説明

皮膚組織に刺入するためのシステム及び方法

皮膚組織に刺入するためのシステム(100)であって、皮膚刺入部材(102)(例えば、一体型微小針/バイオセンサ医療装置)、少なくとも1つの電気接点(104)(例えば、電気的な皮膚接点)、及び計器(106)を含む。計器(106)は、システムの使用中に皮膚刺入部材と電気接点との間の存在する電気特性(例えば、抵抗及び/またはインピーダンス)を測定するように構成されている。電気接点を計器の圧力/接触リングと一体にして、一体型微小針/バイオセンサ医療装置に適合したコンパクトで安価なシステムを提供することができる。また、皮膚組織に刺入する方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの電気接点を皮膚組織(例えば、皮膚)に接触させるステップと、皮膚刺入部材と電気接点との間に存在する電気特性を測定しながら皮膚組織内に皮膚刺入部材を挿入するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、医療装置に関し、詳細には、皮膚組織を刺入するための装置及びその方法に関する。
【0002】
関連技術の説明
様々な医療処置(例えば、グルコースまたは他の分析物をモニタリングするための全血サンプリングなど)は、皮膚刺入部材(例えば、ランセットや微小針など)による皮膚組織(例えば、皮膚)への刺入を伴う。このような処置では、皮膚刺入部材による皮膚組織刺入の深さ、安定性、及び時間が処置の結果を決定する際の重要な因子である。例えば、不十分な刺入深さは、特定の医療処置が不十分な結果を引き起こすエラー状態であり得る。
【0003】
近年、微小針とバイオセンサ(例えば、電気化学系バイオセンサ及び測光系バイオセンサ)が1つの医療装置に一体化された。このような一体型医療装置を関連計器と共に用いて、グルコースを含む様々な分析物をモニタリングすることができる。場合によっては、バイオセンサは、分析物をモニタリングする一時的な使い捨て形態、半連続的な形態、または連続的な形態にデザインすることができる。微小針とバイオセンサを一体にすることにより、使用者が採集部位からサンプルを抽出してそのサンプルをバイオセンサに移す必要がなく、モニタリング手順が簡潔になる。この簡潔化と微小針と少量のサンプルにより、苦痛が低減され、採集部位の迅速な回復が可能である。
【0004】
しかしながら、一体型の微小針/バイオセンサ医療装置と関連する計器を使用すると、必要なサンプルの抽出及び移送に要した時間の間に不十分な皮膚刺入や不安定な皮膚刺入に関連したエラー状態などの悪い状態を検出する使用者の能力が低下する。このようなエラー状態では、例えば、分析物の測定に不十分な量のサンプルの抽出及び移送が起こり得る。更に、場合によっては、微小針の刺入が長時間(例えば、数時間または数日)に亘って安定であることが重要である。このような安定は、例えば、微小針の刺入の障害で医療装置の流路に気泡が進入するような連続的なモニタリングの際に重要である。加えて、微小針が基準電極または動作電極として用いられる場合、刺入が不安定だと、分析物の電気化学測定に必要な電気回路が切断され得る。
【0005】
従って、当分野では、皮膚組織に刺入するときの刺入深さ、サンプルの抽出及び移送に要した時間、及び/または安定性を検出し、かつ提供する医療装置及びその方法が要望されている。加えて、このような装置及び方法は、一体型微小針/バイオセンサ医療装置及び関連する計器に適合している。
【0006】
発明の要約
本発明に従った皮膚組織に刺入するシステム及び方法の実施形態は、刺入深さ、サンプルの抽出及び移送に要した時間、及び/または刺入中の安定性を検出し、かつ/または提示できる。加えて、これらのシステム及び方法は、一体型微小針/バイオセンサ医療装置及び関連する計器に適合している。
【0007】
本発明の例示的な実施形態に従った皮膚組織に刺入するためのシステムは、皮膚刺入部材(例えば、一体型微小針/バイオセンサ医療装置)、少なくとも1つの電気接点(例えば、電気的な皮膚接点)、及び計器を含む。この計器は、システムの使用中に皮膚刺入部材と電極との間に存在する電気特性(例えば、抵抗及び/またはインピーダンス)を測定するように構成されている。電気接点は、例えば、計器の圧力/接触リングと一体の電気的な皮膚接点とすることができる。電気接点と圧力/接触リングを一体化することにより、一体型微小針/バイオセンサ医療装置に適合したコンパクトで安価なシステムを提供することができる。
【0008】
