説明

皮膚科学的なアレルギー状態の治療

[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノンとしての化合物を使用する、皮膚科学的なアレルギー状態についての治療を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、皮膚科学的なアレルギー状態に罹患する、又は罹患しやすい、ヒト及び非ヒト患者についての治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肥満細胞媒介炎症状態は、増大する公衆衛生の関心事である。トリプターゼは、肥満細胞分泌顆粒中に貯蔵され、ヒト肥満細胞の主要なプロテアーゼである。トリプターゼは、血管拡張性及び気管支拡張性神経ペプチドの分解を含む様々な生物学的プロセスに関与している(非特許文献1〜3)。
【0003】
結果として、トリプターゼ阻害剤は、抗炎症剤として有用であり得(非特許文献4)、アトピー性皮膚炎などの皮膚科学的なアレルギー状態の治療又は予防において有用であり得る(非特許文献5)。
【0004】
このような化合物は、トリプターゼの阻害剤の投与によって改善され得る状態、例えば、肥満細胞媒介炎症状態、炎症、及び血管拡張性神経ペプチドの分解に関連する疾患又は障害に罹患する患者の治療において容易に有用性を有するべきであり、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)代謝について減少した責任を有するべきである。
【0005】
式Iの化合物(化合物A)は、それぞれ、38及び920nMの組換え酵素に対するKiを有するヒトβ−トリプターゼ及びマウスMCPT−6(ヒトβ−トリプターゼのマウスオルソログ)の選択的かつ可逆的な阻害剤である。
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Caughey, et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988, 244, pages 133-137
【非特許文献2】Franconi, et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988, 248, pages 947-951
【非特許文献3】Tam, et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., 1990, 3, pages 27-32
【非特許文献4】K Rice, P.A. Sprengler, Current Opinion in Drug Discovery and Development, 1999, 2(5), pages 463-474
【非特許文献5】A. Jarvikallio et al, Br. J. Dermatol., 1997, 136, pages 871-877
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明者らは、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩が炎症性腸疾患の治療に有用であることを今回見出した。
【0008】
即ち、本発明は、式Iによって表される化合物又はその塩を有効成分として含有する、皮膚科学的なアレルギー状態、特にアトピー性皮膚炎についての予防又は治療薬に関する。
【0009】
薬学的有効量の下記の式Iによって表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する工程を含む、哺乳動物における皮膚科学的なアレルギー状態、特にアトピー性皮膚炎の治療のための方法も開示される。
【化2】

【0010】
この化合物は、[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノンとしても公知である。
【0011】
本発明は、皮膚科学的なアレルギー状態について、特にアトピー性皮膚炎について、動物モデルにおいて活性であると今回分かった、式Iの化合物に関する。
【0012】
本発明の別の局面は、皮膚科学的なアレルギー状態を治療するための薬学的組成物である。
【0013】
本発明の別の局面は、アトピー性皮膚炎についての治療である。
【0014】
本発明のさらに別の局面は、一般的にβ−トリプターゼ阻害剤で患者を治療することに
よるアトピー性皮膚炎についての治療である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
従って、一局面において、本発明は、[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノン又は化合物Aとしても公知であり得る、一般式Iの化合物を含む薬学的組成物に関する。
【0016】
本明細書において、用語「本発明の化合物」及び同等の表現は、上記に記載されるような一般式(I)の化合物を包含するように意味され、この表現は、文脈がそのように許容する場合、エステルプロドラッグ、薬学的に許容される塩、及び溶媒和物、例えば、水和物を含む。同様に、中間体への参照は、それら自体が特許請求されるか否かに関わらず、文脈がそのように許容する場合、それらの塩及び溶媒和物を包含するように意味される。明瞭化のために、文脈がそのように許容する特別の場合が本文中に時には示されるが、これらの場合は、単に例示的であり、文脈がそのように許容する他の場合を除外するようには意図されない。
【0017】
作製詳細
式Iの化合物は、公知の方法の適用又は適合によって作製され得、これによって、以前使用されたか又は文献に記載される方法、例えば、R.C.Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH publishers, 1989に記載されるか、又は本明細書に記載されるものが意味される。
【0018】
以下に記載の反応において、反応におけるそれらの望ましくない関与を回避するために、反応性官能基、例えば、アミノ基を保護する必要がある場合がある。通常の保護基が、標準的技法に従って使用され得る;例えば、T.W. Greene and P.G.M.Wuts, “Protective Groups in Organic Chemistry” John Wiley and Sons, 1991を参照のこと。
【0019】
特に、式Iの化合物は、スキーム1〜2によって示されるように作製され得る。
【0020】
例えば、本発明の化合物は、その作製が収束合成から構成されてなるアキラルな化合物である。その安息香酸塩としての、本発明の化合物は、下記のスキームに示されるように作製される。
【0021】
【化3】

【0022】
(i) クロロギ酸エチル, ピリジン, THF, 0℃, 100%; (ii) a: sec−BuLi, THF, −78℃, b: I2, THF, −78℃, 52−68%; (iii) TMS−アセチレン, TEA, CuI, Pd(PPh3)2Cl2, 脱気THF, 60℃, 93%; (iv) KOH, t−BuOH, 70℃, 91%; (v) 粉末KOH, 2−メトキシエチルブロミド, DMSO, rt, 95%; (vi) TFAA, DMF, 40℃, 89%; (vii) 5M NaOH, MeOH, 85℃, 96%; (viii) 2,2,2−トリフルオロ−N−(フルオロ−3−ピペリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド塩酸塩, EDCI, TEA, CH2Cl2 (DCM), rt, 99%; (ix) a: K2CO3, MeOH/H2O, b: Et2O中1M HCl, 90%
【0023】
化合物1は、ピリジンなどの適切な塩基の存在下でクロロギ酸エチルなどのアミノ保護剤でアミノ基を保護することによって、化合物2へ変換され、保護された化合物2が得られる。
【0024】
化合物2は、三段階プロセスで化合物5へ変換される。化合物2は、第2級ブチルリチウムなどの強塩基と2とを反応させ、アニオンを形成させ、これを分子のヨウ素などのヨウ化物源と反応させることによって、カルバミン酸エステルの隣の位置でヨウ素化され、化合物3が得られる。次いで、化合物3は、トリエチルアミンなどの塩基及びトリメチルシリルアセチレンの存在下でのヨウ化銅(I)及びビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリドなどの触媒条件を使用して、アセチレン化合物4へ変換される。化合物4は、水酸化カリウムなどの強塩基を使用し、加熱し、環化され、インドール化合物5が得られる。
【0025】
化合物5は、室温で、ジメチルスルホキシドなどの双極性非プロトン性溶媒中、水酸化カリウムなどの強塩基の存在下で、そのインドール窒素をハロゲン化アルキルでアルキル化することによって、化合物6へ変換され、化合物6が得られる。
【0026】
化合物6は、二段階プロセスで化合物8へ変換される。最初に、化合物6は、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒の存在下で化合物6を無水トリフルオロ酢酸で処理し、加熱することによって、化合物7へ変換される。化合物7は、水酸化ナトリウムなどの強塩基で処理され、その3位に酸官能を有する化合物8が得られる。
【0027】
化合物8は、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中においてEDCIなどの酸カップリング試薬及びトリエチルアミンなどの有機塩基の存在下で酸8と2,2,2−トリフルオロ−N−(フルオロ−3−ピペリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド塩酸塩(化合物14)とを反応させることによって、アミド9へ変換される。
【0028】
化合物9は、メタノール/水などの溶媒混合物中での炭酸カリウムなどの弱塩基での処理でN−ベンジルトリフルオロアセトアミドを脱保護することによって、化合物10へ変換される。塩酸塩は、エーテルなどの極性有機溶媒の存在下で形成され得、式Iにおける([4−(5−アミノメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−メチル−1H−インドール−3−イル]−メタノン)の塩酸塩である化合物10が得られる。
【0029】
このスキームの反応は以下の通りである。
【0030】
工程A:(2−フルオロ−5−トリフルオロメトキシ−フェニル)−カルバミン酸エチルエステル(2)の作製
【化4】

