説明

皮膚科的処置及び部分的な皮膚の表面再形成のための方法

【課題】本発明の一つの目的は、皮膚科的異状の改善のための安全で効果的な処置と、副作用を最小にすることとを組み合わせる装置及び方法を提供することである。本発明の他の目的は、皮膚の目標領域の小部分のみへの熱的皮膚損傷を起こす装置及び方法を提供することである。
【解決手段】電磁放射を使用して皮膚の目標領域の部分的な表面再形成を実行するためのシステムと方法を提供する。電磁放射は電磁放射源によって発生する。電磁放射は皮膚の目標領域の特定の部分に適用されることになる。電磁放射は、マスクにより、皮膚の目標領域の他の部分に影響することを妨げることができる。また、電磁放射は、特定の部分を除いて、皮膚の目標領域の部分に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚科的処置のために電磁放射を使用する方法と装置に関わり、さらに詳細には、皮膚科的処置のための皮膚表面の目標領域であって、その皮膚表面が要求される処置の目的の作用または副作用として表皮及び真皮の部分を含むような領域を消耗させ、または損傷を与えるために光放射を使用する方法及び装置に関する。本願は、2003年3月27日に出願された米国仮特許出願第60/458,770号の優先権を主張し、その開示内容がことごとく参考としてここに取り入れられている。
【背景技術】
【0002】
老化、太陽光による日焼け、皮膚病、外傷性影響、および同種のことにより発生されうる皮膚の問題に対する修復あるいは改善に対する需要が増えてきている。皮膚の熱損傷を誘発することにより皮膚の問題を改善するのに、電磁放射を使用する多くの処置が使用されてきた。その処置は皮膚の複雑な創傷治癒応答をもたらす。これは傷ついた皮膚の生物学的修復に通じる。
【0003】
近年、この目的を与える様々な技法が導入されてきた。一般に、異なった技法が2つのグループの処置様式として分類される。即ち、アブレーション(消耗)型レーザ皮膚表面再形成(「LSR」)と、非アブレーション(非消耗)型コラーゲン改造(「NCR」)である。第1のグループの処置様式、即ちLSRは表皮及び/または真皮に熱的損傷を引き起こす段階を含み、一方、第2のグループ、即ちNCRは表皮の熱的損傷を与えないように設計されている。
【0004】
パルス化されたCOまたはEr:YAGレーザを有するLSRは、この技術においてレーザ表面再形成またはアブレーション表面再形成として言及されるが、光による老化した皮膚、慢性的に老化した皮膚、瘢痕、表層着色病変、皮膚線条、及び表層皮膚病変の兆候に対する効果的な処置オプションになるものと考えられる。しかしながら、患者はそれぞれのLSR処置の後に、処置後最初の十四(14)日の間に浮腫、滲出、及びヒリヒリする不快感を含んだ際立った障害を経験しうる。これらの際立った障害は、多くの患者にとって容認し難い場合がある。LSR手順に関するさらなる問題は、その手順が比較的痛みを伴い、従って、一般的に、かなりの量の鎮痛剤の投与が必要であるということである。麻酔薬の注射による局部麻酔の下に比較的小さな領域のLSRを実行できる一方で、比較的大きな領域のLSRは、全身麻酔、または複数の麻酔薬注射による神経ブロックの後に実行されることが多い。
【0005】
いかなるLSR処置も、表皮及び/または真皮を含んだ皮膚表面の処置領域への熱的皮膚損傷を引き起こす。パルス化COレーザを有するLSR処置は特に攻撃的であり、表皮及び少なくとも表層の真皮への熱的皮膚損傷を引き起こす。COレーザを使用するLSR処置に続いて、持続する紅斑、色素沈着過度、低色素沈着、瘢痕、及び感染(例えば単純疱疹ウイルスへの感染)を含む合併症が高発生率で起こる可能性がある。Er:YAGレーザを有するLSR処置は、パルス化Er:YAGレーザのより少ない透過深度のために、COレーザに比してより緩慢な代替手段として導入されてきた。Er:YAGレーザの使用は、皮膚の目標領域の残りの組織中により薄い区域の熱的損傷を引き起こす。しかしながら、Er:YAGレーザを使ったLSRは、処置後の初期の数日中に、COレーザを使ったLSRによるものと同様の副作用を発生させる。
【0006】
COレーザまたはEr:YAGレーザを使用するLSRの限界は、アブレーション型レーザの表面再形成が、一般に、色黒の肌の色をもった患者に実行できないということである。着色した表皮組織の除去は、色黒の肌の色をもつ患者に対し美容的に深刻な醜態をもたらす場合があり、それは、数週間から数年間も持続する可能性があり、このことは、ほとんどの患者及び医師に容認できないと考えられる。LSRの他の限界は、顔面表面以外の領域でのアブレーション型表面再形成が、一般的に、より高い瘢痕発生の危険性を有するということである。顔面以外の領域中における皮膚損傷からの回復はあまり効果的ではないので、顔面以外の領域におけるLSR手順は、容認できない瘢痕形成の増加させることになる。
【0007】
LSR手順に関連する問題を克服しようとする中で、NCR技法のグループが現出した。これらの技法は、非アブレーション型表面再形成、非アブレーション型部分的表面仕上、または非アブレーション型皮膚改造と、当技術分野で様々に呼ばれている。一般的に、NCR技法は真皮組織を損傷するのに非アブレーション型レーザ、フラッシュランプ、または無線周波数電流を利用し、一方で表皮組織に対する損傷を与えないようにする。NCRの技法の背景にある概念は、真皮組織だけの熱的損傷が生物学的修復及び新しい真皮のコラーゲン生成をもたらすような創傷の治癒を引き起こすものと考えられるということである。このタイプの創傷の治癒は、構造破壊に関係する光老化の減少をもたらすことができる。NCR技法において表皮の損傷を回避することは、副作用に関わる処置の厳格さ及び処置期間を減少させる。特に、その手順の後に来る滲出、角質化、色素変化、及び表皮障壁機能の長引く損失による感染の発生は、NCR技法を使用することによって通常は避けることができる。
【0008】
現在、表皮に損傷を与えずに、真皮に損傷を与えるための非アブレーション型レーザを使用するのに、様々な戦略が適用されている。NCR手順で使用される非アブレーション型レーザは、LSR手順で使用されるアブレーション型レーザと比べて、より深い真皮への透過深度を有する。近赤外スペクトルの波長が使用できる。これらの波長は、表面に非常によく吸収されるアブレーション型Er:YAGレーザ及びCOレーザよりも深い透過深度を、非アブレーション型レーザにもたせる。真皮の損傷は、適切な波長と表層の皮膚の冷却を組み合わせることによって、あるいは、表層の皮膚の冷却と組み合わせた高開口数の光学部品を用いて真皮にレーザ焦点を合わせることによって、達成される。これらの技法により表皮損傷の回避を助けることができることが示されたが、これらの技法の顕著な障害の1つはその限られた効力である。NCR技法を用いた処置の後における光老化した皮膚または損傷の改善は、LSRアブレーション型の技法を用いた時に見られる改善よりもかなり小さい。複数の処置の後にさえ、臨床的改善が、患者の期待には遥かに及ばないことがしばしばである。さらに、臨床的改善は、通常は、一連の処置手順の後、数カ月遅れる。
