説明

皮膚疾患用および化粧用脱色素沈着組成物、その調製方法、およびその使用

本発明は、脱色素沈着組成物およびその使用に関する。特に、本発明による組成物は、色素沈着の皮膚疾患的または化粧的処置に、先行技術組成物の欠点を伴うことなく、改善された効果を示す。本発明は、生理学的に許容される媒体中に、ルシノール(rucinol)またはその塩から選択される少なくとも1種の化合物、および少なくとも1種のレチノイドを含む皮膚疾患用または化粧用の組成物に関する。本発明は、皮膚の色素沈着過剰症を皮膚疾患として予防および/または処置するための本組成物の使用、さらには皮膚または外皮の光誘発性または加齢性の老化に本組成物を化粧品として使用することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱色素沈着組成物、そのような組成物の調製方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚色素沈着過剰症は、メラニンの蓄積により皮膚に褐色または有色の斑の外観となって現れる一般的な皮膚障害であり、これは、皮膚に不均一性をもたらす。色素沈着斑は、身体のあらゆる部分、特に男性の手の甲、顔、襟足および頭部に出現し得るものである。
【0003】
色素沈着過剰病変の出現にはいくつかの因子が寄与し得るものであるが、最も一般的に言われているのは、家族性素因、ホルモン、太陽光への曝露、および皮膚老化である。加えて、色素沈着斑は、皮膚の発病つまり皮膚炎の後にも出現し得るものである。つまり、メラニン産生の増加は、例えば外傷、湿疹様発疹、あるいは他の皮膚刺激の後の、皮膚炎症過程によって引き起こされ得るものである。
【0004】
脱色素沈着障害の中では、加齢性の斑または日光性の黒子が色素沈着過剰症の一般的な病態である。これらは、太陽光によって引き起こされる傷害によるものであって、通常、手の甲および腕、襟足、あるいは他には顔に出現する。そのような斑は、雀卵斑つまりそばかすよりも黒く、そして冬季まで持続する。
【0005】
結果として、光線性老化症状、特に紫外線への曝露によって引き起こされた色素沈着過剰斑の効果的な、リスクを伴わない処置に対しては真のニーズが存在する。
【0006】
黒皮症つまり肝斑病変は加齢性の斑よりも広範囲に広がったものであり、顔に表れる。これは、最も一般的には、ホルモン変化によるものである。例えば、妊娠は、メラニンの過剰産生を引き起こすことがあり、これは、「妊娠仮面(pregnancy mask)」を引き起こす。
【0007】
皮膚の色の変化は、外部要因、例えば挫瘡などの皮膚疾患や、皮膚病変からも引き起こされ得るものである。雀卵斑も小さな褐色斑であり、これは、身体のどこにでも出現し得るものであるが、最も一般的には、顔および腕に出現する。雀卵斑は、遺伝性の特質である。
【0008】
炎症後色素沈着過剰症(PIHP: postinflammatory hyperpigmentation)も一般的な色素沈着障害であり、これは、ちょうどそれが処置手技の結果であり得ると同じようにさまざまな皮膚障害の結果であり得るものである。この過剰皮膚着色は、感染症、アレルギー反応、擦過傷のような外傷、瘢痕または火傷、薬剤に対する反応、あるいは光傷害性発疹に続いて起こり得るものであり、さらには、挫瘡、湿疹、乾癬、扁平苔癬、紅斑性狼瘡、アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患や皮膚リンパ腫にも続いても起こり得るものである。
【0009】
PIHPは、非白人種の皮膚、特にアジア人、黒人または混血人種の皮膚のような暗色系の光型でより一般的なものである。
【0010】
局所用組成物の剤形で現在使われている脱色素沈着剤つまりブリーチ剤は、表皮中のメラニン密度を低下させることができるものである。この薬剤は、一般に、表皮下層を横切って吸収され、メラニンの生成を減速させる。
【0011】
ヒドロキノンは脱色素沈着剤であり、ベンジルオキシフェノールおよびヒドロキノンモノベンジルエーテルのようなその誘導体もそうである。しかしながら、これらの薬剤にはいくつかの欠点がある。ヒドロキノンはアルカリ媒体中で不安定であり、キニンの形態に酸化されるが、これは、それを含有している組成物に茶色がかった色を与える。ヒドロキノンは刺激性があり、超過敏反応を引き起こすこともあり、一部のまれなケースでは、組織褐変症を引き起こす。ヒドロキノンは、また、発癌性があると疑われている。ヒドロキノンモノベンジルエーテルは、皮膚を横切って吸収された場合は正しく代謝されず、結果として非可逆的な脱色素沈着を引き起こす。ヒドロキノンエーテルであるメトキシフェノールも知られているが、相対的に水不溶性であるという欠点があり、化粧品または皮膚疾患用製剤中に組み込むのが難しい。
【0012】
ヒドロキノン、レチノール酸およびデキサメタゾンを含む脱色素沈着組成物が記載されている(米国特許第3,856,934号)が、この組成物も刺激性があり、最も極端なケースでは掻痒を引き起こし得る。
【0013】
このような色素沈着問題の処置用にビタミンC型、果実酸型および日焼け止め剤型のさまざまな製品が開発されているが、多くは不安定な混合物を含有しており、非常に活性があるものではない。
