説明

皮膚機能向上用材料のスクリーニング方法

【解決手段】皮膚機能向上用材料をスクリーニングする方法は、(a)皮膚細胞を候補材料で処理するステップ;(b)膜結合性タンパク質17(MAP17)遺伝子の相対的発現レベルにおける変化を検出するステップ;および、(c)前記遺伝子の発現レベルにおける変化を誘導する候補材料を皮膚機能向上用材料として選択するステップを含む。膜結合性タンパク質17遺伝子をマーカーとして、MAP17遺伝子の発現レベルにおける変化を介して皮膚機能向上の材料を検索する。皮膚バリア機能の向上、皮膚の保湿促進、皮膚の老化防止または皮膚のトラブル緩和に有用な皮膚機能向上用材料を効率的にスクリーニングできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、皮膚機能向上用材料をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚(skin)の表皮(epidermis)は、皮膚の最外層である。角質形成細胞(keratinocyte)により構成された角質層が正常的な状態にあるとき、種々の刺激に対する体の主要なバリアとして作用し、且つ体内からの水分の発散を防ぐ。
【0003】
角質形成細胞は、皮膚の最下層である基底層(basal layer)で増殖(proliferation)し、徐々に有棘層(spinous layer)、顆粒層(Granular layer)を経て分化する。こうした角質化過程(keratinization)を通じ、角質細胞は、天然保湿因子(NMF;Natural Moisturizing Factor)と、脂質(セラミド、コレステロール、脂肪酸)を形成し、角質層(stratum corneum)を形成して、皮膚バリア(skin barrier)の機能を与える。
【0004】
しかしながら、皮膚疾患およびトラブルの場合、いくつかの理由によって、皮膚角質層の正常な機能を維持できなくなる。その結果、皮膚バリアがダメージを受け、皮膚乾燥症状、および時には、炎症症状をも生ずる。
【0005】
このような皮膚疾患の炎症反応においては、ヘルパーT細胞1型(T helper 1:Th1)、ヘルパーT細胞2型(Th2)と、ヘルパーT細胞17型(Th17)の細胞群が、いくつかのインターロイキン(Interleukins)を生成することにより、免疫応答を誘導する。
【0006】
膜結合性(membrane-associated)タンパク質17(MAP17)は、17kDaサイズの膜結合性タンパク質である。正常な腎臓組織(normal renal parenchyma)と比較して、腎臓癌腫(renal carcinoma)の組織において、MAP17遺伝子が過剰発現されたことが初めて観察された(Kocher et al., Clinical Cancer Research, Vol 1:1209, 1995)。MAP17タンパク質が癌腫組織において過剰発現されるため、それは癌腫組織の特性である過増殖(hyperproliferation)に関与するものと考えられていた。しかしながら、結腸癌腫細胞株(colon carcinoma cell line)においてMAP17が過剰発現されるときに、インビトロ(in vitro)条件において、細胞増殖(cell proliferation)が減少し、インビボ(in vivo)条件において腫瘍の増殖が減少することが証明された。従って、MAP17は、細胞の増殖とは無関係であることが示された(Kocher et al., Am J Pathol, Vol. 149:493,1996)。結論として、MAP17の機能は、未だ正確には知られてはいないと言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一つは、皮膚バリア機能の向上、皮膚の保湿促進または皮膚の老化防止のための皮膚機能向上用材料を、効率的にスクリーニングすることができる新規なスクリーニング方法を提供することに向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明に係る皮膚機能向上用材料のスクリーニング(screening)方法は、以下を含む:
(a)皮膚細胞を候補材料で処理するステップ;(b)膜結合性タンパク質17(MAP17)遺伝子の相対的発現レベルにおける変化を検出するステップ;および(c)前記遺伝子の発現レベルにおける変化を誘導する候補材料を、皮膚機能向上用材料として選択するステップ。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、皮膚バリア機能の向上、皮膚の保湿促進または皮膚の老化防止に有用な皮膚機能向上用材料を効率的にスクリーニングすることができる新規なスクリーニング方法を提供する。このようにしてスクリーニングされた材料は、皮膚機能改善用組成物の有効成分に適した材料として使用することができる。
【0010】
ここに開示された例示的な実施態様の、上記および他の側面(aspects)、特徴および有利性は、添付の図面を参照しつつ、以下の詳細な説明から、更に明確にされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ヘルパーT細胞1型(Th1)、ヘルパーT細胞2型(Th2)およびヘルパーT細胞17型(Th17)の細胞群由来の種々のインターロイキンによる、ヒト角質細胞における未処理群と比較した際の、MAP17遺伝子の発現増加(図1A)およびフィラグリンの遺伝子の発現減少(図1B)を示す図である。
