説明

皮膚状態検出具とそれを用いた皮膚状態検出装置

【課題】本発明は、皮膚状態検出具とそれを用いた皮膚状態検出装置に関するもので、検出時間を短縮化することを目的とするものである。
【解決手段】そして、この目的を達成するために本発明は、筒状の本体ケース1と、この本体ケース1内を気体室2と溶液室3に仕切った破断可能なシート4と、前記本体ケース1の溶液室3内に注入されたキノン含有溶液7と、前記シート4に対向する気体室2壁面に設けた開孔を覆った皮脂付着シート9とを備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚状態検出具とそれを用いた皮膚状態検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば化粧品の販売においては、個々人の皮膚状態を検出することにより、個人ごとに、より適切な化粧品を勧めるようにしている。
そして、その場合の皮膚状態検出は、皮膚にテープを貼り付けることで皮脂分を採取し、それをガスクロマトグラフ分析することによって行っている(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−224286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ガスクロマトグラフ分析を行う場合大型で高価な装置を要し、測定においても熟練した技術者が必要であった。さらに、測定結果の解析においても時間がかかるため、人体から皮脂を採取後、結果を導くまで数日以上を要した。上記従来例における課題は、皮膚状態の検出に手間とコストが必要であり測定場所が限られる、と言うことであった。
【0005】
そこで、本発明は、ガスクロマトグラフ分析を用いることなく、皮膚状態検出を短時間で行うことが出来るようにする皮膚状態検出具とそれを用いた皮膚状態検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の皮膚状態検出具は、筒状の本体ケースと、この本体ケース内を気体室と溶液室に仕切った破断可能な第一のシートと、前記本体ケースの溶液室内に注入されたキノン含有溶液と、前記第一のシートに対向する気体室壁面に設けた開孔を覆った皮脂付着シートとを備えた構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明は、本発明の皮膚状態検出具は、筒状の本体ケースと、この本体ケース内を気体室と溶液室に仕切った破断可能な第一のシートと、前記本体ケースの溶液室内に注入されたキノン含有溶液と、前記第一のシートに対向する気体室壁面に設けた開孔を覆った皮脂付着シートとを備えた構成としたものであるので、皮膚状態検出を短時間で行うことが出来るようになる。
【0008】
すなわち、本発明の皮膚状態検出具によれば、先ず皮脂付着シートを皮膚に当接させることによって皮脂の採取を行い、次にこの皮脂付着シートを、開孔から本体ケースの気体室内に押し込み、続けて第一のシートを破断させて溶液室に押し込めば、皮膚の状態に最も大きな影響を与える遊離脂肪酸量に応じて、キノン含有溶液内を流れる電流量が増減することを利用し、皮膚状態検出を、極めて短時間で行うことが出来るようになるのである。
【0009】
このため、例えば、化粧品販売所においては、皮脂の採取後、直ちにその場で、皮膚状
態をお客に知らせることができ、これは化粧品販売所にも、お客にも好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)本発明の実施の形態1にかかる皮膚状態検出具の斜視図(b)本発明の実施の形態1にかかる皮膚状態検出装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態1にかかる皮膚状態検出装置の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1にかかる皮膚状態検出装置のブロック図