【0009】
NCR手順の他の限界は、安全で有効な皮膚科的異状の処置のための許容できる処置パラメータの幅に関連する。一般に、NCR手順はレーザエネルギーと冷却パラメータの最適な組み合わせに依存し、それらは、比較的大きな量の組織の過熱に起因する治療学的な効果、あるいは瘢痕形成のいずれかにつながる皮膚内の望まれない温度分布をもたらす可能性がある。
【0010】
非アブレーション型手順のさらに他の問題は表皮に損傷を与えないことに関連する。表皮に損傷を与えないことは、表皮の完全な除去に関わる副作用を低減するために有利であるが、NCR手順のいくつかの適用は表皮構造の少なくとも部分的な除去の利益を得ることができる。例えば、光に誘起される皮膚老化は、真皮の交代によってのみならず、表皮の交代によっても明白となる。
【0011】
アブレーション型及び非アブレーション型の双方の表面再形成におけるさらなる問題は、創傷治癒応答における角質細胞の役割が充分に利用されないということである。角質細胞が損傷された時、角質細胞はサイトカインの放出によって創傷治癒応答における活発な役割を果たす。伝統的なアブレーション型表面再形成手順では、表皮とともに皮膚から角質細胞が除去され、そして治癒過程からそれらが完全に除去される。これに対し、伝統的な非アブレーション型手順では、表皮に位置している角質細胞は損傷されておらず、従って、それらは治癒過程を助長するサイトカインを放出しない。
【0012】
現在使用される全てのLSR技法及びNCR技法に関わる他の重要な問題は、処置した部位に対応する炎症(inflammation)、色素沈着(pigmentation)、または肉質変化(texture change)に起因して、処置の後の目に見えるスポット及び/またはエッジが現出することである。LSR及びNCRのための装置は、巨視的な(容易に見ることができる)照射領域を作る。例えば、通常は、レーザ照射スポット径は約1から10mmで変化し、NCR照射スポット径は約3から50mmで変化する。入射パルス光源装置などのいくつかの装置は、皮膚上に長方形の出力パターンによる「箱形」の皮膚応答を残す。処置後に何日間かあるいは何年も残るもので、ミリメートルサイズからセンチメートルサイズの程度にまで及ぶ赤や茶色や白の領域として容易にわかるような、そんなスポットや箱形のパターンを、患者は嫌がる。
【0013】
従って、皮膚科的異状に対する安全で効果的な処置と、内部手続き上の不快、手順の後に起こる不快で長期にわたる治癒時間、及び手順の後に起こる感染などの副作用を最小化することと、を組み合わせる手順及び装置を提供することが必要である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】本発明により利用される様々な局面での様々な皮膚科的処置を実施するための、部分的な表面再形成システムの第1の模範的な実施形態を段階的に示す図である。
【図1B】本発明により利用される様々な局面での様々な皮膚科的処置を実施するための、部分的な表面再形成システムの第1の模範的な実施形態を段階的に示す図である。
【図1C】本発明により利用される様々な局面での様々な皮膚科的処置を実施するための、部分的な表面再形成システムの第1の模範的な実施形態を段階的に示す図である。
【図2】本発明によるマスクの第1の模範的な実施形態の平面図を示す。
【図3】図2のマスクの断面図を示す。
【図4】本発明によるマスクの第2の模範的な実施形態の平面図を示す。
【図5】図4のマスクの断面図を示す。
【図6】図4のマスクの他の変形例の断面図を示す。
【図7A】本発明により利用される様々な局面での様々な皮膚科的処置を実施するための、部分的な表面再形成システムの第2の模範的な実施形態を段階的に示す図である。
【図7B】本発明により利用される様々な局面での様々な皮膚科的処置を実施するための、部分的な表面再形成システムの第2の模範的な実施形態を段階的に示す図である。
【図8】図7A及び図7Bの部分的な表面再形成システムによって作られた個々の小照射領域の上面図である。
【図9】図7A及び図7Bの部分的な表面再形成システムの位置をモニターするシステムの模範的な実施形態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明及びその利点をさらに完全に理解するために、ここでは[図面の簡単な説明]が参照され、同説明が添付図面に関連して取りこまれる。図面中では、同じ参照番号及び文字は、特に別途記述しなければ、示された実施形態の特徴、要素、部材、または部分として表すのに用いられる。さらに、本発明では図面に関してこの明細書で詳細に説明するが、例示された実施形態に関してもそのようにされる。
【0022】
図1A〜図9は皮膚の目標領域の部分的な表面再形成のための方法及び装置の、様々な実施形態を示す。一般に、模範的方法及び装置は、様々なパターンによって定義された患者の皮膚に電磁放射を送出し、そして、そのようなパターンに対応した皮膚表面の熱損傷や、狙っている皮膚の表面領域の小部分のみを含んだ皮膚表面の熱損傷を引き起こす。このような技法は、アブレーション型表面再形成手順の効力と、非アブレーション型手順の最小の副作用とを結合する。所定のパターンでの皮膚への電磁放射送出は、皮膚表面の覆われた部分を電磁放射から保護するために皮膚表面の目標領域の部分を覆うことによるか、または、表層の熱的皮膚損傷に影響する特定パターンを生成するために皮膚表面に亘って様々な手段で走査される比較的小さい直径の光ビームを利用することにより、達成される。
【0023】
部分的な表面再形成は、皮膚を改善する処置として実行され、保護された皮膚組織の領域が介在した皮膚組織の複数の小さな(一般に1mm未満の)個々の照射領域における、制御された消耗、除去、破壊、損傷または刺激として定義される。個々の照射領域は、楕円形、円形、弧状及び/または直線状の形状が可能である。部分的な表面再形成の空間的スケールは、巨視的スケールにおける様々なスポットまたは箱形の外観を避けるために選択されるが、複数の狭い領域は最小の刺激より大きく露出できるので、依然効果的な処置を提供する。例えば、0.2mmの非影響部分を残し、皮膚に0.5mm深さまで広がるような、何千もの0.1mm直径の個々の照射領域の除去または光熱破壊は、よく受け入れられており、見かけのスポットがなく、速やかな治癒を伴って光老化の有効な改善を実現する。個々の照射領域間の影響のない皮膚は急速に創傷治癒応答を開始し、それは従来のLSRより一層受け入れられる。
【0024】