【図2】MAP17遺伝子をクローニング(Cloning)する過程(図2A)と、全長MAP17と、カルボキシル末端(C末端)MAP17のフラグメント(図2B)を示す模式図である。
【図3】ヒト角質細胞株(HaCaT cell line)においてMAP17を過剰発現させたときの、MAP17遺伝子(図3A)とフィラグリン遺伝子(図3B)の発現を示す図である。
【図4】ジンセノイド-Re(Ginsenoid-Re)で処理した、または処理しない正常ヒト角質細胞における、MAP17遺伝子(図4A)とフィラグリン遺伝子(図4B)の発現に対する、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)の結果を示す図である。
【0012】
例示的な態様は、添付の図面を参照しつつ、以下において例示的な態様が詳細に記述される。この開示は、しかしながら、多くの異なる形態において具体化することができ、その中で述べられる例示的な態様に限られるように、解釈されるべきでない。むしろ、これらの例示的な態様は、この開示が詳細且つ完全であるように、当業者に対してこの開示の範囲を充分に伝えるように提供される。この記述において、周知の特徴と技術の詳細は、提示された態様を必要以上に不明瞭にすることを避けるために、省略される可能性がある。
【0013】
ここに使われる用語は、特定の態様を記述する目的ためのみで使用され、この開示に制限されることを意図しない。ここに使用されるように、文脈が明らかに指示しない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形も含むことを意図する。更に、「a」、「an」等の語の使用において量の規制を意味せず、関連するアイテムの「少なくとも1つ」の存在をむしろ意味する。「第1」、「第2」、等の使用は、如何なる特定の順序も意味せず、それらは、個々の要素を特定するために含まれる。更に、第1、第2、等の使用は、如何なる順序または重要性をも意味せず、むしろ、第1、第2、等の用語は、1つの要素と他のものを区別するのに用いられる。この明細書で使用されるとき、「含む」(comprise, and/or comprising, or include and/or including)は、言及された特徴、部分、整数、ステップ、作動、要素および/又は成分の存在を指定するが、それは、更に1以上の他の特徴、部分、整数、ステップ、作動、要素、成分および/又はグループの追加を排除しないように理解される。
【0014】
特に限定しない限り、ここに使用される用語(技術的および専門的で科学的な語を含む)は、当業者によって一般に理解されるようなものと、同じ意味を有する。一般的に用いられる辞書で定められるもののような用語は、関連する技術および本開示の文脈における、それらの意味と整合するように解釈されるべきであり、ここにおいて明確に定義されない限り、理想化された、または過度に形式的に解釈されるべきでない。
【0015】
本発明に係る皮膚機能向上用材料のスクリーニング(screening)方法は、(a)皮膚細胞を候補材料で処理するステップ;(b)膜結合性タンパク質17(MAP17)遺伝子の相対的発現レベルにおける変化を検出するステップ;および(c)前記遺伝子の発現レベルにおける変化を誘導する候補材料を、皮膚機能向上用材料として選択するステップを含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記ステップ(a)において、皮膚細胞は候補材料で処理される。候補材料の外部刺激に対する防御、水分発散防止および皮膚バリア機能の維持の効果を評価するために、前記皮膚細胞としては、例えば、ヒトの皮膚新生角質細胞(Human Epidermal Neonatal Keratinocyte Cells)を使用することができる。
【0017】
前記ステップ(b)において、候補材料によって、MAP17遺伝子の相対的発現レベルが変化したか否かが検出される。
【0018】
前記の相対的発現レベルは、候補材料を処理していない皮膚細胞群と比較した、候補材料で処理した皮膚細胞群において発現する遺伝子の発現レベルである。本明細書全体において、発現レベルは、遺伝子の相対的発現レベルを意味してもよい。
【0019】
本発明者らは、遺伝子(特に、MAP17遺伝子をマーカー(marker)として)の発現レベルにおける変化を測定することにより、皮膚機能向上用材料をスクリーニングできることを確認した。
【0020】
前記MAP17遺伝子は、例えば、ヘルパーT細胞1型(Th1)由来インターフェロン-ガンマ(IFN−γ:interferon-gamma)、ヘルパーT細胞2型(Th2)由来インターロイキン-4(IL−4:interleukin-4)、ヘルパーT細胞17型(Th17)細胞由来インターロイキン-17A(IL−17A:interleukin-17A)、インターロイキン-17F(IL−17F:interleukin-17F)、インターロイキン-22(IL−22:interleuin-22)およびインターロイキン-6(IL−6:interleukin-6)からなる群から選択された1以上のインターロイキンによって発現レベルが増加し得る。
【0021】
本発明者らは、下記実験例を通じて立証されたように、皮膚保湿因子の減少、皮膚バリア機能の損傷、皮膚の防御能力減少、および炎症反応と関連した、ヘルパーT細胞1型(Th1)、ヘルパーT細胞2(Th2)およびヘルパーT細胞17型(Th17)細胞由来インターロイキンにより、前記MAP17遺伝子の発現が顕著に増加することを確認した。