【図4】(a)本発明の実施の形態1にかかる皮膚状態検出装置の特性図(b)本発明の実施の形態1にかかる皮膚状態検出装置より得られた遊離脂肪酸の検量線を示したグラフ
【図5】(a)本発明の実施の形態2にかかる皮膚状態検出装置の斜視図(b)同要部拡大断面図、(c)同要部拡大下面図(d)同要部拡大下面図
【図6】本発明の実施の形態2にかかる皮膚状態検出具の斜視図
【図7】本発明の実施の形態3にかかる皮膚状態検出具の斜視図
【図8】本発明の実施の形態4にかかる皮膚状態検出装置の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明の実施の形態1にかかる皮膚状態検出具の斜視図であり、概略的に分かりやすくするため、透明化して示してある。この図に示すように、本実施の形態の皮膚状態検出具50は、合成樹脂よりなる円筒状の本体ケース1と、この本体ケース1内を上方の気体室2と中程の溶液室3に仕切った破断可能(例えばアルミ箔)なシート4と、前記本体ケース1内を溶液室3と下方の吸着室5に仕切った破断可能(例えばアルミ箔)なシート6と、前記溶液室3内に注入されたキノン含有溶液7と、前記シート4に対向する気体室2の壁面に設けた開孔(図2の8)を覆った皮脂付着シート9と、前記吸着室5内に設けた化学繊維製の吸着剤10と、を備えている。なお、開孔8が存在するシート4に対向する気体室2の壁面とは、本体ケース1の上端面となっている。前記皮脂付着シート9は、いわゆる油取りシートを、円形に切り取ったものにより構成され、このように円形の皮脂付着シート9で、円形の開孔(図2の8)を覆っている。前記本体ケース1は、図1における上下方向の長さが5センチ程度となっており、例えば化粧品販売所の係員はこれを持って、その皮脂付着シート9を、お客の額に10秒〜20秒押し当てる。その状態で、この図1(a)の皮膚状態検出具50に、図1(b)の皮膚状態測定検出装置51を図2のごとく装着し、その状態でお客の皮膚状態を検出する。つまり、これらの図1(a)の皮膚状態検出具50と、図1(b)の皮膚状態測定検出装置51により、皮膚状態検出装置が構成されているのである。
【0013】
図1(b)の皮膚状態測定検出装置51は、図1(a)の皮膚状態検出具50の開孔8から本体ケース1内に、図2のごとく、その下端側が挿入される円柱状の挿入体11と、この挿入体11の下方に設けた検出電極(図3の対極12、作用極13、参照極14)と、この挿入体11の上方に設けた接続電極(図3の15、16、17)と、この接続電極(図3の15、16、17)に接続した測定体18とを有する構成となっている。挿入体11と測定体18は着脱自在になっており、この場合、挿入体11は、誤検出を避けるために、使い捨てとなっており、新規の挿入体11が接続電極(図3の15、16、17)により、測定体18に接続される。また、前記挿入体11の上方部分には、その長手方向に所定間隔で挿入線19、20が設けられている。さらに、測定体18は、図3のごとく、電気化学測定部21と、制御解析部22と、メモリー23と、表示部24と、各部に電力を供給する電源部25とにより構成されている。
【0014】
以上の構成において、化粧品販売所における皮膚状態検出手順について説明する。
【0015】
先ず、化粧品販売所の係員は、図1(a)の皮膚状態検出具50を持ち、その皮脂付着シート9を、お客の額に10秒〜20秒押し当て、それによりお客の皮脂を採取する。次に、図1(b)に示す皮膚状態測定検出装置51の挿入体11の下端を、皮脂付着シート9の表面に当接させ、その挿入線19が図2のごとく開孔8に到達するまで、本体ケース1内に押し込む。すると、皮脂付着シート9は、挿入体11の下端により、開孔8から本体ケース1の気体室2内に押し込まれ、続けて挿入体11の下端によりシート4が破断され、これにより皮脂付着シート9が溶液室3に押し込まれる。この状態で、本体ケース1を複数回振り、キノン含有溶液7により、皮脂付着シート9によって採取された皮脂中から、遊離脂肪酸量を分離抽出する。そして、その30秒後に、図示していないスイッチをONすることで、図3の各部に電源部25から電圧を供給する。