0℃でTHF (500 mL)中の1 (50.72 g, 0.26 mol)及びピリジン (27.3 mL, 0.34 mol)の溶液へ、30分間にわたってクロロギ酸エチル (32.2 mL, 0.39 mol)を滴下する。1時間後、LC/MS及びTLCは両方とも、反応が完了したことを示す。反応混合物をH2O及びEtOAcに分配する。2つの層を分離し、有機層を1 M HCl、H2O、及び鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮する。粗製物質を、溶離剤としてヘプタン/EtOAc (95/5〜70/30)を用いてシリカゲル上で精製し、透明無色液体として生成物2が69.23 g (99%)得られる。1H NMR (CDCl3) δ 8.11 (br s, 1H), 7.07 (dd, J = 9.1, 9.3 Hz, 1H), 7.00−6.80 (m, 2H), 4.27 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.33 (t, J = 7.1 Hz, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ −57.84 (s, 3F), −134.01 (br s, 1F); MS 309 (M+CH3CN+1, 100%), 268 (M+1)。
【0031】
工程B:(6−フルオロ−2−ヨード−3−トリフルオロメトキシ−フェニル)−カルバミン酸エチルエステル(3)の作製
【化5】

−78℃でTHF (180 mL)中の2 (31.34 g, 117.2 mmol)の溶液へ、sec−BuLi (シクロヘキサン中1.4 M, 200 mL, 280 mmol)を1時間にわたって滴下する。20分後、THF (150 mL)中のI2 (44.6 g, 175.8 mmol)の溶液を、30分間にわたって滴下する。次いで、この混合物を−78℃で30分間撹拌する。飽和NH4Clを添加し、冷却バスを除去する。反応混合物をH2O及びEtOAcに分配する。2つの層を分離し、有機層を10% Na2SO3、H2O及び鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮する。残留物をDCM (50 mL)中に懸濁し、ヘプタン (300 mL)を添加する。得られた懸濁液からの白色粉末3 (18.1 g, 39%)を、吸引濾過によって集め、空気乾燥する。濾液を真空下で濃縮し、残留物をヘプタン (200 mL)中に懸濁する。3 (3.8 g, 8%)の別のバッチを吸引濾過によって集め、空気乾燥する。シリカゲルクロマトグラフィーにより濾液を精製することによって、さらなる生成物を得ることができる。1H NMR (CDCl3) δ 7.30−17.10 (m, 2H), 6.16 (br s, 1H), 4.26 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.32 (t, J = 7.1 Hz, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ −56.90 (s, 3F), −114.35 (d, J = 8.5 Hz, 1F); MS 394 (M+1, 100%), 374, 364, 321, 267。
【0032】
工程C:(6−フルオロ−3−トリフルオロメトキシ−2−トリメチルシラニルエチニル−フェニル)−カルバミン酸エチルエステル(4)の作製
【化6】

脱気したTHF (180 mL)中の3 (18.1 g, 45.9 mmol)、Et3N (12.8 mL, 91.9 mmol)、Pd(PPh)2Cl2 (1.6 g, 5% mol)、CuI (0.7 g, 8% mol)、及びTMS−アセチレン (19.6 mL, 137.8 mmol)の混合物を60℃で一晩加熱する。混合物rtへ冷却し、次いでH2O及びEtOAcに分配する。この混合物をセライトによって濾過し、不溶性物質を除去する。濾液の2つの層を分離し、有機層をH2O及び鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮する。粗製物質を、溶離剤としてヘプタン/EtOAcを用いてシリカゲルで精製し、ベージュ色の固体として生成物4が15.6 g (93%)得られる。1H NMR (CDCl3) δ 7.15−7.00 (m, 2H), 6.41 (br s, 1H), 4.26 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.31 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.27 (s, 9H); 19F NMR (CDCl3) δ −57.59 (s, 3F), −118.15 (s, 1F); MS 364 (M+1, 100%)。
【0033】
工程D:7−フルオロ−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール(5)の作製
【化7】

脱気したt−BuOH (300 mL)中の4 (28.9 g, 79.6 mmol)及びKOH (35.7 g, 636.7 mmol)の混合物を、70℃で一晩加熱する。LC/MSは、反応が完了したことを示す。混合物をrtへ冷却し、次いで、H2O及びEt2Oに分配する。2つの層を分離し、水層をEt2O (2X)で抽出する。合わせた有機層をH2O及び鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮する。粗製物質を、溶離剤としてヘプタン/EtOAc (100/0〜60/40)を用いてシリカゲル上で精製し、黄色液体として5が16 g (91%)得られる。1H NMR (CDCl3) δ 8.47 (br s, 1H), 7.35−7.20 (m, 1H), 6.95−6.80 (m, 2H), 6.68 (d, J = 2.5 Hz, 1H); 19F NMR (CDCl3) δ −57.63 (s, 3F), −136.10 (d, J = 8.5 Hz, 1F); MS 220 (M+1, 100%), 200。
【0034】
工程E:7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール(6)の作製
【化8】

DMSO (150 mL)中の5 (16 g, 72.8 mmol)及び粉末KOH (20.4 g, 364.2 mmol)の混合物をrtで10分間撹拌する。2−メトキシエチルブロミド (10.3 mL, 109.2 mmol)を添加する。この混合物をrtで一晩撹拌する。LC/MSは、反応が完了したことを示す。混合物をH2O及びEt2Oに分配する。2つの層を分離し、水層をEt2O (2X)で抽出する。合わせた有機層をH2O及び鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮する。粗製物質を、溶離剤としてヘプタン/EtOAc (100/0〜50/50)を用いてシリカゲル上で精製し、黄色液体として6が19.3 g (95%)得られる。1H NMR (CDCl3) δ 7.15 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 6.90−6.75 (m, 2H), 6.56 (t, J = 2.5 Hz, 1 H), 3.72 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.72 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.31 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ −57.54 (s, 3F), −137.00 (d, J = 11.3 Hz, 1F); MS 278 (M+1, 100%)。
【0035】
工程F:2,2,2−トリフルオロ−1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]−エタノン(7)の作製
【化9】

DMF (135 mL)中の6 (19.3 g, 69.7 mmol)の混合物へ、TFAA (26.2 mL, 188.2 mmol)を添加する。この混合物を40℃で一晩加熱する。TLCは、反応が完了したことを示す。混合物をrtへ冷却し、次いで、H2O及びEt2Oに分配する。2つの層を分離し、有機層を飽和NaHCO3 (2X)、H2O及び鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮する。粗製物質を、溶離剤としてヘプタン/EtOAc (100/0〜50/50)を用いてシリカゲル上で精製し、淡緑色固体として7が23.4 g (89%)得られる。1H NMR (CDCl3) δ 8.03 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 7.20−6.95 (m, 2H), 4.54 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.76 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.33 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ −57.74 (s, 3F), −71.10 (s, 3F), −134.95 (d, J = 11.5 Hz, 1F); MS 374 (M+1, 100%)。
【0036】
工程G:7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボン酸(8)の作製
【化10】