【0014】
つまり、過剰量のメラニンが沈着することにより起こる色素沈着過剰斑を処置して、皮膚欠陥を解消しようとする一般的なニーズが存在する。
【0015】
さらに、肌の色の輝きを増大させるために、あるいは皮膚の外観を均一にするために、通常に色素沈着した皮膚をブリーチすることを可能にしようとするニーズが存在する。
【0016】
皮膚のブリーチングを駆り立てる理由はさまざまであり得る。サハラ以南アフリカ諸国およびアジア諸国では、多くの場合、肌の色を明るく薄くすることが求められるが、伝統的な溶液つまり化学薬品溶液でであり、これには、一般に、皮膚の外観および構造に対して相当な有害副作用がある。
【0017】
アジア人の顔の薄い色または白い色は、アルブチン、コウジ酸またはアスコルビン酸などの分子で達成されているが、これらのものの許容性はよくないつまり刺激性であり得るものである。
【0018】
したがって、脱色素沈着活性または薄色化活性があり、皮膚によって、特にヒスパニック系、インド系、黒人系、アジア系または混血系人種の皮膚のような非白人種の皮膚によって十分許容される組成物に対してはニーズが存在する。
【0019】
ルシノール(rucinol)、またはルシノール(lucinol)、あるいは別名として4-ブチルレゾルシノールは、色素沈着障害関連褐色斑を薄色化するための薬剤として販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第3,856,934号
【特許文献2】WO2006/066978
【特許文献3】WO2007/066041
【特許文献4】WO2005/056510
【特許文献5】WO2005/037772
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記を鑑みるに、本発明が解決しようとする課題は、色素沈着の化粧的および/または皮膚疾患的処置に、先行技術組成物の欠点を伴うことなく、改善された効果を示す組成物を調製することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の主題は、生理学的に許容される媒体中に、(i)ルシノール(rucinol)およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物、(ii)少なくとも1種のレチノイド(以下「活性剤(i)および(ii)」と呼ぶ)を含むことを特徴とする組成物、好ましくは皮膚疾患用または化粧用組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
用語「皮膚疾患用組成物」とは、色素沈着性皮膚障害の処置および/または予防で使用するための組成物を意味するものとする。
【0024】
用語「化粧用組成物」とは、皮膚をより見栄えのよいものにするのにおよび/または皮膚の物理的外観を良くするのに使用するための組成物を意味するものとする。
【0025】
用語「生理学的に許容される媒体」とは、皮膚、粘膜および/または皮膚付属器と適合性がある媒体を意味するものとする。
【0026】
本発明の第2の主題は、色素沈着障害の処置および/または予防で使用するための医薬を調製するための、ルシノール(rucinol)およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物、および少なくとも1種のレチノイドの使用である。生理学的に許容される媒体中に、ルシノール(rucinol)およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物、および少なくとも1種のレチノイドを含む組成物の、色素沈着障害の処置および/または予防で使用するための医薬を調製するための使用も本発明の主題である。
【0027】
本発明の第3の主題は、生理学的に許容される媒体中に、ルシノール(rucinol)およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物を含み、さらにはレチノイドも含む化粧用組成物の、皮膚色素沈着を予防的および/または化粧的処置するための使用である。
【0028】
処置されるべき個人に本発明による組成物を投与することを含む、皮膚色素沈着の皮膚疾患的または化粧的処置方法も本発明の主題である。
【0029】
ルシノール(rucinol)、またはルシノール(lucinol)、あるいは別名として4-ブチルレゾルシノールは、式:
【0030】
【化1】

【0031】
で表される化合物であり、これは、色素沈着病態に関連する褐色斑を薄色化するための薬剤として知られ、販売されている(Iklen(登録商標)という製品)。
【0032】
用語「ルシノール塩(rucinol salt)」とは、特に、薬学的に許容される塩基、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア水溶液のような無機塩基、またはリシン、アルギニンまたはN-メチルグルカミンのような有機塩基と形成される塩だけでなく、ジオクチルアミン、アミノメチルプロパノールおよびステアリルアミンのような脂肪アミンと形成される塩も意味するものとする。