遊離脂肪酸含有の溶液には対極12、作用極13、参照電極14が浸漬されている。マイクロコンピューター等から構成される電気化学測定部21は、作用極13の電位を参照電極14の電極電位から所定の範囲で掃引し、これと同時に作用極13と対極12間を流れる電流値を測定する。このような測定方法は通常、ボルタンメトリーと呼称される。このボルタンメトリーによって酸(皮脂の場合遊離脂肪酸量)に対するキノン誘導体の還元波形が示され、この還元波形の前方位置に存在する還元前置波と呼称される還元波が、遊離脂肪酸量に依存して変動する。制御解析部22は、この測定した電流値の中で、還元前置波の電流値を検出するものであり、この電流値のピークが皮脂付着シート9によって採取した皮脂中の遊離脂肪酸量に比例する。遊離脂肪酸量は、皮脂の主要な成分のひとつで皮膚状態に大きな影響を与えるものであり、この遊離脂肪酸量に応じて図4のごとく、作用極13と対極12間に流れる電流値が変動する。
【0016】
この図4(a)は3,5−Di−tert−butyl−1,2−benzoquinone[DBBQ]を70%エタノール(v/v)に溶解させて調整したキノン含有溶液7中の遊離脂肪酸量が、10mM、5mM、3mM、1mM、0.5mM、0mMの時に、作用極13、対極12間に流れる電流値を示しており、X軸は参照電極14、作用極13間の電圧、Y軸は作用極13と対極12間を流れる電流量を示している。図4(a)で示した還元波形のうち、還元前置波のピーク電流をプロットしたものが、図4(b)に示すグラフになる。図4(b)はX軸に遊離脂肪酸濃度、Y軸に還元前置波のピーク電流の絶対値をプロットすることにより得られた検量線を示している。この特性からキノン含有溶液7中の遊離脂肪酸量が多い程、比例して大きな電流が流れるため、皮膚中の酸(主に遊離脂肪酸量)を定量的に測定することが可能であることが理解される。
【0017】
なお、実施の形態1では、3,5−Di−tert−butyl−1,2−benzoquinoneを70%エタノール(v/v)に溶解させて調整したキノン含有溶液を使用したが、本発明のキノン溶液の溶媒は、キノン化合物及び測定対象物(例えば遊離脂肪酸)を溶解できる構成であれば特に限定されないが、水溶媒に有機溶媒を含有させた構成であることが望ましい。また、キノン化合物においても、測定対象物(例えば遊離脂肪酸)と電子授受行い、ボルタンメトリーによってキノン誘導体の還元前置波が得られるものであれば特に限定されない。このようなキノン化合物として、3,5−Di−tert−butyl−1,2−benzoquinone以外に2,6−Dimethyl−1、4−benzoquinone、2,3−Dimethoxy−5−methyl−p−benzoquinone等がある。これらのキノンは比較的安定である。
【0018】
作用極13と対極12間を流れる電流は、図3の電気化学測定部21で測定され、この測定値は、制御解析部22の比較手段(図示せず)で、メモリー23の比較値と比較され、その結果は表示部24に、表示される。また、メモリー23には測定結果を記録する機
能もあり、お客各々の皮膚状態の推移を記録し、記録や記録の解析結果を表示部24に表示することも可能である。これにより、任意のお客のデータから皮膚状態の解析ができるためよりきめ細かなケアが指示出来る。
【0019】
例えば、遊離脂肪酸量が所定値よりも多い時には、表示部24の表示は、例えば「皮脂量を抑えるケアが必要」と表示され、この表示により、直ちにその場で、皮膚状態をお客に知らせることができ、これは化粧品販売所にも、お客にも好ましいものとなる。また、過去のデータとの比較、解析結果を表示することで、適切な肌ケアが行われているかどうかも評価可能である。
【0020】
また、皮膚中の遊離脂肪酸量を測定したキノン溶液に、化1に示される反応スキームを触媒する酵素(リポプロテインリパーゼ)を導入し、トリグリセリドを3つの遊離脂肪酸に分解させて、酵素反応前後の遊離脂肪酸の増加量を測定してもよい。これにより、皮脂に含まれるトリグリセリドを測定することが可能になる。
