説明

皮膚疾患外用剤

【課題】 動物の皮膚疾患の外用剤の主原料として薬草や果実が用いられていることが多くみられる。しかし、安定した治療外用剤とするには、主原料より抽出した成分の濃度の一定化や配合比や配合技術が必要と考えられるので、本発明は特定した薬草から主成分を抽出する条件を共通とし、その各抽出液の混合にあたって果実のアルコール抽出液とグリセリンを加えて混和を図ろうとするものである。
【解決手段】 特定した薬草はヨモギ・スギナ・緑茶葉・ドクダミの4種としそのそれぞれ特定の同一重量のものを水で煮つめて特定の同一容量とし、その各抽出液を混合し、野ぶどうの焼酎によるアルコール抽出液とグリセリンと芳香性果実のオレンジ油・レモン油とを加えて成る主原液を、水にて稀釈し提供することにより目的を達成しようとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬猫等の小型動物や馬牛等の大型動物における皮膚病治療に使用する外用剤に係わり、外用剤は薬草類と果実の抽出液を主原料とした石鹸及びローション並びにクリームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物皮膚病外用剤の先行技術には、特開平6-179625号(特許文献1)、特開平10-139677号(特許文献2)、特開2001-321016(特許文献3)、特開2002-154975号(特許文献4)、特開2002-363065号(特許文献5)等がみられる。
この特許文献のうち特許文献5は本件出願人にかかるものであるが、いずれの特許文献も主として薬草を主原料とする外用治療剤に係わり、その治療効果を挙げており薬草もまた多種類である。
しかし、安定した治療剤とするためには、主原料より抽出した成分の濃度や調剤技術等が必要とされるにかかわらず配慮されていないと認められる。
【特許文献1】特開平6−179625号公報
【特許文献2】特開平10−139677号公報
【特許文献3】特開2001−321016公報
【特許文献4】特開2002−154975号公報
【特許文献5】特開2002−363065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする問題点は、先行文献に記載される主原料の薬草や果物と同一又は類似に属するものを治療用主原料に使用するに当り、薬草から主成分を抽出する条件を共通とし、有機溶剤とグリセリンとを加えて混和を図ることにより、治療効果の安定した外用剤としようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本件出願人は前記課題を解決するため本件出願人に係わる前記特許文献5における主原料を精査し整理して所要原料にまとめたうえ、その原料の成分抽出条件を共通とし、各抽出液の混合に当って果実のアルコール浸出液とグリセリンと芳香性果実液を加えることによりその目的を達成しようとするものである。
【0005】
上記目的達成手段を具体的に記すと、原料のうち薬草はヨモギ・スギナ・緑茶葉・ドクダミ、果実は野ぶどう、芳香性果実油分はオレンジ油・レモン油の2種類である。上記4種類の薬草の抽出液を水に懸濁させるために、野ぶどうのアルコール度35°前後の焼酎漬け液とグリセリンとを使用する。
【0006】
これら薬草は乾燥した一定重量のものを一定容量の水で煮つめて特定容量の薬効成分抽出液として使用し、野ぶどうの焼酎漬け液も上記と同じ特定容量のものを使用する。
すなわち、薬草と果実視される野ぶどうの薬効成分抽出液とは同一ccで、薬草原液4種と野ぶどう原液1種計5種類の抽出液が使用される。
【0007】
上記薬草の抽出液とグリセリンと芳香性果実液とから成る本発明外用剤主成分の混合比は、容量比で薬草抽出液4種類とも各3、野ぶどう焼酎漬け液1、芳香性果実油分のオレンジ油3・レモン油0.3、グリセリン5である。
上記中でスギナと茶葉とドクダミの抽出液は2までに減量させることが患者患部の症状によりできる。
【0008】
上記主成分を混合した主原液を、ローションすなわち患部洗浄水や化粧水とする場合には水に容量比で30%の割合で混合し、クリームローションとする場合には主原液3、クリーム5、水2の割合で混和し、石鹸の場合には主成分原液3、石鹸材料4、水3の割合で混和する。
前記主原液はアルカリ性であるから使用する水は酸性でない自然水が使用される。また、ローション類や石鹸化への手段についてはその業界における一般技術で行ってよい。
【発明の効果】
【0009】
本件出願人の出願にかかわる前記特許文献5ではその発明の効果を(表1)に示している。すなわち、犬の治療効果は重傷3〜4ヵ月、中傷1〜1.5ヵ月、軽傷1ヵ月以内、最長日数4.5ヵ月、最短日数10日である。本件発明による治療では上記により少なくとも10%以上短縮した結果を得ている。