本発明に従ったシステムの刺入深さ、刺入期間(すなわち、滞留時間)、及び/または刺入安定性を検出して提示する能力は、電気接点と皮膚刺入部材との間の測定された電気特性が上記した刺入深さ、刺入安定性、及び/または刺入期間を示すという概念に基づいている。例えば、皮膚刺入部材(例えば、微小針)と1または複数の電気的な皮膚接点との間のインピーダンスが、皮膚刺入部材による皮膚組織刺入深さを示すと決定されている。更に、このようなインピーダンスの変化が、刺入安定性及び/または刺入期間を示すことができる。
【0009】
本発明に従ったシステムの実施形態では、例えば、システムの使用中に電気接点と皮膚刺入部材との間に安全な電位を加えることを含む技術を用いてインピーダンス(または他の電気特性)が測定される。
【0010】
また、皮膚組織に刺入する方法を提供する。この方法は、少なくとも1つの電気接点を皮膚組織(例えば、皮膚)に接触させるステップと、皮膚刺入部材と電気接点との間に存在する電気特性を測定しながら皮膚刺入部材を皮膚組織内に挿入するステップとを含む。
【0011】
発明の詳細な説明
添付の図面を参照しながら、本発明の原理を用いた例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明を読めば、本発明の特徴及び利点をより良く理解できるであろう。
【0012】
図1に、皮膚組織Dに刺入するためのシステム100の簡易図が示されている。システム100は、皮膚刺入部材102、少なくとも1つの電気接点104、及び計器106を含む。計器106は、システム100の使用中に皮膚刺入部材102と電気接点104との間に存在する電気特性(例えば、抵抗及び/インピーダンス)を測定するように構成されている。
【0013】
皮膚刺入部材102は、限定するものではないが、ランセット、微小針、及び
バイオセンサと一体にされ一体型微小針/バイオセンサ医療装置を形成する微小針を含め、当業者に周知の任意の好適な皮膚刺入部材とすることができる。当業者であれば、皮膚刺入部材として用いることができる微小針は、限定するものではないが、言及することを以って内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願第09/919,981号(2001年8月1日出願)、同第09/923,093号(2001年8月6日出願)、同第10/143,399号(2002年5月9日出願)、同第10/143,127号(2002年5月9日出願)、及び同第10/143,422号(2002年5月9日出願)、並びにPCT国際特許出願第WO01/49507A1に開示されているような形態を含め、任意の好適な形態をとることができる。
【0014】
図2‐図4に、本発明に従ったシステムの実施態様で皮膚刺入部材として用いることができる一体型の微小針/バイオセンサ医療装置200(電気化学検査ストリップとも呼ぶ)が示されている。医療装置200は、電気化学セル210、一体型微小針220、及び一体型毛管路230を含む。電気化学セル210は、動作電極240、基準電極250、拡散溝260、及び試薬成分(不図示)を含む。別法では、医療装置200は、拡散溝260を含まないように構成することもできる。
【0015】
動作電極240及び基準電極250は、図2‐図4に例示されているように分離用スペーサー層280によって互いに離間して反対側を向いている。分離用スペーサー層280は、動作電極40及び基準電極250に沿って電気化学セル210の境界を画定している。動作電極40及び基準電極250は、任意の好適な材料か形成することができる。試薬成分は、例えば、酸化還元酵素及び酸化還元対を含む。試薬成分は、例えば、スクリーン印刷、吹き付け、インクジェット、及びスロットコーティング技術を含め、従来の任意の技術によって1または複数の基準電極及び動作電極に堆積させることができる。
【0016】
一体型微小針220は、使用者から全血サンプルを採取(抽出)し、その全血サンプルを一体型毛管路230を介して電気化学セル210に導入(移送)するように適合されている。電気化学セル210に導入されたら、全血サンプルは拡散溝260にわたって均等に分散される。一体型微小針220は、全血サンプルではなく間質液サンプルを採取(抽出)及び導入(移送)するように適合することもできる。
【0017】
一体型微小針210は、例えば、スパッタリングまたはメッキで貴金属(例えば、金、パラジウム、イリジウム、またはプラチナ)が形成されたプラスチックまたはステンレス鋼を含め、任意の好適な材料から形成することができる。一体型微小針の形状、寸法、表面の特徴、並びに使用者の表皮/皮膚層(例えば、皮膚組織)への微小針の使用時の刺入深さは、使用者から全血サンプルを採集する際の苦痛が最小限となるように適合されている。