MeOH (100 mL)及び5 M NaOH (100 mL)中の7 (23.4 g, 62.6 mmol)の混合物を80℃で一晩加熱する。LC/MSは反応が完了していることを示す。反応混合物をrtへ冷却し、次いで真空下で濃縮し、MeOHの大部分を除去する。残留物をH2Oに溶解し、次いでEt2Oで1回洗浄する。水層を濃HClでpH約2へ徐々に酸性化する。酸性化懸濁液をEt2Oで抽出し、有機抽出物をH2O及び鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮する。残留物をDCM/ヘプタン (10/90)に懸濁する。懸濁液中の白色粉末8 (19.4 g, 96%)を吸引濾過によって集め、空気乾燥する。1H NMR (CDCl3) δ 8.02 (s, 1H), 7.15−7.05 (m, 1H), 7.00−6.90 (m, 1H), 4.49 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.75 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.33 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ −57.74 (s, 3F), −135.65 (d, J = 11.3 Hz, 1F); MS 363 (M+CH3CN+1), 322 (M+1, 100%)。
【0037】
工程H:2,2,2−トリフルオロ−N−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−アセトアミド(9)の作製
【化11】

CH2Cl2中の8 (19.1 g, 59.6 mmol)、Et3N (24.8 mL, 177.9 mmol)、2,2,2−トリフルオロ−N−(4−フルオロ−3−ピペリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド塩酸塩 (11, 26.4 g, 77.5 mmol) (14)、及びEDCI (17.1 g, 89.3 mmol)の混合物をrtで一晩撹拌する。TLC及びLC/MSは両方とも、反応が完了したことを示す。混合物をH2O及びCH2Cl2に分配する。2つの層を分離し、有機層を鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮する。粗製物質を、溶離剤としてヘプタン/EtOAc (40/60〜0/100)を用いてシリカゲル上で精製し、白色フォームとして9 (36 g, 99%)が得られる。1H NMR (CDCl3) δ 7.37 (s, 1H), 7.20−7.10 (m, 2H), 7.10−6.85 (m, 4H), 4.95 (br s, 1H), 4.60−4.35 (m, 4H), 3.90 (br s, 1 H), 3.73 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.25−2.70 (m, 3H), 2.05−1.50(m, 4H); 19F NMR (CDCl3) δ −57.54 (s, 3F), −75.39 (s, 3F), −119.31 (s, 1F), −134.96 (d, J = 11.3 Hz, 1F); MS 608 (M+1, 100%)。
【0038】
工程I:[4−(5−アミノメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]−メタノン塩酸塩(10)の作製
【化12】

MeOH (400 mL)中の9 (36 g, 59.3 mmol)の混合物へ、水性K2CO3 (65.5 g, 474 mmol、120 mL H2O中に溶解)を添加する。この混合物をrtで一晩撹拌する。LC/MSは、反応が完了したことを示す。反応混合物を真空下で濃縮し、メタノールの大部分を除去する。残留物をH2O及びEtOAcに分配する。2つの層を分離し、有機層をH2O及び鹹水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮し、透明無色粘着性ゴムとして10が27.5 g (90%)得られる。1H NMR (CDCl3) δ 7.42 (s, 1H), 7.25−7.10 (m, 2H), 7.05−6.85 (m, 3H), 4.92 (br s, 1H), 4.46 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.86 (br s, 3 H), 3.74 (t, J = 5.1 Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.30−2.75 (m, 3H), 2.24 (br s, 2H), 2.05−1.55 (m, 4H); 19F NMR (CDCl3) δ −57.52 (s, 3F), −121.64 (s, 1F), −136.03 (d, J = 11.3 Hz, 1F); MS 512 (M+1, 100%)。
【0039】
Et2O (30 mL)中の上記物質(2.856 g, 5.59 mmol)の溶液へ、2 N HCl/Et2O (3 mL, 6 mmol)を滴下する。固体沈殿物が生じ、エーテル溶液をデカンテーションする。固体を追加のEt2Oで洗浄し、次いでデカンテーションする。残りの淡黄色固体を暖かいMeOH (10 mL)に溶解し、次いで、溶液が僅かに曇るまで、Et2O (50 mL)を添加する。約2時間後、固体沈殿物が現れる。追加のEt2O (5−10 mL)を添加し、次いで懸濁液を冷蔵庫中に一晩置く。白色結晶性生成物(2.475 g, 4.52 mmol)を集め、高真空下で4時間乾燥させる。1H NMR (DMSO−d6) δ 8.32 (br s, 2H), 7.71 (s, 1H), 7.43 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 7.36 (m, 1H), 7.26−7.20 (m, 1H), 7.12−7.08 (m, 2H), 4.49 (t, J = 5.1Hz, 2H), 4.00 (s, 2H), 3.71 (t, J = 5.1Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.21−3.07 (m, 3H), 2.99 (br s, 2H), 1.80−1.62 (m, 4H); 19F NMR (DMSO−d6) δ −56.79 (s, 3F), −119.34 (s, 1F), −134.53 (d, J = 9.6 Hz, 1F); MS 512 (M+1, 100%). CHN: 理論値: C 53.06%, H 5.16%, N 7.42% (1.0 H2Oとして計算). 実測値: C 53.03%, H 4.82%, N 7.22, Cl 6.64%。
【0040】
[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノンベンゾアート(10 安息香酸塩)
[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノン(1320 g, 2.58 mol)を含有すると想定されるトルエン溶液を既に含有する20−Lガラスジャケット付反応器を撹拌し、61℃へ加熱する。安息香酸(316 g, 2.58 mol)を添加し、全ての安息香酸が溶解した後に、シクロヘキサン(6.04 L)を添加する。反応を77℃へ加熱し、ここで、それに以前のバッチからの[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノンベンゾアート(0.100 g)を接種する。結晶化は77℃で進行し、15分後、反応を−10℃/時間のランプで冷却する。反応が61℃に達すると、撹拌及び冷却を両方とも停止し、反応をrtへ冷却させる。一晩静置した後、撹拌を再開し、生成物を濾過によって集める。トルエン(3 L)及びシクロヘキサン(1.5 L)から調製した溶媒混合物で濾過ケーキを洗浄する。吸引により部分的に乾燥させた後、生成物を乾燥オーブンへ移し、ここで、それを40℃で乾燥させ、無色固体として[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノンベンゾアートが得られる:1408.8 g (86%), mp = 156−159℃。元素分析: C25H26F5N3O3.C7H6O2についての計算値: C, 60.66; H, 5.09; N, 6.63。実測値: C, 60.44; H, 5.01; N, 6.87。赤外線スペクトルの特徴(cm−1): 1612, 1526, 1511, 1501, 1394, 1362, 1256, 1232, 1211, 1158, 1117, 999, 826。
【0041】
【化13】