【0033】
好ましくは、ルシノール(rucinol)が用いられる。
【0034】
驚くべきこととして、本出願人は、ルシノール(rucinol)がレチノイドとの組み合わせにある場合、ルシノール(rucinol)の脱色素沈着活性が有意に改善されること、特に、先行技術の組成物よりも、またルシノール(rucinol)単独よりも、より迅速に脱色素沈着されることを実証した。特に、本出願人は、効果的な量のレチノイドは、効果的な量のルシノール(rucinol)と相乗で作用して、その皮膚脱色素沈着効果を及ぼすこと、また刺激などの副作用を有意に減少させることを可能にすることも見出した。
【0035】
レチノイドには皮膚疾患でさまざまな用途がある。しかしながら、この化合物には、それが全身的あるいは局所的に用いられるにせよ、相当な望まれていない副作用があることが知られている。この化合物は、特に、強い刺激を引き起こす。このようなレチノイドの欠点は、本発明による組成物の有利な効果が、予測できるものではなかったことを意味するものである。
【0036】
本発明の文脈で用いられ得るレチノイドとしては、特に、オールトランスレチノイン酸つまりトレチノイン、13-シス-レチノイン酸つまりイソトレチノイン、アシトレチン、アロチン酸、レチノール、アダパレン、タザロテン、レチンアルデヒド、エトレチナート、さらには特許出願WO2006/066978で保護されている化合物(例えば3"-tert-ブチル-4'-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-4"-ピロリジン-1-イル[1,1';3',1"]tert-フェニル-4カルボン酸)、特許出願WO2007/066041の化合物(2-ヒドロキシ-4-[3-ヒドロキシ-3-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフチル)-1-プロピニル]安息香酸またはそのエナンチオマーが包含されている)、特許出願WO2005/056510の化合物(4'-(4-イソプロピルアミノブトキシ)-3'-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ビフェニル-4-カルボン酸が包含されている)、4-{3-ヒドロキシ-3-[4-(2-エトキシエトキシ)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン2-イル]プロプ-1-イニル}安息香酸を包含している特許出願WO2005/056510の化合物、4-[2-(3-tert-ブチル-4-ジエチルアミノフェニル)-2-ヒドロキシイミノエトキシ]-2-ヒドロキシ安息香酸を包含している特許出願WO2005/037772の化合物が挙げられる。レチノールおよびアダパレンが特に好ましい。
【0037】
つまり、本発明による皮膚疾患用ならびに化粧用組成物つまり活性剤(i)および(ii)は、皮膚色素沈着を減少させること、そして特に皮膚の局所性色素沈着過剰を減少させることを可能にするものである。特に、それらが局所的に用いられた場合、それらは、それらが適用された皮膚部分の脱色素沈着を引き起こす。
【0038】
用語「脱色素沈着」とは、色素沈着した皮膚の部分のブリーチングを達成することを意味するものとする。この皮膚の部分が過剰色素沈着している場合、用語「脱色素沈着」は、そのような部分をブリーチングして、その近傍の皮膚と同じような色を達成することを意味するものとする。
【0039】
本発明の組成物つまり活性剤(i)および(ii)は、
- 黒皮症つまり肝斑、
- 黒子、老人性黒子、
- 雀卵斑つまりそばかす、
- 光線性角化症、
- 平面状色素沈着脂漏性いぼ、
- 炎症後色素沈着過剰症、特に感染症、アレルギー反応、外傷(例えば擦過傷、瘢痕または火傷)によって引き起こされた損傷、薬剤への反応、光傷害性発疹によるもの、ならびに炎症性皮膚疾患(例えば、挫瘡、湿疹、乾癬、酒さ、扁平苔癬、紅斑性狼瘡、アトピー性皮膚炎および皮膚リンパ腫)の後に続くもの;
- 母斑、
- 遺伝的に決定された色素沈着過剰症、
- 代謝由来の色素沈着過剰症
などの色素沈着障害の処置および/または予防に特に適している。
【0040】
本発明による化合物つまり活性剤(i)および(ii)には、化粧品分野にも(特に太陽光有害領域からの防護に)、皮膚および皮膚付属器の光誘発性または加齢性の老化を予防および/または処置するための用途がある。
【0041】
本発明はまた、ルシノール(rucinol)およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物、および少なくとも1種のレチノイドを含む組成物を皮膚および/またはその付属器に適用することを含む、皮膚をより見栄えの良くするためのおよび/または皮膚の表面外観を良くするための非治療的化粧的処置方法に関するものである。
【0042】
