説明

皮膚洗浄剤組成物

【課題】風呂場や洗面所など水の存在下での使用の際、濡れた手で使用し水が混入した場合に、I相の透明または半透明の状態のままで、乳化あるいは高粘度のゲルになることなく使用中の良好なのびとなめらかさを維持し、かつ優れたクレンジング力を有する皮膚洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】(A)下記成分a1〜a3からなり、配合比率a1:a2:a3=8.1:1:0.9〜7.2:1:1.8である3成分系非イオン性界面活性剤15〜24質量%a1:トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリルa2:イソステアリン酸ポリオキシエチレン(8)グリセリルa3:テトライソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビット及び(B)パルミチン酸オクチル20質量%以上を含有する逆ミセル油溶液の皮膚洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚洗浄剤組成物に関する。更に詳しくは、風呂場や洗面所など水の存在下での使用の際、濡れた手で使用し水が混入した場合に、I相の透明または半透明状態のままで、乳化あるいは高粘度のゲルになることなく使用中の良好なのびとなめらかさを維持し、かつ優れたクレンジング力を有する皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚上の皮脂汚れや、口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ等のメイクアップ化粧料を除去する目的で、クレンジング化粧料が用いられている。クレンジング化粧料は皮膚に塗布して伸ばした後、皮膚から除去されるものである。クレンジング化粧料の形態としては、様々なものが市販されているが、現在主流となっているものはクレンジング力の高いオイル状形態である。このようなクレンジング化粧料は古くから提案されており、例えば特定の非イオン界面活性剤と液状油とを必須成分として含有する非水クレンジング料(例えば、特許文献1参照。)や、特定の非イオン界面活性剤と液状油と水とを必須成分として特定割合で含有するクレンジング料(例えば、特許文献2参照。)などが挙げられる。ところが、これらクレンジング化粧料は、油を含む汚れに対し液状の油をベースとしているため、相溶性に優れクレンジング効果が高い一方、水で洗い流す際に油性感が残ったり、保存安定性が不十分だったりなどの問題があった。また、クレンジング化粧料が使用される環境としては、生活習慣の変化や簡便性などの面から、洗面所や風呂場などの水が存在する場所が主流となっている。このような背景から、近年ではクレンジング化粧料に水を取り込む能力、いわゆる水の可溶化能が求められることが多く、濡れた手で使用することができるクレンジングオイルが市販され、汎用されている。このようなものとして例えば、特定の非イオン性界面活性剤と油性成分と5質量%未満の水を含有し、さらに特定量の水と混合したときにミセル水溶液相あるいはバイコンティニュアスミクロエマルション相となる油性クレンジング組成物(例えば、特許文献3参照。)がある。同様なものとして本発明者も、特定の非イオン界面活性剤と水と特定油からなる皮膚洗浄剤組成物を提案している(例えば、特許文献4参照。)。しかし、これらクレンジング化粧料においても、水が混入した場合にも、高い洗浄性能を維持し、外観の白濁がないようにするため、界面活性剤を高配合する必要があった。また実使用において水が混入した場合に高粘度のゲル状になり顔面上でののびが悪くなることがあり、濡れた手で使用したときの感触がより重要視されるようになってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−108806号公報
【特許文献2】特許2977568号公報
【特許文献3】特開2005−194249号公報
【特許文献4】特開2011−37783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景を鑑みて本発明は、風呂場や洗面所など水の存在下での使用の際、濡れた手で使用し水が混入した場合に、I相の透明または半透明の状態のままで、乳化あるいは高粘度のゲルになることなく使用中の良好なのびとなめらかさを維持し、かつ優れたクレンジング力を有する皮膚洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題点のない化粧料を得るべく鋭意研究を重ねた結果、特定の界面活性剤、油成分を併用すれば、上記要件を満たす優れたクレンジング化粧料として有用な皮膚洗浄剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記成分(A)及び(B)を含有する逆ミセル油溶液の皮膚洗浄剤組成物であって、この組成物に水を添加混合したとき、組成物:添加水=6:4〜10:0の割合ではI相を維持することを特徴とする皮膚洗浄剤組成物である。