【0010】
上記効果の実例を記すと、本件発明の外用剤使用前の犬(雄1才・体重7kg・雑種)の既往歴は、
平成15年7月4日、鼻鏡に赤い発疹様のものが出現。更に眼の周りがただれてきたので近医(A病院)を受診したが、蚊に刺されたとの判断で経過観察となる。四肢及び全身に掻痒性が出現し、25日、再び受診したところ、アレルギーとの判断で抗生物質を投与される。掻痒性は悪化し、掻破した部分(おもに四肢)が出血して腫脹し、脱毛が始まったのでB病院に代えた。そこで膿皮症と判断され、抗生物質、かゆみ止め、ステロイドを投与されるも症状は悪化し、8月の中旬までには全身の大部分の被毛が脱落した。かゆみのために食欲も減退し、栄養状態が極めて悪くなった。B病院の内服治療に効果を感じず、C病院に代え、毛包虫症と判断され抗生物質と殺ダニ剤、シャンプー剤の処方を受けるが、病変に著変は見られず、むしろ増悪傾向をしめし、夜中の遠吠え、脱走、異常行動が始まったため、平成15年12月5日当方へ来店した。
【0011】
本件発明の外用剤使用による治療経過は平成15年12月5日から開始した。ローション・クリームローション・石鹸を使用した。
(現症)
全身的に広汎な脱毛、紅潮がみられ、丘疹、血性の痂皮、掻破による出血がある。とくに顕著なのは両側面、後駆、両大腿後縁・肛門周囲、尾、四肢であり、舐性が強い。両大腿後縁から関節に至るまで広域性の脱毛と斑状の色素沈着が見られる。鼻鏡から鼻梁にかけて丘疹と掻破によって糜爛が存在するような状態になり、炎症が強い。栄養状態が悪く、痩せていて落ち着かない。
(経過)
外用療法開始翌日から掻痒性軽減し、行動が落ち着いてくる。12月19日(治療開始2週間)、脱毛は治らないものの、炎症が治まってきた。治療開始1ヵ月頃から全身の被毛がほぼ回復。栄養状態も良好になり、鼻鏡に若干炎症が残るが、2月15日完全治癒とした。体重も17kgになっていた。
【0012】
上記本件発明外用剤使用による治療経過を写真で示すと、図1、図2は平成15年12月8日の犬の症状を示し、図3、図4は平成16年1月16日の、図5、図6は平成16年2月15日の症状を示す。
【実施例】
【0013】
本発明外用剤の調合の実施例を詳記すると、日陰で乾燥したヨモギ、スギナ、緑茶葉、ドクダミそれぞれ500gを水6リットルとともに400ccになるまで煮つめ個々の抽出液とする。生のドクダミを用いる場合は1.5kgとする。野ぶどうは500gをアルコール度35°の焼酎に漬け保存(好ましくは3ヵ年)した液を用いる。オレンジ油・レモン油はそれぞれの皮を乾燥させた後に粉砕し容器に入れ蒸気で蒸して湿潤させ、これを脱水機にかけて絞りとったエキスである。
【0014】
上記によるものの調合は、ヨモギ抽出液30ccとスギナ・緑茶葉・ドクダミ各抽出液各20ccとを水650ccに混和し、グリセリン50ccと野ぶどうの焼酎液10ccとを加えて充分に混合し、オレンジ油30ccとレモン油2ccとを添加して主原材料とする。これをローションやクリームローションや石鹸の主材料とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】平成15年12月8日の犬の症状を示した写真。
【図2】図1の他側面の症状を示した写真。
【図3】平成16年1月16日の犬の症状を示した写真。
【図4】図3の拡大写真。
【図5】平成16年2月15日の犬の治癒状態を示した写真。
【図6】図5の拡大写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬草ヨモギとスギナと緑茶葉とドクダミの各同重量を水で煮て各同容量とした成分抽出液と、野ぶどうの焼酎抽出液と、グリセリンと芳香性果実油とを混合して主原液とし、これを水にて稀釈して成る皮膚疾患外用剤。
【請求項2】
請求項1における主原液の調合比を容量比でヨモギ抽出液とスギナ抽出液と緑茶葉抽出液とドクダミ抽出液は各2〜3、野ぶどうの焼酎抽出液1、芳香性果実油中オレンジ油3、同レモン油0.3、グリセリン5とし、該主原液を水に稀釈して成る皮膚疾患外用剤。
【請求項3】
請求項2における該主原液を水に30%混合してローションとした皮膚疾患外用剤。
【請求項4】
請求項2における該主原液をクリームローション或いは石鹸の材料に30%混合した皮膚疾患外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−137963(P2008−137963A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326845(P2006−326845)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(599030932)
【出願人】(501275802)
【Fターム(参考)】