本発明の模範的な部分的表面再形成手順の際、目標領域のある部分は無傷のままで残っており、その結果角質細胞とメラノサイトが維持され、それらが無傷の細胞の蓄積として機能し、上皮再形成を促進する。この手順は、伝統的な表面再形成手順とは異なっているので、目標領域の全体が損傷される。一般に、伝統的な表面再形成手順においては、上皮再形成(reepithelialization)は無傷の濾胞上皮(follicular epithelium)の深さから開始される。伝統的な手順は上皮全体を取り除くので、上皮再形成の時間に対する重要な因子は濾胞(follicle)の密度である。被験者の顔のうぶ毛密度(439本の毛/平方センチメートル)は、被験者の背中のそれ(85本の毛/平方センチメートル)よりかなり高い。従って、一般に、被験者の顔は、低い毛の密度を有する他の身体領域と比較して、より多く、そしてより速く上皮再形成を経験することになる。
【0025】
現在では、黒色着色した皮膚の表面再形成は、長引く再色素沈着過程のためにあまり頻繁に実行されない。部分的な表面再形成の技法は再色素沈着過程を改善するが、メラノサイトはあまり移動しない。皮膚の目標領域のある部分を保護することによって、メラノサイトの移動距離は減少でき、その結果、再色素沈着時間を短縮し、全ての皮膚の表面再形成を起こさせることが可能になる。
【0026】
図1A〜図1Cは、電磁放射(「EMR」)を使用して様々な皮膚科的処置を実行し、また本発明によるマスクを使用することによって目標領域の皮膚損傷の表層パターンを生じさせる、部分的な表面再形成システム100の第1の模範的な実施形態の段階的な使用状況を示す。システム100は、コラーゲン改造、望まれない色素または入れ墨の除去、及び/または、他の皮膚科的適用に使用できる。図1A〜図1Cに示すように、システム100はケース101、コントロールモジュール102、EMR源104、送出光学系106、及びマスク108を含んでいる。ケース101は、コントロールモジュール102、EMR源104、及び送出光学系106を含んでいる。ケース101の側壁を介して開口部が提供される。マスク108は、ケース101の側壁を介して形成された開口部に位置決めされている。ケース101の開口部にマスク108を位置決めすることによって、送出光学系106から放たれたEMRの焦点距離は固定され、マスク108の側面に影響を与えて、部分的アブレーションシステム100の操作者を傷つけることのないように構成できる。コントロールモジュール102はEMR源104と連結され、次いで送出光学系106に作動するよう連結される。
【0027】
本発明の一つの模範的変形では、コントロールモジュール102はEMR源104と無線通信させることができる。他の変形では、コントロールモジュール102はEMR源104と有線通信させることができる。本発明の他の模範的変形では、コントロールモジュール102はケース101の外に配置できる。他の変形では、EMR源104はケース101の外に配置できる。さらに他の変形では、コントロールモジュール102とEMR源104はケース101の外に配置できる。また、マスク108がケース101に接触しないようにすることも可能である。
【0028】
コントロールモジュール102はEMR源104に用途特定の設定を提供する。EMR源104は、これらの設定を受け取り、これらの設定に基づくEMRを発生させる。EMRの波長、皮膚に送出されるエネルギー、皮膚に送出される出力、各EMRパルスのパルス持続時間、皮膚に送出されるEMRのフルエンス(fluence)、EMRパルスの数、個々のEMRパルス間の遅延、EMRのビームプロファイル、及びEMRにさらされるマスクの領域サイズを、この設定によって制御できる。EMR源104により供給されるエネルギーは、送出光学系106によってマスク108に集束され、平行化され、及び/または、指向されるような光放射でありうる。マスク108は、患者の皮膚の目標領域に配置することができて、皮膚の目標領域に損傷パターンを、0.1%から90%の充填率の範囲で提供できる。この充填率は、EMR源106から放たれたEMRにさらされる目標領域の比率である。
【0029】
一つの模範的な実施形態にでは、EMR源106は、レーザ、フラッシュランプ、タングステン電球、ダイオード、ダイオードアレイ、及びそれらと同様のものの1つである。他の模範的な実施形態では、EMR源106はCOレーザ、及びEr:YAGレーザの一つである。
【0030】
皮膚科的処置での使用に先立って、図1Aに示されるシステム100はユーザによって構成できる。例えば、ユーザは、特定の手順に対して使用可能な特定の設定を指定するためにコントロールモジュール102と連係できる。EMRの波長、皮膚に送出されるエネルギー、皮膚に送出される出力、各EMRパルスのパルス持続時間、皮膚に送出されるEMRのフルエンス(fluence)、EMRパルスの数、個々のEMRパルス間の遅延、EMRのビームプロファイル、及びEMRにさらされるマスクの領域サイズを、ユーザによって指定できる。EMR源104は、平行化され、400から11000nmまでの範囲の波長を有するパルス状EMR放射を発生するように設定でき、望ましくは、Er:YAGレーザをEMR源として使用する際には約3.0μm、COレーザをEMR源として使用する際には約10.6μmに設定できる。平行化されたパルス状EMR放射は、1μsから10sの範囲、望ましくは100μsから100msの範囲、さらに望ましくは0.1msから10msの範囲のパルス持続時間を有するように適用可能で、0.01から100J/cmまでの範囲、望ましくは1から10J/cmまでの範囲のフルエンスを有するように適用できる。適用されるEMRは、表皮110及び/または真皮112に熱的損傷を引き起こすのに十分な皮膚の照射部に、少なくとも温度上昇を成しうるべきものである。照射される組織に熱的損傷を引き起こすのに十分なピーク温度は時間に依存し、また少なくとも45℃から100℃の範囲にある。0.1msから10msまでの時間範囲に対し、熱的損傷を引き起こすのに要求される最小の温度上昇は、約60℃から100℃の範囲にある。熱的損傷の深さは、波長、1パルス当たりのフルエンス、及びパルスの数の適切な選択によって調整できる。
【0031】
皮膚科的処置の間、図1Bに示されるように、システム100は皮膚114の目標領域に指向されるEMR120を発生する。適切な影響と照射を作り出すために、EMR120は、皮膚114の目標領域において複数回のパルスを送ることができる。
【0032】