【0022】
これを通じ、前記MAP17遺伝子は、皮膚の炎症または皮膚バリアのダメージにおいて増加するインターロイキンにより調節される遺伝子であることを立証された。前記MAP17が皮膚の炎症や皮膚バリアのダメージにおいて、重要な役割を果たすタンパク質であり得ることを確認した。
【0023】
従って、候補材料で処理した皮膚細胞からのMAP17遺伝子発現レベルの有意な(significant)減少は、候補材料が皮膚バリア機能の向上、皮膚の保湿促進、または皮膚の老化防止に有効に適用され得ること示す。よって、前記MAP17遺伝子の発現レベルにおける変化の検出は、皮膚機能向上用材料のスクリーニングのために有用である。
【0024】
他の態様においては、フィラグリン遺伝子をマーカーとして使用することもできる。この場合においては、前記スクリーニング方法は、フィラグリン遺伝子の発現レベルにおける変化を検出するためのステップを更に含むことができる。候補材料で皮膚細胞を処理する場合、候補材料の未処理皮膚細胞群と比較して、前記フィラグリン遺伝子発現レベルが増加し得る。
【0025】
前記フィラグリン遺伝子の発現レベル増加は、皮膚バリア機能の改善に有意な効果を表し得る。前記フィラグリンタンパク質は、転写後修飾(post-transcriptional modification)過程を経て、いくつかの親水性アミノ酸(hydrophilic amino acid)に分解することができる。これらのアミノ酸プール(pool)が天然保湿因子(NMF)を構成して、角質層の保湿維持を助長する。しかしながら、フィラグリン遺伝子の突然変異により、皮膚保湿因子の減少、皮膚バリア機能の損傷、皮膚の防御能力低下を起こす可能性があり、ヘルパーT細胞群の活性化による、急性(acute)、または慢性炎症(chronic inflammation)の反応が示され得ることが、最近見出された。
【0026】
これと関連して、本発明者らは、下記実施例を通じて立証されたように、フィラグリン遺伝子の発現が、MAP17遺伝子の発現レベルと関連することを初めて明らかにした。MAP17遺伝子の発現が増加すると、フィラグリン遺伝子の発現レベルは減少し得ることをも、本発明者らは確認した。
【0027】
前記MAP17の構造は、以下の通りである。アミノ末端(NH-terminal)には、膜結合性部位(membrane binding site)が存在し、カルボキシ末端(C-terminal)には、PDZドメイン付着部位(PDZ(post synaptic density protein(PSD95),Drosophila disc large tumor suppressor(DlgA)、およびzonula occludens-1 protein(zo-1))domain binding site)が存在する。前記MAP17のカルボキシ末端(C-terminal)のPDZドメイン付着部位は、いくつかのタンパク質-タンパク質相互作用(protein-protein interaction)を与える可能性が存在し、これを通じて細胞信号伝達(signaling transduction)が可能である。
【0028】
本発明者らは、特に、全長MAP17(Full length MAP17)遺伝子が過剰発現された場合に比べて、MAP17遺伝子のC末端フラグメント(C-terminal fragment)が過剰発現されると、MAP17遺伝子の発現は更に増大し得えて、且つ、これにより前記フィラグリン遺伝子の発現レベルが著しく減少し得ることを明らかにした。
【0029】
前記皮膚バリア機能と関連したフィラグリン遺伝子の発現レベルが、MAP17遺伝子の発現によって直接的および/又は間接的に調節され得るため、前記MAP17遺伝子の発現レベル調節もまた、皮膚バリアの改善と密接な関連があり、この発現レベル調節が、皮膚機能向上のための材料の効率的なスクリーニングに効率的に使用できることが確認された。
【0030】
前記ステップ(c)において、MAP17遺伝子の発現レベルにおける変化を誘導する候補材料を、皮膚機能向上用材料として選択するステップである。
【0031】
本発明者らは、MAP17遺伝子の発現レベルにおける変化と、皮膚機能向上の関係を確認し、前記MAP17遺伝子を皮膚機能材料のスクリーニングに使用され得るマーカーとして選定した。前記ステップ(c)においては、例えば、皮膚細胞を候補材料で処理した場合、MAP17遺伝子の発現レベルを減少させる候補材料を、皮膚機能向上用材料として選択することができる。
【0032】
前記皮膚機能向上は、MAP17遺伝子の発現レベルを減少させることによる、例えば、皮膚バリア機能の向上、皮膚の保湿促進、皮膚の老化防止または皮膚トラブルの軽減(amelioration)をも言うことができる。
【0033】
以下に実施例を記載する。下記の実施例は、本発明を例示するためのものであるに過ぎず、本発明の範囲がこれらのみに限定されることを意図するものではない。
【0034】
実施例1:炎症関連インターロイキンによるMAP17遺伝子の発現変化