【0018】
医療装置200(電気化学検査ストリップとも呼ぶ)の使用中に、使用者の皮膚が一体型微小針220によって刺入されると、サンプル(全血など)が、一体型毛管路230によって電気化学セル210内に導入され、拡散溝260によって電気化学セル210内に均一に分散される。図2‐図4に例示されているように、一体型微小針220は基準電極250と一体である。しかしながら、当業者であれば、別法として、一体型微小針220を動作電極240と一体にできることを理解できよう。
【0019】
医療装置200は、互いに反対側を向き別の平面に延在するように構成された動作電極及び基準電極を有するが、当業者であれば、動作電極及び基準電極が同じ平面に延在する医療装置を本発明に従ったシステムの実施形態の皮膚刺入部材として用いることができることを理解できよう。このような医療装置は、例えば、言及することを以ってその内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願第5,708,247号、同第5,951,836号、同第6,241,862号、及びPCT国際特許出願第WO01/67099号、同第WO01/73124号、及び同第WO01/73109号に開示されている。
【0020】
当業者であれば、電気化学系検査ストリップの代わりに測光系検査ストリップを本発明の代替の実施形態に用いることができることが理解できよう。このような測光ストリップの例は、言及することを以って内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願第09/919,981号(2001年8月1日出願)、同第09/923,093号(2001年8月6日出願)、同第10/143,399号(2002年5月9日出願)、同第10/143,127号(2002年5月9日出願)、及び同第10/143,422号(2002年5月9日出願)に開示されている。
【0021】
図1を再び参照されたい。電気接点104は、当業者に周知の任意の好適な電気接点とすることができる。図1の実施形態では、電気接点104は、円形であり、皮膚組織Dの外側皮膚層に電気接触するように適合された電気的な皮膚接点である。電気接点104は、使用中に外側皮膚層に接触する外側導電層を含む。このような導電層は、無電解メッキ、スパッタリング、蒸着、及びスクリーン印刷などの従来の方法で形成することができる。
【0022】
当業者であれば、電気接点104は、皮膚刺入部材と電気接点との間に存在する電気特性を容易に測定できるように導電材料から形成することができる。電気接点104は、例えば、Au、Pt、炭素、ドープされた酸化錫及びPd、導電性ポリウレタンなどの分極性電極材料、またはAg/AgClなどの非分極性電極材料などの任意の好適な導電材料から形成することができる。
【0023】
一体型微小針/バイオセンサ医療装置及び関連計器に適合したコンパクトなシステムを提供するには、このような計器の圧力/接触リングと電気接点を一体にするのが有利である。一体型の電気接点と圧力/接触リングは、例えば、計器のハウジング内に配置されたインピーダンス測定装置に電気的に接続することができる。
【0024】
電気接点と圧力/接触リングが一体にされた場合、電気接点104は、体液が流出し易いように、例えば、約0.227〜0.682kg(0.5〜1.5ポンド)の圧力で皮膚組織Dに押し付けることができる。一体型の電気接点と圧力/接触リングは、例えば、2mm〜10mmの範囲の直径を有することができる。このような一体型の電気接点と圧力/接触リングは、皮膚組織標的部位から流体が流出するのを助け、皮膚組織内への皮膚刺入部材の十分な皮膚への刺入、刺入安定性、及び/または十分な滞留時間(期間)を保証するために電気特性をモニタリングできるように適合されている。
【0025】