皮膚科的処置が完了した後、皮膚114の目標領域は特定の位置で損傷すると思われる。EMR120の適用は、表皮組織110及び真皮組織112における所定の熱的皮膚損傷130を作り出す。熱的皮膚損傷130が、表皮組織110を通して真皮組織112中に所定深さだけ延びることに注目すべきである。マスク108は、熱的皮膚損傷130が作り出される位置において制御される。一般に、熱的皮膚損傷130は目標領域の皮膚表面積の0.1%から90%の範囲のみを占める。充填率は、皮膚の目標領域の表面積に対する、EMRによって熱的に損傷された皮膚の目標領域の表面積の比、と定義される。
【0033】
本発明の模範的な実施形態では、熱的皮膚損傷130は表皮組織110を介して、また真皮組織112全体を介して延びることができる。本発明の他の模範的な実施形態では、熱的皮膚損傷130は主に真皮組織112で起こり、そしてわずかな皮膚損傷が表皮組織110で起こりうる。熱的皮膚損傷130の微細領域の各々の侵入深さがお互いに異なっているか、あるいはお互いに同一であることが可能である、ということに注目すべきである。これは、深部の損傷または表層の損傷のいずれか、例えば真皮改造及び色素調整のそれぞれのための微細損傷領域の密度を変化させることによって、色素除去または真皮除去が選択的に調整できるからである。
【0034】
図2は本発明によるマスク108の第1の模範的な実施形態の平面図を示す。マスク108はシールド構造体を含む。望ましくは、マスク108の直径は目標領域の直径より大きく適合されるべきである。目標領域は、EMR源104から放たれ平行化されたEMRによって狙われた領域として定義され、1〜100mmの範囲の直径、望ましくは5から20mmの範囲内とすることができる。現在市販のCOシステム及びEr:YAGレーザシステムの大部分の該直径が、照射領域の直径に適合できる。マスク108内のシールド構造体202の幅は50〜300μmの範囲にあるべきである。シールド構造体によって形成されるマスク108の開口部の幅は、10〜1000μmの範囲にあるべきであり、また望ましくは50から300μmの範囲にあるべきである。開口部によって露出された表面積に対する、シールド構造体202によって覆われる面積の、シールド−露出比は、臨床的効力に作用し、皮膚科的処置の副作用を与える。また、これは皮膚の熱的損傷の充填率とパターンを決定する。熱的損傷の深さはパルス数、EMRのフルエンス、及びEMRの波長によって決定される。マスク108のシールド−露出比は、異なった皮膚科的処置、特定の患者のニーズ、特定の患者の指示、皮膚タイプ、及び身体領域に対して変更する。
【0035】
マスク108は、マスク108のエッジに大きいシールド−露出比を有することができ、表面再形成された領域のエッジにおける遷移ゾーンを発生させる。この技法は「フェザリング(feathering)」と呼ばれる。これは、処置領域と未処置領域の間の巨視的にシャープに見える境界区分を回避する。他の好適な実施形態では、従来的に表面再形成された領域のエッジに大きなシールド−露出比を有し、遷移ゾーンを発生させるようなマスクが、使用できる。
【0036】
望ましくは、マスク108の表面は、特定の皮膚科的過程のためにEMR源104により発生する波長において最小量の吸収を有する。そのような吸収はマスク108の望ましくない加熱を減少させることができる。最小量のEMRを吸収させるようにするため、マスク108に金属材料をコーティングできる。マスク108のシールド構造体の設計は、図3に示すA−A断面に示すように、EMRによって起こされる事故を避けるため、一般的に、後方反射EMRを盛り込んだ安全な形状を考慮に入れる。シールド構造体202は、後方反射したEMRの量を最小にするために先の尖がった形状にされる。また、ケース101に接続されるマスク108により、送出光学系106とマスク108の間の距離も固定されて、その結果、EMRがマスク108のエッジに当たることによってユーザの方に向かって反射されるかも知れないという可能性を最小にする。さらに、マスク108の微細組織は、望ましくは、送出光学系106から放出されるEMRの波長範囲において周期性を有することができる。この構成は、送出光学系106から放出され平行化されたEMRを、高度に散らされたビームに散乱させて、EMR関連の事故の危険性を減少させることができる。
【0037】
一つの模範的な実施形態では、金、銀、銅材料、またはそれと同様のものによってマスク108の金属被膜を構成できる。他の模範的な実施形態では、マスク108表面の微細組織は、送出光学系106から放出されるEMRの波長範囲において周期性を有することができる。
【0038】
マスク108は、EMR放射によるその照射の間に有効な皮膚の冷却を付与するための構成を有することができる。皮膚冷却はかなりの麻酔的効果を供給し、EMR放射によって導入されるパターンに関連する他の利点を有する。皮膚科的手順の開始に先立って、連続したEMRパルスの間に揮発性の薬剤あるいは予め冷却された液体をマスク108にスプレーすることによる手順の間、または、マスク108を貫くマイクロチャンネル302(図3に示す)に冷たい液体を導入することによる手順の間に、マスク108を冷却することができる。温度上昇に従って金属によるEMR吸収速度が増加するのに伴い、マスク108を冷却することがマスク108によるEMR吸収速度を減少させるので、そのようなマスク108の冷却は二次的な利点を有する。
【0039】
上述のように皮膚冷却を与えるために、マスク108の温度は、37℃から−20℃までの範囲、また望ましくは10℃から−4℃の範囲とされるべきである。マスク108は、EMR源104から放射されたEMRにさらされない皮膚表面の部分の保護と、冷却の両方を行うことができる。皮膚表面の部分を冷却し保護することに加えて、マスク108により、アブレーション型の手順の間に排出された残骸を除去することが可能となり、その結果、連続したパルスのビーム送出を妨げない。例えば、レーザに照射されない領域、即ち影響を受ける領域と影響を受ける領域との間に規定される領域は、マスク108によって冷却される。他の模範的な実施形態では、全領域(即ち、影響される領域と非影響領域と)は、冷却されて麻酔効果が施され、損傷領域の表層レベルを損傷し過ぎることが低減される。
【0040】
図3は図2のマスク108のA−A断面を示し、A−A断面は少なくともマスク108のシールド構造体202を貫くマイクロチャンネル302を示す。冷却剤、例えば液体または気体のいずれかは、皮膚科的手順の際、これらのマイクロチャンネル302を通して循環でき、その結果、保護された皮膚及びマスク108自体から熱を取り除く。
【0041】
図4は本発明によるマスク400の第2の実施形態の平面図を示す。マスク400はシールド構造体402の配置及び設計においてのみマスク108と異なっており、マスク400の詳細は、他のすべての点において実質的にマスク108のものと同様である。シールド構造体402は、図5及び図6にそれぞれ示された切断断面B−B及びC−Cに指し示されるように、筒状形状である。マスク400のシールド構造体402はマイクロチャンネル502及び602を含んでおり、それらマイクロチャンネルは、マスク400と皮膚の目標領域のマスクで覆われた部分を冷却するために冷却液体または冷却気体を運搬することができる。マイクロチャンネル502、602はシールド構造体402の交点で交差している。