【0021】
【化1】

【0022】
遊離脂肪酸は皮膚の常在細菌によってトリグリセリドが分解されて生成したものである。皮膚の状態をより細かく知る上で、トリグリセリド量は有用な情報である。トリグリセリドを分解して得られた遊離脂肪酸含有の溶液には参照電極14、作用極13、対極12が浸漬されている。マイクロコンピューター等から構成される電気化学測定部21は、作用極13の電位を参照電極14の電極電位から所定の範囲で掃引し、これと同時に作用極13と対極12間を流れる電流値を測定する。トリグリセリドを分解して得られた遊離脂肪酸の増加量は作用極13から、対極12に流れる電流値の増加分として捕らえられる。作用極13と対極12間を流れる電流は、図3の電気化学測定部21で測定され、この測定値は、制御解析部22の比較手段(図示せず)で、メモリー23の比較値と比較され、トリグリセリドの値に変換し表示部24に、表示される。
【0023】
例えば、トリグリセリドが所定値よりも多い時には、表示部24の表示は、例えば「皮脂量を抑えるケアが必要」と表示され、この表示により、直ちにその場で、皮膚状態をお客に知らせることができ、これは化粧品販売所にも、お客にも好ましいものとなる。また、トリグリセリド量と遊離脂肪酸量を同時に測定することで皮膚情報をより詳しく分析することが可能であり、適切なアドバイスを行うことが可能になる。
【0024】
さらに、酵素などを用い遊離脂肪酸やトリグリセリド以外の皮脂成分を酸に変換すれば、遊離脂肪酸やトリグリセリド以外の皮脂成分であっても測定可能である。例えば、下記の皮脂成分に関しても測定可能である。化2に示される反応スキームを触媒する酵素(コレステロールエステラーゼ)を用いることでコレステロール脂肪酸エステルを脂肪酸と遊離型コレステロールに分解し、上記のトリグリセリドの測定と同様にして酵素反応前後での脂肪酸の増加量を測定することで、皮脂に含まれるコレステロールを測定することが可能である。
【0025】
【化2】

【0026】
このように、酵素を用いることによりトリグリセリド量やコレステロール量のような遊離脂肪酸以外の皮脂成分も測定可能であり、より詳しい皮膚情報が得られる。なお、本実施の形態1において、遊離脂肪酸、トリグリセリド、コレステロールの測定について示したが、下記に記載した実施の形態2、3及び4においても同様に、遊離脂肪酸に加え、トリグリセリド及びコレステロールの測定も行うことができる。
【0027】
そして、この検出、およびお客への結果報告が終了すると、挿入体11の挿入線20が図2の開孔8に到達するまで、本体ケース1内に挿入体11を押し込む。すると、挿入体11の下端によりシート6が破断され、これによりキノン含有溶液7が吸着室5内に流れ込み、そこに設けている化学繊維製の吸着剤10に吸着させる。この状態では、キノン含有溶液7が吸着剤10に吸着されているので、開孔8から本体ケース1外に簡単には流出しないものとなる。このため、挿入体11が押し込まれた状態の本体ケース1を、測定体18から取り外し、この挿入体11、本体ケース1の一体化物のまま、廃棄することになる。勿論、次の検出時には、新規な挿入体11が測定体18に装着され、接続電極(図3の15、16、17)により、電気的な接続も行われる。
【0028】
なお、溶液室3上に気体室2を設けた理由は、挿入体11でシート4を破断する時にキノン含有溶液7が開孔8から吹き出すのを抑制するためであり、また気体室2により本体ケース1の廃棄時にキノン含有溶液7が開孔8から流出することも抑制することも出来る。
【0029】
(実施の形態2)
図5、図6は、本発明の実施の形態2の皮膚状態検出装置を示すものであるが、実施の形態1と同じ構成のものには同一番号を付してその説明を簡略化する。
【0030】
この実施の形態2における皮膚状態検出装置は、図6の皮膚状態検出具と、この皮膚状態検出具に装着される図5の測定装置により構成されている。
【0031】
