましくは100mg〜1000mg摂取されるように、ヒトに投与するとよい。
【0037】本発明の健康食品は松樹皮抽出物を食品に配合することにより得られる。健康食品中おける松樹皮抽出物の含量は、上記摂取量を考慮して決定すればよい。
【0038】本発明の健康食品には、松樹皮抽出物の他に、必要に応じて、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などと混合され得る。例えば、栄養補助剤として、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、卵殻カルシウム等のカルシウム、キトサン、レシチン、クロレラ末、アシタバ末、モロヘイヤ末などが配合され、さらに、ステビア末、抹茶パウダー、レモンパウダー、はちみつ、還元麦芽糖、乳糖、糖液、調味料等を加え、味を整えることができる。
【0039】そして、これらは必要に応じて、ハードカプセル、ソフトカプセルのようなカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤としてか、または粉末状、顆粒状、飴状などの形状に成形され得る。
【0040】このような健康食品中に、松樹皮抽出物は、一般には、剤型にもよるが、0.5〜10重量%、好ましくは1.0〜7.0重量%の範囲で配合される。
【0041】そして、本実施形態に係る皮膚改善剤およびそれを含有する健康食品は、その形状または好みに応じて、そのまま飲食しても良いし、あるいは水、お湯、牛乳などに溶いて飲んでも良いし、成分を浸出させたものを飲んでも良い。
【0042】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこの実施例により制限されないことはいうまでもない。
【0043】(実施例1)L−アスコルビン酸を低濃度で含有する精製飼料と、上記方法で得られたOPCを20重量%かつカテキンを5重量%以上含有する松樹皮抽出物(以下、単に松樹皮抽出物という)を用いて本発明の皮膚改善剤の効果を、以下のようにして評価した。
【0044】3週齢の雄性のモルモット(日本エスエルシー(株))に1週間、一般の固形飼料(RC4、オリエンタル酵母株式会社)を与えて馴化させた後、総無作為化法により一群7匹ずつ割り当てた。
【0045】L−アスコルビン酸(0.01%重量%)を含有する精製飼料を準備した。この精製飼料は、コーンスターチ(29.49%)、ミルクカゼイン(20.00%)、アルファルファミール(10.00%)、α−ポテトスターチ(10.00%)、セルロースパウダー(10.00%)シュークロース(10.00%)、大豆油(6.00%)、ミネラル混合物(AIN−76、3.50%)、ビタミン混合物(AIN−76、1.00%)、およびアスコルビン酸(0.01%)の組成からなる。なお、数字はいずれも重量%を意味する。
【0046】次いで、この精製飼料に、松樹皮抽出物を0.5%(試験例1)および2.5%(試験例2)となるように、それぞれ混合して成型した固形飼料を28日間、自由摂取させた。
【0047】そして投与28日後、被験動物の背部皮膚中央部を剥離・摘出した。60℃にて一晩乾燥させた後、この皮膚を粉砕し、その50mgを5mlの塩酸(6mol/L)に添加し、ヒーティングブロックを用いて110℃にて24時間、加熱して加水分解した。次いで、この加水分解物を試料として、クロラミンT法によりヒドロキシプロリン(Hyp)含量を測定した。ヒドロキシプロリンは、コラーゲンに多く含まれており、ヒドロキシプロリン含量が高ければ、コラーゲンが生成されていることを示す指標となる。結果を図1に示す。なお、図1中、対照とあるのは、松樹皮抽出物を含有しない精製飼料を与えた群である。
【0048】図1の結果は、松樹皮抽出物を含有する本発明の皮膚改善剤が、皮膚のコラーゲン含量を増加させたことを示しており、皮膚改善剤として有用であることを示す。
【0049】また、摘出した背部皮膚は、その一部を10%中性緩衝ホルマリンで固定した後、常法に従い、パラフィン切片を作成し、Azan染色を行った。青く染色されたコラーゲン線維を指標として真皮(コラーゲン線維)層の厚みをマイクロメータで計測したところ、松樹皮抽出物を添加した飼料を与えた試験例1および2の真皮層は、対照群に比べて明らかに厚かった(データ示さず)。
【0050】(実施例2)アスコルビン酸を全く含まない代わりに、コーンスターチ濃度が29.50%である精製飼料を用いて、実施例1と同様にして3週齢の雄性のモルモットを飼育した。28日間飼育した後、コラーゲン層の厚みを調べたところ、松樹皮抽出物を添加した群では、添加しなかった群に比べて明かに厚かった(データ示さず)。
【0051】
【発明の効果】以上のように、OPCを20重量%以上かつカテキン類を5重量%以上含有する松樹皮抽出物を含有することを特徴とする皮膚改善剤を用いれば、皮膚のコラーゲン含量を増加させ、皮膚を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の皮膚改善剤で処理したモルモット皮膚および処理しなかったモルモット皮膚のヒドロキシプロリン含量を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 松樹皮抽出物を含有することを特徴とする、皮膚改善剤。
【請求項2】 前記松樹皮抽出物が、OPC(oligomeric proanthocyanidin)を20重量%以上含有する松樹皮抽出物である、請求項1に記載の皮膚改善剤。
【請求項3】 前記松樹皮抽出物が、さらにカテキン(catechin)類を5.0重量%以上含有する松樹皮抽出物である、請求項2に記載の皮膚改善剤。
【請求項4】 さらにアスコルビン酸またはその塩を含有する、請求項1から3のいずれかの項に記載の皮膚改善剤。
【請求項5】 請求項1から4のいずれかの項に記載の皮膚改善剤を含有する、健康食品。

【図1】
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【公開番号】特開2003−146899(P2003−146899A)
【公開日】平成15年5月21日(2003.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−345277(P2001−345277)
【出願日】平成13年11月9日(2001.11.9)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】