本発明による組成物は、有利には、組成物の全体重量に対して、少なくとも1種のレチノイドを0.0001%〜20%(重量)、およびルシノール(rucinol)およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物を0.0001%〜20%(重量)含む。好ましくは、本発明の組成物は、組成物の全体重量に対して、少なくとも1種のレチノイドを0.001%〜10%、およびルシノール(rucinol)またはその塩を0.01%〜15%、そしてより好ましくは少なくとも1種のレチノイドを0.1%〜5%(重量)、およびルシノール(rucinol)およびその塩から選択される少なくとも1種の化合物を0.1%〜5%(重量)含む。
【0043】
本発明の組成物は、ルシノール(rucinol)またはその塩およびレチノイドと適合性がある、医薬、皮膚疾患または化粧品分野で通常用いられているいずれの添加剤を含んでいてもよい。
【0044】
特に、封鎖剤、抗酸化剤、日焼け止め剤、保存剤(例えばDL-アルファ-トコフェロール)、増量剤、電解質、湿潤剤、着色剤や、慣用の無機または有機の塩基もしくは酸、芳香剤、精油、化粧用活性添加剤、保湿剤、ビタミン剤、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、皮膚緩和・防護剤(例えばアラントイン)、浸透促進剤、ジェル化剤、あるいはこれらの混合物が言及され得る。
【0045】
当然、当業者なら、このような、場合による付加的な化合物、および/またはその量を、本発明による組成物の有利な特性が損なわれない、または実質的に損なわれないようにして、選択するよう気を付けるものである。
【0046】
これらの添加剤は、組成物の全体重量に対して0〜20重量%の割合で組成物中に存在していてよい。
【0047】
封鎖剤の例としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ならびにその誘導体またはそれらの塩、ジヒドロキシエチルグリシン、クエン酸および酒石酸、あるいはこれらの混合物が言及され得る。
【0048】
保存剤の例としては、ベンザルコニウムクロリド、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ジアゾリジニル尿素およびパラベン、あるいはこれらの混合物が言及され得る。
【0049】
湿潤剤の例としては、グリセリンおよびソルビトールが言及され得る。
【0050】
本発明の組成物は、1または複数種の浸透促進剤を、組成物の全体重量に対して、0から20%までの範囲、より好ましくは0.6%から3%(重量)までの範囲の好ましい濃度で含有できる。浸透促進剤の中でも、以下に制限されないが、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールジペラルゴナート、ラウログリコールおよびエトキシジグリコールのような化合物が好ましくは用いられる。
【0051】
有利には、本発明による組成物は、1または複数種の界面活性剤を、全体重量の0から10%までの範囲、より好ましくは0.1%から2%までの範囲(重量で)の好ましい濃度で含有していてもよい。
【0052】
投与は、局所的、経腸的つまり経口的、非経口的または経眼的に行われ得る。
【0053】
これらの投与の経路の中では、局所投与が特に好ましい。用語「局所投与」とは、皮膚および/または粘膜への適用を意味するものとする。
【0054】
本発明の組成物は、局所適用に通常用いられるいずれのガレノス形態にあってもよく、特には液体、ペーストもしくは固体の形態、より詳細には軟膏、水性、水性アルコール性もしくは油性の溶液、ローション型のディスパージョン、水性、無水性もしくは親油性のジェル、パウダー、含浸パッド、合成洗浄材、ワイプ材、スプレー、パッチ、フォーム、スティック、シャンプー、圧迫ガーゼ、洗浄ベース材、乳液型の液状もしくは半液状の粘稠度を有するエマルジョン(脂肪相を水性相に(水中油型)またはその逆に(油中水型)分散させることによって得られる)、またはクリーム、ジェルもしくは軟膏型の軟質、半液状または固体状粘稠度の懸濁液もしくはエマルジョンの剤形にあってよい。制御放出用には、組成物は、マイクロスフェアもしくはナノスフェアまたは脂質もしくは高分子ベシクルの懸濁液の形態または高分子またはジェルパッチの剤形にあってもよい。局所適用するためのこの組成物は、イオン型および/または非イオン型の無水形態、水性形態、もしくはエマルジョン形態、または他にはマイクロエマルジョン、マイクロカプセル、マイクロ粒子もしくはベシクルのディスパージョンの形態にあり得る。
【0055】
有利には、組成物は、軟膏、クリーム、ローションまたはジェルの形態にある。
【0056】