前記皮膚状態検出具を構成する本体ケース26は有底円筒状とし、この本体ケース26の上方に気体室27、この気体室27の下方に溶液室28、この溶液室28の下方に吸着室29を設けるとともに、前記本体ケース26の上端面には開孔30を設けている。
【0032】
また、気体室27と溶液室28間は、破断可能なシート31で仕切り、吸着室29と溶液室28間は、破断可能なシート32で仕切っている。
そして、この状態で前記溶液室28内には、キノン含有溶液33が充填されている。
【0033】
一方、図5に示した測定装置は、前記皮膚状態検出具のシート31を破断させて本体ケース26内に、その下端側が挿入される挿入体34と、この挿入体34の下方に設けた皮脂付着シート35および検出電極(対極12、作用極13、参照極14)と、この挿入体34の上方に設けた接続電極(図示せず)と、この接続電極に接続した測定体18とを有する。また、挿入体34は測定体18に対して着脱自在となっているが、その長手方向には所定間隔で挿入線19、20が設けられている。ここで、挿入体34の下方に設けた皮脂付着シート35および検出電極(対極12、作用極13、参照極14)について詳述する。
【0034】
この実施形態2では、挿入体34の下端部に溝36を形成し、この溝36内に前記検出電極(対極12、作用極13、参照極14)を設けるとともに、皮脂付着シート35は挿入体34の下端に装着している。そして、この状態にすると、検出電極(対極12、作用極13、参照極14)と皮脂付着シート35は溝36により非接触状態となる。
【0035】
以上の構成で、お客の皮膚状態を検出する場合には、挿入体34を測定体18からは取り外した状態で、この挿入体34の下端に装着した皮脂付着シート35をお客の額に10秒〜20秒押し当てる。その後、この挿入体34を図5のごとく測定体18に取り付けた状態で、挿入体34の下端を、皮膚状態検出具を構成する本体ケース26の上端の開孔30から、その挿入線19が開孔30に到達するまで、本体ケース26内に押し込む。すると、皮脂付着シート35は、挿入体34の下端により、開孔30から本体ケース26の気体室27内に押し込まれ、続けて挿入体34の下端によりシート31が破断され、これにより皮脂付着シート35が溶液室28に押し込まれる。この状態で、本体ケース26を複数回振り、キノン含有溶液33により、皮脂付着シート35によって採取された皮脂中から、遊離脂肪酸量を分離抽出する。そして、その30秒後に、図示していないスイッチをONすることで、図3の各部に電源部25から電圧を供給する。
【0036】
遊離脂肪酸含有の溶液には対極12、作用極13、参照電極14が浸漬されている。マイクロコンピューター等から構成される電気化学測定部21(図3)は、作用極13の電位を参照電極14の電極電位から所定の範囲で掃引し、これと同時に作用極13と対極12間を流れる電流値を測定する。さらに制御解析部22(図3)は、この測定した電流値の中で、キノン誘導体が示す還元波形の前方位置に存在する還元前置波の電流値を検出するものである。この電流値が皮脂付着シート35によって採取した皮脂中の遊離脂肪酸量に比例する。
【0037】
この時、対極12、作用極13、参照極14と皮脂付着シート35は溝36により非接触状態となっているので、検出電極12、13、14にはキノン含有溶液33が触れることが出来るようになっている。遊離脂肪酸量は、皮脂の主要な成分のひとつで皮膚状態に大きな影響を与えるものであり、この遊離脂肪酸量に応じて図4のごとく、作用極13と対極12間に流れる電流値が変動する。この実施形態2においても、キノン含有溶液33中の遊離脂肪酸量が多い程、大きな電流が流れる。作用極13、対極12間を流れる電流は、図3の電気化学測定部21で測定され、この測定値は、制御解析部22の比較手段(図示せず)で、メモリー23(図3)の比較値と比較され、その結果は表示部24に、表示される。
【0038】
遊離脂肪酸量が所定値よりも多い時には、表示部24の表示は、例えば「皮脂量を抑えるケアが必要」と表示され、この表示により、直ちにその場で、皮膚状態をお客に知らせることができ、これは化粧品販売所にも、お客にも好ましいものとなる。