ヒトの皮膚新生角質細胞(Human Epidermal Neonatal Keratinocyte Cells)は、商用的に確保され推奨される方法で、ロンザ社(Lonza,Inc.Walkersville,MD,USA)から購入し、継代培養した。これらの細胞をCO培養器(CO incubator)において、37℃、5%CO条件下で細胞を培養した。細胞培養液は、ロンザ社(Lonza, Inc. Walkersville,MD, USA)の指針書に従って、500mlのKBM−2(Clonetics CC-3103)培地に、KGM-2ブレットキット(Bullet kit:ウシ脳下垂体抽出物(BPE: Bovine pituitary extract:2ml)、ヒト上皮成長因子(hEGF: human epidermal growth factor:0.5ml)、インスリン(Insulin:0.5ml)、ヒドロコルチゾン(Hydrocortisone:0.5ml)、トランスフェリン(Transferrin:0.5ml)、エピネフリン(Epinephrine:0.5ml)、ゲンタマイシン硫酸塩+アムホテリシン-B(Gentamycin Suflate+Amphotericin-B:GA-1000, 0.5ml))を添加して調製した。
【0035】
培養したヒト角質細胞を未処理群(control)として使用した。実験群の場合、ヒト角質細胞培養液にIFN−γ(200unit/ml),IL−4,IL−6,IL−17A,IL−17FまたはIL−22(50ng/ml)を添加した後、24時間細胞を培養した。複数のヘルパーT細胞(Th)群由来インターロイキンは、R&Dシステムズ社(R&D Systems、Minneapolis, MN, USA)から購入し、製造社の指針書に従って溶液に調製した。
【0036】
インターロイキン処理24時間後、10mlのリン酸塩緩衝液(Phosphate Buffered Saline, PBS)で細胞を2回洗浄し、トライゾール(TRIzol reagent,Invitrogen,Carlsbad, CA, USA)を使用して、細胞内のトータルRNA(total RNA)を分離した。分離されたRNAは、キアゲン社のRNAキット(Qiagen RNeasy kit,Qiagen,Valencia, CA)を使用して再度精製した後、アジレントテクノロジーズ社のバイオアナライザー2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer, Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)を用いて、RNAの質(quality)を確認した。前記分離されたRNAから、インビトロゲン社の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)II kit, Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてcDNAを合成し、これをリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(real time-reverse transcription polymerase chain reaction、Q-RT-PCR)法により、MAP17とフィラグリン遺伝子の発現を定量的に分析した。MAP17(Hs00173779_m1)とヒト角質細胞の分化マーカー遺伝子であるフィラグリン(Hs00856927_g1)の発現パターンの変化は、アプライドバイオシステムズ社のタックマン遺伝子発現システム(TaqMan Gene Expression Assay kit, Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて評価し、図1に示した。
【0037】
図1に示すように、ヘルパーT細胞1型(Th1)、ヘルパーT細胞2型(Th2)とヘルパーT細胞17型(Th17)由来の種々のインターロイキンは、共通してMAP17遺伝子の発現を確然と増加させる(図1A)。これに対し、それらインターロイキンは、フィラグリン遺伝子の発現を抑制した(図1B)。
【0038】
実施例2:MAP17の過剰発現によるフィラグリン遺伝子発現の定量的確認
MAP17遺伝子を有するクローン(Clone id:hmu001988)を、コリア・ユニゲン(KOREA unigene, 21C Human Gene Bank, Genome Research Center, KRIBB, Deajeon, Korea)で購入した。MAP17遺伝子を哺乳類細胞(Mammalian cell)で発現させるために、MAP17全長遺伝子(Full length, 1-345 base pair, 115 amino acid)とカルボキシ末端(Carboxy-terminal)部位(C-terminal fragment, 177-345塩基対, 55アミノ酸)のみをPCR(Polymerase chain reaction)法で増幅させた。全長遺伝子(Full length)のアミノ末端(N-terminal)塩基配列に使用されたプライマー(Primer)は、EcoR1制限酵素部位を含め、5’-GAA GAA TTC ATG TCG GCC CTC AGC-3’、カルボキシ末端(Carboxy-terminal)部位(C-terminal fragment)のみを増幅したとき、アミノ末端(N-terminal)塩基配列に使用されたプライマー(Primer)は、EcoRI制限酵素部位を含め、5’-GAA GAA TTC GAG CCT GCA CAC ATG-3’であった。MAP17全長遺伝子(Full length)とカルボキシ末端(Carboxy-terminal)の部位(C-terminal fragment)のカルボキシ末端(Carboxy-terminal)のプライマー(Primer)は、XhoI制限酵素部位を含め、5’-GAA CTC GAG TTA CAT CGG GGT GCT-3’であった。PCR反応混合液は、0.1μgのDNA鋳型(DNA template)、0.2mMのdNTP、0.2μMの両方向プライマー(primer)と、0.5ユニットの(unit)TaqDNAポリメラーゼ(Taq DNA polymerase, Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)が使用された(図2A)。