エマルジョンの形態にある本発明による組成物の水性相は水を含み得るものであり、コーンフラワーウォーターのようなフローラルウォーターあるいは天然の湧水またはミネラルウォーター、例えばビッテル(Vittel)水、ビシーベイズン(Vichy basin)水、ユリアージ(Uriage)水、ラロッシュポゼ(la Roche Posay)水、ブールブール(Bourboule)水、オンギャンレバン(Enghien-les-Bains)水、サンジェルベレバン(Saint Gervais-les-Bains)水、ネリレバン(Neris-les-Bain)水、アルバールレバン(Allevard-les-Bains)水、ディーニュ(Digne)水、マジエール(Maizieres)水、ネイラックレバン(Neyrac-les-Bains)水、ロンルソーニエ(Lons-le-Saunier)水、オーボン(Eaux-Bonnes)水、ロシュフォール(Rochefort)水、サンクリスト(Saint Christau)水、レヒュマード(Les Fumades)水、さらにはテルシレバン(Tercis-les-bains)水、アヴェンヌ(Aveve)水、エクスレバン(Aix-les-Bains)水を含み得る。
【0057】
そのような水性相は、組成物の全体重量に対して10%〜90%(重量)の含有量、好ましくは20%〜80%(重量)の含有量で存在し得る。
【0058】
本発明による組成物は、0.1%から15%までの範囲、より好ましくは0.5%から5%までの範囲の好ましい濃度でジェル化剤を含有し得る。
【0059】
ジェル化剤の非限定的な例としては、Seppic(商標)社から商品名Simulgel(商標)600で販売されているナトリウムアクリロイルジメチルタウラートコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80混合物、ポリアクリルアミド/イソパラフィンC13-14/ラウレス-7混合物(例えばSeppic(商標)社から商品名Sepigel 305(商標)で販売されている製品)のようなポリアクリルアミド系のジェル化剤、商品名Aculyn 44(商標)で販売されているPEG-150/デシル/SMDIコポリマー(要素成分として、少なくとも、150または180molのエチレンオキシドを含むポリエチレングリコール、デシルアルコール、およびメチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアナート)(SMDI)を含む重縮合物、プロピレングリコール(39%)と水(26%)の混合物中に35%(重量)で)のような疎水鎖にカップリングされたアクリルポリマー系のジェル化剤、商品名Structure Solanace(商標)で販売されている変性ジャガイモデンプンのような変性デンプン系のジェル化剤、またはそれらの混合物が言及され得る。
【0060】
(製剤の例)
この実施例では、本発明による組成物についての各種の具体的な製剤を例示した。
【0061】
(A-経口投与)
(a)0.2g錠剤
- ルシノール(rucinol) 0.001g
- アダパレン 0.001g
- デンプン 0.114g
- 二カルシウムホスファート 0.020g
- シリカ 0.020g
- ラクトース 0.030g
- タルク 0.010g
- ステアリン酸マグネシウム 0.005g
(b)5mlバイアル中経口懸濁液
- ルシノール(rucinol) 0.001g
- レチノール 0.001g
- グリセリン 0.500g
- 70%ソルビトール 0.500g
- ナトリウムサッカリナート 0.010g
- メチルパラ-ヒドロキシベンゾアート 0.040g
- 香味剤 十分量
- 精製水 十分量5ml
(B-非経口投与)
- ルシノール(rucinol) 0.002g
- アダパレン 0.001g
- エチルオレアート 十分量10g
(C-局所投与)
(a)軟膏
- ルシノール(rucinol) 0.010g
- アダパレン 0.010g
- イソプロピルミリスタート 81.700g
- 流動液体ワセリン 9.100g
- シリカ(Degussaから販売の「Aerosil 200」) 9.180g
(b)軟膏
- ルシノール(rucinol) 0.300g
- レチノール 0.100g
- Codex白色ワセリン 十分量100g
(c)非イオン水/油型クリーム
- ルシノール(rucinol) 0.100g
- アダパレン 0.100g
- 乳化ラノリンアルコールと、ワックスと、油との混合物(BDFから販売の「無水オイセリン」) 39.900g
- メチルパラ-ヒドロキシベンゾアート 0.075g
- プロピルパラ-ヒドロキシベンゾアート 0.075g
- 滅菌脱塩水 十分量100g
(d)ローション
- ルシノール(rucinol) 0.050g
- タザロテン 0.050g
- ポリエチレングリコール(PEG400) 69.900g
- 95%エタノール 30.000g
(e)疎水性軟膏
- ルシノール(rucinol) 0.250g
- アダパレン 0.150g
- イソプロピルミリスタート 36.400g
- シリコーンオイル(Rhone-Poulenc社から販売の「Rhodorsil 47 V 300」)
36.400g
- 蜜蝋 13.600g
- シリコーンオイル(Goldschmidt社から販売の「Abil 300 000 cst」)
十分量100g
(f)非イオン油/水型クリーム
- ルシノール(rucinol) 1.000g
- レチノール 1.000g
- セチルアルコール 4.000g
- グリセリルモノステアラート 2.500g
- PEG50 ステアラート 2.500g
- シアバター 9.200g
- プロピレングリコール 2.000g
