説明

皮膚洗浄料

【課題】十分な毛穴洗浄効果を持ちながら、さっぱりとした洗い上がりを有し、肌に負担をかけない皮膚洗浄料を提供する。
【解決手段】(A)水酸基が2個以下のアルコール、(B)グリセリン、(C)水酸基が4個以上のアルコール、(D)水、(E)非イオン性界面活性剤を含有する皮膚洗浄料であって、(A)、(B)及び(C)成分の総含有量と(D)成分の含有量の比〔(A)+(B)+(C)〕:(D)が20:1〜2:1であり、(A)成分と(B)成分の含有量比(A):(B)が1:2〜1:8であることを特徴とする皮膚洗浄料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に負担をかけずに毛穴等の洗浄を効果的に行うことができる皮膚洗浄料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、毛穴洗浄に対するニーズが高まってきている。しかしながら、従来の洗浄剤は、高い洗浄力を求めて、植物性粉末等のスクラブ剤やクレイ、粉体、発熱性素材あるいはアニオン性活性剤等の肌への刺激性の高い物質を配合して開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。そのため、これら物質に対して敏感な肌の人や様々な環境変化等により肌の弱い状態にある人は、これら毛穴洗浄剤を用いることにより、肌トラブルを起こすという問題があった。また、油剤を配合することにより洗浄力を高めている洗浄剤では、顔を水で洗った後に油のぬるつき感が残存するために、さらに石鹸等で顔を洗う必要があり、肌に負担をかけてしまうという問題もあった。
【0003】
【特許文献1】特許第3559070号公報
【特許文献2】特許第3857182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情において、十分な毛穴洗浄効果を持ちながら、さっぱりとした洗い上がりを有し、敏感肌の人でも安心して使用できる毛穴用の皮膚洗浄料が求められてきた。即ち、本発明の目的とするところは、肌に負担をかけずに毛穴等の洗浄を効果的に行うことができる皮膚洗浄料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は上記事情に鑑み、鋭意研究し、本発明を完成させた。即ち、第1の本発明は、(A)水酸基が2個以下のアルコール、(B)グリセリン、(C)水酸基が4個以上のアルコール、(D)水、(E)非イオン性界面活性剤を含有する皮膚洗浄料であって、(A)、(B)及び(C)成分の総含有量と(D)成分の含有量の比〔(A)+(B)+(C)〕:(D)が20:1〜2:1であることを特徴とする皮膚洗浄料にある。第2の本発明は、(A)成分と(B)成分の含有量の比(A):(B)が1:2〜1:8であることを特徴とする前記の皮膚洗浄料にある。第3の本発明は、さらに酵素を含有することを特徴とする前記の皮膚洗浄料にある。第4の本発明は、(E)の非イオン性界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルであることを特徴とする前記の皮膚洗浄料にある。さらに、第5の本発明は、毛穴洗浄用皮膚洗浄料であることを特徴とする前記の皮膚洗浄料にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚洗浄料は、十分な毛穴洗浄効果を持つと同時に、さっぱりとした洗い上がり感を有し、さらに、肌に負担をかけず刺激性が低いため、敏感肌の人でも安心して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の構成を詳述する。本発明に使用する(A)成分は、水酸基が2個以下のアルコールであり、具体的には1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ブト−2−エン−1,4−ジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−
ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2,5−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ヒドロキシピバル酸−ネオペンチルグリコールモノエステル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−チオ−ペンタン−1,5−ジオール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらのうち、1,3−ブタンジオール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールが皮膚刺激性の観点から好ましい。本発明における水酸基が2個以下のアルコールは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0008】