随意選択の電気接点リングと圧力/接触リングとの一体化が図5に例示されている。図5に、皮膚組織に刺入するためのシステム500の例示的な実施形態が示されている。システム500は、皮膚刺入部材502(すなわち、一体型微小針/電気化学検査ストリップ)、一体型の電気接点と圧力/接触リング504、及び計器506を含む。計器506は、十分な皮膚刺入が達成されたかを確認するために皮膚刺入部材502と一体型の電気接点と圧力/接触リング504との間のインピーダンスを測定する。図5に示されている計器は、言及することを以ってその内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願公開第US2002/0168290号(名称「生体サンプル採集装置及びその使用方法」(Physiological Sample Collection Devices and Methods of Using the Same)に開示されている計器を新規に改良したものである。当業者であれば、本開示を読めば、様々な圧力/接触リングを電気接点と一体化して本発明の実施形態に用いることができることを理解できよう。このような圧力/接触リングの例は、言及することを以って内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願公開第2002/0016606号、米国特許第6,283,982号、及びPCT国際特許出願第WO02/078533A2号に開示されている。
【0026】
図1を再び参照すると、計器106は、システム100の使用中に皮膚刺入部材102と少なくとも1つの電気接点104との間に存在する電気特性(例えば、抵抗及び/またはインピーダンス)を測定できるように構成された当分野で周知の任意の好適な計器とすることができる。計器106は、例えば、システムの使用中に皮膚刺入部材と電気接点との間に安全な電位及び/または電流(電流の振幅及び周波数範囲については後述)を加えるなどして、電気特性(例えば、インピーダンス)を測定することができる。例えば、電気特性は、皮膚刺入部材が皮膚組織に接近した時、皮膚組織に接触して刺入していない時、皮膚組織に刺入している時(例えば、突き刺す)、及び皮膚組織から引き抜かれた時に測定することができる。更に、上記した使用の間、常に電気特性を測定することもできる。このような例示的な場合、皮膚刺入部材による皮膚組織への刺入は、電気特性(例えば、インピーダンス)の著しい低下に基づいて検出することができ、皮膚刺入部材の皮膚組織からの引き抜きは、電気特性の著しい増大に基づいて検出することができ、刺入期間は、刺入と引き引き抜きの間の時間として決定することができ、安定性は電気特性の変動に基づいて検出することができる。電位及び/または電流を加える頻度は、皮膚の種類及びその状態に差よる影響を最小限にするために様々にすることができる。
【0027】
図6に、システム100に用いられる好適な計器が例示されている。図6の実施形態では、計器106は、LCDディスプレイ602、マイクロコントローラ(μC)604、AD変換器(A/D)606、増幅器608、電流電圧変換器610、バッテリー(VBAT)620、AC電流源622、及びスイッチ624を含む。計器106は、皮膚刺入部材102と電気接点104を電気的に接続するように適合されている。スイッチ624が閉じると(すなわち、オン)、計器106が、皮膚刺入部材102と電気接点104との間のインピーダンスを測定するために、これらの間にAC電流波形を流す。皮膚刺入部材と電気接点の前後の電流(I)及び電圧(V)を測定することにより、オームの法則:Z=V/Iを用いてインピーダンス(Z)を求めることができる。所望に応じて、インピーダンスの値から抵抗またはキャパシタンスを決定することができる。
【0028】
電流源の振幅が、使用者には検出できない値(例えば、10mA未満)であるが、雑音比に対して良好な信号を生成するのに十分な値(例えば、1mA以上)に制限するのが有利である。本発明の例示的な実施形態では、電流の周波数は10KHz〜1MHzの範囲であり、この周波数範囲の低周波数が使用者への不快感を防止し、この周波数範囲の高周波数が測定される浮遊容量を最小限にする。
【0029】
従来から、測定AC電圧及び電流を用いたインピーダンスの測定には高速A/D変換器及び他の比較的高価な電気部品が必要である。しかしながら、本発明に従ったシステムは、言及することを以って内容の全てを本明細書の一部とする米国特許出願第10/020,169号(2001年12月12日出願)及び同第09/988,495号(2001年11月20日出願)に開示されている比較的安価な技術を用いてインピーダンスを測定することができる。
【0030】
図1に、皮膚刺入部材102が皮膚組織Dに接触していない(すなわち、皮膚刺入部材が皮膚組織Dの皮膚層に接触していない)時の皮膚刺入部材102、皮膚組織D、及び電気接点104の空間的関係が示されている。この空間的関係では、皮膚刺入部材と電気接点(皮膚組織Dの外側皮膚層に接触している)との間のインピーダンスは、通常は10MΩよりも大きい。しかしながら、計器に用いる電子部品の種類及びリーク電流の大きさによってインピーダンスの値は変化し得ることを理解されたい。