【0042】
3−ブロモ−4−フルオロベンジルアミン塩酸塩(Wychem)を、イソプロピルアルコールの少なくともそれの沸点を有するアルコール性溶媒、例えば、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコールなど;極性非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなど、エーテル溶媒、例えば、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなど中において、ピリジン−4−ボロン酸(Clariant又はBoron Molecular)と反応させる。約70℃からSuzukiカップリング反応混合物の沸点の温度までの十分な加熱を伴う、1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン複合体(PdCl2dppf−CH2Cl2)、Pd(PPh3)4、PdCl2(PPh3)2、Pd(dtbpf)Cl2などの適切な触媒の存在下での、上述の溶媒のいずれかと水との混合物中の化合物12及び化合物13は、ピリジンを提供する。
【0043】
塩酸での処理が続く、約−20〜約30℃のトリフルオロアセチル化反応温度での、トリフルオロアセチル化溶媒、例えば、エステル溶媒、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなど;芳香族炭化水素溶媒、例えば、トルエンなど;塩素化炭化水素溶媒、例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンなど中における、無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロアセチルフルオリド、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニルなどの適切なトリフルオロアセチル化剤を使用してのトリフルオロアセチル化条件下で、このピリジンをトリフルオロアセトアミド化合物2,2,2−トリフルオロ−N−(4−フルオロ−3−ピリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド塩酸塩へ変換させる。
【0044】
約10〜約60℃の水素化反応温度、及び約20〜約1000 psiの水素化圧での、水素化反応溶媒、例えば、アルコール溶媒、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなど;又は酢酸;又はアルコール溶媒又は酢酸と水との混合物中における、HClなどの無機酸又は酢酸などの有機酸を添加して又は添加せずに、水素化触媒手段PtO2、Pd/C、Pd(OH)2、Rh/Cなどの存在下での水素での処理によって、2,2,2−トリフルオロ−N−(4−フルオロ−3−ピリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド塩酸塩を水素化条件下で化合物14へ還元する。
【0045】
本発明の化合物は塩基性であり、このような化合物は、遊離塩基の形態で又はその薬学的に許容される酸付加塩の形態で有用である。
【0046】
酸付加塩は、使用についてより都合の良い形態であり得;実際、塩形態の使用は、遊離塩基形態の使用に本質的に等しい。酸付加塩を作製するために使用され得る酸としては、遊離塩基と組み合わされた場合、薬学的に許容される塩、即ち、そのアニオンが塩の薬学的用量で患者に対して非毒性あり、その結果、遊離塩基に固有の有利な阻害効果が、アニオンに起因する副作用によって無効にされない、塩を生成するものが好ましくは挙げられる。前記塩基性化合物の薬学的に許容される塩が好ましいが、例えば、精製及び同定の目的のためにのみ塩が形成される場合、又は、イオン交換手順による薬学的に許容される塩の作製においてそれが中間体として使用される場合のように、たとえ特定の塩それ自体が中間生成物としてのみ望ましいとしても、全ての酸付加塩が遊離塩基形態の供給源として有用である。本発明の範囲内の薬学的に許容される塩としては、鉱酸及び有機酸から誘導されるものが挙げられ、ヒドロハライド(hydrohalide)、例えば、塩酸塩及び臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メチレン−ビス−b−ヒドロキシナフトエ酸塩、安息香酸塩、トシル酸塩、ゲンチシン酸塩、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩及びキナ酸塩が挙げられる。より特定の塩は、塩酸塩である式Iの化合物の塩である。本発明の別の特定の塩は、式Iの化合物のフマル酸塩である。本発明の好ましい薬学的に許容される塩は、式Iの化合物の安息香酸塩である。
【0047】
活性化合物としてそれ自体有用であるのと同様に、本発明の化合物の塩は、例えば、当業者に周知の技術による塩と親化合物、副生成物及び/又は出発物質との溶解度差の利用による、化合物の精製の目的について有用である。
【0048】
本発明のさらなる特徴によれば、本発明の化合物の酸付加塩は、公知の方法の適用又は適合による、遊離塩基と適切な酸との反応によって作製され得る。例えば、本発明の化合物の酸付加塩は、適切な酸を含有する水又は水性アルコール溶液又は他の適切な溶媒に遊離塩基を溶解し、溶液を蒸発させることにより塩を単離することによって、又は有機溶媒中において遊離塩基及び酸を反応させることによって、作製され得、この場合、塩は、直接分離するか、又は溶液の濃縮によって得ることができる。
【0049】
本発明の化合物の酸付加塩は、公知の方法の適用又は適合により塩から再生され得る。例えば、本発明の親化合物は、アルカリ、例えば、重炭酸ナトリウム水溶液又はアンモニア水溶液での処理によってそれらの酸付加塩から再生され得る。
【0050】
特に、化合物Aのモノ安息香酸塩が好ましい。
【0051】
出発物質及び中間体は、公知の方法、例えば、参照実施例に記載される方法又はそれらの明白な化学的等価物の適用又は適合によって作製され得る。
【0052】
本発明はまた、上記スキーム1におけるいくつかの中間体に関し、従って、それらの作製について本明細書に記載のプロセスは、本発明のさらなる特徴を構成する。
【0053】
略語リスト
上記で使用される場合、及び本発明の説明の全体にわたって、下記の略語は、特に指定されない限り、下記の意味を有するように理解される:
ACN アセトニトリル
AIBN 2,2'−アゾビスイソブチロニトリル
bid 1日2回
BOC又はBoc カルバミン酸tert−ブチル
BOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム
n−Bu3SnH トリ−n−ブチルスズヒドリド
t−Bu tert−ブチル
Cbz カルバミン酸ベンジル
PTC 相間移動触媒
DAST (ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(Et2NSF3
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン(CH2CI2
DIC 1,3−ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン
DMP試薬 デス−マーチンペルヨージナン試薬
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EA 元素分析
EDCI 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl
eq 当量
Et エチル
Et2O ジエチルエーテル
EtOH エタノール
EtOAc 酢酸エチル
FMOC 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOAt 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOSu N−ヒドロキシスクシンアミド
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LAH リチウムアルミニウム無水物
Me メチル
MeI ヨウ化メチル
MeOH メタノール
MeOC(O) クロロギ酸メチル
MOMCI メトキシメチルクロリド
MOM メトキシメチル
MS 質量分析
NaBH4 水素化ホウ素ナトリウム
Na2C4H4O6 酒石酸ナトリウム
NMR 核磁気共鳴
P ポリマー結合
PO 経口投与当たり
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
TBD 1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デカ−5−エン
RP−HPLC 逆相高圧液体クロマトグラフィー
TBSCI tert−ブチルジメチルシリルクロリド
TCA トリクロロ酢酸
TFA トリフルオロ酢酸
Tf2O トリフラート無水物
THF テトラヒドロフラン
THP テトラヒドロピラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0054】
定義
上記で使用される場合、及び本発明の説明の全体にわたって、下記の用語は、特に指定されない限り、下記の意味を有すると理解される:
【0055】
「酸バイオアイスター(acid bioisostere)」は、カルボキシ基と類似の生物学的性質を広く生じる化学的及び物理的類似性を有する基を意味する(Lipinski, Annual Reports