【0042】
本発明の模範的な実施形態では、微細構造502、602はシールド構造体402の交点で交差する必要は必ずしもない。
【0043】
本発明の模範的な実施形態では、マスク108はアブレーション型マスクである。アブレーション型マスクは様々な厚みを有する複数のセクションを含んでいる。手順に先立って、アブレーション型マスクは粘着剤で皮膚に取り付けられる。複数のEMRパルスを有する手順の間、アブレーション型マスクは消耗され、複数のセクションそれぞれの厚みが減少され、皮膚の異なった領域が徐々にEMRパルスにさらされる可能性を秘めている。アブレーション型マスクはポリマー材を含む様々な材料で構成できる。アブレーション型マスクは、内側にパターンを刻印することによって、容易に作り出すことができる。
【0044】
特殊な皮膚科的処置である入れ墨の除去は、さらに詳細に説明されるべきである。入れ墨の除去はアブレーション型EMRとマスク108との組み合わせで実行できる。特にCOレーザ及び/またはEr:YAGレーザを利用することは、この用途に適切であろう。この皮膚科的手順の間、目標領域で10から90%の範囲、また望ましくは25から70%の範囲の充填率を与えるマスク108を用いたアブレーション型EMR放射に、入れ墨をさらすことができる。望ましくは、マスク108は圧力下で皮膚に当てられ、その圧力は、この手順の間、血流を最小にする。この手順の間に血流を制限することは、血液が可能性としてEMR放射を妨げるよりも前に、皮膚表面のより深いところの消耗を可能にし、その結果、消耗深さを制限する。複数パルスのアブレーション型EMR放射は、必要な消耗深さに達するまで、入れ墨の個々の領域に適用できる。必要な消耗深さは100μmから5mmの範囲にできる。この模範的な手順により、マスク108によって制御される入れ墨の特定の部分を直ちに消耗させることができる。表面の部分だけが消耗されるので、傷の回復を高めることができる。
【0045】
部分的な表面再形成を利用する入れ墨の除去は、部分的な表面再形成の適用の前後いずれかに入れ墨の粒子によって優先的に吸収される短パルス化EMRを使用して増大できる。短パルス化レーザの適用においては、短時間周期、望ましくは1μsの持続時間にレーザをパルス化できる。このタイプの手順で使用されるEMR源は、望ましくは、Q−スイッチ・ルビーレーザ、Nd:YAGレーザ、KTPレーザ、及び/またはアレキサンドライトレーザとすることができる。この手順の目的は、部分的な表面再形成のための消耗にさらされていない領域内の色素を放出することである。放出された色素粒子は、消耗チャンネル内に排出でき、目標領域に残留する血液、及び/または外部の洗浄薬剤、例えば生理食塩水によって、この手順後にその領域から洗い流すことができる。必要とされる入れ墨の撤去が起こるまで、数回のこのような手順が利用できる。
【0046】
マスクを使用する部分的な表面再形成に他の手段として、図7A〜図7Bにその発展的な使用として示すような、第2の実施形態による部分的な表面再形成システム700が使用できる。システム700は、ケース701、コントロールモジュール702、電磁放射(「EMR」)源704、送出光学系706、x−yトランスレータ(移動手段)708、及び光学的に透明なプレート709を含むことができる。ケース701は、コントロールモジュール702、EMR源704、送出光学系706、及びトランスレータ708を含むことができる。システム100でのように、ケース701の側壁を介して開口部を形成できる。光学的に透明なプレート709は、ケース701の側壁を介して形成される開口部に位置決めすることができる。ケース701の側壁を介して形成された開口部にプレート709を位置決めすることは、精巧な移動機構、例えば送出光学系706及びトランスレータ708を含むシステム700をシールすることになる。コントロールモジュール702は、トランスレータ708及びEMR源704と連結され、そしてEMR源704は送出光学系706に作動的に接続される。
【0047】
本発明の一つの模範的変形では、コントロールモジュール702はケース701の外に配置できる。他の模範的変形では、EMR源704はケース701の外に配置できる。さらに他の変形では、コントロールモジュール702とEMR源704はケース701の外に配置できる。
【0048】
コントロールモジュール702はEMR源704に用途特定の設定を提供し、x−yトランスレータ708を制御する。EMR源704は、これらの設定を受け取り、これらの設定に基づくEMRを発生させる。発生エネルギーの波長、発生エネルギーの強度、発生エネルギーのフルエンス(fluence)、皮膚化的手順の持続時間、その手順の間に管理されるそれぞれのEMRパルスのパルス長、個々の照射領域716(図8に示す)の間の空間的距離、個々の照射領域716の形状、個々の照射領域716によって定義されたパターン、及び目標領域の充填率を、この設定によって制御できる。個々の照射領域716に引き起こされた熱的皮膚損傷が、表皮組織710を通して真皮組織712中に所定深さだけ延びることに注目すべきである。EMR源704はレーザあるいは他の光源とすることが可能である。EMR源704によって発生したEMRは、そのEMR源が送出光学系706の外に配置されているならば、ファイバー、導波管、またはミラーを通して送出することができる。あるいは、EMR源704が皮膚714の近傍に配置されているならば、EMR源704は送出光学系706にEMRを直接供給する。EMR源704によって発生したエネルギーは、送出光学系で706における合焦点光学系により、図8に示すような個々の照射領域716の一つに対して集束されることができ、及び/または、指向されることができる。個々の照射領域716のそれぞれは、皮膚714の目標領域内に配置され、皮膚714の目標領域と比べて比較的小さい。一般に、皮膚714の目標領域は、サイズが1cmとすることができ、また個々の照射領域716のそれぞれは直径100μmとすることができる。
【0049】
本発明の模範的な実施形態では、送出光学系706の光学部品はビームコリメータあるいは集光光学部品を含むことができる。本発明の他の模範的な実施形態では、個々の照射領域716に引き起こされた熱的皮膚損傷が、表皮組織710を通して真皮組織712の全体に延びることができる。本発明の他の模範的な実施形態では、個々の照射領域716に引き起こされた熱的皮膚損傷は主に真皮組織712で起こり、そして表皮組織710では、ほんのわずかな熱的損傷しか起こりえない。個々の照射領域716に引き起こされた熱的皮膚損傷の微細領域それぞれの侵入深さがお互いと異なっているか、あるいはお互いと同一であることが可能である、ということに注目すべきである。これは、深部の損傷または表層の損傷のいずれか、例えば真皮改造及び色素調整のそれぞれのための微細損傷領域の密度を変化させることによって、色素除去または真皮除去が選択的に調整できるからである。本発明のさらに模範的な実施形態では、個々の照射領域716に引き起こされた熱的皮膚損傷の所定深さは約300μmである。