【0031】
図7に、皮膚刺入部材102が電気接点104によって形成された円の中心点で皮膚組織Dに刺入しないで接触している時の皮膚刺入部材102、皮膚組織D、及び電気接点104の空間的関係が模式的に示されている。この空間的関係では、皮膚刺入部材102と電気接点104との間のインピーダンスは、通常は、例えば15kΩ〜約1MΩの範囲である。
【0032】
図8に、皮膚刺入部材102が電気接点104によって形成された円の中心点で皮膚組織Dで刺入している時の皮膚刺入部材102、皮膚組織D、及び電気接点104の空間的関係が模式的に示されている。この空間的な関係では、皮膚刺入部材102と電気接点104の間のインピーダンスは通常、皮膚刺入部材が皮膚組織Dに刺入しないで接触している時のインピーダンスの10%以下と低い。制約するものではないが、インピーダンスのこのような大きな変化は、皮膚のインピーダンスの大部分が外側層すなわち表皮に存在することによるものであり、皮膚刺入部材が外側層を越えて皮膚組織に刺入するとインピーダンスが著しく低下するためであると推測される。
【0033】
上記した説明に基づき、使用中のシステムの皮膚刺入部材と電気接点との間のインピーダンスの測定で皮膚刺入及びこの刺入安定性が分かる。言い換えれば、システムの計器は、皮膚刺入部材と電気接点との間のインピーダンス(または抵抗)を測定することにより、刺入、刺入安定性、及び刺入期間(すなわち、サンプルの抽出及び移送に要した時間)を検出することができる。皮膚刺入部材が皮膚組織内に刺入すると、抵抗またはインピーダンスが著しく変化する。
【0034】
電気特性の測定における皮膚の抵抗の差による影響を少なくするために、複数の電気接点を利用することができる。この場合、電気接点間の電気特性の更なる測定を行って、電気接点と皮膚刺入部材との間の測定値を標準化することができる。様々な電気接点を用いることができるが、単純にするために、皮膚組織Dに刺入するための図9のシステム700は2つの電気接点を含むとして示されている。システム700は、皮膚刺入部材702、第1の電気接点704、第2の電気接点705、及び計器706を含む。計器706は、皮膚刺入部材702と第1及び第2の電気接点704、705との間に存在する電気特性(例えば、抵抗及び/またはインピーダンス)を測定するように構成されている。第1及び第2の電気接点を使用することにより、2つの電気接点間の異なる電気特性測定値が得られ、皮膚の種類及び状態に対する依存が少ない刺入の検出を行うことができる。
【0035】
皮膚組織のインピーダンスは、高い気温や運動などによる周囲湿度や汗によって異なり得る。図9‐図11の実施形態では、モニタリングできる2つの追加のインピーダンス測定値は、皮膚刺入部材702と第1の電気接点704との間のインピーダンス測定値と、皮膚刺入部材702と第2の電気接点705との間のインピーダンス測定値である。これらのインピーダンス測定値を平均して、皮膚組織刺入の検出精度を高めることができる。加えて、皮膚刺入部材と第1の電気接点及び皮膚刺入部材と第2の電気接点の間の2つのインピーダンス測定値は、第1の電気接点及び第2の電気接点に均一な圧力が加えられたか否かについての判断基準となり得る。更に、均一な圧力が加えられたか否かの決定により、皮膚刺入部材が皮膚組織に垂直に刺入しない配置リスクを低減することができる。図9‐図11の実施形態は2つの電気接点を用いているが、当業者であれば、2つ以上の電気接点を用いて皮膚刺入部材が垂直に刺入されているかをより高精度に決定できることを理解できよう。
【0036】
更に、第1の電気接点と第2の電気接点との間のインピーダンスの測定結果を用いて、第1の電気接点と皮膚刺入部材との間のインピーダンスの測定値及び第2の電気接点と皮膚刺入部材との間のインピーダンスの測定値を標準化することができる。標準化されたインピーダンスRは、式:R=R/Rから求めることができる。このRは、第1の電気接点及び第2の電気接点の何れかと皮膚刺入部材との間のインピーダンス、または皮膚刺入部材と第1の電気接点の間のインピーダンスと皮膚刺入部材と第2の電気接点との間のインピーダンスの平均である。このRは、第1の電気接点と第2の電気接点との間の測定インピーダンスである。
【0037】