- メチルパラ-ヒドロキシベンゾアート 0.075g
- プロピルパラ-ヒドロキシベンゾアート 0.075g
- 滅菌脱塩水 十分量100g。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒体中に、(i)ルシノールおよびその塩から選択される少なくとも1種の化合物、および(ii)少なくとも1種のレチノイドを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
レチノイドが、トレチノイン、イソトレチノイン、アシトレチン、アロチン酸、レチノール、アダパレン、タザロテン、レチンアルデヒド、エトレチナート、3"-tert-ブチル-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-4"-ピロリジン-1-イル-[1,1';3',1"]tert-フェニル-4-カルボン酸、2-ヒドロキシ-4-[3-ヒドロキシ-3-(5,6,7,8-テトラヒドロ-5,5,8,8-テトラメチル-2-ナフチル)-1-プロピニル]安息香酸またはそのエナンチオマー、4'-(4-イソプロピルアミノブトキシ)-3'-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ビフェニル-4-カルボン酸、4-{3-ヒドロキシ-3-[4-(2-エトキシエトキシ)-5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル]-プロプ-1-イニル}安息香酸または4-[2-(3-tert-ブチル-4-ジエチルアミノフェニル)-2-ヒドロキシイミノエトキシ]-2-ヒドロキシ安息香酸から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
レチノイドが、アダパレンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
レチノイドが、レチノールであることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
ルシノールおよびその塩から選択される少なくとも1種の化合物を0.0001%〜20%(重量)、および少なくとも1種のレチノイドを0.0001%〜20%(重量)含むことを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の組成物。
【請求項6】
ルシノールまたはその塩を0.01%〜15%(重量)、および少なくとも1種のレチノイドを0.001%〜10%(重量)含むことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
ルシノールおよびその塩から選択される少なくとも1種の化合物を0.1%〜5%(重量)、および少なくとも1種のレチノイドを0.1%〜5%(重量)含むことを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の組成物。
【請求項8】
局所投与に適していることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の組成物。
【請求項9】
軟膏、水溶液、ローション、ジェル、パウダー、含浸パッド、合成洗浄材、ワイプ材、スプレー、パッチ、フォーム、スティック、シャンプー、圧迫ガーゼ、洗浄ベース材、エマルジョン、クリーム、化粧クリーム、マイクロスフェアまたはナノスフェアの懸濁液、または脂質もしくは高分子ベシクルの形態にあることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
色素沈着障害の予防および/または処置で使用するための医薬を調製するための、請求項1から9の一項に記載の、ルシノールおよびその塩から選択される少なくとも1種の化合物、および少なくとも1種のレチノイドの使用。
【請求項11】
色素沈着障害が、
黒皮症、
黒子、老人性黒子、
雀卵斑、
光線性角化症、
平面状色素沈着脂漏性いぼ、
炎症後色素沈着過剰症、特に感染症、アレルギー反応、外傷(擦過傷、瘢痕、火傷)、薬剤への反応、光傷害性発疹によるもの、または炎症性皮膚疾患によるもの;
母斑、
遺伝的に決定された色素沈着過剰症、
代謝由来の色素沈着過剰症
から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
皮膚および皮膚付属器の光誘発性または加齢性の老化を予防および/または処置するための、請求項1から9の一項に記載の組成物の化粧品としての使用。

【公表番号】特表2010−526124(P2010−526124A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506973(P2010−506973)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050731
【国際公開番号】WO2008/148968
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】