【0039】
PCR反応条件は、95℃で1分、1回行い、次いで、95℃で1分、55℃で30秒、72℃で1分行う過程を30回繰り返し、72℃で更に5分行った。PCR反応物は、クイックPCR精製キット(QIA quick PCR purification kit, Qiagen, USA)を用いて精製し、pcDNA4/Hisベクター(pcDNA (登録商標)4/His vector、Invitrogen, Carlsbad, CA)とともに、EcoRIおよびXhoI制限酵素により37℃で2時間切断した。プラスミド接合(Plasmid Ligation)は、T4DNAポリメラーゼ(T4 DNA polymerase)を用いて、16℃で一晩反応させた。プラスミド接合(Plasmid Ligation)の後、反応物は、DH5アルファ(DH5α)細胞に形質転換させ、50μgml-1のアムピシリン(ampicillin)を含むLBアガー(Luria-Bertani (LB) agar)培地で成長させた。育ったコロニー(colony)から新たに組み換えられたプラスミド(plasmid)を準備し、結果はDNAシークエンス(DNA sequencing)法で確認した(図2B)。
【0040】
ヒト角質細胞株(HaCaT cell lines, 入手先:Dr.N.E. Fusenig, Deutsches Krebsforschungszentrum, Heidelberg, Germany)は、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)培地に、10%のFBS(fetal bovine serum)、1%の抗生物質(antibiotics, Cambrex, Walkersville, MD, USA)培地を用いて、37℃、5%CO条件下で細胞を培養した。前記HaCaT細胞を6ウェルプレート(6 well plate)に2×10cells/cmの条件で培養し、24時間後に1μgのMAP17全長プラスミド(Full length plasmid)とカルボキシ末端部分プラスミド(Carboxyl-terminal frangment plasmid)をFuGENE6トランスフェクション(FuGENE6 transfection reagent)試薬を用いて、トランスフェクション(transfection)させた。24時間後、細胞培養液を交換し、トランスフェクション72時間後に10mlのリン酸塩緩衝液(Phosphate Buffered Saline, PBS)で細胞を2回洗浄し、トライゾール(TRIzol reagent, Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を用いて, 細胞内のトータルRNA(total RNA)を分離した。分離したRNAを、キアゲン社のRNAキット(Qiagen RNeasy kit, Qiagen, Valencia, CA)を使用して再度精製した後、アジレントテクノロジーズ社のバイオアナライザー2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer, Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)を用いて、RNAの質(quality)を確認した。インビトロゲン社の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)II kit, Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて分離されたRNAからcDNAを合成し、これをリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(real time-reverse transcription polymerase chain reaction, Q-RT-PCR)法により定量的に分析した。MAP17(Hs00173779_m1)とヒト角質細胞の分化マーカー遺伝子であるフィラグリン(Hs00856927_g1)の発現パターンの変化は、アプライドバイオシステムズ社のタックマン遺伝子発現システム(TaqMan Gene Expression Assay kit, Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて評価し、図3に示した。
【0041】
図3に見られるように、全長MAP17(Full length MAP17)とカルボキシ末端部位(C-terminal fragment)を過剰発現させたとき、MAP17遺伝子の発現が更に増加することを確認することができる(図3A)。これに対し、全長MAP17(Full length MAP17)よりもカルボキシ末端のMAP17(MAP17 C-terminal fragment)を過剰発現させた場合、フィラグリン遺伝子の発現を著しく減少させることを確認することができる(図3B)。