【0039】
そして、この検出、およびお客への結果報告が終了すると、挿入体34の挿入線20が開孔30に到達するまで、本体ケース26内に挿入体34を押し込む。すると、挿入体34の下端によりシート32が破断され、これによりキノン含有溶液33が吸着室29内に流れ込み、そこに設けている化学繊維製の吸着剤37に吸着させる。この状態では、キノン含有溶液33が吸着剤37に吸着されているので、開孔30から本体ケース26外に簡単には流出しないものとなる。
【0040】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3の皮膚状態検出装置の皮膚状態検出具を示すものであるが、実施の形態2と同じ構成のものには同一番号を付してその説明を簡略化する。
【0041】
この実施形態の本体ケース38は有底円筒状とし、この本体ケース38の上方に溶液室28、この溶液室28の下方に吸着室29を設けるとともに、前記溶液室28の上端面の開孔をシート31で覆った構成としている。つまり、実施の形態2の気体室27は挿入体34挿入時におけるキノン含有溶液33の飛び散りを防止するために設けたものであるが、この実施の形態3では気体室27を廃止し、高さを低くしたものである。
【0042】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4の皮膚状態検出装置の皮膚状態検出具を示すものであるが、実施の形態2と同じ構成のものには同一番号を付してその説明を簡略化する。
【0043】
この実施の形態4では、挿入体34の下端を先鋭化させ、シート31、32の破断を容易にしたものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように本発明の皮膚状態検出具は、筒状の本体ケースと、この本体ケース内を気体室と溶液室に仕切った破断可能な第一のシートと、前記本体ケースの溶液室内に注入されたキノン含有溶液と、前記第一のシートに対向する気体室壁面に設けた開孔を覆った皮脂付着シートとを備えた構成とし、この皮膚状態検出具と、この皮膚状態検出具に装着される測定装置とを備え、前記測定装置は、前記皮膚状態検出具の開孔から本体ケース内に、その下端側が挿入される挿入体と、この挿入体の下方に設けた検出電極と、この挿入体の上方に設けた接続電極と、この接続電極に接続した測定体とを有し、皮膚に存在する遊離脂肪酸をキノン溶液と反応させて、生じたキノン誘導体をこの検出電極で電気化学的に検出する皮膚状態検出装置により、皮膚状態検出を短時間で行うことが出来るようになる。
【0045】
すなわち、本発明の皮膚状態検出具によれば、先ず皮脂付着シートを皮膚に当接させることによって皮脂の採取を行い、次にこの皮脂付着シートを、開孔から本体ケースの気体室内に押し込み、続けて第一のシートを破断させて溶液室に押し込めば、皮膚の状態に最も大きな影響を与える遊離脂肪酸量に応じて、キノン含有溶液内を流れる電流量が増減することを利用し、皮膚状態検出を、極めて短時間で行うことが出来るようになるのである。さらに、酵素を用いることにより、遊離脂肪酸だけでなくトリグリセリドをはじめとした皮脂のその他主要な成分も測定可能である。
例えば、化粧品販売所においては、皮脂の採取後、直ちにその場で、皮膚状態をお客に知らせることができ、これは化粧品販売所にも、お客にも好ましいものとなる。
このため、化粧品販売所などで広く活用が期待される。
【符号の説明】
【0046】
1 本体ケース
2 気体室
3 溶液室
4 シート
5 吸着室
6 シート
7 キノン含有溶液
8 開孔
9 皮脂付着シート
10 吸着剤
11 挿入体
12 対極(検出電極)
13 作用極(検出電極)
14 参照極(検出電極)
15,16,17 接続電極
18 測定体
19,20 挿入線
21 電気化学測定部
22 制御解析部
23 メモリー
24 表示部
25 電源部
26 本体ケース
27 気体室
28 溶液室
29 吸着室
30 開孔
31,32 シート
33 キノン含有溶液