【0050】
皮膚科的処置を使用し、システム100を同様に使用するに先立って、システム700は、図7Aに示すようにユーザによって構成することができる。具体的には、ユーザは、特定の手順に使用されるよう特定の設定を指定するためにコントロールモジュール702と連係する。ユーザは必要な損傷パターン、EMR源704により発生したエネルギーの波長、発生したエネルギーの強度、発生したエネルギーのフルエンス(fluence)、処置にかかる時間の長さ、及びEMR源704のパルス持続時間、を指定できる。処置の間、目標領域全体を処置するために、トランスレータ708は皮膚714の目標領域の一連の部分に亘って送出光学系706を移動させる。システム700が目標領域の個々の照射領域716にEMRを送出する時、目標領域は処置される。個々の照射領域716は直列的、及び/または並列的に狙われる。目標領域の1つの部分が完全に処置されると、システム700は目標領域の次の部分に移動される。例えば、システム700は目標領域の各部分の照射完了時に移動され、必要な皮膚表面損傷パターンが領域全体に達成されるまで、これが行われる。システム700は、1つの連続した部分から次の部分まで離散的な動き、即ちスタンピングモードを用いて移動されることができ、あるいは皮膚表面に亘って継続的な動き、即ち連続走査モードを用いて移動されることができる。いずれの場合でも、送出光学系706の運動は、トランスレータ708によって駆動され、コントロールユニット702によって制御されて、必要な表面損傷パターンを皮膚714の目標領域に与えるようにオペレータ(またはユーザ)によるシステム700の動きにほぼ一致させられる。
【0051】
本発明の模範的な実施形態では、システム700は、連続走査モードで動作している間に、特定の個々の照射領域716にEMRを送出して、そしてそのような領域716への照射後、目標領域の皮膚に沿って移動し、その後、以前の特定の個々の照射領域716から非照射領域によって隔てられた他の個々の照射領域716に、さらなるEMRを送出することができる。本発明の他の模範的な実施形態では、システム700は、連続走査モードで動作している間に、個々の照射領域716の特定のグループ、例えば個々の照射領域716(図8に示す)の最前列にEMRを送出して、そしてそのような領域716への照射後、目標領域の皮膚に沿って移動し、個々の照射領域716の他のグループ、例えば個々の照射領域716の特定のグループから非照射領域によって隔てられた個々の照射領域716(図8に示す)の第2列に、さらなるEMRを送出することができる。
【0052】
本発明の模範的な実施形態では、システム700は位置センサを含み、それはコントロールモジュール702と連結されている。位置センサは皮膚114とケース701の間の相対速度を検出することができる。位置センサとしては、光学マウス、ホイール、トラックボール、従来型マウスなどが可能である。
【0053】
本発明の他の模範的な実施形態では、システム700は個々の照射領域716を一つずつ狙う。個々の照射領域716の一つずつにEMRを施すことは、被験者によって経験される痛みの量を減少させる。個々の照射領域716それぞれへのEMRの各適用の間に50ミリ秒の期間を提供できる。その結果、被験者によって経験される痛みの量を制御して、システム700に狙われる組織の大量の加熱を避けられる。本発明のさらに他の模範的な実施形態では、システム700は所定数の個々の照射領域716を一度に狙う。一度に狙われる所定の目標領域716の数を制限することは、患者によって経験される痛みの量を制限する。一度に多くの個々の照射領域716を狙うには、皮膚の広い領域を集団的に狙うことが要求され、このことが同時に多くの神経終末を興奮させ、これにより比例的に多量の痛みを被験者にもたらす。より少ない個々の照射領域716を狙うことにより、被験者にはより少ない痛みをもたらすが、より長い時間がその手順にかかることになる。
【0054】
本発明のさらなる模範的な実施形態では、システム700は、個々の照射領域716それぞれの間の分離距離として、最小約125μmで最大約500μmの分離距離、望ましくは最小で250μmの分離距離を有する個々の照射領域716を生成する。
【0055】
皮膚科的手順の開始の前に、光学的に透明なプレート709を、目標領域をカバーしながら皮膚表面に直接接触するように導入することができる。光学的に透明なプレート709は、良好な熱伝導率を有し、可視スペクトル及び近赤外スペクトルの広範囲に亘って透明な、何らかの材料から構成できる。プレート709は、精巧な移動機構を含むシステム700をシールし、皮膚714の目標領域に冷却を施す。プレート709は2つの方法で皮膚714の目標領域に冷却を施すことができる。即ち、熱伝導と熱対流である。熱伝導は光学的に透明なプレート709を介してケース701に熱を伝え、システム700のケース701を介して冷却剤を循環させることによって冷却を施す。皮膚714の目標領域に適用される前にも、光学的に透明なプレート709全体を冷却することができる。あるいは、この手順のために熱対流を利用できる。光学的な窓またはその窓に良好に熱接触する仕切りにスプレーされた揮発性薬剤を利用できる。揮発性薬剤の供給は、EMRパルスの間の手順の際に、弁を通して管理でき、この弁は光学プレート上に温度センサを備えたサーモスタットにより制御できる。
【0056】
本発明の一つの実施形態では、光学的に透明なプレート709はサファイアまたは石英で構成できる。本発明の他の実施形態では、システム700は、必要な充填率が達成されるまで、皮膚714の同一部位上に複数回移動させることができる。さらに他の実施形態では、要求される効果を発揮するために複数の手順を実行できる。
【0057】
皮膚科的手順の間、EMR源704は400〜12000nmの範囲の波長を有するEMRを放射する。望ましくは、EMRは以下の範囲のうち1つの波長を有する。即ち、1300から1600nm、1850から2100nm、2300から3100nm、及び10640nm付近、である。用途によって、単一の波長または異なる波長の組み合わせを利用できる。EMR源704は、ダイオードレーザ、ファイバレーザ、固体レーザ、ガスレーザーなどとすることができる。パルス持続時間は100μsから100msの範囲にすることが可能で、望ましくは500μsから15ms、さらに望ましくは1.5msから5msの範囲にすることが可能である。個々の照射領域716内のパルスあたりのエネルギー密度は0.1から100J/cmの範囲、望ましくは1から32のJ/cmの範囲、さらに望ましくは1.5から3J/cmの範囲とすることができる。個々の照射領域716内のパルスあたりのエネルギーは1mJから10mJの範囲、望ましくは5mJとすることができる。