【0042】
実施例3:ジンセノイド-Re(Ginsenoid-Re)材料に対するMAP17およびフィラグリン遺伝子の発現調節の確認
種々のヒト角質細胞の種々の材料で処理してMAP17とフィラグリン遺伝子との発現の違いを確認し、高麗人参の実由来ジンセノイドの一つであるジンセノサイド-Re(Ginsenoside-Re)材料を通じてMAP17およびフィラグリン遺伝子の発現調節を確認した。ヒトの皮膚角質細胞は、ロンザ社(Lonza, Inc.Walkersville, MD, USA)から購入し、37℃、5%CO条件下、CO培養器(CO incubator)でKBM−2(Clonetics CC-3103)培地に培養した。
【0043】
ヒト角質細胞を培養した未処理群(control)と実験群の場合、ヒト角質細胞培養液にジンセノサイド−Re(10μm)を添加し、細胞を24時間培養した。ジンセノサイド-Reは、和光純薬工業(神奈川、日本)で購入し、製造社の指針書に従って溶液に調製してから使用した。ジンセノサイド-Re処理24時間後、10mlのリン酸塩緩衝液(Phosphate Buffered Saline, PBS)で細胞を2回洗浄し、トライゾール(TRIzol reagent, Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を使用して、細胞内のトータルRNA(total RNA)を分離した。
【0044】
分離したRNAをキアゲン社のRNAキット(Qiagen RNeasy kit, Qiagen, Valencia, CA)を使用して再度精製した後、アジレントテクノロジーズ社のバイオアナライザー2100モデル機器(Agilent 2100 BioAnalyzer, Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)を用いて、RNAの質(quality)と濃度を確認した。前記分離されたRNAから、インビトロゲン社の逆転写キット(Superscript Reverse Transcriptase(RT)II kit, Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてcDNAを合成し、リアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(real time-reverse transcription polymerase chain reaction, Q-RT-PCR)法により遺伝子の発現変化を定量的に分析した。MAP17(Hs00173779_m1)とフィラグリン(Hs00856927_g1)の発現パターンの変化は、アプライドバイオシステムズ社のタックマン遺伝子発現システム(TaqMan Gene Expression Assay kit, Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて評価し、図4に示した。
【0045】
図4に見られるように、ジンセノサイド-Reは、ヒト角質細胞において、MAP17遺伝子の発現を確然と減少させる(図4A)。これに対し、前記ジンセノサイド-Reは、ヒト角質細胞において、フィラグリン遺伝子の発現を増加させることを確認した(図4B)。
【0046】
本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に、本発明の範疇内において種々の応用および変形を行うことが可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)皮膚細胞を候補材料で処理するステップ;
(b)膜結合性タンパク質17(MAP17)遺伝子の相対的発現レベルにおける変化を検出するステップ;および
(c)前記遺伝子の発現レベルにおける変化を誘導する候補材料を、皮膚機能向上用材料として選択するステップ、を含む、皮膚機能向上用材料のスクリーニング(screening)方法。
【請求項2】
前記皮膚細胞は、ヒト角質細胞であることを特徴とする、請求項1記載の皮膚機能向上用材料のスクリーニング方法。
【請求項3】
前記皮膚機能向上用材料として選択するに際して、MAP17遺伝子の発現レベルを減少させる候補材料を皮膚機能向上用材料として選択する、請求項1記載の皮膚機能向上用材料のスクリーニング方法。
【請求項4】
前記皮膚機能向上用材料は、皮膚バリア機能の向上、皮膚の保湿促進、皮膚の老化防止または皮膚のトラブル緩和を行う、請求項1記載の皮膚機能向上用材料のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−508006(P2012−508006A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535499(P2011−535499)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/KR2009/004850
【国際公開番号】WO2010/053254
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(505118718)アモーレパシフィック コーポレイション (21)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【Fターム(参考)】