図9に、皮膚刺入部材704が皮膚組織Dに接触していない(すなわち、皮膚刺入部材が皮膚組織Dの皮膚層に接触していない)時の皮膚刺入部材702、皮膚組織D、及び第1及び第2の電気接点704、705の空間的関係が示されている。システム700では、第1及び第2の電気接点704、705が、図9‐図11に例示されているように距離L1によって分離され互いに絶縁されている。距離L1は、第1の電気接点704と第2の電気接点705との間の最小のギャップと定義され、通常は0.5mm〜2mmの範囲である。図9の空間的関係の場合、皮膚刺入部材702と第1の電気接点704との間のインピーダンス及び皮膚刺入部材702と第2の電気接点705との間のインピーダンスは、通常は10MΩよりも大きい。更に、第1の電気接点704と第2の電気接点705との間のインピーダンスは、通常は15kΩ〜約1MΩの範囲の有限値である。
【0038】
図10に、皮膚刺入部材702が皮膚組織Dに刺入しないで接触している時の皮膚刺入部材702、皮膚組織D、及び第1及び第2の電気接点704の空間的関係が模式的に示されている。この空間的関係では、皮膚刺入部材702と第1の電気接点704との間のインピーダンス及び皮膚刺入部材702と第2の電気接点705との間のインピーダンスは通常、例えば、15kΩ〜約1MΩの範囲である。加えて、第1の電気接点704と第2の電気接点705との間のインピーダンスは通常、15kΩ〜約1MΩの範囲の有限値である。
【0039】
図11に、皮膚刺入部材702が皮膚組織Dに刺入している時の皮膚刺入部材702、皮膚組織D、及び第1及び第2の電気接点704、705の空間的関係が模式的に示されている。この空間的関係では、皮膚刺入部材102と第1の電気接点704または第2の電気接点705の一方との間のインピーダンスは通常、皮膚刺入部材が皮膚組織Dに刺入しないで接触している時のインピーダンスの10%以下と低い。更に、第1の電気接点704と第2の電気接点705との間のインピーダンスは、通常は15kΩ〜約1MΩの範囲の有限値である。
【0040】
図12に、皮膚刺入部材702と第1の電気接点704または第2の電気接点705の一方との間の電気特性(すなわち、インピーダンス)の測定に好適な電子部品を含むシステム700に用いる好適な計器706が例示されている。図12に示されている計器706は、LCDディスプレイ722、マイクロコントローラ(μC)724、AD変換器(A/D)726、増幅器728、電流電圧変換器730、バッテリー(VBAT)732、AC電流源734、第1のスイッチ736、及び第2のスイッチ740を含む。計器706は、皮膚刺入部材702、第1の電気接点704、及び第2の電気接点705に機能的に接続されている。第1のスイッチ736が閉(すなわち、オン)、第2のスイッチ740が開(すなわち、オフ)の時、計器は、第2の電気接点705と第1の電気接点704との間のインピーダンスを測定するためにこれらの間にAC電流波形を流す。第1のスイッチ736が開、第2のスイッチ740が閉の時、皮膚刺入部材702と第1の電気接点704との間のインピーダンスを測定するためにこれらの間にAC電流波形を流す。第1のスイッチ736と第2のスイッチ740の両方が開の時、計器706は、例えば、グルコース値を測定して出力することができる。
【0041】
図13に、本発明の例示的な実施形態に従ったプロセス900の連続ステップを例示するフローチャートが示されている。プロセス900は、ステップ910に示されているように少なくとも1つの電極を皮膚組織に接触させるステップと、ステップ920に示されているように皮膚刺入部材を(例えば、一体型微小針/バイオセンサ)皮膚組織内に刺入するステップとを含む。挿入中に、皮膚刺入部材と電気接点との間に存在する電気特性(例えば、抵抗またはインピーダンス)を測定する。プロセス900の基礎をなす概念は、測定した電気特性の変化により、皮膚組織刺入の十分な深さ、及び/または十分なサンプルの抽出及び移送に要した時間(期間)、及び/または皮膚刺入部材の皮膚組織内での安定性を示すことができることである。
【0042】
所望に応じて、プロセス900は、皮膚刺入部材の皮膚組織刺入深さの表示(例えば、視覚的または聴覚的提示)、皮膚刺入部材の皮膚組織刺入安定性の表示、及び/または皮膚刺入部材の皮膚組織刺入期間(すなわち、サンプルの抽出及び移送に要した時間)の表示を使用者に提示するステップを含むこともできる。この表示は、測定した電気特性に基づくものである。
【0043】