【0058】
本発明の模範的な実施形態では、EMR源704は1.5μmレーザシステムであり、望ましくはカリフォルニア州のパロアルトにあるリライアント・テクノロジーズ(Reliant Technologies)によって製造されたリライアントFSRプロトタイプ(Reliant FSR prototype)が使用される。
【0059】
皮膚科的処置が終了した後、皮膚714の目標領域は特定パターンに損傷する。EMRの適用は皮膚714の表皮710と真皮712に熱的皮膚損傷を生じさせる。EMR源704によって供給された放射は、送出光学系706を介して、図7Bに示す複数の個々の小照射領域716内の皮膚714に送出される。送出光学系706は皮膚表面の目標領域に亘って複数の個々のビームを送出することができる。
【0060】
図8は表皮における個々の小照射領域716の平面図を示す。個々の照射領域716の形状は、1〜500μmの範囲における最小寸法の横方向直径を有する円形(図8に示す)、楕円形、長方形、直線形、または不規則な形とすることができる。目標領域の充填率は約20〜40%にできる。
【0061】
システム700は加熱、消耗、除去、光熱凝固、熱による壊死、及び/または、刺激を通して複数の個々の照射領域716を生成できる。複数の領域は連続的または同時的に照射可能である。連続的照射は、パルス化されるか、遮断されるか、または連続化されうるエネルギー源を走査あるいは移動することによって、達成できる。同時的照射は、例えば放射源アレイまたはレンズのマルチアレイによって達成できる。放射源アレイは、単一次元アレイ、2次元アレイなどとすることができる。アレイは皮膚に対して動かすことができ、そして目標領域において1回または複数回通過する処置を実行できる。
【0062】
図9は本発明によるモニタリングシステム900の模範的な実施形態を示す。モニタリングシステム900はシステム700の移動を追跡し、その位置情報をコントロールモジュール702に提供する。コントロールモジュール702は適切にトランスレータ708に指示するためにこの情報を利用して送出光学系706を位置合わせし、適切な損傷パターンが皮膚714の目標領域に亘って達成されるようにする。モニタリングシステム900は、コンピュータ902、マウス904、及び電荷結合素子(「CCD」)カメラ906を使用できる。具体的には、コンピュータ902はCCDカメラ906からシステム700についての位置情報を受け取る。そして、コンピュータはその位置情報に基づくコントロールモジュール702をシステム700の現在位置に応じて更新する。コントロールモジュール702はこの情報を利用し、システム700によって、目標領域内の適切な損傷パターンを皮膚714に生じさせる。さらに、モニタリングシステムは、ホイールまたは他の何らかの移動センサを含む追加の移動検出装置をも利用できる。
【0063】
個々の照射領域716の形状、及び個々の照射領域716の全てによって表される関連するパターンは、変更できる。個々の照射領域716は、円形、楕円形、長方形、直線形、または不規則な形を有することができる。皮膚表面の個々の非照射領域間の平均距離は、10から2000μmの範囲、望ましくは100から500μmの範囲にすることができる。個々の照射領域716の巨視的なパターンは、目標領域中に一定の間隔をおいて一様に分布する個々の照射領域716、目標領域内に不規則に分布した個々の照射領域716、及び/または、不規則にシフトする位置で一定の平均間隔を伴って規則的に分布した個々の照射領域716、といった領域とすることができる。具体的には、不規則に変化する位置で一定の平均間隔を伴って規則的に分布した個々の照射領域716をもつことは、複数の処置の間に起こりうる望ましくない効果を最小にするのに役立たせることができる。そのような複数の処置は、複数の処置が進行する間、個々の照射領域716によって領域全体をできるだけ均等にカバーするために利用される。しかしながら、目標領域中に一定の間隔をおいて一様に分布する個々の照射領域716は、モアレ(波紋状)パターンと同様の望ましくない空間的分布を作り出す可能性があり、大きな空間的周期を有する照射領域間に、ある距離をもって作られた空間的干渉性の巨視的パターンをもたらす。モアレパターンの発生を最小にするために、単一走査の際に、個々の照射領域716間の平均距離の10から50%の範囲内の不規則化されたシフトを利用できる。
【0064】
特定の表面損傷パターンで皮膚表面をカバーする単一の処置によるか、あるいは同一診察時または異なる処置診察の際のいずれかで実行される複数の処置により、処置を実行できる。特定の個々の照射領域716に適切な熱的損傷を達成するために、個々のまたは複数の照射を使用できる。
【0065】
部分的な表面再形成は、表皮の一部を熱的に損傷させるか消耗させることができ、その結果、表皮のバリア機能の効力を減少させて、特に角質層を減少させる。これにより、真皮及び表皮に、処置の効果を高めたり、表皮及び/または真皮の部分的な損傷により引き起こされる副作用を低減できる薬剤や特定の物質を投与することが容易になる。皮膚改造の効力を高めることができる薬剤及び物質のグループは、成長因子、コラーゲン副産物、コラーゲン先駆体、ヒアルロン酸、ビタミン、酸化防止剤、アミノ酸、及び特に追加の無機物質を含む。副作用を低減できる薬剤と物質のグループは、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、酸化防止剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗イースト剤、及び抗真菌剤とすることが可能である。
【0066】
本発明の模範的な実施形態では、使用されるビタミンはビタミンC及び/またはビタミンEとすることができる。使用される追加の無機物質は銅と亜鉛である。酸化防止剤はビタミンC及び/またはビタミンEとすることができる。
【0067】
臨床的観察では、従来の表面再形成と比べて、部分的な表面再形成に対し損傷回復の向上が見られた。白人男性の前腕皮膚が、約3mmのビーム径のコヒーレント・ウルトラ・パルス・レーザ(Coherent Ultra Pulse Laser)で、CPGハンドピースを使用して、約300mJ/パルスもった照明レーザビームと同一設定のパルス化COレーザ放射にさらされた。1つの領域はマスクの助けなしでレーザビームにさらされ、一方、他の領域は冷却マスクによって部分的にシールドされた。従来的に表面再形成されたテスト位置では、部分的に表面再形成されたテストと比べて、顕著な紅斑が現れた。