本発明の(C)成分は、水酸基が4個以上のアルコールであり、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、キシリトール、グルコース、ソルビトール、マンニトール、ショ糖等が挙げられ、好ましくはジグリセリンである。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0009】
本発明に使用する(E)成分の非イオン性界面活性剤は、例えばショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルグルコシド、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。これらのうち、毛穴の洗浄力と皮膚刺激性の観点から、ショ糖脂肪酸エステルが最も望ましい。毛穴の洗浄を効果的に行い、かつ低刺激性を保つためには、(E)非イオン性界面活性剤は、皮膚洗浄料の総量を基準として、0.1〜10質量%配合することが望ましく、さらに望ましくは0.5〜3質量%である。
【0010】
本発明の皮膚洗浄料では、(A)、(B)及び(C)成分の総含有量と(D)成分である水の含有量の比〔(A)+(B)+(C)〕:(D)を20:1〜2:1とし、好ましくは5:1〜2:1とする。これらの範囲外であると洗浄効果が十分でなかったり、皮膚刺激が強い場合がある。また、(A)成分と(B)成分の含量の比(A):(B)を1:2〜1:8とすると、洗浄力がより好ましいものとなる。さらに、毛穴の洗浄をより効果的に行うためには、本発明の皮膚洗浄料における(A)〜(C)各成分の含有量比(B):(C)を4:1〜8:1、(A):(C)を2:1〜1:1とすることが好ましい。
【0011】
本発明において、発明の効果を損なわない範囲であれば、上記必須成分の他に、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、ガム質、その他の高分子化合物、油剤、高級アルコール、噴射剤、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、酵素、pH調整剤、色素、香料等を配合することも可能である。これらのうち、酵素は本発明の皮膚洗浄料の洗浄効果をより優れたものとすることができるため、本発明の皮膚洗浄料に配合することが好ましい。
【0012】
酵素は、肌上の蛋白汚れや余分な角質除去、皮脂等の油分の除去を目的とするもので、皮膚洗浄料に配合可能なものであればいずれも使用可能である。本発明で用いる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、リゾチーム等が挙げられ、医薬品、化粧品、洗剤等に用いられるものであれば、生産方法・抽出方法及び起源については特に問わない。酵素は単体のまま使用しても良いが、酵素自体の安定性のため固定化された酵素を用いるのが望ましい。特に、本願皮膚洗浄料が毛穴洗浄を目的とするものである場合は、酵素としてプロテアーゼを用いるのが好ましい。
【0013】
本発明の皮膚洗浄料は洗顔料、部位特異的洗浄料、ハンドソープ、ボディシャンプー等に応用することができる。本発明の皮膚洗浄料は毛穴洗浄に適しているため、毛穴洗浄用皮膚洗浄料として利用すると本発明の効果が有効に活用できるので、本発明の皮膚洗浄料を毛穴洗浄用皮膚洗浄料とすることが特に好ましい。
【実施例】
【0014】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0015】
実施例、比較例において実施した各種評価試験の方法は下記の通りである。尚、以下の表に示す組成物の配合量は質量%である。
【0016】
(評価試験方法)
肌が弱く、過去に肌トラブルを起こしたことがある人(10名)を被験者として評価試験を行った。評価試料を日常生活における洗顔時に適宜使用してもらい、その際の毛穴洗浄効果、洗いあがりのさっぱり感、使用時の刺激感について、下記評価基準に従って評価してもらい、平均評価点を求めた。
【0017】
<毛穴洗浄効果>
4:非常に感じる
3:やや感じる
2:少し感じる
1:全く感じない
【0018】
<洗い上がりのさっぱり感>
4:非常に良好
3:良好
2:やや悪い
1:悪い
【0019】
<使用時の刺激感>
4:全く感じない
3:ほとんど感じない
2:少し感じる
1:常に感じる
【0020】
実施例1〜7、比較例1〜6
表1に示した処方の皮膚洗浄料(液状洗顔料)を常法により作製し、前記評価試験を実施した。尚、評価には1回当たり約3mlの試料を使用してもらった。結果を表1に併せて示す。
【0021】
(表1)