(A)下記成分(a1)〜(a3)からなり、配合比率a1:a2:a3=8.1:1:0.9〜7.2:1:1.8である3成分系非イオン性界面活性剤 15〜24質量%
(a1)トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル
(a2)イソステアリン酸ポリオキシエチレン(8)グリセリル
(a3)テトライソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビット
(B)パルミチン酸オクチル 20質量%以上
【0007】
そして、上記皮膚洗浄剤組成物は水溶性界面活性剤を含まないことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、風呂場や洗面所など水の存在下での使用の際、濡れた手で使用し水が混入した場合に、I相の透明または半透明の状態のままで、乳化あるいは高粘度のゲルになることなく使用中の良好なのびとなめらかさを維持し、かつ優れたクレンジング力を有する皮膚洗浄剤組成物を提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いる(A)成分である3成分系非イオン性界面活性剤の相図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、3種類の非イオン性界面活性剤からなる3成分系非イオン性界面活性剤(A)とパルミチン酸オクチル(B)を含有する逆ミセル油溶液の皮膚洗浄剤組成物である。この皮膚洗浄剤組成物はI相状態の組成物であり、これに水を添加混合したとき、組成物:添加水=6:4〜10:0の割合の範囲ではI相を維持するものである。
【0012】
本発明の(A)成分である3種類の非イオン性界面活性剤は、(a1)トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル、(a2)イソステアリン酸ポリオキシエチレン(8)グリセリル及び(a3)テトライソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビットである。なお、以下の説明において単に(a1)、(a2)及び(a3)と記載した場合は、それぞれ(a1)トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル、(a2)イソステアリン酸ポリオキシエチレン(8)グリセリル及び(a3)テトライソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビットのことである。図1に(a1)〜(a3)からなる3成分系非イオン性界面活性剤の相図の一例を示す。この相図は、3種類の非イオン性界面活性剤の総量を20質量%、油成分の総量を80質量%としたものである。なお、油成分の総量にはパルミチン酸オクチルを30質量%含む。本発明の皮膚洗浄剤組成物において、成分(a1)〜(a3)の配合比率a1:a2:a3=8.1:1:0.9〜7.2:1:1.8である必要がある。
【0013】
成分(a1)〜(a3)の配合比率特定の必要性は以下の理由による。すなわち、(a1)及び(a3)に対する(a2)の配合比率において、(a2)の比率が高いほど水添加時の
ゲル可能も高くなり、本発明の目的を達成できなくなるため、水添加時の流動性を得るためには(a2)の配合比率は低いほうが望ましい。一方、(a1)及び(a3)に対する(a2)の配合比率を低くすると水を透明に完全に取り込む能力、いわゆる可溶化能が低くなり、やはり本発明の目的を達成できなくなる。しかし、(a1)と(a3)の間の配合比率において、(a1)の配合比率が高いほど水の可溶化能が高くなるため、本発明の目的に適うようになる。そのため、本発明の(A)成分においては、配合比率a1:a2:a3=8.1:1:0.9〜7.2:1:1.8とする必要がある。
【0014】
本発明の皮膚洗浄剤組成物において、3種類の非イオン性界面活性剤(a1)〜(a3)からなる3成分系非イオン性界面活性剤(A)の配合量は、組成物全量に対し15〜24質量%が必要である。15質量%未満であると、クレンジング力や水の可溶化能を得られず、24質量%を越えると、可溶化した後の感触面であるのびやなめらかさ、すすぎ時のさっぱり感が得られない。
【0015】
本発明の(B)成分であるパルミチン酸オクチルは、液状油の一種である。本発明の皮膚洗浄剤組成物において、パルミチン酸オクチル(B)の配合量は、組成物全量に対し20質量%以上が必要である。20質量%未満であると、保存安定性、クレンジング力、洗い上がりのさっぱり感が得られない。
【0016】
本発明の皮膚洗浄剤組成物には、本発明におけるパルミチン酸オクチルの作用効果を阻害しない範囲内で、パルミチン酸オクチル以外の液状油を適宜配合できる。他の液状油としては、化粧料、医薬品等に通常使用されるものでよく、例えばシリコーン油、エーテル油、炭化水素類、高級アルコール高級脂肪酸エステル類、動植物油脂、コレステロール脂肪酸エステル類、香料などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用され、好ましいものとしては、流動パラフィン、オクタン酸セチルなどの油を含む場合である。