34 挿入体
35 皮脂付着シート
36 溝
37 吸着剤
38 本体ケース
50 皮膚状態検出器具
51 皮膚状態測定検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体ケースと、この本体ケース内を気体室と溶液室に仕切った破断可能な第一のシートと、前記本体ケースの溶液室内に注入されたキノン含有溶液と、前記第一のシートに対向する気体室壁面に設けた開孔を覆った皮脂付着シートとを備えた皮膚状態検出具。
【請求項2】
前記溶液室の気体室とは反対側の本体ケース内に吸着室を設け、この吸着室と前記溶液室間は、破断可能な第二のシートで仕切った請求項1に記載の皮膚状態検出具。
【請求項3】
前記本体ケースは円筒状とし、この本体ケースの上方に気体室、この気体室の下方に溶液室、この溶液室の下方に吸着室を設けるとともに、前記本体ケースの上端面に開孔を設けた請求項2に記載の皮膚状態検出具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の皮膚状態検出具と、この皮膚状態検出具に装着される測定装置とを備え、前記測定装置は、前記皮膚状態検出具の開孔から本体ケース内に、その下端側が挿入される挿入体と、この挿入体の下方に設けた検出電極と、この挿入体の上方に設けた接続電極と、この接続電極に接続した測定体とを有する皮膚状態検出装置。
【請求項5】
前記挿入体には、その長手方向に所定間隔で第一の挿入線と、第二の挿入線を設けた請求項4に記載の皮膚状態検出装置。
【請求項6】
前記測定体と挿入体は着脱自在とした請求項4または5に記載の皮膚状態検出装置。
【請求項7】
皮膚状態検出具と、この皮膚状態検出具に装着される測定装置とを備え、前記皮膚状態検出具は、筒状の本体ケースと、この本体ケース内に設けた溶液室と、この溶液室壁面に設けた開孔を覆った破断可能な第一のシートと、前記溶液室内に注入されたキノン含有溶液とを有し、前記測定装置は、前記皮膚状態検出具の第一のシートを破断させて本体ケース内に、その下端側が挿入される挿入体と、この挿入体の下方に設けた皮脂付着シートおよび検出電極と、この挿入体の上方に設けた接続電極と、この接続電極に接続した測定体とを有する皮膚状態検出装置。
【請求項8】
前記皮膚状態検出具は、その本体ケース内において、溶液室の第一のシートとは反対側に吸着室を設け、この吸着室と溶液室間は、破断可能な第二のシートで仕切った請求項7に記載の皮膚状態検出装置。
【請求項9】
前記皮膚状態検出具の本体ケースは円筒状とし、この本体ケースの上方に気体室、この気体室の下方に溶液室、この溶液室の下方に吸着室を設けるとともに、前記本体ケースの上端面に開孔を設けた請求項8に記載の皮膚状態検出装置。
【請求項10】
前記測定体と挿入体は着脱自在とした請求項7〜9のいずれか一つに記載の皮膚状態検出装置。
【請求項11】
前記挿入体には、その長手方向に所定間隔で第一の挿入線と、第二の挿入線を設けた請求項7〜10のいずれか一つに記載の皮膚状態検出装置。
【請求項12】
前記皮脂付着シートは前記挿入体の下端に装着した請求項7〜11のいずれか一つに記載の皮膚状態検出装置。
【請求項13】
前記挿入体の下端を先鋭化させた請求項7〜12のいずれか一つに記載の皮膚状態検出装置。
【請求項14】
前記挿入体の下端部に溝を形成し、この溝内に検出電極を設けるとともに、この検出電極と皮脂付着シートは非接触状態とした請求項7〜13のいずれか一つに記載の皮膚状態検出装置。
【請求項15】
前記キノン含有溶液に酵素を導入した請求項4〜14のいずれか一つに記載の皮膚状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−117785(P2011−117785A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274105(P2009−274105)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】