ここに開示した本発明の実施形態の様々な代替形態を用いて本発明を実施できることを理解されたい。添付の特許請求の範囲が本発明の範囲を規定し、特許請求の範囲内の構造及び方法並びにそれらの等価物が本発明に含まれることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】システムの皮膚刺入部材が皮膚組織に接触していない、本発明の例示的な実施形態に従った皮膚組織に刺入するためのシステム及び皮膚組織の簡易図である。
【図2】本発明に従ったシステムの実施形態に用いることができる一体型微小針/バイオセンサ医療装置(電気化学検査ストリップとも呼ぶ)の上方からの組立分解斜視図である。
【図3】図2の一体型微小針/バイオセンサ医療装置の底部からの組立分解斜視図である。
【図4】図2の一体型微小針/バイオセンサ医療装置の上方からの斜視図である。
【図5】皮膚刺入部材(一体型微小針/バイオセンサ医療装置の形態)、電気的な皮膚接点(圧力/接触リングと一体)、及び計器を含む本発明の別の実施形態に従ったシステムの簡易図である。
【図6】計器の様々な構成要素を含む図1のシステムの単純化された模式的な電気ブロック線図である。
【図7】皮膚刺入部材が皮膚組織に刺入しないで接触している図1のシステムの簡易図である。
【図8】皮膚刺入部材が皮膚組織に刺入している図1のシステムの簡易図である。
【図9】システムの皮膚刺入部材が皮膚組織に接触していない、本発明の別の実施形態に従った皮膚組織に刺入するためのシステム及び皮膚組織の簡易図である。
【図10】皮膚刺入部材が皮膚組織に刺入しないで接触している図9のシステムの簡易図である。
【図11】皮膚刺入部材が皮膚組織に刺入している図1のシステムの簡易図である。
【図12】計器の様々な構成要素を含む図9のシステムの単純化された模式的な電気ブロック線図である。
【図13】本発明の例示的な実施形態に従ったプロセスの連続ステップを例示するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚組織に刺入するためのシステムであって、
皮膚刺入部材と、
少なくとも1つの電気接点と、
前記システムの使用中に前記皮膚刺入部材と前記少なくとも1つの電気接点との間に存在する電気特性を測定するように構成された計器とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電気接点が電気的な皮膚接点であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記計器が、前記皮膚刺入部材による皮膚組織刺入を示す前記皮膚刺入部材と前記少なくとも1つの電気接点との間の電気特性を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記計器が、前記皮膚刺入部材による皮膚組織刺入の安定性を示す前記皮膚刺入部材と前記少なくとも1つの電気接点との間の電気特性を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記計器が、前記皮膚刺入部材による皮膚組織に刺入していた滞留時間を示す前記皮膚刺入部材と前記少なくとも1つの電気接点との間の電気特性を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電気特性が、前記皮膚刺入部材と前記少なくとも1つの電気接点との間の電気抵抗であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記電気特性が、前記皮膚刺入部材と前記少なくとも1つの電気接点との間の電気インピーダンスであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電気接点が第1の電気接点及び第2の電気接点を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記計器が更に、前記第1の電気接点と前記第2の電気接点との間に存在する電気特性を測定するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記計器が圧力/接触リングを含み、前記少なくとも1つの電気接点が前記圧力/接触リングと一体であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記皮膚刺入部材が微小針であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記微小針が、一体型微小針/バイオセンサ医療装置の構成要素であることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