【0017】
本発明の皮膚洗浄剤組成物には、ヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル(7E.O.)などの、化粧品用、医薬品用として一般に使用され得る水溶性非イオン性界面活性剤を配合できる。しかし、これらの水溶性非イオン性界面活性剤を配合した場合、皮膚洗浄剤組成物自体がI相にならないことがあるため、配合しないことが好ましい。
【0018】
本発明の皮膚洗浄剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の必須成分や任意成分以外にさらに化粧料、医薬品等に通常使用される成分を適宜配合することができる。そのような成分としては、例えば薬効剤、保湿成分、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、有機及び無機粉体、色素、固形油分、半固形油分などが挙げられる。
【実施例】
【0019】
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、それに先立ち評価方法を示す。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0020】
<評価方法>女性パネラー20名の顔面に市販の油性ファンデーションを塗布し、30分放置後、実施例及び比較例のクレンジング化粧料約3gを濡れた手で用い、使用中の肌感触(のび、なめらかさ)、クレンジング力、洗い上がりのさっぱり感の3項目を5段階評価し、更にその平均点から下記基準により判定した。
【0021】
5段階評価
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:やや悪い
1点:悪い
【0022】
判定
◎:平均点が4.5点以上
○:3.5以上、4.5点未満
△:2.5以上、3.5点未満
×:平均点が2.5点未満
【0023】
保存安定性は、室温40℃で、ガラス容器に保存し、3ヶ月経過後の各クレンジング化粧料の外観状態を下記基準で確認した。
○:濁りも沈殿もなかった。
△:濁りはなかったが、沈殿が確認された。
×:濁りも沈殿も確認された。
【0024】
各クレンジング化粧料に水添加後もI相状態であるか否かを下記基準で評価した。なお、クレンジング化粧料と添加した水の割合は6:4とした。
○:水添加後も、透明または半透明のまま、乳化もゲル化もしなかった。
×:水添加後に、不透明化または粘度増加が見られた。
【0025】
<製法>すべての成分を混合、均一撹拌し、調整した。
【0026】
実施例1〜10
表1に記載の配合組成よりなる組成物を常法により調製し、評価を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1より明らかなように、本発明の成分を用いた実施例1〜10の組成物は、いずれも優れた性能を示していた。
【0029】
比較例1〜15
表2に記載の配合組成よりなる組成物を常法により調製し、評価を行った。その結果を表2に併せて示す。
【0030】
【表2】

【0031】
比較例1〜15では、I相形成、水の可溶化能、安定性、濡れた手で使用中ののびやなめらかさといった肌感触、クレンジング力、洗い上がりのさっぱり感、いずれかの特性が劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【符号の説明】
【0032】
I 逆ミセル油溶液
II 油相(O)と界面活性剤相(SAA)の2相混合溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)及び(B)を含有する逆ミセル油溶液の皮膚洗浄剤組成物であって、この組成物に水を添加混合したとき、組成物:添加水=6:4〜10:0の割合ではI相を維持することを特徴とする皮膚洗浄剤組成物。
(A)下記成分a1〜a3からなり、配合比率a1:a2:a3=8.1:1:0.9〜7.2:1:1.8である3成分系非イオン性界面活性剤 15〜24質量%
1:トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)グリセリル
2:イソステアリン酸ポリオキシエチレン(8)グリセリル
3:テトライソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)ソルビット
(B)パルミチン酸オクチル 20質量%以上
【請求項2】
水溶性界面活性剤を含まない請求項1または2に記載の皮膚洗浄剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2013−40125(P2013−40125A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177870(P2011−177870)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(306018365)クラシエホームプロダクツ株式会社 (188)
【Fターム(参考)】