【0068】
目標領域の充填率は処置の際か処置の後に、目標領域内の皮膚上の位置から目標領域外の皮膚上の遠い位置までの皮膚の電気抵抗を検出することによって、モニターできる。角質層(例えばトリパン・グルー(trypan glue))の欠陥や経皮的な水分不足を染色できる指示薬が、目標領域の充填率の有効な指示薬となる。
【0069】
上記内容は単に発明の原理を示すものであり、説明された実施形態に様々な修正及び変更を加えることは、ここでの教示を考慮すれば、この技術分野における当業者にとって明白であろう。従って、ここでは明らかに説明されてはいないが、本発明の原理を具体化し、それによって本発明の精神と範囲の中に存在する多数の技法を、この技術分野における当業者により工夫できる、ということが理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1及び第2の電磁放射を発生させるように電磁放射源を制御する段階と、
(b)第1の電磁放射を、皮膚の目標領域内における空間的に隔てられた複数の個々の照射領域の第1の個々の照射領域に関連して適用させる段階であって、前記第1の個々の照射領域の表皮組織及び真皮組織が、皮膚の表面から真皮組織内の少なくとも特定の深さへと、熱的に損傷を受ける、および/またはアブレーションされるようにする段階と、
(c)第2の電磁放射を、皮膚の目標領域における空間的に隔てられた複数の個々の照射領域の第2の個々の照射領域に適用させる段階であって、第1の電磁放射が第2の電磁放射と同じかまたは異なったものであり、全体的な目標領域の処置の完了の際に、損傷されない、アブレーションされない、および/または照射されない、のうち少なくとも1つである、少なくとも1つのさらなる皮膚部分によって、第1及び第2の個々の照射領域が隔てられるように、前記電磁放射源が、特に制御されるようにする段階と、
を有し、
前記皮膚は体の表面に規定されることを特徴とする皮膚科的状況を処置するための方法。
【請求項2】
前記目標領域が約1cmの表面積を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電磁放射源がアブレーション型レーザである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁放射源がダイオードレーザ、ファイバレーザ、固体レーザ、および/またはガスレーザーのうち少なくとも1つである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
空間的に隔てられた複数の個々の照射領域の皮膚の真皮組織が、その所定の深さまで熱的に損傷される、および/またはアブレーションされる、のうち少なくとも1つである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
空間的に隔てられた複数の個々の照射領域が、最小で目標領域の20パーセント、最大で目標領域の40パーセントにわたる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
空間的に隔てられた複数の個々の照射領域のそれぞれの間の平均距離は最小で約10μm、最大で約2000μmである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
空間的に隔てられた複数の個々の照射領域のそれぞれが約0.1mmの直径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
空間的に隔てられた複数の個々の照射領域のそれぞれが最小で約1μm、最大で約500μmの最小寸法の横方向直径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(d)目標領域に位置決めされる光学的に透明なプレートを配置する段階
をさらに有する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記光学的に透明なプレートが冷却される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光学的に透明なプレートが最小で37℃、最大でマイナス20℃まで冷却される請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第1の電磁放射が第1セットのパラメータに関連し、第2の電磁放射が第2セットのパラメータに関連する請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2つの個々の照射領域が、影響を受けない領域によってお互いに隔てられる請求項1に記載の方法。
【請求項15】
2つの隣接する個々の照射領域の間の少なくとも1つのさらなる皮膚部分の幅が、最小で約125μmの間にある請求項14に記載の方法。
【請求項16】
2つの隣接する個々の照射領域の間の少なくとも1つのさらなる皮膚部分の幅が、最大で約500μmの間にある請求項14に記載の方法。
【請求項17】
1平方センチメートルの目標面積中における少なくとも100の個々の照射領域の少なくとも1つのものが、少なくとも100の個々の照射領域の少なくとも1つの他のものと、少なくとも1つのさらなる皮膚部分によって隔てられる請求項1に記載の方法。
【請求項18】
1平方センチメートルの目標面積中における少なくとも1000の個々の照射領域の少なくとも1つのものが、少なくとも1000の個々の照射領域の少なくとも1つの他のものと、少なくとも1つのさらなる皮膚部分によって隔てられる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記電磁放射源がパルスレーザである請求項1に記載の方法。
【請求項20】
1平方センチメートルの目標面積中における少なくとも100の個々の照射領域の各々のものが、少なくとも100の個々の照射領域の各々のものと、少なくとも1つのさらなる皮膚部分によって隔てられる請求項1に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−172418(P2009−172418A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115006(P2009−115006)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2005−518231(P2005−518231)の分割
【原出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【Fターム(参考)】