【0022】
表1より明らかなように本発明の成分を用いた実施例の洗浄料はいずれも優れた性能を有していた。一方、必須成分のいずれかが欠けていたり、含有量比が規定外である比較例では、毛穴の洗浄効果、洗い上がり時のさっぱり感、あるいは使用時の刺激感のいずれかの面で劣っており、本発明の目的を達成できなかった。
【0023】
実施例8(液状洗顔料)
下記組成の液体洗顔料を常法により作製し評価したところ、皮膚の刺激感が少なく、毛穴洗浄効果に優れた性能を有していた。
【0024】
(配合組成)
原料名 配合量(質量%)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ジプロピレングリコール 8.0
ジグリセリン 8.0
(商品名:ジグリセリン801、阪本薬品工業社製)
グリセリン 55・0
ソルビトール液 2.0
エタノール 2.0
ラウリン酸スクロース 0.3
(商品名:リョートーシュガーエステル L-1695、三菱化学フーズ社製)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5
(商品名:Tween L120、花王社製)
安息香酸ナトリウム 0.1
デキストラン固定化プロテアーゼ 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.2
水酸化カリウム 0.05
エデト酸ニナトリウム 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
フェノキシエタノール 0.1
クエン酸 0.08
クエン酸ナトリウム 0.02
グルチルリチン酸ジカリウム 0.1
混合果実抽出液 0.1
(商品名:マルチフルーツBSC、Arch Personal Care Products社製)
香料 0.2
精製水 残 部
【0025】
実施例9(液状洗顔料)
下記組成の液体洗顔料を常法により作製し評価したところ、皮膚の刺激感が少なく、毛穴洗浄効果に優れた性能を有していた。
【0026】
(配合組成)
原料名 配合量(質量%)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ジプロピレングリコール 8.0
ジグリセリン 8.0
(商品名:ジグリセリン801、阪本薬品工業社製)
グリセリン 55・0
エタノール 2.0
ラウリン酸スクロース 0.3
(商品名:リョートーシュガーエステル L-1695、三菱化学フーズ社製)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5
(商品名:Tween L120、花王社製)
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
スクワラン 1.0
ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリン 1.0
メチルフェニルポリシロキサン 1.0
メチルポリシロキサン 1.0
安息香酸ナトリウム 0.1
アクリル酸・メタクリル酸共重合体 0.2
(商品名:PEMULEN TR−1、Lubrizol社製)
水酸化カリウム 0.05
エデト酸ニナトリウム 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
フェノキシエタノール 0.1
デキストラン固定化プロテアーゼ 0.5
グルチルリチン酸ジカリウム 0.1
混合果実抽出液 0.1
(商品名:マルチフルーツBSC、Arch Personal Care Products社製)
ニコチン酸dl−α―トコフェロール 0.1
香料 0.2
精製水 残 部
【0027】
実施例10(液状洗顔料)
下記組成の液体洗顔料を常法により作製し評価したところ、皮膚の刺激感が少なく、毛穴洗浄効果に優れた性能を有していた。
【0028】
(配合組成)
原料名 配合量(質量%)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ジプロピレングリコール 8.0
ジグリセリン 8.0
(商品名:ジグリセリン801、阪本薬品工業社製)
グリセリン 55・0
エタノール 2.0
ラウリン酸スクロース 0.3
(商品名:リョートーシュガーエステル L-1695、三菱化学フーズ社製)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 0.5
(商品名:Tween L120、花王社製)
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1.0
(商品名:グルカムE−20、アマコール社製)
dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 0.1
(商品名:PCAソーダ、味の素社製)
エチルグルコシド 1.0
l−メントール 0.1
dl−カンフル 0.1
l―メンチルグリセリルエーテル 0.1
クロルフェネシン 0.1
アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム 0.2
/N−ビニルピロリドン共重合体
(商品名:ARISTOFLEX AVC、クラリアント社製)
エデト酸ニナトリウム 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
フェノキシエタノール 0.1
デキストラン固定化プロテアーゼ 0.5
グルチルリチン酸ジカリウム 0.1
混合果実抽出液 0.1
(商品名:マルチフルーツBSC、Arch Personal Care Products社製)
香料 0.2
精製水 残 部
【0029】
尚、上記の実施例8〜10において使用した香料の組成を表2に示す。
【0030】
(表2)

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明により、肌に負担をかけずに毛穴等の洗浄を効果的に行うことができる皮膚洗浄料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水酸基が2個以下のアルコール、(B)グリセリン、(C)水酸基が4個以上のアルコール、(D)水、(E)非イオン性界面活性剤を含有する皮膚洗浄料であって、(A)、(B)及び(C)成分の総含有量と(D)成分の含有量の比〔(A)+(B)+(C)〕:(D)が20:1〜2:1であることを特徴とする皮膚洗浄料。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分の含有量の比(A):(B)が1:2〜1:8であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚洗浄料。
【請求項3】
さらに酵素を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚洗浄料。
【請求項4】
(E)の非イオン性界面活性剤がショ糖脂肪酸エステルであることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の皮膚洗浄料。
【請求項5】
毛穴洗浄用皮膚洗浄料であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の皮膚洗浄料。

【公開番号】特開2009−221121(P2009−221121A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65191(P2008−65191)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】