in Medicinal Chemistry, “Bioisosterism In Drug Design” 21, 283 (1986); Yun, Hwahak Sekye, “Application of Bioisosterism To New Drug Design” 33, 576−579, (1933); Zhao, Huaxue Tongbao, “Bioisosteric Replacement And Development Of Lead Compounds In Drug Design” 34−38, (1995); Graham, Theochem, “Theoretical Studies Applied To Drug Design ab initio Electronic Distributions In Bioisosteres” 343, 105−109, (1995)を参照のこと)。例示的な酸バイオアイスターとしては、−C(O)−NHOH、−C(O)−CH2OH、−C(O)−CH2SH、−C(O)−NH−CN、スルホ、ホスホノ、アルキルスルホニルカルバモイル、テトラゾリル、アリールスルホニルカルバモイル、N−メトキシカルバモイル、ヘテロアリールスルホニルカルバモイル、3−ヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン、3,5−ジオキソ−1,2,4−オキサジアゾリジニル又はヒドロキシヘテロアリール、例えば、3−ヒドロキシイソオキサゾリル、3−ヒドロキシ−1−メチルピラゾリルなどが挙げられる。
【0056】
「有効量」は、所望の治療効果を生じるのに有効な本発明に従う化合物/組成物の量を意味する。
【0057】
「水和物」は、溶媒分子がH2Oである溶媒和物を意味する。
【0058】
「患者」は、ヒト及び他の哺乳動物の両方を含む。
【0059】
「薬学的に許容されるエステル」は、生体内で加水分解するエステルを指し、ヒト体内で容易に分解して親化合物又はその塩を残すものを含む。適切なエステル基としては、例えば、薬学的に許容される脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸及びアルカン二酸から誘導されたものが含まれ、ここで、各アルキル又はアルケニル部分は6個以下の炭素原子を有することが好都合である。例示的なエステルとしては、ホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレート、アクリレート、エチルスクシネートなどが挙げられる。
【0060】
本明細書において使用される「薬学的に許容されるプロドラッグ」は、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを有する患者の組織と接触した使用に適しており、妥当なベネフィット/リスク比に相応し、本発明の化合物のその目的の使用に有効である、本発明の化合物のプロドラッグを指す。用語「プロドラッグ」は、例えば血液中での加水分解によって生体内で急速に変換されて上式の親化合物を生じる化合物を指す。生体内で代謝的切断によって急速に変換され得る官能基は、本発明の化合物のカルボキシル基と反応性の基の種類を形成する。それらとしては、アルカノイル(例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイルなど)、非置換及び置換アロイル(例えば、ベンゾイル及び置換ベンゾイル)、アルコキシカルボニル(例えば、エトキシカルボニル)、トリアルキルシリル(例えば、トリメチル−及びトリエチルシリル)、ジカルボン酸と形成されたモノエステル(例えば、スクシニル)などのような基が含まれるが、それらに限定されない。本発明の化合物の代謝的に切断可能な基は、生体内で切断されるのが容易であるため、このような基を有している化合物は、プロドラッグとして作用する。代謝的に切断可能な基を有している化合物は、代謝的に切断可能な基の存在によって親化合物に付与された高められた溶解度及び/又は吸収速度の結果として改善された生物学的利用能を示し得るという利点を有する。詳細な議論は、Design of Prodrugs, H. Bundgaard, ed., Elsevier (1985); Methods in Enzymology; K. Widder et al, Ed., Academic Press, 42, 309−396 (1985); A Textbook of Drug Design and Development, Krogsgaard−Larsen and H. Bandaged, ed., Chapter 5; “Design and Applications of Prodrugs” 113−191 (1991); Advanced Drug Delivery Reviews, H. Bundgard, 8 , 1−38, (1992); J. Pharm. Sci., 77.,285 (1988); Chem. Pharm. Bull., N. Nakeya et aI, 32, 692 (1984); Pro−drugs as Novel Delivery Systems, T. Higuchi and V. Stella, 14 A.C.S. Symposium Series, and Bioreversible Carriers in Drug Design, E.B. Roche, ed., American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に提供されており、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0061】
「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の比較的非毒性の無機及び有機酸付加塩、及び塩基付加塩を指す。これらの塩は、化合物の最終的な単離及び精製の間にインサイチュで製造することができる。特に、酸付加塩は、別途、その遊離塩基の形態の精製された化合物を適切な有機又は無機酸と反応させ、このように形成された塩を単離することによって製造することができる。典型的な酸付加塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、メチレン−ビス−β−ヒドロキシナフトエ酸塩、ゲンチシン酸塩、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩及びラウリルスルホナン酸塩などが挙げられる。例えば、参照により本明細書に組み入れられるS.M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci., 66, 1−19 (1977)を参照のこと。また、塩基付加塩は、別途、その酸形態の精製された化合物を適切な有機又は無機塩基と反応させ、このように形成された塩を単離することによって製造することができる。塩基付加塩には、薬学的に許容される金属及びアミン塩が含まれる。適切な金属塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム及びアルミニウム塩が含まれる。ナトリウム及びカリウム塩が好ましい。適切な無機塩基付加塩は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などを含む金属塩基から製造される。適切なアミン塩基付加塩は、安定な塩を形成するために十分な塩基性を有するアミンから製造され、それらの低い毒性及び医学的使用に対する許容性のため医薬品化学においてしばしば用いられるアミン、アンモニア、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン、デヒドロアビエチルアミン、N−エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸、例えばリジン及びアルギニン、及びジシクロヘキシルアミンなどを含むことが好ましい。
【0062】
「溶媒和物」は、本発明の化合物と1つ又はそれ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的結合には、水素結合が含まれる。ある場合、例えば1つ又はそれ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子中組み込まれる場合、溶媒和物は単離可能である。「溶媒和物」は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。例示的な溶媒和物には、水和物、エタノレート、メタノレートなどが含まれる。
【0063】
「治療すること」及び「治療」は、疾患状態若しくは障害を改善する、又は疾患状態若しくは障害を予防するため化合物を投与することを意味する。又は、疾患状態又は障害の進行を遅らせることである。これらは、疾患状態又は障害に対する感受性を低下させることも指す。また、用語には、非治癒的な待期的療法が含まれるが、これに限定されない。
【0064】
実施態様
本明細書に記載された発明に関して、下記は、それに関連する特定の実施態様である。
【0065】
本発明の特定の実施態様は、有効量の式Iの化合物又はその対応のN−オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物をその必要がある患者へ投与する工程を含む、アトピー性皮膚炎などの、皮膚科学的なアレルギー状態を治療する方法である。
【0066】
本発明の別の特定の実施態様は、薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、式Iの化合物、又はその対応のN−オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩若しくは塩を含む、アトピー性皮膚炎などの、皮膚科学的なアレルギー状態を治療するための薬学的組成物である。
【0067】
本発明のさらに別の実施態様は、β−トリプターゼ阻害剤である化合物の有効量をその必要がある患者へ投与する工程を含む、アトピー性皮膚炎などの、皮膚科学的なアレルギー状態を治療する方法である。
【0068】
本発明の化合物は、本発明の化合物は、場合により塩として供給される。薬学的に許容される塩は、医療目的のため前述の化合物を投与する際に有用であるため特に興味深い。薬学的に許容されない塩は、単離及び精製目的のために、ある場合は、本発明の化合物の立体異性形態の分離に使用するために、製造方法において有用である。後者は、光学活性なアミンから製造されたアミン塩について特に当てはまる。