皮膚組織に刺入するためのシステムであって、
皮膚刺入部材と、
第1の電気接点と、
第2の電気接点と、
前記システムの使用中に前記皮膚刺入部材と前記第1の電気接点及び前記第2の電気接点との間に存在する電気特性を測定するように構成された計器とを含むことを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記電気特性が、前記皮膚刺入部材と前記第1の電気接点の間及び前記皮膚刺入部材と前記第2の電気接点の間の両方の電気インピーダンスであることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記計器が圧力/接触リングを含み、前記第1の電気接点及び前記第2の電気接点が前記圧力/接触リングと一体であることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記皮膚刺入部材が微小針であることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記微小針が一体型微小針/バイオセンサ医療装置の構成要素であることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の電気接点が第1の電気的な皮膚接点であり、前記第2の電気接点が第2の電気的な皮膚接点であることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項19】
皮膚組織に刺入するための方法であって、
少なくとも1つの電気接点を皮膚組織に接触させるステップと、
前記皮膚刺入部材と前記少なくとも1つの電気接点との間に存在する電気特性を測定しながら皮膚刺入部材を皮膚組織に挿入して、前記皮膚組織に貫入するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
更に、前記皮膚刺入部材の皮膚組織刺入深さの表示を使用者に提示するステップを含み、前記表示が測定された前記電気特性に基づいていることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
更に、皮膚刺入部材の皮膚組織刺入安定性の表示を使用者に提示するステップを含み、前記表示が測定された前記電気特性に基づいていることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
更に、皮膚刺入部材の皮膚組織に刺入していた滞留時間の表示を使用者に提示するステップを含み、前記表示が測定された前記電気特性に基づいていることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記挿入ステップが、微小針皮膚刺入部材を挿入するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記挿入ステップが、一体型微小針/バイオセンサ医療装置の微小針を挿入するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記挿入ステップが更に、前記皮膚刺入部材が前記皮膚組織に接触する前、前記皮膚刺入部材が前記皮膚組織に接触した時、及び前記皮膚刺入部材が前記皮膚組織に刺入した時に電気特性を測定するステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記測定ステップが1mA〜10mAの範囲の電流を流すことで達成されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記測定ステップが、10KHz〜1MHzの範囲の電位周波数を用いて達成され、前記周波数の低周波数が患者の不快感を防止し、前記周波数の高周波数が測定される浮遊容量を最小限にすることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2006−520251(P2006−520251A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508661(P2006−508661)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/003142
【国際公開番号】WO2004/080306
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】