【0069】
本発明の化合物がカルボキシ基又は十分に酸性のバイオアイスターを含む場合、塩基付加塩が形成され得、これらは単純により都合のよい使用形態であり;実際に、塩形態の使用は、遊離酸形態の使用と本質的に等しい。
【0070】
また、本発明の化合物が塩基性基又は十分に塩基性のバイオアイスターを含む場合、酸性付加塩が形成され得、これらは単純により都合のよい使用形態であり;実際に、塩形態の使用は、遊離塩基形態の使用と本質的に等しい。
【0071】
本発明の別の目的は、薬学的有効量の式1の化合物の及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む薬学的組成物を提供することである。
【0072】
本発明の別の目的は、本発明に従って利用することができる複数の活性成分を含むために、有益な併用療法における利用についてそれ自体で有効である薬学的組成物を提供することである。
【0073】
本発明はまた、患者の黄斑変性の治療又は予防において有用な2つ又はそれ以上の活性成分を組み合わせたキット又は単一パッケージを提供する。キットは、(単独で又は薬学的に許容される希釈剤若しくは担体と組み合わせて)、式1の化合物及び追加の活性成分を(単独で又は希釈剤又は担体と組み合わせて)提供し得る。
【0074】
式Iの化合物は、これまでに使用された若しくは文献に記載された公知の方法の適用又は適合によって、又は本明細書に開示される方法によって、製造することができる。
【0075】
前記適用のいずれかにおける式Iの化合物の量は、成分の最終的な組み合わせが患者における黄斑変性の治療又は予防に有効である薬学的有効量の化合物を含む限り、薬学的に有効な量、最適以下の有効量又はそれらの組み合わせであり得る。
【0076】
薬理学
β−トリプターゼを阻害することができるために有用であるとして本明細書に記載される本発明に従う化合物はまた、炎症性腸疾患の治療について有用である。
【0077】
本発明の特定の局面は、化合物は単独で投与することができるが、薬学的組成物の形態で投与される本発明に従う化合物を提供する。「薬学的組成物」は、式1の化合物と、投薬形態及び投与様式の性質及びに応じて、薬学的に許容される担体、希釈剤、コーティング、アジュバント、賦形剤、又はビヒクル、例えば、保存剤、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、乳剤安定化剤、懸濁化剤、等張剤、甘味剤、矯味矯臭剤、芳香剤、着色剤、抗菌剤、抗真菌剤、他の治療剤、滑沢剤、吸着遅延又は促進剤、及び分配剤を含む群より選択される少なくとも1つの成分とを含む組成物を意味する。組成物は、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、水性液剤又は懸濁剤、注射液、エリキシル剤又はシロップ剤の形態で存在することができる。例示的な懸濁化剤としては、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント、又はこれらの物質の混合物が挙げられる。微生物の作用を予防するための例示的な抗菌剤及び抗真菌剤としては、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などが含まれる。例示的な等張剤としては、糖類、塩化ナトリウムなどが挙げられる。吸収を延長するための例示的な吸着遅延剤としては、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンが挙げられる。吸収を高めるための例示的な吸着促進剤としては、ジメチルスルホキシド及び関連するアナログが挙げられる。例示的な担体、希釈剤、溶媒、ビヒクル、可溶化剤、乳化剤及び乳剤安定剤としては、水、クロロホルム、スクロース、エタノール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、安息香酸ベンジル、ポリオール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)60、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン及びラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンの脂肪酸エステル、植物油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルなど、又はこれらの物質の適切な混合物が挙げられる。例示的な賦形剤としては、ラクトース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムが挙げられる。例示的な崩壊剤としては、デンプン、アルギン酸及びある種の複合シリケートが挙げられる。例示的な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、及び高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0078】
他の治療剤は、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる。本発明の化合物と組み合わせて使用される治療剤は、別々に、同時に又は順次投与することができる。式1の化合物以外の薬学的組成物中の物質の選択は、溶解度のような活性化合物の化学的性質、特定の投与様式、及び薬務において遵守すべき規定に従って決定される。例えば、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及びタルクと組み合わされた、賦形剤、例えばラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、並びに崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸及びある種の複合シリケートは、錠剤の製造に使用することができる。
【0079】
薬学的組成物は、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、水性液剤又は懸濁剤、注射液、エリキシル剤、又はシロップ剤などの様々な形態で存在することができる。
【0080】
「液体投薬形態」は、患者に投与される活性化合物の用量が、液体形態、例えば、薬学的に許容される乳剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤及びエリキシル剤にあることを意味する。液体投薬形態は、活性化合物に加えて、溶媒、可溶化剤及び乳化剤などの、当技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤を含有し得る。
【0081】
固形組成物はまた、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用する軟及び硬充填ゼラチンカプセル剤中の増量剤として使用することができる。
【0082】
水性懸濁剤を使用する場合、それらは、乳化剤又は懸濁を促進する薬剤を含有し得る。
【0083】
乳剤薬学的組成物の油相は、公知の方法で公知の成分から構成することができる。相は単に乳化剤(そうでなければ、エマルジェント(emulgent)として公知)のみを含んでもよいが、少なくとも1つの乳化剤と脂肪若しくは油又は脂肪及び油の両方との混合物を含むことが望ましい。特定の実施態様において、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。まとめると、乳化剤は、安定剤と共に又はなしで乳化ろうを構成し、油及び脂肪を一緒に用いる方法は、クリーム製剤の油性分散相を形成する乳化軟膏基剤を構成する。
【0084】
所望により、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも30%w/wの多価アルコール、即ち、2つ又はそれ以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG 400を含む)及びそれらの混合物を含み得る。局所製剤は、皮膚又は他の影響を受ける領域を通した活性成分の吸収又は浸透を高める化合物を望ましくは含み得る。
【0085】
製剤の適切な油又は脂肪の選択は、所望の性質の達成に基づく。従って、クリームは、好ましくは、チューブ又は他の容器からの漏出を回避するのに適した粘稠度を有しており、ベタベタせず、汚れず、そして可洗性の生成物であるべきである。直鎖又は分枝鎖、一塩基性又は二塩基性アルキルエステル、例えばミリスチン酸ジイソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2−エチルヘキシル又はCrodamol CAPとして公知の分枝鎖エステルのブレンドを使用することができる。これらは、必要な性質に応じて単独で又は組み合わせて使用することができる。あるいは、高融点脂質、例えば白色ワセリン及び/又は流動パラフィン又は他の鉱油を使用することができる。
【0086】
実際には、本発明の化合物/薬学的組成物は、経口、吸入、直腸、経鼻、口腔、舌下、膣内、結腸、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、クモ膜下腔及び硬膜外を含む)、槽内及び腹腔内を含む、局所又は全身投与によってヒト及び動物に適切な製剤で投与することができる。好ましい経路は、例えばレシピエントの状態で変化し得ることは理解される。
【0087】
「薬学的に許容される投薬形態」は、本発明の化合物の投薬形態を指し、例えば、錠剤、糖衣錠、散剤、エリキシル剤、シロップ剤、懸濁剤を含む液体調製物、スプレー剤、吸入用錠剤、トローチ剤、乳剤、液剤、顆粒剤、カプセル剤及び坐剤、並びにリポソーム調製物を含む注射用液体調製物が含まれる。技術及び製剤は、一般にRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 最新版に見出すことができる。
【0088】
「経口投与に適した製剤」は、それぞれ所定量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤又は錠剤のような個別単位として;散剤又は顆粒剤として;水性液体又は非水性液体中の液剤又は懸濁剤として;又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤として存在することができる。活性成分はまた、巨丸剤、舐剤又はペースト剤として存在することもできる。
【0089】
錠剤は、場合により1つ又はそれ以上の補助成分と共に圧縮又は成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、適切な装置中で粉末又は顆粒のような自由に流動する形態の活性成分を、場合により結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、界面活性又は分散剤と混合して圧縮することによって製造することができる。湿製錠剤は、適切な装置中で不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状の化合物の混合物を成形することによって製造することができる。錠剤は、場合によりコーティングするか又は切れ目を入れることができ、その中の活性成分の遅延又は制御放出を提供するように処方することができる。
【0090】
直腸投与用の固形組成物としては、公知の方法に従って処方され、少なくとも1つの本発明の化合物を含有する坐剤が挙げられる。
【0091】
所望により、より有効な分配のために、化合物は、遅延放出又は標的化送達系、例えば、生体適合性の生分解性ポリマーマトリックス(例えば、ポリ(d,l−ラクチドco−グリコリド))、リポソーム及びミクロスフェア中にマイクロカプセル化するか又はそれらに結合することができ、皮下又は筋肉内デポーと呼ばれる技術によって皮下又は筋肉内に注射して2週間又はより長い期間、化合物の連続的な遅延放出を提供することができる。化合物は、例えば、細菌保定濾過器を通して濾過することによって、又は使用直前に滅菌水若しくはいくつかの他の滅菌注射可能媒体中に溶解することができる滅菌固形組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0092】
「経鼻又は吸入投与に適した製剤」は、経鼻的に又は吸入によって患者へ投与するのに適した形態にある製剤を意味する。製剤は、例えば1〜500ミクロンの範囲の粒径(20〜500ミクロンの範囲の粒径を5ミクロンの増加分、例えば30ミクロン、35ミクロンなどで含む)を有する粉末形態の担体を含有することができる。例えば鼻腔用スプレー又は点鼻剤としての投与について、担体が液体である適切な製剤としては、活性成分の水性又は油性液剤が挙げられる。エアゾール投与に適した製剤は、慣用の方法に従って製造することができ、他の治療剤と共に送達することができる。吸入療法は、定量吸入器によって容易に実施される。
【0093】
「経口投与に適した製剤」は、患者へ経口投与するのに適した形態にある製剤を意味する。製剤は、それぞれ所定量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤又は錠剤のような個別単位として;散剤又は顆粒剤として;水性液体又は非水性液体中の液剤又は懸濁剤として;又は水中油型液体乳剤若しくは油中水型液体乳剤として存在することができる。活性成分はまた、巨丸剤、舐剤又はペースト剤として存在することもできる。
【0094】
「非経口投与に適した製剤」は、患者へ非経口投与するのに適した形態にある製剤を意味する。製剤は無菌であり、乳剤、懸濁剤、水性及び非水性注射液が含まれ、それらは、懸濁化剤及び増粘剤及び抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、並びに製剤を、意図されるレシピエントの血液と等張性にし、適切に調整されたpHを有する溶質を含有することができる。
【0095】
「直腸又は膣内投与に適した製剤」は、患者へ直腸内又は経膣的に投与するのに適した形態にある製剤を意味する。坐剤は、常温で固体であるが、体温で液体であり、そのため直腸又は膣腔中で融解して活性成分を放出する、カカオ脂、ポリエチレングリコール又は坐剤ロウのような適切な非刺激性賦形剤又は担体と本発明の化合物とを混合することによって製造することができる、製剤についての特定の形態である。
【0096】
「全身投与に適した製剤」は、患者へ全身投与するのに適した形態にある製剤を意味する。製剤は、経筋肉、静脈内、腹腔内及び皮下を含む注射によって好ましくは投与される。注射について、本発明の化合物は、液体溶液中、特にハンクス液又はリンゲル液のような生理学的に適合性の緩衝液中に処方される。さらに、化合物は、固形物の形態で処方し、使用直前に再溶解又は懸濁してもよい。凍結乾燥形態もまた含まれる。全身投与はまた、経粘膜又は経皮的手段によっても可能であり、又は化合物は経口投与することができる。経粘膜又は経皮的投与については、浸透すべき障壁に適した浸透剤を製剤中に用いる。このような浸透剤は、当技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜投与のための胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体が含まれる。さらに、界面活性剤は、浸透を促進するために使用することができる。経粘膜投与では、例えば鼻腔用スプレー又は坐剤を使用することができる。経口投与については、化合物は、カプセル剤、錠剤及び強壮剤のような慣用の経口投与形態に処方される。
【0097】
「局所投与に適した製剤」は、患者へ局所投与するのに適した形態にある製剤を意味する。製剤は、当技術分野で一般に知られているような局所軟膏剤、軟膏剤、散剤、スプレー剤及び吸入剤、ゲル剤(水又はアルコールに基づく)、クリーム剤として存在することができ、又はパッチ中に適用するためマトリックス基剤中に組み込むことができ、それにより経皮的障壁を通して化合物の制御放出が可能である。軟膏剤中に処方するときは、活性成分は、パラフィン系又は水混和性軟膏剤基剤のいずれかと共に使用することができる。あるいは、活性成分は、水中油型クリーム剤基剤を用いてクリーム剤中に処方することができる。眼内局所投与に適した製剤としては、活性成分が活性成分のための適切な担体、特に水性溶媒中に溶解又は懸濁された点眼剤が含まれる。口内局所投与に適した製剤としては、風味付けした基剤、通常スクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ剤;不活性基剤、例えばゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア中に活性成分を含むパステル剤;及び適切な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄剤が含まれる。
【0098】
「固体投薬形態」は、本発明の化合物の投薬形態が固体形態、例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、糖衣錠又は顆粒剤であることを意味する。このような固体投薬形態では、本発明の化合物を、少なくとも1つの不活性な慣用の賦形剤(又は担体)、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム又は(a)増量剤又はエキステンダー、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアカシア、(c)保湿剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合シリケート及び炭酸ナトリウム、(e)溶液凝結遅延剤、例えばパラフィン、(f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えばセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセリン、(h)吸着剤、例えばカオリン及びベントナイト、(i)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、(j)乳白剤、(k)緩衝剤、及び遅延された方法で腸管の特定の部分に本発明の化合物を放出する薬剤と混合する。
【0099】
本発明の組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者にとって特定の組成物及び投与方法について所望の治療反応を得るための有効な活性成分の量が得られるように変動させることができる。従って、任意の特定の患者について選ばれた投与量レベルは、所望の治療効果、投与経路、所望の治療持続時間、疾患の病因及び重症度、患者の状態、体重、性別、食事及び年齢、各活性成分のタイプ及び効力、吸収、代謝及び/又は排泄の速度並びに他の要因を含むさまざまな要因に左右される。
【0100】
一回又は分割用量で患者に投与される本発明の化合物の総日用量は、例えば1日当たり約0.001〜約100mg/kg体重、そして好ましくは0.01〜10mg/kg/日の量であることができる。例えば、成人では、用量は、一般に吸入によって約0.01〜約100、好ましくは約0.01〜約10mg/kg体重/日、経口投与によって約0.01〜約100、好ましくは0.1〜70、より具体的には0.5〜10mg/kg体重/日、静脈内投与によって約0.01〜約50、好ましくは0.01〜10mg/kg体重/日である。組成物中の活性成分のパーセンテージは変動し得るが、適切な投与量が得られるような比率になるべきである。投与単位組成物は、日用量を構成するために用いることができるその約数の量を含むことができる。明らかに、いくつかの単位投薬形態をほぼ同時に投与することができる。投与量は、所望の治療効果を得るために必要な頻度で投与することができる。一部の患者では、より高い又はより低い用量に対して急速に反応することがあり、そしてかなりより弱い維持用量が妥当であることを見出すことがある。他の患者については、各特定の患者の生理学的必要量に従って1日当たり1〜4用量の割合で長期治療を行うことが必要となり得る。他の患者については、1日当たり1又は2用量を超えずに処方する必要があることは言うまでもない。
【0101】
製剤は、薬学分野で周知の方法のいずれかによって単位投薬形態で製造することができる。このような方法は、1つ又はそれ以上の補助成分を構成する担体と活性成分を会合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体若しくは微粉固体担体又は両方と均一かつ十分に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって製造される。
【0102】
製剤は、単位用量又は複数回用量容器、例えば密封アンプル及びエラストメリックストッパーを有するバイアル中にあってもよく、そして使用直前に無菌液体担体、例えば注射用水の添加のみ必要なフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即時調合注射液剤及び懸濁剤は、既に記載された種類の無菌散剤、顆粒剤及び錠剤から製造することができる。
【0103】
本発明の範囲内の化合物は、文献中及び下に記載された試験によれば顕著な薬理活性を示し、それらの試験結果は、ヒト及び他の哺乳動物における薬理活性と関連があると考えられる。
【0104】
上記の引用文献中に記載された化学反応は、一般に本発明の化合物の製造に対するそれらの最も幅広い適用に関して記載されている。本明細書に開示された化合物の範囲内に含まれる各化合物に記載された通り反応を適用できないことがしばしばあり得る。これが起こる化合物は、当業者によって容易に理解される。全てのこのような場合、いずれの反応も当業者に公知の慣用の変更によって、例えば、干渉している基を適切に保護することによって、別の慣用の試薬に変更することによって、反応条件の常用の変更などによって良好に実施することができ、又は本明細書に開示された別の反応若しくは慣用の別法は、本発明の対応する化合物の製造に適用できる。全ての製造方法において、全ての出発物質は、公知であるか又は公知の出発物質から容易に製造可能である。
【0105】
本発明の化合物及び/又は組成物を用いて皮膚科学的なアレルギー状態、例えば、アトピー性皮膚炎に罹患している患者を治療するレジメンは、患者の年齢、体重、性別、食事、及び医学的状態、感染症の重症度、投与経路、薬理学的要件、例えば、使用する特定の化合物の活性、有効性、薬物動態学的及び毒物学的プロフィール、並びに薬物送達システムを利用するかどうかを含むさまざまな要因に従って選択される。本明細書に開示された薬物の組み合わせの投与は、一般に、許容されるまで、抑制又は根絶されたことを示す期間にわたって継続されるべきである。本明細書に開示された薬物の組み合わせにより治療を受ける患者は、治療の有効性を判定するために腎機能を測定する慣用の方法によって日常的にモニターすることができる。これらの方法によって得られたデータの連続的な分析により、組み合わせにおける各成分の最適量が投与されるように、そして治療の持続時間が十分であると確定できるように治療中に治療レジメンの変更が可能である。従って、治療レジメン/投薬スケジュールは、十分な有効性を一緒になって示す組み合わせに用いられる化合物のそれぞれの最も低い量が投与されるように、そして組み合わせにおけるこのような化合物の投与が皮膚科学的なアレルギー状態、例えば、アトピー性皮膚炎を良好に治療するのに必要な長さだけ継続されるように治療の経過にわたって合理的に変更することができる。
【0106】
実験実施例
動物情報
この研究のために使用した種は、雄性の非ヒトの霊長類、カニクイザル(Macaca fascicularis)、5〜10歳であった。各動物をその胸部に配置された固有の番号の入れ墨によって識別した。群サイズは12であった。動物はCharles Riverによって供給され、これらを、完全に認可されたAAALAC施設において、USDA Laboratory Animal Welfare Actに従ってNIH Guide for Care and Use of Laboratory Animalsに概説される条件下で収容した。Purina(プロダクト5038)霊長類食事を、1日2回供給し、果物、野菜及び楽しみを補った。水は適宜利用可能とした。
【0107】
この研究について従った動物使用プロトコルは、Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。
【0108】
化合物情報
塩形態(塩酸塩)と最初は呼ばれた化合物Aを上述のスキームによって合成した。塩/活性物質比率(w/w):1.07。塩酸ジフェンヒドラミン(Bioniche Pharma、カタログ番号1084899、ロット番号070709)をポジティブコントロールとして使用した。
【0109】
製剤
リン酸緩衝食塩水中に0.22mg/ml A sum(ブタ回虫(Ascaris sum))を含有する溶液中に処方した化合物Aを、40μlの体積で注射部位当たり0.004、0.0004、0.00004、及び0.000004 mgで投薬した。塩酸ジフェンヒドラミンを、リン酸緩衝食塩水中に0.22mg/ml A suumを含有する溶液中に処方した。塩酸ジフェンヒドラミンを、40μlの体積で注射部位当たり0.4 mgで投薬した。
【0110】
抗原製剤
ブタ回虫(Ascaris suum)抽出物(パーツ番号XPB33X1A5、ロット30575)はGreer Laboratoriesによって供給された。抽出物を10mg/mlのストック溶液の最終濃度へ蒸留水で再構成した。
【0111】
手順
0.5〜0.75mg/kgメタトミジン(metatomidine)が混合された5〜10 mg/kgケタミンの筋肉内(IM)注射によって、動物を麻酔した。動物の胸部及び腹部を剃り、アルコールできれいに拭き取った。下記の注射(各々40μl)を皮内に与えた:
PBS(リン酸緩衝食塩水)
回虫 8.8 × 10-3 mg/ml
回虫 8.8 × 10-3 mg/ml + 0.4 mg 塩酸ジフェンヒドラミン
回虫 8.8 × 10-3 mg/ml + 0.004 mg SAR160719
回虫 8.8 × 10-3 mg/ml + 0.0004 mg SAR160719
回虫 8.8 × 10-3 mg/ml + 0.00004 mg SAR160719
回虫 8.8 × 10-3 mg/ml + 0.000004 mg SAR160719
【0112】
バーニヤカリパスを使用して注射の15分後に膨疹の形態の反応を測定した。互いに垂直の2つの直径(D1及びD2)に沿って膨疹を測定した。膨疹の面積を式:
面積(mm2) = ((D1+D2)/4)2 × 3.142
を使用して計算した。
【0113】
測定後、ヒドロコルチゾンクリームを全ての注射部位へ塗布した。塩酸ジフェンヒドラミン2mg/kgを投与し(IM)、同様に皮下にアトロピン0.1mg/kg投与した。動物をアチパメゾール塩酸塩(IM)で逆転させ、それらのホームケージにおいて回復させ、注射部位でのさらなるアレルギー反応又は痒みについてモニタリングした。
【0114】
統計分析
反復測定を伴う混合モデルを使用してデータを分析し、反復測定としての異なる処置群についての膨疹サイズ、固定効果としての処置、及び変量効果としての動物を伴った。相関構造が化合物対称性であるように選択された。ロバスト共分散推定(robust covariance estimate)を使用し、結果を得た。
【0115】
結果
皮内にA suumが同時注射された化合物Aは、注射の15分後に測定した場合、抗原誘発膨疹形成を減少させた。A suum注射部位の平均膨疹面積(±SE)は、119.626 ± 10.175 mm2であった。化合物Aは、0.0004 mg(97.680 ± 8.012 mm2; p=0.0475)及び0.004 mg(102.390 ± 9.645 mm2; p=0.0171)用量で平均膨疹面積を有意に減少させた。A suumが同時注射された塩酸ジフェンヒドラミンは、0.4 mg(84.196 ± 7.364 mm2; p=0.0005)で平均膨疹面積を有意に減少させた。結果を下記の表Iに示す。
【0116】
【表1】

【0117】
本発明は、その精神又は必須の特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の式Iの化合物:
【化1】

又はその対応するN−オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を、治療する必要がある患者へ投与する工程を含む、皮膚科学的なアレルギー状態を治療する方法。
【請求項2】
薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、式Iの化合物、又はその対応するN−オキシド、プロドラッグ、薬学的に許容される塩若しくは塩を含む、皮膚科学的なアレルギー状態を治療するための薬学的組成物。
【請求項3】
薬学的有効量の式Iの化合物:
【化2】

の投与によって改善され得る状態に罹患する、又は罹患しやすい、ヒト又は非ヒト動物患者の治療方法。
【請求項4】
状態が、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、慢性じんま疹及び脱毛より選択される、アトピー性皮膚疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化合物をモノ安息香酸塩として投与する、請求項4に記載の方法。

【公表番号】特表2013−520506(P2013−520506A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555084(P2012−555084)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2011/025785
【国際公開番号】WO2011/106334
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】